教育課程部会 言語能力の向上に関する特別チーム(第5回) 議事要旨

1.日時

平成28年5月12日(木曜日) 10時00分~12時00分

2.場所

中央合同庁舎第7号館 文部科学省3階3F1特別会議室

3.議題

  1. 国語科及び外国語科・外国語活動を通じた言語能力の育成について
  2. その他

4.議事要旨

1.「国語科」及び「外国語科・外国語活動」を通じて育成すべき言語能力について

取りまとめ(案)「2.言語能力を構成する資質・能力について」

 P3の1つ目の「・」に関して、言語能力は全ての人に身に付いている能力であるので、「身に付けさせる必要がある」という表現よりも、「高い水準で身に付ける」といった表現の方が良い。

 P3の3つ目の「・」に関して、対話の不足などによって人間関係の問題が起こることもあるので、書き加えてほしい。

 別紙2にある「精査・解釈」の「精査」という言葉は、これまで学習指導の中ではあまり使われてこなかった言葉であるが、新しい言語能力をイメージしていくときの一つのキーワードとして出していくことも大事である。

 「精査」という言葉は、これまであまり使われてこなかったが、個人的には、「精査」という言葉をここであえて使った方がいいと考えている。

 P7~8に記載のある「認識から思考へ」「思考から表現へ」という流れは、「表現から思考へ」と回るサイクルになっているので、表現をすることによって、また自分の認識を深めるということを書き加えた方が良い。

 別紙2に、別紙1の「学びに向かう力、人間性等」の要点だけでも記載し、自分の学びに対する意欲や文化背景、対人関係などが、考えの形成や深化を支えていることが分かるようにしてほしい。

2.言語能力を向上させるための、「国語科」及び「外国語科・外国語活動」相互の連携について

取りまとめ(案)「3.言語能力の向上のために言語活動の充実、及び、「国語科」「外国語活動・外国語科」の改善・充実について」

 P10の最後の行について、「自律的・主体的に」という表現は、これまで使われてきた「積極的に」という表現よりも良いと思う。

 国語科と外国語活動・外国語科の指導内容のつながりを可視化することについては、まず、ゴールを共有していることが可視化されることが大事であり、国語科と外国語科において、どういうゴールを設定し、どのくらい共有されるのかという記載が必要だと思う。

 ゴールの可視化が非常に重要である。言語能力は、日本語や外国語のそれぞれにあるものではなく、言語能力の総体は一つであると考えている。言語という観点から考えると、日本語だけを学ぶよりも英語などの外国語を学ぶことによって、言語能力全体が高まり、領域という観点から考えると、社会や理科などの特定の領域において、特定の言葉やその使い方を学び、それも言語能力の総体に入っている。つまり、全教科等において、別紙1や別紙2にある言語能力を高めることを目指していると言えるのではないか。

 自分の学校の実践では、活動が目的になってしまうのではなく、どんな力を身に付けるのかを明確にすることを重視している。国語の学習と外国語の学習の連携の効果については、外国語の学習を通して、日本語でよく省略されがちな主語や文脈に気付いたり、相手に対してどのようなことを明確にして表現しなくてはいけないかを注意したりするなどの点で実感がある。
 また、卒業生にどのような力が付いたかを聞いたところ、例えば、論の組み立てをする力、相手に伝える力、説明する力が付いたという答えが返ってきている。

 創造的・論理的思考の側面、感性・情緒の側面、他者とのコミュニケーションの側面における国語と英語の共通点を可視化できるといいと思う。例えば、国語科でも外国語活動・外国語科でも、他者とのコミュニケーションの側面にある、相手との関係や目的、場面、文脈、状況等の理解を意識しながら指導することなどを大事にすることを前面に出せるといいと思う。

 P11の3.(3)にある9つの「・」については、色々な連携の要点が記載されているが、それらの要点にあるように、例えば、メタ言語的な気付きは日本語の運用や英語の学習にどのような点で役に立つのか。各教科の改訂に生かすためには、連携することによって、どのような資質・能力が育成されるのか、そのためにどのような方法があるのかを示す必要がある。

 国語科と外国語活動・外国語科において、どのような指導内容の連携があるのかを考えた時に、P13の「具体的には…」の1~2番目が言語構造に関する記載になっているので、構造的な分析を重視しているようにとられる危惧がある。それよりも、同じ気持ちであっても言い表し方が違うとか、コミュニケーションの仕方が違うとかいうことを学ぶ方が大事なので、そちらに重点を置いた書き方にした方が良い。

 P13の具体的な連携の内容については、別紙1や別紙2に対応するような形で書かれた方が分かりやすいと思う。

 連携をどのような柱立てで整理するかについては、例えば、音声と文字、文などの構造、意味や解釈という3つの項目で整理してはどうか。

 別紙1や別紙2で整理した資質・能力やプロセスを下支えに、具体的に国語科と外国語科をどう連携させるかが大事。例えば、ローマ字表記とアルファベット表記について、違いへの気付きを促すだけでは不十分であり、発音と表記の対応関係の違いについて、より明確に指導する必要があると考えている。

