社会・地理歴史・公民ワーキンググループ(第1回 平成27年12月7日)における高等学校地理歴史・公民科に関する主な意見(未定稿)

【地理歴史・公民全体について】
○ 研究開発校で地理基礎、歴史基礎という科目をつくり、学習内容と資質能力のバランスのとれた育成を重視し、生徒参加型の授業に取り組んだ。地理総合、歴史総合では、学習活動の段階として、知識を読み取る場面、知識を概念化する場面、別のものに当てはめる場面、知識を再構成する場面をつくり、そのどの段階において学力的なものが育成されているのか、どのような段階において資質や能力的なものが育成されているのかが明らかになるとよい。資質能力を重視した科目となる以上、そのような学習活動がしやすい構成になるとよい。

○ 検討事項4の条件整備についてであるが、学校現場では、歴史の教員が地理を教える、地理の教員が歴史を教える、これまでは相互の乗り入れはあまりなかった。新しい科目が設定されたとき、それを適切に教えられる教員がいるかどうかが課題である。地理で言えば、地図や地域等の研修体制を早めにつくったり、アクティブラーニングを研修したりすることも含めて、学習指導要領の改訂の前から必要になる。

○ 検討事項の2のアクティブラーニングについて、今回の改訂には、期待と不安がある。知識偏重から思考力・判断力・表現力の育成へ転換するという期待。現行の内容はそのままで新たに指導方法が増えることだけで負担が増すという不安。このあたりを現場にどのように示していくかが重要である。

○ 2030年の世界、世界の中の日本、グローバルな世界で生き抜いていく力を育成していきたい。日本の若者は内向きになっているという危機感を持っている。

○ 1つの課題、例えば、難民というものを考えるときに、地理的な知識、歴史的な知識、公民的な知識を総合的に組み合わせて考えていく力。これがグローバルな世界で生き抜いていく力ではないか。

○ アクティブラーニングについて、生徒はかつてに比べて発表することや表現することはうまくなってきている。小・中学校からの積み上げの成果が表れていると思う。ただし、いろいろな教科で同様の試みを重複させて、生徒がアップアップにならないようにしたい。知識とのバランスが必要。新聞、インターネット等の資料から情報を活用していく、情報リテラシーについても考えていきたい。

○ センター試験に代わるテストの導入についての時期や関係についても気になるところ。

○ 地理歴史科の免許について、改訂の後も変わらないとなると、地理的な技能、スキルを教えるための仕組みを作ることが必要である。技術的なことであるが、いろいろな学校で、いろいろな先生が、同じようなことができるようになることも考えないといけない。

○ 地理歴史科のB科目、公民科の政経や倫理という既存の科目は、中教審の論点整理を踏まえつつ、基本的に各学問、ディシプリンのリテラシーをより深めていく。例えば地理ならGISを利活用するとか、歴史なら一次資料を、提示の仕方はいろいろあるにしても、読解する方向で、より歴史認識を深めていくというふうになっていくのではないか。

○ 地理の専門でないと教えられない地理総合とか、歴史の専門家でなければやれない歴史総合では、地理歴史科の総合科目にならない。地理総合、歴史総合、公共は、社会系の教員みんなが教えることができるようにしたい。総合というのは、専門家を育てるのではなく、グローバルな時代にどんなスキルが必要でどんな力を付ける必要があるかということから力を付ける教科にする必要がある。

○ 一つは大学入試に象徴される評価が、はっきりと変わった、これは従来のような授業ではだめだなと思っていただく評価に変わらないとだめ。もう一つは教科書がはっきりと変わることが必要。

○ 知識をどうするかについて、論点整理にあるとおり、主体的に社会に参画すること、考察すること表現すること等ができて分かっているということ。知識、理解については、子供に育てる知識とは何か、知識と思考は対立しないという認識に立ちたい。世界の子供たちの学びについて、評価される学びを高等学校でもやるということ。いい教育をやっている先生方を生かしていくことを考えたい。

○ アクティブラーニングの実践をどう評価するかを課題として論じたい。また、実践を大学入試でどう生かすか、評価するか。極力知識だけを問うことのない入り口を作っていくようにしていきたい。

○ アクティブラーニングをどう評価するかは課題である。公立の中高一貫校では、適性検査を実施しており、そこでは論理的に説明する力をみている。これは採点に時間がかかる。評価することをどのように取り入れていくかが課題となる。

