地域とともにある学校の在り方に関する作業部会(第2回)・学校地域協働部会(第2回)合同会議 議事録

1.日時

平成27年6月5日(金曜日)

2.場所

文部科学省 3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. 有識者・委員からの意見発表
  2. 自由討議
  3. その他

4.出席者

委員

浅原委員、飯塚委員、生重委員、井出委員、浦崎委員、黒瀬委員、貞広委員、佐藤委員、関委員、竹原委員、田崎委員、永山委員、早川委員、平岩委員、藤田裕之委員、牧野委員、松浦委員、山野委員、若江委員

文部科学省

小松初等中等教育局長、河村生涯学習政策局長、德久大臣官房総括審議官、中岡大臣官房審議官、德田大臣官房審議官、浅田総務課長、池田財務課長、里見政策課長、谷合社会教育課長、塩崎参事官、鍋島地域・学校支援推進室、楠目民間教育事業振興室長、藤原学校運営支援企画官、他

オブザーバー

北海道教育大学廣瀬教授

5.議事録

 中央教育審議会
 初等中等教育分科会 地域とともにある学校の在り方に関する作業部会(第2回)
 生涯学習分科会 学校地域協働部会(第2回)合同会議

平成27年6月5日

【加治佐主査】 
 それでは、定刻になりましたので始めさせていただきます。皆様、こんにちは。ただいまから、中央教育審議会初等中等教育分科会「地域とともにある学校の在り方に関する作業部会」と、生涯学習分科会「学校地域協働部会」の合同会議を開会いたします。
 本日は、大変お忙しい中お集まりいただき、誠にありがとうございます。両部会につきましては、新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方を検討していくに当たり、連携を取っていくことが大変重要であることから、必要に応じて合同部会を開催することとしており、今回は合同での開催といたします。
 今回は便宜的に私が議事進行を務めさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 本日は、今後の学校と地域の協働の在り方や方向性について、有識者や委員の方々に意見発表いただき、意見交換を行いたいと思います。
 最初に、本日意見発表をいただく有識者の方を紹介いたします。
 北海道教育大学の広瀬教授です。よろしくお願いいたします。

【廣瀬教授】 
 よろしくお願いします。

【加治佐主査】 
 そして、この両部会の委員でもある浅原委員、そして、竹原委員からも御発表を頂きます。

【浅原委員】 
 よろしくお願いします。

【竹原委員】 
 よろしくお願いします。

【加治佐主査】 
 なお、議題に入る前に、前回御欠席された両部会の委員の御紹介を事務局からお願いいたします。

【廣田参事官補佐】 
 失礼いたします。事務局から御紹介させていただきたいと思います。
 お手元に参考資料7、参考資料8がございますので、そちらを御用意いただければと思います。
 欠席された委員の御紹介ということでしたが、それぞれの部会の委員におきましては、相手方の部会の委員さん、皆さん初めてというような状況と思いますので、基本的には全員を御紹介させていただくのが本来ではございますが、時間の都合上、名簿を使って御紹介させていただきます。
 参考資料7でございます。「地域とともにある学校の在り方に関する作業部会」、こちらは初等中等教育分科会の下に設けられた作業部会です。全体16名の委員で、ただいま進行いただきました兵庫教育大学学長、加治佐委員が本作業部会の座長です。
 また、千葉大学教育学部教授の天笠委員を副主査でお願いしています。
 参考資料8でございます。こちらは中教審の生涯学習分科会の下に設けられている「学校地域協働部会」の委員の名簿です。
 千葉敬愛短期大学学長の明石委員にこちらの部会長を、東京学芸大学教授の松田委員に副部会長をお願いしています。
 なお、何名かの委員は両方に分属していただいています。本日御発表いただきます浅原委員、竹原委員、生重委員、松浦委員、山野委員に両部会に所属していただいています。この名簿をもって御紹介と代えさせていただきます。
 また、本作業部会におきます事務局の幹部を御紹介させていただきたいと思います。
 河村生涯学習政策局長でございます。

【河村生涯学習政策局長】 
 よろしくお願いいたします。

【廣田参事官補佐】 
 德久総括審議官でございます。

【德久総括審議官】 
 よろしくお願いいたします。

【廣田参事官補佐官】 
 德田大臣官房審議官でございます。

【德田大臣官房審議官】 
 よろしくお願いします。

【廣田参事官補佐官】 
 初中局、中岡大臣官房審議官でございます。

【中岡大臣官房審議官】 
 よろしくお願いします。

【廣田参事官補佐】 
 なお、小松局長におきましては、公務の関係で少し遅れます。
 事務局の紹介は以上です。よろしくお願いいたします。

【加治佐主査】 
 ありがとうございました。
 それでは、議事に入る前に、配付資料の確認を事務局よりお願いいたします。

【廣田参事官補佐】 
 失礼いたします。お手元に合同会議の議事次第がございます。資料1から参考資料8まで、過不足がないか御確認いただければと思います。
 また、お手元に「地域による学校支援活動事例集」という冊子がお手元にありますけれども、こちらが参考資料6でございます。平成26年度の文科大臣表彰におきまして表彰を受けられた活動を紹介するための事例集で、学校支援地域本部や放課後子供教室などの取組、あるいはコミュニティ・スクールの取組などを御紹介をさせていただいています。
 また、お手元に、本日の意見発表に関連して、浅原委員の方から、「やまぐちコミュニティ・スクール」というパンフレットと、平成26年度地域ぐるみで子供を育む仕組み「『地域協育ネット』実践事例集」も併せてお配りしています。また、クリップ留めになっている資料ですが、竹原委員から、東山田中学校の支援ホームの関連の資料も併せてお手元にお配りさせていただいています。
 配付資料は以上ですが、若干、補足的に資料の中身について御紹介させていただきます。
 資料1から3がこれから意見発表いただく委員の資料ですが、参考資料1、参考資料2を御用意いただければと思います。それぞれ「地域とともにある学校の在り方に関する作業部会」の検討事項例、そして、「学校地域協働部会」における検討事項例というのが示されていますが、本日、意見発表の後、「時代の変化に伴う学校と地域の在り方」ということで、これからの教育改革、地方創生の実現のために、その在り方をどう考えるかということを中心に御議論いただければと考えています。同じく「学校地域協働部会」の検討事項例につきましては、学校と地域の協働の基本的方向性、ここをしっかり押さえた上での議論をいただけたらと考えています。参考資料3、4につきましては、作業部会の意見、あるいは学校地域協働部会の意見でございますので、御参照いただければと思います。
 参考資料5でございます。先ほど申し上げた、皆さんに御議論いただくこれからの教育、あるいは地方創生の動向、それを踏まえた在り方を検討するに当たっての参考資料として、現状の教育改革の動向に関する資料を入れてます。参考資料5を1枚めくっていただきますと、現在の教育課程の見直しの検討の資料がございます。これからの厳しい社会を生き抜くに当たって、その力をどう身に付けていくかということで、現在、中教審の教育課程企画特別部会において、御議論いただいている内容です。
 これからの身に付けるべき資質や能力を考えたときに、学校地域の在り方をどう捉えるか。また、次の3ページ目になりますが、高大接続の実現に向けた高校改革、大学教育改革、そして、大学入試改革が一体的な改革の方向性として示されていますが、こちらにつきましても真の学力をどう評価し、図っていくか、そのようなことが改革の方向性として示されているところです。このような動きを踏まえた形で、学校・地域の在り方をどう考えるか。また、次の資料が小中一貫教育の制度化の資料ですが、このような小中一貫教育の方向性に向けて、義務教育9年間の地域の在り方をどう考えるか。7ページ、学校の教職員構造の転換ということで、チーム学校の推進の議論が今、中教審の別の作業部会で行われていますが、こういった教育改革の動きを踏まえながら、本部会において、学校と地域の連携・協働の在り方について御議論いただければと思っています。
 最後、9ページ、10ページにつきましては、地方創生の関連で、まち・ひと・しごと創生総合戦略の資料を入れさせていただいています。これからの地方創生ということを考えた場合に、学校を核とした地域作りということをどのように捉え、推進していくかということなどについても御意見をお願いいたします。
 以上が、配付資料の御説明です。

