教育課程部会 幼児教育部会(第2回) 議事録

1.日時

平成27年11月20日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

中央合同庁舎第7号館東館 文部科学省3階3F2特別会議室
東京都千代田区霞が関3-2-2

3.議題

  1. 幼児教育の改善充実について
  2. その他

4.議事録

【無藤主査】  皆様おはようございます。定刻になりましたので、ただいまより中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会幼児教育部会の第2回を開催いたします。皆様におかれましては、御多忙の中、御出席いただきまして、誠にありがとうございました。
始めに、今回初めて御出席の委員がおられますので、事務局より御紹介をお願いいたします。
【沓澤子育て支援指導官】  それでは、御紹介申し上げます。
桶田ゆかり委員でございます。
【桶田委員】  よろしくお願いいたします。
【沓澤子育て支援指導官】  小枝達也委員でございます。
【小枝委員】  小枝でございます。よろしくお願いいたします。
【沓澤子育て支援指導官】  田中雅道委員でございます。
【田中(雅)委員】  田中でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【沓澤子育て支援指導官】  奈須正裕委員でございます。
【奈須委員】  奈須でございます。よろしくお願いいたします。
【沓澤子育て支援指導官】  渡邊郁美委員でございます。
【渡邊(郁)委員】  渡邊です。よろしくお願いいたします。
【沓澤子育て支援指導官】  なお、千葉大学の砂上委員につきましては、本日遅れるという連絡が入っておりますので、到着次第、また御紹介させていただきます。
以上でございます。
【無藤主査】  それでは、早速議事に入りたいと存じます。
始めに、本部会の審議等につきまして、初等中等教育分科会教育課程部会運営規則第3条に基づき、原則公開により審議を進めさせていただくとともに、第6条に基づき、議事録を作成し、原則公開するものとして取り扱うこととさせていただきます。よろしくお願いいたします。
なお、本日、報道関係者に会場の撮影及び録音の申出はあったということで、御承知おきください。
それでは、事務局より配付資料の確認及び御説明をお願いいたします。
【沓澤子育て支援指導官】  それでは、配付資料の確認をさせていただきます。本日は、議事次第に記載しておりますとおり、資料1から資料6、参考資料の1から2、その他机上に教育課程企画特別部会 論点整理をはじめとしました参考資料を配付させていただいております。不足等がございましたら、事務局にお申しつけください。
なお、机上にタブレット端末を今回も置いておりますけれども、その中には、本部会の審議に当たり参考となる幼児教育関係の資料、小学校学習指導要領の解説、関係する審議会の答申等のデータを入れてございます。
御参照いただく際には、お手数でございますけれども、机上に配付しております使用方法を説明したペーパーを御覧いただきたいと思います。
それでは、続きまして配付資料の説明をさせていただきます。
配付資料の資料1を御覧いただきたいと思います。本日、前半の時間を使いまして、1、「幼児期において育みたい資質・能力」について御議論いただきまして、後半の時間を使いまして、下段でございますけれども、2の「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿の明確化」について御議論いただきたいと考えております。
資料1の上段の部分ですけれども、1、「幼児期において育みたい資質・能力」について御説明をさせていただきたいと思います。
論点整理におきましては、育成すべき資質・能力を三つの柱、個別の知識・技能、それから、思考力・判断力・表現力等、学びに向かう力、人間性等で整理すること、それから、次期幼稚園教育要領・学習指導要領については、この資質・能力の三つの柱全体で捉えまして、教育課程を通してそれらをいかに育成していくかという観点から、構造的な見直しを行うことが必要であることなどが提言されております。
本日は、幼児期において育みたい資質・能力をこの三つの柱で整理することを前提にした場合、幼児教育の特性に配慮しつつ、その資質・能力の明確化を図るにはどのようにすれば良いかといったことについて御議論いただきたいと考えてございます。
具体的には、配付資料の2を御覧いただきたいと思います。こちらの資料は、教育課程企画特別部会 論点整理の「育成すべき資質・能力」を踏まえながら、「幼児期において育みたい資質・能力と幼稚園教育要領の関係」を構造で示した事務局の案でございます。
「幼児期において育みたい資質・能力」につきましては、まず、論点整理において資質・能力を三つの柱で整理されていることを前提としつつ、学校教育法第22条において、幼稚園は義務教育及びその後の教育の基礎を培うものと規定されていることを踏まえまして、個別の知識・技能、思考力・判断力・表現力等について、幼稚園の場合、「基礎」という文言を加えて表現しております。
また、学びに向かう力、人間性等の部分につきましては、個別の知識や技能の基礎、それから、思考力・判断力・表現力等の基礎をどのような方向性で働かせていくかということを決定付ける重要な要素でございますので、一番下に位置付けているものでございます。
その上で幼児教育の特性を踏まえまして、例えば、資料2の小学校以上の資質・能力の説明として、括弧書きで付されているところでございますけれども、こちらの「何を知っているか、何ができるか」「知っていること・できることをどう使うか」「どのような社会・生活と関わり、よりよい人生を送るか」といった表現をどのようにすれば幼稚園関係者にも実感を持って理解していただけるかなど、幼児期に育みたい資質・能力を明確にする際の留意事項について御議論いただければと考えてございます。
続きまして、資料4を御覧いただきたいと思います。
こちらの資料は、最初の1ページから20ページまでが、本日御審議をいただく内容に関する教育課程企画特別部会の論点整理の抜粋となってございます。

特に御確認いただきたい箇所といたしまして、企画特別部会 論点整理の抜粋の8ページから10ページの「育成すべき資質・能力について」は、基本的な考え方の資質・能力の要素の三つの柱の解説の部分。
それから、10ページから13ページのところにございます、「特にこれからの時代に求められる資質・能力」として、例えば、11ページの「平和で民主的な国家及び社会の形成者として求められる力」、「思考するために必要な知識やスキルなどを、各学校段階を通じて体系的に育んでいくことの重要性」。それから、「自己の感情や行動を統制する能力や、よりよい生活や人間関係を主体的に形成する態度等を育むことが重要である」こと。
それから、「日本文化を理解して、自国の文化を語り継承することができるようにするとともに、異文化を理解し多様な人々と協働していくことができるようになることが重要である」ことなどの提言の部分。
育成すべき資質・能力につきましては、12ページの中ほどでございますけれども、「幼児教育から高等学校までを通じた見通しを持って、各学校段階の教育課程全体及び各教科等においてどのように伸ばしていくのかということが、系統的に示されていなければならない」というところ。
その下の部分でございますけれども、「『18歳の段階で身に付けておくべき力は何か』という観点や、『義務教育を終える段階で身に付けておくべき力は何か』という観点を共有しながら、幼児教育、小学校教育、中学校教育、高等学校教育それぞれの在り方を考えていく必要がある」など、発達の段階や成長のつながりの観点から提言されておるところでございます。
13ページで、「育成すべき資質・能力と、学習指導要領等の構造化の方向性」といたしまして、14ページの上段ですが、「教育課程の総体的構造の可視化」の観点から、中頃にございますけれども、「初等中等教育の出口のところで身に付けておくべき力を明確にしながら、幼・小・中・高の教育を、縦のつながりの見通しを持って系統的に組織していくことも重要である」といったこと。
それから、14ページの一番下でございますけれども、幼稚園教育における内容等を五つの領域別に示しつつ、幼稚園における生活の全体を通じて総合的に指導することとされている幼児教育の特性を大事にしつつ、幼児期において育みたい資質・能力を明確にすることなどの関連の記述が掲載されております。
それから、21ページでございます。ここからは、育成すべき資質・能力を検討する際の参考資料を掲載してございます。
22ページには、法令上定められている教育の目的・目標。
それから、飛びまして、25ページにはESDの関係の資料。
26ページには、「国際バカロレアの学習者像」。
それから、27ページには、「国立教育政策研究所が整理した資質・能力の構造化のイメージ」など、国内外の資質・能力に関する資料を掲載してございます。
32ページには、資質・能力に関わりまして、今後目指すべき教育の姿などを示しました「教育振興計画」の抜粋を記載させていただいているところでございます。
資質・能力の関連する資料は、以上でございます。
続きまして、資料5は、第1回の教育課程幼児教育部会における主な意見を論点ごとにまとめたものでございます。説明は省略させていただきたいと思います。
それから、資料6は、先般11月16日から開催されております「教育課程部会生活・総合的な学習の時間のワーキンググループ」で配られております、主な検討事項でございます。
この資料の2番目の柱が、幼児教育との円滑な接続の観点からの検討事項で、幼児教育に関連する部分がこの2番目の柱に掲載されてございます。
このワーキンググループでは、委員からも幼児教育の関連の御意見が多数出されております。例えば、3歳からの幼児教育から18歳までの初等中等教育について育成すべき資質・能力を俯瞰できることが大事であるといった意見や、幼児期において総合的な指導の在り方、教師の役割は生活科でも生かしていけるのではないかといった意見などがこのワーキンググループで出されてございます。
本日の部会では、先ほど御説明いたしましたように、幼児期において育みたい資質・能力や、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿を御審議いただくことになりますけれども、当然、幼児教育だけで完結する話ではございませんので、幼児教育から高等学校までを通じた見通しを念頭に置きながら御議論をお願いすることになりますので、その点を御理解いただきたいと存じます。
それから、今、御説明いたしました生活科だけではなく、その他の各教科とのワーキンググループにおきましても、幼児期から小・中・高等学校を通じて育成すべき資質・能力を三つの柱に沿って明確化していることを議論いただくことになってございますので、本部会での「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿の明確化」などにつきましては、これらの他の部会にも紹介していきたいと考えてございます。
