教育課程部会 理科ワーキンググループ(第1回) 議事録

1.日時

平成27年11月10日(火曜日) 14時30分~16時30分

2.場所

文部科学省 東館 3F1特別会議室
東京都千代田区霞が関3-2-2

3.議題

  1. 理科教育の改善充実について
  2. その他

4.議事録

【米原教育課程課長補佐】    それでは、定刻より少し早いですが、皆様おそろいになりましたので、ただいまより中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会理科ワーキンググループを開催いたします。
  開会に当たりまして、文部科学省初等中等教育局教育課程課長の合田哲雄より御挨拶申し上げます。
【合田教育課程課長】    失礼いたします。教育課程課長の合田でございます。
  本日は、大島主査、片平主査代理をはじめ、先生方、大変お忙しいところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。また、日頃、研究の最前線にいらっしゃる方々も含めて、こういう形で我が国の小・中・高のカリキュラムの基準、全国的な基準である学習指導要領にお力添えを頂くという形になりましたことを、重ねて心からお礼を申し上げたいと思っております。
  私からは、今回、こういう場を設けさせていただいて議論させていただくことについて、今後の見通し等につきまして少し触れさせていただきたいと思っております。
  学習指導要領でございますけれども、これは毎回、毎回、2年ほどの時間を掛けて作り上げていく作業でございます。まず、基本的な考え方を本年8月に「論点整理」という形で中教審において作らせていただきました。これがいわば基礎工事でございまして、これからこの上に、全ての学校種、それから全ての教科につきまして構造物を積み上げていって、2年間の間に一つの大きな建築物を造り上げていくという作業になると思っております。
  この全体の作業でございますけれども、相互に関わりを持っております。高校の内容を変えれば、小・中に影響するし、それから、小・中の内容を変えることは多教科にも影響する構造になっておりまして、その中で特に理数、特に理科のワーキンググループにおかれましては、その重要な要素を御議論いただくことになろうかと思っております。
  先生方御案内のとおり、前回、現行の指導要領は小学校・中学校においては、2008年に改訂したものでございますが、例えば中学校の理科の授業時数は33%増やしたところでございます。現在40代の私どもよりも、今の高校生は中学校の理科の授業時数が多いということでございまして、これは私ども、前回の改訂で大変重要なポイントだということで改訂させていただいたところでございますが、他方で、後ほど御説明申し上げますように、日本の子供たち、PISAにしても、TIMSSにしても、大変できるわけでございますが、ところが、それが「実際に社会で役に立つと思うか」ですとか、「自分の職業にこれを生業というか選択してやっていきたいと思うか」ということになりますと、途端に国際的な平均水準よりも低いという状況にございまして、これをどう生かしていくのかですとか、それから、今回は高等学校のカリキュラムを大きく見直していこうという中で、「数理探究(仮称)」という新しい枠組みを作ってはどうかという議論がございます。これらの議論というものを、この理科ワーキンググループでしっかりとお受け止めいただいて、是非、御議論を賜りたいと思っております。
  本年度末までを目処に、大変お忙しいところを恐縮でございますが、8回程度、開催をさせていただきまして、一定の方向性をお示しいただきたいと思っております。後ほど御説明申し上げますように、各教科、それから学校種というそれらの議論を積み上げていって、全体として教育課程部会あるいは教育課程企画特別部会で全体構造を積み上げていく形になろうかと思っております。
  先生方におかれましては、日頃の御研究・御実践を踏まえた高い御見識・御経験を、是非この議論に忌憚なく御指摘・御示唆を頂きまして、お力添えを賜ればと思っている次第でございます。何とぞどうぞよろしくお願いを申し上げます。
【米原教育課程課長補佐】    議事に先立ちまして、本部会の主査及び主査代理について御報告いたします。
  資料2の初等中等教育分科会教育課程部会運営規則に基づきまして、本ワーキンググループは教育課程部会の決定により設置されており、主査及び主査代理は教育課程部会長が指名することとされています。
  教育課程部会長と御相談し、大島まり委員を主査に、片平克弘委員を主査代理にお願いしておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
  それでは、次に、委員の皆様を御紹介させていただきます。資料1として本ワーキンググループの名簿を配付させていただいておりますので、名簿順に御紹介させていただきます。
  赤石定治委員でございます。
【赤石委員】    よろしくお願いします。
  飯田寛志委員でございます。
【飯田委員】    どうぞよろしくお願いいたします。
【米原教育課程課長補佐】    江崎士郎委員でございます。
【江崎委員】    よろしくお願いします。
【米原教育課程課長補佐】    大島まり主査でございます。
【大島主査】    大島です。よろしくお願いいたします。
【米原教育課程課長補佐】    片平克弘主査代理でございます。
【片平主査代理】    片平です。どうぞよろしくお願いいたします。
【米原教育課程課長補佐】    川村教一委員でございます。
【川村委員】    川村と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
【米原教育課程課長補佐】    小玉秀史委員でございます。
【小玉委員】    よろしくお願いいたします。
【米原教育課程課長補佐】    後藤良秀委員でございます。
【後藤委員】    どうぞよろしくお願いします。
【米原教育課程課長補佐】    小林辰至委員でございます。
【小林委員】    よろしくお願いします。
【米原教育課程課長補佐】    田代直幸委員でございます。
【田代委員】    田代です。よろしくお願いします。
【米原教育課程課長補佐】    塚田昭一委員でございます。
【塚田委員】    よろしくお願いいたします。
【米原教育課程課長補佐】    古田ゆかり委員でございます。
【古田委員】    古田です。よろしくお願いします。
【米原教育課程課長補佐】    失礼いたしました、筒井和幸委員でございます。
【筒井委員】    筒井です。どうぞよろしくお願いします。
【米原教育課程課長補佐】    松浦克美委員でございます。
【松浦委員】    松浦です。よろしくお願いいたします。
【米原教育課程課長補佐】    三浦淳子委員でございます。
【三浦委員】    三浦です。よろしくお願いいたします。
【米原教育課程課長補佐】    なお、本日遅れて出席される委員といたしましして、鮫島朋美委員、本日は御欠席でございますが、角屋重樹委員、小田通委員、西原寛委員が本ワーキンググループの委員に就任されております。
  委員の御紹介は以上でございます。
  次に、文部科学省の関係者を御紹介させていただきます。
  文部科学省初等中等教育局教育課程課長の合田でございます。
【合田教育課程課長】    どうぞよろしくお願いいたします。
【米原教育課程課長補佐】    初等中等教育局主任視学官の清原でございます。
【清原主任視学官】    どうぞよろしくお願いいたします。
【米原教育課程課長補佐】    教育改革調整官の平野でございます。
【平野教育改革調整官】    よろしくお願いいたします。
【米原教育課程課長補佐】    教育課程課教育課程企画室長の大杉でございます。
【大杉教育課程企画室長】    よろしくお願いいたします。
【米原教育課程課長補佐】    私は教育課程課課長補佐の米原でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
  それでは、議事に入ります前に、大島主査、片平主査代理から御挨拶を頂ければと思います。
【大島主査】    皆様、こんにちは。本理科ワーキンググループの主査を仰せつかりました東京大学の大島です。
  先ほど、合田課長からありましたように、教育課程企画部会の審議内容は、皆様のお手元にも資料がございますように、「論点整理」としてまとめられています。今後は、いわゆる、基礎工事ということで、実際にこれからの学習指導要領に向けて様々な作業が入ることになるかと思います。
  今期の指導要領に向けて指導要領と、前回前の指導要領との非常に大きなところは、やはり社会情勢がかなり変わっているところがあるのではないかと思います。特に昨今、グローバル化が進み、情報化をはじめとして私たちの社会は非常に目まぐるしく変わっています。そのような中で、こちらのお手元の資料にもありますように、社会に開かれた教育課程の必要性が大きくうたわれていることが、今期の一つのキーワードになっているのではないかと思います。
  このような中で、三つの資質・能力をいかに教育課程を通じて育成していくかということが大事な観点になるのではないかと思います。科学技術の果たす役割は非常に大きくなっていますので、その意味で理科教育の位置付けも更に大きくなっているのではないかと思います。
  いろいろと課題もあるかと思いますが、これから様々な事柄を具現化していくことが私たちに課せられている任務ではないかと思います。スケジュール的には今年度末いっぱいでまとめるということで、非常に慌ただしくインテンシブな中で皆様に御参加いただき、御協力いただくことになるかと思いますが、是非よろしくお願いいたします。【片平主査代理】    皆様、こんにちは。主査代理を仰せつかりました筑波大学の片平と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
  私は、現在、筑波大の附属小学校で校長職を仰せつかって、月曜日と金曜日は、1年生から6年生までの小学生と一緒に過ごしております。それから、火曜日から水曜日、木曜日と、今度は筑波大学に戻って大学生、大学院生の指導に当たっています。
  ちょうど今、接している小学校がこの学習指導要領の改訂後、小学生、中学生、高校生になり、その時点で勉強する教育課程を我々が検討することになるわけです。そして今、大学で教えている大学生、大学院達は、今度は教える側に回っていくのだと、思いを新たにしました。
  このような両者の状況を見ながら皆様と議論を進め、大島主査とともに今後の日本の理科教育の在り方についてアクティブな意見交換をしていきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
【米原教育課程課長補佐】    ありがとうございました。
  それでは、本ワーキングの進行は、これより大島主査にお願いいたします。
【大島主査】    では、これより議事に入ります。
  初めに、本部会の審議等については、初等中等教育分科会教育課程部会運営規則第3条に基づき、原則公開により議事を進めさせていただくものといたします。それに伴いまして、第6条に基づき議事録を作成し、原則公開するものとして取り扱うこととさせていただきます。よろしくお願いいたします。
  なお、本日は、報道関係者より会議の撮影及び録音の申出がありました。これを許可しておりますので、御承知おきください。
  なお、テレビカメラによる撮影につきましては、申し訳ございませんが、ここまでとさせていただきます。
  それでは、事務局より配付資料の確認をお願いいたします。
【米原教育課程課長補佐】    配付資料の確認をさせていただきます。本日は、議事次第に記載しておりますとおり、資料1から9、その他机上に参考資料を配付いたしております。不足等ございましたら、事務局にお申し付けください。
  なお、机上にタブレット端末を置いてございますけれども、その中には、本ワーキングの審議に当たり参考となる小学校学習指導要領解説や関係する審議会の答申等をデータで入れております。適宜開いていただければ、電源が入るようになってございますので、御活用いただければと思います。
  また、本ワーキングの設置につきまして、新たに中央教育審議会初等中等教育分科会の委員になられた先生方におかれましては、机上に辞令をクリアファイルに入れて置かせていただいておりますので、御確認をお願いいたします。
  以上です。