【加治佐主査】 
 それでは、本日の議事に入ってまいります。
 まず廣瀬教授から、時代の変化に伴う学校と地域の連携・協働の在り方について。そして、浅原委員と竹原委員からは、御自身の取組も交えながら、学校と地域の在り方について、それぞれ20分程度で意見発表いただきます。
 なお、廣瀬先生におかれましては、用務の関係で、途中で退室されますので、意見発表の後に質疑応答を設けたいと考えています。その後、浅原委員、竹原委員の意見発表の後、まとめて質疑応答の時間を取りたいと考えています。
 それでは、廣瀬先生、どうぞよろしくお願いいたします。

【廣瀬教授】 
 北海道教育大学の廣瀬でございます。よろしくお願いいたします。
 なお、私は、今年の4月から北海道教育大学に移りまして、それまで15年間、宇都宮大学に勤務しておりました。本日の御提言も宇都宮大学での実践と、それまでの基本的な研究を基にお話をさせていただきたいと思っています。
 私の、今回の提言の根拠になりますのは、8年から10年ぐらい続けて、私が勤めていた宇都宮大学の地域連携教育研究センターと栃木県の総合研究センターと共同研究です。学校と地域の連携に関する共同研究を毎年継続しておりまして、それらの根拠を基に提言したいと考えています。特に今年、昨年度、学校と地域の連携が学校経営に与える影響に関する調査研究を行い、そこから分かったことなどをかいつまんでお話ししながら、提言を申し上げたいと思っています。
 最初に、なぜ教育改革や地方創生の動向を踏まえた上で、学校と地域の連携を進める必要があるのかという根源的な問題でございますが、学校支援をすることが単なる学校支援にとどまっていないという現実を、私たちは見ることになりました。一番大きな例は、学校支援地域本部事業が始まったときです。学校支援地域本部事業が始まったときに、そこにコーディネーターの配置というのがあり、コーディネーターの人たちがどんな活動をしているかも調査もしたのですが、そこで行われていることは、単に地域の人材を学校にあっせん、あるいは紹介するという活動ではありませんでした。既に学校に必要な人材を探すためには、地域に出て、地域の人たちのつながりや地域の団体の人たちとつながりを持たなければ人材を探せないことにコーディネーターは気付き、そのことが実は地域に、例えば休眠状態にあった団体にコーディネーターの方が訪ね、こういうことを学校で求めているので是非来てほしいということになれば、休眠状態にある団体は、急に活性化して、学校支援だけじゃなくて、地域でほかのこともやり出すというようなことにつながってくるんです。
 ということは、学校支援地域本部が始まって以降、学校と地域の連携は、単に学力向上とか生きる力といったような学校課題の解決に貢献するのはもちろんですけれど、それ以外にも地域の課題に向き合い、行動する住民を増やしていったという大きな成果が上がっていると私は見ています。ですから、もちろん学校と地域の連携は、目的概念ではなくて、方法概念だと思っていますので、学校課題の解決が基本です。学校課題を解決するためにそれをやるんですが、同時に地域にとっても、地域課題に向き合って行動する住民が増えていく。結果として、住民の自治能力の向上に寄与する。だから、学校支援地域本部事業は、私は純粋に社会教育の事業だと思っています。社会教育のための事業だということを、事業がスタートしているときに感じて、実際にその効果を調査したら、まさに住民の自治能力の向上に寄与しているということがはっきり分かります。
 幾つかの例を申し上げますと、横浜市のあおば学校支援ネットワークという、学校支援のコーディネーションをやるグループがあるのですが、そのグループの人たちは、もちろん学校支援のために動くんですが、結局、学校支援のために動いたら何をしなければならないかというと、まちづくりのためのイベントを開催しなければならなくなってきたんです。そうしないと、どんな人たちがいて、どんな人たちが地域を良くしているのかは伝わらないから、まちのいい人たちを学校に連れてきたいと思えば、どうしてもまちづくりに関わっていかざるを得ないと彼らは言っていました。
 もう一つ、栃木県の鹿沼市に、鹿沼市立北小学校というのがあるんですけど、北光クラブというボランティアのグループがあります。やっていることは学校支援ボランティアです。でも、ほぼ女性で構成されていますが、この北光クラブの人たちは、私たちは学校支援ボランティア団体ではないと明確に言っています。私たちはまちづくり団体だと言っているんです。要するに、学校支援をするのはまちづくりの契機、チャンスにすぎないのだと、私たちは結局、学校を媒介にして、地域の人たちのつながりを作っていくためにやっているんだということを明確に意識している。
 この後、竹原委員の方からも報告があると思いますが、竹原委員たちが作っているNPO法人も、まちと学校の未来という名称です。明らかに学校支援に向いているように見えるんですが、まちの方に門戸を開いている。まちの活性化、地域の創生に目が向き始めざるを得ない。これが学校支援の持っている特性だと思います。学校支援をすればするほど、まちに目を向けざるを得ない。なぜかというと、学校というのは地域を映す鏡だからです。いい学校はいい地域にしか存在しないということだと私は思っています。だから、地域の方を良くしないと、学校は良くならないということなんです。そのことに気付くんです。特に地域コーディネーターはそのことに明確に気付いている人たちだと思うんですね。ですから、媒介する人材が私は必要だと思っています。
 このように、私は、学校支援を単なる学校の課題を解決するというのにとどまらず、地域の課題に向き合い、住民の自治能力の向上に寄与するためには、地域コーディネーターあるいは栃木県、岡山県、山口県その他で見られるように、地域連携の担当教員など、媒介する人材が必要だと考えています。私はたまたま栃木県にいたものですから、栃木県の様子がよく分かりますが、栃木県では、生涯学習課が学校の校務分掌を作ることに介在してくるんです。簡単に言うと、今までの常識では考えられない生涯学習課が学校の中の校務分掌を作ってくれということを、市町村の教育長に生涯学習課長がお願いしに行っています。明らかに越権行為です。私はこういった緩やかな越境が絶対に必要だと思っています。ですから、生涯学習課が学校教育に関わるようになってきて、生涯学習課が学校の教員を集めて研修し、学校の教員研修の中に生涯学習課のプログラムが位置付けられるようになってきているというのが、栃木県の大きな特徴だと思います。
