資料1 コミュニティ・スクールの仕組みの必置に関する論点(検討の視点)と主な意見

【論点】コミュニティ・スクールの総合的な推進方策をどのように考えるか。

コミュニティ・スクールの仕組みの必置について、以下の観点も含め、どのように考えるか。

 ○学校や地域の状況
 ○市町村や学校の規模との関係
 ○幼稚園、高等学校、特別支援学校の特性を踏まえた在り方
 ○小規模自治体における教育委員会と学校運営協議会との関係の取扱い

 【検討の視点】
○全般的な事項
 ・すべての学校におけるコミュニティ・スクール化を検討するに当たって、現行制度上の学校運営協議会の権限の在り方をどのように整理するか。
 ・学校運営協議会の機能の一つとして、学校支援活動等の総合的な企画・調整の機能を位置付けることについてどのように考えるか。
○学校や地域の状況
 ・学校や地域の状況を踏まえたコミュニティ・スクールの導入促進の在り方をどのように考えるか。
 ・現行制度上の学校運営協議会の権限との関係も踏まえ、自治体独自の類似の仕組みの扱いについて、どのように考えるか。

■これまでの主な御意見
・学校の統廃合が議論されている地域では、コミュニティ・スクールの類似の取組が 行われているところもある。全ての学校をコミュニティ・スクール化するなら、既存の取組を制度化することで、停滞しがちな面もある既存の取組を安定させていくという面をアピールしていく必要がある。
・必置とした場合、○○版コミュニティ・スクールも一つの形ではないか。○○版で実践を重ねてから、国のコミュニティ・スクールに発展していくことが考えられる。国の施策にあわせようとすると大変だが、それを(地域の実情にあわせた)自己流にあつらえ直すことが重要である。
・コミュニティ・スクールは学校と地域の連携を見直す仕組みであり、国の意図も踏まえつつ、そのエッセンスを県や市、学校で意志を伝えていくことは、地域の主体性を喚起することになる。
基本方針の承認なくして、コミュニティ・スクールとは言えない。校長が方針を立案し、それを学校運営協議会が承認することによって、責任を分担する意識が高まり、理解・協力し合って実施していくことが可能となる。類似組織の事例もあるが、コミュニティ・スクールになる上では、現行制度上の3つの機能は不可欠なものであり、それを前提にして研修機能の充実を図っていくことが重要である。学校運営の責任者が学校運営への理解・協力を地域住民や保護者に求めることは当然であり、教育委員会や校長が恐れる必要はないと考える。仮に承認を協議といったものにすると、制度の形骸化につながるのではないか。
・コミュニティ・スクールの指定のない自治体のうち約7割が現段階では指定の予定がないとのことだが、学校支援地域本部や類似の仕組みから中々抜け出ていけない自治体もあるのではないか。教育委員会や教育長の判断も重要である。
・熊本県では、コミュニティ・スクールは義務教育課、学校支援地域本部は社会教育課、学校評議員は学校人事課とそれぞれ担当が異なっており、コミュニティ・スクールは平成24年4月時点では500校中30校がモデル的に導入していたものの、中々理解が進まず、平成25年3月に熊本版コミュニティ・スクールを打ち出すこととなった。校長が学校運営方針や教育活動状況について、学校が主体的に設置する協議会に説明し、情報共有しながら意見を求めていく取組であり、学校運営協議会の有する基本方針の承認や教職員の任用に関する意見といった権限は緩和されている。ただし、熊本版で終わるのではなく、法制度上のコミュニティ・スクール(学校運営協議会)につなげることを意図している。平成27年4月現在では、コミュニティ・スクールが59校、熊本版コミュニティ・スクールが74校であり、今後熊本版コミュニティ・スクールに取り組みたいという所が120校ある。他方、3分の1の学校がまだそこまで至っていないこと、また、政令市にはコミュニティ・スクールがないという課題も抱えている。前者の課題については、今後周知徹底が必要であり、法制度上のコミュニティ・スクールに移行する際に何らかのインセンティブ、例えば予算措置や教職員加配があるとスムーズにいくのではないかと考える。熊本版は過渡的な取組という位置付けであり、県の教育振興基本計画でもコミュニティ・スクールの推進を掲げているところ。
・教育委員会や教育長の理解が進んだ地域では、コミュニティ・スクールへの移行が進んだ傾向にある。モデル的に導入したことを契機に、小中学校全体に波及したというケースもある。
・類似の仕組みから法制度上の学校運営協議会に移行した場合でも、実態としてはそこまで変わりがない。ただし、教職員の任用について、市町村教委経由ではあるが県教委に意見が言えるということで、教育長の懸念が聞かれる地域もある。熊本版コミュニティ・スクールについては、校長が委員を選ぶので突出した要求をする人もいないため、教育委員会の不安も解消されるということかもしれない。