【大島主査】    それでは、諮問、教育課程企画特別部会論点整理、改訂の検討体制、今後のスケジュール等について、事務局から説明をお願いいたします。
【大杉教育課程企画室長】    失礼いたします。
  それでは、先生方、お手元に資料4、資料5、それから緑色の論点整理の冊子を御用意いただければと思います。資料4、資料5、緑色の冊子でございます。時間の許す限りで論点整理、特に本ワーキングに関連の深いところを中心に、改めてですが御説明をさせていただきたいと存じます。
  まず、資料4でございますけれども、「学校段階等別及び教科等別ワーキンググループ等の設置について」ということでございます。申し訳ございません、組織図が後ろに付いておらないかもしれないのですけれども、組織図を作っておりますが、口頭で申し上げますと、教育課程企画特別部会、全体の論点整理をおまとめいただいた部会、その上には教育課程部会がございますけれども、その下に、今回、22の専門部会を設置させていただいております。各教科等別、それから学校種別、それから、それらをつなぐような総則・評価部会も設置させていただいておりますけれども、それらの各ワーキング等におきまして論点整理を踏まえた御議論を今後していただくということでございます。
  今回、少しいつもと違いますのは、数学・理科を身に付けた力を活用して探究的な活動を行うための高等学校における科目が検討されることになってございます。後ほど論点整理で御説明させていただきますけれども、これに関しましては、一つ特別チームを別途設置させていただいております。理科ワーキング、数学ワーキングの議論を超えた議論が必要になるかということで、別途、特別チームを設置させていただいておりますので、この議論については中心的にはこの特別チームにおいて別途御議論いただくということ、理科ワーキングにおきましては、小・中・高の理科全体を通じた御議論を頂くということで、そのあたりの議論をしっかりとつなげさせていただきたいと思っております。
  資料5でございますけれども、今後のスケジュールでございます。昨年11月に諮問をされまして、それを受けて8月にまとめられたのがこの「論点整理」、緑色の冊子でございますけれども、10月からということで、学校段階別・教科別の議論を開始させていただいております。
  この議論につきましては、年度末から年度明けを目処にお取りまとめいただき、それを教育課程部会又は教育課程企画特別部会におきまして全体の取りまとめ、審議のまとめを経まして、28年度内に中教審として答申をお出しいただくというスケジュールでございます。小学校の授業時数につきましては、英語の教科化などの動きも絡みまして、少し別途、年内から年明けの結論をお出しいただく。これは小学校部会において中心的に御議論いただくことになろうかと思いますけれども、そういった御予定でございます。
  そして、こういうスケジュールを踏まえた場合に、下にございますように、小・中・高校、それぞれ御覧のような、小学校は32年度、中学校は33年度、高校は34年度から年次進行ということの実施が予定されているところでございます。
  それでは、緑色の冊子をお開けいただきたいと思いますけれども、おめくりいただきますと目次がございまして、本文が53ページまで続いております。53ページ、最後までおめくりいただきますと、その次のページに教育課程企画特別部会の委員名簿、それから緑色の紙を挟みまして、14回にわたる教育課程企画特別部会の論点整理取りまとめまでの審議経過が掲載されてございます。その後、1枚緑色の紙をおめくりいただきますと、11月に出されました諮問文、1枚おめくりいただきますと「理由」でございます。
  簡単に申し上げますけれども、これからの子供たちが成人して社会で活躍する頃、どのような社会となっているか、それをイメージしながら子供たちに必要な力を付けていくこと、そのために教育の在り方、指導要領の在り方について新たな方向性を御議論いただくということでございます。
  これまで、現行の学習指導要領の様々な成果、前回改訂におきましては確かな学力のバランスのとれた育成でありますとか、教科を超えた言語活動の導入・重視ということで改訂がなされましたけれども、そういった改訂の成果、学校現場の真摯な取組の成果といたしまして、学力調査の結果など改善傾向にあるといったような成果も表れてきているところでございます。
  一方で、一番下にございますように、我が国の子供たち、根拠や理由を示しながら自分の考えを述べるということでありますとか、社会参加の意欲などにはまだまだ課題があるのではないかということ、そういったことを踏まえながら、次のページでございますけれども、一人一人の可能性をより一層伸ばし、新しい時代にふさわしい学習指導要領の在り方を考えていく必要があるということ、ESDなど様々な教育関係の取組の成果なども踏まえながら、何を教えるかという知識の質や量の改善はもちろんのこと、どのように学ぶか、それから、どのような力が身に付くかということを念頭に置きながら御議論いただく必要があるということでございます。
  具体的には、三つの柱が提示されてございまして、次のページ、一番下、「第一に」とございますけれども、教育目標・内容と学習・指導方法、評価の在り方を一体として捉えた、新しい指導要領の基本的な考え方につきまして、この緑色の冊子に基本的な考え方をおまとめいただいているところでございます。
  そして、次のページでございます、中ほど「第二に」とございますけれども、育成すべき資質・能力を踏まえた教科・科目の在り方を、本ワーキングを含め各教科等ワーキングにおいて具体的にこれから御議論いただくというところでございます。
  また、次のページ、一番下でございますけれども、「第三に」とございますけれども、学習指導要領の理念を実現するためのカリキュラム・マネジメント、指導方法・評価方法の改善、条件整備などを含めまして、指導要領の在り方にとどまらず、理念を実現するためのトータルの視点で御議論いただくということでございます。
  それでは、冒頭にお戻りいただきまして、論点整理の本文に移らせていただきたいと思います。
  冒頭、目次をおめくりいただきますと、1ページ、「2030年の社会と子供たちの未来」でございます。
  先ほど申し上げたように、スケジュールが順調に進みますれば、小学校において2020年からの新学習指導要領実施ということでございまして、おおよそ10年ごとの改訂ということで申し上げれば、新しい学習指導要領はおおよそ2030年頃までその役割を担うことが予想されるところでございます。その頃の社会の在り方を見据えながら、新しい指導要領の在り方を議論していくということでございますが、本論点整理におきましては、先ほど主査からも御紹介がございましたように、3ページ目にございます「社会に開かれた教育課程」を、教科・学校種を超えた全体の目指すべき方向性として理念として打ち出していただいているところでございます。
  3ページ目の一番下、「社会に開かれた教育課程」、社会や世界の状況を幅広く視野に入れ、よりよい学校教育を通してよりよい社会を創るという目標を、教育課程を通じて社会と共有していくこと、それから、4ページ目、上でございますけれども、これからの子供たちに求められる資質・能力をしっかり育んでいく教育課程であること、また、3番目、教育課程、学校教育を学校中に閉じずに、目指すところを社会と共有しながら、地域の人的・物的資源の活用なども通じて、目指すところを社会と連携しながら実現していく教育課程、こうしたことが全体の理念として打ち出されているところでございます。
  5ページ目、「前回改訂の成果と次期改訂に向けた課題」でございますけれども、先ほど諮問にもございましたように、前回改訂、現行学習指導要領、子供たちの「生きる力」の育成をより一層重視するという観点、学力の三要素を踏まえながら、「確かな学力」をバランスよく育むこと、また、教科を超えて言語活動や体験活動を重視することが改訂に盛り込まれたところでございます。
  これを踏まえて真摯な取組の成果として、様々な成果も上がってきていること、こうした成果を踏まえれば、前回改訂において重視された学力の三要素のバランスのとれた育成や、言語活動、体験活動の重視等については、引き続き充実を図ることが重要である、ということでございます。
  6ページ目では、「次期改訂に向けての課題」でございますけれども、我が国の子供たちについて、判断の根拠や理由を示しながら自分の考えを述べ、実験結果を分析して解釈・考察して説明することなどについて、引き続き課題が指摘されていることなどを踏まえますと、学力、体力、人間性という「生きる力」の全体を、教育課程、あるいは教科の授業等へ浸透・具体化することに関しては、まだまだ取り組むべき余地があるのではないかということ、6ページ目、一番下でございますけれども、言語活動の充実を掲げ、教科の枠を超えた具体的な展開を求め、一定の成果を上げられつつある現行学習指導要領の成果を踏まえながら、教育課程の全体像を念頭に置いた教育活動の展開という観点から、一層の浸透や具体化を図る、そういう観点からさらなる見直しを考えていく、ということでございます。
  そうした観点から7ページ目、一番下にございますように、「新しい学習指導要領等の在り方」、「何ができるようになるのか」という観点から、8ページ目にございますように「何を学ぶのか」「どのように学ぶのか」という具体的な学びの姿を考えながら構成していく必要があるということ。その際は、学びや知識、学ぶとはどのようなことか、知識とは何かといったことに関する様々な知見の蓄積も生かしていくということでございます。
  9ページ目から「育成すべき資質・能力について」でございますけれども、12ページ目に少し具体的な「これから求められる資質・能力」が記してございます。
  将来の予測が困難で、複雑で、変化の激しい社会、グローバル化が進展する社会にどのように向き合い、また、一人一人が幸せな人生を生きていくためにはどのような力が必要か、変化の中に生きる社会的存在としてということですけれども、様々な情報を受け止め、主体的に判断しながら社会をどう選ぶかを考え、他者と一緒に生き、課題を解決していくということ、様々な情報活用能力でありますとか、クリティカル・シンキング、統計的な分析に基づき判断する力等々、また、このページの四つ目の丸にございますように、我が国が科学技術・学術研究の先進国として将来にわたり存在感を発揮していくとともに、成果を広く共有していくために求められるような力、また、次の13ページ目にございますように、グローバル化する社会の中で言語や文化に対する理解を深め、他者と協働し、文化を理解し、また、自国の文化を継承し、というようなこと、また、2020年のオリンピック・パラリンピックもございますけれども、共生社会の実現に不可欠な他者への共感や思いやり等々、こうした力が求められるということでございます。
  こうした資質・能力、あまた提言されているわけでございますけれども、これらを学習指導要領あるいは教育課程の構造に落とし込んでいくためには、ある一定の構造化が必要であろうということでございます。緑色の冊子の後半がカラー刷りの補足資料になってございまして、その補足資料の27ページをお開きいただきたいと存じますけれども、大体、冊子の中ほどでございますけれども、補足資料のスライド番号27と打ってあるところでございます。
  「育成すべき資質・能力の三つの柱」ということで御提言を頂いておりまして、「何を知っているか、何ができるか」「知っていること・できることをどう使うか」「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか」、この三つの柱が重要であるということでございます。これらを、今後、各教科のワーキングにおいても、各教科におけるこの三つの柱がどのように整理されるかを御検討いただき、それを各教科でつないでいく視点が重要になってくるということでございます。
  本文にお戻りいただきまして、14ページ目でございますけれども、そうした三つの柱を、幼児教育から高等学校までを通じた見通しを持ってつないでいくということ、また、15ページ目の下にございますように、各教科の中で育まれる力、各教科の文脈の中で指導される内容と関連付けながら育まれる力と、総体的な観点から教育課程の構造の中でそれらをつないで実社会での様々な場面で活用できる汎用的な能力の双方を育てていく必要があるということ、16ページ目の最初の丸にございますように、各教科等を学ぶ本質的な意義と、各教科で育成される資質・能力の間の関連付けや内容の体系化を図り、全体像を整理していくことが必要になるということでございます。