 もちろん全国の都道府県でも行われていますが、指導主事の学校訪問というのはどこでもやっていることですが、社会教育主事も学校訪問するようになってきています。学校へ行って、指導助言をしたり、求めに応じた形は取るんですけれども、PTAとか地域との連携に関する助言をしています。生涯学習課が学校を媒介にして活性化している。元気になってきているという感じの印象を強く持っています。
 2番目ですが、地域との連携によってどんなことが起きているかというと、地域との連携によって、教員が地域に目を向けるようになり、地域学習が進展しているということも栃木県の調査で分かりました。これは、先生方の目が地域に向くようになってきて、地域に関する学習が増えた。児童生徒が地域と出会うことによって、地元の発展と自分の生き方をリンクさせて、最終的に地元に残る、あるいは地元に戻る人材の育成ということを考えていかないと、地方創生の課題の解決に向かわないのではないかと考えています。もちろん中央に出てくる子供たちも必要なことは必要ですが、地域にも目を向ける子供たち。実際に今、青年の活動を見てみますと、青年の農村回帰志向が強くなってきて、都市と農村との交流などが盛んになりつつあります。
 山形県川西町では、Uターンしてきた農業青年、あるいは農業青年でない青年も集めて、ここに書いてありますが、農道百笑一揆(いっき)というグループができています。これは、「農道」というのは、「農の道」ですよね。一般農道とかいう農道じゃなくて、「農の道」、「百笑一揆」。「百の笑える一揆」と書きますが、青年たちが戻ってきて、地域の活性化に貢献する。それは農業にこだわって活性化する。そういう青年たちが今、例えばこれは山形県の例ですが、青年活動が少しずつ広がってきている。このときには青年が戻ってきたときの受皿が必要だと思いますが、このような地元で生きていけるという確信を持たせる教育をしていかないといけないのではないかと思います。地方創生会議で、消滅する自治体ということが言われて久しいわけですが、このことは、特に青年層の受皿をどう作っていくかというのは喫緊の課題だと思っています。
 3番目ですが、学校では単なる地域の人たちをゲストとして話を聞くというようなことだけでなく、地元での生産活動や地域活動を体験的に学ぶ必要があると考えています。それは、例えば、地域はアクティブ・ラーニングや問題解決学習の場であると考えると同時に、そのことは地域からの働き掛けも必要です。これはもう既に、生重委員や竹原委員たちがいろんなことを学校に提案しているんです。学校にこういうことをやってはどうかという提案をして、そして、そのことが受け入れられていくと。地域はアクティブ・ラーニングや課題解決学習の場として見直される必要があると思いますし、学校に提案していく必要があると思います。ですから、地方創生の視点からも学校と地域の連携は更なる充実が必要だと考えています。むしろ、これから地域創生をどうするかというときに、学校と地域の連携を強力に進めて、学校では地域学習を、社会教育では、戻ってきた青年を活動させる受皿を作っていくというような流れを作っていく必要があるのではないかと考えています。
 4番目は、学校と地域の連携はどういう意味を持っているかというと、私は、学校と地域の連携、あるいは地域住民や保護者の学校運営の参画という言い方をします。この言い方は、学校の先生をとても刺激します。学校の先生たちには、学校に介入されるんではないか。学校にいろんなことを言われて、私たちの授業がやりづらくなるんじゃないかという、そういう恐怖心を強く持っています。ですから、地域住民や保護者が学校運営に参画するというときに、何とも言えない抵抗感、心理的抵抗感を持っているのは事実です。
 しかし、それは、要するに、よくそれらを読んでみると、参画は、勝手なことを言うことじゃなくて、子供の教育責任を社会的に分担することなんだと。要するに、何か口を出せば、自分たちで責任を果たさなければならないということなんです。ですから、地域住民の一定層の人たちは、そのことに気が付いている人たちは、学校運営に関わらないという人たちも増えています。むしろ学校運営、学校のことはもう教育委員会と学校に任せたからいいよという態度ですね。中途半端に関わろうとする人たちは学校に、人事に介入だけして、責任は取らないというタイプの人たちもいると思うんですが、これから求められる地域の人材というのは、地域の人たちというのは、学校運営に責任を果たす人。一緒に汗を流す人たちが必要なのであって、評論家が必要なのではない。ですから、私は学校と地域の連携は、地域住民に厳しい選択だと思います。
 学校に甘くということでもないんでしょうけど、学校には甘いけれども、地域住民に厳しいというのが学校と地域の連携のイメージだし、学校支援、学校運営への参画。保護者や地域住民の学校運営の参画というフレーズは、保護者や地域住民に教育責任を果たさせるという、そういう営みであるというふうに考えています。だから、地域住民や保護者はそうした教育責任を担う力量の形成のためにトレーニングしなければいけないわけです。ですから、誰でもが参画できない。誰もが参画できるけれども、誰でも参画できるわけじゃない。ですから、一定程度トレーニングされた人たちが学校運営に参画する。そういうことが私は必要になってくるんだろうと思うんですね。ですから、そのきっかけとして、学校支援ボランティアやPTA活動があると考えています。
 PTA活動は期間が限定されていますが、学校支援ボランティアは期間が長いですから、学校支援ボランティアを媒介にして学校のことをよく理解し、「ああ、学校ってこんなに忙しいんだ、学校ってこんな喜びがあるんだ、学校ってこんなに楽しいところなんだ。」、あるいは、「こんなに厳しいところなんだ。」ということを理解した住民たちが、学校運営に参画するようになるというサイクルを作っていくことが必要だと思います。すなわち、地域の教育力の向上に努めるということが必要だと思います。そのためには、学校支援ボランティアはまさに成人学習の場であると。PTAでもよく成人教育部会というのが用意されていますけれども、まさに大人の学びの場になるんだと。そのことを通じて地域の教育力になって、それが学校運営の参画する人材になっていくということが言えるんだろうと思います。
