地域とともにある学校の在り方に関する作業部会(第3回) 議事録

1.日時

平成27年7月3日(金曜日)

2.場所

文部科学省5階 5F3会議室

3.議題

  1. 有識者・委員からの意見発表
  2. 自由討議
  3. その他

4.出席者

委員

天笠委員、生重委員、植田総括研究官、貝ノ瀬委員、加治佐委員、黒瀬委員、貞広委員、佐藤委員、竹原委員、田崎委員、早川委員、藤田大輔委員、藤田裕之委員、松浦委員、宗岡委員、山野委員

文部科学省

小松初等中等教育局長、德久大臣官房総括審議官、中岡大臣官房審議官、德田大臣官房審議官、浅田総務課長、坪田児童生徒課長、塩崎参事官、鍋島地域・学校支援推進室、藤原学校運営支援企画官、他

オブザーバー

名城大学大学院木岡教授

5.議事録

中央教育審議会初等中等教育分科会
地域とともにある学校の在り方に関する作業部会(第3回)

平成27年7月3日

【加治佐主査】  
 皆さん、おはようございます。定刻となりましたので、ただいまから、中央教育審議会初等中等教育分科会地域とともにある学校の在り方に関する作業部会の第3回の会議を開催いたします。
 本日は、お忙しい中お集まりいただき、誠にありがとうございます。
 前回の本作業部会と生涯学習分科会学校地域協働部会の合同会議におきましては、今後の学校と地域の在り方や協働の方向性について幅広く御意見を頂き、その中でも、コミュニティ・スクールの重要性や有用性等について、様々な御意見があったところであります。
 そこで、本日は、これからのコミュニティ・スクールの在り方を考えるに当たり、諸外国における類似の仕組みやコミュニティ・スクールの役割・機能の在り方、他制度との関係性等について有識者の方々に意見発表いただき、意見交換を行いたいと思います。
 最初に、本日意見発表いただく有識者の方を紹介いたします。国立教育政策研究所教育政策・評価研究部の植田総括研究官です。

【植田総括研究官】 
 よろしくお願いいたします。

【加治佐主査】 
 そして、名城大学大学院学校づくり研究科の木岡教授です。

【木岡教授】 
 よろしくお願いいたします。

【加治佐主査】 
 それでは、議事に入る前に、配付資料の確認を事務局からお願いいたします。

【廣田参事官補佐】 
 配付資料の確認をさせていただきます。お手元に、議事次第に基づきまして資料1から5と参考資料をセットでお配りしております。
 また、委員の皆様には机上配付の資料として、右肩に机上配付丸1と書いてありますが、5名の委員の方々からそれぞれ今回のテーマに関する御意見を配付しています。

【加治佐主査】 
 ありがとうございました。資料に不備等がありましたら事務局までお申し付けください。
 なお、本日も報道関係者から傍聴及び録音の希望があり、これを許可しておりますので、御承知おきください。
 それでは、本日の議事に入ります。まず、事務局から、前回の部会における主な御意見と本日の審議に当たっての検討の視点について説明いただきます。
 この説明の御質問については、お二人の有識者からの意見発表後にまとめて時間をとりたいと思いますので、よろしくお願いします。
 それでは、説明をお願いします。

【廣田参事官補佐】 
 失礼いたします。前回の会議の御意見を踏まえた資料、そして、本日の論点の資料について御説明させていただきます。
 お手元の参考資料1が前回、第2回の会議の主な意見です。こちらの作業部会と、学校地域協働部会、生涯学習分科会に設置されている部会ですが、合同で開催し、その意見を参考資料1でお示ししています。
 こちらについては、また追って御覧いただければと思いますが、お手元の資料1に今後の学校と地域の連携・協働に関する主な意見ということでまとめています。前回、そして前々回、これまでの御意見の中で、最初にお配りしました論点に対応する形の御意見を主な意見という形で拾わせていただいています。資料1を御覧ください。
 時代の変化に伴う学校と地域の在り方をどのように考えるかということで、論点1として、これまでの学校と地域の連携・協働に係る取組による成果と課題を踏まえ、どのような方向性で取組を推進していくかという論点に対してでございます。
 学校と地域の役割・機能についてということで、「参画」という言葉は子供の教育責任を社会的に分担することだと。これからの時代に求められるのは、学校運営に責任を持つ地域住民であり、学校運営に参画し、汗をかくことが求められている。それが学校と地域の連携の意味であるという御意見も頂いています。
 また、学校と地域の連携・協働に係る意識醸成という下の部分の項目ですが、学校と地域の連携について、それぞれに理解者を増やし、それを文化とし、住民として自覚していくことが重要である。次に、教育の担い手となることが社会の文化となるためには、担い手になれない人たちが巻き込まれ、達成感が得られるような仕組みが必要であるという御意見を頂いています。
 論点2に関してですが、これからの教育改革、地方創生の実現のために、学校と地域の連携・協働の在り方、地域とともにある学校の在り方について、どのように考えるかという論点でございますが、教育改革、地方創生との関係についてというカテゴリーに関連して、地方創生の観点からも、学校では地域に目を向けた教育、地域で生きていく確信を持つ教育・学習を行うことが必要である。地域は課題解決型学習やアクティブ・ラーニングの場となっていくということですとか、三つ目の御意見ですが、時代の激流、教育改革のうねりの中で、一方的に押し付けられるのではなく、自ら参加し、理解し、自分たちのものとして改革していく必要があるといった御意見なども頂いています。
 次のページになりますが、社会の変化との関係ということで、時代が変化する中、学校の普遍的な部分は学びを支えている組織であるということだ。他者性、異質性がないと学びは成立しないが、最近はそれが同質化してきており、社会教育も異質性がなくなってきている。そのため、連携・協働が求められるのではないかという御意見。人生の中で学校教育が果たす役割そのもの、生涯学習社会における学校の役割が抜本的に変わってきているという御意見も頂いています。
 参考資料2が、第1回のときに、この作業部会に提示をさせていただいた検討事項の例でございます。今、御紹介しました御意見というのは、この検討事項(例)の一番上の四角の部分で、時代の変化に伴う学校と地域の在り方、ここの論点に関わる御意見を御紹介させていただきました。本日は、その次の四角の部分で、これからのコミュニティ・スクールの在り方という部分。赤く四角囲いがしてありますが、この部分を中心に御意見を頂きたいと思っています。
 新しい時代の教育や地方創生を実現するために、コミュニティ・スクールに求められる役割・機能はどうあるべきか。また、その在り方を議論するときの観点といたしまして、校長のリーダーシップの発揮、あるいは学校支援地域本部、学校評価関連の仕組みとの一体的な推進の観点、評議員、類似の仕組みの整理、小中一貫教育等の「学校間連携」の推進の観点、こういった観点も含めて御意見を頂きたいと思っています。
 本日御意見を頂くに当たって、この検討事項の例の部分をもう少し細分化して現状の視点というのをお示ししておりまして、お手元資料2-1がその資料になります。
 事前に皆様にメールでお送りさせていただいていますが、本日は、これに関わる御意見を多数頂いているところです。
 まず一つ目、これからのコミュニティ・スクールの在り方をどのように考えるかというところに関連してです。新しい時代の教育や地方創生を実現するために、コミュニティ・スクールに求められる役割・機能としまして、検討の視点を記載しています。これからのコミュニティ・スクールの役割。学校と地域の連携・協働の在り方において、学校運営協議会の役割・位置付けをどのように考えるか。学校と教育委員会の関係において、その役割をどのように考えるか。
 学校運営協議会が現行の制度として有している機能の意義と活用ということで、三つの機能があります。その意義をどのように捉え、生かしていくか。今後のコミュニティ・スクールに求められる機能についてどのように考えるか。これは現行制度以外の部分で、機能として付与していく必要があるかどうかというところの御意見でございます。
 コミュニティ・スクールが有する権限と責任の在り方についてどのように考えるかというのが一つ目の論点でございます。
 もう1枚めくっていただきますと、その在り方の観点ということで、四つの観点をお示ししています。「校長のリーダーシップ」の発揮の観点ということで、丸2―1でございますが、校長のリーダーシップを確保し、発揮していくためのコミュニティ・スクールの在り方、教育委員会の関わり方についてどのように考えるか。校長がリーダーシップを発揮するための体制整備をどのように考えるか。
 検討の視点丸2―2でございますが、学校支援地域本部と学校支援の取組との一体的な推進の観点といたしまして、学校支援の取組とどのように一体的推進を図っていくかということ。あるいは、学校運営に対する地域住民等の理解・協力を推進するために、学校運営協議会の機能として「学校支援の総合的な企画・立案等」を制度上どのように位置付けるかということが論点として示されています。
 また、学校評価との一体的な推進の観点、あるいは丸2―3、丸2―4ということについても御意見を頂ければと思っています。
 なお、丸2―2の部分については、第4回生涯学習分科会の部会と合同会議を開きますが、ここで集中的に御意見を頂きたいと思っておりますので、その前提で御意見を頂ければと思っております。
 ほかにもお手元に資料をお配りしていますので、その御紹介だけさせていただきたいと思います。
 資料2―2が今、御説明いたしました検討の視点に関連する参考資料でございます。全てを御説明する時間はございませんので、どのような資料をお配りしているかということだけ御紹介いたします。
 これからのコミュニティ・スクールに求められる役割・機能ということで、まず現行の機能に関連する情報として、法令の逐条解説の抜粋をそこに記載しています。学校運営協議会の位置付けということ。教育委員会の下部組織たる合議制の機関ということでの位置付けでございますが、このようなことも載せています。
 また、基本方針の承認、運営に対する意見、そして任用に関する意見、それらの扱いについて、現行の逐条ではどのようになっているかということ。
 また、2ページ目以降ですけれども、お手元の机上ファイルの中に、ピンク色の冊子をお配りしています。第1回のときにも御説明いたしましたが、コミュニティ・スクールの調査研究協力者会議でまとめられた報告書です。そこからの抜粋を2ページから3ページにかけて掲載しています。それぞれの機能の持つ意義、あるいは成果、課題というのを記載しています。御参考にしていただければと思います。
 5ページ以降ですが、これからのコミュニティ・スクールの在り方に関してということで、校長のリーダーシップの発揮の観点に関連して、校長のコミュニティ・スクールに対する認識のデータをお示ししております。日本大学文理学部でまとめていただいた委託研究報告ですが、佐藤委員に関わっていただいております。
 学校運営の参画に対する認識と指定の有無で、指定がある、そして指定の予定がないというところで、どのような認識の差があるかをそれぞれ見たものです。学校運営協議会の承認権に対する認識がどのようなものか。あるいは、6ページから7ページにかけては、教職員の任用に関する意見に対して、どのような認識を持っているか。校長の意見具申に対しての認識はどうか、ということなどを御紹介しているものです。
 そのほか、8ページ以降も論点に関わる資料として関連資料をお配りしておりますので、適宜御参照いただきながらと思っています。
 参考資料3は実例ということで、学校評価と一体的に推進しているコミュニティ・スクールの事例が1枚目、裏面が学校支援地域本部と一体的に推進している取組の事例があります。そして3枚目には、小中一貫教育と一体的に進めている事例ということで、三鷹市、奈良市の事例を掲載しています。
 参考資料4は、先般公表いたしましたコミュニティ・スクールの指定状況調査の結果でございます。平成27年4月1日現在で2,389校ということで、約470校増えた形となっています。また御参照いただければと思います。
 基本的に今日の御議論については、資料2-1の検討の視点を参照しながらお願いできればと思っています。
 説明は以上です。

【加治佐主査】 
 ありがとうございました。
 それでは、意見発表を頂きたいと思います。植田総括研究官から、海外のコミュニティ・スクールや今後の学校と地域の在り方を踏まえつつ、我が国のコミュニティ・スクールの在り方について意見発表を頂きたいと思います。資料3です。20分程度でよろしくお願いします。

