資料1 家庭、技術・家庭ワーキンググループ(第1回)における主な意見

【技術・家庭全体について】
○ 国連では、SDGs(持続可能な開発目標)が示されたところであり、今後、貧困問題やガバナンスも含めてどうあるべきかを考える態度を身に付けさせることが必要。このため、持続可能な開発やグローバル化といった文言を明示していくとよいのではないか。
    倫理や公正さというものを考えるようにしていきたい。18歳選挙権が実現し、1票投じることがどのような社会選びになるのかを理解させていく必要がある。最近は自動車会社の不祥事や建築会社のくい打ち問題など倫理観が欠如した状況もみられる。これらのことについて大人がきちんと回答していかないと、自分のよりよい人生を考えようとはならない。

【家庭科教育について】
○ 高校家庭科では、少子高齢化、環境問題、グローバル化への対応や家族の問題など現代社会にかかわる課題を扱っている。特に、ホームプロジェクトや学校家庭クラブは、家庭科を通じた学びを実践して課題を解決していく力を養うものである。このような取組の中には、地域を動かすエンジンの働きをしているものもあり、課題解決の力を養うことはますます重要である。また、学校経営者の立場としてみると、地域に開かれた学校経営という観点からも重要な時間と考える。家庭基礎2単位を履修させる学校が増える中、どのように授業を充実させるかが課題である。

○ 主に0~3歳児を受け入れる親子の交流広場(地域子育て支援拠点)を運営しているが、近隣の連携している高校では、学年ごとに取組方を決めていて、授業の一環で手作りのおもちゃなど作ってくるなどの交流がある。また県立高校の取り組みとして学生はボランティアで単位が取れるので、ボランティア活動にくる生徒がいる。取り組んだ生徒にとっては、大学進学など進路選択にもつながる経験になっているようだ。盛んに取り組む学校とそうではない学校の違いが大きい。中学校では、職業体験的に取り組む学校もみられる。横浜市の調査では、子供が生まれる者に乳幼児にかかわる経験があるかと尋ねたところ、四人中三人はないという。経験を積むことは重要で、一歩踏み込んだ関わりに取り組むことが必要である。少子高齢化や生涯未婚率の割合が増えており、家庭で経験することが難しくなっているので、家族をもつということの価値観について、学校の役割の重要性を感じている。

○ 高齢者や幼児のいない家庭が多い。学校は同年齢の者同士が集まっており、リーダー的な立場の子もいれば付いていく子もいる。幼児触れ合い体験を通じて、生徒は今まで面倒をみてもらう立場から、面倒をみる立場を経験することになる。このことにより、どの子も自己有用感を感じることができ、教育効果は高いと考える。様々な家庭状況の中、家庭の中で自立に必要なことが伝承されていくことが難しいところもある。小学5年の家庭科の授業で初めて針と糸や包丁を持ったり、中学校2年で洗濯機を初めて使ったりする。今の家庭では、昔は当たり前であった、うどんをうったり、だしをとったり、ミシンを使うといった経験が積めなくなっていることから、学校で指導することは生活文化を継承させる意義もある。その際、地域人材の活用が重要である。家庭科は社会とかかわりをもてる教科である。

○ 小学校は6歳から12歳までの児童が在籍し、発達の違いが最も大きい。社会に出て健全に生きる素地を養うことを目指して、学力の充実、ルールや規範意識、健康な体で生きることついても指導が行われているが、その中で家庭科の果たす役割は重要である。課題意識をもって、自分の家庭生活や社会に目を向けるということが指導されている。 家庭科では、買物の学習をするが、モノの値段が毎日変わることを知る。そのことは、社会科で学ぶ流通や農業などに視野が広がるきっかけにもなる。家庭科では、課題意識をもって生活を見つめる目を養うことが重要である。

○ 経済格差が大きく経済的に困難な家庭も多い。家庭科は家庭と連携して実践することが重要と言われるが、実際できていないところもある。実践をしないと教科の本質が成り立たない。家庭の機能は昔のようには回復しないとの考えもあり、実践する場のない家庭をどのように受け止めていくかが課題である。中学の生活の課題と実践、高校のホームプロジェクトのような取組を、小学校でも実現できるとよい。アクティブラーニングを全教科で進めていくとなると家庭科の特徴は薄れていくが、実践化を図る上では家庭科での取組を通じて生活価値観を作っていくことが重要である。学習内容が盛りだくさんであるから、規定を大綱化することが必要。カリキュラムマネジメントの在り方を踏まえ、教員全体に共通理解を図っていくことが重要である。

