理科ワーキンググループ(第6回)における主な意見

1.理科を通じて育成すべき資質・能力について

(1)理科を学ぶ本質的な意義や他教科との関連性について
○ 特になし。

(2)幼稚園・小学校・中学校・高等学校を通じた理科において育成すべき資質・能力の系統性について
○ 特になし。

(3)三つの柱に沿った育成すべき資質・能力の明確化について
○ 資料6-2(小・中・高を通じて理科において育成すべき資質・能力(案))の小学校の「思考力・判断力・表現力等」のところで、「各学年で主に育てたい力ということで、四つ載っているが、「主に」ではなくて、ゴールというか、究極的に目指すような内容になっているのではないかと思う。小学校6年、5年、4年、3年のところを見ると、高等学校の生徒でも、これぐらいのことができれば、「おおむね満足な状況」になってしまうのではないかと感じる。これまで小学校3年生が比較、4年生が関係付けとか要因抽出、5年生が条件制御、6年生が多面的追究ということで、ある程度定着してきている部分がある。この言葉をうまく活かしながら、結論としては「各学年で主に育てたい力」ではなくて、「主に」を取って、「各学年で目指す力」とか、「小学校全体を通じて育てたい力」などとして、方向目標として示してもらうと、現場の先生が何のために比較をしているのか、何のために関係付けをしているのかということが、より分かりやすくなるのではないかと思っている。

○ 今回、アクティブ・ラーニングですごく大事なのは、つけた能力を発揮する場面を作ることがすごく大事だと思っている。自転車に乗る能力をつけた。つけた後は技能になる。技能は使うことで洗練される。だから、小学校中学年でつけた能力は、高学年になったときに、あるいは中学校、高等学校に進学したときに、つけた能力が使える技能になっていないといけないと思う。小学校3年で、こういう力がついた。そうしたら、ほかの単元でも使えた。小学校4年の単元でも、3年生のときにつけた力が使えたとすることが大切である。それを子供たちに認識させるように学習指導要領を作っていくというのが非常に大事なのではないかと思っている。

2.アクティブ・ラーニングの三つの視点を踏まえた、資質・能力の育成のために重視すべき理科の指導等の改善充実の在り方について

○ 特になし。

3.資質・能力の育成のために重視すべき理科の評価の在り方について

○ 資料4(資質・能力の育成のために重視すべき理科の評価の在り方について(案))の「個別の知識・技能」の「個別の」という部分は、「ばらばらの」と誤解されかねない。中身としては、高等学校に「体系的に」とか、小学校に「相互の関係」とかというのが入っているのであるから、「個別でないことも含めた」と言ってもよいのではないか。そうすると、中学校のところにそれに対応するのがないのが若干気になっており、中学校のところにも、「自然の事物・現象と概念や原理・法則の関係の基本を理解し」など、関係性が入ってもよいのではないか。

○ 資料4(資質・能力の育成のために重視すべき理科の評価の在り方について(案))の主体的に学習に取り組む態度のところで、「獲得した知識・技能を日常生活や社会に生かそうとする」については、獲得した知識・技能が、どういう過程を通して獲得した知識・技能かというのが、少し工夫し、「それらを科学的に探究しようとするとともに、探究を通して獲得した知識・技能」などとすれば、より明確になるのではないかと思った。

○ 資料4(資質・能力の育成のために重視すべき理科の評価の在り方について(案))のタイトルで、「個別の知識・技能」となっており、「理解」という言葉が出てきていないというのが、「理解」という言葉も入れていただきたいと思っている。

○ 資料4(資質・能力の育成のために重視すべき理科の評価の在り方について(案))に関して、個別の知識・技能、知識・理解と技能を一緒にしたということだが、現場の先生が、理科の学力として評価しようとするときに、知識を重点的に評価する傾向が一部にあるよう思う。このように知識と技能を同じ評価の観点としたときに、もしかすると知識に偏った評価の観点がなされることが心配である。