 現行の外国語活動においては、日本語と外国語の違いについても扱っているが、P13の1つ目の「・」が、その際、ローマ字も扱うということであれば、音に対する違いという観点を含めていくとよいと思う。

 ローマ字学習について、国語と外国語の学習の連携による授業の実例を見たが、国語の学習としてのローマ字学習の充実を実感した。ただ同時に、その授業だけでは、その後の英語の学習にどのようにつながっていくかが分からなかったので、発達段階に応じて、具体的に、どこで、どのような連携を行って資質・能力を育成していくのかという系統性のようなものが示されると、教材や指導の工夫につながると思う。

 P13の4つ目の「・」にあるパラグラフ・ライティングについて、その方法を外国語科で学んでから国語科で行うという順序性がよいのかどうか確信が持てないので、この点については、慎重に考えた方がよい。

 言語活動の充実は、言語能力の育成のためだということを、改めて再強調すべきである。言語活動の充実がアクティブ・ラーニングの視点からの授業改善に発展的につながっていく時に、全ての教科等において、言語能力の育成が行われることが重要な観点になると思う。どの教科においても言語能力を育成することが、その教科の学習の充実につながるという形で言語能力の育成を位置付け、教育課程全体で言語能力を高めることと、教科固有の資質・能力を育成することとの両立が重要である。

 自分の学校の実践から考えると、言語能力を高めていくと、各教科等の授業が本当に充実していくという実感がある。また、国語科、外国語科側としても、他教科の学習内容を題材として使ってみようという、学習者の視点からのカリキュラム・マネジメントが進んでいる。こうした教科の枠を超えた連携が非常に重要だと思う。

 教科の学習をするに当たって、教員は、その前段階の学級の雰囲気作りや人間関係形成というところを極めて留意している。言語能力の向上は、こうした人間関係形成などに資するものであり、学校の教育課程のどの場面でも意識されるように位置付けることが、各教科等における授業改善の下支えになるということが確認できるといい。

 補足であるが、音声の問題について言及が足らないと思う。例えば、色々な国の人が話す英語の発音は非常に多様であり、英語の多様性に対して、音声の訓練という側面が出るように書き換えることができないか。

 英語の発音に関しては、例えばロシア人はロシア語の、ドイツ人はドイツ語の音声のリズムに影響されるなど、なまりがあることがむしろ自然である。なまりがあっても、自分の意思を外国語で相手に伝わるように話すことが重要であるというメッセージを出すべきだと思う。ただ、全く指導しないという意味ではなく、心理的な負担を下げるという観点で表現を工夫してほしい。

 P14の下から3つ目の「・」について、「『国語科』と『外国語活動・外国語科』における学習の連携を意識した教材の工夫」は大事であるが、例の書きぶりについては、教科書にこの教材を出さなくてはならないという誤解を生みかねないので、「外国語になった日本語」や「日本語の外来語」などのレベルの例に修正した方が良い。

 教材の例として、ことわざや英語になった日本語というものは、文化を理解する上では興味深いものであるが、深い学びにそのままつながらないのではないか。例えば高校段階で、日本の古典を英語にして読むと、非常に分かりやすくなる作品もある。また、夏目漱石や俳句・短歌などの優れた翻訳は、英語の教材としても優れているし、その日本語の原文を学習した場合には相乗効果が期待できると思う。

 教材の例について、一般論としては賛成であるが、英語の教科書に、必ず「日本の古典、短歌・俳句」を入れなければならないという誤解を生じないように、書きぶりを工夫する必要がある。日本語と翻訳されたものを読み比べることは良いことであるが、教材主義的なことが独り歩きしないようにしてほしい。

 題材や教材そのものよりも、そこに付随する言語活動の充実が言語能力を高めるために重要である。このため、「古典、短歌・俳句、現代文等を扱う」ことそのものよりも、それらを通して、言葉についての気付きを得たり、自分の考えを形成したり、他者と意見を交換したりすることの方が重要だということが分かるように記載するといいと思う。

 今回の改訂では、教材の在り方を考えなくてはいけないと思っている。国語科も、おそらく外国語科も、教科書教材に沿った形でしか授業が行われていない現状である。これまで、育成しようとしている言語能力の可視化がなかなかされてこなかった。今回の改訂では、国語科と外国語科の学習指導要領に、どのような言語能力を育成するかを書き込んでいかなければならない。

 単に「連携」としているだけでは、同じ教材を両方の教科で読むだけで“連携した”、ということになりかねない。重要なのは、どのような資質・能力を育成するかであって、そのための教材を考えることが必要である。育成すべき資質・能力を学習指導要領において明確にし、その中に「連携」を位置付けていかないと、活動主義の言語活動の寄せ集めのような授業になってしまうことが危惧される。

 国語科と外国語科において、どういう能力を育成するかという教育目標を整理し、それに合った教材を提示することが重要であり、単に、P14に例示されたものを教科書に載せればいい、授業で扱えばいいということでは、国語科と外国語科の連携は図れない。

 P14の(4)2つ目の「○学校全体としての指導体制」については、日常的な連携体制がイメージできるように、より具体的に記載して欲しい。

以上。

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