また、この生活科のように、各教科等のワーキンググループでの議論もこの部会で適宜紹介していくなど、幼児教育と各教科との往還を重ねながら審議を進めていきたいと考えてございます。
それから、参考資料の1は、本部会の名簿でございます。
参考資料2は、10月に公表いたしました平成26年度の幼児教育実態調査の結果でございます。参考に配付させていただいておりますが、内容についての説明は省略させていただきたいと存じます。
資料の説明につきましては、以上でございます。
【無藤主査】  ありがとうございました。本日は、論点としては二つあるわけで、今、最初のものを御説明いただきましたが、資料1の論点案、資料2の「幼児期において育みたい資質・能力と幼稚園教育要領の関係のたたき台」、それから、資料4の「資質・能力等関係資料」を基にして、幼児期において育みたい資質・能力についての議論を進めたいと存じます。
ということで、1時間弱でありますけれども、どなたからでも結構ですので、自由に御意見をいただければと思います。
【沓澤子育て支援指導官】  千葉大学の砂上委員が御到着しておりましたので、御紹介させていただきます。
【砂上委員】  よろしくお願いいたします。
【無藤主査】  ありがとうございました。
御発言の際は、名札をまず立てていただきまして、指名をさせていただきますが、発言が終わりましたら、元に戻していただきますようにお願いいたします。
また、今日の会場のマイクが目の前のマイクですけれども、ボタンを押して発言し、発言が終わりましたら、ボタンを消していただくということでございますので、よろしくお願いいたします。
御討議よろしくお願いいたします。どなたからでもお願いいたします。
【神長主査代理】  口火を切るということで、教育課程企画特別部会に参加しながら、三つの柱というのは、私は学校教育の始まりとしてとても重要だなという観点でずっと考えてきています。前回もその話はさせていただいたかと思うのですけれども、この中で大事なこの三つの視点で、一貫して幼児期から18歳までの高等学校修了までを見ていくことは大事な視点だと思っているのです。ただ、前の論点整理の中でも、発達に応じてバランス良くという表現が、この三つの資質や能力の考え方としてあったかと思うのですけれども、そういった視点でもう一度見ていくことも、この部会として大事なことなのかなと思っております。
この三つの柱を見たときに、これまでの幼稚園教育の中では心情・意欲・態度などということを重視しながら、遊びを通しての総合的な指導ということで子供たちの発達を見てきたわけですけれども、そういう視点からすると、この三つのものを並べてみたときに、学びに向かう力と人間性等というのは、割合すとんと落ちてくると言いますか、納得がいくと言いますか、遊び込む子供たちの姿の中に、目的を持って最後まで頑張るとか、友達と協力しながら、協調しながら目的を実現していくことが、この学びに向かう力につながっていくということはよく理解できるし、現場の先生方にも理解してもらえるのかなと思います。
少し気になっているところは、最初の「個別の知識や技能」というところですけれども、今、お配りいただいた資料4の9ページの説明をもう一度改めて読みながら、このことについて発言したいなと思っているのです。分かりやすい言葉で言えば、どうしても個別の知識・技能とか、思考力・判断力・表現力という端的な言葉の方にまず注目するのですけれども、私は大事なことは、「何を知っているか、何ができるか」という視点で子供たちの資質や能力を見ていくのですよという、この前の文章がとても大事なのかなと思っているのです。これは、幼・小・中・高どの校種でも同じで、実はこの順番はこの文章の中では逆に書いてあるわけです。図になると、どうしても個別の知識や技能で、括弧書きで「何を知っているか、何ができるか」になるのですけれども、この前のこの文章もとても大事だなということと、幼児期の場合に特にこの「個別の知識や技能」といったときに、個別の知識や技能を獲得していくのですが、その過程と言いますか、何ができるかというよりは何を知ったり、何を気付いたりしているのかという視点で子供たちの遊びを見ていくことは大事なことかなと思います。
例えばの話になりますけれども、3歳の砂遊びをこの間見ていたときに、1か月前にその園に行ったときと、1か月後に行ったときでは全然遊び方が違うといいますか、単純な遊びなのですが、プリン作りをして遊んでいるのです。最初は本当に手当たり次第、砂を詰めてひっくり返すという中で、「湿った砂の方が固まる」とか言いながら、そのプリン作りがごちそう作りに変化していくのです。1か月後に行ったら、それがデコレーションケーキになったのに感動してしまったのですけれども、そういう遊びが充実していく過程の中には、子供たちがその中で何を知ったり、気付いたりしているかという、そういう知ったり気付いたりしていることに着目していくことが大事で、これが個別の知識や何々を獲得したというよりは、その過程ですね。幼児期の知ったり、気付いたりというところに焦点を当てて見ていくことも大事なので、もし工夫できるとしたら、「個別の知識や技能」というよりは、そこの前の文章を工夫していくことも必要ではないかなと思っておりました。
【無藤主査】  ありがとうございました。順次、皆さんにお聞きしたいと思いますが、私なりに意見というか注釈なのですけれど、事務局の説明と重なる注釈です。資料2、図式を見ていただくと、これの上の方は小学校以上の教科その他でも同じ図式になる論点整理の枠組みですが、この図式の幼稚園は、もちろん、この幼児教育部会としての図式になるわけです。その際に、「個別の知識や技能」と思考力などのところには赤く「基礎」と入れてありますけれども、これは幼児期にふさわしいということを考慮して加えた部分です。つまり、元々の三つの柱は、その上にあるものということです。
それで、「学びに向かう力・人間性等」は、恐らく幼児教育も含めた広い意味に最初からなっているのかなと思って、「基礎」が入っていないということですので、今の事務局の御説明も含めて、この三つの言い方をそのまま使ってほしいという意味ではなくて、「基礎」という部分は特に幼児教育にふさわしい言い方にしなければいけないのではないか。あるいは、場合によってはかなり概念的に変えなければいけないのではないかという意味ですので、御存分に新たな考えを出していただいて大丈夫だと思います。よろしくお願いいたします。
それでは、いかがでしょうか。鈴木委員、お願いします。
【鈴木委員】  今、無藤先生と神長先生のお話を伺っていて、私もその幼児期にふさわしい姿での表現はすごく大事なのだろうと思って、この「基礎」というところに丸を付けていたところです。例えば、この「思考力・判断力・表現力等の」というところを、神長委員がおっしゃった「何を知ったり、気付いたりしているか」ということをベースに考えると、幼児の最初は、興味とか関心がまずベースにあって、知っていることとか、気付いていることを使って考えたり、試したり、表現したりというような表現はいかがなものかと感じました。その「学びに向かう力、人間性等」で、これはこのまま使えることではあるけれど、例えば、小学校以上のところを見ると、「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか」とある。幼児期は人生が始まったばかりなので、ここは環境を通しての指導がベースにあると思うので、「どのように環境と関わって、より充実した生活を送るか」という表現の方が適しているのかなと思いました。
以上です。
【無藤主査】  ありがとうございます。
それでは、山下委員。
【山下委員】  山下です。今、鈴木委員や無藤主査、神長委員のお話をお伺いしながら、やはり三つの視点でまとめていくことはとても大事だと思っています。教育企画特別部会の論点整理で先ほど御紹介もあったように、幼・小・中・高の教育を縦のつながりの見通しを持って系統的に組織していくこと非常に大事だろうと思っています。
つまり、小学校の学びにつながっていることが分かるようにしていくためにも、幼児期に育みたい資質や能力は、育成すべき資質・能力の三つの柱との対応が分かるように今後していくことが大事ではないかなと思っています。ですから、具体的には今ある5領域の内容についても、ある程度三つの柱に沿った形で整理していく必要があるのではないかと考えています。
以上です。
【無藤主査】  ありがとうございます。
では、奈須委員、お願いします。
【奈須委員】  今の議論はとても大事だと思っています。「個別の知識や技能」というときに、結局何を指すかのイメージだと思います。また、「基礎」という言葉が何を指し示すかのイメージがとても大事で、これは今後、自覚的に議論していくのだと思いますけれども、実は小学校以降についても知識とか基礎という概念を変えていくことが、今回、私は大きな主題だと思っていて、むしろここでの議論が、小学校以降においても知識や技能ということが何を指すのか。少なくともその暗記的で要素的なものではないという方に行きたいでしょうし、基礎というものが何かばらばらな要素を詰め込んでいて、それが先々応用されるのだという概念は変えていくということがあるのだと思うのです。だから、ここでの幼稚園の議論はとても大事だと思っています。
ただ、これまでの幼保小連携のときからの議論でありますけれども、幼稚園教育は関心を持つという、幅の広い、むしろ、現場がそこから創意工夫を広げていくような、あるいは、子供の姿に寄り添うようなという意味で控えめな記述をしてきたと思うのですが、現実には保育記録を見たり、実践を見たりすると、もっと子供はできている。概念的な理解とか、活用の効く知識という意味でも、もっといろいろなものを獲得している。前から申し上げていますけれども、例えば、数量形に対する関心などというレベルではなくて、数量形に対するかなりの概念や技能が、4歳、5歳で獲得されている。
この論点整理の抜粋の18ページにもありますけれども、大事なことは、真ん中辺りで下から三つ目ですが、幼児が音声の響きやリズムなどに気付く。それから、生活に必要な言葉を分かったり使ったりする。生活の中で様々な色や形に気付く。まさにその生活の文脈。子供の自発的な活動の中で、結果的にそういったものが形成されるということですよね。それが小学校以降の生活や学習の基礎になっている。つまり、遊び込む中でおのずと子供の側に形成されていくという意味での知識・技能です。それとは別に、子供に文脈もないのに教師側で要素的に教え込んでいくような、小学校の前倒しをするようなものではないのだということが、ここでも確認されていると思います。