【植田総括研究官】 
 国立教育政策研究所の植田でございます。どうぞ、よろしくお願いいたします。基本的に、配付しております資料3、A4版の資料に基づいてお話をさせていただきたいと思います。
 今日は、地域とともにある学校としての、新しいコミュニティ・スクールの在り方について考えるための視点について、イギリスの学校理事会の取組から提言を申し上げます。なお、イギリスは皆様御存じのようにイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの四つの地域から構成されていますが、それぞれ異なる教育制度を持っていますので、今日はイングランドの内容についてお話をさせていただきます。ただ、発表では便宜上、イギリスという言葉を使わせていただきます。
 イギリスと日本では学校制度も異なります。また、学校の持つ経営権限も異なります。イギリスの学校は人事、財政、施設管理などの学校経営に関わるほとんどの権限を学校が持っています。その経営責任を負っているのが、今日お話しする学校理事会になります。
 この学校理事会は、1944年教育法において法的に規定をされました。しかし、1970年代の改革までは、実質的な学校経営の主体としての機能を十分に果たせていなかったと指摘をされています。
 1970年代にイギリスは経済危機に見舞われましたが、そのような中で、人材育成が必要であるという経済界からの要望を受け、教育改革が進められることになりました。
 1976年、当時の首相であったキャラハン首相によって行われた演説から始まる「教育大討論」というものがありますが、その中で国民自身が当事者となり、責任を持って教育に参画することが重要であると主張されました。そのことを具体的に進めていくための仕組みとして、学校理事会を整備していくという形で改革が進められていきます。
 そして「1986年教育法(第二)」、「1988年教育改革法」などを経て、学校理事会が人事、教育課程、予算、施設管理などの学校経営に関わる全ての経営責任を負う学校の最高意思決定機関として整備をされていきました。
 その後、人数や構成などの変容はありましたが、現在でも学校の最高意思決定機関としての位置付けの変更はされておりません。
 ただ、近年の動きとしましては、2010年の連立政権により導入されました公営独立学校と言われるアカデミーやフリースクールというものがありますが、この学校は通常の公費維持学校よりも自由裁量権を持っています。この学校が増加傾向にあり、学校理事会における保護者や地域住民よりも、設立母体、運営母体であるトラストと言われる組織の位置付けの方が大きくなっているということが起こっています。このことは、制度上整備されてきた当初の保護者や地域住民の学校経営の参画という側面が、変容しつつあるのではないかと近年の研究では指摘をされています。
 次に、学校理事会とはどのような組織なのかについてお話しします。
 まず構成ですが、当初は構成員の同数制を原則としておりました。しかし、1997年ブレア政権以降は、保護者が大多数になる、最大多数になるという構成になりました。当時は学校段階や学校規模により理事数が細かく規定されておりましたが、現実的には理事の人数を確保するのが困難な地域もあることから、2000年代以降は人数や構成などに関する規定が大幅に緩和され、学校段階や学校規模による規定はなくなり、9名から20名で構成されるという規定になっています。
 また、構成員としては、保護者や教職員についての変更はありませんでしたが、新しくスポンサー理事や協力委員などのメンバーが加えられることになりました。
 現行制度につきましては、表1にまとめているので御覧ください。現行制度上の一番の変更点としては、これまで地域代表が務めていた地域代表理事というものがなくなり、その代わり、協同理事と言われる新しい理事が導入されています。この協同理事というのは、地域住民に関わりなく、学校のニーズに応じた専門的な能力を有した者と規定をされています。
 現在の学校理事会には、学校の最高意思決定機関として全ての経営責任を負うということもありますので、財務や法務、経営に関する専門的な能力が求められてきています。そのような人材をいかに確保するのかが現在の学校理事会の重要な課題となっていることから、その課題解決のためにこの協同理事が活用されています。
 このような経営責任を果たす意味においても、全ての学校が優れた学校理事会を組織することは困難であることから、現在では複数の学校で学校理事会を一つ組織することも制度上可能になっています。
 学校理事会には、最高責任者としての理事長が1名います。そして財務や人事、施設管理、教育課程など小委員会が設置され、各業務についての意思決定を行っていきます。通常、全体での会合は学期に1回行われ、小委員会の会合は毎月1回から2回開催されています。保護者理事、それから教職員理事というのは、それぞれの母体から選挙で選出されています。
 理事への報酬はありませんが、交通費などの実費は支給されています。またイギリスでは、14歳以下の子供を子供だけで自宅に置いておくと、法的な責任を保護者が問われますので、ベビーシッターなどを会合に出席するために雇うことがあります。その際のベビーシッター代などは学校から支給されています。また会合も午後7時頃から開催されることが多くなっており、このように保護者などが参加しやすい条件、会社員の方も参加しやすい条件を整備するということも、イギリスの学校理事会を機能させる上で重要であると言われています。
 先ほど申し上げましたように、学校理事会は学校の最高意思決定機関として位置付けられていますが、具体的には次の三つの機能を持っています。一つ目が明確なビジョン、理念、戦略的な方向性を保証すること、二つ目が学校及び児童生徒の教育成果と教職員の職能開発に関する責任を果たす校長を支えること、三つ目が学校の財務状況を監視し、良好な財務運用を行うことです。
 そのほかの機能については、学校の設置形態などにより異なります。大まかなものは表2にまとめていますので、後ほど御参照ください。
 このような学校経営に関わる機能を有している学校理事会ですが、その機能を担うための資質能力というのも規定されています。その育成を図ることが、イギリスにおいては重要視されています。
 教育省では毎年『Governors’Handbook』というものを作成し、これは100ページ以上に及ぶ法律解説書のようなものですが、学校理事会の機能や、それに関わる人事管理や教育課程、児童生徒の福祉、学校監査、財務などに関わる法的な事項が解説されています。これを基に学校理事会は学校の運営を行っていくこととなっています。
 また、学校理事会に求められる資質能力が明確化され、その能力育成のための研修制度も整備されています。
 具体的な資質能力につきましては、表3、表4にまとめていますので、御参照ください。
 全部を説明すると時間もありませんので、例えばということで御説明申し上げます。全国学校理事会協会と言われる全国組織がありますが、その組織がまとめている基本的な要素としては、運営に関する理解と経験、ビジョンと戦略、それから校長への支援、財務関係、学校と地域の理解といったような項目です。
 例えば、校長への支援という項目では、コミュニケーションスキルやデータ分析力、質問力、人事評価などが挙げられています。
 学校理事会は校長も含めた教職員全員の人事管理を行い、解雇などの権限も有しています。そのため、教職員の資質能力を的確に評価する能力が求められています。
 また同時に、校長などの管理職チームや教職員とコミュニケーションをとりながら、自分たちが考える学校を作っていってもらえるように、校長がきちんと活動を行っているのかどうかを管理監督する能力が学校理事会には求められています。
 このほか、行動倫理などに関するものも規定されており、法的な責任を厳格に果たしていくことが学校理事会に求められています。そのため学校理事会は法的な責任も問われますので、保険などにも入っています。
 次に、研修についてお話しします。学校理事会に対しては国や地方自治体、そして民間団体などにおいて研修が提供されています。新任の理事に対しての研修や理事長への研修、会計担当者への研修など、対象も様々設定されています。
 また、研修内容も法的な事項からマネジメントに関することなど、多様な内容が提供されています。
 更に研修の形態も、みんなで集まって行うような集合研修から、日常的に受講できるようなオンライン型のものまで、多様な形で整備をされています。
 具体的な内容等については、エセックスの事例も踏まえ、それからナショナルカレッジの情報なども手元の資料に掲載していますので、御参照ください。
 また、研修だけではなくて、日常的に学校理事会の活動を支援するための情報提供やサポート活動も充実しています。その中核をなす組織が、先ほど申し上げた全国学校理事会協会というところです。ここでは教育省とも連携しながら、また研究開発機能も持っており、学校への支援活動や情報提供なども行っています。
 そのほか様々な支援機関がイギリスにはあります。主要なものについては発表資料に掲載していますので、御参照ください。
 学校理事会は学校最高意思決定機関とイギリスでは位置付けられていますが、そのように整備をされ、約30年近くが経過しています。その間、先ほど申し上げたとおり、構成や機能などは変化しながらも、学校の自律的な学校経営の責任者としての機能を維持されています。
 その学校理事会の成果と課題については、次のようにまとめることができます。
 成果としてはまず、保護者や地域住民の学校教育及び子供の育ちに関わる当事者としての意識付けができたということです。1970年代後半の改革以前は、保護者や地域住民は学校の外に置かれていました。しかし、1970年代後半以降からの改革において、保護者や地域住民が学校経営に参画するための装置として学校理事会を作り、彼らが活動する過程の中で、保護者や地域住民も子供の教育に関わる当事者としての位置付けを持つようになってきています。
 このような当事者意識を醸成することで、保護者及び地域住民と教職員が協働しながら子供たちの学びを支え、社会を担う人材育成を行うという体制が、イギリスにおいてはできあがってきていると言えます。
 二つ目に、地域の核として、学校の機能が充実してきているということです。現行制度上は地域代表理事というものはなくなっていますが、これまで地域代表理事が学校理事会に入ってきていたことで、地域内の協会関係者や産業界、NPO団体などとの関係性が強化されてきています。
 このようなことは、1990年代以降進められた学校の授業が行われている時間や始業前や放課後などの時間に、児童生徒や地域住民に多様なサービスを提供する拡大学校という取組が1990年代以降進められましたが、この拡大学校の取組を促進させる基盤として重要な意味を持ってきています。
 三つ目に、学校経営の支援と挑戦の機能を有するということです。学校理事会の機能として、イギリスではクリティカル・フレンドという言葉が使われています。京都市などでも同じ言葉が使われていますが、イギリスでは最も身近にいながら校長をはじめとした管理職を支援することと、彼らの活動や改善状況、財務状況などを常に確認しながら、より良い方向に進むことを促す、調整の機能を持つ存在という意味で使われています。
 このような機能が学校内にあることにより、校長を信じて日常的な学校運営を任せてくれている学校理事会を後ろ盾として、校長は日々の学校経営に意欲的に取り組むことができるとともに、常に学校理事会からのプレッシャーを感じながら、継続的な改善活動を行うことができる環境となってきています。
 一方、課題としては、一つ目に校長との役割分担及び良好な関係の構築という点が挙げられています。イギリスにおいては、学校理事会と校長が良好な関係を持っているほど、学校経営の成果が上がっているという研究成果もあります。この研究の中で、学校理事会がサポートとプレッシャーの両方の機能をバランス良く持っていることにより、学校改善に寄与するパートナーとなることができるので、学校経営改善を促進する上で、両者のそのようなパートナーとしての関係を構築しておくことが重要であると指摘をされています。このような関係性をいかに学校内に構築するか、校長や学校理事会に問われています。
 二つ目に、人材の開発と育成という問題です。イギリスにおいても、学校理事会の人材確保というのは、重要な課題となっています。全国学校理事会協会においての集計では、6割ぐらいしか理事定数を満たせていないというデータもあります。また、理事の充足状況においては、地域的な偏りも大きいと言われています。そのためイギリスでは、国や地方当局だけでなく、民間の団体においても、情報提供や研修機会の提供などを積極的に行っています。また、人材の確保や育成という点では社会経済的な格差の問題もあり、社会経済的に困難な家庭が多い学校では、より人材を確保することが困難になっています。
 そのために、様々な理事の構成を変えたりということを行っていますが、抜本的な改革には至っていないという点で、このような問題をいかに対応していくのかは格差是正の観点からも重要な課題となっています。
 最後に、これまで述べてきましたイギリスの学校理事会の取組から見えてくる、今後のコミュニティ・スクールの在り方を考える上での視点として、4点申し上げたいと思います。
 一つ目は、学校の機能と学校理事会の機能の明確化です。イギリスでは、1970年代の学校への権限委譲による自律的な学校経営を担う主体として、学校理事会の機能の明確化と強化が図られてきました。今後、日本において校長や学校現場への権限委譲を考えていくとするならば、どのような権限を学校に持たせるのか。その上で、その権限の何を学校理事会に持たせるのかという機能の明確化を計ることが、制度設計上重要であると思います。なお、日本においては、教育委員会との関係も重要な視点であると思いますので、この関係性の中に、教育委員会の機能も併せて考えていくことは大切だと思います。
 二つ目は、学校に委譲された権限を担う場合の、管理職と学校理事会との役割分担の関係性の構築です。イギリスでは、校長と学校理事会の関係性はクリティカル・フレンドであり、パートナーであると言われています。日本の学校においては、校長の職務との関係において、学校運営協議会がどのような役割を果たしていくのかということを考えておくのも重要な視点かと思います。
 その際、イギリスの校長先生の言葉が参考になるのではないかと思います。私自身が長期間フィールドワークに入らせていただいた学校の校長先生が、このようなことをおっしゃっていました。「学校理事会がイギリスにおいては校長よりも上の存在となっていることについてどう思うか。」ということを質問した際に、「教育の専門家である校長よりも上の存在として、学校理事会があることに対する校長の不満はあるのは当然と思う。」としながら、別の見方をすると、「最も身近にいて自分を信頼して任せてくれている人たちでもある。彼らを後ろ盾として、自分が考える学校経営を行えるような関係性を学校理事会と築いておけば、これほど心強いものはない。このような信頼関係を築けるかどうかが、校長の使命だと自分は思っている。」
 これからの学校運営協議会の在り方、そして校長先生の関わり方を考える際に、どのような関係性を考えていくのかというのは重要な視点だと思います。また、このような関係性を考える上で、教育委員会がどのような条件整備をしていくのかというのも、重要な視点ではないかと思います。
 それから三つ目は、期待されている機能に見合う資質能力を明確化することです。どのような役割を求めるから、それを行う人材にはこのような資質能力が必要であるということを明確にした上で、どのような人材を配置していくのかを考えていくことが重要ではないかと思います。
 その意味では、イギリスの学校理事会は、学校の最高意思決定機関としての機能を持たされていることに見合った資質能力が規定されているということは押さえておくべきことかと思います。
 その上で、日本の学校運営協議会にこれからどのような役割を期待するのか、担わせるのかということを考えた上で、資質能力を明確化していくことが重要ではないかと考えます。
 最後に四つ目ですが、その資質能力を育成する研修の仕組みやその資質能力を使う活動を支援する仕組みの整備は重要であると思います。この点については、イギリスの場合には多種多様な仕組みが整備をされて、学校理事会の活動を支えています。今後、日本においてコミュニティ・スクールを拡大させていく上では、研修や支援の仕組みの整備は急務ではないかと考えています。
 以上で私からの報告を終わらせていただきます。ありがとうございました。

【加治佐主査】 
 どうもありがとうございました。続きまして、木岡先生より、コミュニティ・スクールにおける学校マネジメントの在り方や、現行制度の機能の取扱い等について意見発表いただきます。よろしくお願いします。資料4です。