  17ページ目から「アクティブ・ラーニング」でございますけれども、アクティブ・ラーニングにつきましては、18ページ目にございますように、特定の型ということではなく、学び全体を改善していく授業改善のための必要な視点として、調査していただいているところでございます。習得・活用・探究というプロセスの中での深い学びの過程、対話的な学びの過程、主体的な学びの過程、こうした三つの視点として整理していただいたところでございます。
  19ページ目からは、「学習評価の視点」ということでございますけれども、20ページ目にございますように、学力の三要素に沿った三つの観点からの整理、観点別学習状況の評価についてはそういった整理が必要ではないかという御提言を頂いているところでございます。
  22ページ目からは「指導要領の理念を実現するために必要な方策」ということでございまして、カリキュラム・マネジメント、それから教員の在り方、それから25ページ目からはICTなども含めた環境の整備ということで御提言を頂いているところでございます。
  以上が総論部分でございますけれども、26ページ目からが各論部分でございます。
  「各学校段階、各教科等における改訂への具体的な方向性」でございまして、26ページ目の三つの丸にございますように、各学校段階・教科等における検討におきましても、相互の関連付けを意識しながら、縦のつながり、横のつながりを意識しながら、総論的な検討と各論的な検討を相互につないで議論を深めていくことなどが求められるということでございまして、そういう意味では、理科ワーキングにおける議論を総則特別部会などで他教科の議論ともつながせていただきながら、今後の議論を進めさせていただくということでございます。
  27ページ目からが幼児教育、それから、28ページ目、小学校、中学校、高等学校と、それぞれの課題が整理されているところでございます。
  時間の関係で高等学校だけ触れさせていただきますけれども、32ページ目にございますように、高等学校、共通性という観点と、共通性の確保、高校生として共通に身に付けられる力を育むという観点と、32ページ目にありますような進路に応じた多様な可能性を伸ばす多様化への対応と、この二つの観点が必要ということで、全者共通性につきましては特に地理、歴史なども含めて共通する履修科目の見直しなどが提言いただいているところでございますけれども、特に「多様化への対応」という観点から、32ページ目の二つ目の丸にございますように、特に理数教育についてはSSHにおける取組事例なども参考にしつつ、理科と数学の知識や技能を総合的に活用して主体的な探究活動を行う選択科目、これが、先ほど申し上げた別途設置されております特別チームにおいて御議論いただく内容でございますけれども、こうしたことの御提言も頂いているところでございます。
  更にはということで、二つ下のところにもございますけれども、そういった選択科目に限らず、教科横断的な学びでありますとか、探究心、論理的思考力を育むということもしっかりと考えていくべきという御提言を頂いているところでございます。
  それでは、特に教科のところで理科の部分を御覧いただきたいと思いますけれども、38ページ目でございます。
  38ページ目、5「理科」でございます。現行学習指導要領に基づく充実が図られてきているところでございますけれども、一方で理科の勉強が楽しいと答える中高生の割合が低いこと、また、学習する意義の実感等について充実が求められていること、進歩・発展する科学技術等、自然の事物・現象との間の関係を実感する機会を持たせることにより、理科好きの子供たちの裾野を拡大していくことが小・中・高を通じて求められるということでございます。
  また、様々な地球規模の課題の解決の中では、我が国が先進国として世界をリードしていくことも求められるところでございます。
  こうしたところから、次期改訂に向けて幼児期に育まれた自然との関わり等の基礎や、生活科をはじめとする低学年における学習の上に小・中・高を通じて育成すべき資質・能力を三つの柱に沿って明確化し、各学校段階を通じて実社会との関わりを意識した探究的な活動の充実等を図っていくこと、「加えて」ということで、高等学校につきましては、先ほど触れさせていただきました「数理探究」の設置も求められるということでございまして、こうした方向性を踏まえて本ワーキングで御議論を頂きたいと考えているところでございます。
  いずれにいたしましても、48ページ目にございますように、「今後のスケジュール等」ということで本論点整理を踏まえながら、教科に閉じた議論ではなく、カリキュラム全体としてどのような資質・能力を育成すべきかという点を踏まえながら御議論を頂きたいということでございまして、本理科ワーキングの議論は、先ほど申し上げましたように総則部会などを通じて他教科にもしっかりと議論をつながせていただきたいと考えているところでございます。
  長くなりましたが、「論点整理」の御説明につきましては、以上でございます。ありがとうございます。
【大島主査】    大杉室長、ありがとうございました。
  それでは、今までの説明に対しまして、質問がありましたら、お願いいたします。
  何かございますでしょうか。
  どうぞ。
【松浦委員】    小・中・高一緒で理科を検討するということで、内容的には小・中・高、それぞれ違うわけですよね。その中で、一緒にここで議論したいという、それでまとめるということが、やっぱりある意図をもって小・中・高一緒だと感じたのですけれども、その辺はいかがなのでしょうか。
【大杉教育課程企画室長】    ありがとうございます。
  御指摘のとおりと申し上げるべきだと思いますけれども、本論点整理にございますように、小・中・高を超えて先ほど理科のところでは、幼児教育で培った力も踏まえてということでございますけれども、資質・能力という観点で、ある意味、通じた議論をお願いしたいということでございます。
  もちろん、内容面につきまして、それぞれの学校種ごとの詰めるべき点もございますので、その両方を見据えながらということになりますけれども、各ワーキングにおきましてそういった議論をしていただくということ、また、教育課程全体におきましては、例えば義務教育までに育成すべき能力は何かというようなことでありますとか、今回特に18歳がクローズアップされておりますので、18歳までに育成すべき能力とは何かということを教科横断的に整理していくという全体の構造も必要になってまいるわけですけれども、そういった方向性を踏まえながら今回このような設置の仕方とさせていただいているところでございます。
【松浦委員】    どうもありがとうございました。
【大島主査】    よろしいでしょうか。
  ほかに何かございますでしょうか。
  よろしいでしょうか。
  では、続いて本ワーキンググループにおける検討事項、理科における目標、指導内容等について、事務局から御説明をお願いいたします。
【米原教育課程課長補佐】    それでは、まず、本ワーキンググループにおける検討事項について御説明させていただきます。資料8を御覧ください。
  先ほど大杉室長より説明がありました、論点整理で示されました教育課程全体の改訂の方向性及び理科の内容の見直し等を踏まえまして、理科に関する検討事項を資料8にございますように整理いたしているところでございます。
  大きく分けて四つの検討事項を立てているところでございます。
  まず、一つ目ですけれども、「理科を通じて育成すべき資質・能力について」ということで、まずは理科を学ぶ本質的な意義や他教科、理科は理科だけで完結するものではなく、算数や数学、技術・家庭、情報、保健、その他教科と非常に関係性がありますので、そうした他教科との関連性について御議論・御検討いただきたいと思っております。
  また、資質・能力の三つの柱、ここに三つ記載しておりますけれども、「何を知っているか、何ができるか」「知っていること・できることをどう使うか」「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか」、この三つの柱に沿った理科を通じて育成すべき資質・能力を明確化するということで御議論いただきたいと考えております。
  また、「幼稚園・小学校・中学校・高等学校を通じた理科において育成すべき資質・能力の系統性について」ということについても御議論いただきたいと思っています。
  二つ目の検討事項ですけれども、アクティブ・ラーニングの三つの視点を踏まえました資質・能力の育成のために重視すべき理科の指導等の改善充実の在り方について御検討いただきたいと考えております。
  三つ目の検討事項でございますけれども、資質・能力の育成のために重視すべき理科の評価の在り方について御検討いただきたいと考えてございます。
  最後に四つ目でございますけれども、必要な支援、理科教育を実施するに当たって必要な支援、特に特別支援教育の観点から必要な支援等を含むということでございますけれども、また、それ以外の条件整備等についても御議論いただきたいと考えております。
  このワーキングにおける検討事項については、以上でございます。
  続きまして、検討に当たりまして検討の御参考としていただきたいということで、現行の学習指導要領についてと理科教育に係る現状と課題について御説明させていただきたいと思います。資料9を御覧ください。
  まず、現行の学習指導要領についてでございますけれども、おめくりいただきまして2ページでございますが、学習指導要領、大体10年に一度改訂が行われておりまして、現行の学習指導要領につきましては、平成20年・21年に改訂したものが、今、有効になっているところでございます。
  現行の学習指導要領でございますけれども、3ページを御覧ください。
  現行の学習指導要領の理念といたしましては、平成10年から11年改訂の学習指導要領の理念は「生きる力」を育むということでございましたけれども、その「生きる力」を育むという理念がますます重要であるということで、「ゆとり」か「詰め込み」かではなく、これからの社会において必要となる知・徳・体のバランスのとれた「生きる力」をより効果的に育成する、ということが現行の学習指導要領の理念となっております。
  「生きる力」につきましては、右側に図がございますけれども、「確かな学力」「豊かな心」「健やかな体」で構成される力ということで整理いたしているところでございます。
  続きまして、4ページでございますけれども、現行の学習指導要領におきまして、小・中・高等学校理科の目標及び特徴的な記載事項について御説明させていただきます。
  具体的な全体の内容につきましては、指導要領の本体を御確認いただければと思いますけれども、ここは目標と特徴的な記載事項について御説明をさせていただきます。
  まず、小学校でございますけれども、目標として、「自然に親しみ、見通しを持って観察、実験などを行い、問題解決の能力と自然を愛する心情を育てるとともに、自然の事物・現象についての実感を伴った理解を図り、科学的な見方や考え方を養う」ことが目標として掲げられております。
  学年ごとの目標といたしまして、第3学年につきましては「比較」を目標とし、第4学年については「関係付けること」、第5学年については「条件に目を向けること」、第6学年については「推論すること」を主として目標として掲げているところでございます。
  指導計画の作成と内容の取り扱いにつきましては、「観察、実験の結果を整理し考察する学習活動や、科学的な言葉や概念を使用して考えたり説明したりするなどの学習活動が充実するよう配慮すること」が挙げられているところでございます。
  次に、中学校でございますけれども、目標として、「自然の事物・現象に進んで関わり、目的意識を持って観察、実験などを行い、科学的に探究する能力の基礎と態度を育てるとともに、自然の事物・現象についての理解を深め、科学的な見方や考え方を養う」ことを目標として掲げております。
  分野の目標といたしまして、「観察、実験の結果を分析して解釈し、表現する能力を育てる」ことを掲げてございます。
  指導計画の作成と内容の取り扱いにつきましては、「問題を見いだし、観察、実験を計画する学習活動、観察、実験の結果を分析し、解釈する学習活動、科学的な概念を使用して考えたり説明したりするなどの学習活動が充実するように配慮すること」等が掲げられているところでございます。