ただ、その後にありますけれども、そういった日々の活動が、小学校以降の生活や学習の基礎につながっていることを幼稚園の先生方に再認識していただきたい。つまり、幼稚園の先生方が既にやれていることを御自身が自覚しているか。あるいは、それを意図的に取り組んでいるか。意図的にということは、それを切り離して教えるということではなくて、子供の自発的な活動とか遊び込む活動の中で、子供たちの学びが深まるような意図的な関わりや環境整備や支援ということ。それは可能で、そこをより精緻にしていくことがここで求めているのだろうと。そういう意味で「個別の知識や技能」という位置付けがここにあるのだろうと思うのです。
だから、少なくとも既にできているような知識・技能は、文脈的で関係的な知識や技能だろうと思うのです。脱文脈的で要素的なものではなくて、それは確認する必要があると思いますし、もっと言えば、そういった知識を子供が獲得していったプロセスを子供が自覚的に理解して、知識というのはそういう中で生まれてくるのだということを知ることが大事なのかなと。これは、少し思考力や判断力の方になるかもしれませんけれども、自分たちが望む活動をし、その中でより良いものを求めて工夫していく中で気付いたり、分かったりできることが増えるのだということをメタ認知的に自覚することが、正に小学校以降の学びの基礎になっていくと私は思うわけです。そういったことをここで議論していく。
つまり、それによって「個別の知識や技能」が何を指し示すか。「基礎」というものがどういう意味においてであるか。それを既に達成されている幼児教育の質の高い実践を足場に確認していくとともに、今後更に計画的に意図的に進めていくことが可能になるようにどうするかということが大事なのだろうなと思っています。それは思考力・判断力・表現力のイメージもそうで、どうしても私たちは思考・判断・表現、これは認知的な、もう一つの学びに向かう力や人間性等がノン・コグニティブ、非認知的な方をイメージするのだとすれば、思考力・判断力・表現力というのは、優れて認知的な意味での汎用技能、ジェネリックスキルのようなことを想定しているのかなと思いますけれども、そういったときに私たちは思考力・判断力ということを考えると、学校教育文化的には極めて近代科学的な、こういうことをしようということを鋭角的に目的として定めて、それに向かって合理的な計画を立てて、それを実行して評価する。その中で使われる、どちらかというと分析的な思考力や判断力を考えがちですけれども、そうすると、そういうものを幼稚園教育で育むとなると、どちらかというと自由度も減ってくると思うのですが、もっと子供の遊びの中で創発的に起こる、偶発的に起こる、「いいことを考えた。こんなことやってみよう」「こうなったらどうかな」という活動の中で、創発的、偶発的、あるいは対話の中で協働的に起きるようなものをもっとイメージしていいのだろうと思うわけです。それがむしろ小学校以降の基礎になる。
小学校以降でも、もちろん、典型的な理科のような教科では、近代科学をモデルにしたような思考判断ということが実行されますし、そういったものが培われることが目指されているわけです。同時に例えば、図画工作科や音楽科などで言えば、例えば、典型は造形遊びだと思いますけれども、創発的で偶発的な出来事の中で、「こんなことをやってみよう」「あ、面白そうだ」「いいことを考えついた」、その中で活動を展開し、より質的に高い造形や問題解決がなされていく。いろいろな哲学的な議論の中でも、近代科学をモデルにしたような思考力と、昔、レヴィ・ストロースが「野生の思考」という本の中で、ブリコラージュ、器用仕事と言いましたけれども、そこにあるものを使って、言わばでっちあげるようなやり方で何とか組み合わせて工夫して、その中で高い問題解決を成し遂げていくという創発的な、その意味でクリエイティブで拡散的な問題解決もあるわけで、そういった思考や判断も小学校以降でもいろいろな教科の中で培われていくわけです。小学校以降も実はそういった思考や判断をもっとイメージすべきだと私などは思いますけれども、幼稚園の思考・判断というのは、正にそういうことが多い。やりながら偶発的、創発的に生まれていく中で、子供が工夫し、あるいは対話をし、その中で思考や判断が鍛えられていく。そういう質の思考・判断がとても多いと思いますけれども、つまり、私たちが思考・判断・表現といったときに、どんなものを暗黙裏に無自覚のうちに自覚しているかということを問い直して、もっと豊かな、そして幼児教育の中で既に達成されている実際の質に寄り添う形で、ただそれをより自覚化して意図的に取り組めるような形での描き方、示し方を工夫することが今回求めているのかなと思います。
【無藤主査】  ありがとうございます。
それでは、阿部委員、お願いします。
【阿部委員】  阿部でございます。今、お話の中で「気付き」ということがたくさんあるのですが、どうにも見ても私が見た知識や技能ということで、認知的なところにどうも流れているような気がしてならないので、できれば図画工作科辺りでも、小学校の中でも造形遊び、気付きよりも感じるとか、感じ取るという面をベースにおいて、その上で感じて気付くことがないと、幼児教育の中においては、すぐに気付きだけやると、これだけが一人歩きして先生方に気付かせるという形の教育にならざるを得ないので、感じ取るとか、感じるという感覚面を体験的に学んでいくことを重要視できるような文言が必要なのかなということと、それから、基礎という言葉はどこまでが基礎なのかとなると、これから、いろいろな論議の中で小学校とも関連させていかなければならないのですが、どこまでを基礎と呼ぶのかという辺りもまた審議をしていただければと思っているところです。
【無藤主査】  ありがとうございます。
それでは、桶田委員、お願いします。
【桶田委員】  私は現場の人間ですので、現場では幼稚園教育要領が基になるので、要領のねらいや内容と、この三つの観点はどのように結び付いているのかと自分なりに見てみました。どこか一つに結び付くところもあれば、複数の観点に関わっているものもある。そうやって見ていく中で、幼児教育の特性に配慮したという意味では、要領の内容で必ず文の最後に出てくるのが、気付くとか、親しむとか、興味・関心を持つなどの言葉です。その言葉が幼稚園教育が分かりにくいと言われている元なのかもしれないのですが、現場としてはそれが分かりやすい言葉なので、さっき神長委員がおっしゃったように、括弧の中に書く言葉として幼児の姿として、「気付く」、今お話があった「感じる」、「興味・関心を持つ」という言葉を使って内容を書いていただけると、教員はそのことを言っているのだなと自分がやっていることを振り返ったり、また、自分の保育の足りなさに気付いたりできると思いました。
そして、ここの「知識や技能の基礎」の中に書かれている概念的なことも、保育の中で私たちはやっていますよということを伝えるには少し言葉が難しいと思います。具体的に言うと子供たちのこういう姿なのですよということが書かれてあると、実際に教員の幼稚園教育要領の理解や実践につながるのではないかと思いました。
【無藤主査】  ありがとうございます。
それでは、嶋田委員、お願いします。
【嶋田委員】  失礼します。この図を見ていて学校教育法に示されている構造と大きく変わっていないので、これでいいのかなと思っています。ただ、小学校以上の三つの柱は、委員の皆様もおっしゃるとおり、生きる力の三つの要素のうちの、小学校で言うと学力とか、学習に大きくウェイトがかかっている三つの柱かなという気がします。幼児教育を見ていますと、遊びを通しての学びというのは、学力だけでなく、大きく心とか、そういったものが関わってくる活動だと思っています。この三つの柱にどう結び付けるかと見たときに、幼稚園教育要領を見ていると、環境の中に例えば、物の性質や仕組みに興味・関心を持つとか、数量や図形、標識、文字、こういった小学校以降の学習をイメージしやすいものに文言が出ています。興味を持たせるために環境を整えて、物の性質、数量などに関する感覚を豊かにするという、この豊かにするという部分がとても幼児教育らしいところではないかなと感じています。豊かにするというのも実際に幼稚園の現場を見ていますと、委員の方もおっしゃいましたけれども、知識を獲得するために試行錯誤があるとか、あるいは物の性質を生かした遊びは面白いなとか、数を数えると友達と競えるなとか、そういった文字があって自分の思いが伝わったというような、豊かな経験をいかに積み重ねていき、そして、便利だなとか、いいなというのを生活の中で必要性を感じさせることがとても大事であると思っています。これこそが小学校以上の分かるとか、できるというような、義務教育以降の学びへの接続がスムーズになるのではないかなと思っています。そういう意味では、中にはありましたけれども、知識とか技能、あるいは思考力・判断力・表現力という文言は、もう少し幼稚園教育らしい、見ていると資料4の22ページに、教科学習、総合的な学習の時間、特別活動、道徳で、それぞれの「個別の知識や技能」というところで、教科の特性とか、教科の学び方をイメージしやすい言葉になっています。ここは言葉が思いつかないのですけれども、個別の知識や技能というよりも、幼児教育は何となく生活や社会、これから生きていくための知恵というか、何かそういうイメージ。また、思考力・判断力・表現力が、考えるとか、感じるとか、気付くだとか、あるいは、判断力であれば関係付けるだとか、表現力であると伝えるとか、対話するとか、そういう文言があると分かりやすくなるのではないかなと思います。
以上です。
【無藤主査】  ありがとうございます。
では、斎藤委員、お願いします。
【斎藤委員】  福井県は、学びに向かう力を核とした保幼小接続、幼児教育の質の向上を今、進めています。それらの実践の中からこの育成すべき資質・能力について考えていることをお伝えしたいかと思います。
次の学習指導要領、幼稚園教育要領では、幼・小・中・高を貫く力を大きく掲げていただけるということで大変期待しております。それは、対等な学校教育としての幼児期の教育と小学校以降の教育が同じ力を、子供たちの力を育むために頑張っていくのだという大きな旗印のような期待をしております。
ただ、幼児期だけではないのですが、これから小学校以降もそうなっていくかと思いますけれども、総合的で主体的な遊びから学ぶという本質を表すためにどうするのかという表現上の工夫は必要ではないかと思っています。それを考えると、例えば、この資料2の図や言葉で言いますと、私自身は小学校以降の同じような文言をもってそれを貫く力を育てるということを出していただけることが大変良いのではないかと思っていますが、子供たちの育ちは、学びに向かう力は、幼児期にはこれらの個別の知識、技能や思考力・判断力・表現力、それらを包括して、子供たちの情意の部分を丁寧に育てることが必要ではないかと思います。この図示するようなイメージ、育ちのイメージでいうと、この三つが離れているのではなくて一体的に、そしてこの境目が重なる。ほとんどこれが重なるように一体的に育っていく、そういうイメージです。周りの線も曖昧で、ぼんやりしている。でも、重なっているようなイメージで育っていくのではないかと思っています。