【木岡教授】 
 失礼いたします。まず、先ほどの植田さんのお話を伺って、結論からすると、私も同じようなことを考えていると申し上げたいと思います。
 では、レジュメに沿ってお話をしたいと思いますが、まず、大きく向けていきたいと考えましたのは、地域学校経営ということです。それはコミュニティ・スクールや小中一貫教育と大きく重なるところであると、今申し上げられます。ただ、それに対して、最初に挙げてあるのは、校長がなぜ地域からの関わりをそれだけ嫌うのかという点です。その点は今日、宗岡委員が示されているレポートを拝見すると、不安を抱える自治体がある。その背後にある問題としては、一つ目は多様な保護者。その「多様な」といった中に、いろんな意味も含んでいますが、教育姿勢や教育観の違い、あるいは今、とりわけ中学校において1980年代に中学生だった人たちが多く占めている。つまり、日本で校内暴力の嵐が吹き荒れた時代に中学生だった方々が、今保護者になっておられる。そうした方々の持つ教育観といったものが一つのバイアスを作っているだろうと。あるいは今、小学校の保護者は次第に学級崩壊世代になってきているということも、また、小学校の保護者への姿勢ということが問われるところだと思います。
 一方、地域に目を向けますと、ここにも様々な多様性が見られますが、特に今、地域で役員を担っている方々は、いわゆる団塊の世代を中心としていて、また、固定の価値観をお持ちですし、また、マネジメントに対しても、それぞれの経験に照らした捉え方があると。そうしたものが、学校に持ち込まれることに対する不安感というものが見られるのかもしれないと思います。
 そこに加わってきているのが、現在の大量退職・大量採用という状況であると私は理解しています。後ろに参考資料を付けていますが、3ページに挙げてありますのは、1975年と2010年を比較した進学率、志願者数です。今年採用2年目当たりの新任教員と、退職をあと1、2年に控えている校長とはどういう大学受験を経てきたのか。対照して言いますと、結局75年当時の進学率はまだ30%を見ておらず、しかも、女性の進学率は20.2%でした。ところが2010年では50%を超え、女性の進学率は倍増していっているという状況です。
 それに対して志願者数で見ますと、1975年は83万4,000人が受けて、59万5,000人しか受かっていない。それに対して2010年は68万人受けて62万人近くが受かっていると。こうした事態は、一定の教員の持つ学力、資質能力といった点に影響を見ることができるだろうと言えます。
 次に、千葉県を例にして、教員の年齢構成、この10年余りの変化をグラフにしています。千葉県教育委員会が一番分かりやすいデータを出していただいたので、ここにまとめてみましたが。徐々に新規採用が増えてきているとともに、50代の教員が、ここでは膨らんでいるように見えます。これは平成22年のデータですので、更に右に動いていって、やがて、あと数年で50代がいなくなり、今の40代が管理職候補として挙がってくる。ということは、明らかに管理職数が足りなくなってくるであろうということも見込まれます。つまり、そうした不安を抱えた中で、なかなか素直に学校を開けない校長もいるのではないのかなと捉えられています。
 2のところで、やはり地域も含めて学校内外に共有ビジョンを押し広げていく必要があると思います。それは、今、限界集落とか、滅び行く自治体といったことが話題となっている中で、地域をどう復興させていくのか、創生させていくのかということや、あるいは子供の貧困にどう立ち向かっていくのか。さらに、学校の統廃合が進む中で、どんどん元気のなくなっている地域をどう再活性化できるのかという視点を持った場合に、やはり地域と一緒になって、その土地の存続を果たしていけるような人々を育て上げていくという、いわば、後継者を育成する課題があると思っています。
 そのような例として、今日は高知市立潮江中学校と鳥取県岩美町立岩美中学校の事例を持ってきました。7ページの上にあるのが潮江中学校の場合です。御存じのように、高知県は土佐の教育改革ということで、地域と一体となった学校づくりに取り組んでこられました。そのため、地域に様々な組織が置かれていています。しかし最近になって、再統合しないととてもまとまり切らないという状況が生まれたようです。そのために107名の人々や、更に開かれた学校づくりという高知県独特の組織ですが、そうした組織と重ね合わせると300を超えます。その人数の中で縮小に動くということで、防災をテーマにした15名に絞っていくという方向が示されました。ここを推し進め得たのは、やはり校長自身の言葉ですが、ビジョンを「明確」に示したからだとおっしゃっていました。
 そこで見られる変化というのは、本音で語れるといったことを含んでいますが、要は話す場を積極的に設けながら、そこでいろいろと訴えていくということであったと思います。また、そのために発信を重ねたり、校長の言葉で露出と言っていましたが、中学生をどんどん地域に出したりしていく、見えるようにしていくということでした。
 こうした潮江中学校の事例をもう少し時系列に沿いながら紹介し直したのが、岩美中学校の事例です。9ページ以降、その事例をつづっていますが、最初に示しているのがこの学校の校長として10年間務め、つまり初任と校長として岩美中学校に赴任し、今年3月定年退職を迎えるまで、10年間校長を務めた戸田校長のレポートです。
 次に掲げてあるのが、その戸田校長の下で、戸田校長が赴任した3年目から教頭として赴任し、4年間その下で改革を支えた田村教頭のレポートです。
 この両者のレポートを読んでいただくと、大体、岩美中学校はどんな取組をして、どういう成果を上げていったかということが分かっていただけるかと思います。簡単にポイントだけ見ていきますと、そこに5年前と書いていますけど、私が関わる10年前で、そのときには、この学校には消火器がありませんでした。廊下に自転車が置いてありました。先生たちは廊下に机を出して仕事をしていました。そんな学校だったわけです。そこを変えていくのに、当時は生徒指導強化という発想を持ちがちでしたが、私がアドバイスしたのは、授業をちゃんとみんな楽しく受けられるように、分かるようにしようということでした。そのことから、授業改革に取り組んでいきました。そうした流れの中で、学校を組織にしていくということを中心とし、その組織になっている度合いを評価でチェックしながら次の行動を引き出していくといったことを申し上げて取り組んできました。
 また、この校長自身も、「町のセンター」を目指してということで、学校づくりがまちづくりに直結するのだという考えで取り組んでいきました。
 その具体的な流れは、13ページの教頭のレポートで研究の経過ということで示されていますが、授業を変えていくことから、まず授業の評価、教科の評価というところから入っていきます。そうした中で、更にホームページを見直し、校務分掌を見直し、学校評価としてまとめ上げていくという流れを作っていきます。そして、更に地域へ関わりを強化していくということから、戦略マネジメントの展開が生まれてきます。
 具体的な流れは、その更に教頭のレポートの中に出るのですが、どんなものができあがったのかということで、次に学校要覧を示しています。この学校要覧を開けていただくと、校風があって、続けて学校経営方針が示されています。ミッションから始まり、ビジョンというものを掲げ、「目指す姿」として子供たちの様子を挙げ、更に教職員の姿を挙げ、学校教育目標を掲げ、経営目標へというように、組織マネジメントの基本的なフレームを押さえながら組み立てています。
 次のページは組織図が書いてありますが、教頭のレポートにもありましたが、実はこの学校、職員会議を置いていません。基本的に伝達はペーパーで、決定事項は夏や長期休業のときに集中して審議するということで取り組んでいます。
 次のページが学校評価の年間計画ですが、これも見ていただいたら分かるように、1月から始まって翌年の4月までのカレンダーになっています。こういう中でPDCAを回し、時々私が行って中間チェックをするということで続けていきます。
 更にめくっていただくと、マネジメントが複雑に絡んで読み取りにくいと思いますが、カリキュラムマネジメントを中核に置きながら地域に展開していくネットワークマネジメント、そして地域連携を強化するセンターマネジメントと学校間連携を強化するスクラムマネジメントというものを位置付けています。
 更に次のページでは、全体の絵を「目指す未来の岩美町民像」というところにベクトルを置きながら関係付けていっているわけです。そこで一貫教育を展開するということで6つの視点を挙げています。
 次からは、各分掌単位の評価シートが挙がっています。この評価シートは、分掌それぞれが作るだけでなく、各学年、教科もこれに合わせて作っています。つまり、こういう一つのフレームで学校全体が同じように考え、目標の具体化を図っていくという取組をこの10年掛けて作ってきたというのが、岩美中学校の組織マネジメントから言える流れです。
 では、私のペーパーに戻りたいと思いますが。こうした事例からもお分かりいただけるように、私自身、地域学校経営、つまり保幼小中高がきちんとつながった、かつ、コミュニティと一体化した、様々な地域の経営資源をうまく教材として使っていけるような学校を目指して関わってきました。これは、藤田裕之委員が今日のレポートの中で、コミュニティの在り方に結び付けた学校づくりということをおっしゃっていることとまさに重なることだと思います。
 私自身の地域学校経営の定義めいたものは、7ページの10のところで書いておきましたが、後で見ていただけたらと思います。
 残った時間を4の学校運営協議会制度の意義と課題というところに集中させたいと思います。まず組織マネジメントという言葉が生まれて、そのための研修プログラムを開発して、私自身が全国的に、その普及に向けて活動を展開してきました。しかし、当初は、極めてマネジメントという片仮名に対するアレルギーが強く、そのことの理解を求めるのに相当長い時間を要しました。しかし今日になって、ようやく組織マネジメントが普通に各センター等での研修プログラムとして位置付けられてきていると思います。
 しかし、そこに、あの当時の私の視点を振り返ってみて、更に強調していくべき必要があると考えているのは、企業の、あるいはビジネスのマネジメントと、あるいは官庁のマネジメントと学校、教育のマネジメントは、やはり幾つか違う点があるというところです。
 8ページに私なりに、なぜ学校のマネジメントが官庁や企業と違うのかのポイントを幾つかまとめています。簡単に申し上げると、校長一人では全体の管理が徹底できないと。結局、一人一人のセルフマネジメントに委ねざるを得ない部分が極めて大きいというところにあります。それだけに、監査的にいかにセルフマネジメントへ働きかけていけるのか。それも教育の論理に沿って。そうした関わりができるのかというマネジメントというものをきちんと作り上げ、理解を求めていくことが学校の中の全教職員に必要だということ。それと同じような意味で、地域の学校に関わってくれる方々にも必要であると思うわけです。
 それは、先ほどの植田さんの「研修の必要性」ということをおっしゃっていたことと重なります。それは中身から言うと、日本教育経営学会が打ち出している、校長の専門職基準を実践する中で検証されていけばいいかと思いますが、しかし、今のところ、まだあれは校長を一定のモデルとした校内教職員向けのものにとどまっていて、地域全体を含んだアフターの専門職性を出した行動基準になっていないところに課題は残っています。実際のところ、あのようなものを一般の方々にまで研修機会として保障していくには、相当に時間とお金が掛かるだろうということの限界も考えたときに、やはり、どこかでOJT的に、つまり校長自身が地域の人の力を借りながら、しかし、その地域の人々に対して働きかけていく、マネジメントの理解を求めていくというような仕組みが重要だと思います。
 これは以前、私がニュージーランドに行ったときに、そこの校長が地域の人からいろいろ言われて、「あなた大変じゃないの。」と私が聞いたときに、「いや、校長としては彼らを育てているつもりだ。」と言ったことと重なる私のイメージであります。
 そのような点で、学校支援システムをより開発していき、人材を確保していくということが課題になってくるかと思います。しかし、このままニュージーランドの経験ベースに考えますと、評価と支援は表裏の関係にあるということであり、この間、評価システムが強化されてきましたが、一方、それと必ずしも連動しない形で支援システムが作られてきました。それをどうリンクさせていくのかです。
 つまり、具体的に言うと、学校評議員制度と学校評価をどうリンクさせるのか、あるいは学校評価とこの学校運営協議会制度をどうリンクさせるのか、といった課題に目が向かってきていると思います。
 そうしたときに、学校評価の構造として、「学校の自己評価」という言葉が法令上あります。それに対して、「学校運営協議会の自己評価」という言葉はありません。改めて、「学校の自己評価」と「学校運営協議会の自己評価」を対比したときに、どちらが大きい概念なのかということが問題になるのではないのかなと思います。
 特に学校運営協議会を今後、学校ガバナンスの主体としていく。それだけ政治度を高めていくという展望に立ったときには、当然、その当該学校運営協議会のガバナンスの在り方に対しても評価が必要になると思います。これは先ほどの植田さんのお話を聞いていて、学校理事会の在り方が相当専門性を強化して変わってきているということからもうかがえるところです。
 では、その学校ガバナンスの評価を誰が担うのかというときに、出されていた各委員の御意見を拝見していますと、結論からすると、私もそのとおりだと思います。学校関係者評価機能を学校運営協議会の中に組み込むという結論自体はそうなのですが、しかし論理的な順序からいくと、私は本来は学校運営協議会の自己評価を評価する学校関係者評価委員会、あるいは第三者評価委員会が組織されるべきであると思います。
 というのも、学校運営協議会がガバナンスの主体であり、そのことを相対化するためには外に視点を置かなければならないと思うわけですが、学校運営協議会自体が学校の自己評価の関係者評価的な機能を持ってしまうと、そこで一体化していたり、それまでのことが評価の対象から外れたりしてしまうのではないのかなと見えるわけです。
 しかし、その一方で、現実論から考えたときに人材がいないという地域が相当にあります。イギリスでさえもそうなんだということを、先ほど聞いて改めて確認したわけです。
 そうだとすると、過渡的な在り方としては、私は学校の自己評価に学校運営協議会によるガバナンス評価を組み込み、その学校の自己評価を学校運営協議会が評価するということを始めることが有効であろうと考えています。
 最終的には、ガバナンスの主体である学校運営協議会による自己評価を、相対化できるような仕組みが開発されていくことが必要であると考えています。
 そのためにも、学校運営協議会の担う機能の拡大ということが不可欠であり、これも藤田裕之委員がおっしゃっているように、教育を核に、私も医療、福祉、防災、防犯、その他のコミュニティサービスを統合していく方向性が必要です。そのためには、そうしたコミュニティサービスを担う責任主体が、この学校運営協議会の委員、先ほどのイギリスのことだと協同理事ということでしょうか。そのような性格を持ったものとして位置付ける必要があろうと思います。
 これもニュージーランドの学校理事会を見ていても、必ずそこには弁護士がいて、会計士がいて、医者がいると。そのようなことを日本でも、やはり作り上げていく方向性を示す必要はあろうと思います。
 具体的に考えてみても、今、実際的には学校医というものがいて、学校看護師もいて、薬剤師もいますが、しかしそれは形式的な名誉職と言っていいのでしょうか、名目だけの職員になってしまっています。このことを、もっと現実化していく必要も、併せて考えていく必要があろうと考えます。
 以上です。

