中央教育審議会初等中等教育分科会 教育課程部会教育課程企画特別部会 論点整理(平成27年8月26日)<抜粋>

1.2030年の社会と子供たちの未来

(1)新しい時代と社会に開かれた教育課程

(社会に開かれた教育課程)
○ これからの教育課程には、社会の変化に目を向け、教育が普遍的に目指す根幹を堅持しつつ、社会の変化を柔軟に受け止めていく「社会に開かれた教育課程」としての役割が期待されている。
このような「社会に開かれた教育課程」としては、次の点が重要になる。
1 社会や世界の状況を幅広く視野に入れ、よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創るという目標を持ち、教育課程を介してその目標を社会と共有していくこと。
2 これからの社会を創り出していく子供たちが、社会や世界に向き合い関わり合い、自らの人生を切りひらいていくために求められる資質・能力とは何かを、教育課程において明確化し育んでいくこと。
3 教育課程の実施に当たって、地域の人的・物的資源を活用したり、放課後や土曜日等を活用した社会教育との連携を図ったりし、学校教育を学校内に閉じずに、その目指すところを社会と共有・連携しながら実現させること。
○ このためには、教育課程の基準となる学習指導要領及び幼稚園教育要領(以下「学習指導要領等」という。)も、各学校が「社会に開かれた教育課程」を実現していくことに資するものでなければならない。

2.新しい学習指導要領等が目指す姿

(2)育成すべき資質・能力について

1育成すべき資質・能力についての基本的な考え方
(資質・能力の要素)
○ これら三要素を議論の出発点としながら、学習する子供の視点に立ち、育成すべき資質・能力を以下のような三つの柱(以下「三つの柱」という。)で整理することが考えられる。教育課程には、発達に応じて、これら三つをそれぞれバランスよくふくらませながら、子供たちが大きく成長していけるようにする役割が期待されており、各教科等の文脈の中で身に付けていく力と、教科横断的に身に付けていく力とを相互に関連付けながら育成していく必要がある。
1)「何を知っているか、何ができるか(個別の知識・技能)」
各教科等に関する個別の知識や技能などであり、身体的技能や芸術表現のための技能等も含む。基礎的・基本的な知識・技能を着実に獲得しながら、既存の知識・技能と関連付けたり組み合わせたりしていくことにより、知識・技能の定着を図るとともに、社会の様々な場面で活用できる知識・技能として体系化しながら身に付けていくことが重要である。
2)「知っていること・できることをどう使うか(思考力・判断力・表現力等)」
問題を発見し、その問題を定義し解決の方向性を決定し、解決方法を探して計画を立て、結果を予測しながら実行し、プロセスを振り返って次の問題発見・解決につなげていくこと(問題発見・解決)や、情報を他者と共有しながら、対話や議論を通じて互いの多様な考え方の共通点や相違点を理解し、相手の考えに共感したり多様な考えを統合したりして、協力しながら問題を解決していくこと(協働的問題解決)のために必要な思考力・判断力・表現力等である。
特に、問題発見・解決のプロセスの中で、以下のような思考・判断・表現を行うことができることが重要である。
・問題発見・解決に必要な情報を収集・蓄積するとともに、既存の知識に加え、必要となる新たな知識・技能を獲得し、知識・技能を適切に組み合わせて、それらを活用しながら問題を解決していくために必要となる思考。
・必要な情報を選択し、解決の方向性や方法を比較・選択し、結論を決定していくために必要な判断や意思決定。
・伝える相手や状況に応じた表現。
3)「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか(学びに向かう力、人間性等)」
上記の1)及び1)の資質・能力を、どのような方向性で働かせていくかを決定付ける重要な要素であり、以下のような情意や態度等に関わるものが含まれる。
・主体的に学習に取り組む態度も含めた学びに向かう力や、自己の感情や行動を統制する能力、自らの思考のプロセス等を客観的に捉える力など、いわゆる「メタ認知」に関するもの。
・多様性を尊重する態度と互いのよさを生かして協働する力、持続可能な社会づくりに向けた態度、リーダーシップやチームワーク、感性、優しさや思いやりなど、人間性等に関するもの。

(3)育成すべき資質・能力と、学習指導要領等の構造化の方向性について

1学習指導要領等の構造化の在り方
(教育課程の総体的構造の可視化)
○ このように、思考力・判断力・表現力等や情意・態度等は、各教科等の文脈の中で指導される内容事項と関連付けられながら育まれていく。ただし、各教科等で育まれた力を、当該教科における文脈以外の、実社会の様々な場面で活用できる汎用的な能力に更に育てていくためには、総体的観点からの教育課程の構造上の工夫が必要になってくる。まさにその工夫が、各教科等間の内容事項についての相互の関連付けや、教科横断的な学びを行う「総合的な学習の時間」や社会参画につながる取組などを行う「特別活動」、高等学校の専門学科における「課題研究」の設定などに当たる。

4.学習指導要領等の理念を実現するために必要な方策

(1)「カリキュラム・マネジメント」の重要性

(教育課程全体を通しての取組)
○ これからの時代に求められる資質・能力を育むためには、各教科等の学習とともに、教科横断的な視点で学習を成り立たせていくことが課題となる。そのため、各教科等における学習の充実はもとより、教科等間のつながりを捉えた学習を進める観点から、教科等間の内容事項について、相互の関連付けや横断を図る手立てや体制を整える必要がある。
○ このため、「カリキュラム・マネジメント」を通じて、各教科等の教育内容を相互の関係で捉え、必要な教育内容を組織的に配列し、更に必要な資源を投入する営みが重要となる。個々の教育活動を教育課程に位置付け、教育活動相互の関係を捉え、教育課程全体と各教科等の内容を往還させる営みが、「カリキュラム・マネジメント」を支えることになる。
○ 特に、特別活動や総合的な学習の時間の実施に当たっては、カリキュラム・マネジメントを通じて、子供たちにどのような資質・能力を育むかを明確にすることが不可欠である。

5.各学校段階、各教科等における改訂の具体的な方向性

(2)各教科・科目等の内容の見直し

16特別活動
○ 特別活動は、学校で生活する子供たちにとって最も身近な社会である学級や学校における生活改善のための話合い活動や実践活動を通じて、主体的に社会の形成に参画しようとする態度や自己実現を図るために必要な力を養ったり、各教科等におけるグループ学習等の協働的な学びの基礎を形成したりする役割を果たしている。また、よりよい人間関係に基づく学級経営の充実を図る役割としても重要である。
自分たちが所属する集団や社会の充実と向上のため、教科等で身に付けた資質・能力を活用し、意見の違いや多様性を生かしつつ集団としての意見をまとめていく話合い活動などは、社会参画の意識や合意形成のための思考力・判断力・表現力等を養うものである。
○ また、特別活動は、特別教科化によってますます重視される道徳における問題解決的な学習や体験的な学習と相まって、道徳的実践のための重要な学習活動の場となるものである。特に、基本的な生活習慣や集団や社会との関わり方、人間関係などの問題について、何ができるかを考え、実行するなど、道徳的行為を促す上で、重要な役割を果たすものである。このような子供たちの主体的な活動は、いじめ等の未然防止などにもつながるものである。
○ こうした特別活動の意義については、開発途上国等に対する国際教育協力の現場等においても、我が国の教育課程の特徴として高い評価を受けているところである。次期改訂に向けては、教育課程におけるこうした意義を明確化するため、学級(ホームルーム)活動、児童会・生徒会活動、クラブ活動、学校行事のそれぞれを通じて、育成すべき資質・能力を明確化するとともに、各教科等との関係を整理していくことが求められる。

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