  次に、高等学校の目標でございますけれども、自然の事物・現象に対する関心や探究心を高め、目的意識を持って観察、実験などを行い、科学的に探究する能力と態度を育てるとともに、自然の事物・現象についての理解を深め、科学的な自然観を育成する」ことが目標として掲げられてございます。
  分野の目標といたしまして、物理、化学、生物、地学等ございますけれども、それぞれについて「探究する能力と態度を育てる」ことが分野ごとの目標として掲げられております。
  指導計画の作成と内容の取り扱いにつきましては、「各科目の指導に当たっては、観察、実験などの結果を分析し、解釈してみずからの考えを導き出し、それらを表現するなどの学習活動を充実すること」が掲げられているところでございます。
  次に、現行の学習指導要領における理科の改善等、前の指導要領と比較しての改善事項について御説明します。5ページを御覧ください。
  まず、指導内容の充実を図っているところでございます。小学校理科においては、骨と筋肉の動き、月の表面などの内容を追加してございます。中学校においては、イオン、遺伝の規則性、放射線などが追加されてございます。
  授業時数についても増加しております。小学校理科は4年間で350時間から405時間に増加しており、中学校3年間では290時間から385時間に増加しております。
  また、観察・実験の充実、課題学習の導入・日常生活や社会との関連性の重視ということがうたわれているところでございます。
  また、高等学校の理科の科目の構成につきましては、基礎的な科学的素養を幅広く養う科目として、各科目の基礎を付した科目を新設して、このうちの三つの履修を主な履修形態としているところでございます。
  標準時数、標準単位数、科目構成等につきましては、下の表を御覧いただければと思います。
  続きまして、理科の現状と課題につきまして御説明させていただきます。少しページが飛びまして11ページを御覧ください。
  まず、「OECD生徒の学習到達度調査(PISA)の結果」について御説明させていただきます。直近では2012年に実施されたものでございますけれども、15歳児を対象に実施されたもので、我が国では高校1年生を対象にしたものでございますが、「数学的リテラシー」「読解力」「科学的リテラシー」、三分野において平均得点が比較可能な調査回以降、最も高くなってございます。一方で、右下に表がございますけれども、上位層の割合は他のトップレベルの国・地域よりも低い割合になっているところでございます。
  続きまして12ページでございますが、「数学・理科の学習に対する生徒の意識」ということで、国際平均に比べまして日本の中学生は、学習の楽しさ、実社会との連関に対して肯定的な回答をする割合が低いなど、学習意欲の面で課題があると言われております。
  表については、御覧いただければと思います。
  次に、13ページでございますけれども、このような国際比較だけではなく、国内における調査でも、今申し上げたような関心・意欲・態度についての課題が表れておりまして、平成27年度全国学力・学習状況調査の結果でございますけれども、学習に対する関心・意欲・態度に関する質問項目についてでございますけれども、一般的にどの教科でも小学校より中学校で肯定的回答が減少する傾向にございますけれども、理科については、国語、算数、数学と比較しても顕著に差が生じてございます。例えば「教科の勉強が好き」ということについては、理科については3年に一度の調査なので、24年度、27年度の調査でございますけれども、理科については、小学校、中学校で20ポイント下がっており、国語は3ポイント、算数・数学は9ポイントということで、理科が大きく下がっております。
  「教科の勉強は大切」「教科の勉強が分かる」「教科の勉強は役に立つ」ということについても、同じような傾向が出ているところでございます。
  一方で、次の14ページを御覧いただければと思いますけれども、授業の内容としては3年前と比較すると、言語活動の充実や観察・実験の結果の考察などがより一層行われていることがうかがえるところでございます。24年度と27年度を比較しますと、理科の授業で自分の考えや考察を周りの人に説明したり、発表したりしているかということについても、「当てはまる」「どちらかといえば当てはまる」というものが10%以上増えているところでございますし、理科の授業で観察や実験の結果を基に考察しているかということについても10ポイント以上増加しているところでございます。
  ただ、15ページにございますけれども、調査結果を分析して分かったことといたしまして、教員が観察・実験の結果を整理し考察する指導の頻度が高かったり、児童生徒が理科の授業で観察や実験の進め方や考え方が間違っていないか振り返って考えているほど正答率が高い傾向が表れているところでございます。
  次に、16ページでございますけれども、全国学力・学習状況調査において観察・実験の結果などを整理・分析した上で、解釈・考察し、説明することについて、小学校、中学校ともに課題の所在が明らかになったところでございます。
  また、17ページでございますけれども、「深い学びと学力の関係」ということで、学級やグループでの話し合いなどの活動で、自分の考えを深めたり、広げたりすることができているかについて、肯定的回答の方が平均正答率が高い状況が表れているところでございます。
  続きまして、次ページでございますけれども、高等学校の理科教育の現状と課題についてでございます。
  まず、高等学校の理数教育の現状でございますけれども、先ほど少し御説明しましたが、「物理」「化学」「生物」「地学」がそれぞれ4単位ございまして、その下に基礎を付した科目がある。それ以外に、「科学と人間生活」という科目と「理科課題研究」という科目が置かれているところでございます。
  今回、現行の学習指導要領になって理科の基礎を付した科目については旧課程よりも履修率が上昇しているところでございます。
  また、丸3でございますけれども、現行の学習指導要領から歯止め規定が廃止されたということがありまして、教科書のページ数が大幅に、各科目、増加しているところでございます。
  また、先進的な理数系教育を行う高等学校等をスーパーサイエンスハイスクールとして指定し、支援をしてきているところで、高等学校段階からの課題研究などに成果を上げているところでございます。
  高等学校における理数教育の課題でございますけれども、先ほどの小学校、中学校とほとんど同じでございますけれども、数学、理科の勉強が好きだという割合であったり、大切だと答えた高校生の割合であったり、社会に出たら理科の必要はなくなると答えた割合等々に課題があるということが言えるかと考えております。
  最後に次ページでございますけれども、理科に限らない話でございますけれども、「生徒の自己肯定感、社会参画に関する意識」ということで、米中韓の生徒に比べまして、日本の生徒は、自分には人並みの能力があると自尊心を持っている割合が低く、みずからの参加により社会現象が変えられるかもしれないという意識も低いという調査結果もあるところでございます。
  説明は以上でございます。
【大島主査】    ありがとうございました。
  では、これから約1時間強ですか、16時20分から25分までに自由討議を始めさせていただきたいと思います。
  本日は第1回目で初めての顔合わせになりますので、皆様から自由な御意見を頂きたいと思います。
  その際に、先ほど説明がありました教育課程企画特別部会の論点整理、資料6ですか、この緑の冊子と、本ワーキンググループにおける検討事項、四つほどポイントをまとめていただきました資料8に基づいて、これらを踏まえて意見をお願いしたいと思います。
  ただ、皆様方、御専門に関連したことや、特に検討事項に関連して日頃から思っていらっしゃること、考えていらっしゃることがあるかと思いますし、あと、取り組んでいらっしゃることもあるかと思いますので、御意見を頂いても結構です。
  なお、御発言の際には名札を立てていただきまして、発言が終わりましたら元に戻していただきますようにお願いいたします。
  あと、限られた時間でございますので、1人当たりたくさん話したいと思いますけれども、約3分程度で御発言をまとめていただきますよう、御協力のほどをよろしくお願いいたします。
  では、討論を始めたいと思いますので、どうぞ御自由に御意見があります方からよろしくお願いします。
  では、松浦委員。
【松浦委員】    今回の諮問、去年の11月の諮問を見たときに、大変重要な、適切な、本当に大事な諮問がされたと感じました。やはり、コンピューターや、ネットワークや、ビッグデータが進んで、人がやることと機械がやることが社会が求めるのとは違ってきているというので、それのときに、今までと違う教育に大きく変えていかなければいけないという諮問がされていると思って、大変重要だと思います。
  そのために「アクティブ・ラーニング」というところが出されているのも大変適切だという感じがして、その中で、理科は特にそれができる、それがやりやすい部分があるので、理科が中心になってこのアクティブ・ラーニングを推進するためにここでよい検討ができればと思っております。
  もう一点は、学力の三要素のうち、私は高等学校の理科を今まで見てきたわけですけれども、前回の学習指導要領にもお手伝いさせていただいて、バランスよくというふうに学習指導要領はなっているのに、実際の教科書はほとんど知識・技能中心になってしまっている。しかも、それで高校の現場で教えられているのが知識・技能中心となっているので、これを今回、バランスよく。
  だから、学習指導要領上は前もバランスがよいのだけれども、今の時代、教科書と現場がそうなっていないので、実際の教科書がこの三要素がバランスよくなるように、実際の学校で教えられるときの中身が、この三要素がバランスよくなるように、どういうふうな学習指導要領を作っていけばよいか、そこを中心に議論できればうれしいと思います。
  それに関連して、大変感激したのは、既に昨年度の12月に出た、ここにある5番目の資料、端末資料の中で、「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育」云々という中教審答申がありますけれども、これの6ページを私が見たときに、こういう文言があったのです。
  「学力の三要素を『社会で自立して活動していくために必要な力』という観点から捉え直し、高等学校教育を通じて」という、だから、今までは、法律上は学校教育法の中では知識・技能が先で、次が思考力・判断力・表現力で、最後が主体的な学習する態度を捉え直して、逆の順番で書いてある。これこそが今のアクティブ・ラーニングではないか。これに合わせるように小・中・高の学習を変えていければ、今回の諮問にかなり応えることになるのではないかと考えております。
  以上です。
【大島主査】    ありがとうございました。貴重な御意見、ありがとうございます。
  小林委員、お願いします。
【小林委員】    上越教育大学の小林です。
  一つ目の「理科を学ぶ本質的な意義と他教科との関係」についてコメントしたいと思います。
  小・中・高校生の理科という教科の捉え方を見ていますと、理科の学習は、科学の成果の結果としての知識を暗記するという、そういう意識が強いように思うところです。理科という教科は、科学を背景に成り立っている教科ですので、自然の仕組みや自然の中に隠れている原理や法則性などを、科学の法を用いて自分で見つけていく教科なのだということを、観察や実験を通して気付かせるとともに、問題解決や探究する能力の育成に結びつくよう、学習指導要領なり指導の改善が必要かと思います。
  例えば実験は、原因と結果の関係が認められる自然事象を対象として問題解決します。原因と考えられる要因を条件として、条件をこうこうこういうふうに変えると結果はこうなるだろうという見通しを立てて確かめていきます。このような問題解決の考え方は、理科に固有のものではなく、取り上げる対象が異なる家庭科、体育など、恐らく全ての教科に通じる汎用的な能力だと考えます。何か解決しなければならない問題に遭遇したとき、知識を活用してここをこういうふうにすれば結果はもっとよくなるのではなかろうかと考え実践できる能力を育む、これが理科を学ぶ本質的な意義かと思います。
  以上です。
【大島主査】    三浦委員、よろしくお願いいたします。
【三浦委員】    広島国泰寺高校の三浦です。
  現場の教員として、多分、この場に呼ばれたのではないかと思いますので、実際、生徒を前にした私が今考えていることについて、幾つか話をさせていただきたいと思っています。