【加治佐主査】 
 どうもありがとうございました。お二人とも、今後のコミュニティ・スクールの在り方について、かなり踏み込んだ意見を言っていただいたと思います。今後の議論に大いに参考になると思います。
 お二人に御発表いただきましたが、この内容について御質問はございませんか。貞広委員、どうぞ。

【貞広委員】 
 大変貴重な御報告を頂き、ありがとうございます。植田先生に御質問ですが。学校理事会の概要をお話しいただいたところで、当初よりも現在、学校理事会における保護者の人数が拡大されて、最大多数になったということですが、この理由として、お話の中では、例えば、法務や人事の専門性が必要になったのでという御説明だったように聞いたのですが、本当にそれ以外はないのですか。
 なぜそのような御質問させていただくかと申しますと、日本のコミュニティ・スクールを見ますと、保護者の数が決定的に少なく、なかなか声が反映されない。それも、地域住民のとても偉い方が構成員でいらっしゃるので、非常に遠慮してしまい、どうも反映されていないような感じ。保護者の劣位性というものがあるように思われるのですが、その点に対応したものであるのかどうか。そのような議論はなかったのかどうかという御質問です。

【植田総括研究官】 
 ありがとうございます。私の説明が十分ではなかったのかと今反省していますが。その人数が最大多数になったのは労働党政権下で、そのときには、保護者の意見をきちんと酌み取るという方向性でした。しかし、2000年代に規定が大幅に緩和をされた後は、保護者が多数という方針ではなくなっていますので。そのときから協同理事であるとか、そのような専門性を持った方の拡大という方向性です。今、貞広委員が御指摘いただいたような趣旨での専門性ということではありません。保護者の人数は、どちらかといえば、その労働党政権下のときよりは縮小する傾向にあるというのが、今の連立政権下の方向かと思います。
 その一方で、保護者に限らず、保護者も含めた形で、法務とか、財務とか、経営とかに専門性を持った人を入れて機能を強化しようということで、そこでは保護者とか地域住民という属性は関係なく、専門性の方で確保していく考え方に変わってきていると御理解いただければと思います。

【貞広委員】 
 分かりました。では、学校理事会が地域や保護者の方の意向や意見を反映することが第一義というよりも、学校マネジメントを強化していく方向になっているということですね。

【植田総括研究官】 
 はい。今はそちらの方向を政府としても重視をしています。なぜかというと、先ほど申し上げたイギリスの場合でいえば、学校理事会は最高意思決定機関なので、イギリスの場合、先ほどの木岡先生のお話ではないですけど、学校評価を第三者評価機関が外部から専門的にやりますので、その学校監査の結果を受けてきちんと改善をする計画を立てるのも学校理事会です。また、それを運用していく校長をきちんとやっているかどうかをチェックするのも学校理事会ですので。その際に、経営とか法的なことについての専門性がないと、学校理事会がきちんと動かせないということがあるので、そのような専門性を持った人材を入れることが重要であろうという方向性を持っています。

【貞広委員】 
 ありがとうございます。

【加治佐主査】 
 非常に興味深いお話ですが、ほかいかがでしょうか。はい、藤田裕之委員。

【藤田(裕)委員】 
 植田先生、木岡先生、大変興味深い、関心もある話、ありがとうございました。私から、質問を1点だけ、植田先生に。
 イギリスの制度の中で、少し不勉強なので参考に教えていただきたいのですが、教育省の下で、地方の教育委員会制度はどのような形で介在しているのでしょうか。余り姿が見えないような気がするのですが、そこらが日本の制度と違うのでしたら教えていただきたいと思います。

【植田総括研究官】 
 おっしゃるとおり、姿が見えない制度になっています。概略的なことなんですが、具体的に申し上げますと、一応、日本の教育委員会に当たるような地方当局、ローカルオーソリティーという存在はあります。ですが、学校自体の経営主体は学校が持っていて、その責任者が学校理事会で、その中間組織としてローカルオーソリティーというのがあって、それが地方自治体ごとにあります。それは、別に教育だけを担っているわけではなくて、先ほどの機能を統合するというお話でいえば保育であったり、自治体によっては消防とくっついたり、観光とくっついたり、社会教育とくっついたりとか、様々な機能を持った形です。その上に、中央に教育省があります。
 では、そのローカルオーソリティーは何をしているのかというと、自律的にやる学校を支援する、サポートをする存在です。管理監督する存在ではなく、サポートする存在でありなさいというのが言われています。それと同時に、自分たちが管轄する地域内の教育水準の確保、維持をするのがローカルオーソリティーの役割だという形になっています。
 機能としてはどういうのがあるのかというと、イギリスの場合は学校上複雑で、表1で見ていただいたとおり、公費が入っている学校でも、これだけ多様性があります。これにアカデミーとか、フリースクールというのが別個あります。これらの学校に対して、一応、自分たちの地域内にはあるのですが、特別支援教育であるとか、学校の交通手段へのサポートとかという形で、一部のお金は少し取ることができます。中央からローカルオーソリティーとして、学校に予算配分をされます。アカデミーとフリースクール以外はですが。その場合に、一部の特別支援教育であるとか、それから交通の手段とかのサポートをするための何割かのお金を、少しローカルオーソリティーのこのお金に入れている。あとは、学校に配分するという形での、特別支援教育とかの支援の責任を負うローカルオーソリティーという形の役割は与えられています。原則、学校の経営責任は学校が負うので、その学校がきちんと動いているかどうかを支援しなさいというのが役割という形です。地方当局の役割というのは、なかなか難しいですが。
 今までは労働党政権下で、そのような形で改革をされてきた中で、今申し上げたとおり、アカデミーとかフリースクールは、そこの管轄からも離脱するという形で、その学校が中等教育であれば、もう6割以上超えています。全体では十何%ぐらいになりますが、そのような学校をどんどん政府は増やしていこうとしていて、地方当局がお金を通さずに直接予算配分を受けますので、そのような学校が増えていけば、また地方当局の役割は減っていくのではないかと言われています。

【藤田(裕)委員】 
 ありがとうございます。ということは、例えば、教員の任用、採用とかも介在するとすれば、教育省で養成するなりということがあるとしても、個々の学校の教員の任用は理事会が担当するという理解になるわけですね。

【植田総括研究官】 
 そのようになるというよりは、もう現行制度が、教員の任用や採用とかは全部学校が。

【藤田(裕)委員】 
 管理する部署はないのですか。

【植田総括研究官】 
 学校が全部その権限を持っています。養成とかは大学とか学校関連校でやっていますが、どの教員を採用して、どれだけの給与を配分するかを学校が決めます。

【加治佐主査】 
 貝ノ瀬委員。

【貝ノ瀬委員】 
 そこで植田先生にお聞きしたいのですが、学校理事会制度の学校があって、義務化されて普及されているにもかかわらず、アカデミーとかフリースクールとかを作為的に拡大されているということは、それは、現状のいわゆる学校理事会制度に基づいたコミュニティ・スクールに不十分な点があるのか。又は、もっと違う意図があるのか。その辺のところは、どのような背景がありますか。

【植田総括研究官】 
 学校理事会がうまく機能していないというよりは、先ほど申し上げた専門性を持たせようというのが一つの方向性にはあります。アカデミーとかフリースクールは、もっと別の論理が働いていまして、今の藤田委員の御質問じゃないですけれど、地方当局の権限縮小という方向があるので、地方当局が離脱して学校に権限を持たせて、学校が自律的にやっていける学校を増やして、国が直接管理監督をしていくという方向性が今の連立政権下にはあります。いわゆる連立政権が目指そうとしているのは、プロフェッショナルである教員たちが、自律的に学校を経営していける組織を作り上げたいというところがありますので、地方当局からの離脱を図り、直接自分たちが自律的にやっている組織をマネジメント、ガバナンスする仕組みを作ろうという方向性があることが、アカデミーとかフリースクールの拡大につながっていると思います。
 でも、先ほど学校理事会の機能が縮小していると申し上げたのは、アカデミーでどういう形態を作るのかということにも関係するのですが。原則は各学校にある学校理事会の代表が、マルチアカデミートラストと言われるアカデミーのトラストのメンバーに入るという形態をとっている学校も多いです。しかし、一部では各学校の理事会代表ではなくて、そのトラストと言われる運営母体の中に、企業経営者であるとか、法律の専門家という専門性を持った人を入れることで、各学校のマネジメントとかを支援していきたいという組織構造にする形で、専門性を担保しようという方向性を打ち出そうとしているところもあります。
 結論から申し上げますと、専門性を確保したいという方向性と同時に、もう一つは学校の自律性をより担保して、地方当局に管理監督されない学校を作ろうという政府の方向性の方が、アカデミーとかフリースクールの拡大には影響していると御理解いただければと思います。

【貝ノ瀬委員】 
 もっと端的にお聞きしますと、例えば、現状の学校理事会制度の学校よりも、もっと独立性を認めて、そして多様な、それこそ民間の方たちに関わってもらって運営をする方が学校の質が上がるだろうという読みなのでしょうか。

【植田総括研究官】 
 読みというか、そのような方向性を狙っているということです。やはり何億というお金を学校単位で動かしますので、きちんと動かしてくれる組織がないと、なかなか学校の質を担保できない。
 特にアカデミーでやっていこうとしている取組は、いわゆる一部のすごく経営能力がある校長をトップに据えて、そこに、インスペクション、学校監査の結果、なかなか成果が上がってこないという学校を管轄下に置いて、彼らに面倒を見てもらう。政府は一切お金を出さずに、彼らにいい学校のネットワークの中に、良くない学校。言葉は悪いですが、良くない学校を入れることで、そのいい学校の校長にきちんと管理監督をしてもらいたいという方向性になっています。
 ここでの学校理事会の議論というよりは、アカデミーとかの議論の場合には、もっと違う論理が働いていますので、そこは分けてお考えいただいた方が、本日の議論上はいいかとは思うのですが。アカデミーの普及というのは、学校理事会の議論とはまた別のことになってきていますので、そこはまた別にお考えいただければと思います。

【貝ノ瀬委員】 
 別なときに、いろいろとお聞きしましょう。

【植田総括研究官】 
 はい。よろしくお願いいたします。

【田崎委員】 
 また、植田先生に御質問ですが、先ほどからのお話を聞いていますと、いわゆる国、教育省の方から地方を通さずに学校に権限を持たせてということで教えていただいたと思うのですが。

【植田総括研究官】 
 それはアカデミーですね。

【田崎委員】 
 アカデミーですか。この学校理事会の制度自体も、いわゆる地方政府が介在しないような形での改革の流れで、こういうのが作られているということでおっしゃったのではなかったのですか。

【植田総括研究官】 
 学校理事会そのものは、地方当局の権限縮小という論理の下ではなく、当初の制度設計上は、今までは余り関わることがなかった地域とか保護者の方たちにも、きちんと当事者として学校に関わってもらう仕組みを作りたいと。そのような仕組みを作っていこうということがあるのと、もう一つは、学校の自律性を持たせるという主体として、そのような組織を作っていこうと改革が進んできたところがあります。
 それが1970年代、80年代の改革の中で、その地方当局の権限をどんどん縮小して学校に権限委譲していこうというところの議論は、同じ文脈の中ではありますので、今、田崎委員がおっしゃったようなところはあるとは思います。

【田崎委員】 
 イギリスでは、いわゆる地方の権限を縮小して、ある意味国の権限を強めていこうという流れに今あるのですか。

【植田総括研究官】 
 政権によって違いますが、今の連立政権というか、保守党政権に変わりましたが、ビッグソサエティーという発想ですので、政府の関与よりは学校の権限をきちんと強化していくという方向性にはなっています。
 一方で、やはり労働党政権下、サッチャー政権のときには地方の権限縮小という方向で、ローカルオーソリティーの機能を潰そうとしていたのですが、労働党政権のブレア政権になってからは、その権限を全くなくしてしまいました。学校現場に権限を委譲してしまうと、いわゆる学校格差が出てくるので、いい校長がいて、いい地域であればどんどん良くなるけれど、悪い地域だと格差が出てくるということで、労働党政権になってからは、地方当局が、先ほど申し上げた支援の機能をきちんと持っておくべきだということで少し権限を復活させていきました。その中で、2010年の連立政権になってからは、またそれを縮小し、いわゆるアカデミーという形で、その機能としては維持させつつも、そこから離脱する学校をどんどん増やしていき、学校の自律性というか、学校の先生方、プロフェッショナルな先生方に、権限をもう一度戻していこうという方向性での改革です。日本のような教育委員会と学校との関係性という形は、今はないと御理解いただければと思います。
 予算的には、国から地方当局を通して学校に来るという制度設計上になっています。

【田崎委員】 
 分かりました。なぜお尋ねしたかといいますと、日本でこういうことを議論する中で、やはり分権、あるいは地域振興、地方創生という流れの中でのコミュニティ・スクールというのはあっても、いわゆる地方政府、あるいは地域にある教育委員会を飛び越えて、コミュニティ・スクールだけが動いていくということは、頭の中で想定できないものですから。
 地域の中でコミュニティ・スクールが地域づくり、あるいは地方創生で一定の役割を持つというか、大事なことだと思うのですが。そこで、何もかもできるということでは、今の日本の地方政府、あるいは地方公共団体の状況からいうと、少しそのあたりが違うのかなと思い、確認をさせていただきたかったということです。

