資料6 委員提出資料 尾崎委員

知的障害のある児童生徒のための各教科等の指導の現状と課題

植草学園大学 教授 尾崎祐三

はじめに
第1回の特別支援教育部会で配付された教育課程企画特別部会の論点整理を踏まえた上で、特別支援学校の教育課程に係る検討課題例の「丸3知的障害のある児童生徒のための各教科の改善・充実について」を検討するに当たっての、「知的障害のある児童生徒のための各教科等の指導の現状と課題」について、資料を提供する。

検討課題1
これからの時代に求められる資質・能力を踏まえ、知的障害のある児童生徒のための各教科の目標、内容、指導方法、配慮事項、学習評価などをどのように示していくことが考えられるか。

1 知的障害のある児童生徒のための各教科の目標・内容
【論点整理】 1.2030年の社会と子供たちの未来(1)新しい時代と社会に開かれた教育課程
○ 学校とは、社会への準備段階であると同時に、学校そのものが、子供たちや教職員、保護者、地域の人々などから構成される一つの社会でもある。子供たちは、学校も含めた社会の中で、生まれ育った環境に関わらず、また、障害の有無に関わらず、様々な人と関わりながら学び、その学びを通じて、自分の存在が認められることや、自分の活動によって何かを変えたり、社会をよりよくしたりできることなどの実感を持つことができる。
○ そうした実感は、子供たちにとって、人間一人一人の活動が身近な地域や社会生活に 影響を与えるという認識につながり、これを積み重ねることにより、地球規模の問題にも関わり、持続可能な社会づくりを担っていこうとする意欲を持つようになることが期待できる。学校はこのようにして、社会的意識や積極性を持った子供たちを育成する場なのである。
【各教科の指導の現状と課題】
知的障害教育の各教科は、子供たちが自立し社会参加するために必要な知識や技能、態度などを身に付けることを重視し、各教科の目標・内容が示されている。例えば、小学部の生活科では「集団生活への参加に必要な態度や技能を養う」、中学部の社会科では「社会生活に必要な基礎的な能力や態度を育てる」、職業・家庭科では「職業生活や家庭生活に必要な基礎的な知識と技能の習得を図り、実践的な態度を育てる」を目標にするなど、学校も含めた社会の中で、人と関わりながら社会生活や家庭生活に必要な事項を学ぶ実践が行われている。現行の学習指導要領の第2章第1節第2款(高等部は、第2章第2節第1款)に知的障害者である児童に対する教育を行う特別支援学校の第2(高等部は第2章第2節第3款)に指導計画の作成と各教科全体にわたる内容の取扱いが示されている。
今後は、小学校等の各教科の改善・充実や教育課程の改訂の動向を踏まえながら、知的障害教育の全ての教科で育成すべき資質・能力の三つの柱に沿った、各教科の目標・内容の検討が必要である。また、各教科等を合わせた指導の形態である日常生活の指導や生活単元学習、作業学習においても、各教科等で求められる資質・能力を育成できることを明確に示す必要もある。

2 知的障害のある児童生徒のための教育課程の編成
【論点整理】 1.2030年の社会と子供たちの未来(2)前回改訂の成果と次期改訂に向けた課題
○ つまり、これまでの学習指導要領は、知識や技能の内容に沿って教科等ごとには体系化されているが、今後は、さらに、教育課程全体で子供にどういった力を育むのかという観点から、教科等を越えた視点を持ちつつ、それぞれの教科等を学ぶことによってどういった力が身に付き、それが教育課程全体の中でどのような意義を持つのかを整理し、教育課程の全体構造を明らかにしていくことが重要となってくる。
○ 目指す方向は、教科等を学ぶ本質的な意義を大切にしつつ、教科等間の相互の関連を図ることによって、それぞれ単独では生み出し得ない教育効果を得ようとする教育課程である。そのために、教科等の意義を再確認しつつ、互いの関連が図られた、全体としてバランスのとれた教育課程の編成が課題とされるのである。
○ こうした方向性に基づき、各学校が目指す教育目標を教育課程として具体化し、これまでの学力向上に向けた真摯な取組の成果を更に伸ばしつつ、学校生活において子供たちが身に付ける資質・能力全体に目を向け、教育実践の工夫や改善を図っていくことができるよう、そのための手掛かりとなり得る学習指導要領等が求められている。
【教科等の指導の現状と課題】
知的障害教育の教科の目標と内容は学校生活、家庭生活、地域生活、職業生活等に必要な知識、技能、態度等を養えるように体系化されている。また、知的障害教育においては、学校教育法施行規則第130条第2項により、各教科等を合わせて授業を行うことができるので、学習指導要領の総則では、各教科等を合わせた指導を行う場合は、「各教科、道徳、特別活動及び自立活動に示す内容を基に、児童又は生徒の知的障害の状態や経験等に応じて、具体的に指導内容を設定するものとする」と述べられている。学習指導要領解説では、「各教科等を合わせて指導を行う場合」の項で、日常生活の指導、遊びの指導、生活単元学習、作業学習の定義や考慮することについて説明している。
今後は、教育課程の可視化の視点から、更に教科間相互の関連を図る教育課程にするためにも、
学習指導要領に、各教科等を合わせた指導である日常生活の指導、遊びの指導、生活単元学習、作業学習を教科間の相互の関連を図って展開するに当たっての留意事項について記述することや、学習指導要領の解説においては、合わせた指導の基本的な考え方や授業づくりにおける配慮事項について説明することなどを検討する必要がある。とりわけ、合わせた指導においても、各教科間の関連を重視した上で、合わせた指導と各教科等で示された目標や内容との関連を示す方法や、教育課程や学習・指導方法の改善と一貫性をもつ形で学習評価の在り方についても検討する必要がある。