  まず、最初に、「理科を通じて育成すべき資質・能力について」は、いろいろ大学の先生方が述べられていることはもっともなのですけれども、特に私は生物の教員なので、できれば命をすごく大事にするようなものが理科の中にもあればよい、それが明言化されればすごくうれしいと思っています。
  それから、やはりこの後、何十年か、この指導要領が動いていくので、その中で、この中にも入っていたのですけれども、「科学的な根拠を持って自分の意見が述べられる」というところをすごく大事にしてほしいと思っています。
  それから、松浦先生がおっしゃいましたけれども、ここの2番目の柱にあるアクティブ・ラーニングについては、広島県の中でも実はもうたくさん教員の方に落ちていまして、アクティブ・ラーニングをどう進めるかという話がいっぱい進んでいます。でも、私たち理科の教員にとってみると、実は少しずつ今までもやってきたことなのではないかというのがあります。それをどのようにしてもっと良い方法にすればよいのかを理科は考えるところにあるのではないかと思いながら授業をしています。
  それから、現場の教員として強調したいことは4番にありまして、条件整備等につきましては、是非、声を大にしてここで言いたいと思っています。教員はもともと真面目なので、良い授業をしたいという思いはすごくあります。ただ、昨今、いろいろな事情があって、なかなか良い授業をするための方策を手に入れても、それを考える時間的なものがすごく不足していると思います。例えば1クラスの学級をすごく人数を減らしていただくような予算の支援をしていただくとか、そういうところも現場の教員は求めているところなので、そこを是非、厚くしていただかないと、何十年後かまでこの理論・理想がつながっていくようなものは難しいのではないかと思っています。
  以上です。
【大島主査】    ありがとうございます。
  古田委員、よろしくお願いいたします。
【古田委員】    古田でございます。よろしくお願いします。
  私、「サイエンスライター」と肩書が付いているのですけれども、文章を書くことのほかに、科学と社会を結び付けた学びを開発し、実践・運営する活動もしておりまして、そういったことで発言させていただけたらと思います。
  まず、今出ておりますアクティブ・ラーニングの件ですけれども、アクティブ・ラーニングはここでいろいろなものを指していると思いますが、課題発見、課題解決、体験学習、調査学習、ワークショップ、ディベート、グループワークなどいろいろあると思いますけれども、そういったことを学習のプログラムとして設計し、実施していくには、非常に教員の多くのディスカッションですとか緻密な設計が必要になって、それから出口ですね、どういった力を体得させ、何を出口にするかということの議論のコンセンサスがないとできないことだと思います。
  つまり、今、三浦先生がおっしゃったように、そういう議論をする余裕ですとか、出口を設計する余裕というものが絶対に必要で、こういうとき、人数のこともそうですけれども、時間のこともそうなのです。私どもが例えば二泊三日のスタディーツアーをやるときなどは、半年ぐらいの時間を掛けて毎晩ディスカッションをしながら、翌日の計画はありますが、翌日のプランを作っていくということをして初めてその三日間が達成できるというようなことがありますので、これこれこういうふうにやりましょうという話ではないということをやはり皆様に分かっていただく必要があると思います。
  それともう一つは、教科横断の件ですけれども、これもやはり教員の社会的視野が非常に重要だと感じておりまして、理科の先生であっても、社会の中の課題、もちろんどういった社会に生きていく、どういった社会になって、その社会で生きていく子供を育成するかということであると、やはり社会に対する目を向ける視野というものが広く保証されなければいけないと思います。
  例えば、時々、最近は国語の中でも理科的な内容の読解が求められることが非常に多くございますし、あるとき、家庭科の先生たちの教員研修などで話したときには、「科学的な思考を身に付けさせたいけれども、理科の先生に相談しても何かはっきりした答えが出てこないのよね」というような話がよく出てくるのです。つまり、理科の先生は家庭科を関係ないと思っていらっしゃる。そういったことをやはり制度的に意識付けをしていくような、そういう指導要領になっていったらよいと思います。
  以上です。
【大島主査】    ありがとうございます。
  今までの議論で幾つかポイントがあるのかと思います。三つの柱のうちの個別の知識という偏重から、知識の質及び深みについて、今後、重視していくということですが、一つの切り口としてアクティブ・ラーニングが挙げられます。その重要性は、皆様、お互いの共通点としてありますが、三浦委員や古田委員からの御意見にもございましたように、実際にどうやってアクティブ・ラーニングとして具現化するといったときに、幾つかの課題があるということなのかと思いました。
  あと、一点、教科横断的な話がディスカッションの中で出てきたと思います。
  失礼いたしました、川村委員、お願いいたします。
【川村委員】    よろしくお願いいたします。
  私は大学で理科教育学を担当している関係で、秋田県の公立学校の小学校・中学校及び高校の理科の先生の研修に呼ばれることがありますので、秋田県ではという特別な事情ではございますが、今のことについて情報提供したいと思います。
  アクティブ・ラーニングに関しては、秋田県は随分前から一般的な授業の中で取り入れているようで、そのノウハウでありますとか成果・課題を教員間で共有するために、県教委主催、あるいは一部の地域では市教育委員会主催の教員研修が行われています。
  そういった研修会で地元の先生方の授業を拝見いたしますと、文部科学省の方が見ると、まだ満点とは言えないかもしれませんが、積極的にふだんの授業の中で取り入れられるよう先生方が努力している様子が見られます。
  それを教員研修の場合でほかの先生方に紹介し、その後、研究協議で議論するという形で、よりよい実践、アクティブ・ラーニングの在り方を追究しているのが広く見られて、私は専門外でございますが、勉強させていただいているところでございます。
  ただ、秋田県に限っての問題ですが、教員の平均年齢がもう高いということで、ここ数年のうちに、現在アクティブ・ラーニングを積極的に推進されている先生方が退職を迎える、その後どうするのかということが話題になっております。この、次に改訂されます学習指導要領が動き出したときに、今、秋田県を支えているアクティブ・ラーニングが得意な先生がいらっしゃらなくなる可能性が非常に高い、それをどのように若い世代に伝えていくか、そこが秋田県における改訂後の学習指導要領、アクティブ・ラーニングがうまくいくかどうかについての鍵を握っているということを話題にしておりますが、現在のところは、具体的に良い改善策は県教委の方との話でも見えておりません。これは秋田県の子供が少なくなっている関係で、教員を定年退職の方の補充をそのまますることができないという地方の実情でございます。御参考までに秋田県の事情でした。
【大島主査】    ありがとうございました。
  グッド・エクササイズということで具体的な成功例のお話をしていただきました。これらを参考に、学習指導要領に落とし込むということかと思います。そして、継続して次の教員の世代にも伝えていくことが、言われた点ではないかと思います。
  ほかに。
  田代委員、よろしくお願いします。
【田代委員】    3点述べます。
  まず、理科の場合は、この四つの柱、「エネルギー」「粒子」「生命」「地球」があります。資質・能力をこれから大事にするということではあるのですけれども、やはり知識の部分も大事な部分があります。前回の改訂時の二項対立ではないのですけれども、資質・能力が大事と言い過ぎると、押さえるべき知識・技能が薄れる部分があるので注意する必要があります。なぜ知識が大事かというと、知識を基に考える。そういうことがあるので、4つの柱で示した表をつくり概念や知識のつながりを示し、知識の部分も大事というところを示しているのです。改めて言うまでもないのですけれども、知識「偏重」なので、偏りを減らせということなのです。知識軽視というムードにならないように言っておきたいと思います。
  2点目です。前回の学習指導要領には、この表は載ったのですけれども、この表の読み方、あるいはこの表の意図、それは残念ながら解説にも書かれていません。この表はそれぞれの県の指導主事の方に聞くと、非常によいと言われるのですけれども、読み方、見方が書かれていないのです。ですので、次は是非、学習指導要領解説の方でどういうふうに読んだらよいのか、例えば小学校の何は中学校でどう生きるのか、解説の本編を読むと少し書かれているのですけれども、この表の意図や読み方をしっかり打ち出すと、小・中・高のつながりが見えてくるのではないかと思います。是非、解説等に書いてもらえればと思います。
  3点目なのですけれども、現行の生活科は、かなり理科の内容を意識しながら生活科を作ってもらいました。でも、生活科はまさに資質・能力の教科であって、内容が書かれていません。でも、義務教育なのに押さえるべき内容点が何を押さえたのかというところがなくて義務教育と言ってよいのでしょうか。
  指導しているときに、ここは押さえている内容というのが分かれば、1・2年生で習ったことを使って3・4年で生かそうという発想も出てくるし、先生の頭の中も、例えばこまを回しているから、こまを使って3年の授業で生かそうとか、4年の授業で生かそうという発想ができるのです。けれども、付けた能力はぼんやりとしているので、何を学んだか、何を活用すればよいかが分からないということなのです。ですので、生活科も理科に関係する部分については、内容も示していただいて、上の学年のどの部分に関わっているのかわかるように示し、その中で気付きの質を深めるような教科にするとよいと考えます。そうすることで、小学校6年間、そして中学校3年間のつながりが非常によくなって、生活科で学んだ内容が理科でこういうふうに生きているのだなということを、先生も子供たちも実感できるようになるのではないかと思います。
  以上です。
【大島主査】    ありがとうございました。
  塚田委員、よろしくお願いいたします。
【塚田委員】    塚田でございます。
  私は田代先生と少し同じようなことを考えておりまして、1番の「理科を通じて育成すべき資質・能力」ということで、「資質・能力」という部分がすごくクローズアップされています。私は、前回、小学校学習指導要領理科の作成協力者として関わらせていただきましたけれども、その中で、今日の資料の中の小学校の中で3年生は「比較」、4年生は「関係付け」、5年生は「条件制御」、6年生は「推論」という形で示されており、かなり小学校の先生方に根付いていて定着しています。
  この部分だけをクローズアップしていきますと、どうしても学習内容とのつながりという部分がやはり薄れてしまいます。私は理科の資質・能力を学習内容とのつながり、学習活動とのつながりからしっかり考えていかなければいけないと思っております。
  もう一つは、先生方が「資質・能力」ということで「比較」とか「関係付け」などは意識して指導されていますが、子供が自ら自覚できるようにすることが大切だと思います。子供が必要感を持って、例えば、昆虫とそうでないものを比べてみようとか、そういった活動の中で子供が自ら分類するための比較の手段を自覚し、問題解決の過程を通して使っていけるようになっていくことが望ましいと思っているところでございます。
  以上です。
【大島主査】    ありがとうございます。
  田代委員、塚田委員、あと松浦委員もこの三つの資質をバランスよく、そして教科書にも落とし込むことが必要だとおっしゃっていたと思います。改めてバランスよくやるということなのかと思います。
  では、小玉委員、よろしくお願いいたします。
【小玉委員】    高等学校に勤務しております小玉です。
  理科の地学が専門ですけれども、ちょうど私が手を挙げようとしたときに田代先生が手を挙げて、全く同じことを言われてしまったのですけれども、ちょっと視点を変えてお話ししたいと思います。
