資料1 産業教育ワーキンググループ(第3回、第4回)における主な意見

1.育成すべき資質・能力

  • 産業教育は実学であるということについて、実学とは人の役に立つ教育に尽きると思われる。これからどのように教育の場で展開していくかが重要である。
  • 学びの必要性や価値を、専門教育を通して実感させるような学びの在り方が次の学習指導要領では望まれてくるのではないか。受験を短期的な目標とした、剥落する可能性のある受験専用の学力ではないものを、産業教育の中でどのように伸ばしていくのかという議論が今後求められていくのではないか。
  • 専門高校で身に付けるべき資質・能力については、卒業してすぐに社会に出る、進学してやがて社会に出る、そういうことも見据えた上で、非常に柔軟な対応が求められる。一つ一つの資質・能力について、どのようにカリキュラムの中に位置付けて育成していくのかということについては、様々な検討が必要である。
  • 次の学習指導要領の新しい方向性として、社会に開かれた教育課程ということがあり、これは教育課程が教育界だけのものではなく、民間企業も含めて広く一般社会の人たちにとって、教育の内容が分かるようなカリキュラム、教育課程を考えなければならない。
  • どのように社会、世界と関わり、よりよい人生を送るのか、それは具体的にどの科目を使って教育課程を編成していくかというと、もう少し特化したものがあってもいいのではないかと思う。
  • 様々な専門高校で社会人基礎力をベースとした評価の枠組みの構築が、数年以上続いている。しかし、社会人基礎力は、大学生を対象とした求人票をベースとして、そこから析出してきた能力論であり、二つの点で問題がある。専門高校に必ずしも特化しているわけではないということ、また、求人票から析出された社会人基礎力では、就職する段階でどういう力が付いていればいいかということしか見えないので、生涯にわたって学び続けるという枠組みが導出できないという点で課題がある。
  • 経営であったり運営であったり、何か物事を起こすに当たっても、どうすれば何が起こるのかをしっかり考えていく、そういった流れをどう作っていくのか、どのように経営や運営をしていくのかという、マネジメントする力も資質・能力として、今後生徒には必要な力になっていくのではないか。
  • 例えば工業高校では、せめて英語のマニュアルはある程度読めるくらいの力や、英語で書かれた図面はある程度読めるような力がほしい、また、海外に出たときに簡単な技術者同士の会話ができるようにしてほしいなど、グローバル化に対応した教育は産業界でも求められている。
  • グローバル社会に対応した人材の育成という観点からいっても、英語の学習を希望する生徒には、履修単位数が多くなるような教育課程の編成ができないか。
  • 例えば、対人スキル、特に他人の気持ちを理解できること、コミュニケーション能力、気付く力、推し量る力、議論し合う力、協力し合う力、つまりグループでともに働きながらお互いを伸ばしていくということが今求められている。そういう力は産業教育のカリキュラムの中で十分培われるものであると同時に、高等学校で培ったものを、産業界との連携の中で、大人との実際のコミュニケーションを通じて、自分の幼さや矮小さ、あるいは語彙の少なさや論理性の弱さといったものを認識させながら伸ばしていくべき力ではないか。
  • どの業界からも他人の心とかコミュニケーション力、柔軟な力が必要であると言われているが、産業教育においては、この部分はやりやすいということを感じている。プロジェクト学習といったものをさらに充実させていくことが大切である。
  • 他者と協働するには個をしっかり持つということが非常に大事であり、個を大切にする教育は学校教育でこれまでも行ってきたし、これからも大切である。基礎力などもしっかりと身に付けていくということと、それをもって他者との協働を図っていくという、両方が必要である。
  • 産業界としては、自立・自律して、かつ、自主的な問題提起や問題解決ができる人材をぜひ育成してほしい。そのため、自分自身が体感して、自分自身で考えて、自分自身のオリジナルな情報と知恵を自分で作るということがこれからの教育に求められる。新たな仕事が発生してくると、最後は人材力、個人の力が求められる。一方で、チームワークは個人の力を前提として、仕事をうまく実現するために求められる。
  • チームで仕事をしていくことは大事だが、もたれ合いになっていたら絶対にだめであり、個々が強くなった上でのチームワークである。
  • 基礎学力の育成という視点で、普通教育も専門教育も両方とも大切だということ、両方が関連し合っているということをしっかり意識付けさせて、学ぶ姿勢を身に付けさせることが大切である。そうすることによって生徒に自信を持たせて、専門性を発揮したり発信したりできるようにしていきたい。
  • 専門高校に入学する生徒に、何のためにそれをやらなければならないのかをまず気づかせることが大切である。例えば、看護科においては看護師資格を取るという明確な目標のために勉強することによって、こういう価値が出るということを教える、そういうことによって生徒に気づきとか、動機付けを行っていくことも必要である。
  • 農業高校に入学して農業を学ぶ中で基本的、基礎的な学習についての動機付けをどう行っていくか。それと共通教科との関連をどうするか、カリキュラムの問題もあるが、検討しなければならない。
  • 高い専門性や課題解決力を育成する中で、教科の学習と同時に、課外活動の部分もかなり重要な役割となっているのではないか。教育課程内の活動と教育課程外の活動の双方で生徒たちに力を付けさせるということも課題である。
  • カリキュラムについて、基礎的なところはきちんと仕組みを組むと同時に、ある程度学校で変えていい部分とか、変化に対応できるようなカリキュラムの作り方の仕組みも検討するべき。
  • 産業界ではどういう資質・能力を求めているのかという調査研究をいま一度行った方がよい。そうすれば、それぞれの学科でどのような分野、科目、内容を設定すればよいのかということが見えてくるのではないか。
  • 看護科における、生涯学び続ける力を育てるという取組の中で、看護師資格を取得した生徒が、例えば結婚をした後、いったんは職場から離れるかもしれないけれども、せっかく技術・技能を持っているのだから、もう一度、社会に出てきて活躍するという、そういう生涯学び続ける力をぜひ育てて欲しい。