○ 資料4(資質・能力の育成のために重視すべき理科の評価の在り方について(案))の枠組みについては、平成20年度の学習指導要領改訂のときにも、3観点にしてはどうかという意見もあったので、うまく整理して収める努力は必要かと思うが、この方向でよいのではないか。

○ 資料4(資質・能力の育成のために重視すべき理科の評価の在り方について(案))において、高等学校の観察・実験のところに、観察・実験だけではなく思考・実験のようなものを含めているので、「など」と入っているのではないかと思うが、実は小学校や中学校でも、ものづくりなどが入っており、小学校や中学校にも、「など」があった方がよいのではないかと思う。

○ 資料4(資質・能力の育成のために重視すべき理科の評価の在り方について(案))において、中学校で「概念や原理・法則を基本的に理解し」と書いてあるが、「関係性を理解し」や「概念や原理・法則の基本を理解し」などとした方が、日本語として分かりやすいと思う。

○ 資料4(資質・能力の育成のために重視すべき理科の評価の在り方について(案))において、主体的に学習に取り組む態度のところで、獲得した知識・技能のところで、「探究を通して」とすると強い縛りになるので、「自然の事物・現象に主体的に関わり、それらを科学的に探究しようとするとともに」という前の記述を受けて、「その中で獲得した知識・技能を」とすると、主体的に関わっている中、探究しようとする中で知識・技能を獲得したという意味になるのでよいと思う。

○ 資料4(資質・能力の育成のために重視すべき理科の評価の在り方について(案))において、「日常生活や社会に生かそうとしている」と記載されており、広い意味で学習にも関わっていると取ればよいが、理科の中で、あるいは算数や数学の中で、理科の知識を使ったりすることもあると思うので、そういう意欲が出ているときに、それを日常生活や社会だけに限定してしまうと少し狭いと感じる。「教科の学習はもとより日常生活や社会」とするなど、教科の中でも生きるようにするとよいのではないかと思う。

○ 資料4(資質・能力の育成のために重視すべき理科の評価の在り方について(案))の小学校理科の主体的に取り組む態度で、高校・中学校の方は学習したことを日常生活や社会に生かそうとしているかという点でみると、自分の行動やキャリアに生かすという読み方ができるが、、小学校では自然の事物・現象に生かすというとき、事物・現象の何に生かすかというのが分かりにくいので「自然の事物・現象の把握」など、何らか子供の行動を示す表現などを入れておくとよいと思う。

○ 評価の観点が三要素に合わせて三つになり、これがアクティブ・ラーニングや3要素と絡んでくるということは、どこかに偏ることなく、全てがバランス良く評価されて初めて、生徒の資質・能力の育成につながると思う。

○ 資料4(資質・能力の育成のために重視すべき理科の評価の在り方について(案))において、主体的に学習に取り組む態度の部分の今回示されたものが、現行の観点の書き方と余り違いが大きく感じられなくて、資料6-2(小・中・高を通じて理科において育成すべき資質・能力(案))にある学びに向かう力・人間性の中の一番上の青字で整理している中に、「見通しを立てたり振り返ったりするなど内省的な態度」という項目があるように、こういう部分を少し強調した方がよいのではないか。

○ 資料4(資質・能力の育成のために重視すべき理科の評価の在り方について(案))において、「自然に親しみ、積極的に自然の事物・現象を、自ら見通しを持ったり振り返ったりして調べようとするとともに」などのように、中学校や高校は、例えばそこを「自ら目的意識を持ったり、あるいは振り返ったりする」などの言葉を入れて、態度の面に、子供が主体的にする部分の「自ら行動を起こして、それの見通しを立てるのだ」とか、あるいは「目的意識を持つのである」とか、「振り返ってそれを見直すのである」などの文言を入れることによって、これまでとは違う学びに向かい方が明らかになるのではないかと思っている。そのような点をこれから評価するのだよと強調することが、資質・能力育成のための評価の観点としてクローズアップされるのではないかと期待している。