  この指導要領の解説のところですけれども、小・中には高校の部分が載っていないのですね。これが私は、是非、載せてほしいというのと、高校のところを見ると、系統的にエネルギーとか、粒子とか、生命とか、地球をきちんと繰り返して学ぶ、そして、中身をきちっと定着させるという意図がすごく入っている表でございます。是非、後で高等学校の解説を見ていただければ非常によく分かると思います。小・中の先生に伺いましたところ、この表の意味が分からないと言う方が結構多くて、非常にがっかりしたので、田代先生の御意見に大変賛成で、これをしっかり書く、分厚い解説にしてほしいと思っています。
  そこで、本校もアクティブ・ラーニングを教員全体の教育目標の一番トップに挙げてアクティブ・ラーニングを、「佐倉アクティブ・ラーニング」と銘打っているのですけれども、通常言われているアクティブ・ラーニングと視点が違います。
  というのは、高等学校においても、内容はすごく大事なのです。何を学ぶかという指導要領の中身、これはすごく幾多の、多くの、地学ですと地学のいろいろな分野から精選されてえりすぐられたもの、最小限のものを載せている。本当はもっとたくさん増やしたいところですが、最小限のものを載せている。これを学べば、そのほかのものも類推して学べるだろうという厳選されたものが載っている。その内容が最初にありきだと思うのです。それを基に、それをではいかに学ぶとよいのかということで、アクティブ・ラーニングという手法もあるかな。
  本校で通常のアクティブ・ラーニングと言わずに「佐倉アクティブ・ラーニング」と言っているのは意図がありまして、「アクティブ・ラーニング」と言いますと、形だけをやってしまうのです。ペアワーク、グループワーク、形だけやってしまう。
  ところが、それだと、中身が定着しないということで、本校の場合は、脳が活性化するというアクティブ、授業中に脳が100%活性化するものを目指して授業をやっていただいて、私も全員の授業を見ますけれども、70人いますから1か月掛かるのですけれども、そのときには、必ず私が見た授業については生徒一人一人に授業振り返りシートを書いてもらうので、そのトップが「頭脳が活性化していましたか」がトップに来ます。その次に「知識・技能が定着しましたか」を問うのです。その次に、「思考力が増しましたか」「判断力が増しましたか」というようにずっとおりてくるのです。
  そういうように、アクティブ・ラーニング、まず中身が大事であって、それをやるのにいろいろな手法があると思います。いろいろな手法がある中で、あるときはレクチャー形式になるときもあるでしょう、あるときはみんなで考え抜いて、原因とか理由を考え抜くという場面もあるでしょう。そういうのを織り交ぜて教員は今やっておりますけれども、そのときに、必ずそれが定着したかどうかを正しく測ることを必ずやらなければいけないと考えておりまして、そういうものも盛り込めたらよいと考えております。
  以上です。
【大島主査】    ありがとうございます。
  表の読み方、り見える化、構造化のことは、この緑色の冊子にも書いてありましたのでもう少し整えるということなのでしょうか。
  あとアクティブ・ラーニングの最後おっしゃっていたように、中身が大事で、それに気付いていく、あるいは考えを構築している際にはディスカッションが非常に大事だということは古田委員もおっしゃっていました。このような観点を授業の中でどのように築き上げていくかということなのかと思いました。
  ほかに何か御意見はございますでしょうか。
  では、鮫島委員。
【大杉教育課程企画室長】    すみません、御意見がある方はこれを立てていただいて、それでお持ちいただけるとよいかもしれません。
【大島主査】    そうですね、そのままにしていただければ私も認識しやすいので、申し訳ございません。
  では、鮫島委員、小林委員、筒井委員、赤石委員の順序でよろしいでしょうか。そのままにしていただけると助かります。
【鮫島委員】    ありがとうございます。
  学芸大附属国際中等教育学校の鮫島と申します。
  本校、この資料にもちょこちょこ出てきます国際バカロレアの認定校として、今、9年目を迎えております。国際バカロレアの特徴が、やはり今、ここの検討事項にも挙げられている「資質・能力」ですとか、「アクティブ・ラーニング」ですとか、「評価」のことですとか、全て重なる部分だと思います。
  それで、日々、私たちも、私も一教員なのですけれども、理科の授業設計のために、ここに書かれているようなことに試行錯誤して苦労しているところですので、その辺の部分も共有できたらと思っています。
  私がこの9年間やってきた中で一番感じていることは、ここに挙げられている検討事項の「資質・能力」であり、「アクティブ・ラーニング」であり、「評価」が、それぞれ、単独ではあり得なくて、全てがつながっていて、全て関連付けた上で、「スパイラル」という言葉がよいかどうかは分からないのですけれども、共に成長していくというか、共に発展していくものでなければ、多分、成り立たないのではないかと思っています。
  それはどこからそれを感じるかというと、バカロレアの特徴の一つは、学習内容ありきではなく、概念ベースなのです。概念があって、そこに初めて、では何を教えるかという学習内容が重なってくる。そうすると、概念ベースであるということで、もうそこで既に教科間の連携が取りやすくなるという仕組みになっている。
  概念ベースであるから、資質・能力がはっきりする。資質・能力がはっきりするから、評価はどういう評価をすればよいかが決まってくる。どういう評価をするかが決まってくると、どういう活動をすればよいかが決まってくる。そういう形で常にここに挙げられている三つの内容を頭の中でぐるぐるさせながら授業設計をしていくというところが、多分、特徴だと思い、それに日々苦労している感じですので、多分、ここでこれから議論されるようなことのヒントになるようなこともたくさんあるかと思います。
  あと、田代先生がおっしゃっていた理科の四つの柱の話、まさにこれ、バカロレア、学習内容ありきではないのですけれども、絶対押さえてほしい理科の内容が日本で押さえられているこの四つの柱と全くかぶっているのです。そこは本当におもしろいと思ったところですけれども、重なる部分も多分たくさんあると思いますので、少しヒントにしていただければと思っております。よろしくお願いいたします。
【大島主査】    ありがとうございました。
  次は筒井委員、よろしくお願いします。
【筒井委員】    筒井です。
  私は、高校の物理を主に担当しているのですけれども、多分、あまりこの中にはおられないと思うので、少しその辺は変わった人が言うのだと思ってくれたらよいのですけれども、高校の理科は嫌われる。中でも物理は嫌われる。(笑)そうですね。
  だから、資料にもありましたけれども、高校の理科が好きだとか何とかは20%で、多分、物理だと十何パーセントになるのですけれども、どうしてだと皆様はお思いなのでしょう。
  そうではない方がここにはたくさんいるので、私は好きだったとおっしゃる方がほとんどなのですけれども、生徒たちにとってみると、やはり論理的な思考が必要であるというようなことだったりするのは、非常に敷居が高いですね。できれば避けたいと思うようなところもあって、なかなか好きにはならないというのが現実だと思うのです。
  でも、物理に関係する内容の素養を身に付けることは非常に重要だということで、今回の学習指導要領の「物理基礎」という科目ができ、更に発展的にやる子には4単位で深めましょうという仕組みになったのですけれども、私の見聞きする現実の高校教育がどうなっているかというと、「物理基礎」を教科書どおりにやっているところはすごく少ないのです。「物理基礎」の内容を教科書どおりやるのではなく、その後、理系選択する子のために内容をオリジナルに組み替えた形で実践している学校がかなり多いです。
  理科3科目の基礎を学ぶことについて、本当にそういう内容をやろうと思う学校ではもちろんきちんとしているのでしょうけれども、そうでないところが非常に多くて、「物理基礎」の場合、従来型のいわゆる力学的な内容のみで、電気の内容やいろいろなエネルギーの内容が教科書にあるにも関わらず、行われていないケースが非常に多いです。
  結局、それは、高校卒業段階で理科の学習評価がなされるときに、ほとんどは入試という観点でされるので、学校としてはそれに対応せざるを得ない。だから、私は大阪府から来ていますけれども、大阪府の真面目な先生方は皆、校長から言われて学校の成果を上げるように取り組んで、そのことのみに一生懸命やっている、授業をしている。だから、学習指導要領ができて教科書ができて、良いものを作ったつもりだけれども、実践される段階ではかなり歪んでしまっているという、現状もあるわけです。
  それを決して私はよいとは思わないので、そういうことも起こり得るということを考えて、今後、制度の設計をしていく中で、内容だけではなくて、ここにも取り上げられていますけれども、評価の在り方として、誰を対象にどういう評価をしていくのかという仕組みをきちんと位置付けていかないと、結局、本質的に我々が理念として幾ら高邁なものを持って作成したものも、実践されていかない。
  現状の教育課程で、特に物理の分野に関しては履修者が非常に増えたので、これをもって中学校よりももう少しレベルの高い物理的な物の見方や考え方を持つ若者が増えてくれたらよいのですけれども、本当にそうなっていくかどうか。
  ここで議論する内容として、学習内容や学習方法の提案をしていくのも重要なのですけれども、最終的に現場で実践されていくところのイメージを持った上で評価の在り方等も考えた提案がなされるべきではないかと思います。
  以上です。
【大島主査】    ありがとうございます。重要な御指摘かと思います。
  次、小林委員、よろしくお願いいたします。
【小林委員】    すみません、またアクティブ・ラーニングへ話を戻しまして、先ほど脳の活性化というお話しがありました。これは、教授・学習法のとりわけ、学習形態としてのアクティブ・ラーニングの考え方も大事だと思うのですけれども、実験を行うという状況を考えたときに、文科省から小学校の理科の手引き、「観察・実験の手引き」が出ているのだと思います。この手引きには、問題解決の流れが図で示されています。この流れは、自然の事象に関わり疑問を感じ、そして、予想や仮説を立てた後に実験計画を立ててというように示されています。しかし、学校現場ではややもすると、問題への気付きから、予想や仮設の設定、そして実験計画あたりをスキップされる。先生から与えられた課題に基づいて作業のようにこなす実験が少なくないのではないかと思います。
  つまり、教師が子供に自然事象に関する疑問を持たせる働きをした後、条件をこういうふうに変えれば結果はこうなるだろうという作業仮説を子供に考えさせ、明文化させて観察、実験に取り組ませるだけで脳は活性化するのです。観察、実験が作業ではなくなってくるのです。そうすると、子供たちは議論します。
  上越教育大学の学生の例で申し上げますと、本学は小学校教員養成が専門の大学なのですけれども、「初等理科指導法」という授業、90人ぐらいのクラスが3クラスあるのですが、それを担当しています。毎年、学生に振り子の等時性の実験をやらせるときに、一般化した仮説を立てるときの考え方をきちんと指導して、「おもりの重さを大きくすると、1往復する時間は長くなる。」と一文で作業仮説を書かせています。作業仮説は、おもり、振れ幅、意図の長さについて三つ立てさせています。文系の学生ですから、本当に重りの重さ、あるいは振れ幅が、振り子の等時性に関係していると信じている者が結構います。このような誤概念を持っている学生が、重りを重くすると、一往復に要する時間は長くなるという仮説を検証する実験に取り組みます。そして、実験データが自分の立てた作業仮説を指示していないことに気付きます。そのとき学生は、これが理科かと、最初に申し上げた科学の二つ目の側面、教科の本質に身をもって気付きます。こういう経験をした学生は、こうやって新しいことを見つけていくのが理科なのだと、将来先生になったら子供たちにも是非それを味あわせたいという、そんなことを授業後の感想文に書いてくれる学生が本当にたくさん出てくるのです。
  何を言いたいかというと、アクティブ・ラーニングという言葉に引きずられて、見た目の学習形態だけにとらわれないようにするということです。そして、問題解決や探究の能力を育成するという理科の本質にせまる指導の手立ても明確に示していくことが大切なのではないかと思います。
  以上です。
【大島主査】    ありがとうございます。
  では、次、赤石委員で、その後、後藤委員、江崎委員、よろしくお願いいたします。
【赤石委員】   