 最後に提言をお話しして、私の報告を終了させていただきますが、提言は簡単に五つございます。一つは、栃木県、岡山県、仙台市に見られるように、国として、地域連携担当教職員の仕組みを設けて、校務分掌に明確な位置付けをしていく必要があると思います。これは、既に栃木県などで先進的に行われている地域連携教員とかです。栃木県では、県内の623校全校に地域連携教員を配置して、そのうちの半分が社会教育主事の有資格者という政策を取っています。そういう媒介する教員がいないと、ただ学校を支援するだけに終わってしまうんです。地域創生につながらないんです。そういう学校支援のための担当教員を、できれば加配で置いてほしい。あるいは、2分の1加配でもいいですが、時間講師などの措置が必要ではないかと私は考えています。今は、担任を持ちながらやっています。
 栃木県でもそうです。担任を持ちながら地域連携教員となり、地域連携に関する事業を担当しています。これは大変です。地域連携担当を作ることは私も賛成ですし、推進する一人ですが、同時に地域連携担当教員を作ることによって、先生方がますます多忙化するという、もう一つの側面を持っています。ですから、その側面を何とか打開するためには、加配、あるいは時間講師などの措置が必要だと考えています。それが1点目です。
 2点目は、教員に社会教育主事の資格の取得を奨励することです。これは教員が、私、実は栃木県にいたときに社会教育主事講習を担当していました。毎年120名の受講者が来て、そのうちの80%から90%が学校の教員です。恐らく日本で一番受講者の多い社会教育主事講習をやっていました。ほとんど学校の教員です。ですから、当然、演習の内容とかプログラムの内容は学校教育にややシフトした社会教育主事講習をやっています。そこで分かったことは、先生たちが地域に、地元に目が向くようになったということです。成人教育とかPTAとか大人の学びとか、あるいは地域の人たちがどんな活動をしているのか、そのことに目が向くようになるという効果があると思います。
 栃木県では、約1万5,000人の教員のうち、960人が社会教育主事の資格を取っています。県費で旅費を支給して、社会教育主事の資格取得を奨励しています。しかし今、全国の大学で行われている社会教育主事講習の受講者が激減しています。あるいは市町村に配置される社会教育主事の数が激減しています。せっかくこのような地域に目が向くための講習を文科省が毎年開催しているにもかかわらず、これを利用しない手はないだろうと私は思っています。そのためにはまず、大学が行う社会教育主事講習の内容の充実を図る必要があります。今までどおりの社会教育主事講習でこのように地域に目が向くかというと、私はそうは思いません。やはり社会教育主事講習そのものの充実、学校支援型の社会教育主事講習にするなどの工夫がもっと必要ではないかと考えています。
 3点目は、地域コーディネーターの配置を推進すること。これは、先ほどの地域連携教員の配置と同じことですが、地域コーディネーターは今、学校支援地域本部事業の中で配置されています。しかし、まだ全国的に見ると少ない。地域コーディネーターが、これは複数配置でも、ボランティアでも、どういう形でもいいですが、地域コーディネーターが配置されることによって、学校と地域の連携が地域作りやコミュニティ形成にはっきり向かうのです。ですから、地域創生につながるためには、この地域コーディネーターの配置を強力に推進することが、国の政策として必要ではないかと考えています。
 4点目は、学校教育では長く使われている「地域人材の活用」という言葉があります。「地域人材の活用」という言葉と、学校支援ボランティアは緩やかに弁別した方がいい。どちらがいいか悪いかを言っているんではなくて、資料の次のページを見ていただきたいんですけど、私の仮説で、地域人材の活用と学校支援ボランティアの違いをそこにマトリックスにして並べてみました。地域人材の活用はどうしても学校の先生中心で物を考えて、学校の先生が主体的に地域の人材を探してきて、そして、中身をお願いしてというふうになると、先生たちに負担が大きく掛かるんですね。学校支援ボランティアやコーディネーターが媒介しますから、先生方に対する負担は軽減されます。私は学校支援ボランティアが最終的には自分たちでやりたいことを学校に提案してくる提案型のボランティアをしていくことが、最終的なモデルだと思っています。学校に頼まれたことはもちろんしますが、学校に出入りすることによって気付いた様々な出来事を行うことの方が、私は意味があると思います。
 例えば、栃木県鹿沼市の北光クラブでやっている活動は、先生に頼まれた活動ではありません。毎年7月ぐらいになると、各省庁とか各団体から各学校に作文、絵画、標語、俳句、文芸、様々な募集要項がやってきます。いろんなコンテストの募集要項がやってきます。真面目な先生はそのたびにそれを全部印刷し、子供に配っています。それだけでも猛烈な仕事量、事務量の増大になっています。鹿沼の北光クラブの女性保護者のグループが、「先生、その仕事って無理に先生がしなくても、私たちができるんじゃないですか。」と提案したことから始まったんです。
 それで、鹿沼市の北小学校では、そういった作文の募集とか絵画の募集の案内はこの北光クラブの学校支援グループのメンバーが全部受け入れて、彼女たちが募集要項をもう一回作り直し、子供たちに作品を募集して、作品を集めて、発送して、そして、賞状や賞品の受け取りをして、表彰式まで彼女たちが仕切ってやるというところまでやっています。正直言って、先生たちは大助かりです。それは先生たちから頼んだことではありません。そのぐらいのことは自分たちでできるのではないかという提案から始まっているんです。だから、まちづくりにつながるんです。そういう北光クラブに見られるように、学校からお願いされたことはもちろんやるのですが、自分たちが提案したことをやっていくのが学校支援ボランティアです。自分たちができることをこんなふうにやってみたいんだがとつなげていくことが必要ではないかと考えています。
 最後です。学校運営の参画をするためには、私は、今まである地域協議会の組織を高度に機能させていくことで、コミュニティ・スクールへの展望を開くことができるのではないかと考えています。コミュニティ・スクールは、究極の参画の仕組み、学校と地域の連携の仕組みだと思っています。コミュニティ・スクールを強力に推進することによって、この地域作りにもっとつながっていくのではないかということを最後に提言させて、終わらせていただきたいと思います。