 ○市町村や学校の規模との関係
 ・市町村や学校の規模を踏まえたコミュニティ・スクールの導入促進の在り方をどのように考えるか。
 ・小規模な自治体や児童生徒の数が少ない学校について、どのような教育上の必要性等が認められる場合に複数校で一つの学校運営協議会を設置できることとするか。

■これまでの主な御意見
・小規模の自治体では小学校だけではなかなか持ちこたえられない部分もあるため、中学校区単位でのプラットフォームに可能性を感じる
・小中一貫教育の観点以外にも、小規模な自治体では協議会の委員の確保が難しい側面もある。また、小中一貫教育だけではなく、学校間連携のネットワークも必要。小規模の学校では、各学校では十分に多様な教育環境が確保できていない現実があり、そういった複数の学校のネットワークをガバナンスの面から支える観点から複数校でのコミュニティ・スクールは有効である。
・コミュニティ・スクール指定を行うために重要なことについて、自治体規模別のクロス分析をしていただいたが、結果を見ると、大規模自治体では教職員の任用に関する意見申出についての柔軟な運用など、制度の有りように関するものなので検討のしようがあると考えられる。他方、小規模自治体については、コミュニティ・スクール化のメリットが見えないという課題があり、その見える化については比較的ハードルが高いのかなという印象。教員公募制についても京都市では上手く機能していると思われるが、小規模自治体だと都市部への希望が多く、手を挙げてくる人がいないのではないか。小規模自治体にとっての見える化につながるような方策がないと、必置は困難だと考える。
・小規模な自治体では、元教員の方が教育長であることが比較的多く、自身が学校教育をしていた時代のイメージを引きずっているため、コミュニティ・スクールの導入が進まないといったことがある。また、教育委員会の委員の構成によって左右されることもある。
・小中一貫教育とコミュニティ・スクールは関連性が高く、小中一貫校について学校運営協議会の複数校設置を認めることが適切。地域の色々な状況の在り方に応じて選べるような仕組みになると、設置が促進されるのではないか。
・三鷹市でも学園で一体的に運用を行っているが、法制上は学校ごとに学校運営協議会を設置することとなっているので、工夫が必要。
・自治体の状況に応じて柔軟に考える必要があり、複数校設置は適切な方策である一方、単に小規模だからひとつにまとめるというような、物理的な要件のみを設定することになってしまうと残念。子供をどう育てるかというグランドデザインと、教育課程上のネットワークといったただし書、願いのようなものを含ませられれば良い。 

 ○幼稚園、高等学校、特別支援学校の特性を踏まえた在り方
 ・幼稚園、高等学校、特別支援学校について、どのような観点からコミュニティ・スクールの導入促進の必要性が認められるか(以下は考えられる観点の例)。
    (例)幼稚園・・・小学校との連携
          高等学校・・・地方創生・キャリア教育との連携
          特別支援学校・・・福祉との連携