東京の高等学校の校長をしております。専門は化学です。筒井先生と理化学協会で一緒のお仕事をさせていただいたと、今、思い出しながらお話を伺っていました。
  私からは2点、感じたことを話させていただきます。
  緑色の論点整理の38ページで、先ほど御説明があった今後の「具体的な方向性」の中の高等学校の理科のところで、「理科の勉強は楽しい」と答える中学生・高校生の割合が低いとか、あと、「学習する楽しさや意義、実感等を持たせる必要がある」という、この理科の好きな子が少なくなってくること、これは非常に多くの現場の教員が感じていることだと思います。大分昔からだと思いますが、「理科離れ」という言葉が話されたり、本当に適切かどうかは分からないのですけれども、「理科離し」だと言っている先生方もいらしたり、どちらにしてもこれを改善しなければいけない、そういう切実な時期に来ていると思っています。
  そのためにはどんなことが必要なのか。同じ研究会の仲間と話している中でよく出てくるのは、本質的には理科が好きになることだろう、理科が嫌いなら好きにさせなければいけないだろう、理科が好きにという言葉です。では、どうやったら好きになるのか。好きになるとか喜ぶというのは、わくわくするとか、ドキドキするとか、さらに、分かるとか、何か難しいことができたとか、そういう実感する成就感みたいなものを持たせることだと思っています。
  では、それを授業の中でどういうふうに持たせるのか。やはり理科ですから、観察・実験だと思います。座学で黒板を使っていろいろなことを教えるのではなくて、とにかく実験室あるいは外に行ってフィールドワークも含めて本物を見たり、触れたり、あるいは動かしたり、実際に体験するそういう授業をたくさん入れていくことが好きにつながっていくのだと思います。
  ただ、系統的な部分もあって、ベースの部分は崩せないので、そことのバランスがすごく難しいと感じています。一方で、先ほどの38ページの理科の丸の三つ目のところで、「先進国として世界をリードしていくこと」が必要であるとあります。それは科学技術立国として当然求められる理科の役割だと思います。
  すると、トップのスペシャリストも当然育てていかなければいけない。小・中・高とつながっていくときに、どこの段階で裾野の部分で広げていくのか、どこの部分でトップを目指していくのか、難しさがあるかと思いますが、トップも裾野も同じように理科が好きになることには変わりはないと思っています。
  観察・実験をしていく中で、先ほど作業をこなすような実験が少なくないのではという話があったかと思います。事象に疑問を感じ、仮説を立てて実験計画を立てる、という実験の流れをお話しされました。とても大切なことだと思います。そこで、作業をこなすような実験にしないために、自分でテーマを見つけられたりとか、あるいはうまくいかない実験とか、仮説を立てて検証していくような実験とか、そういうネタというのですか、そういう例が提示されていると、一つの方向性が出てくるのではないかと思います。
  更に大事なのは、実験をした後にまとめていく、まとめたものを発表する、これがセットでないと、その喜びとか楽しみは出てこないのだと思います。自分が調べたものをまとめて、それを発表して、みんなから評価される。その一連のサイクルをワンセットで見ていくことが大切だと思います。その中で、先ほどの「概念ベース」という話をされて、なるほどと思ったのは、仮説を立てたりまとめたりするには、当然、知識が必要であり、知識が重要だということです。また、通常の評価ではない新しい評価を作らないと、このような実験のサイクルは出てこないのではないか、これをするためには、中身と方法と評価が一体になってセットで考えていかないとうまくまとまらないのだと、聞きながら感じていました。
  ただ、原点は、理科好きを増やすためには、観察・実験を増やしていくことだと思っています。
  あともう一つあるのですけれども、そのためには教員の研修、それは小・中・高が一緒の研修の制度とか、あるいは、理科は理科室で授業をするといった教育環境の整備、こういったものも併せて整備していくことが必要だと思っています。
  以上です。
【大島主査】    ありがとうございました。
  わくわくするというのは非常に大事な要素です。
  あと、4番目に関連した「必要な支援」ということは三浦委員もおっしゃっていたので、その観点も大事だという御指摘かと思います。
  では、後藤委員、お願いいたします。
【後藤委員】    この小・中・高が一緒に会議をするというので、多分、内容の系統性だとか、そういうものについては十分に吟味するのだろうと思うのです。
  ただ、重要なのは、やっぱり資質・能力をどのレベルをそろえるのかという検討をしないといけないというのは、現行が目標と学年目標、分野目標の作りが、小と、中と、高と、違いますね。小学校の学年目標に位置付けている「比較」だとか「関係付け」は、問題解決の場面の能力を操作する能力だと思っているのです。ところが、中や高は、その問題解決の場面の能力をそのまま転用しているような能力の表現だと思うのです。
  では、どういう力を育てていけば、それは汎用性があって他教科に使えたり、相互に連携してこれから生きるのに使えるような能力になるのだということは、今回の重要なポイントだと私は思っていますので、どこかでそれを論議するような機会を頂きたいと思っています。
  つまり、理科のそれぞれの今まで指導とか、先ほどもお話があったように、当然、理科の特性は科学的に知を構成することがおもしろくなければ、私は、多分それは子供にとって、さっきあった「やらされている」じゃないですけれども、先生が出した問題、先生が示した方法、先生のルート、それをうまく歩きなさいと言われているようなものだと思うのです。となると、教師がいなくなったり、道のすべを出さなかったら、その子たちはそれを解決できていけない。
  でなくて、その身に付くものは学び方であり、そこで使う能力でありということをもうちょっとはっきりさせて、それは小学校段階でどこまでやって、中・高になるとどういうようなやり方で育つのかということが必要だと思っているからです。
  2点目ですが、それに伴って「アクティブ・ラーニング」という言葉なのですけれども、ひょっとするとアクティブ・ティーチングをしている可能性があるのだろうと。教師が中心になって構成するのは当然だと思うのですが、やはりそれはだんだん子供が自分の考え、予想や仮説、それに自分のものを解決するような学びをできるだけ積み重ねていく、あるいは上位の学年になればなるほど、中や高になるほど、そういうチャンスを上げなければいけないのではないかと思うのですが、今日はちょっと時間がないのであれですけれども、私も東京都の小学校の校長ですけれども、小・中・高の先生方と全部の調査をして、先生が考えている実態と子供が受け取っている実態の乖離がすごくあります。
  例えば、中学校のレベルのことを1点だけ言いますと、非常に先生は実験に力を入れています。これはいろいろな理由があるのですけれども、実験に力を入れている。でも、子供は小学校から半分以上の落差で実験が嫌いになっているという実態が、調査の結果分かったのです。
  そこには何が問題かというと、先ほど小林先生が言われたのですかね、それは子供の実験ではないのではないかと。教師の実験なのではないかというところに何か私はあるような気がするのです。
  だから、そのようなことも検討して、できるだけ子供が学ぶというアクティブ・ラーニングにしていけたらよいのではないかというのが期待しているところです。
  以上です。
【大島主査】    2点の御指摘、ありがとうございました。
  では、次、江崎委員、よろしくお願いします。
【江崎委員】    よろしくお願いいたします。
  今日はいろいろな話が出て、それを論点整理されるのだろうと思いますので、総花的な話になってしまいますが、現行の学習指導要領をお手伝いしていたときに、小学校と中学校のカリキュラムの違いを議論したことからお話しします。
  小学校の場合には問題解決能力を育てるということがねらいです。例えば先ほどお話が出ていた振り子は、高校で扱われるかなり高度な内容だと思います。
  それをなぜ小学校で振り子の実験を入れているかというと、それは「振り子」を教えるのではなくて、資質・能力の一つである条件制御の学習になるからです。小学校では科学的な体系よりも、問題解決能力を育てることに焦点を当てているという視点があるのだろうと思います。
  それに対して、中学・高校の場合には、科学的な体系の基礎ですから、例えば、中1で粒子概念を導入し、それが2年生で原子・分子、3年生でイオンとか原子核というように段階的になっていく。カリキュラムの組み立て方に違いがあるということをまず理解していかないと、今後、策定する上で混乱を生じるのではないかと思います。
  そのときの議論として、私は中学校の現場ですので、小学校では知識として教えることはやっぱり教えましょう、教えることはしっかり教える大切さを言いました。小学校の研究授業で、子供の発言で明らかに科学的に間違っている発言に対して、教員の方が「それは間違っている」と言わない、「そういう考え方もあるね」と言われてしまうと困惑します。その子は自分の発言内容が正しいと思ってしまう。これは怖いと思うので、ある程度、知識、特に先ほど出ている概念形成の中では保存の概念だとか様々な必要な概念は小学校で培って、それが中学校、高校に行く。
  中学校の1年生で水溶液の学習をするときに、水に砂糖を入れたら、重さは変わらないと答える子は少ないです。量は減ってしまうと。小学校でそういう概念形成がきちんと培われていれば、中学校ではそれに基づいて新しい概念が出てくるというような、ステップアップできるようなところが必要なのかなと思います。
  今回の中学校では「分析して解釈する」という活動が出ていたのですけれども、現場の中学校の教員に聞くと、「分析して解釈する」というのは、では分析するのですね、解釈するのですね、というふうにして、問題解決の能力としては捉えていないことが多くありました。
  「分析して解釈する」というのは、小学校の「比較」とか「関係付け」の上に中学校バージョンとして「分析して解釈する」という資質・能力だと私は理解しているのですけれども、ちょうど学習指導要領の解説書の段階で、そこまでの議論が十分できなかったので、ちょっと未消化のまま「分析して解釈する」という文言が、ある面、独り歩きしているのではないかという気がします。
  ですから、今回の改訂では、小学校の資質・能力を中学校や高校でどのように育成するかを明確にすることが大切であると思います。更に「比較」する際、同じところはどことか、違うところはどこかというような発問なり、視点の提示の仕方も必要かと思います。
  資質・能力の育成については、私は学校で社会や国語の教員の指導案を見るときにも、授業を展開するときに理科の問題解決の資質・能力を使いながら授業展開することができると指導しています。そういう点では他教科に広がると思います。
  話し合い活動は、英語でも、社会科でも、各教科でやっています。
  研究授業後に先生となぜ話し合いがうまくいかないのか考えたとき、ペアワークでも、グループワークでも、その基礎になるところの人間関係がきちんとできていないとだめだろうと話しました。人間関係で自分が言ったことを相手が怒らないで聞いてくれるとか、相手のことをきちんと理解しようという人間関係ができていなければ、どんなに話し合い活動を持っていこうとしても、難しいだろうということです。うちの学校では、まず学級経営とか、班活動とか、そういうところに力を入れながら、人間関係をしっかり築いていく。そこからでないと、話し合い活動は難しいのではないかという議論をしています。
  あちこち行って申し訳ないですが、もう一つ。
  観察・実験をやらされる感は、小学校よりも中学校、高校は多くなるのだと思います。観察・実験を子供たちが計画して実行するときに、例えば化学の実験だった場合には、非常に制約があります。子供が考えてきた実験をやったらとんでもないことになるなとか、救急車を呼ぶような事態になりかねない。とか、そういうこと予想されると、こちらの方で「この実験は無理だよ」と手を入れてしまいます。どういう実験ならよいのか、先生方がどういうネタを探せばよいのかというようなヒント、今回の学習指導要領の解説書も最初はいろいろなネタが出てくるのだけれども、それらを紹介することが逆に全国の先生方の実践を制約してしまうのではないか。この例を解説書に書くと、全国でこの例をやらなければいけないのではないかということになってしまう。ですから、いろいろな良い例があったけれども、全部、涙をのんで削ってきたわけですね。だから、そういうような例については、文科省ではなくて、例えば国立教育政策研究所が別途事例集にすればよいと思います。