【植田総括研究官】 
 それはおっしゃるとおりで、イギリスの場合と日本はそこが全く異なりますので、それを大前提にお話を聞いていただければいいのかなと思っています。
 そのような意味で、最後の提言のところで申し上げたように、私自身は、日本の場合には教育委員会の役割というのは欠かせないと思います。
 イギリスの場合は、そこが今、日本とかなり違う制度設計上です。学校理事会のお話の説明を申し上げたときには、今、田崎委員がおっしゃったような御理解でいいとは思いますが、私自身も日本の制度設計を考える上では教育委員会の役割は欠かせないと思いますので、提言で申し上げさせていただきました。
 それから、イギリスのところで一つ付け加えさせていただくと、決して、地方当局自体は役割としては縮小していますが、地域における学校の機能は、一方で拡大をしています。地域の核としての学校というコンセプトといいますか、そのような理念はイギリスではすごく重視をされていて、地域の中で学校がどのような機能を果たすのか、学校が地域にどのような機能を果たしていくのか、地域の中で学校がどのような役割を果たすのかという双方向の関係性を取り結んでいく上で、学校理事会はすごく機能しています。その点は、御理解をいただければいいかなと思います。そこは、教育委員会と地方というのは、同じ文脈では、イギリスの場合は考えられていないということです。

【加治佐主査】 
 ありがとうございました。イギリスの場合は、なかなか複雑過ぎるというのか、いろいろな新しいものが出てき過ぎるというのが、非常に理解が難しい。私も昔から植田さんに何度も聞いていますけど、また、一層理解が難しくなったという感じを受けています。
 ただ、大事なのは、植田さんも最後におっしゃったように、イギリスの特性といいますか、伝統に根差す特性と日本は基本的に違いますので。それがまた制度に反映していますので、そこは是非混乱されないで、最後に述べられた地域づくりといいますか、そこには学校理事会が大きな役割を果たしているということが確認できればと思います。
 それから木岡先生、学校経営に絡んで、とりわけ校長のリーダーシップ等々に絡んで、いろいろいい話を頂いたと思います。今後の議論で参考にもなると思いますので、また議論の中でいろいろ御発言を頂きたいと思います。

【生重委員】 
 主査、よろしいですか。

【加治佐主査】 
 どうぞ。

【生重委員】 
 すごくシンプルな質問ですが、任期はどうなっているのでしょうか。それと再任を妨げないのかということと、御説明いただいたところで、研修が結構しっかりしていたかと思うのですが。それを受けるにふさわしい人材が常に潤沢にいるということは想像できません。今ここに書いてあるように、複数校で一つのものということもあると思うのですが、この表3のチェックシートにふさわしいと思う方を、それぞれが選挙で選んできているのかということをお聞かせいただけますか。

【植田総括研究官】 
 任期は学校によって設定をします。再任は妨げませんが、やはり、ある程度長くなったら再任、何期までという規定を設けている学校もあります。学校によって規定を決めたり、自治体で決めたりしているところもあります。
 それから、おっしゃるとおり、能力を持った人を学校理事会の理事にしているのではなくて、主婦から、弁護士から、多様な人がおられます。けれど、その能力がある人を選んでいるというよりは、保護者の場合には、自分が理事になりたいという人が手を挙げて、それで演説をして選んでもらうみたいなところがありますので。そういった形のプロセスを踏んでいますので、ある程度意識が高い方が入ってきている。そのような人がいなかったら、なかなか保護者理事が埋まらないというところになりますので、そのような能力がある人もいれば、なくてなっている方とかもいるので、始めからどう育てていくのかという視点は、その研修の中にはあります。
 それから表3については、これは、こういう能力がある人を採用するというわけではなくて、自分たちの理事会の機能がどうかな、大丈夫かな、ということを確認するためのチェックリストです。これをチェックしていたときには、この部分がうちの理事会には足らないなといったら、「では、こういう研修を受けに行かないといけないね。」ということを確認するためのチェックリストなのです。これが、ある人を採用、とかというもので使われているものではありません。

【生重委員】 
 とてもよく分かりました。

【加治佐主査】 
 ありがとうございました。

【山野委員】
 簡単にもう1点だけ。

【加治佐主査】 
 また御質問ですか。

【山野委員】 
 はい、簡単に。

【加治佐主査】 
 はい。それでは、簡単にお願いします。このあと、予定もありますので。

【山野委員】 
 では、後でもいいです。意見です。

【加治佐主査】 
 後でよろしいですか。個人に聞けることは、また個人的に。よろしくお願いします。
 それでは、お二人に御発表いただきました。その前に、事務局から今日の論点二つについて御説明があったと思います。
 一つ目の論点は、新しい時代の教育や地方創生を実現するためにコミュニティ・スクールに求める役割・機能についてということでした。現行の機能の意義や課題、これからの機能の在り方、そのようなことですね。
 それから二つ目は、これからのコミュニティ・スクールの在り方ということで、具体的な検討事項となります。木岡さんを中心に発表された校長のリーダーシップの発揮の観点とか、学校支援地域本部や学校評価等との関連の仕組みとの一体的な推進の観点ということです。
 学校支援地域本部等の関係については、次回は合同部会になっています。学校地域協働部会との合同会議になっていますので、そちらでも扱われることになります。
 それから、学校評議員制度や自治体独自の類似の仕組みとの整理の観点。それから、小中一貫教育等の学校間連携の推進の観点と、こういうことであります。
 この二つに分けて議論していこうとは思いますが、どうしても重なってくる部分もあると思います。それはそれで致し方ないのかなと思います。
 それで、1の論点から入っていきますが、今日は五人の方からペーパーを用意していただいています。まずは、そこを発表していただきます。3分でということになっておりますので、是非御協力をよろしくお願いいたします。
 それでは、机上資料の順番で参りたいと思います。まず黒瀬委員から、机上配付資料の1になります。よろしくお願いいたします。

【黒瀬委員】 
 高知県の黒瀬です。ペーパーを出させていただきましたので、説明したいと思います。
 結論を言いますと、私は今の学校運営協議会の制度で、自分の校長としてのリーダーシップが発揮できていると感じています。さらに、それを発揮するためには、新たな機能として追加していただきたいものがあるというのが私の主張です。
 まず、現行の学校運営協議会の機能についてです。学校運営の基本方針の承認については、私は特に重視しています。毎年3月の終わりに学校運営協議会を開くようにしていて、そこで次年度の学校経営方針を承認してもらい、4月を迎えるというスタイルを取るようにしています。そのことによって、4月当初に校長が提案する学校経営方針は、校長が勝手に言っているのではなく、保護者や地域住民にも支援していただいている、承認していただいているといったことで、説得力があります。
 2番の学校運営に関する意見については、細かいところまで意見を出してもらうことはできませんが、特に大きな方針転換を迫られる際に、学校だけで考えるのではなく、保護者や地域と一緒に考えることによって、誰もが納得できるような結論を出せるのではないかと思っています。
 前任校の事例でいえば、学校運営協議会で修学旅行や土曜授業などについて意見を出していただいたことで、取組が先に進んだことがありました。
 それから、教職員の任用に関する意見については、校長が求める教員の任用を後押ししていただけるということで意義があると思いますが、校長に人事権はないので、学校運営協議会に提案がしにくいという面があります。私は校長5年目ですが、これまで小さな市町村に勤めていたこともあり、教育長が校長の意見を聞いた上で県の教育委員会と人事の交渉をしているので、自分としては不満が残った例はありません。学校運営協議会に後押しをお願いするような場面は、今までなかったというのが現状です。
 それから、新たに学校運営協議会の機能として位置付けていただけると、校長のリーダーシップが発揮しやすいのではないかと考える点が二つあります。一つは、先ほど木岡先生も言われていた学校関係者評価です。既に多くの学校が学校運営協議会の場で学校関係者評価を行っていると思いますが、現状では規定がありません。しかし、学校改善を図っていく上でも大きな役割を果たすと思いますので、そのことを正式に位置付けると校長としては有り難いと思っています。
 二つ目は、学校間連携のことです。校区内の学校間連携は、当然議題になるものと思いますが、これも機能の一つとして位置付けると、更に連携が進むのではないかと思っています。
 地域連携が横軸の連携とすると、学校間連携は縦軸の連携ですので、縦横の連携になって初めて面になるということからも、大事な視点だと思っています。
 最後に、学校運営協議会の委員の在り方については、現状で特に問題はないと思っています。市町村教育委員会が任命することになっていますが、学校長の推薦制をとっていることが多く、現状で特に問題はありません。
 委員の構成については、学校によって地域によって特性があり、差があります。現任校では、保護者代表は2名、PTAの代表に来てもらっています。地域代表が7名で、半分は組織の代表として入っていただき、半分は学校と関わりの深い方に入っていただくようにしています。有識者が1名入り、学校からの委員はいません。学校からは、説明者として私が入り、教頭が事務局として入っています。
 以上です。

【加治佐主査】 
 ありがとうございました。それでは、机上配付資料の2、宗岡委員お願いします。

【宗岡委員】 
 大分県の宗岡です。私からは、論点1の意義、役割、機能、それから論点2の校長のリーダーシップというところから話をさせていただきたいと思います。特に校長のリーダーシップを発揮する上で、現行の学校運営協議会の機能の意義や課題をどう整理するのか。学校運営協議会の機能として位置付けるべきものはあるのか。そして、学校運営協議会委員の任命の在り方はどう考えるのかということについて、検討いただきたい点を最後にお示しさせていただいて、話を終わりたいと思います。
 これらの点を検討する上で、資料にありますように、少々思い切った表現となっていますが、現行の学校運営協議会の機能下では、校長と対立する学校運営協議会あるいは委員となりはしないかという不安を抱く自治体があるのではないかと、このことを意見の趣旨として発言します。
 まず、現行の学校運営協議会の機能とその意義としては、法に示されている3点がありまして、この学校運営協議会を設置することに不安を抱く自治体があるとすれば、これらの機能から、場合によっては校長の作成する学校運営方針が承認されず、学校運営が円滑に行われないのではないか。あるいは教職員人事に支障を来すのではないか。また、委員としての資質という点などに危惧を抱くのではないかということは考えられると思います。
 そこで、それぞれの意義について簡単に記載していますが、特に1の学校運営に関する基本方針の承認、この意義を中心に、少し本校の実態等に触れて述べていきたいと思います。
 私は、学校運営協議会設置の最大の効果は、学校運営の充実、改善であろうと考えています。校長が学校運営方針を策定する場合、生徒の課題あるいは地域課題、学校課題などを踏まえて、どのような生徒をどのような方向で育成するのかということを具体的に検討していくわけですが、その際に、承認の機能によって、保護者や地域の意見を学校運営に生かすことや、校長の運営ビジョンを共有し、賛同いただけるということで、学校を円滑に、そして安心して運営できるという大きな効果が期待できると考えています。
 本校では、学校評価を学校運営協議会で頂いていますが、その際の資料として、子供がいる、いないにかかわらず、地域住民に学校運営に関するアンケート調査を実施しています。この声を年間3回の学校評価に反映し、PDCAサイクルの中で学校運営の改善を行っています。
 また、地域や保護者が参画して当事者意識を持つために、学校を支える意義を高める。そういう意味を含めて、校長がリーダーシップを発揮し、そのような組織を作ることが非常に重要なことだと考えておりまして、本校では昨年度来、学校と地域、保護者が学校の教育目標を共有し、生徒を育成する上での課題解決に向け、一体となって取り組む目標協働達成会議、これを学校運営協議会の内部組織として組織いたしまして、教育目標を承認いただき、また一体となって取り組む体制ができています。
 この学校評価や目標協働の取組は、時には校長にプレッシャーになりますが、学校運営の改善を考えた場合に、非常に大きな機能であると考えています。
 また、学力定着等の課題では、様々な対策を校長が提案をして承認を頂く中で、委員自らが外部講師となることや、地域支援本部とのコーディネート役を務めていただくなど、校長にとって大変頼もしい存在となっています。
 こういった一つの例ではありますが、本校では学校運営協議会あるいは委員は、信頼関係の上に立つ校長、学校の肯定的応援団として存在をし続けています。
 この存在し続けている状況としまして、学校運営協議会委員の任命方法を考える必要があろうと思います。本町の規則上では、教育委員会が任命するとなっていますが、運用上、校長の意見を聞く推薦方式を採用している実態がございます。任期は再任を妨げない1年となっていますので、校長は毎年度末に次年度の委員を、これは一覧表の形で報告、推薦をするということになっています。
 校長は地域への影響力や学校教育への協力度などを勘案して、校区内の住民、保護者あるいは学識経験者などから、男女比などを考慮して推薦しています。
 また、教職員の任用に関する意見の申出に関しましては、本校では運営協議会が設置されて依頼、2件ありました。いずれも校長の留任を強く要望するものでありまして、申出に際しては、その当事者である校長の意見を聞き、学校長を経由しての申出でありました。
 少し本町の課題について付け加えますと、本町の課題としては、委員任命の際、あるいは任命後に教育委員会による委員対象とした研修が実施されていないということがあります。校長の肯定的応援団と考えている学校運営協議会ですが、コミュニティ・スクールの意義などについて、研修の機会が委員に保障されなければ、肯定的応援団が批判的なものへと変わる、そのような可能性があるのではないかと危惧をされます。
 さらに、研修がない場合は、委員は日頃の実践の中から意義や役割などを身に付けざるを得ず、そのため、委員の長期固定化という点も課題になるのではないかと考えています。
 以上、校長のリーダーシップといった観点、あるいは機能、役割から意見を述べさせてもらいましたけれども、最後に、これらの点を踏まえ、少々御検討いただきたいことで終わりたいと思います。
 一つは、書いてあるとおり、学校運営協議会委員の任命に際して、校長の推薦や意見の聴取を経た後に教育委員会が任命してはどうかといった点。二つには、教職員の任用に関する意見の申出に際しては、校長の意見を聞くなど、校長を経由して意見を述べるものとしてはいかがかという点。最後に3点目として、委員の任命の際、あるいは任命後の研修を教育委員会に義務付けると、そういった点。以上この3点を意見として御検討いただきたいと思います。