■これまでの主な御意見
高校のコミュニティ・スクール化は絶対に必要である。高校は都道府県全体から生徒が集まるので、地域が見えにくいという意見もあるが、都道府県全体を地域として捉えればよい。地方創生の観点から、高校の広いエリアの中で、地域という共有性でどんな人間を創造していくか、どんな学びをして自分たちの育った地域に持って帰ろうかと考えることができる人材の育成が必要であり、そうした視点を学びの中に入れていく必要がある。
・教育段階が上がるにつれて教育の専門性も高まっていくため、コミュニティ・スクールの導入は難しいのでは。教職員の任用や教育内容に第三者が関与することに慎重な声も出るだろう。
・幼稚園なら保健部局、特別支援学校なら福祉部局といったような、部局間の連携が重要である。学校運営協議会は学校教育課で学校支援地域本部は社会教育課と、教育委員会の窓口が別々であるとの話もあったが、コミュニティ・スクールを推進していく中で、他部局とのつながりが明らかになり、全体像が見えるとハードルを下げることができるのではないか。
・コミュニティ・スクールが導入された背景として、これまで学校だけでは十分に子供達を育成できないという危機感と、地域を支える子供達の育成に必要だという未来志向の教育観の双方があり、この2点について世論の合意形成を図る必要がある。幼稚園や高等学校、特別支援学校についても、このような背景の延長上で考えることを前提とし、幼稚園については保育園や子育て支援団体、高校についてはアントレプレナー、特別支援学校については福祉関係者といった人と結びつけ、どういう子供を地域全体で育てていきたいのかを共有する必要がある。他方、小中学校については、生活圏を含めて地域が拠点であるということがあり、それぞれの特性にあわせた展開が必要。
・横浜市立若葉台特別支援学校の取組については、地域・福祉との連携のみならず、高等部もあることからキャリア教育の観点も含まれているので、そういった観点も参考になるのではないか。
・大分県玖珠郡では、少子高齢化の進行に伴い普通科(3クラス)と農業科(4クラス)の2つの県立高校を統合する流れの中で、定員160名のうち入学者が120名、かつその9割が玖珠郡の生徒ということで、新たな高等学校を考える際に地域に根ざすことが必要であった。学校運営協議会の委員については、地域の小中学校との連携や、小中学校の協議会との連携、また玖珠郡の地域代表といった観点から入ってもらった。年間5回の予定で現在2回開催しており、協議の中心課題としては、[1]生徒募集を図るための特色ある学校づくり、[2]地域と連携しながらのキャリア教育、[3]地域に密着した、12年間を通じた小中高一体として育成すべき人材像、[4]学校支援ボランティアの在り方、といったものが挙げられる。定員確保については、従来は同窓会組織が県教委に要望書を提出していたが、学校運営協議会により地域をあげて教育を支援するという機運が生まれた。予算補助としても、玖珠郡の2町が1,000万円の補助事業を3年間予算化し、地域の核としての高校づくりを支援した。
・高等学校については、地域の範囲をどう捉えるかという論点があり、学校がもつ教育力を地域に還元することにより、地域活性化につながるという視点を持つことが必要。また、先端科学技術や高度資格の取得、校外学習といった特色ある学校づくりの観点からも必要であり、できれば導入が望ましい。特別支援学校については、共生社会の中でのインクルーシブ教育システムといった概念も踏まえ、保護者に加え医療・福祉・労働との連携が可能となるコミュニティ・スクールを進めることは大切。学校課題の解決や就労支援、福祉との連携といった観点から、現在センター的機能を担う7校に導入しており、今後、残り5校への導入を検討。現状としては、小中は全校への拡大を目指している一方、特別支援学校は段階的な導入、高等学校は当面モデル校の状況を踏まえて推進、幼稚園は私立が多いため当面は幼保小の連携で対応といった見通しである。公立の小中学校のコミュニティ・スクールは地域との関連性が深いことから必置が一般的に望ましいが、小中学校以外については通学区域が広域なので一律必置は難しく、小中学校の取組を検証しながら導入を促進していくことが望ましい
・小中学校と幼稚園、高等学校、特別支援学校とでは地域の概念が異なっており、ここを広げていくことが重要。これらの校種については、コミュニティ・スクールそのものが我々の前提としていたものと違うという発想に立つ必要がある。京都市は文科省のコミュニティ・スクールと若干異なるが、独自のものとして推進してきており、例えば承認を賛同や参画、協働とするなど、ハードルを下げることも検討する必要がある。必置という言葉だけが一人歩きするのは辛い。 

○小規模自治体における教育委員会と学校運営協議会との関係の取扱い
 ・学校運営協議会の委員の確保が困難な場合が比較的多い小規模自治体において、教育委員会と学校運営協議会との機能分担の在り方をどのように整理するか。
 ・小規模自治体においては、学校運営協議会の委員の確保が困難なことが懸念されるが、委員の人材確保の方策をどのように考えるか。
○学校運営協議会の制度上の見直しの方向性
  ・上記の視点も踏まえ、学校運営協議会を必置とすることの是非について、どのように考えるか。
  ・学校運営協議会の必置の検討の方向性も踏まえ、現行制度上の学校運営協議会の権限の見直しについてどのように考えるか。