○ 資料4(資質・能力の育成のために重視すべき理科の評価の在り方について(案))の「思考・判断・表現」の部分が、次期学習指導要領の評価における重要な観点だと思う。
小・中・高、それぞれ思考・判断・表現が明記されているが、学習の過程を、つまり観察・実験の過程を、きちんと評価しながら授業を展開すると、結果として知識・理解・技能もくっついて上がってくる。観察・実験のプロセスを大事にした授業を行うことによって、理解も深まれば、その獲得した習得した知識などを次の学習につなげようとしたり、日常生活に活用したりしようとする力も、同時に育むことができる。この思考・判断・表現のところを、現場の日々の授業の中で評価できる枠組みとその手順というものを、我々がどうシミュレーションできるのかということも、大事になってくるのではないのかなと思う。

○ 資料4(資質・能力の育成のために重視すべき理科の評価の在り方について(案))の「個別の知識・技能」のところに、高校や中学校の場合、「科学的に探究する技能」というのが入っている。探究というのは、技能でもあるが、思考力や判断力を活用してどのように探究するかという、方法を工夫していくことを含むので、探究する技能というのが「個別の知識・技能」の中に分類されているということに、少し違和感がある。探究に関する技能というものの一部は、思考力や判断力を含んでいるのではないかという気がする。

○ 現状の評価は四つの観点になっており、実験・観察の技能と科学的な思考・表現と分かれていたときは余り違和感がなかったが、今回、ここに個別の知識・技能として一体化した中に、探究する技能という言葉一つでそれがまとめ込まれてしまうと、探究に関する部分が技能だけでよいのかというのが、少し気になっている。

○ 資料4(資質・能力の育成のために重視すべき理科の評価の在り方について(案))の「個別の知識・技能」の部分で、「理解し、知識を身に付けている」と理解と知識の二つが示されている。観点のイメージ案のところでは、書きぶりは教科の特性を踏まえて検討となっているので、「理解」という言葉を何らかの形で入れるとよいと思う。

○ 本日の資料である、平成23年11月の評価方法の工夫改善の資料を作成している中で、評定のために用いる資料という、観点別評価も含めて評定のために用いる評価という視点と、新たに指導のための評価という視点を入れていたように記憶している。子供たちが間違っている発言だったら正したり、実験方法や器具の操作が間違っていたら指示したり方法を示したり、授業の場面で、指導をするために行う評価というのがあったと思う。この辺りで、現場の先生方に中には、十分理解されていないと思うので、評定のための評価と、もう一つは指導改善のための評価という視点を再度扱っておくとよいと思う。

○ 資料4(資質・能力の育成のために重視すべき理科の評価の在り方について(案))の「思考・判断・表現」の部分は、これまでのように4観点のときに出てきたように、「科学的な」という文言を入れていただきたい。

○ 三観点にしたとき、現場の教員としては、観点の柱である「主体的に学習に取り組む態度」をどう評価するかというのは非常に厳しいところがあると思っている。生徒一人一人の内在的なところを評価するので、そこをどのように評価するのかというのは、いつも議論となる。他の資料の中にも、ここは難しいところで、これからの検討を要するということが書いてあるが、どのようにして現場の教員たちにとって分かりやすくするかを検討することが必要と考える。3観点それぞれが大事であるが、現場で評価するのが難しいので、おざなりになってしまうのではないかなという不安もある。

○ 「知識・技能」とか「思考・判断・表現」とか「主体的に取り組む態度」、これ自体が、例えば思考し判断して表現するということが理解というような捉え方をしないと、これは分節化してしまって、訳分からなくなると思う。やはりそこは踏まえておくべきではないかと思う。1個だけ字句を訂正したって、現場が受け入れなかったら変わらない。これは何回も我々は教育課程の改訂のときに大失敗しているのは、そこなのである。だから余り細かいのを出し過ぎるということは、一見分かりやすいが、現場が疲労感に浸るだけである。記載はこのぐらいの程度で、必要なのは、この三観点の意義みたいなものが、一体何を目的としているのかというのを付加させれば十分ではないかと思う。