【加治佐主査】 
 ありがとうございました。それでは、佐藤委員、お願いします。

【佐藤委員】 
 日本大学の佐藤です。プリントですが、学校運営協議会の3、「権限をめぐる校長の認識と今後のその在り方」ということで、校長先生に回答いただいたデータに基づいて御発言申し上げたいと思います。
 1番目に学校運営協議会の3権限に対する校長の重要性認識と。三つの権限のうち、どれが重要だと思いますかということで、第1位に挙げられた回答を図1に示しています。全体だけ御覧ください。白い部分ですが、62.9%。これはいわゆる承認権に関してです。その右側の30%。これが、校長及び教育委員会に対する意見申出権。右は黒くなっていますが6.2%。これは、いわゆる任用に関する意見申出ということで、明らかに承認権を第1位に重要だと挙げる校長先生が多く、平成19年度に行った小さい規模の調査でも、同じような回答でございます。
 何回か実施しても、一番重要だと答えていただくのが承認権です。本来、承認権と意見申出に関する権限と比べると、権限の強さという点では多分、承認権の方が強い。これは、いわゆる意思決定の一形態ということでです。ところが、承認権が第1位。だから、ある意味で校長先生に避けられると思ったわけですが、承認権が第1に挙がると、これはなぜかということで、それを説明しようとした図が2の方です。図だけ見ていただくと、左から下の方に承認、真ん中に運営意見、右に任用意見と書いてあります。このうち運営意見が、対校長か対教育委員会によって分かれます。承認権に関しては、校長の下で承認されるという、学校の中に限定される作用と。校長に対する運営意見申出も、学校の中に限定される。これを「校内限定作用」と勝手に名前を付けています。
 ところが、運営意見に関しては、対校長以外に対教育委員会という行為も含まれています。そうすると、これは校長先生超えて教育委員会に意見が及んできます。ですから、校外波及作用。これも勝手に名前を付けています。教職員の任用意見に関しては、校外の波及作用にほかならないわけです。
 このように並べたときに、重要性とお答えいただいていますが、これはある意味不安の照り返しというのでしょうか。不安がないという意味で、重要性が選択されていると考えられます。
 先ほど木岡先生の方から、委員の属性に関する問題点を指摘いただきましたが、それとも絡みまして、意見がどこに及ぶかということも、校長先生の不安感に影響しているのかと思います。
 そのように考えた場合、次の3ですが、いわゆる不安感というのが一つコミュニティ・スクール拡充にブレーキになっているとすると、これを軽減することも一つの課題となるわけです。そうして考えた場合、3権限のうち、教育委員会に対する運営意見の申出と教職員の任用に関する意見の申出、これは学校の外に及んでしまうわけですが、これに何らかの校長の関わりを加えて、校内限定の作用に近付けるのも一つの方法かなということです。
 下に図がありますが、全体的に校内限定作用が及ぶようなやり方もあろうかということです。
 あと具体的には、先ほどお話にもありましたが、1番目に校長先生に対する事前の意見聴取というのも加え、現在4分の1ぐらいの学校運営協議会の中に加えられています。特に任用に関しては、西日本に多いです。
 2番目、任用に関する意見について、校長先生の人事に関する意見具申権との調整をどのように図るか。
 3番目に、市町村教育委員会に対する意見に関しても、何か不安感があるとすると、いわゆる市町村教育委員会の人事に関する内申権との調整も図っていくことが必要になると思います。
 あと、校長先生を学校運営協議会の委員として加えることを必須にするかどうかは分かりません。もし、そうすると、不安感の解消につながると思います。現在、設置規則の中で、校長先生を委員枠として明記しているところは約7割、68.8%。3割ぐらいは特に書いていないわけです。
 このような場合に、類似性との接近というのも当然起こります。また、次回の議論の課題になると思いますが、学校支援地域本部が比較的受け入れられているのは、校内に限定されているからです。教育委員会には余り及ばないということを考えるときに、学校支援地域本部と学校運営協議会の一体化を実際行っているところもありますので、データによりまして、若干の提言めいたことを述べさせていただきました。
 以上です。

【加治佐主査】 
 ありがとうございました。それでは、藤田裕之委員。今度は机上配付資料4になります。

【藤田(裕)委員】 
 既に私が1回目、2回目の会議で発言させていただいたものと重複していることもございますので、そのあたりは御了承いただいて、説明に入らせていただきます。
 コミュニティ・スクールについて、ずっと申し上げていますように、生涯学習社会の中で学校が果たす役割が非常に変わってきています。知識・情報の賞味期間が短くなっている下で出てきた制度と私自身は理解しておりまして、その意味では、学校の在り方を変えていく、あるいは学校とは何なのか、義務教育は何を対象にしているのかということへのサジェスチョンといいますか、提言というものも、この中には含まれているのではないかなと受け止めています。
 同時に、この義務教育の段階というのは、やはり地域の組織についても、あるいは子供の発達段階においても非常に基礎的な組織でして、それぞれの団体、自治会組織なども小学校単位で活動されている場合が多いと思いますので、この義務教育段階でのコミュニティ・スクールの在り方というものは、非常に重要であろうと考えています。
 2番目に書いている地域のコミュニティの担い手を育成する場ということですが、先ほど木岡先生からも名前を出していただいて言っていただきましたが、やはり、こういうコミュニティ・スクールの中で、将来の地域の担い手が羽ばたいていく。特に保護者世代が地域にデビューをしていく登竜門、きっかけになるというような意味で、このコミュニティ・スクールの役割が大事だと思います。多くのところでは、この学校運営協議会委員の中に保護者代表というような方を入れておられると思いますが、そのような方が、その経験を通して、地域の主要なメンバーと顔なじみになったり、意見交換ができたりするようになる。そして、次に、地域の担い手になっていくことが大事だと思っています。
 それから、特にその場合、子供は地域のかすがいということを書いていますが、この学校というものが果たしている役割。何か一つのことで目的で地域が結び付きにくいという御時世なんですが、やはり、「子供のためなら一肌脱ぎましょう。」というのは、まだまだ日本は捨てたものではない。子は夫婦のかすがいというのが、今や「子は地域のかすがい」ということで、防災であったり、まちの美化であったり、いろんな課題で地域が一つにまとめることはあるかと思うのですが、やはり「子供のためですよ」ということが落としどころになる地域コミュニティの団結というものが、ここで出てくるのではないかなと思っています。
 それから、三つ目に書いているのは、特に中学生においてです。18歳選挙権等も言われていますが、もう中学生は卒業して3年、5年すれば、もう地域のれっきとした一員として育ってくるわけです。先ほどの木岡先生のお話あったように、昭和60年代の荒れた中学生が親になってクレーマーになっていると、こういう循環があるわけですけど、まさにこの中学生あたりは、もう数年先には地域の担い手になっているという意味で育てていくと。これも非常に大事なのではないかと思っています。
 そうしたことを実現するために、この3番目にあります学校教育と地域コミュニティを所管する部局との連携ということですが、やはり私自身は、この学校運営協議会が狭い意味での教育行政、教育委員会の支配下だけに置かれてしまうのではなくて、地域コミュニティの担当部局、大都市でしたら区役所、あるいは市町村でしたら、いわゆる市民部局と緊密に連携していくということが重要だと思います。
 植田先生に御説明いただいたイギリスの制度ではないですが、やはり地方振興局のようなところで学校運営協議会がしっかりと認知されているかどうかということが、大事ではないかなと思っています。
 そして、その学校の中で、そのようなことを実現するように、三つ目に、ここの一番下にありますように橋渡し役、調整役になれるような行政組織が市長部局との連携で設けられる必要があるのではないか。
  京都市の場合、一つ参考に申し上げますと、教育委員会の校長級の首席社会教育主事という立場の先生をそれぞれの行政区に兼職をさせ、必ずどこかの区担当の教育委員会首席社会教育主事として配置しています。ただ、その先生が学校運営協議会とどこまで関われているかというと、まだ課題がありますので、そのようなことについても連携できるような投げかけが必要だと思っています。
 裏面の「これからのコミュニティ・スクール」は、余り大したことは書けておりませんが、校長先生のリーダーシップについては、これまで専門の先生がおっしゃっているように、校長先生が孤立しないように、今申し上げたような観点では、教育委員会に限定しない行政全体の、例えば、市長部局、知事部局の人間が校長先生をバックアップできるような体制、意識が大事。そのためにもコミュニティ・スクールが、市長部局に認知されることが必要だと思っています。
 それから、小中一貫教育の取組について。今日参考に京都市の教育委員会が出しているコミュニティ・スクールの通信で、京都市の小学校全校に学校運営協議会を設置しましたが、中学校へはなかなか進みにくいところがあります。しかし、小中共同の学校運営協議会を作っていこうということで、学校運営協議会も共同化していく、そして小中連携も進めていく。そこでまたPTAなども、中学校のPTA会長のなり手がないということをよく言いますが、小学校のPTAの経験者が中学校でも経験者として出てくると。そのような部分を進めていくことも視点として必要ではないかなと思っています。
 結びに、木岡先生の先ほどの話で、この学校運営協議会のメンバーによる当事者意識、あるいは自己評価というお話、大変感銘といいますか、我が意を得た思いでおりました。やはり、この学校運営協議会委員になっていただく方が、学校にいろいろ注文はつけますが、学校が何かクレーマーで困っているときには私は知りませんよということにならないように、そのときには、校長先生と一緒に泥かぶりましょうというような気運が、既に多くの先進的なところでは形成されていると思います。やはり、実績を積み重ねていくことが大事だろうなと思っています。

【加治佐主査】 
 ありがとうございます。最後、浅原委員からも、この机上配付資料5で御意見いただいていますが、本日御欠席ですので、事務局から簡単に説明をお願いします。

【廣田参事官補佐】 
 失礼いたします。事務局の方から代わりに御説明させていただきます。
 これからのコミュニティ・スクールをどのように考えるかということで、論点1に関連して、その役割について御意見を頂いています。「新しい時代の教育」や「地方創生」を実現するために、学校を核として地域全体で子供たちを育成することと併せて、地域づくりにもつなげていくことが重要だということで、現行の機能によって、山口県の場合、「学校運営」の充実を図るという観点に加えて、「学校支援」、「地域貢献」という視点も加えながらコミュニティ・スクールを推進されています。
 そうした観点で、これからの子供たちの「生きる力」の育成、「地方創生」の観点から、「学校運営」の視点に加えて、「学校支援」「地域貢献」の視点を加えていく必要があるのではないかというような御意見です。
 運営協議会が有する現行の機能の意義をどのように捉え生かしていくかという観点につきまして、承認、そして運営に関する意見については、保護者や地域住民の意見を反映するということ、あるいは学校と家庭、地域が連携・協働した学校教育の充実を目指す観点から重要な意義があるということを指摘いただいています。
 また任用の部分については、「人事が混乱するのではないか」という課題意識に対して、学校が課題を地域に開き、学校に対する理解が深まることで取組が充実していく。相互の信頼関係が深まれば、人事の混乱を招く事態が発生することは考えにくいというような御意見でございます。
 校長のリーダーシップの発揮という観点でございます。校長は保護者や地域住民の参画を得て学校運営の改善・充実を図る「地域とともにある学校づくり」を積極的に進めていく認識を持つことが必要である。
 山口の場合ということで、学校の校務分掌を各部会に連動させている。全教職員が、それぞれ各部会に配置されるわけなんですが、そういったプロジェクトを進めていくことによって具体的な成果につながっているような事例があるということで、校長がリーダーシップを発揮して体制を構築していくことが重要であるというような御意見でございます。
 学校支援地域本部、学校評価関連の仕組みとの一体的な推進ということでございますが、先ほどのようにコミュニティ・スクールの視点に「学校支援」、「地域貢献」という視点を加えていくことによって、学校支援地域本部と一体的に推進が図られるのではないかと。
 もう一つ、学校運営協議会の機能の一つとして関係者評価を位置付け実施することによって、学校運営の評価・改善のサイクルが充実していくのではないかというような御指摘でございます。
 最後に、小中一貫教育等の学校間連携の推進の観点ということで、山口県では「地域協育ネット」という仕組みの中で、中学校区で複数の学校が連携した協働体制を作っておられます。そういったこともあって、義務教育学校への運営協議会の設置及び、学校や地域の実情に合わせて、小中複数校で一つの学校運営協議会の設置に関する制度化も必要であるというような御意見を頂いています。
 以上です。