一昨日、今年度福井県で育てています園内リーダーと面談のような個別の研修を行っていたところ、ある園の保育士の方から次のような事例を伝えていただきました。小学校と交流活動で芋掘りをした。小学校は、時間の制約があってつるを切って準備をされた。それではいけないと思って、その先生はこの時期に何を育てるのか、どういう力を育てるのかということを意識して、つるを残してある畝をそのままにしておいてほしいと言った。それで、後日、園だけでそのつるを掘り起こし、芋掘りをし、焼き芋をしたところ、落ち葉を集めてそこで煙がもくもくと出てくる中で焼き芋をしたときに、子供がこう言いましたとおっしゃいました。煙とお日様を見て、「お日様の光は煙に勝つんだね」と言ったと。それは、煙が広がるその様子に、暖かな日ざしが通る、その暖かさや、その子の感覚をその子なりの表現で出しているのですけれども、物事の性質を感覚的に気が付いているその子なりの表現ではないかと思います。
それから、もう一つ、その子供たちが、「小学校のお兄ちゃん、お姉ちゃんと一緒に食べたさつま芋よりおいしいね」と言ったと。それは、その周りの雰囲気や今まで園生活を過ごしてきた仲間と食べるもの、それから、そのプロセスを、遊びのように焼き芋をしているその空気感、いろいろなものがあると思いますけれども、今、お伝えしたように、子供は一体的にこの三つのそれぞれの力が関連しながら育っていく。それが幼児期の総合的で主体的な遊びから学ぶということだろうと思いますので、この図示のところについてそういったことを表現していただける、一体的でその境目が曖昧で、でも、確かに育っていく、小学校以降につながっているということを表していただけるとよいなと思います。
【無藤主査】  ありがとうございます。
では、横山委員、お願いします。
【横山委員】  私もこの「基礎」という言葉にすごく興味を持って、どう捉えればいいのだろうと考えました。先生方もおっしゃっていましたけれども、基礎というのを知識とか技能とか、それから、思考力・判断力、その中身の基本的な部分と捉えるか、それを獲得していく過程のファーストステップとして捉えるか、どう捉えるかで随分見え方が違ってくると思いました。私は、プロセスの最初のところを基礎と捉えると、子供の習得の部分は分かりいいのかなと考えました。
例えば、「知る」のところであれば、気付くであるとか、阿部委員がおっしゃったように、感じるという心がまず動くというところがある。そう思うと、子供が世界に関わりを広げていく、開いていくというところが、最初に知識とか技能の基礎としてあるように思います。興味を知ることに開いていくとは、興味を持つ、関心を持つということ。子供は、関心を持ったものには、そのまま眺めているだけではなくて、手で触っていきたくなる。泥であれば泥団子を作ってコネコネするし、バラッ崩れてしまったら、少し水を入れようかな、砂を入れようかなと試行錯誤していく。それが子供にとっての考えることだと思います。子供にとって考えるということは、頭の中でうんうんと考えることではなくて、実際に砂を入れたり、水を足したり、体を使いながら身体性を伴って行っていくことのように思います。その辺りの思考というものを獲得していくファーストステップ、子供が思考をどういうふうな行動として取っているのかというところを見ていっていただけると、幼児教育ならではの三つの柱が見えていくのかなと感じました。
以上です。
【無藤主査】  ありがとうございます。
では、田中委員、よろしいですか。
【田中(雅)委員】  皆様方の意見でもほぼ集約されていると思うのですが、現場にいて思うのは、5歳のときにできているのが小学校で消えているよねという部分がゼロではないということがあると思うのです。単純に積み上がるものではない。そうすると、単純に積み上がらない骨格の部分はどういうふうに育っているのかなということをどう表現するのがいいのかというのを思っているのですが、どうしたらいいか分かりません。大脳の専門家などとお話しすると、6歳のときのニューロンのネットワークと、8歳、9歳になってくると実は密度は落ちるけれども強固になっていくと。こういう流れの中の記憶とか、物の選定対象になるような学びでは駄目なわけで、我々が体験を通してとか、遊びを通してという言葉をずっと使っていたのですが、それの意味は実は現場的には何なのかなというと、子供がいろいろなものを習得していく時間の流れのようなものが、ネットワークの中の中核に位置付くための重要な要素かなと何となく感じています。そういう部分をどうやって表現するのかは文部科学省に頑張っていただいて、是非、要は体系を通さない、形だけのものしかでき上がっているように見えている姿というのは、実は小学校では継続されていないというのは実感しますので、その辺りを是非御努力をしていただきたいと思います。
以上です。
【無藤主査】  ありがとうございます。
では、白旗委員、お願いします。
【白旗委員】  先生方の様々な意見を本当に興味深く、そして重要だなと思いながら聞いておりました。今もお話がありましたけれども、実際、小学校と幼稚園を比べたときに、例えば、運動会一つを見ても逆転しているのではないかと。幼稚園ではバトンパスでやっているのに、小学校になるとリングになってしまうとか、タッチになってしまうとかありまして、幼児期からトータルで成長を考えていくことは極めて重要だなと、特に忙しい日本では重要ではないかなとつくづく思っています。幼児教育の場合、総合的な力といいますか、学びでいきますので、なかなか小学校の教科のようには判断できないところが非常に大きいなと思ってはいるのですが、そこで一つ、発達の段階ということが非常に強調されて、現行教育要領でもきておりました。そうしますと、この幼児期というもの、特性が明確に出ていかないと勘違いされるなということをすごく危惧します。特に幼稚園の先生方はものすごく生真面目で、冗談を言ったときも「これは冗談ですから」と言わないと記録されてしまうところがありますので、文字で「個別の知識や技能の基礎」と出ると、少し怖いなと。そうすると、先ほどから出ていました「感じて、知ったり、気付いたり」という、先生方にとってふに落ちる、幼児期特有に活動がイメージできるような言葉に置き換えていく。若しくは、奈須委員がおっしゃったように、定義ですかね。これはしっかりと落とし込んでいくことがどうしても必要なのではないかなと思います。
それから、もう一つは、これは三つが先ほどもっと近い関係でという話もありましたが、もしかするとこの順番、上と下がどっちになるかとか、先にどれが出てくるかによっても非常に影響を受けてしまうのではないかなという気がしています。小学校以上を見ていきますと、個別の知識・技能から入っていますから、これがまず一番やらなければいけないのかなと、どうしても印象として持ってしまいます。そうしますと、幼児期特有の順序というのか重要性というのか、そういうことがあるとか、若しくは関係性が近いというのもありましたが、上下関係とか、そういうところも特有にあるのではないかなと。言葉の部分と順序性や協調性の部分があるのかなと思っています。
最後に、先生方が実際、保育をしていきますと、目の前にあるのはこの領域の部分だと思っています。これを基にして活動を組んでいると思います。これが、三つの資質や能力とどうつながっているのかということが、出す、出さないは別として、多少整理できないのかなという気がしています。つまり、やっていることが資質や能力にこうつながっているのですよと、ここの部分では特にここにありますよと。実は私が専門としています体育ですと、体育の指導内容は一つが技能なのです。それから、二つ目は態度として、関心・意欲とか、協力とかなのです。三つ目が思考・判断。この三つが指導内容なので、資質・能力とほぼ一致するものです。ですから、いい体育の授業を作っていくと、結果的にそこにいくはずだと考えられるのですが、幼稚園の場合には、なかなか総合なので、総合と言いつつも、先生たちに「これを頑張れば、ここは特に」というのが少し見えるような形になってくると、つながりが見えてくるのかなということは少し思っております。感想めいたところが多いですけれども、以上です。
【無藤主査】  ありがとうございます。
では、渡邉英則委員。
【渡邉(英)委員】  皆さんの意見を聞きながら自分なりに感じていたのですけれども、一つは学びのプロセスをどういうふうに考えるかというときに、何を知っているか、何ができるかという話より、幼児期というのは、何がやりたくて何を知りたくて何ができるようになりたいかという、そこのところがすごく大事だろうと思ってはいます。そういう力を丁寧に育てていくと、そこで例えば、環境の豊かさとかいろいろな出来事が起こって、できたという実感が起こって、自己肯定感とか、学びに向かう力が出てきて、結果としていろいろなことができるようになっていく。どちらかというと学びに向かう力とか人間性というところから、個別の基礎技能についてじっくり取り組んでもいいし、もう少し言うと、できないことに向かうとか、泥だんごとかもそうなのですが、何回も試すとか、今日駄目でも、あしたやろうという力は多分、小学校以上でなかなかできる時間的な余裕がない。そういうところで自分が本当にできたという実感を、小学校以上の、ある意味では教科という枠の中であったり、単元という時間の制限の中でできるか、できないかという話です。そこでは何度も試せるというところが大事かなと思っています。ただ、活動面が決まってしまったり、すべきことを決めてしまうと、今年はサッカーやらないでラグビーやっている園が結構あったりしますが、必ずサッカーをしればいいというわけではなくて、社会、文化的コミュニティというか、あこがれがあったり、やりたいものというのは、子供たちはいろいろなところでいろいろな形で出てくる。そこは分かりづらいのだと思うのです。子供たちが感じているとか、やりたいと思っていることが、きちんとある意味、サッカーをやろうが、ラグビーをやろうが、知識や技能の基礎になっていったり、思考力・判断力・表現力みたいになっていったりというプロセスという部分をどういうふうに表現していくか。それが幼児教育の基本であるというところの出し方がもう少し幼稚園のところは丁寧さが必要かなと感じました。
以上です。
【無藤主査】  ありがとうございます。
では、渡邊委員。
【渡邊(郁)委員】
今、資質・能力の議論をしているところですが、私は教育の方法とも関連させて考えてしまうのは少し論点が違うかなと思うのです。どうしても幼児教育の特性というのは、ほかの学校種とは違うものがあるので、先ほども白旗委員がおっしゃっていましたように、特性を出すことが大事なのではないかということで、幼稚園教育要領の幼稚園教育の基本のところを三つ、幼児期にふさわしい生活の展開であるとか、遊びを通しての総合的な指導、幼児一人一人の特性に応じた保育というところで、例えば、感じるとか、知るとか、気付くとかというような土台の上に出てくるものであると思うのです。ということで、このところ、資料2の小学校のところでも、思考力・判断力・表現力等の下に、「教科等の本質に根ざした見方や考え方等」と、ちょっとした括弧書きのところが入っているわけですよね。そういうところで、この幼稚園教育要領の第1節の基本の内容を是非こういうところに入れていただくと、その特性が現れてくるのではないかと思いました。具体的にどういうふうに書いたらいいかということはもう少し考えてみたいと思いますが、私はそのように感じました。