【加治佐主査】 
 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの御説明、御報告に御質問、御意見がありましたらよろしくお願いいたします。
 生重委員、どうぞ。

【生重委員】
 廣瀬先生、ありがとうございました。全て納得できる内容ですが、例えば地域、県域に出た場合、規模が少ないところで、先生の御発表というのは、どちらかというと義務教育を中心に視野に入れていますが、小さなまちになればなるほど、高校も重要な役割を示していくと思います。義務教育の域を超えて、地域における高校との連携について、そのような調査をなさったことはありますか。それと、高校のコミュニティ・スクールも、今後はすごく重要な課題になってくるかと思いますが、その辺、何か御見識があったらお願いします。

【廣瀬教授】 
 ありがとうございます。例えば、「学校支援ボランティア、地域との連携というのはどんなことですか。」と聞くと、小学校では、学校支援ボランティアの人に来てもらうことが地域との連携だという回答が多いです。中学、高校は、むしろ子供たちが地域に出ていって活動することだと言っているんです。その中で特徴的なのは、特に工業高校の建築科に非常に顕著なんですが、まちづくりの学習をやっているんです。それは、栃木県の鹿沼市内の高校でもやっていますし、日光市でも、高校生のまちづくり事業というのをやっていて、高校生が高校の中でまちづくり教育や、まちづくり学習を行い、地元に目が向く教育活動をしています。ですから、私は高校で必要なのは、まちづくり教育とまちづくり学習だと思っています。実は高校生が小学校へ行ったり、あるいは高校生が地域の課題解決までやるという活動をしない限り、地元に戻ってこないと私は思っています。ですから、地域課題に果敢に、例えば、高齢化とか無縁社会とか高齢者の独り暮らしの問題とか、そういう問題に高校生が関わって課題解決をするという経験をさせることこそが、地域創生につながると考えています。
 以上です。

【加治佐主査】 
 いかがでしょうか。はい、どうぞ。

【牧野委員】
 牧野と申します。私は、社会教育の専門なのですが、私も実は、社会教育から学校教育をどう攻めていくかということを考えていまして、とても参考になりました。
 私は今朝、山形県から帰ってきまして、川西町にも行ったのですが、一つお伺いしたいことがあります。学校と地域の連携を深めることによって、むしろ地域の実践力が高まっていくというお話であったわけですが、これはよく分かる話なのですけれども、そこをもう少し突き詰めていきますと、例えば住民自治と団体自治の関係ですとか、更に言えば、自治体はどう自立を図りながら自らのまちを作っていくのかということを考えますと、今、先生がおっしゃった、例えばいわゆる商工関係ですとか福祉ですとか、いろんな地域社会の問題と、更に子供たちをどういう形で社会のフルメンバーとして受け入れて、彼らがまちづくりに関わるのを支援していくのかという議論をせざるを得なくなってくるのではないかと思います。その意味では、行政的に、例えば一般行政と教育行政で、今、学校教育は教育行政で、社会教育や生涯学習も基本的には教育行政なのですけれども、この一般行政と教育行政の関係をもう少し、例えば一般行政を教育化していくといいますか、又は学習化していくというような方向性というのがあるのではないだろうかとも思います。
 生涯学習が学校教育の方に越境してというお話がありましたが、更に教育が一般行政に越境していって、もう少し自治体の行政そのものが、住民の学びに基づく行政参加によって予防的に動いていくといいますか、又は、まちづくり的に動いていくというような形のことを今後構想できるかどうか。そのときにその核になるものが学校だというような議論ができるかどうか。少し先生のお考えを伺いたいと思うのですけれども、いかがでしょうか。

【廣瀬教授】 
 私が栃木県で関わっていたときに、青年教育、青年のまちづくりの事業を依頼されたのは、教育委員会ではなく、市長部局でした。ですから、市長部局は今どこもそうですけど、地域創生に大きな目がいっているんですね。地域創生の中身は社会教育であったり、あるいは青年教育でありますが、その青年教育とか社会教育という言葉が、市長部局の人たちは嫌いなんです。特に、社会教育という言葉がお嫌いなんです。生涯学習とか。そういう言葉を使わないで、青年のまちづくり、若者のまちづくりという言い方に変えて、実際は市長部局の行政が教育委員会化、あるいは教育化しているというのが現象としてあります。ただ、表に立って見えないというだけで、実際に深く中で見てみると、そこはもう青年教育そのものでした。私は、それは深く進行しているのではないかと見ています。

【加治佐主査】 
 もうひとかたぐらいいかがでしょうか。はい。山野委員。

【山野委員】
 大阪府立大学の山野です。今の牧野委員のお話から、私も同じことを考えていて、福祉でいうと、これはコミュニティソーシャルワークという領域で、先生のおっしゃったことは、福祉フィールドでいうと、社会福祉協議会が地域作りという形で取り組んでいるところです。その辺のリンクというか、コミットだとか、先生がどのようにお考えでしょうか。あるいは実際、調査の中で出てきていたら、教えていただきたいと思います。

【廣瀬教授】 
 はい。宇都宮大学の実践といいますか、栃木県の実践で申し訳ないんですが、栃木県内の社会福祉協議会では県社教も含めて、市町村社教も全部合体して、宇都宮大学を会場にして、高校生サミットというのを毎年やっています。社会福祉協議会の人たちが高校生のための事業を、実際にはかなり精力的にやっています。高校生のボランティア、あるいは高校生の福祉教育。栃木県に福祉教育研究会というのがあって、中身はほとんど高校生のためのプログラムです。それを全県的に展開し、大学と連携してやっています。大学を会場にして、毎年3月に、3.11と掛けて、福祉あるいは災害のことを考える高校生の集いを実際に実施しています。そのように、社会福祉協議会は今、高校生に目がしっかり向いてきているのではないかという実感を感じています。これは、先ほど牧野委員の質問にも答えましたように、教育という言葉を教育委員会に封じ込めないで、市長部局や社会福祉協議会やそういったいろんな部局が、教育や学習とか社会教育という言葉を使わないで、学校教育に関与しているのが、今の社会という感じをすごく持っています。市長部局や社会福祉協議会と付き合うと、ほとんど生涯学習や社会教育という言葉を使わずに、全く同じことを言っています。私の印象はそういうことです。

【山野委員】 
 ありがとうございます。

【加治佐主査】 
 それでは、まだ御意見と御質問あるかもしれませんが、時間になりましたので、廣瀬先生の御報告はここまでにしたいと思います。どうもありがとうございました。