○ 小中学校の先生は、真摯にこの観点別学習状況の評価に取り組んでいると感じる一方で、何のために評価するのかというのを、特に若い教員なのだが、はっきり捉えて評価に向かっているというものが何か少ないという感じを受けている。単純に4観点が3観点になったと特に若い教員が捉えるのではなく、子供たちの資質・能力の育成に役立つという考え方で評価をしてもらいたいと感じている。子供の資質・能力の育成に役立つことが実感できれば、先生方の評価の取組も変わっていくのではないかと思う。特に高等学校の先生方、私から見ても正直十分ではない部分も実態としてはあるように思う。子供の力が伸びることに役立つことが実感できると分かれば、かなり取組も良くなるのではないかと感じているので、示し方も重要ではないかと思うわけだが、一方では、評価について過度に負担にならないという配慮もする必要があるかと思うので、示し方等には十分に留意をしていく必要もあると感じている。

○ 思考・判断・表現を評価するためのものが、思考・判断・表現が知識にすり替わらないようにというところは、すごく注意して見ていきたいなと思っている。資料6-2(小・中・高を通じて理科において育成すべき資質・能力(案))に、思考・判断・表現に関する能力などを諮るための評価になるはずであるので、例えば、実験、観察に関わる出題があって、それで思考・判断・表現をテストのような形で○×の問題で評価しようという形では、多分ここに書かれている能力は評価されないと思う。どうやって現場の先生にその能力をどう評価させるか、評価課題を設定するとか、ルーブリックを作成するとか、そういう部分をどう作っていくかという部分が示されると、この三要素が生かされる気がする。思考・判断・表現というのは、一定の時間をかけて成長していくもので、本当に一学期のこの単元で学習したもので思考・判断・表現が評価できますとか、そんなに簡単なものではない気がするので、その部分の方法論というか、この思考・判断・表現の意義がどこにあるかというのを強調していただきたいなと思う。

○ 評価に関しては、バランス良く単元の中で三つの観点を見ていくことが大切である。トータルなものとして全体的なところから評価をしていくことが大切だと思う。「学びへの向かい方」、「自らの行動を振り返る」ための評価であることが重要である。

○ 日本の観点別評価に関しては、更に国立教育政策研究所等の協力を得て細かい観点が作られている。しかし、外国で作られているルーブリックは、グループグレーディングといって、何人かの評価者たちが、ある子供たちの作品、成果物、発表等を見て、得点を付ける。その際、それぞれの評価者は相手が付けた得点を知らない状況で作業をする。最終的に得点が出そろったら、それぞれの得点を見比べ、「これは4、高い評価にしよう」「これは3だね」「これは2だね」「これは1だね」と言って、それぞれの評価の観点とルーブリックができあがる。これからのアクティブ・ラーニングのルーブリックを作る際も、単純にこうしたら「アクティブ・ラーニング4だよ」「アクティブ・ラーニング2だよ」というのではなくて、子供たちの活動を見ながら、かつ、教師側が求めているものも踏まえながら作っていくことが大切だと思う。また、欧米諸国で使われているルーブリックを用いた評価が全て優れているというわけではない。日本では、小学校・中学校・高等学校の実情に合わせながら使っていくのがよいと思う。

4.必要な支援(特別支援教育の観点から必要な支援等を含む)、条件整備等について

○ 資料4(資質・能力の育成のために重視すべき理科の評価の在り方について(案))で示されているのは全体的な趣旨であるので、今後、全体的な評価規準が入り、更に学習内容に沿った規準を設定するというように構造化されると考えている。今回の改訂では、ルーブリックが大きく採り上げられていると思うが、ルーブリックが示されたときは、現場の多くの先生方は、評価基準的にとらえ、ルーブリックに沿った評価していくことになると考える。その点で、ルーブリックをつくるための基盤となる考え方、各学校でつくるときの視点などを、何らかの形で示すことや、振り返りなど、様々な取組が示されているので、それらをどのように扱っていくかを示すことも必要である。まずは、抽象的な全体的な内容から、個別な項目や観点で示していき、構造化を図っていく、現場の先生方がルーブリックを作りやすくなるためのハンドブック的なものがあるとよいかなと思う。