以上でございます。
【無藤主査】  ありがとうございます。
では、大方委員、お願いします。
【大方委員】  大方でございます。先生方の御意見を拝聴しながら、参考にしながら、私の考え方として、皆さんと共通はしているのですけれども、この幼稚園というところで先ほどの資料4の中で「現代的な課題」というところがあったかと思うのですけれども、ある大事なところとして、この次の時代に求められる人間像の中で、幼稚園は義務教育として今、位置付けられておりませんから、いろいろな指導法なり遊びの捉え方は、それぞれの幼稚園なりが今までどおり考えていけばいいのかなと私は思います。ただ、その中で、「個別の知識や技能」といったときに、今の子供たちが、「技能」という、小学校と同じ表現をしてしまうと恐らく問題があるかと思うのです。
例えば、生活力として考えたときに、生活技能を考えたときに、手の操作性とか、言葉一つを取ったとしても、本当に幼稚園に入園している3年間の中で、どういう言葉力を身に付けていくのかとか、身体性を考えるときも、どういった身体性を、ある小学校に行くまでの見通しというか、系統性として、それは決してやらせ保育をするという意味ではなくて、基礎という位置付けで、思考力・判断力も人との関係性も一緒なのですけれども、その辺のところの共通理解というものが、このカリキュラム・マネジメントの中で教育課程としては必要なのではないかなと。ただ、書くときに技能と書くのか、生活技能と書くのか、知識という書き方をするのか、遊びを通した知識にしておく方が、今の幼稚園としては分かりやすいのか、誤解を生まないのかという部分があるのではないかと思うのですけれども、その辺のところは押さえておかないと、もしかしたら全ての子供ということや、インクルーシブに考えていたときに身に付きにくいまま小学校に移行していく可能性が逆にあるのかなという課題意識を若干持ちました。
その中で、さっき神長先生がおっしゃったプリンの問題もそうなのですけれども、プリンを作るにしても経過、過程があるということは、年齢によっても当然違うので、幼稚園といっても3、4、5歳というと全く意味が違ってくるので、その辺の教育課程の発達的なというか、ホップステップジャンプみたいなところも一緒ではないということもどこかで押えていただいたらよいのかなと。
でも、一つ大事なことは、この幼稚園という集団保育の中で、「僕は、私はどんな子なのか」という自己形成を集団の中でどういうふうに位置付けるかということが、それが学びに向かうという書き方でいいかどうかというのは、少し分からないのですけれども、人間性として人と折り合いをつけるとか、友達と一緒にきっ抗しながら、トラブルを解決しながら、友達ときずなを作っていくという満足度というのを3年かけてでも2年かけてでも小学校に行くまでにそういう体験をしたら、小学校へ入学したときのお友達との関係や社会性のある人間になっていくのではないかとか、その辺のところがこの三つの視点で私はうまくできているなと思いながら見ているのです。書き方として幼稚園という発達年齢の中で現場の先生の誤解のないように押さえたらすてきだなと思いました。ありがとうございました。
【無藤主査】  ありがとうございました。
では、砂上委員、お願いします。
【砂上委員】  砂上です。今、議論されている三つの個別の知識、技能の基礎、思考力・判断力・表現力等の基礎、学びに向かう力、人間性等がありまして、小学校以上とのつながりというところで、ここを幼稚園教育においても整理しておくことはすごく大事なことだと思います。ただ、これをどのように幼稚園教育の中で位置付けるかということに関しては、これまでの先生方の御意見にも様々ありましたように、かなり幼児教育の特性とか、方法、内容の独自性を踏まえて位置付けないと、個別の知識や技能の基礎というところで、ここでは基礎が赤字になっているのですが、これが外に出て広まっていくときに、個別の知識や技能がどうしても目立っていく可能性がある。そのことについてどれだけ丁寧に「基礎とは何か」ということを説明し得るかということが大事で、横山委員がおっしゃったように、ステップとして捉えるのか、あるいは内容として捉えるのかはかなり難しいところがあるかなと思います。先ほど来、意見が出ているように、この知識・技能の基礎と、思考力・判断力・表現力等の基礎というものは、どこかで分かれるというよりは、かなり融合しているようなところがあるので、そこのところをどのように捉えていくか。幼稚園教育の内容にせよ、方法にせよ、かなり重要な部分は総合的に指導するということがあって、それは基本的に子供の発達特性にも応じているし、実態としても遊びを中心としてやるときに、切り分けられないところがあるので、その切り分けられないものをいかに切り分けて記述するかというのが、今、課されているミッションのように思うのですが、そこのところはかなりまた難しいところが一つあるかなとは思っています。
ただ、小学校以上との関連を考えると、幼稚園で個別の知識や技能の基礎として経験していくことというのは基本的に多様であって、かなり幅が広くなっていく、生活全般に関わるということがあるので、それが小学校と1対1対応で通じるわけではないことをどのように捉えていくのかということを一つ説明が必要かなと思っています。
先ほど神長委員のお話にあった、プリンがデコレーションケーキになっていったというところで、そこに我々は子供なりの工夫とか遊びの深まりとか、そういうことを見て、デコレーションケーキになったというプロセスも感じて、子供の遊びの充実を捉えるわけですが、これがその捉え方がないと、プリンよりなぜデコレーションケーキがいいのかというところが、単に見栄えがいいからみたいな話になっていってしまうと、幼児教育の特質が損なわれてしまうし、何か分かりやすい成果というところで評価されていってしまうとか、活動主義的な感じで何か取り出していくぞ、みたいなことにアクセルを踏ませるようなことになってしまわないかということに対しては、少し慎重に議論しつつ、進んでいく必要もあるかと思います。ただ、先ほど大方委員がおっしゃっていたことはすごく分かることで、小学校以上につながっていくときに、子供個人個人を見ていったときに何が身に付いているかどうかということも丁寧に見ていかなければいけないところがあるかなと思うので、ここでいう個別の知識や技能が、小学校の教科と対応するものだけではなくて、もっと土台の部分も含むのだよということを見ていくことと、個別とは言うけれども、幼児教育においては、かなりそれはいろいろな活動の中で埋め込まれているもので、先生が自覚的になって初めて個別として捉えられものであるような見方ということも一つ言っていく必要があるのかなと感じました。
以上です。
【無藤主査】  ありがとうございました。
では、小枝委員、お願いします。
【小枝委員】  小枝でございます。この三つの柱を前提に話が進んでいるわけでございますけれども、3歳、4歳のお子さんをイメージするときに、私の中ではなかなかこの三つの柱はイメージがそぐわないという思いがあるのです。3歳台、4歳台の子に「個別の知識や技能」と言ってどんなものなのかなということがございます。小学校へのつながり等を考えたときに、三つの柱というのは出てくるのでしょうが、同じ幼稚園でも入りたての子ともうすぐ小学校を迎える子では随分と育ちが違いますので、一律に3年間、この三つの柱をそのまま持ってくることはそぐわないイメージでございまして、せいぜい発達的に見たときにフィットしてくるのは5歳台かなと思います。
先ほど田中雅道委員が「時間」ということをおっしゃいましたけれども、5歳台になると時間の累積ができていくので、あるものが次につながっていくのですが、3歳、4歳では割と刹那的なので、積み上がっていかないことがあるのだと思うのです。なので、もしこれを幼稚園の方に三つの柱を持ち込むとしたら、年長さんがフィットしてきて、その中でも現場の先生方の受ける印象を見ますと、「幅広い体験に根ざした」という枕言葉を付けてお出しにならないと、非常に勘違いする部分が出てくるのではないかなと思います。
以上でございます。
【無藤主査】  ありがとうございました。
私からも委員として少し考えを述べさせたいと思います。資料2のポンチ絵にしたがってお話しすると、一つは、先生方のお話でそれぞれ共通の部分が大きいと思うのですけれども、三つの柱があるにしても、かなり総合的であるとか、つながりが深いということでありますが、これは小学校以上の議論ですと、資料2の一番下に「アクティブ・ラーニングの視点に立った」ということで、三つの学びの実現が入っております。これについては、多分、次回以降の議論だと思うのですけれども、要するに、小学校において三つの柱を個別に指導しようと言っていることでは余りなくて、具体的な授業場面では三つの柱が総合化され、あるいはつながって具体的な学習活動になると思います。そういう意味で、幼稚園教育がより総合的なのだということをどう表しながら、その中で、しかしながら、子供の育つものとしての三つの柱を徐々に整理していくことかと思います。
2番目は、3歳、4歳、5歳、それから、もし満3歳児まで交流すると、より幅が広がるのですけれども、流れで捉える必要があって、例えば、考えるということも、広く捉えれば赤ちゃんも考えるのですが、それにしてもより感覚的、身体的な関わりの中で考える部分と、言葉を使いながら目的・思考的に考える部分の大きな流れの変化があると思います。以前の幼児教育と小学校教育の接続のときの言い方で言えば、学びの芽生えから自覚的な学びへの変化ということで、要するに幼児期は全部自覚する前だと言っているわけではなくて、そちらに向かっていくということですけれども、そういう表し方が必要かなと思いました。
もう一つ申し上げたいのは、三つの柱のことで、幼児期にふさわしいと考えたときの一番重要なところは何かということですけれども、これも複数の委員がおっしゃったように、幼稚園教育要領の具体的な文言、あるいはそれに至る幼児教育界での議論に戻りながら、この三つの柱の位置付けを考える必要があると思います。そうすると、個別の知識、議論の部分で言えば、私はここで一番大事なことは個別性だと思うのです。
つまり、具体的な例を挙げれば、幼稚園でハムスターを飼っているときに、だんだんそのハムスターにふさわしい関わり方をできるようになるわけです。最初はまだ動物に慣れていないと、まるで物を扱うというか、お人形、ぬいぐるみみたいに扱うのが、生き物として、あるいは猫や犬とは違うハムスターとしての扱いに変わる。そういう個別的な関わりというのが基本的な出発点だと思います。そう考えると、幼稚園教育要領に類した言い方はいろいろあって、物事の在り方に気付くとか、いろいろなことに積極的に関わるとか、それに応じていろいろなことをするとか、行うとか、そういう部分が該当するのかなと思いました。