【加治佐主査】 
 ありがとうございました。お二人の御発表、それから、この五人の委員の御意見。
 私がざっと感じるところは、五人の委員の意見は大体一致しているといいますか。事務局が提示しているこの課題が、はっきり申し上げて、ほぼクリアできる方向にあるのではないかという感じがします。お二人の校長先生の御意見、それから教育行政の担当者、首長部局ですが、それから調査結果によっても、何か方向が見えてきます。
 これからは、できれば課題のようなことも是非御発言いただいて、それをクリアするためにはどうしたらいいのかとか、そのようなことも意識して発言していただければと思います。最初申し上げた、このまますっと行ってしまうと、我々は何か仲間内でやっているような感じになりますので。
 やはり実際に課題はあるわけです。実際コミュニティ・スクール導入されている学校の校長先生は、佐藤委員の調査結果にもありますように、承認とかそのようなことを非常に肯定的ですが、そうでない方もおられるわけです。やはり、そこにはそれなりの課題があるということですので、課題を掘り下げないことには、なかなかつながっていかないと思います。
 また、これは余り今日のところ多分なかったと思いますけど、実は類似の仕組みを持っている自治体というのは、福井県を始め、たくさんあるわけです。そのようなところがこういう制度に移っていくためには、どういうことが必要なのか。
 本日、佐藤委員の報告を始め、そのようなことも言及がありましたが、是非触れていただければと思います。課題ですので、何かそこに踏み切れないものがあるわけです。そのようなことも意識して、また御発言いただければと思います。どうぞ、御自由にお願いしたいと思います。はい、どうぞ。

【藤田(大)委員】 
 これからのコミュニティ・スクールの在り方との関わりかと思うのですが。今回の議論の中で、いわゆる地方教育行政の組織及び運営に関する法律に関わっての、この肯定というのは出てきているわけですが。
 例えば私に関わって安全の領域でいきますと、学校保健安全法の第30条では、地域連携ということで、その活動を充実していくというのと、それから、いずれも学校においては、いわゆる年間計画を校長が策定を行って、それに基づいて展開をしていくということが明記されているわけです。
 そういった中で、いわゆる学校運営協議会等が活躍していただいている学校の中で、ただ以前、中教審等が出した地域学校安全委員会のような組織がなかなか設置が進んでいないという状況があったりしますので、その辺りも、本来であれば学校運営協議会の中で、その地域学校安全委員会のようなものが設立されて運営が進められていくと、より具体的な活動につながっていくのではないのかと思っています。
 多分、現場の経験豊富な先生方であれば、その辺りの課題についてもお教えいただけるのではないかと思って最初に発言させていただきました。是非、御意見いただきたいと思います。

【加治佐主査】 
 結局、新しいことを始めると必ず問題が起こる。これまでに経験したことのないような危機に直面する。これはあるわけで、私も大学経営をやっていてそう思います。だから、これはまさしく新しい制度で、経験されたところは多分そのような危機に直面された。あるいは、危機があるから不安に思っているところも多いと思います。そこをどういう危機があってクリアされてきているのか。是非、実際にやられている方々。貝ノ瀬委員、いかがですか。

【貝ノ瀬委員】 
 おっしゃるとおりで、新しい制度をスタートさせるときには、いろいろ課題が出てきますが、このいわゆる私たちが今言っているコミュニティ・スクールというのは10年前、平成16年が地教行法の改正ということで始まったわけです。その前の段階で、全国7校ぐらいでしたか、実験校的に1年、試行的に始めたということがあります。そのときには、まだ法改正、仕組みはしっかりしていませんでしたから、いろいろな取組があったということと、それから、さっき植田先生からも発表がありましたが、やはり本家イギリスの理事会制度のことが既に情報として入ってきていましたので、結局、現場の方は、はっきり言うと、今でもそうですが、学校、要するにイメージで捉えているわけです。
 ですから、いわゆるイギリスの学校理事会制度の中身と、それから地教行法の改正された、いわゆる各学校に学校運営協議会を置くことができるということでのコミュニティ・スクールの機能もそうですし、中身についてもそうですが、これについて、よく未消化のままで、イメージだけでずっと来ていて、いまだに議論が重ねられているというのが強い印象です。ですから、ここら辺りで、もっとしっかりとした、「基本的な我が国のコミュニティ・スクールはこういう制度設計で今進行している」ということを、まず押さえる必要があると思います。
 例えば、この学校教育法には校長先生の位置付けが日本の法律では明確にされています。学校の校務をしっかり担い、校務をつかさどるということになっています。つまり、学校における経営の責任者、権限と最高責任者は校長先生です。だから、そこを一つ押さえれば、いろいろな課題について、いろいろなことが解決するわけです。
 それからもう一つは、教職員の任用についての、要するに権限を持つ部署はどこかというと、校長でもないし、市町村の教育委員会。結局、校長先生は具申権、市町村教育委員会は内申権、都道府県教育委員会が、いわゆる人事権を持っているわけです。政令指定都市もそうです。ですから、そこを押さえると、それがしっかりと理解されれば、またいろんな課題が一挙に解決するわけです。
 ですから、各学校で学校運営協議会で教職員の任用について、いろいろ希望を出されたとしても、即決定とか、全部決まってしまうわけではなくて、最終的には都道府県教育委員会が、全県的な人事構想に基づき、参酌できるところは参酌しながら、そして尊重できるところは尊重しながら決めていくことになるわけですから、結局、実現しない場合もあるし、実現する場合もあるしということなので。ですから、そのようなことがはっきり理解されれば無用な誤解が生じない。
 だから、今の制度の仕組みはどういうことになっているということが、まず先にあるべきではないかと思います。その上で、さっき植田先生がおっしゃったように、はっきり言うとイギリスは別物です。イギリス型のイメージを持ってきて、地域に乗っ取られてしまうとか、理事会の人たちがオールマイティーで校長の生殺与奪(せいさつよだつ)の権利も持っているようになる。校長先生が最高責任者だから、そのようなことは起こり得ないし、地教行法が先に改正されたときに、初中局長の通知でもって、校長は学校運営協議会のメンバーに入るという通知が出ています。
 そうすると、合議でやりますから、角を突き合わせるなどはありません。
 そして当然、校長先生は、この学校運営協議会の委員を推薦したり、それから教育委員会が任命する場合でも校長先生の意見を聞いたりしています。学校運営協議会の委員は教育委員会の下部機関です。ですから、校長先生をないがしろにするような方を任命することはあり得ないわけです。校長先生は各学校の最高責任者です。
 全国的に学校3万幾ら小中学校がありますが、まずそういった基本的なところについての共通理解というのを、きちんと理解される方策を考えるということが重要です。いろいろな課題について、どう考えて工夫改善していくかも同時に考えていくということが大事ではないかと思っています。

【加治佐主査】 
 よく分かりました。イメージ先行が不安を助長させていると。

【貝ノ瀬委員】 
 それが7%ということです。

【加治佐主査】 
 正確な校長の権限や教育委員会等の理解。その上で、この新しい制度があるということですね。よく分かります。ただ、何か成功者ならではの御意見。
 だから、もっと正確な理解と同時に、やはり力量が必要だということではないでしょうか。
 田崎委員、どうぞ。

【田崎委員】 
 今の貝ノ瀬委員の話とも絡む部分がありますが、本県の場合もコミュニティ・スクールを進めようということで、各市町村教育委員会等への説明等や、いろんな会議等をやっています。やはり現場で一番誤解というか、いわゆる学校運営協議会と学校支援地域本部事業、それから放課後子供教室、それとまた今回新しい制度として地域未来塾と。いろいろな学校を支える制度が今あります。あれらが横にずらっと並んで説明をしていくときに、学校として受け入れやすいのは、やはり応援してもらう部分。いわゆる学校支援本部事業であるとか、放課後子供教室であるとか、そういったのはものすごく受け入れやすい。すっと頭に入ってくるのですが、学校運営協議会は現場の先生から言うと、いろいろ自分の方針に物申されるのではないかということで、やはり拒絶感というか、明確にはおっしゃいませんがそのようなものを感じます。
 ですから、一番大事なのは、今おっしゃったように、学校運営協議会と学校支援地域本部事業というのが何か別にあって、今はいいのですが、それを学校運営協議会というのが頭脳の部分であって、学校支援本部事業とかほかの事業は、その手足と言ったら変ですけど、活動の一環としてあると。ですから、一つセットで、学校で取り入れるのが完結型なんですよという、何かそのような位置付けを明確に示していく必要があるのかなという感じはします。
 やはりコミュニティ・スクールのイメージというのが、捉える人でそれぞれ違うと思いますので、その辺りの整理が私は一番大事かなと。
 そのようなこともあって、本県では熊本版コミュニティ・スクール、まずは任用の意見については入れずに取り組んでもらい、そして学校支援地域本部事業辺りと一体にした活動をしてもらいながら、コミュニティ・スクールにつないでいけたらということで今取り組んでいるところであります。
 以上です。

【加治佐主査】 
 では、早川委員、そして生重委員。申し訳ありませんが、時間も迫ってきましたので、簡潔に。

【早川委員】 
 政策的にこれを全学校に導入しようとするとしたら、すばらしい奇跡的な人がいて、奇跡的な校長のリーダーシップの下でできる仕組みではいけないわけです。ハードルは下げていかないといけない、難しいものにしてはいけないと思います。
 3.11以降、地域の教育力とか、きずなということについては再確認されているわけなので、CSの導入はチャンスだとは思うわけです。しかし昨日もある教育長の会の中で、学校には学校評議員会があるから、それと学校運営協議会をどう整理整頓すればいいかということが出てきた。都市教育長のレベルでも、まだその段階です。学校運営協議会では議題を議案にして、「皆さん賛成していただけますか」と言えば、それでいいというだけの話が、なかなかうまくいかないということだと思うのです。
 私は課題として突き放すような結論になってしまいますが、やはり校長が地域に影響力を発揮できないと、これからの校長はなかなか難しいと思うのです。そういう人材を選んで、学校が皆さんに何をやってほしいかと、校長がはっきり言わないと、地域はなかなか動けないので、地域のリクエストに対して校長が整理整頓するだけでは、これからは駄目だろうということです。
 それから二つ目に、国が作った制度に自分たちがそれに合わせようとすると、このコミュニティ・スクールの制度はストレスがかかり、必ずうまくいかなくなる。自分たちがそれをどうあつらえ直して、制度を自分のところに引き寄せてくるかという脳みそが使えないといけないこということです。
 コミュニティ・スクールに関するいろんな説明すると、「ああ、それなら、もううち、やっていますよ。」というところが多いわけです。だったら、先ほどお話のあった何々型のコミュニティ・スクールと、みんなが言えばいい。コミュニティ・スクールはそれぞれの地域との関わりの中で生まれるものですから、これはうちのやり方ですと。そのような脳みそを使っていかないと、この制度は広まっていかない。広まればうまくいく制度であることは間違いないので、いいと思います。
 それで、あとは人事権についての要望も、私どもも、一般教員に対しては一度もありませんでした。校長を残してほしい、校長を替えてほしいというのだけです。両方とも替えました。替えても、残してほしいと言ったところの学校運営協議会は、後で文句は言いませんでした。「次の人もっといいですよ。」と言って、入れて、そういうことで送り込んで。一般教員に対しての人事希望というのは1回もありません。
 多くの場合、学校運営協議会が、残してほしい、替えてほしいということについてはよく理解できます。私も、そのとおりだと思います。
 それから、県との任命権の関わりについては、中核市は恐らく自分のところ全部やっていますので、手続上県が辞令書を出しているだけです。その点においてほかの市町村とは少し違うかもしれませんので、そのリクエストについては応えていけるということです。
 私が問題だと思うのは、長くやっている地域の人にどう鈴を掛けてリタイアしていただくかということです。任期で再任を妨げないということだけでうまくいくかどうか分かりません。
 あと、コミュニティ・スクールは、土曜授業とか、体験学習とか、防災教育とか、全てリンクするので、大変説明しやすい仕組みになっています。
 それから小中一貫教育についても、学校運営協議会は自然にそのように動く力学が働きますので、これも大変いいということです。
 あとは、高校の統廃合、これからどこの県も大問題になってくると思いますけど、一つの高校の活性化として、高校のコミュニティ・スクールはありだろうなと思っています。
 以上です。

【加治佐主査】 
 どうぞ、生重委員。

【生重委員】 
 私の拠点は杉並ですが、杉並は運営委員を選ぶ際に、校長推薦枠と大学の先生に入っていただく有識者枠と一般公募枠というのがございまして、一般公募で自分で手を挙げていく人材は、規定の文字数の小論文と教育委員会の面接を受けることとなっています。希望した学校の委員になれるかどうかというのは、その過程を経て結果待ちになっています。
 まだ足りていないと思いますが、私は、研修は絶対必須だと思っております。これは昨日も議論がありましたが、これからの子供たちの貧困問題とか、個人情報の問題とか、やはり学校だけに全て押し付けるのではなく、一緒に検討していく地域ということを考えたときには、しっかりした守秘義務を守れる人材とか、いろいろなことを研修して学び続けていかない限りいけないと思います。また、杉並の話になってしまいますが、一応3期までです。再任はしません。それをすると人が育たないからです。
 先ほど藤田委員がおっしゃっていたように、やはり次の世代を育てるという目線はとても大事です。そうすると、やはりしっかりした研修が必要で、学び続けていくということが必要なのではないかなと思います。