5.現行学習指導要領における現状と課題について

(1)高等学校理科の履修科目について
○ 学術会議のワーキンググループは、大ざっぱに言えば、結論に書いてある総合理科である「基礎理科」を設けようというところからスタートしているが、私自身は、それは今まで失敗してきた歴史もあるし、それとどう違うのかということをはっきりさせないと意味がないということで、議論してきた。2年間にわたって2つの案が並行して出されて、最終的には最初に学術会議に出したときには、その二つの案も並行ということで出したが、学術会議から、どちらを優先するのだという話があって、それで多数派の方ということで、「基礎理科」を作るという方向にシフトしているのが現状である。

○ 四つの基礎に分けるということと、「基礎理科」を作ることの違いは、教員の問題であると考える。教員は深い知識を持っている方が基礎科目を教えるのが生徒にとってはかなり印象的になるだろうと思う。それで、全て四つの基礎を全部教えられる先生を育てるというのが、ここの提言の最後の方に書いてあるが、本当にそれができるのかなというのが少数派の疑問であったわけで、これはまだ難しいのではないかと思っているが、それは最終的には専門の教員が、深い教員が身に付けながら教えていくのか、それとも4つの基礎強化を全部教えられる教員を育成するのか、そこに焦点があるのではないかと思う。

○ 委員長をはじめ、この提言がすぐに次期学習指導要領に反映されることまでは期待していないということがあるが、例えば、今後の学習指導要領で、提言の考え方もいかに取り入れていくかというところで提言を出したというのが実情だと思っている。

○ 今回の学習指導要領の大きな特徴は、能力・資質でものを見ると、科目固有の能力・資質とは何か、科目を共通する汎用的な能力・資質とは何かという議論になる。ということは、内容をこれから科目として設定していくときに、その2つの視点で内容を構成していくことができるならば、今、いろいろ提案されているものに対して、我々が応えることはできるのだと思う。だから、科目を全部学ばせることではなくて、科目を通して育成されるものの固有なものは何か、あるいは、共通するものは何か、汎用するものは何かという形の二つの視点で科目の内容構成ができれば、疑問に一つ対応できるのではないかと思う。

○ 従来は数%しか日本国民が地学を学んでいないという状況があり、これを非常に憂慮していた。現行の学習指導要領になり、4分の1の日本国民、高校生が学ぶようになったということは非常に良かったなと思っている。実は中学校まではそれぞれの領域の専門家が必ずしも教えていない。高校になって初めて専門家がきちんと深い理解のもとに教えるということである。例えば、いろいろな県で話を聞いていると、地学を物理・化学の先生が教えるのは極めて難しい。地学の先生は、私もやったが、物理も化学も基本的に教科書の内容は教えられる。ところが、地学、あるいは生物の内容を教えるには、相当深い理解がないと教えられないということであるので、専門家がきちんと教える4科目を全部学んでほしいという気持ちはあるが、現在の状況を考えると、現行の科目構成のままで今度は資質・能力、あるいは学び方に着目をして、きちんと学ぶのがよいのではないかなと思っている。

○ 高い専門性のある内容を教えるには、その領域の専門性を持った理科の高校教員が授業を進めていかないと、生徒の興味、関心はなかなか育ちにくいのではないかと思う。

○ 日常生活と社会と関連付け、そういった理科の有用性を実感させるような深い学びを行うためにも、その分野の中身を深く理解している教員が教えていくことが重要だと思う。自然の事象の、「なぜ」に気づくような実験・観察を行う際には、そういった実験をたくさん行っていないと、まず、気づきにもいかないと思う。対象となる領域の専門性が、生徒の仮説を立てるときには非常に大事だと思う。