○ 生活から離れないというのが、家庭科の特徴である。例えば、スクールシューズを買うことになっている学校で、はきにくい、よごれ、足のつかれなどの課題をもとに、どのような靴が欲しいかを考える取組がある。消費者の視点から考えるものである。また、スーパーに出かけてモノの値段をみるなど、子供に選択する力を養っている。中高校の家庭科では、エシカルコンシューマーを育む指導もみられるところ。フェアトレードや児童労働問題も取り扱うが、問題は時間がないこと。 アクティブラーニングには、家庭科はこれまでも取り組んできたが、問題解決の部分をどこまで丁寧にやっていくかが重要である。思考力、判断力、問題解決力は家庭科で取り組んできたところである。今後、他教科との関わりの中でどのように進めていけるか可能性が楽しみである。

○ 先の学習指導要領改訂で、総則に食育の推進が規定された。食育は教科横断的に進めていく必要があり、小学校ではかなり取組が進められているが、中高校はこれからである。その中で、小学校では、いろいろな教科での取組が5年の家庭科で整理することになるが、それは家庭科ならでは取組である。食は健康のためにあるのであり、間違うと健康を阻害することになる。このような指導の中で、倫理的なことも学ぶことができる。
家庭により事情は様々であり、児童生徒個々に課題は異なる。食についてはこうでないといけないということはないが、理由をもって実践できる力を育むことが必要である。

○ 衣食住を媒介として考えている。衣はライフスタイルを表現する手段であり、生活を多面的に考えることのできる教材である。生徒はあふれるモノの中で生活をしているが、モノを十分見つめられていない。背景にある文化や科学技術を受け身的に受け入れている。なぜその形なのか、その素材なのかを根拠をもって考えさせることが必要である。そのため、思考力育成を意図した問いかけと題材構成が課題である。学校におけるものづくりの意義を考える必要がある。取組の中で、生活の土台となる感性を育むことにもなる。

【技術教育について】
○ 技術ガバナンスの力を育むことは国民的な課題である。例えば、夏にエアコンを使うが、快適に過ごすために職場にいる間から自宅を冷やすこととする。すると、CO2はそれだけ多く排出されることとなる。トレードオフになりがちな関係性の中で、日本に住む1名としてどのように生活すべきなのかを考えることが必要。また、古いエアコンを使い続けるのもよいが、環境に配慮した新しいエアコンを使うこともよい。新しい技術をどのように導入していくか。原発が駄目ならどのような技術開発をするか。新しい時代、新しい技術をどのように作り出していくかを考えるのは技術教育しかない。インターネットにはマイナスの側面もある。新しいサービスにはよくないものも出てくるだろうが、それをどう取り扱うか。誰がどこでどう選ぶかは、国民一人一人であるべきだ。無条件ではなく、使う国民に判断するための知識を能力を身に付けさせることが必要である。

○ 2030年には、人工知能の進化や産業構造の変化など、技術は相当変化しているだろう。そのような中で、技術をどのように使うかを指導することは重要。少ない時間数の中で、アクティブラーニングを通じてできる限り取り組んでいく。政府の成長戦略ではIT人材の養成と言われているが、中高の情報はつながっていない。両者を連携させて指導することが必要である。情報をどのように使っていくか。知識の習得が目的ではない。技術教育の指導を深めていくことが重要である。

○ ダイソンでは財団をイギリスにおいてエンジニアリングの教育を支援してきた。イギリスでは小学校から技術を指導するが、日本では中学校のみである。日本の生徒には、技術が生活の一部という意識が少ないようだ。取組としては、機械を分解して、また組み立てるというもの。その中で、ドライバーの使い方を含めて学ぶ。また、エンジニアリングの考え方を学ぶ。そのような取組の上で、生徒に生活の中で問題を見つけさせるのだが、その指導が難しく教師は困っている。生徒が考えるとビックリするような発想が出てくるが、教師が受け止めることが難しい。技術開発はチームワークで行うが、そこも総合的に学べるのは技術教育である。技術教育の課題としては、授業時間が少ないことと、教師が孤立していることである。

○ 技術・家庭科は子供が大好きな教科だと実感している。今回提言されているカリキュラムを構成する三つの柱では、「どのように社会・世界と関わっていくか」という点が重要である。できなかったことができるようになるということを実感したり、そのことを周りの者に認められたりすることもできる教科である。技術・家庭科ではこれまでもアクティブラーニングに取り組んできたが、形だけにとらわれないよう慎重に捉えていく必要がある。生徒が集まって簡単に話合いを行うことをもってよしとしてはいけない。何のためにアクティブラーニングに取り組むのかきちんと示していくことが必要である。

○ 時代とともに教育内容が変わるのが技術の特徴。10年たてば指導内容、タイトル自体が変わっている。必要な指導内容をどのように捉えるかが重要である。技術教育の中で変わらないものは、制約条件の中で最適解を求める力である。育むべき資質・能力としては、1課題解決の態度、2技術を評価する力、3手先の巧緻性、4社会参画のキャリアをどのように積ませるか、などということであろう。技術教育では、アクティブラーニングには以前から取り組んできた自負心があるが、三つの柱のうち、課題解決には取り組んできたが、協働性や主体性は更に考えていく必要がある。

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