2.資質・能力の育成のために重視すべき指導等

  • アクティブ・ラーニングという言葉をもっと進化させた形で、チームでの学習ということを学習指導要領のどこかに盛り込めないか。
  • 社会の大きな変化にしっかり対応できるような力を生徒に身に付けさせていくためには、アクティブ・ラーニングが必要である。これまでも例えば農業クラブや学校家庭クラブ活動の中でプロジェクト学習を行っているが、さらに一歩進んで、世界と関わりを持つという視点で学習を深めていかなければならない。
  • 生徒が台湾の生徒と連携して商品開発を行い、現地で販売会を行った。その学習の成果発表の際に、「自分たちの思いや考えをうまく伝えるためにもっと英語を学ばなければいけない」という意見や、「台湾の生徒と話すために、中国語にもチャレンジしたい」という意見もあった。こういった機会をたくさん生徒に与えることによって、生徒の基礎学力のアップにつなげていきたい。
  • 専門高校においては課外活動も含めて、相当密な学習を行っている。
  • 様々なフィールドでの実体験を通して学ぶことができるということが、産業教育でしかできない特色である。
  • 基礎とは積み重ねではなく、高校生の年代では、まずゴールを目指して、とりあえず中途半端でもいいから最後までやってみて、できないことを徐々に減らしていくようなシェーピングや逆シェーピングといった学習方法が求められるのではないか。
  • 異分野の人々とチームを組んでやるような仕事が増えていくと考えたときに、そういう体験をさせておくことが、これから必要ではないか。
  • 専門高校の進路先として、大学を含む高等教育機関への進学の割合は非常に高くなっている。ほとんどの大学が普通科高校出身者を前提とした入学試験等を行っているが、専門高校での学びを大学がどのように評価するのかという大学側の努力も必要である。一方で、専門高校は、進学を希望する者については、共通教科も適切に編成する努力が必要である。
  • 文部科学省では、「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する有識者会議」が制度の具体化に向けて進んでいると思うが、専門高校で学んだ生徒がさらに学びを深め、高められるような新たな高等教育機関ができることを期待しており、これは国と地方自治体の協力があって、そういうことが可能になる。
  • オンキャンパスだけでは学習は完結せず、オンコミュニティをいかに使っていくか。これは指導の在り方等に入れておきたい。
  • 産業教育の持っている様々な力をどう意識し、どう伸ばしていくのか、そのときに閉じた高等学校の空間だけではなくて、企業、産業界との連携の中でそういった力をどう伸ばしていくのかということが必要である。
  • 将来のビジョンをどう描いていくかということが問われている。次の学習指導要領のあるべき姿を描き出そうとしているので、これから恐らく十数年後の社会を展望しなくてはいけない。特にグローバル化が進む中で、そういった将来ビジョンを持ちながら、現に社会の中で活躍している方々から、いかに生徒たちが学び得るか、そういう機会を設定することが特に重要である。
  • 時代の変化に常に対応していくためには、必要となる知識や基礎的な力も変化していかなければいけない。その際、学校現場で教えられることには限界があり、そういうときには、地域の企業や地域の人材をしっかり学校の中に入れていかなければ対応できない。
  • 専門学科で学ぶ生徒たちは、地域での活動や施設・企業での実習などを通して、さらに大きく成長できるのではないか。そのような社会とのつながりの中で、生徒たちは他人の気持ちを思いはかることやコミュニケーション能力を身に付けていく。人と接する中で成長させていくことが大切である。今後は、さらに一歩進んで、生徒の力を社会に活用することで社会の課題を解決していくような学習をしながら、より力を伸ばしていきたい。
  • 企業と学校の連携については、高校生の感想など企業にフィードバックをきめ細かに行うとうまくいくという話があり、学校側もそういうきめ細かな対応が求められる。