○ 4科目のうち3科目を必履修とする現行の学習指導要領になったおかげで、地学基礎の履修者が東京の場合、非常に増えた。結果、東京都の地学の教員の採用が何十年ぶりにあったということがある。現行の4領域の基礎科目を履修させていくことで、地球の領域の専門性の高い高校の教員の確保にもつながっていくのではないかと思う。

○ この日本学術会議の提言を受け、日本理化学協会という、高等学校の主に物理と化学の教員の研究団体の事務局で、全国にある北海道、東北、関東、東京、東海、北信越、近畿、中・四国、九州と九つのブロックのまとめ役をされているブロック長の意見を集約した。提言と理科の学習指導要領の編成についての資料を基に、ブロックでの状況を踏まえて個人的な意見を自由に記述し、事務局が取りまとめたものであり、主に四点に集約することができた。
現行の学習指導要領に対しては、全員が評価をしていたところである。具体的な意見としては、基礎科目とはいえ、理科3科目が履修できること、理科の各科目の履修率が大幅にアップしたこと、物化生地の基礎科目をそれぞれの専門性を持つ教員が指導できることがよいという意見であった。
次に、「基礎理科(仮称)」の設置に対しては、考え方や趣旨に賛同される方が数名いたが、ほとんどの方が反対の意見であった。具体的な反対意見としては、「基礎理科(仮称)」の設置が教える教員の専門性と意欲を失わせること、以前行った「理科I」などの反省がきちんとなされていないこと、実施するなら、6~8単位必要であるけれども、そのような大きな単位数の科目は非常に困難であること、現時点では、教える教員の確保は難しいこと、こういった意見があった。また、総合科目を次期学習指導要領に反映することに対しては、趣旨は分かるが、時期尚早だという方が数名いるが、その方を含めて全員の方が、次期学習指導要領の総合科目の設置は難しいだろうという意見であった。教員養成が間に合わないことや、あるいは、提案された内容自体がまだ十分には統合されていないのではないかという意見であった。最後に、理科教員に対して、総合科目が指導できる教員が必要かということに対しては、そういった点が必要だという方は数名いるが、中身は非常に深いということで、各科目の専門性を持つ教員であることが必要だという意見がほとんどであった。
全体としては、以前、「理科Ⅰ」を指導された先生で、その経験を通して総合科目の意義については積極的に認めるという方がいらっしゃったが、理科総合科目の設置には反対という先生が多数で、次期学習指導要領ですぐに設置することへの賛成意見はなかったところである。

○ 総合的な科目を創設する動きというのは、10年ほど前に非常に活発で、様々な団体が様々な案を提案して、もう一つ前の課程の問題を克服していこうというときに、盛んに議論された。結局、それぞれの領域の基礎が十分理解できる、総合的に自然を見る力をつける観点や探究的な活動ということも盛り込むと、とても高校生全員にやらせるのは難しいという結論に多くの方の考えが至った結果、現行のものが作られてきたと認識している。現状の基礎4科目のうちから3科目履修ということで、物理も履修者が増えているし、ようやく2単位の科目としてそれぞれの領域の基礎をどう教えるかということが、定着しかけている時期になっていると思う。今回は更にこれをより深い学びとか、探究的な学びにさらに良くしていく方向で改訂が進むのが望ましい方向だろうと思う。安易に総合的な科目にしてしまうと、指導者の力量が伴わない結果、学びが深まらないということに非常に懸念されるので、今回は現状の科目構成のままで、中身を更によくしていくことに注力するのが最善だと思う。