3 知的障害のある児童生徒の指導方法
【論点整理】 2.新しい学習指導要領等が目指す姿(3)育成すべき資質・能力と、学習指導要領等の構造化の方向性について 丸2学習活動の示し方や「アクティブ・ラーニング」の意義等
○ 前略・・身に付けた個別の知識や技能も、そうした学習経験の中で活用することにより定着し、既存の知識や技能と関連付けられ体系化されながら身に付いていき、ひいては生涯にわたり活用できるような物事の深い理解や方法の熟達に至ることが期待される。
○ また、こうした学びを推進するエンジンとなるのは、子供の学びに向かう力であり、これを引き出すためには、実社会や実生活に関連した課題などを通じて動機付けを行い、子供たちの学びへの興味と努力し続ける意志を喚起する必要がある。
○ このような中で次期改訂が学習・指導方法について目指すのは、特定の型を普及させることではなく、下記のような視点に立って、学び全体を改善し、子供の学びへの積極的関与と深い理解を促すような指導や学習環境を設定することにより、子供たちがこうした学びを経験しながら、自信を育み必要な資質・能力を身に付けていくことができるようにすることである。―中略―
1)習得・活用・探究という学習プロセスの中で、問題発見・解決を念頭に置いた深い学びの過程が実現できているかどうか。―中略―
2) 他者との協働や外界との相互作用を通じて、自らの考えを広げ深める、対話的な学びの過程が実現できているかどうか。―中略―
3)子供たちが見通しを持って粘り強く取り組み、自らの学習活動を振り返って次につなげる、主体的な学びの過程が実現できているかどうか。

【教科等の指導の現状と課題】
知的障害教育においては、児童生徒の知識・理解の程度を十分に踏まえてそれらを活用しながら、体験的な活動を通して、児童生徒が将来、自立し社会参加をするために必要な知識、技能、態度等を育成する指導を行っている。また、現行の学習指導要領の解説書では、知的障害のある児童生徒の学習上の特性等を踏まえると、実際的・具体的な内容の指導が必要であることや、教材・教具や補助用具を含めた学習環境の効果的な設定など、知的障害のある児童生徒の学習活動への主体的な参加や経験の拡大を促してくことが大切であるとしており、このような実践が積み上げられている。
今後は、実社会や実生活に関連した課題に着目し、それぞれの児童生徒にとって、基礎的・基本的な知識・技能等の確実な定着やその活用を図る学習活動の充実をより一層重視し、子供たちの学びへの興味と努力し続ける意志や意欲を喚起する必要がある。例えば、論点整理で言っている学びの過程の1)との関連では、知的障害のある児童生徒には、生活に結びついて技能や知識を活用し、これまでの経験を踏まえ解決策を探究するという学習プロセスの中で、生活上の課題の発見・解決を通した学びの過程がみられる授業の推進をすることが必要である。具体的には、子供の興味のある生活上の課題の学習を発展させ、課題が見えるようにするとともに、解決策について考えられるようにして、課題と解決策を文章化し、それに基づいて取り組み、その成果によって達成感を味わえるようにすることなどが考えられる。2)との関連では、学習集団の中で話し合いながら協働したり、積極的に校外に出かけ、周りの人の意見などを聴いたりしながら、自分の果たすべき役割について考えるなど、対話的な学びの過程が見られる授業の推進をすることが必要である。具体的には、子供の興味・関心のあることを、グループ学習で一緒に調べたり、日常会話の中で感想を言い合ったりする中で、協働で学習する楽しさを体感できるようにする。また、校外に出かけたときは、周りの人に質問をして答えを聴いたり、自分のやっていることを周りの人に説明したりするなど、積極的に対話を楽しめる学習を組み立てるようにすることも考えられる。3)との関連では、自分の目標を立て、それを達成するための取り組み方を考えたり、自らの学習活動を振り返ったりして、いつも自分からする主体的な学びの過程が見られる授業の推進が必要である。具体的には、自分の目標や学習方法を板書やノートに記述することで見える化することや、ビデオや写真を使って、自分の姿を振り返るようにしたりすることが考えられる。その際、取り組み方の修正については、本人の考えを聴き、実際にその方法を試してみることを繰り返すなどの支援を行ったり、うまくいった場合についても、自分のやり方を評価できるようにする支援を行ったりすることも考えられる。
このような学びの過程を充実させる際には、子供たちの障害の状態や特性等を十分に考慮していくことが必要であり、指導上の配慮事項にかかる記載内容を充実させていくことが考えられる。