  小学校は若手の先生が非常に増えてきています。多くは文系の先生ですので、実験をやろうとしても困難さがある。そういう先生方には理科で資質や能力をどのように育成するかといった事業展開だけでなく、観察、実験の実技研修の充実も必要であると言個人的には考えています。
  以上です。
【大島主査】    ありがとうございました。
  田代委員、では、よろしくお願いいたします。
【田代委員】    また3点お伝えします。
  こういう会だと、どうしても後ろ向きの会話、課題中心になってしまうことが多いので一言発言します。例えば資料9のスライドの14のところを見てもらうと、平成24年から平成27年の全国学力・学習状況調査の比較が出ています。「理科の授業で、自分の考えや考察をまわりの人に説明したり発表したりしていますか」という項目では、肯定的な回答が27ポイントから38.3ポイントと大幅に増えています。その下のグラフも、大幅に増えています。
  日本というのは、こういう国なのですよね。つまり、国がこういうふうにしてくださいと方向性を示すと、先生が動き、その動きに合わせて子供たちが大きく変わるという、そういう国なのです。
  だらか、ここで余り現実的でない理想を言うと、学校現場がとても困るということになると思います。ここで言ったことが学校現場にものすごく大きく影響する国だということを踏まえておくべきだと思います。
  次に、資料9のスライド12に、国際調査の生徒の意識が載っています。と日本の生徒は、理科が「役に立つ」とか「楽しい」というのが国際平均からみて低いという部分があります。しかしが、国際比較する際、「役に立つ」という部分については注意が必要です。日常生活に役に立つという部分、理科で学んだことを活用したり生かしたりということになると、例えば日本の場合は保健体育があります。理科で学んだ内容、体や健康については、保健の方でやっています。衣食住など生活に活用する内容は、家庭科でやっています。それから、技術に関する内容は、中学校では技術・家庭科の技術分野があります。
  つまり、理科で学んだことを活用するような内容は、ほかの教科で実はやっているわけですね。当然、子供たちはそれを理科の内容とは思っていません。ここが、ほかの国だと、家庭科、保健、技術は、理科の内容として入っています。だから、「役に立つ」とか「大切だ」という部分は下がってもしようがない部分はあるのではないかと思います。
  となると、大切なのは子供たちの「大切ださ」とか「好きだ」などという項目が国内で上がったか、下がったかです。この点についてはしっかりみていかなければいけない、と思います。これが2点目です。
  3点目は、先ほど「観察・実験を増やすとか」とか、「子供たちをわくわくさせるとか、実物に触れさせる」ということが発言されました。しかし、大体、理科の人たちは、いつも理科のメンバーで話しています。みんな、もともと好きなのですよ、理科が。だから、理科のメンバーの中で話すと、理科がそれほど得意じゃない人の気持ちはなかなかつかめていないところがあります。
  「理科好き」にする上で、実は何が大きいかというと、やっぱり人の力だと思うのです。人。先ほど言いましたけれども、実験をやって発表したり、まとめて伝えたりする先には、人がいるのです。例えば美しい夕日を見たときに感動しますけれども、独りだと感動しないのですよ、やっぱり。友達がいて「きれいだね」と言うから、「本当にきれいだね」と思うのです。理科の場合は、どちらかというとオタクというか独りで止まってしまうことが多いのですけれども、その周りに人がいることを意識しないとだめだと思います。
  だから、やっぱり学びも人が変える、教師が変える、友達が変えるのです。アクティブ・ラーニングが協働という点ですごく着目されていまする。理科でも着目されているところかと思いますが、これからはやっぱり人を意識しないといけないのではないかと思います。
  以上です。
【大島主査】    ありがとうございます。
  アクティブ・ラーニングに関しては、何人かの先生からやらされ感があるというような御指摘がありました。アクティブ・ティーチングにならないように、子供に参加しながら学んでいただくかについて、人を含めて課題として考えていく必要があると思いました。
  横断のことが出ていましたが、科目横断とともに、小・中・高に関しても具体的な能力を示すということが、後藤委員をはじめ何人かの先生から御指摘がありました。ある程度明確に学習指導要領の中でも示していく必要があると思いました。
  一巡しておりますが、まだ御意見を頂いていない先生がおられます。飯田委員、御意見ございましたら、是非よろしくお願いします。
【飯田委員】    失礼します。私は、今、研修所に勤めておりまして、先生方に今お話をお聞きしていて、研修を充実しなければならないという厳しい御意見を真摯に受け止めているところであるわけです。
  ふだん、私、研修所で教員の研修をやっておりまして感じることなのですけれども、研修所で研修する場合と、学校へ出向いて指導する場合があるわけですけれども、まず、私は高校の化学なのですけれども、特に学校へ出向いていって先生方の授業を見ると、若い先生方は非常に熱心です。今、若い先生方がすごく増えているというお話がありましたが、そのとおりで、静岡県でも急激に今、増えております。
  非常に熱心なのですけれども、幾つも出ている御意見があるように、アクティブ・ティーチングになっているのです。私たちがそこを分かりやすくお話をすると、非常に熱心に聞くものですから、すぐに理解をしてというような方が非常に多いです。
  そういう意味で、私、常日頃思っているのは、指導要領の解説もそうなのですけれども、このようなところで御議論されたことが分かりやすい表現で先生方に伝わるような工夫が何か必要なのではないかと思っております。
  と言いますのは、例えば「アクティブ・ラーニング」ですとか、「カリキュラム・マネジメント」と、片仮名語ですけれども、非常に分かりにくくて、イメージが付きにくい。
  私、今、教科の研修から少し離れまして、主に人材育成の仕事をしております。管理職の先生方ですとか、管理職候補の方々に研修を担当しているのですが、そこでも例えば「マネジメント」という言葉一つとっても、ほとんど理解をしていただけないです。1回ではまず理解していただくことはないですね。
  アクティブ・ラーニングもしかりではないかと思うわけで、こちら、この場で非常に議論を深めたとしても、先生方に伝わらなければ、その効果も半減してしまうのではないかと思います。そういう意味では、分かりやすい表現は何か一つポイントになるのではないかと考えております。これが意見です。
  もう一つ、感想ですけれども、資質・能力を育成するために内容と活動をつないで評価まで一体的にと。マネジメントサイクルでいくPDCAサイクルですとか、RV‐PDCAというような中でのお話に関連しているのかと思うわけですが、これについても実現したら本当にすばらしいことだと私自身は感想を持っております。
  特に評価の部分に私自身はすごく注目をしていて、どこまで今回の改訂でこの評価まで一体としてつなぐことができるかは、大きな関心事になっているところです。しかし、いずれにしても、このPDCAサイクルにしても、先生方にとってはやはり分かりやすい言葉で表現する必要があるのかなと、これについてもそんな感じがしているところであります。
  以上になります。
【大島主査】    ありがとうございました。
  分かりやすい言葉ということで、またどうしても片仮名用語が多くなってしまいます。最近の兆候なのかなとも思います。松浦委員が名札を立てられていますので、松浦委員で、あと最後に、片平委員から御意見を頂いて、時間もそろそろ押していますので、議論を終えたいと思います。
  では、よろしくお願いいたします。
【松浦委員】    今日のお話を伺っていて、小学校、中学校の方が、そのアクティブ・ラーニングにしろ、三要素のバランスにしろ、理科が好きというにしろ、高校よりはよいのかと。高校はかなり今、厳しい状況なのです。
  だから、やっぱり小・中の今までのよいところを広げつつ、高校にどうやって持っていくかというような議論ができればよいと思いました。
【大島主査】    ありがとうございます。アクティブ・ラーニングに関するコメントでございました。
  では、最後に片平委員から、よろしくお願いいたします。
【片平主査代理】    皆様のいろいろな御意見を聞いて、まず感じたのは、小・中・高の関係性をどのように築いていったらよいのだろうかという点です。小学校、中学校、高等学校、大学の各立場から、いろいろな意見がありました。今回の会議の中でいろいろな意見を出して、ぶつかり合い、問題点を共有することがすごく大切なのではないかと感じました。
  また、文部科学省で政策を立案されている方々の御意見もお聞ききしました。それらが実際の現場の中で、あるいは教科書の中でどう扱われていくのか、そういうような現実的な問題もやっぱりどこかですり合わせし、どこに向かっていったら良いのか、そしてそれが新しい方向性にどうつながっていくのだろうか、このようなことをこの会議の中で検討できるとよいのではないかと考えました。
  そして、全体としてはやはり不易と流行の問題があることを考えないといけないとも思いました。理科としては個人的な意見ですが、探究的な学習、探究活動をどのようにもっとしっかりとしたものにするかが大切だと思っています。他の教科と違って理科は観察・実験があって、かつ、探究学習や活動があり、そこに特徴がある教科なので、新たなアクティブ・ラーニングの発想、理想を吟味しながら、議論を深めていただいて、この会の中で、新たな方向性が生み出されればよいと思っています。
  最後に、評価に関しては、指導と評価の一体化の問題があり、入り口だけではなくて、出口をどうするかを考えていかなくてはならないと思います。出口では、すぐにパフォーマンス評価だ、ポートフォリオ評価だと、従来の評価とは違った評価をというふうになりがちなのですが、これもやはり従来の観点別評価のよいところ、あるいはそういう評価とは違った新たな評価のよいところ、そういうものを検討しながら、理科ならではの評価の在り方に関しても議論できるとよいと思います。以上、皆様の意見をお聞きしながら考えた点を述べさせていただきました。
  以上です。
【大島主査】    ありがとうございました。
  議論も尽きませんが、そろそろお時間になりましたので、これで本日は討議を終わりたいと思います。非常にポジティブな御意見、あと厳しい御意見も頂きました。アクティブ・ラーニングは比較的理科となじみが強いものではないかと思います。そういう意味で、本日話題になった件をクリアしながら、理科をひとつ先駆的な形でアクティブ・ラーニングの例として示すことができればよいのではないかと思いました。
  本日、先生方、委員から頂きました御意見については、事務局で論点ごとにその趣旨を整理していただきます。事務局の皆様、是非よろしくお願いいたします。
  また、限られた時間なので、まだまだ言い尽くしていないこともあるかと思いますので、また、今日は時間の関係上言えなかったことや、後になりましてお気付きの点などがありましたら、ペーパーで事務局にお送りいただければと思います。
  では、本日予定していました議題はここまでです。
  最後に、次回以降の日程などについて、事務局より説明をお願いいたします。
【米原教育課程課長補佐】    次回でございますけれども、12月14日、月曜日、15時から17時、場所はここではなくて文部科学省の3階、同じ階の2特別会議室にて開催を予定しております。
  主査からもお話がありましたけれども、ペーパーによる御意見等も頂戴したいと考えておりますので、ファクスや、メール、郵送等でお願いしたいと考えております。
  なお、本日の配付資料につきましては机上に置いておいていただければ、後ほど郵送させていただきたいと思います。
  本日は活発な御議論、ありがとうございました。
  以上です。
【大島主査】    それでは、本日の理科ワーキンググループを終了させていただきます。本日は本当にありがとうございました。

──  了  ──

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