【廣瀬教授】 
 ありがとうございました。

【加治佐主査】 
 それでは、続きまして、お二人の委員からの発表を続けたいと思います。
 それでは、浅原委員、よろしくお願いいたします。

【浅原委員】  
 山口県の教育長の浅原でございます。20分という時間を頂いてますので、山口県の取組状況の紹介、それに加えて、幾つかの提言をさせていただきたいと考えています。
 先ほど紹介いただきましたように、説明資料とは別に、2冊ほど資料を用意していますが、参考資料ということで持ってまいりましたので、後ほどゆっくりと御覧いただけたらと思います。
 それでは、資料に沿って説明をさせていただきます。
 まず、1ページを御覧いただきたいと思います。
 最初に、やまぐち型地域連携教育と書いていますが、本県におきましては、今年の3月に「元気創出やまぐち!未来開拓チャレンジプラン」という県政運営の指針を策定しました。その中の重点施策の一つとして、社会総がかりによる「地域教育力日本一」の取組の推進を掲げています。1ページの一番上の枠内に示していますが、いわゆるコミュニティ・スクールで、「子供も大人も生き生きとする地域にやさしい学校づくり」。もう一つは、「地域協育ネット」、これは本県独自の仕組みでありますが、その「地域協育ネット」による日本一の「学校・家庭・地域の温かい絆づくり」をめざしているところです。
 県教育委員会では、このチャレンジプランとの整合性を図るために、山口県の教育振興基本計画の一部を改定しまして、やまぐち型地域連携教育として推進しています。
 このやまぐち型地域連携教育というのは、ちょうど1ページの(1)のところに図を書いていますが、コミュニティ・スクールが核となり、「地域協育ネット」の仕組みを生かして、各中学校区でネットワークを形成し、学校・家庭・地域が連携・協働して、社会総がかりで子供たちの学びや育ちを見守り、そして、支援していく、そういう教育であります。こうした取組を通して、「地域教育力日本一」、これをめざしているところでございます。
 そこで、まず丸1と書いてある下半分でございますが、やまぐちコミュニティ・スクールについて説明をさせていただきます。
 1ページの下の方に書いているように、本県では、学校支援、学校運営、地域貢献この三つの機能を持つやまぐちコミュニティ・スクールを推進しています。詳細は配布しています「やまぐちコミュニティ・スクールプログラム」を御覧いただけたらと思います。
 2ページの写真のところで紹介をしていますが、その柱の一つの学校支援では、保護者による読み聞かせ、あるいは地域の方々の協力による挨拶運動といった様々な活動を展開しています。
 その下の学校運営ですが、学校運営協議会による熟議の実施。また、学力向上という課題を取り上げ、学校運営協議会委員が授業評価を行ったり、研究協議に参加したりと、そういった取組を行っている学校もあります。
 それから、その下の写真、横の一列に地域貢献と示していますが、例えば、学校の余裕教室をふれあいルームなどとして地域に開放したり、地域住民を対象とした公開講座の実施。子供たちが地域に出かけてボランティア活動をしたりといった取組が盛んに行われているところです。
 こうした取組の成果について、一番下の枠の中に3点ほど書いています。まず一つ目は、学校への理解・協力が進んで、学校支援が充実して、それが子供たちの豊かな学びにつながっているということです。
 それから、二つ目ですが、地域の方々は、生きがいや自己有用感を高めていく。そして、子供たちは、見守られているという安心感や地域を愛する気持ちを高める。それが子供たちの地域貢献活動につながってきているということ。
 三つ目は、学校が地域の学びの場、あるいはまた、住民同士の交流の場になり、大人同士のつながりも深まっていることをお示ししています。
 3ページにグラフを載せていますが、これは昨年行った小中学校の校長を対象としたアンケート結果です。そのグラフは、コミュニティ・スクールを実施している375校の小中学校の回答をまとめたものでございます。御覧いただけたら分かるように、学校と地域が情報を共有するようになったとか、あるいは地域が学校に協力的になった。中ほどには、学校が活性化した。17番には、地域も活性化したというようなことを答えている、そういう学校が増えてきている。これも大きな成果の一つであろうと考えています。
 続いて、4ページを御覧ください。「地域協育ネット」について説明をさせていただきます。4ページの一番上の枠に示していますが、「地域協育ネット」は、幼児期から中学校卒業程度までの子供たちの育ちや学びを、継続して地域ぐるみで見守り支援していくための、おおむね中学校区を一まとまりとして、学校・家庭・地域が連携した取組を行うための山口県独自の仕組みです。
 なぜ、この仕組みを立ち上げるようになったかという経緯を中ほどに示しています。平成22年度までの取組というところに、国の事業に、丸でAとかB、Cと書いていますが、放課後子供教室推進事業、それから、学校支援地域本部事業、そして、家庭教育支援基盤形成事業という三つの事業がありました。各学校や地域では、それぞれの事業に対応した支援活動が個々に展開をされていたという状況でした。そのため、同じ地域でありながら、学校間の連携等が不十分であったり、特定の学校の支援者、その地域のキーマンと言ってもいいと思いますけれども、そういった人に活動が集中したりという課題がありました。
 そこで、平成23年度に国で三つの事業を一本化するということがあり、それを契機に本県では統括コーディネーターのもとで、より組織的、効率的に支援活動を展開する「地域協育ネット」、「協育」の「協」はあの字を書いていますが、その構想を策定し、県下全域に普及するという努力をした結果、平成26年度末には、県内の全ての中学校区で「地域協育ネット」が整備されたところでございます。
 「地域協育ネット」の取組を紹介いたします。5ページに写真を載せていますが、例えば中学校区にある保育所、小中学校、それから、PTA、地域の連携による合同の避難訓練の実施であるとか、あるいは保護者や高校生が、中学生や小学生の勉強を教える学習支援の実施。さらには、3世代交流活動や伝統文化の継承活動と、様々な取組を行っているところです。ここにはポイントだけ載せていますが、詳しくは別冊の資料をお配りしていますので、後ほど御覧いただけたらと思います。
 こうした取組の結果、5ページの下にありますように、幾つかの成果が出てきているところです。例えば、最初の丸ですが、中学校区全体で育てたい子供の姿を共有して、具体的な取組へとつながっていること。2番目は、幼保・小・中・高の縦のつながりと、地域の関係団体との横のつながり。そういう縦、横のつながりが構築できたということ。3番目は、統括コーディネーターの配置によって、効率的な学校支援体制の構築ができたということ。さらに、この仕組みが地域の課題解決や地域の活性化にもつながっていること。例えば、伝統文化の継承活動の担い手不足の解消や、地域の合同運動会、高齢者の交流会の開催による過疎化であるとか、高齢化問題への解決に向けた取組が行われているということが挙げられます。
 6ページには、そういった取組の課題、そして、課題解決に向けた取組をお示ししています。まず課題でございますが、やまぐちコミュニティ・スクールにつきましては、いろいろな成果が上がっている一方で、学校や地域によって取組に差が生じているというのが現状です。
 管理職や教職員の意識改革が十分に進んでいない。例えば、「従来の地域連携と大差ないのではないか」。「地域の人々による支援活動が以前から行われている」というような、コミュニティ・スクールの本来の目的である学校運営の充実についての認識が不足している。あるいは、新しい取組への負担感、さらには学校を開くということについての抵抗感をもっている等があります。