4 知的障害のある児童生徒のための各教科の学習評価
【論点整理】 3.学習評価の在り方について
○ 学習評価は、学校における教育活動に関し、子供たちの学習状況を評価するものである。「子供たちにどういった力が身に付いたか」という学習の成果を的確に捉え、教員が指導の改善を図るとともに、子供たち自身が自らの学びを振り返って次の学びに向かうことができるようにするためには、この学習評価の在り方が極めて重要であり、教育課程や学習・指導方法の改善と一貫性を持った形で改善を進めることが求められる。
○ 子供たちの学習状況を評価するために、教員は、個々の授業のねらいをどこまでどのように達成したかだけではなく、子供たち一人一人が、前の学びからどのように成長しているか、より深い学びに向かっているかどうかを捉えていくことが必要である。
○ 今後、小・中学校を中心に定着してきたこれまでの学習評価の成果を踏まえつつ、目標に準拠した評価を更に進めていくためには、学校教育法が規定する三要素との関係を更に明確にし、育成すべき資質・能力の三つの柱に沿って各教科の指導改善等が図られるよう、評価の観点については、「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点に沿った整理を検討していく必要があると考える。
【教科等の指導の現状と課題】
知的障害教育においても観点別学習状況の評価の4観点で学習評価を行うことの有効性については、国立特別支援教育総合研究所が平成26年度に行った「知的障害教育における組織的・体系的な学習評価の推進を促す方策に関する研究」において明らかになっている。特に、観点別学習評価の4観点で分析的に学習状況の評価をし、それを総括することによって子供の成長を捉えることとしている。
今後は、知的障害教育においても、育成すべき資質・能力の三つの柱に沿って各教科における子供の学習状況を分析的に捉える評価の観点に沿った整理を検討する必要がある。

5 知的障害のある児童生徒のための各教科等の配慮事項
【論点整理】 4.学習指導要領等の理念を実現するために必要な方策 (1)「カリキュラム・マネジメント」の重要性
○ 前略・・「社会に開かれた教育課程」の実現を通じて子供たちに必要な資質・能力を育成するという新しい学習指導要領等の理念を踏まえ、これからの「カリキュラム・マネジメント」については、以下の三つの側面から捉えられる。
ア 各教科等の教育内容を相互の関係で捉え、学校の教育目標を踏まえた教科横断的な視点で、その目標の達成に必要な教育の内容を組織的に配列していくこと。
イ 教育内容の質の向上に向けて、子供たちの姿や地域の現状等に関する調査や各種データ等に基づき、教育課程を編成し、実施し、評価して改善を図る一連のPDCAサイクルを確立すること。
ウ 教育内容と、教育活動に必要な人的・物的資源等を、地域等の外部の資源も含めて活用しながら効果的に組み合わせること。
【教科等の指導の現状と課題】
知的障害教育における学習評価を軸にして、学習指導に関わるPDCAサイクルで実施することの有効性については、前述の学習評価の研究成果で明らかになっている。その中で、組織的・体系的な学習評価を行うことにより、授業レベルや単元レベル、更にそれらを集約して教育課程レベルでPDCAサイクルによる改善が図れることについても明らかにしている。
今後は、知的障害教育においても、授業レベルや単元レベルの情報だけではなく、教育活動に必要な人的・物的資源等の活用についての情報を基にした、教育課程の編成段階での評価・改善を実施する必要がある。