○ 大学入試を変えていくことが必要。地理総合、歴史総合を学んでいないととけないというようにしたい。

○ 社会科といって各教科が1つになっていくときに、掲げるテーマというのが必要である。そのときに、日本発、地球規模で、世界規模で生徒が学んでいく、世界で活躍していくときに、やはり平和の問題、人権の問題、環境の問題をきちっと掲げられるような社会科であってほしい。その下で歴史や地理や公民というのが改善あるいは創造されていけばいい。


【歴史】
○ 歴史科目においては、通史が一次資料から成り立っているということを何か意識させたい。

○ 歴史科目では、一次資料の見せ方が大事であろう。資料、例えば風刺画などを活用し、生徒に一次資料を見せて議論し、通史が身に付くようにしたい。

○ 課題として、資料8-1の5ページの歴史教育に関する現状と課題について見ると、課題解決的な授業について、観察、調査、研究について、数値的にはかなり厳しい。これをどうやってアクティブラーニングや生徒主体の授業を実現していくようにするのか考えなくてはならないだろう。

○ 小・中・高の連携、特に歴史では、同じことを繰り返すのでなく、学習スタイルを大きく変えていくことが可能なのか、そうしないのかを議論することが必要である。

○ 新科目を時代の要請に合わせてつくろうとするとき、学校現場に実際に置かれたときのことを考え、新科目以外の科目のことも考え、新科目との整合性を考えないと失敗する。今、世界史の用語は戦後の70年で2倍になっている。日本史も同様である。知識を教えることが限界にきている。その中で、育成すべき資質能力は何かと言うことを考えていきたい。

○ 学校では、アクティブラーニングに取り組もうとしているが、それが何なのかまだ分からない。全部の授業でやることは無理であるから、それ以外の授業をどのように組むかということや、知識をどこまでやって、どこまで身に付けさせたらよいのかということが課題となっている。どこまでを教えて思考力・判断力・表現力を伸ばすか。また、受験という問題もある。

○ 歴史については、小中学校で世界史をどう教えるか。小中一貫校で、特に実践事例を考えていきたい。

○ 日本史の中で近代化、大衆化、グローバル化で再構成することについて、世界史と連動して長いスパンで考えていくことも大事である。また、政治の変化だけでなく庶民の日常の変化を捉えたり、科学的に見る目として文化財や資料の提示をしたり等の工夫が必要である。


【地理】
○ 地理はあまり人気がなく、正当に評価されてこなかった。今回、地理総合を学ぶことになることはよいこと。情報化、GISはどんどん進化していくものをどのように取り組んでいくかであるが、地域調査、分析技能、様々な情報をリンクさせることが必要で、より現実的なものにしていくことが大事である。

○ 今やっている研究がその先の社会、生活にどのようにつながっていくか。グローバルな課題と日常生活が結び付いていることを感じ取れるようにしたい。知識の量と分析の技能のバランスをどのようにとっていくかが大事。地理は、自然、人文、政治的等の課題を地球規模で考えていくことができる。


【公民】
○ 一次資料の読み取りは大事だと思う。哲学、倫理では硬い文章も多いので、生徒が興味を持てるように見せ方が大事である。特別チームの資料8-2の6ページのご意見に、文献を基にした教育は興味が持たれない、応用倫理の分野が大事ではないかとある。しかし、一次資料に興味を持てる資料の見せ方を工夫することが大事なのではないか。応用倫理を考えるためには基本が大事。両方大切にすることが必要である。

○ 公共では、公民的資質を身に付けるということで、具体的な態度形成やスキルを身に付けることが大事になっている。例えば消費者教育において、契約などを扱っているが、法理論的なことを分かった上でやらないと、非常に底の浅いものになってしまうおそれがある。理論的なことや原理原則的なこと、基礎基本をどこまで学習をして、スキルを身につけていくのかバランスを考えていくことが大事ではないだろうか。

○ お金や金融、経済について学ぶことを通じて、よりよい生活やよりよい社会を作っていく態度の育成に取り組んでいる。金融や経済については社会、公民、家庭科が中心になると思うが、特に政治・経済では、マクロ的な視点から生徒一人一人が自分たちの人生、生活、社会をよくしていこうということついて、よく分かり考え、発言、行動できる力を身に付けられるよう考えていきたい。

○ 18歳選挙権年齢引下げということがあり、社会の大きな変化に際し、若者たちは自分たちで主張していかなければいけない。その力が付いているのかというところについて、今回の改訂において重視したいと考えている。