○ 現行の基礎を付した科目も、大学入試センターで課してほしい科目で、試験科目はこの科目だけにしてほしかったのである。でも、大学の入試の状況が当初予定したものとは全く違っていて、大学入試センターが、本来の基礎的な能力を試す試験ではなくて、選抜のために必要な試験となってしまっているために、基礎だけで止まらなくなってしまった。もし基礎だけで止めてくれていれば、今よりも物理基礎も地学基礎も更に履修率が高まって、かなりの生徒が四つの領域を学べたはずだったのであるが、そうなっていないという現状がまず1つあるので、提言内容の(2)には賛成できる部分がある。

○ 領域を超えた総合的な視点はとても大事だということはよく分かるが、現行でも中学3年生は第1分野、第2分野を超えた総合的な視点を入れているし、予定されている新しい科目の「数理探究(仮称)」というのは、数学と理科も超えた意味で領域を超えた総合的な学びを目指している。また、新しい学習指導要領では、それぞれの中でも資質・能力に着目するということになっているので、当然、物理、化学、生物、地学の中でも、似たような概念とか能力については、横軸を通す形で改訂を諮ることになっているので、そういう点でも領域を超えた総合的な視点は意識せざるを得ないと思っている。

○ 物理、化学、生物、地学、違う領域で違う学びをしているにもかかわらず、理科の態度としては、「事実に基づいて論理を組み立て議論し、判断に導く実証的態度は同じだ」と気づくことが大事である。一つの科目でやるよりは他の科目で学びながら実はやっていることは共通していると意識することが、異なる理科の領域を学んで科学という考え方を学ぶという点がすごく大事だと思うので、その意味でこの違う科目の中で同じことを学ぶことが重要。だから、事務局案が出した科目構成の方が、アクティブ・ラーニング等を考えてもよいのではないかと思っている。

○ 総合科目は、4科目を同じようにきちんと教えることは実態上かなり難しい。それに比べて今の科目は大変よいと思うが、趣旨を若干生かす必要はあるので、二つ意見をいうと、一つは、今でも基礎を普通科で4科目やっている学校も多くはない。それがよりやりやすくなり、よりプッシュするような文言として、4科目という文言を入れて、3科目でもよいけれど、4科目の方が推奨されているのだというのだったら、他教科との調整もいけるのではないかというのが一つの意見である。

○ もう一つ、「科学と人間生活」の教科書を見させていただくと、これが本来の趣旨になっていないというのが意見である。だから、「科学と人間生活」が、今回の提言の趣旨のようなものを一部かもしれないが、活かせると思うので、そこで若干それの要素が入るのではないかと思う。

○ 今まで理科というのは、結構な頻度で科目構成などが変わってきたという歴史があったが、今の3科目必履修になったところをしっかりやって、求められている資質・能力をどうやったら身に付けられるのかというのを、1回時間を置いてやらせていただきたいと思っており、是非事務局案のままでいってほしいと思っている。

○ これまでの何回かの改訂を経て、現在は、扱う内容や単元も定着してきていると思う。今回は、前の改訂で良くなったものを更にどう良くするかという点に力点を置き、更にそれにアクティブ・ラーニングをどう加えていくかを検討していくとよいと思っている。高等学校の科目の問題は、大学入試センター受検科目との連携が大きなネックになっている。さらに、実際には教員養成の影響をすごく受けている。つまり、どういう先生を育てていくかが大きな問題なのである。一般の大学では、高等学校の物理・化学・生物・地学の得意な先生を育成している。更に大学院に入り、専修免許を取る際には、物理の大学院に行った人は物理だけを学んで、高校の先生になっている。化学・生物・地学も同様である。物理・化学・生物・地学を広く勉強して専修免許を取っているケースはまれである。今後も一層専門に特化した高校のみが生まれてくる可能性が大きいので、そのような先生方は、専門教科の深い指導はできると思うが、自分の専門以外の教科を教えられるかというと、そこには、限りなく難しい現実がある。今日の議論を通して、教育課程改訂の問題というのは、根本では教員養成深く関わっており、そこをどうするかじっくり考えていかないといけないのだと痛感した。

6.その他の論点について

○ 特になし。

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初等中等教育局教育課程課教育課程第二係