検討課題2
障害の状態等に応じた指導の充実を図るため、小学部・中学部・高等部の各教科について、どのような充実が必要か

6  小学部・中学部・高等部の教育課程のつながり
【論点整理】 2 .新しい学習指導要領等が目指す姿 (3)育成すべき資質・能力と、学習指導要領 等の構造化の方向性について 丸1 学習指導要領等の構造化の在り方
○ このような資質・能力と各教科等との関係を踏まえれば、学習指導要領の全体構造を検討するに当たっては、教育課程全体でどのような資質・能力を育成していくのかという観点から、各教科等の在り方や、各教科等において育成する資質・能力を明確化し、この力はこの教科等においてこそ身に付くのだといった、各教科等を学ぶ本質的な意義を捉え直していくことが重要である。そして、各教科等で育成される資質・能力の間の関連付けや内容の体系化を図り、資質・能力の全体像を整理していくことが同じく重要であり、教育課程の全体構造と各教科等を往還的に整理していく必要がある。
○ あわせて、教科等間の横のつながりとともに、「義務教育を終える段階で身に付けておくべき力は何か」や「18歳の段階で身に付けておくべき力は何か」という観点から、初等中等教育の出口のところで身に付けておくべき力を明確にしながら、幼・小・中・高の教育を、縦のつながりの見通しを持って系統的に組織していくことも重要である。つまり、各教科等で学校や学年段階に応じて学ぶことを単に積み上げるのではなく、義務教育や高等学校教育を終える段階で身に付けておくべき力を踏まえつつ、各学校・学年段階で学ぶべき内容を見直すなど、発達の段階に応じた縦のつながりと、各教科等の横のつながりを行き来しながら、学習指導要領の全体像を構築していくことが必要である。
【教科等の指導の現状と課題】
知的障害教育においては、教育課程全体で、学校生活、家庭生活、地域生活、職業生活等に必要な知識、技能、態度等を育成している。今後は、通常の教育の各教科等との関連を踏まえ、知的障害教育の各教科等との関連付けや内容の体系化を図り、各学部段階で学ぶべき内容を整理していくことが重要であり、教育課程の全体構造と各教科等を往還的に整理していく必要がある。
知的障害教育の各教科は小学部3段階、中学部1段階、高等部2段階で各教科の内容が示されている。また、中学部・高等部段階では、社会的・職業的自立に向けて身に付けておくべきことが示されている。今後は、発達の段階に応じた縦のつながりと、各教科の横のつながりを行き来しながら、知的障害教育の学習指導要領の全体像を構築する必要がある。その際、発達の段階に応じた縦のつながりが明確になるように、また、小6年、中3年、高3年の期間も考慮し、特に中学部の段階について検討する必要がある。
特別支援学校の学習指導要領では、重複障害者等に関する教育課程の取扱いとして、当該学年の前各学年の目標及び内容、当該学部の前学部の目標内容に替えることができる。今後は、自立や社会参画に向けて必要な資質・能力を身に付ける視点や発達の段階に応じた縦のつながりと学びの連続性の視点で、この規定の在り方や運用の仕方を検討する必要がある。

7  小学部段階からのキャリア教育の充実
【論点整理】 5.各学校段階、各教科等における改訂の具体的な方向性 (1)各学校段階の教育課程の基本的な枠組みと、学校段階間の接続
○ 特別支援学校においては、近年特に高等部生徒数の増加や、在籍する知的障害のある児童生徒数の増加がみられるなど、障害の状態の多様化に対応した特別支援学校学習指導要領の改善・充実が必要である。特に、幼児児童生徒の発達の段階に応じた自立活動の改善・充実、これからの時代に求められる資質・能力を踏まえた、障害のある 幼児児童生徒一人一人の進路に応じたキャリア教育の充実、知的障害のある児童生徒のための教科の改善・充実を図ることが求められる。
【教科等の指導の現状と課題】
高等部生徒数の増加や障害の状態の多様化に対応するため、高等部では進路に応じた職業教育を含む教育課程を類型化して実施することが多く行われている。また、小学部から高等部までを見通した児童生徒のキャリア発達を支援するキャリア教育を実施している特別支援学校も増えてきている。今後は、小学校等の各教科の目標と内容の整理の仕方を踏まえ、キャリア発達を支援する視点からも知的障害教育の各教科の改善充実を図ることが必要である。