○ 先哲の一次資料を学ぶとき、比較的身近な問題を取り上げて、基礎的基本的な部分を学ぶのがよいのではないかと考えている。

○ よりよい人生を送るかという事があげられている。人生は死がやってくる。死というものについて学ぶことは必要ではないか。アクティブラーニングで扱っていただきたい。人間は必ず死ぬということを盛り込みたい。可能であれば、ホスピス、畜殺の現場等、社会の中で隠蔽されがちなところを扱いたい。触れる、言及できる教育を盛り込んでいただけるとよい。

○ 高等学校における道徳教育、人間としての在り方生き方に関する教育であるが、公民として整理する必要がある。小中の「特別の教科道徳」とどう接続するのか、距離をおくのかどうかを考えなければならない。

○ 公共では、キャリア教育の視点もある。現代社会と同様に公共が高等学校における道徳教育の中核的指導場面として設定されるのか、別にするのかの議論も必要。公共と倫理の整合性を検討していきたい。県によっては総合的な学習の時間で道徳教育を実施しているところがある。そのような県の取組と公共との整合性を検討していかなければならない。

○ 法教育という立場から模擬裁判、ロールプレイング等の活動を学校で行っている。活動をする学習、答えが一つに定まらないことについて考え解決していく学習に取り組んでいる。生徒は、自由に考え、活発に活動している。主体性が育まれ、社会参加につながる。課題解決的学習、アクティブラーニング等の方向性はよい。

○ 課題を解決することの工夫が必要。生徒にどう視点を与えるかということ、判断の枠組みをつくることについて考えたい。

○ 課題をやってもらって、そこから概念を抽出するやり方なのか、先に概念を与えた上で、それを使って課題を解決するのか。その枠組みの整理が必要。

○ 法は、社会のルールであり、判断の枠組みといえる。

○ 公共と既存の教科との関係性について、「現代社会」で理解させることになっている幸福、正義、公正という枠組み、視点は変わらないのかどうか。方向性を知りたい。幸福、正義、公正という視点を使って、問題を解決していこうという取組はあまり行われていない。ある意味、知識は知識である。けれども、その活動は活動で別にある。あるいは活動をやっていないという感想を持っている。

○ 公共について、少子高齢化、人口減少社会、そしてグローバル化が進行し、経済社会環境が大きく変わっていく中、労働力の質の向上と量の拡大が求められている。女性の活躍推進と言われ、女性も働くような、働く社会になってきていることがひとつ。仕事についても、家庭を持つことや、多様化している中で自ら主体性を持って生きていくこと。働き方の多様性のあり、キャリア教育。18歳選挙、政治に参加するということで、政策の中身をしっかり分からないと判断できない、そういった知識を押さえておくこと。理念や概念を押さえて知識を身に付けることが重要である。

○ 公民科の在り方について意見を述べさせてもらう。公民科の学習をどう考えるかは、3つのことが基本となるであろう。第1に、1人の人間として、各自が自己の在り方や生き方について考えるということ。第2に、自己が存在する社会の在り方について考えること。そして第3に、自己の社会に対する関わり方について考えること。3つをどの順序で考えるかは、重要な思想的な課題である。そして、うまく循環させて実践につなげていくことが、国家・社会の形成者として必要な知識、判断、そして行為する能力の育成につながる。

○ 人間としての在り方、自己の生き方を考える出発点として、人間の尊厳や個人の尊重をしっかり考えていく必要がある。それを基礎として社会の在り方を考えれば、その際に重要になる1つのキーコンセプトとして、協働、協力といったようなものがある。なぜ、人は協働していく必要があるのか。協働関係を通じて何を実現しようとしているのか。協働関係を妨げる要因を克服するために、どういう知恵や仕組みが必要になるのかということを考えていくことが大事である。

○ 家族、地域、国家、国際社会という協働関係の単位があって、それぞれにどういう役割を果たしているのか。政治プロセス、市場、法システムというような協働関係を現実に動かす仕組みとしてどういうものがあって、どういう役割を果たしていくのかということを学んだ上で、自分自身が協働関係の中でどういう役割を果たしていくのかを考えてもらうというのが大事である。

○ 原理原則に基づいて現代社会の諸問題を考える。そして、手法、ノウハウを身に付ける。バランスよく学ぶことに課題があるのではないだろうか。

○ 公民を考えていく際、家庭科、情報科などの他の教科との関係、あるいは総合的な学習の時間、特別活動とどう連携を図っていくかを考えていく必要もある。例えば、協働を妨げる要因がどのようなものがあるのか、それを克服するためにどういう方策を考えるべきかということを検討するために、歴史、地理で学んでいるということを前提にしていかなければならない。新科目については歴史、地理との連携を重視して、その新しい必履修科目が全体として人間社会を総合的に考えることができる科目にしていく必要がある。

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