 それから、2番目に書いているコミュニティ・スクールを担当する地域連携担当教職員、これが位置付けられていない。仮に位置付けていても、それが十分に機能していないということで、結局は管理職が中心となって推進をしている学校もあります。
 また、学校運営協議会と教員の組織。校務分掌と言いますが、それとの連携が進んでおらずに、全ての教職員の参画がまだ不十分であるということ。それから、学校の課題解決に向けた熟議の実施等についても、まだ課題があります。
 その下の「地域協育ネット」についても、コミュニティ・スクールと同様に、地域ごとに差があるのが現状でございます。例えば、統括コーディネーターが未配置である。あるいは、後継者がまだ育っていないというような中学校区もあります。また、家庭教育についても、相談体制の充実に向けた取組が課題ということを挙げています。
 次に、課題解決に向けて、山口県はどのようなことに取り組んでいるかということですが、その下半分の枠に書いています。本年度から新たにコミュニティ・スクールや「地域協育ネット」の推進協議会や会議の設置、それから、山口CSコンダクターの配置、コミュニティ・スクール推進フォーラムや、県内7地域での研修会の開催、このようなことを通して、推進に向けた体制整備、あるいは気運の醸成、好事例の普及を図って、やまぐち型地域連携教育を進めていこうとしているところです。
 7ページに入ります。地域連携を担当する教職員の育成・配置、それから、管理職研修等の状況です。本県では、教員養成段階の教師塾をやっていますが、そこで、「学校・家庭・地域の連携」をテーマとした講座や熟議の演習を実施するとともに、初任者、10年次、それから、ミドルリーダー、事務職員を対象とした研修会においても、地域連携に係る講座等を設けるなど、計画的な人材の育成に取り組んでいます。こうした取組を通して、教職員全体の資質向上を図るとともに、地域連携を担当する教員の育成にも努めています。
 また、管理職につきましては、全ての管理職を対象としたコミュニティ・スクール等の研修会を実施して、推進者としての実践意欲の高揚を図るとともに、地域連携担当教職員をきちんと校務分掌に位置付けるということも進めているところです。
 次に、3番目の地域コーディネーターの配置状況、養成、確保状況でございます。コーディネーターにつきましては、7ページにその役割を記載しています。本県では、統括コーディネーターを全ての中学校区へ配置することをめざしており、昨年度末で中学校区は151ありますが、その約64%に配置しています。29年度末には100%の配置をめざしています。
 8ページに示していますが、そのコーディネーターの養成も大変重要で、平成23年度から養成講座を年間8回実施しています。参考までに講座の内容とかこれまでの受講者、修了者の数、その一覧を載せています。まだまだではありますが、受講者、修了者ともに年々増加しています。
 9ページに入ります。今後、社会総がかりでの教育を推進していくために、記載しています(1)から(5)の5点について提言をさせていただきたいと思います。
 まず(1)です。地方創生、活力ある地域づくり、人づくりのためには、やはり地域とともにある学校づくりを全県的に推進することが必要だということです。そのためには、知事部局と教育委員会が連携・協働した施策の策定、あるいは実施が不可欠だということです。是非、これを進めたいと思います。
 (2)で、国、都道府県、市町村それぞれでコミュニティ・スクール担当の学校教育行政と、学校支援地域本部担当の社会教育行政、これが連携・協働していくことがより教育効果を上げる上で絶対に欠かせない点だと考えています。担当がそれぞれ異なりますので、是非その連携・協働が必要だと考えています。
 それから、(3)です。公立の小中学校のコミュニティ・スクールは、市町村教育委員会が指定するということから、都道府県はその重要性や推進に向けた思い、これを市町村としっかり共有することが大切だと思います。また、市町村、学校への訪問や協議を繰り返して理解と協力を得ながら取組を進めていくことが重要であります。
 (4)の都道府県・市町村の役割です。
 まず丸1ですけれども、ビジョンを明確に示すことが必要だと考えています。例えば都道府県や市町村では、教育振興基本計画を作成しておられると思いますが、その中でコミュニティ・スクール等の推進目標を明確にする。あるいは、都道府県及び市町村としてどのような学校づくりをめざしていくのかを明確に示す必要があると思います。更にコミュニティ・スクールと学校支援地域本部が、どのように連携をしていくのかも示していく必要があると考えています。
 それから、丸2です。「義務教育で完結しない教育支援体制の構築」と書いていますが、義務教育に限らず、幼保・小・中の連携、さらには高校や大学、地域の団体等と連携した地域ぐるみの教育支援体制を構築する必要があると考えています。
 丸3です。都道府県の施策等を協議し、具体的な取組へと反映させていくために、都道府県、市町村におけるコミュニティ・スクール推進協議会等の設置を進めていく必要があると思います。また、モデル中学校区を指定し、研究を進めていくということも考えられます。
 丸4です。研修会においては、学校・家庭・地域の連携の必要性あるいはコミュニティ・スクールのメリット、好事例の発信等を行っていく必要があると思います。さらに、熟議の実施とファシリテーターの養成、状況によっては出前講座等による熟議の支援も必要になろうかと思っています。
 丸5ですが、計画的な人材育成についてです。たくさん記載していますので、個々には説明いたしませんが、いろいろシステムを作っていても、結局それを動かしていくのは人間です。この取組の重要性を理解している多くの人材が必要だと考えています。教職員の養成、スクールリーダーの養成、管理職研修、それから、指導者の配置、コーディネーターの養成・配置、家庭教育支援員の養成と活動機会の充実を計画的に行っていく必要があると考えています。特に、学校運営の責任者である管理職の研修、これには絶対に力を入れていく必要があると思います。
 最後に、10ページの(5)でございますが、国における支援等についての提言でございます。
 最初に、丸1の財政支援制度の一本化です。このような取組を推進していくためには、国庫事業等を、都道府県あるいは市町村が有効に活用するとともに、国からの支援が必要になりますが、学校教育行政と社会教育行政の連携強化が必要であるということから、財政支援制度についても一本化されることが望ましいと考えています。
 次に、丸2ですが、推進体制構築・強化のための支援です。記載していますように、都道府県や市町村に設置する協議会等の実施に係る財政支援の充実、CSディレクターの全国的な配置のための財政支援の充実、それから、地域連携担当教職員に係る加配や非常勤等の措置。さらにはコーディネーターの養成・配置及び家庭教育支援員の養成に係る財政支援の充実が必要と考えています。
 山口県のコミュニティ・スクールの設置率は、この4月1日現在で、義務教育で90.2%です。それから、「地域協育ネット」の中学校区への設置率は100%となっていますが、先ほど申しましたように、まだ取組の温度差など、様々な課題があります。地方創生が叫ばれていますが、本県においても人口減少や高齢化の進行が大変厳しい状況の中であり、今のような取組を通して、学校を核として地域の活性化を図るとともに、子供たちが生まれ育った地域に誇りや愛着をもって、何か地域のために貢献したい。地域で働き、地域の将来を担いたい。そういう気持ちをもった子供たちを、一人でも多く育てていきたいと考えています。また、皆様方の御意見、御指導いただきながら頑張っていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