検討課題3
小中学校における特別支援学級に在籍し、これらの教科を学ぶ児童生徒のためにどのような示し方の改善が考えられるか

8  学びの連続性の確保
【論点整理】 2.新しい学習指導要領等が目指す姿 (2)育成すべき資質・能力について 丸3 発達の段階や成長過程のつながり
○ また、近年は特別支援学校だけではなく小・中・高等学校等において発達障害を含めた障害のある子供たちが学んでおり、特別支援教育の対象となる子供の数は増加傾向にある。障害者の権利に関する条約に掲げられたインクルーシブ教育システムの理念を踏まえ、子供たちの自立と社会参加を一層推進していくため、通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校といった、連続性のある「多様な学びの場」において、 子供たちの十分な学びを確保していく必要があり、一人一人の子供の障害の状態や発達 の段階に応じた指導を一層充実させていく必要がある。
○ そうした発達の段階に応じて積み重ねていく学びの中で、地域や社会と関わり、様々な職業に出会い、社会的・職業的自立に向けた学びを積み重ねていくことが重要である。
○ 加えて、幼小、小中、中高の学びの連携・接続についても、学校段階ごとの特徴を踏まえつつ、前の学校段階での教育が次の段階で生かされるよう、学びの連続性が確保されることが重要である。
【教科等の指導の現状と課題】
小学校等の各教科と同じ名称であっても、知的障害教育の各教科の目標と内容は別に示されている。特別支援学級に在籍している児童生徒は、小学校等の各教科を学び、知的障害教育の各教科を参考にすることができる。
今後は、小学校等の各教科を通して育成される資質・能力と知的障害教育の各教科を通して育成される資質・能力については、同じものであると考えられるようになる。具体的に言えば、小学校の算数の問題で三角形や平行四辺形などの直方体をなどの体積を求めて、それぞれを比較することと、小学部の知的障害教育の算数の中で、身近にある実物を使い、その大きさを比較したりして、解決にいたる過程でみにつく能力、例えば、「問題解決能力」は同じであると考えられる。すなわち、育成すべき資質・能力は基本的には、同じものであり、その中で、知的障害のある児童生徒の学習上の特性や生活経験、社会性、職業能力等の状態を考慮しながら、体系化されたものが知的障害教育の各教科であると考えることができる。したがって、両方の教科において連続性のある学びを確保するためには、知的障害教育の各教科の目標・内容について、小学校等の各教科の目標・内容と関連づけて整理していくことが必要である。さらに、小・中・高の連続性を踏まえた上で、各教科で育成すべき資質・能力を整理する必要がある。

9  学校段階間の接続
【論点整理】 5.各学校段階、各教科等における改訂の具体的な方向性 (1)各学校段階の教育課程の基本的な枠組みと、学校段階間の接続
○ こうした改善・充実を図るとともに、連続性のある「多様な学びの場」における子供たちの十分な学びを確保していく観点から、一人一人の子供たちが、それぞれの障害の状態や発達の段階に応じた学びの場における教育課程を通じて、自立や社会参画に向けて必要な資質・能力を身に付けていくことができるよう、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校等との間で、教育課程が円滑に接続していけるようにしていくことが重要である。通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校それぞれにおける教育活動の在り方と相互の連続性を改めて可視化し、全ての学校現場において共有していくとともに、前述の「個別の教育支援計画」や「個別の指導計画」の作成・ 活用を通じて、子供たち一人一人の学びの連続性を実現していくことが求められる。
【教科等の指導の現状と課題】
現在、中学校の特別支援学級から特別支援学校高等部に進学する場合、一部ではあるが、「個別の教育支援計画」による指導の引継ぎが行われている。一方、中学校の通常の学級や特別支援学級で、当該学年や下学年の各教科の内容を学んでいた生徒が、特別支援学校の中学部に転校したり、高等部に進学したりした場合、教育課程の体系が異なるため、「個別の指導計画」による指導の連続性は保ちにくい現状がある。
今後は、小学校等と特別支援学校の教育活動について相互に理解できるようにするため、小学校等の教育課程と特別支援学校の教育課程の連続性についても可視化し、子供たち一人一人の学びの連続性を実現していくことが大切である。


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