それから、思考力のところも先ほど申し上げたようなことですけれども、簡単に言えば思考力というのは幼児教育の中で一番よく出てくるのは、何かしたいと思って工夫するところだと思います。そう考えてみると、子供たちがいろいろなものを動かしたり作ったりする中で工夫するところとか、あるいは自分たちの工夫をいろいろな形で言い表すところなどに思考力・判断力・表現力等が出てくると思いますので、その辺りを中心に考える。これも教育要領に既に幾つか書き表されていると思います。
それから、学びに向かう力、人間性等の部分ですけれども、これは別な言い方をすれば情意面だと思います。情意面でいえば、感情を豊かに感じるというところから、自己調整できるようになっていくという流れ。これも表現が少し違うのですけれども、幼稚園教育要領にそれぞれ入っておりますし、それから、更に情意の意で言えば、意思の部分ですよね。そうすると、最後まで粘り強く取り組むとか、難しいことに挑戦していくとか、そういうことになるのだろうと思います。そういう意味で、従来言われているような、関心、欲、態度とか興味とか、そういうこと全般を見通して言えば、こういう柱になっていくのかなと思います。
そういう意味で、既に5領域の個別の項目を見ると、結構近い方があると思いますので、それをそのままの形で、別な形で柱を見せるのか、5領域の中身も整理しながら部分を明確にするか、いろいろあるとは思いますけれども、この小学校以上と同じ表現である必要は全くないので、それを受けながら改めて幼児教育の在り方を整理していきたいと思います。
ということで、最後、主査としてのまとめになりましたけれども、今日別にここを決めるわけではありません。今日のところでまた論点整理をしていただいて、次回以降につなげたいと思いますので、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
それでは、もう一つの今日の議論をしたい論点に移りたいと思います。「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿の明確化」でございます。事務局から関連の資料の説明をお願いいたします。
【沓澤子育て支援指導官】  それでは説明をさせていただきます。使います資料は、先ほど見ていただきました資料1と資料3と資料4でございます。
はじめに資料1の下の部分でございます。論点整理におきましては、「小学校の各教科における教育の単純な前倒しにならないよう留意しつつ、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿の明確化を図る」ということが提言されています。
幼児期の終わりまでに育ってほしい姿につきましては、「幼児期の教育と小学校教育の円滑な接続の在り方に関する調査研究協力者会議」が平成22年に取りまとめました「幼児期の教育と小学校教育の円滑な接続の在り方について」の報告におきまして、「幼児期の終わりまでに育ってほしい幼児の具体的な姿(参考例)」、これが本日お配りしております資料3で、こちらのイからオの12項目で取りまとめているもの、こちらでございますけれども、こちらを示したところでございます。
この報告の参考例を基に、その明確化を検討していくべきと事務局では考えておりますけれども、その際、次の視点から改善すべきではないかということを本日の会議で御検討いただければと思っております。
1つ目が、資料1の一番下のところでございますけれども、先ほど御説明いたしました論点整理の「育成すべき資質・能力について」を踏まえた視点。論点整理の関連でいきますと、資料4の論点整理の抜粋の8ページから13ページの辺りがその関連する部分になるかと思います。
それから、2点目の視点でございますけれども、資料1の裏面に参りまして、平成22年以降、この報告書が出た以降の幼児を取り巻く環境の変化、幼児の育ちの変化、今後の社会の質的な変化、国際社会における幼児教育に対する認識の高まり、いわゆる非認知的能力の重要性の指摘、新しい時代と社会に開かれた教育課程等を踏まえた視点。論点整理の抜粋で言いますと、1ページから4ページ辺りでございます。これらの関連する視点。
それから、三つ目の視点が、幼稚園教育要領における5領域との関係や、幼稚園教育要領全体とのバランスの視点。
四つ目が、「前の学校段階での教育が次の学校段階で生かされるよう、学びの連続性が確保されることが重要である」と論点整理で提言されておりますけれども、こちらを踏まえました小学校教育からの視点。
五つ目で、「次期改訂に向けての課題」ということで、資料4の論点整理抜粋の5ページから6ページ辺りに示していることを踏まえました視点。
このような五つの視点から、本日お配りしております資料3のところにつきまして、御意見をいただければと考えてございます。
それから、この論点に関連いたしまして、資料4を御覧いただきたいと思います。「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿の明確化」に関する資料でございます。資料4の28ページから31ページが、第1回の部会で説明いたしましたけれども、こちらに幼小接続に関連するデータや関連する幼稚園教育要領、小学校学習指導要領の規定、小学校のスタートカリキュラムの概要、それから、今、御説明いたしました平成22年度に出されました「幼児期の教育と小学校教育との円滑な接続の在り方」についての報告書のポイントを掲載させていただいているところでございます。
また、ページが飛びまして48ページには「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」に関連する事例で、幼小接続につきまして、研究開発学校で指定された幼稚園や先進的な都道府県、市町村における「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」の例を掲載させていただいているところでございます。
小学校からの学びの基盤となる力について研究いただきました上越教育大学附属幼稚園では、この資料4の56ページから57ページのところに、接続期のリテラシーの基盤に関わる発達の姿を掲載してございます。
また、神戸大学附属幼稚園では、同じく資料の66ページから67ページで、字が細かくて大変恐縮でございますけれども、こちらに接続期の子供にふさわしい教育内容と方法を示しました入園から終了までのねらいの一覧が掲載してございます。
それから、言葉の育ちに関わる研究を行っていただきました尾道市立中庄幼稚園は77ページで、こちらも大変字が小さくて恐縮でございますけれども、言葉の形成に関わる発達の姿ということで、資料が掲載されてございます。
また、科学的思考の視点に合わせた研究を行っていただきました鳴門教育大学附属幼稚園では、82ページから84ページのところに「科学的思考が促されている姿」を関連資料として掲載させていただいております。
それから、自治体の例では、88ページに福井県の保幼小接続の全体カリキュラム。
96ページから97ページでございますけれども、草加市の「幼児期の教育において小学校の学びの基盤となる経験」というものをまとめていただいておりますので、そちらを参考資料として掲載させていただいています。
関連する資料の説明は、以上でございます。
【無藤主査】  ありがとうございました。
それでは、今、御説明いただきました「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿の明確化」について、また御意見を頂戴したいと思います。残り30分ぐらいですので、もしかすると全員に回らないかもしれませんが、また次回以降機会があると思いますので、よろしくお願いいたします。
では、小枝委員、お願いします。
【小枝委員】  小枝でございます。最初に事務局に質問をさせていただきたいのですけれども、最初に時間をかけて議論した「育みたい資質・能力」というこの三つの柱と、今からお話をする「育ってほしい姿」で挙げてある12項目との関係はどのようになっているのかなということをお伺いしたい。
それから、大体幼児期の終わりまでというと、6歳台をイメージしておられるのだと思うのですけれども、こういったものが育ってほしい姿として挙がってきた根拠ですよね。こういった研究とか、こういったものがあるので、こういった具体的な姿が出てきたのだという根拠などもお示しいただけたらと思います。まず質問でございます。
【無藤主査】  質問ですので、いかがでしょうか。
【沓澤子育て支援指導官】  それでは、一番目の質問については私からお答えさせていただきます。最初の質問でございますけれども、「幼児期において育みたい資質・能力」につきましては、幼稚園の3歳から5歳、3年間を通じた資質・能力をイメージしてございます。
それから、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」の方ですけれども、こちらの方はどちらかというと5歳の後半といいますか、小学校に上がる直前といいますか、5歳児の後半をイメージしてこちらを示させていただいています。
根拠につきましては、津金から答えさせていただきます。
【津金視学官】  それでは、終わりまでに育ってほしい姿ですけれども、これは、ちょうど報告が出ましたのが平成22年の11月なのです。その前に平成20年に幼稚園教育要領を改訂しています。その改訂の要点として出されました、例えば、領域の人間関係ですと、協同して遊ぶという、協同性ということが大きな柱として出されております。そして、その協同性に広がったところで思考力の芽生え、人との関わりの中で友達の考えを聞いたりして、自分の考えを深めるとか、それから、言葉というところでは、協同性から広がって、伝え合うというコミュニケーションの力ということ。それから、表現というところでは、表現の過程、友達と一緒に書いたり、作ったりということも、中で表現の過程を楽しむとか、協同して遊ぶことが大きな柱として出されてきておりますので、改訂の要点を基にして、もう少しそこを幼稚園教育要領に書かれている大綱的な言葉ではなく、具体的な子供の姿としてイメージすると、こういう姿として考えられるのではないかということで、ここにお示しをいたしました。
【無藤主査】  はい。どうぞ。
【小枝委員】  ありがとうございます。そうしますと、私などは単純に1番のこの三つの柱のどれがイロハのうちのどれに当たるのかなどと対応関係を考えてしまうのですが、そういうものではないということでよろしいのかということと、今、津金視学官から前回の幼稚園教育要領に基づいてこういう姿をイメージしたのだということでございますが、例えば、自然との関わりなどが入っているのですけれども、そうすると病弱児で長く入院している子はどうしたらいいのかなとか、言葉による伝え合いのことは聴覚障害の子はどうしたらいいのだろうかとか、少しその辺を心配してしまいますので、もう少しユニバーサルにいろいろな子に当てはまるような姿を描けていただけたらなと思いました。