【加治佐主査】 
 はい、分かりました。

【藤田(裕)委員】  
2度目の発言で失礼します。私の場合は、先ほど加治佐主査がおっしゃった課題というのか、懸案ということで、一周遅れの議論になるのかもしれません。私ども市長部局の人間からして、いつも気にするのは、教育への介入はしてはいけないということです。議会の答弁等でも、いつも教育委員会と協議しますとか、教育委員会において決定、検討してもらいますという答弁をするわけです。その場合に、この学校運営協議会とかコミュニティ・スクールはどこに位置しているのかという部分が、やはり、市長部局側からすると非常に遠慮する部分になっています。
 新しい教育委員会制度の下で、首長の下での教育総合会議等も始まりましたし、そのような大きな流れからいったときに、学校の教育内容であるとか、根幹的な人事とか、その辺りについての関わりは非常に難しいとしても、今お話あったように防災とか、社会体育とか、いわゆる地域でのいろいろな取組、安心・安全とか、この市長部局と教育委員会、教育行政がスクラム組んでやっていくべきことですが、どうしても市長部局側に、これは学校のことなので口出しをしてはいけないというちゅうちょというか、遠慮が働いているのではないかなという気がしています。
 京都市の場合にはということになってしまうのかもしれませんが、その辺りを逆に教育委員会側、あるいはその学校運営協議会の側(そば)から積極的に口を出してください、関わってくださいというオーラといいますか、エールを送っていただく方がいいのではないか。私のコメントの重複になりますが、そのようなことがあるのではないかなという気がしています。

【加治佐主査】 
 分かりました。それぞれの経験者から幅広い問題点が出されて、いろいろ工夫されている様子がよく分かります。
 まだ発言されていない方、いかがでしょうか。

【山野委員】 
 この内部の人間ではないので、的外れになるかもしれません。なので、先ほど主査がおっしゃった、うまくいっていない。反対に、皆さんは本当にうまくいっていて、ここで一致してしまいますが、うまくいっていない例や話が大事だと思います。それから木岡先生の御発言の、すごく説得力があって納得した校長の世代とか、始めの部分とかです。これを変革していくためには、やはり、すごく難しいのではないかなと思いました。
 そのためには、一つは研修と先ほど生重委員がおっしゃった、私もさっき聞きたかったのは、共同研修のようなもの。学校も変わらないといけないし、今の首長部局も変わらないといけない。首長部局にとってみれば、特に学校の話になると非常に遠いので、それぞれが理解し合って、この校長の在り方とかを共有する必要があります。今のコミュニティ・スクールの在り方というものが確定してからなのかもしれませんが、学校は住民の人たち、学校運営協議会のメンバーと一緒に、それから首長部局と一緒にというような、共同で研修していくような仕組みも要るのではないかなと思いました。

【加治佐主査】 
 共同研修ですね。竹原委員、どうぞ。

【竹原委員】 
 今日はいろいろな情報、示唆をありがとうございました。コミュニティ・スクールは今までの学校を大きく変えていくことを確認し、その上で学校支援地域本部だったり、放課後児童育成だったり、福祉との協働だったりということだと思うので、そこの概念を整理する研修が必要だと思います。地域も学ぶ必要があり、今までの会議とどこが違うのかということを丁寧に1校1校伝えていかなければならないでしょう。
 それはチーム学校という議論とも共通ですが、教育委員会制度が変わり、首長部局と密接に関係して、社会総掛かりで教育にかかわるとき、首長部局の方も教育や学校へのかかわりも変わりましたので、学んでいただきたいと思うし、パートナーになれるのではないかと思います。
 そのためには共通認識をするための研修で、教育委員会以外の行政職員の方も学び、地域も更に学ばなければいかない。横浜市としては、学校運営協議会の委員の研修はありませんが、今後は必要になってくると思います。

【加治佐主査】 
 では、松浦委員。

【松浦委員】 
 同じような意見になるかもしれませんが、5年前に、実は私も娘が通っている学校で学校支援地域本部を設置するということでモデル校になりました。校長先生から呼ばれて、「コーディネーターをしてもらえませんか。」という話でした。そのとき私はその言葉を初めて聞きましたので、「学校支援地域本部って何ですか、コーディネーターって何をするのですか。」というところから始まりました。私の質問に校長先生が答えられたのが、私も分からないという言葉だったのです。そこにあったのは、校長先生の困惑でした。それは市の取組として教育委員会から下りてきて、モデル校で、このうちの学校が成功しなかったら次年度がなくなるので、是非、絶対に成功させないといけない。校長先生のすごい強い使命で始まりましたが、実際、本当に大変でした。初めにしたことが、教育委員会に行ってお話を聞くこと。でも、市の教育委員会に行っても、余り明確な答えを頂けなかった。次にしたことが、モデルとなるような先進校に行って研修をする。校長先生と教育委員会の担当の方と一緒に研修にお邪魔しました。そこで、その次にしたのがモデル校の研修に行った学校のまねでした。
 もう出来上がった学校のまねから始めると、やはり無理がありました。エプロンを作るだとか、帽子を作るだとか、その見かけから入ってやっていること。そうやって一番大変だったのが、やはり自分の学校での職員室と私たち応援団の方の距離感というか、理解ができていなかったのと、職員室の空気が一番問題でした。今までは保護者として先生方と良好な関係だったとは思っていましたが、そこにそのようなものが入ってくると、先生方は本当に後ろ向きでした。
 ですから、今ならもっと上手にできたのになというのが、こちらに参加させていただいて、ずっと思っていたことです。そこは、毎回の議論で出ている、先ほど生重委員もおっしゃっていた研修だったりとか、スキルだったりとするものが自分の中に少し理解が深まってきたので、今だったらできる。校長先生もそうですし、現場の教職の先生方もそうですし、私たち保護者も地域の住民も、やはり理解をするというところが全然足りていない。
 この前、たまたまその母校に行き、どうなったかと聞きに行ったのですが、3年がもう過ぎてしまったので、校長先生が替わってしまい、予算も止まってしまっていると。やはり、今困っておられました。
 やはり、研修のところからもっと丁寧に進めていってでないと、今コミュニティ・スクールと言われても、また困惑が生まれるばかりではないかなと思います。本当に一番下の丁寧な部分をもう少し何とかならないかなというところをお願いしたいという意見です。

【加治佐主査】 
 よく分かりました。それでは、時間も押し詰まってまいりましたので、最後に木岡先生と、それからこの作業部会の一つの前段階にあります有識者会議の座長を務められた天笠委員にお話を伺います。
 木岡先生、いかがですか。今いろいろお話を伺って、いろいろ見られ、やってこられたと思いますが。結局、今日出たような課題について、ここでは一応の結論を出さないといけないので、そのような視点も踏まえて。

【木岡教授】 
 研修に対する必要性について既に御意見が出ているとまず受け止めましたが、果たしてその研修が、一般に教員にやるような形でやり切れるのか。そもそも運営協議会委員になってこられる方々の生活時間から考えて、共通の時間設定って可能なのかなという疑問がまずあります。
 それから、確かにニュージーランド等、竹原委員も関わってこられたアメリカなどにおいても、きちんと学校理事会の協議会があって、そこが主催して研修を企画しますが、日本の場合、そのようなものもない中で、果たして有効な研修プログラムを開発できるのかということも問題だと思っています。
 むしろ、先ほど私申し上げたように、校長が、あるいは学校運営協議会の流れの中で研修機能をきちんと果たしていくということが有効ではないのかなと。OJT的に機能させていくことが、まず考えられるべきだろうと考えています。
 そのためには校長に、そうした研修能力を高めていくという研修が必要だということ。でも、それは、年齢構成でお見せしたように、世代がどんどん若返り、実は余り組織経験を持たないまま管理職になっていくという実態は、これから広がっていくわけです。そうすると、経験主義の伝統で校長に任用してきた仕組みを改め、やはり一定の資格制度なり、養成制度なりをきちんと固めた上で、管理職登用を果たしていくということは必要だろうと思います。
 それは、まさに私が出会っていた校長や教頭です。それぞれ優れた校長、教頭でしたが、その二人が一つの学校に入ったときに、実はいいパートナーシップを組んだかというと、そうでもありません。俗人的なパワーだけでは説明し切れない、やはり組織としての学校の在り方が背景にあって、そのベースに乗せて、それぞれの能力開発することは課題化されるべきであろうと考えています。
 ただ、1点伺っていて、一体どういう方向なのかというのがよく見えなかったのは、私は自分のレポートで、コミュニティ・スクールはスクールガバナンスの主体であるということを目指すものだと位置付けています。しかし、どうもここでの議論は、そうした方向性はなくて、むしろ校長主体の学校ガバナンスを補完する仕組みとして位置付けられているような気がします。果たしてどちらを目指されようとしているのか。そのあたりがずっとよく分からなかったところです。
 以上です。

【加治佐主査】 
 天笠委員、今の点も含めていかがでしょうか。

【天笠副主査】 
 学校運営協議会が適切に運用されているのかどうなのかということを評価するシステムが十分に整えられておらず、また十分に機能していないような実態も目配せして見ておく必要があるのではないかというのがまず一つです。
 比較的初期的に段階進めたところは、相応に機能しているところと、どちらかというと形式化、形骸化しているところがあります。あるいは先ほどあった、長期の委員が、プラスに機能するよりも、むしろマイナスに及ぼすような場合もあり得るわけで、その辺りのところです。
 では、それをどのように捉えていったらいいのかといったときには、やはり学校評価のシステムとの整合というか、つなぎやすさという課題を検討せざるを得ないのではないかと思うのですが、今のところ、学校評価については、まだうまく進んでいないというか、途中で止まってしまっているような状態だというのが私の認識です。
 要するに、自己評価と学校関係者評価は相応に存在し動いていますが、第三者評価というのが実態としては開店休業のような状態になっているということです。一つの考え方としては、学校運営協議会の運営の適切さというのは、第三者評価とうまくセットしていく、向き合わせていくというのも一つのシステム上は考えていいのではないかと思うのですが、このあたりは今後の検討事項ということで、すり合わせていく必要のあるテーマだと思います。
 それから、今、木岡先生御指摘のような校長の存在、それから先ほど早川委員もおっしゃっていた、校長の存在というのが、この議論のときには常に繰り返し指摘をされてきました。改めて学校運営協議会が存在するリーダーのリーダーシップの在り方ですとか、マネジメントの在り方ということで、今日もその議論があったわけですが、改めてスクールリーダーの養成に関わってということで、今の木岡先生の御意見は現実に寄り添った御指摘ではないかと思うわけです。
 私も、それこそ採用、養成から研修までという教員養成部会でのテーマにしてもらってもいいのかなと思いつつ、もう一方においては、現実にどこでリーダーが育とうとしているかというと、各都道府県それなりの市町村で、こういう動きが出ているわけですので、場合によっては、そこが最大の人材養成と言っていいのかなと思います。
 現にコミュニティ・スクールを展開している市町村、学校で、次のリーダーがその中に存在しつつあるということです。そうすると何が課題になってくるかというと、今度は、そのような育った人を、どこにどのように配置していくかという、少し広い意味での教職員の人事の有様が問われていいのかなと思います。今は、どちらかというと市町村がコミュニティ・スクールで、ある意味1か所に固まっていたりですとか、そこで育った人も、場合によっては、もしその地域にいるとせっかくの力が生かされないような状態であるのかもしれません。ですから、市町村を超えてとか、従来のエリアを超えるような人。これには県の判断とか、市町村の判断が必要になってくるのではないかと思うのですが。
 そのような人の育て方といったときに、私は現在、既に進行中、あるいは新たに入ったところの人たちの育ち方、育て方、それをうまく使いながら広がりを持っていくような、そういうやり方を考えていく必要があるのではないかなと思います。
 そういった点では、市町村との絡み合いを考えながら、都道府県教育委員会のポリシーをどう、市町村教育委員会に浸透させていくかという、この辺りのところについての検討議論というのも、既に指摘をされているわけですが、もう一度、この普及ということを考えたときに必要かなと思います。
 以上です。

【加治佐主査】 
 ありがとうございました。
 私から一言だけ自分の意見を言いますと、木岡先生が最後に言われました、貝ノ瀬委員も、もともとの理念をお話しいただきましたが、学校理事会というのは校長の上にあって、要するに最高意思決定機関であるという位置付けになるわけです。ところが、現実の成功事例、あるいは現実の課題を解決するためのやり方を見ていると、そうではなくて、校長の後ろ盾になるとか、応援団であると、こういうことが言われて、その方がうまくいく、現実的だということです。
 私はこの意見、実によく分かります。兵庫教育大学も国立大学法人化して、学校経営協議会というのがあります。これは外部委員が入ります。外部委員で、正直申し上げて迷惑するのは、いろいろ事務局の仕事を増やす人とかです。そうは考えていないのに、そのようなことやっている暇はない。こういうこと言われる人です。やはり学長とか、大学の方針の応援団というか、後ろ盾、あるいは寄附金を集めてくれるとか、そのような人が一番好ましいです。その方が実は一番うまくいきます。というのは、その前提として、学長とか役員がそのような人々を選んだり、あるいは説得するとか応援を得る力を持ったりしないといけないということだと思います。
 イギリスの場合、現実的にどうなのかということは見えてきませんでしたが、私は経験者としては、制度は違いますが、日本という風土の中でも、校長以上のものを設けるのが果たして現実的かというと、少し疑問があります。ますます校長になりたいという人が減るのではないかという気もします。ただ、それだけです。異論はあると思いますが。
 それで、課題に即した、たくさんいい意見を頂いたと思います。先ほど申し上げましたように、今日の課題について、論点についての一定の結論を出すというのが我々の役目ですので、これから事務局の方でいろいろまとめられて、一定の方向性なり結論がまた提示されると思います。またそのときに、いろいろ御議論いただければと思います。
 それでは、次回以降の予定について、事務局からお願いいたします。

【廣田参事官補佐】 
 失礼いたします。資料5に次回の予定を掲載しています。次回は7月24日金曜日ですが、こちらの作業部会と学校地域協働部会の合同会議となります。テーマといたしましては、コミュニティ・スクールと学校支援地域本部等、学校支援の取組との一体的な推進の在り方について御議論いただきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

【加治佐主査】 
 それでは、本日予定しました議事は全て終了しましたので、これで終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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