学習評価の改善に関する今後の検討の方向性

「目標に準拠した評価」を、資質・能力の育成の観点から実質化していくため、以下のような方向性や留意点等に基づき、各教科等で学習評価の改善についてご検討いただきたい。

(育成すべき資質・能力を踏まえた目標や指導内容の明確化について)

○各教科等の目標を、資質・能力の三つの柱に基づき構造化すること。

○各教科等の特性に応じ育まれる「見方や考え方」について明確化すること。

○指導内容についても、資質・能力の三つの柱に基づきどのような力を育成するのかが明確となるような構造化を図ること。

○資質・能力の三つの柱は、相互に関係し合いながら育成されることを明確にしていくことが重要であるので、総則などで示していく方向で、総則・評価特別部会で引き続き検討していくこと。

(観点別評価について)

○観点別評価については、前回改訂時に整理された学力の三要素と評価の観点の関係性を踏まえて、各観点の趣旨が明確化され、観点別評価の実施率も高い状況であること、思考・判断・表現の評価の在り方に関する様々な実践も進展していることなどの一方で、子供たちの資質・能力の育成に向けた指導と評価の一体化といった観点からは、改善の余地があるとの指摘もあるところであり、こうした指摘を踏まえつつ、以下のような改善について検討すること。

○「目標に準拠した評価」の実質化や、教科・校種を超えた共通理解に基づく組織的な取組を促す観点から、別添イメージを踏まえつつ、観点別評価の観点とその趣旨を検討すること。具体的な観点の書きぶりや趣旨の記述については、教科の特性を踏まえた表現ぶりを検討すること。その際、小・中・高を通じて一貫した観点となるように留意すること。

○観点別評価については、毎回の授業で全てを見取るのではなく、カリキュラム・マネジメントの考え方のもと、単元や題材を通じたまとまりの中で、学習・指導内容と評価の場面を適切にデザインしていくことが重要であることに留意すること。また、各教科等で検討いただいている学習プロセスの在り方の中で、評価の場面との関係性も明確にできるよう工夫すること(複数の観点を一体的に見取ることも考えられる)。

○「知識・技能」については、事実的な知識のみならず、構造化された概念的な知識の獲得に向かうことや、一定の手順に沿った技能のみならず、変化する状況に応じて主体的に活用できる技能の習熟・熟達に向かうことが重要であることに留意すること。各教科等の特性や発達の段階に応じて、どのような知識・技能を獲得することが求められるのかを、目標や指導内容の構成の中で明確にできるよう工夫すること。

○「思考・判断・表現」については、各教科等の特性に応じ育まれる見方や考え方を用いた学習のプロセスを通じて評価すること。各教科等の特性や発達の段階に応じて、どのような思考・判断・表現が求められるのかを、目標や指導内容の構成の中で明確にできるよう工夫すること。その際、思考力・判断力・表現力の成長は一定の時間をかけて成長していくものであり、学年等を超えた整理が必要であることに留意すること。

○「主体的に学習に取り組む態度」と、資質・能力の柱である「学びに向かう力・人間性」の関係については、「学びに向かう力・人間性」には(1)「主体的に学習に取り組む態度」として観点別評価(学習状況を分析的に捉える)を通じて見取ることができる部分と、(2)観点別評価や評定にはなじまず、こうした評価では示しきれないことから個人内評価(一人一人の良い点や可能性、進歩の状況について評価する)を通じて見取る部分があることに留意すること。

○また、「主体的に学習に取り組む態度」については、学習前の診断的評価のみで判断したり、挙手の回数やノートの取り方などの形式的な活動で評価したりするのではなく、子供たちが学習に対する自己調整を行いながら、粘り強く知識・技能を獲得したり思考・判断・表現しようとしたりしているかどうかという意思的な側面を捉えて評価すること。このことは現行の「関心・意欲・態度」の観点についても本来は同じ趣旨であるが、上述の挙手の回数やノートの取り方など、性格や行動面の傾向が一時的に表出された場面を捉える評価であるような誤解が払拭し切れていないのではないか、という問題点が長年指摘され現在に至ることから、「関心・意欲・態度」を改め「主体的に学習に取り組む態度」としたこと。こうした趣旨に沿った評価が行われるよう、単元や題材を通じたまとまりの中で、子供が学習の見通しを持って振り返る場面を適切に設定することが必要であること。

○現行の観点別評価の観点において、別添イメージ記載の観点のうち示していない要素がある教科等については、知識や技能の在り方、技能と表現との関係等について、各教科等の本質に照らしてご検討いただき、三つの観点が相互に関係し合いながら育成されるものであることを前提としつつも、それぞれの観点や趣旨が明確に示されるようにご検討いただきたいこと。

(指導要録の在り方について、その他)

○上記の方向性を踏まえた指導要録の在り方については、総則・評価特別部会における議論を踏まえ引き続き専門的に検討していくこと。

○指導要録に加えて、子供一人一人が、自らの学習状況やキャリア形成を見通し振り返ることができるようにするために仕組みの在り方を検討していくこと。こうした仕組みを活用しながら、子供たちが自己評価を行うことを、教科等の特性に応じて、学習活動の一つとして位置付けることが重要であること。その際、教員が対話的に関わることで、自己評価に関する学習活動を深めていくことが重要であること。

○学びのポートフォリオや、個々の学びの特性が、校種を越えて共有されるような仕組みの在り方を検討していくこと。

○学習評価に関する残された論点については、各教科等WGにおける議論の状況を踏まえつつ、総則・評価特別部会において引き続き検討していくこと。


各教科等の評価の観点のイメージ(案)

観点(例)

※具体的な観点の書きぶりは、

各教科等の特性を踏まえて検討

知識・技能

思考・判断・表現

主体的に学習に取り組む態度

各観点の趣旨のイメージ(例)

※具体的な記述については、

各教科等の特性を踏まえて検討

(例)

○○を理解している/○○の知識を身に付けている

○○することができる/○○の技能を身に付けている

(例)

各教科等の特性に応じ育まれる見方や考え方を用いて探究することを通じて、考えたり判断したり表現したりしている

(例)

主体的に知識・技能を身に付けたり、思考・判断・表現をしようとしたりしている


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