以上でございます。
【無藤主査】  ありがとうございました。
では、課長からどうぞ。
【淵上幼児教育課長】  少し補足をさせていただきますと、今回、中央教育審議会全体の諮問事項が、私の理解するところでは、教育課程全体を通じて子供たちにどのような力を育てていく必要があるかと、資質・能力ベースでそれぞれの学校段階の教育課程そのものをもう一度見直してみようという大きな構造の整理が全体として求められているところでございます。したがいまして、この観点でもう一度幼稚園の教育の中身について、大きくこの資質・能力という形で捉えたときに、どういう整理ができるのか。これが一番目に御議論いただいたところであります。
そしてもう一つ、中教審で具体的に幼稚園、幼児教育に求められている課題が、幼保小の幼児期と小学校との接続の課題をどうしていくのかという項目が挙げられています。この観点で見たとき、資質・能力という観点でつないでいくという整理も、もちろん一つございますけれども、もう少し具体的な終了の段階での姿をイメージする中で、小学校との接続をどのように考えていったらいいかというアプローチだと理解をしています。論点整理の中でもそのような方向性が示されていまして、もちろん、三つの柱の自己と、今、お出しをしております参考例で12項目掲げてございます。これの関係性がどうなるのかということ自体も、更に深めていただきながら御議論いただきたいと思いますけれども、資質・能力で御議論いただいている中で、それを踏まえたときにこの12項目で足りるのか、足りないのか。あるいは、この12項目の具体の姿をイメージしたときに、また、資質・能力としてどういう整理ができるのか。相関関係もあると思いますので、相互に連関しながら御審議を賜れればと思っています。
【無藤主査】  ありがとうございます。なお、特別支援教育は、多分、何回か後にこの部会で議論できると思います。特別支援の部会が別にありますので、そちらと議論を調整する必要があると思います。
それでは、嶋田委員、お願いします。
【嶋田委員】  では失礼いたします。草加市の取組を紹介しながら、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」をどのようにイメージしたか、あるいは、明示したかということをお話しさせていただきます。
草加市では、昭和56年から幼保小の連携について検討等をしていたのですけれども、連携は一部で実施していたり、カリキュラムの作成までには至っていなかったりという課題があります。それから、平成24年度に約1万人規模でアンケート調査を実施しました。その中で、特に小学校、中学校ももちろんそうですけれども、この移行期に前後の子供たちの生活習慣の定着とか、意欲とか、あるいは心の安定について課題があることが非常に明らかになってきた。そこで、平成24年度に子供教育連携推進委員会及び教育連携推進室というのを設置いたしまして、無藤委員、それから、専門部会では神長委員に御指導、御助言を頂きながら、幼保小に関しては接続期プログラムの作成をいたしました。
まず、アンケート調査の結果、ここに小1プロブレムの発生状況とか、交流、連携の状況は記述されているのですけれども、その中で小学校卒業までに、あるいは15歳までに身に付けてほしいこと。あるいは、こんな姿に育ってほしいというイメージをアンケート調査の中から取り上げまして、こちらの目指す「草加っ子」というところに作成して、0歳から15歳までの具体的な姿をこのような形で横一覧で、見にくいのですが、これはインターネット上に公開されております。この分け方ですけれども、幼児期の特性である信頼できる家族あるいは大人から徐々に子供たちの生活や人との関わりとか、興味、関心が広がっていくという、この三つの視点を生かしまして、実際にアンケート調査や現場の小学校教員、幼稚園、保育園の関係者と協議を終えて具体的な姿にまとめております。これが資料の94ページになりますけれども、1で具体例が載っております。
【無藤主査】  資料4ですか。
【嶋田委員】  資料4の94ページになります。こちらはあくまでも教育機関向けですので、家庭にもこのような形で幾つか、子供たちの家庭で育ってほしい姿を記載して配付しています。
また、この接続期でとても大事なところというのは、幼児期の教育の成果を小学校教育に円滑につなげる、あるいは成果を生かす小学校教育がスタートすることで、資料4の95ページに記載しておりますけれども、幼児教育と小学校教育の特徴を簡単に取りまとめています。こちらの資料とは交流・連携の際、教職員同士が保育あるいは授業を見ながら、どのような狙いであるのか、どんなところを意図しているのかというものの参考に記載しているものです。
幼稚園の先生たちは、小学校の授業を見ているときに、狙いがどういうものであったりとか、評価がどういうものであったりとか、黒板や子供たちの発言あるいは教師の発問で非常に経験的にも見やすい、理解されやすいものなのですけれども、小学校教員が幼稚園の活動を見ていると、一体狙いは何なのか、分からない部分がある。どこをどう評価しているのかというのが非常に分かりにくい。そういう意味で、こちらが少しのきっかけになればということで参考として記載しております。
また、小学校教員が幼稚園の教育活動を見たときに大事なのは、その中に学びがあるのかどうかです。特に小学校ですから、各教科の学びに生かせる、土台となる経験はどんな経験があるのかという視点を持つことが大事です。こちらには記載していないのですけれども、幼児期の学びにつながる姿ということで、各幼稚園から事例を挙げていただいて、その中で、小学校教育で、例えば、算数とか、国語とか、教科につながる活動として、こういうところを幼稚園ではこのように経験していますよというページがあります。
この接続期のプログラムの三つの狙いを作りました。まずは、幼児期の終わりから小学校教育の始まりにかけての子供の発達の様子を理解するということ。学びを通した総合的な学びから各教科の学習に分科する子供の学びの姿を明らかにすること。それから、幼保小が一体となった取組、特に接続につながる交流・連携を、単純に出かけて子供と交流していればいいよではなくて、接続につなげるという目的で交流・連携を推進していくという内容のものとなっています。
そういう中で、94ページに示しておりますけれども、幼稚園の終わりまでに身に付けてほしい力、それから、その中で二つ、内容項目を示しています。その中の具体例で、幾つか中黒で示していますが、こちらを幼稚園、あるいは保育園の先生が5歳の終了時期までに身に付くように活動をしてください、そして、小学校はこれを土台として各教科につなげていきますよという構成となっています。
96ページと97ページに、幼児期の教育において小学校の学びの基盤となる経験、「生活する力」、「人と関わる力」、「自ら学ぶ力」、これも三つの視点に絞って、こういう経験をすると、その手前にありますけれども、子供たちに幼児期の終わりまでに身に付けてほしい姿、こんな姿に近づいていきますよという形で共通理解を図って接続期に取り組んでいます。この幼保小の接続において、各幼稚園、小学校を見ているのですけれども、一つだけお願いしたいなと思うのは、資料1の2ページ目の一番下の、「次期改訂に向けての課題」で、例として「自己肯定感が低い」という文言があるのですが、幼稚園の活動を見ていると、非常に自己肯定感は育っているなという気がします。裏で実は小中の連携を進めているのですけれども、中学校もこの自己肯定感というのを非常に大事にしています。見ていると、中学校では生徒指導提要の中でも自己肯定感という言葉が明確に出てきて、これを育てていくのだと。幼稚園教育要領を見ていると、やはり人間関係であるとか、健康とか、そういうところに自己肯定感という言葉は使っていないけれども、「自分の存在を基盤とする」だとか、「信頼関係に支えられて自己を発揮する」というような文言がかなりちりばめられている。そういう意味では、接続の中で小学校においても自己肯定感をきちんとつないでいくことが小中の一貫だけでなくて幼保小中一貫した教育につながっていくのではないかなという気がしています。
以上とさせていただきます。
【無藤主査】  ありがとうございました。
では、山下委員、お願いします。
【山下委員】  今、幼小の接続というのは、教育体系上つながっているのですが、その関係性がなかなか見えにくかったと私は思っているのです。幼小の接続を行う場合に、各都道府県や市町村では、例えば、生活をつなぐとか、学びをつなぐとか、心をつなぐとか、それぞれがいろいろな視点を決めて取り組んでいます。その視点を決める難しさがあると思うのです。これから、幼小の接続も含めて保・幼・小・中・高と見通した教育を行っていくときに、接続の視点を示すことが大切だと思っております。そういう意味において、育成すべき資質・能力の柱に沿って、これから整理をしたものを次の要領改訂に示すことによって、幼稚園から高校までを見通した体系的なものができてくるのではないかなと思っています。そして、それを踏まえて、各自治体が更に幼小の接続に取り組むことができるのではないかと思っています。
ですから、幼小中高の教育を縦のつながりの見通しをもって系統的に組織していく視点から見ると、幼児期に育みたい資質・能力が、育成すべき資質・能力の三つの柱との対応が分かるようにしていくことが大切であると思います。それから、5領域についても三つの柱に沿った形である程度整理することが大切ではないかということを先ほども申し上げたところですが、幼児期の終わりまでに育ってほしい幼児の具体的な姿についても、現在の状況を踏まえて整理する際にも、これと同様に育成すべき資質・能力の三つの柱に沿って整理していくことが大切ではないかなと思っています。その場合、それぞれの項目を、幼児期に育成すべき資質や能力を踏まえた表現を大事にしていただきたいと思います。これらのことを示すことによって更に幼稚園から高校までを見通した、つながりを持った教育として考えていくことができるのではないかなと思っております。
【無藤主査】  ありがとうございます。
では、斎藤委員、どうぞ。
【斎藤委員】  よろしいですか。資料に沿って意見をお伝えしたいと思います。85ページから後を御覧ください。
福井県は、実はスタートカリキュラムとアプローチカリキュラムという言葉を3年前は使っていたのですが、その言葉を今、使っておりません。接続ということで、育成すべき資質・能力を意識した、これからの教育を意図するものに変えていこうということで、3月の終わりまでに、4月になった、小学生が例えば、行儀よく座っているけれどもぼんやりしているとか、自分の力を出し切れないというイメージではなくて、幼児期から子供たちが小学校以降も自分の力を精一杯出せる、そういう教育をつなげていくという意図で作らせていただいております。