 ■これまでの主な御意見
・必置の是非については、バランスのとれた議論をしていく必要がある。
・承認規定を残したままで、導入が広がっていくのかという懸念がある。校長に決定権があるということについて、理解が進んでいないことも一因。理解してもらう方策を考える必要があるが、もう一歩アイデアを出さないと広がっていかない。
・承認の機能で実際に問題が発生し困っている実態はないのではないか。未導入の自治体は食わず嫌いであって、導入してみればそのよさがわかる。徹底した理解を図り、人の配置や予算面での支援などにより誘導を図っていくことで、必置ということも無理なことではないのではないか。
全ての学校にコミュニティ・スクールの仕組みを入れるのであれば、そのハードルを下げていかなければならないし、難しい仕組みにしてはいけない
・全校をコミュニティ・スクール化するというゴールは共有されているが、その道のりをどのように設定していくかということと、そのことを通じて、どのような子供を育てるのかという共通理解が必要である。制度という外側だけを作るのではなく、その中で何をするのかが重要である。
全校をコミュニティ・スクール化するにしても、トップダウンで一気にやるのはリスクがあるのではないか。まずは、一自治体に一校ずつという形で指定し、成功体験を積ませた上で、モデル・ケース化していくような、地域の方々の納得性を得られた形で新しい制度を広げていくというソフトな広げ方もある。
・コミュニティ・スクールは学校と地域に様々なポジティブな影響を与える可能性があることから、コミュニティ・スクールは必置にすることが望ましい。ただし、必置に対して慎重になる学校関係者もおり、その主な懸念は教職員の任用に対する意見の規定にあることから、任用についての意見申出の権限については、任命権者に意見を述べるのではなく、市区町村に意見を述べることができるとするとともに、尊重規定を削除してもよいのではないか
・教職員の任用に関する意見申出について、事前に校長の意見聴取をするという形式をとる自治体は西日本に多い。(当該権限について)条件付けを行うということは考えられるかもしれない。
・学校支援と教職員の任用に関する意見の権限は切り離さない方がよい。例えば、採用前の大学生等が学校支援の活動に取り組むことで、地域との協働感情が生まれる。また、地域側からも、そういった学生を自校に迎え入れたいといった地域の思いにつながる。学校支援の機能と任用に関する意見は連動していくことが大切ではないか。
・必置の方向性として、(1)類似の仕組みについても、ハードルを下げて学校運営協議会に準ずるものとして認める、(2)現行制度のみを認めることとしてこれを推し進める、という2つがあると考えるが、実態調査の結果では希望する学校で導入すれば良いという回答が3割あり、関係団体からも必置には反対が予想されることも踏まえ、今の学校運営協議会を必置として押しつけることになる(2)は得策でないと考える。
教職員の任用に関する意見の申出については、学校運営協議会の権限として残して欲しい。この権限がないと、緊張感をもって学校運営に参画することがなくなり、他の支援組織と変わらない形骸化したものになってしまう。責任を持つということについて、地域の運営側にもそういう思いを持っていただく必要がある。校長が作成する学校運営の中で育てる子供像のビジョンを共有すれば、混乱が生まれることはないが、この権限をネックだとして外してしまうと形骸化につながる。同世代の閉ざされた空間から、英語の授業やウォーキングなどで異世代と交流することにより、子供達が目を輝かせており、誰に何を話すにしても上手に人間関係を形成することができるようになり、それが辛い時も乗り越えられることにつながっている。総掛かりで子供を育てるという秘訣が、学校運営の基本方針の承認にあると考える。他方、「先生だけで十分やれます」という所は、外とのつながりを拒絶してしまい、いじめや自殺といった問題が発生した時に適切に対応できない。良い事例をいかに効果的につなげつつ、大人とつながる姿を効果的に見せるといった融通を利かせることも考えていく必要がある。

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初等中等教育局参事官(学校運営支援担当)付

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