3.資質・能力の育成のために重視すべき評価

  • ルーブリックをどう作成していくのかということが大きな課題になるのではないか。学科や専攻によって育成すべき力が違ってくるため、各学校で育成すべき力を設定し、それをルーブリックに落とし込みながら生徒の成長をみとっていくという文化の醸成が、特に専門高校の中では必要になってくるのではないか。そうしたときに、国としてどのような支援を提供すべきかということも検討する必要がある。
  • ルーブリックの使い方も含めて、自ら気づいて自ら修正していく自己評価を高校の段階から徹底していくことにより、生徒は相当変わる可能性がある。
  • 職業に関する八つの教科で、共通に活用できる評価の仕組みを改めて検討する必要があるのではないか。


4.必要な支援、条件整備等

  • これからは学科の枠を超えた、お互いに良いところを学び合うといった形が必要になってくる。
  • 専門高校の教育の有用性について、15歳から18歳の非常に感性の豊かな時期に、体験的な学習としての専門教育を受ける意義は大きい。専門教育が今後も社会の中でしっかり位置付けられ、いろいろな分野へ行っても活躍できる資質・能力を専門高校は育成できるということをしっかりPRしていく必要がある。
  • 教員の研修の機会を増やしていくことが必要。その際、企業と連携して、例えば研修の講師になってもらうとか、あるいは学校の教員が企業に行って研修を受けるというようなシステムが必要である。
  • 教員の研修については、地域社会や民間企業の協力を得て実施する仕組みを作っていく必要がある。岐阜県では、若手の教員を対象として産業教育実地研修を実施しており、大体2か月から長い場合は1年間、民間企業や自治体等に派遣されて研修している。絶えず現在社会で起こっていることを学んで、それを学校現場へ戻って生かすという仕組みをもっと活用する必要がある。
  • 教員が社会の変化に本当についていけているか。教員も忙しい中で、社会に目を向ける時間が非常に限られてくる。ぜひ、教員が学ぶための時間や仕組みみたいなことも検討していかなければならない。
  • 例えば2割の教員が1年間、社会の変化に対応するための研修を受けようとしたら、2割教員を増やさなければ現場は回らない。今の教員は忙しくてそれどころではないという話をよく聞く。教員の数をもっと増やす必要があるのではないか。
  • 地域との密接な関係を作っていく上で、行政の関与は必須ではないか。行政としてどのような取組をすればうまく連携が進むのかということを、それぞれの地域で研究開発する必要がある。
  • 専門高校で学んだことが地域社会にどう生かされているか、地域社会へどう貢献できるかについては、その地域の産業界、さらには自治体の協力があってうまくいく。
  • 今後、新たな職業がどんどん生まれていくことから、これからは外を見る力がより求められ、産学の連携がさらに重要となる。このため、どういう人材を育成するのかを学校と産業界で定期的に協議する場が必要である。

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