それから、幼児期の本質的なものを、これが就学前の教育が小学校の前倒しとか準備と誤解されるという、この制度の改革で多様な保育という名のもとにいろいろなことが行われていることも危惧した上で、それを守るためにこのカリキュラムを作らせていただいております。園の先生方にとっては、子供はこれからどのように育つのかという見通しを持つためにお使いいただきたい。だから、あえて3月までの姿というよりも、経験の総体のような書き方をしてあります。それから、小学校が、子供がこれまでどのように育ってきたかを見通すための資料にもなる必要があるということで、先ほど申し上げた子供のエピソードなども、このカリキュラムを基に先生方が理解していただいて実践していただいていると思っております。
「学びに向かう力」については、友達と共通の目的に向かって子供自身が主体的に遊び、活動を発展させると書いてありますけれども、これは5歳児だけのことではなく、それ以前の子供たち、このカリキュラムを基に1歳、2歳の事例も出てきます。この経験がずっとつながっているのだよ、でも、はっきりと違うことがあるというのが、89ページに書いてあります。内容カリキュラムの解説のところを御覧ください。
88ページは、全体カリキュラムとして協同性とか、学びの芽生えとか、道徳性をしっかりした柱にしていこうという見方をしていただけたらと思います。もちろん、学びの芽生えの中で、生活習慣から学習習慣につながっていくことが自分作りとして大切だということや、思いの言語化を促していくことが自分の自己コントロールに必要だという考えがベースになっております。内容カリキュラムの大前提として、幼児期の保育教育と児童期の教育、教育課程には、違いがあるということを記し、90ページを御覧ください。
5歳児が遊びを通して身に付ける基本的な内容についても、夢中になって遊ぶ中で気付きが得られるとか、多様な学びを促すとか、子供自身が遊びを発展させる中で感じるとか、そして、文字とか数、自然など、小学校以降の教育をイメージする、そういう本質を教科の基底にある力への気付きを生み出すような、そういう要素が含まれる、そんなものをはっきり書かせていただいております。
91ページ、大変細かいのですけれども、それぞれ福井県独自で言葉、数、自然、約束という四つのカテゴリーで10の項目ずつ例を挙げてあるのですけれども、この中に流れていくのは、例えば、当たり前のように園がやっていらっしゃることもありますし、それでも憧れをベースにして意欲、情意の部分に働きかけることを大切にしてほしいという内容になっております。これで子供たちが、それから、現場の実践がどのようになってきたかと申し上げますと、例えば、今まで教科の領域のように、時間割のように園生活を組み立てていたところが、今年度から泥遊びを始めるので泥んこパンツを保護者に持ってきてくださいと。親が余りにもびっくりしてそういううわさがこちらに届くとか、それから、自分たちの教育課程を見直したいと、それが民間の保育園や私立幼稚園も公立も含めて、自分たちが本当に今やらなければならないことは何かを見直したいというための研修、研究が大変盛んになっております。子供たちが経験することが、この辺りの教科の本質的なもの。先ほど申し上げたことも光と影に興味を持ち、性質に気付きながら、それでも野菜や花の特徴に気付き、成長に興味を持つとか、多様なことが一度にその子の中に現れているのではないかと考えています。実践と育成すべき資質・能力の考え方をつなぐためのそういう仕組みと合わせて、こういう資料が使われていくことが必要なことではないかと考えています。
【無藤主査】  ありがとうございました。
では、小枝委員、お願いします。
【小枝委員】  小枝でございます。この12個の視点、見せていただきますと、随分としっかりとしたことが書いてあって、大分網羅しておられるのかなと思うのです。私が思いますに、これらはどうしても先ほど嶋田委員がおっしゃいましたように、自己肯定感といった辺りの文言も育つ姿としては入れていただけるといいのかなと思いまして、それを言葉にすると、人や社会に対する安心感と信頼感といったものを幼児期にきちんと育てておくことは、育ってほしい姿として入れておいていただきたいなと思うのです。これら12、それぞれ目標とかイメージがあるのですけれども、どうしてもこれは評価をする項目になっているのです。なので、評価されない心地よさみたいなものも幼児期に感じ取って大きくなってほしいなと思います。
以上でございます。
【無藤主査】  ありがとうございました。まだおありかとは思うのですが、時間も迫ってきましたので。
では、白旗委員のところで。あと是非今日のうちにというのがあれば。では、渡邉委員とお二人で。白旗委員から。
【白旗委員】  今議論しているものを大きく言う意味で、幼児期も含めて学力ということで考えていくならば、この後、小学校、中学校、高等学校とつながっていく、幼児教育の場合には畑作りみたいな感じかなと自分の中ではイメージしています。それだけに重要であって、非常に影響力も大きいですし、また、難しさもある。このときに生涯学習ということを考えていくと、学びの土台には意欲が極めて重要で、多分、意欲とは自信とか自己肯定感と非常に強い関係にあるのではないかと。幼稚園から入った1年生の子たちに、「学校で何をしたいの?」と聞くと「勉強したい」と言うのですけれども、半年後には誰も言わなくなってしまうようなところが、少し残念だなと思うところなのと、体育で体力等の調査の中で、小学校の段階でもう運動が嫌い、自信がないと言っている子供たちが結構いるのです。この子たちが一番の原因で挙げているのは、幼稚園のときに既に自分ができなかったとか、もっと言うと経験していなかったので、みんながやれたことができなかったという話が多いのです。これは先生たちの問題というよりは、どういうものをやっていいか分かりにくいということに一つ原因があるのではないかなと思っています。
ですから、危険性を伴う部分はあると思うのですけれども、向かうべき姿を一度整理していくことは必要なのかなと私は思っています。そうしないと、なかなか評価も考えるのが難しい。ただ、この評価も大変難しくて、さっきから出ています三つの資質や能力とうまくここがリンクできていないと、具体的な活動しか見ていないことにもなりますし、ある程度緩やかにしておくべき必要があるのかなと。スポーツの世界では、月齢によって差が当然あるのですけれども、例えば、小学校6年生ぐらいだと、サッカーで選抜チームクラスに選ばれる子はほとんどいないですね。いろいろな協会で完全にうまったと言えるのは、二十歳ぐらいだろうというのが見解として出ていますので、幼児期でものすごく大きいのは当たり前。そうすると、同じ5歳、6歳であっても、かなりの開きがあるので、余りきつい評価に関わるようなことになると少し怖いなということがあります。あくまでも例ということで、世の中に出るとこれだけやればいいとなるのが少し怖いなということは危惧するところです。
【無藤主査】  ありがとうございました。評価についてもいずれこの部会で取り上げると思いますけれども、もちろん、今までの幼稚園教育と同様に、子供たちを何らかに分けて何とかするという話ではないので、その辺もいずれ議論したいと思います。
それでは、渡邉英則委員、お願いします。
【渡邉(英)委員】  神戸大学附属幼稚園の田中委員のところに、私はつい最近伺って、この資料4の60ページの図の説明を受けました。これは小学校、中学校の先生も全部入ったところで、10の視点と40の項目という形で具体的な姿、実践、当てはめていって表を作っていったという話でした。面白かったのが、自分の生き方とか人とのつながりが大きくなってきて、この事例に対してはそういうことが大事だという話になってきて、そういう二つの大きな円のものと周りについているものというような分け方で保育を検証していました。私たちも活動とか子供の姿を見ながら5領域で考えたりはするし、今回の各学校施設における幼児期の終わりまでに育ってほしい幼児の姿も、割と並列的でです。本当に幼児期に育てたいことは、こういうことなのだというところでいくと、例えば、本当に一つ一つの活動が起こったときに、その子供の生き方みたいなことが関わっているとか、人とのつながりがという中で、いろいろなものが育っているという幼稚園教育要領でも取り上げていて、私もそちらに慣れてはいるのだけれども、少し違う視点から、幼児期に育つことを改めて確かめながら、本当に幼児期に育てたいものはどういうことなのかをしてみることが、自分にとってはすごく新鮮だった。今、お二人の先生からもお話をお伺いしながら、私の中では神戸大学附属幼稚園に実際に伺って丁寧に聞いてみると、こういう視点で物事を見ていくことも、幼稚園教育要領を見直すという視点の中では、結構新鮮なことだったということをお伝えしたくて発言させていただきました
【無藤主査】  はい。神戸大学の田中委員はまた次回いらっしゃると思いますので、解説をそのときにお願いしようと思います。
少し時間が足りなくて、全員の意見、委員の御発言ができなくて申し訳ございませんでした。本日、時間ということで、ここまでにさせていただきます。
本日前半、また、後半、いろいろな御意見を頂きましたので、事務局で論点ごとにまた趣旨を整理していただきたいと存じます。
また、特に後半、限られた時間での討議でございました。発言できなかった、あるいは、十分意を尽くせなかったということ、また、日頃考えておられること、また、後で考えられたことなども含めまして、御意見など、後ほどペーパーで事務局にもお送りいただければと思います。
そして、本日の「幼児期において育みたい資質・能力の構造化」、そして、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」につきましては、今日の議論、また違う形で委員から出されたものなどを踏まえて、事務局で次回までに更に整理をお願いしたいと思います。
次回以降の日程につきまして、事務局より御説明をお願いいたします。
【沓澤子育て支援指導官】  先生方、本日も様々な意見、どうもありがとうございました。
次回は、12月24日木曜日、10時から開催予定としております。場所につきましては、文部科学省内を予定しております。議題につきましては、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」などを本日の委員の皆様方の御意見を踏まえまして、事務局で整理をいたしましてお示しをしたいと考えてございます。
また、ただいま主査からもお話がございましたとおり、ペーパーによる意見等も頂戴したいと考えてございます。ファックス又はメール、郵送でも結構でございますので、大変短い間で恐縮でございますけれども、12月1日火曜日ぐらいまでを目途に頂戴できればと考えてございます。
なお、本日の配付資料につきましては、机上に置いていただければ後ほど郵送させていただきたいと存じます。
以上でございます。
【無藤主査】  ありがとうございます。
それでは、本日の部会を終了させていただきます。ありがとうございました。

── 了 ──


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