企画特別部会論点整理(抜粋)

中央教育審議会初等中等教育分科会 教育課程部会教育課程企画特別部会 論点整理(平成27年8月26日)<抜粋>

2.新しい学習指導要領等が目指す姿

(3)育成すべき資質・能力と、学習指導要領等の構造化の方向性について

1 学習指導要領等の構造化の在り方
(教育課程の総体的構造の可視化)
○ このように、思考力・判断力・表現力等や情意・態度等は、各教科等の文脈の中で指導される内容事項と関連付けられながら育まれていく。ただし、各教科等で育まれた力を、当該教科における文脈以外の、実社会の様々な場面で活用できる汎用的な能力に更に育てていくためには、総体的観点からの教育課程の構造上の工夫が必要になってくる。まさにその工夫が、各教科等間の内容事項についての相互の関連付けや、教科横断的な学びを行う「総合的な学習の時間」や社会参画につながる取組などを行う「特別活動」、高等学校の専門学科における「課題研究」の設定などに当たる。

4.学習指導要領等の理念を実現するために必要な方策

(1)「カリキュラム・マネジメント」の重要性

○ 教育課程とは、学校教育の目的や目標を達成するために、教育の内容を子供の心身の発達に応じ、授業時数との関連において総合的に組織した学校の教育計画であり、その編成主体は各学校である。各学校には、学習指導要領等を受け止めつつ、子供たちの姿や地域の実情等を踏まえて、各学校が設定する教育目標を実現するために、学習指導要領等に基づきどのような教育課程を編成し、どのようにそれを実施・評価し改善していくのかという「カリキュラム・マネジメント」の確立が求められる

○ 特に、今回の改訂が目指す理念を実現するためには、教育課程全体を通した取組を通じて、教科横断的な視点から教育活動の改善を行っていくことや、学校全体としての取組を通じて、教科等や学年を越えた組織運営の改善を行っていくことが求められており、各学校が編成する教育課程を核に、どのように教育活動や組織運営などの学校の全体的な在り方を改善していくのかが重要な鍵となる。


(三つの側面)
○ こうした「カリキュラム・マネジメント」については、これまで、教育課程の在り方を不断に見直すという下記(2)の側面から重視されてきているところであるが、「社会に開かれた教育課程」の実現を通じて子供たちに必要な資質・能力を育成するという新しい学習指導要領等の理念を踏まえ、これからの「カリキュラム・マネジメント」については、以下の三つの側面から捉えられる。
<1>各教科等の教育内容を相互の関係で捉え、学校の教育目標を踏まえた教科横断的な視点で、その目標の達成に必要な教育の内容を組織的に配列していくこと。
<2> 教育内容の質の向上に向けて、子供たちの姿や地域の現状等に関する調査や各種データ等に基づき、教育課程を編成し、実施し、評価して改善を図る一連のPDCAサイクルを確立すること。
<3>教育内容と、教育活動に必要な人的・物的資源等を、地域等の外部の資源も含めて活用しながら効果的に組み合わせること。

(教育課程全体を通しての取組)
これからの時代に求められる資質・能力を育むためには、各教科等の学習とともに、教科横断的な視点で学習を成り立たせていくことが課題となる。そのため、各教科等における学習の充実はもとより、教科等間のつながりを捉えた学習を進める観点から、教科等間の内容事項について、相互の関連付けや横断を図る手立てや体制を整える必要がある。

○ このため、「カリキュラム・マネジメント」を通じて、各教科等の教育内容を相互の関係で捉え、必要な教育内容を組織的に配列し、更に必要な資源を投入する営みが重要となる。個々の教育活動を教育課程に位置付け、教育活動相互の関係を捉え、教育課程全体と各教科等の内容を往還させる営みが、「カリキュラム・マネジメント」を支えることになる。

○ 特に、特別活動や総合的な学習の時間の実施に当たっては、カリキュラム・マネジメントを通じて、子供たちにどのような資質・能力を育むかを明確にすることが不可欠である。


5.各学校段階、各教科等における改訂の具体的な方向性

(1)各学校段階の教育課程の基本的な枠組みと、学校段階間の接続

1 小学校
○ 幼児教育と小学校教育の接続に関しては、全ての教科等において幼児教育との接続を意識した教育課程を編成したり、幼児教育の特色を生かした総合的な指導方法を取り入れたりするなど、スタートカリキュラムの編成等を通じて、幼児教育との接続の充実や関係性の整理を図る必要がある。また、中学校教育との接続については、下記(3)にも示すように、小中一貫教育の制度化に関係する動き等も踏まえた検討が必要である。こうした接続を確かなものとするため、接続を担当する教員のみならず、小学校全体の教職員による取組が求められる。

(2)各教科・科目等の内容の見直し

6 生活
○ 生活科においては、人や社会、自然と関わる活動を充実し、自分自身についての理解などを深める観点から、現行の学習指導要領に改訂され、その充実が図られてきているところである。

幼児教育との円滑な接続を図るスタートカリキュラムの中核となる教科として位置付けられるものであり、引き続きこの観点からの充実を図るとともに、中学年以降の各教科等や低学年における他教科等において育成される資質・能力との関係性を、三つの柱に沿って明確化していくことが求められる。

17 総合的な学習の時間
○ 総合的な学習の時間は、変化の激しい社会に対応して、自ら課題を見付け、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、よりよく問題を解決する資質や能力を育成することなどをねらいとしており、各教科等で行われる基礎的・基本的な知識・技能の習得や学習活動等を前提としながら、実社会や実生活との関わりを重視した、教科横断的・総合的な探究活動等を行うものである。

○ こうした教科横断的な学びは、学校において身に付けた資質・能力を、実社会で活用できるより汎用的な資質・能力に変えていくために欠かすことのできないものであり、次期改訂に向けた学習指導要領の構造化の観点からは、総合的な学習の時間における教科横断的な学びと、各教科における学習を相互に関連付けながら充実を図っていくことが、育成すべき資質・能力を身に付けていくための重要な鍵となる。また、総合的な学習の時間は、各教科等単独では取り組むことの難しい様々な現代的な課題に対応した教育を行うための核となる時間であり、こうした課題を、各教科等において身に付けた力を活用しながら探究的に学ぶ機会を確保する上で重要な役割を果たしている(※1)。

○ こうした総合的な学習の時間の役割は、クロスカリキュラムによる子供主体の活動を中心とした学習により、PISAにおける好成績につながったのみならず、学習に対する姿勢の改善に大きく貢献するものとして、OECDをはじめ国際的にも高く評価されているところである(※2)。

○ 次期改訂に向けては、教育課程におけるこうした意義を明確化するため、各教科等の学習とより一層関連を図りながら、教科横断的な思考のために必要なスキルなど、総合的な学習の時間を通じて育成すべき資質・能力を発達の段階に応じて明確化するとともに、各教科等との関係を整理していくことが求められる



※1 なお、当部会の議論においては、次期改訂において目指す資質・能力を育む観点からは、教科学習と教科横断的な学びのバランスを図る観点から、総合的な学習の時間の授業時数を現在よりも増やすべきとの意見もあったところである。
※2 補足資料107ページ参照。

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