【加治佐主査】 
 浅原委員、どうもありがとうございました。御質問等は、竹原委員の発表の後でお願いいたします。
 それでは、竹原委員、お願いいたします。

【竹原委員】
 竹原です。学校と地域を語るとき、必ずこの写真からスタートします。これはコミュニティハウスの前にある中庭で、たまたま子供たちが遊んでいたのを撮らせていただき、許可を得て、いつも使っている写真です。子供の未来のために私たちは動いているということを確認しておかないと、やらされているとか、やらなければいけないということになってしまうと思っています。
 次の時間軸と空間軸も大事だと思っています。子供が生まれてから、小学校、中学校、高校、更にその先までの時間軸がうまくつながるかどうか。それから、学校・家庭・地域、そしてグローバルな社会も待っています。それらがつながって、初めて子供は成長していける。よく小中一貫教育は推進しますが、地域連携まではできないと言う方がいるかもしれませんが、これは両方が必要で、子供の成長には、ここに関わる大人が連携し、つながらなければならないと思っています。
 今日は事例紹介として、東山田中学校のことをお話ししたいと思います。上の絵は85歳の地域の方が書かれたものですが、昭和44年、港北ニュータウンがまだ開発されていないときのもので、40年で急激に変化し下の写真のようなまちになりました。とてもおしゃれで、東京から移り住む方が多い中で、実はニュータウンの課題があります。学校にとって一番厄介なのは、帰属意識の低い、つまり、学校はサービス産業だと思っている人もいないわけではないし、そういう意味で、学校と地域を考えるときに、自分が担い手であるということを伝えていかなければいけないと考えています。
 次に、東山田中学校の特色として、私が館長をしていますコミュニティハウスという施設があります。公設民営で運営されている380平方メートルの施設で、ほぼミニ公民館だとイメージしてくださればいいと思います。子供も大人も一緒に集う、一緒に学ぶということがキーワードです。更に学校の中にあるということで、地域と学校を結ぶ場ということが大きな柱です。
 全国では平成20年から学校支援地域本部事業が始まり、横浜市では平成21年から学校支援地域本部を設置し、東山田中学校区でもスタートしました。事務局をコミュニティハウスに置いています。ある日のサロンを見てくださると分かるように、赤ちゃんから小学生、お年寄りまでいろいろな方がここに出入りして、用があってもなくても、利用する場が中学校の中にあります。土曜クラブでは、3小学校の学年の違う子供たちが土曜日に集まってきて、地域の方を講師として、アートや天体観測等、学校ではできないようなダイナミックな活動をしています。子育て支援事業もしています。
 一番右側は、私がとても気に入っている写真ですが、中学校の文化祭の直前に、中庭で合唱の練習をしているクラスがありました。古典を読む会の方々が活動が終わった後、お茶を飲みながらふっと振り向いて、「中学生の声っていいわね、久しぶりに聞いたわ。」とおっしゃっていました。こういう光景が毎日のように繰り広げられる空間が学校にある。ニュータウンはなかなか人と人がつながりにくいところで、こういう関係ができるというのがいいなと思っています。コミュニティハウスは地域の縁側だと思っています。縁側を再生していると思っています。
 この施設には、震災後、各地から視察にいらしています。岩手県大槌町では、新校舎の建築が始まりましたが、そこにも井戸端会議室が設置されることになりました。大槌町の教育長以下、地域の方が何度かいらして、こういう空間が必要じゃないかということで設置されました。石巻市の雄勝でも地域交流室が設計図にあり、ふたば未来学園でも交流室を作ると言っています。学校が地域と連携するときに、このような空間が有効だと認識されたようで、私自身、10年前にコミュニティハウスをスタートしたときは想像していなかったことでした。
 次のページは、コミュニティ・スクールとして、学校運営協議会の概要をお示ししました。ここの特色は、毎月開催し、教職員全員が必ず1回はどこかの場面で出席し、懇談によってヒントを得たり、応援してもらえる実感が持てるよう工夫していることです。6月には生徒会本部との懇談もします。委員には学校支援地域本部の人が複数関わって、橋渡しをしています。小学校との連携のために、小学校の校長先生、PTAの方も参加しています。また学校関係者評価も行い、最大の応援団であり、辛口の友人だと思っています。
 次のページで、コミュニティ・スクールと学校支援地域本部の関係ですが、各地でいろいろな関係性を持っていらっしゃると思います。東山田中学校がコミュニティ・スクールとして開校し、その後、学校支援地域本部事業がスタートしたということもありますし、審議するところと、実際に動くというところが連携して、あるときには重なり、あるときにはそれぞれの強みを生かしてということで、この両輪という図を出しています。
 学校と地域を結ぶときに大事なことは、「情報の共有」、「思いの共有」、「アクションの共有」です。「情報の共有」ではホームページや紙も情報を運びますけれども、生きた情報は人が運びます。「思いの共有」というのは、子供像や教育目標もありますが、先ほどから何度も申し上げているように、なかなか一体感がない地域なので、中学校区のシンボルマークを作りました。キャラクターを作ったり、グッズを作ったりという楽しいこともしています。
 「アクションを共有」するためにはコーディネートが必要で、それは地域コーディネーターとともに、教職員のコーディネーター的な人がいればということで、今後は地域連携担当が必要だと思います。
 次に、「情報の共有」の一つとして皆様のお手元にありますが、全国に先駆けて平成18年からコミュニティカレンダーを作成しています。それは私がアメリカで5年間PTAとして関わった公立学校にあったカレンダーで、これによって情報を得るだけではなくて、ボランティアに参画できました。4月1日にスケジュールが決定していなく、夏休み前までにいろんな変更もありますので、変更加筆はホームページでできます。そして、そのホームページの担当は現役世代の卒業生の保護者が中心で、コーディネーターの研修を受けています。このカレンダー作成プロセスでは地域と学校の様々な人がつながります。
 「アクションの共有」の一つとして、中学校のキャリア教育を挙げました。キャリア教育のハンドブック「10年後の社会人」がありますが、コーディネーターたちが作ったものです。1年生では30人の若いプロを招きそれぞれ10人のグループで話を聞きます。その後3回の授業で30秒のCM作りをし、それを演じること、見ること、評価することを一つのプロセスとしています。そのプロセスは、日頃先生方も体験したことがないもので、先生が各クラスで指導することになるため、事前に夏休み中に先生方も同じようにプロから話を聞き、CMを作る研修を実施しています。
 2年生は100か所の事業所に3日間伺い、取材もさせていただき、リクルート社の協力でタウンワークを作成するという授業もしています。
 それから、3年生は、地域の方30人に模擬面接をしていただきます。これはある先生の「模擬面接を地域の方にお願いできないかしら」という一言からつながったもので、学校や子供にとってはもちろんですが、地域の方が学校を知れば知るほど応援したくなるという効果があります。ニュートラルな気持ちで聞いてくださるので、とてもいい子だったというコメントをたくさん寄せてくださいます。中学校は何か問題あると、半日でうわさは地域に広がりますけれども、このようにいいうわさを流してくださる方はこの30人の方だと思っています。
 ここでの特色は、キャリア教育に関わる大人が1月の下旬に必ず交流会をすることです。教職員と地域の方、コーディネーターが合同研修をし、みんなでお茶を飲み、そして、横のつながりを作ります。事業所など地域の方は一生懸命引き受けるけれど、他にどういう事業所が受けているのか、どんな人がどんな思いで関わってくださっているのかというのは全く見えません。先生や私たちはお迎えする立場として、クロークを作ったり、お茶をサーブしたりということをして、この交流会を大事にしています。
 下にリストがありますが、1年間、4月から3月まで各学年と学校支援地域本部がどのような動きをしているかという表です。全員が参加する、学年ごとに打ち合わせるなどがわかります。100か所の事業所は、用務員も含め全教職員で、それぞれ2,3か所を担当して夏休み中に挨拶、打合せに行きます。このように学校全体でプロセスを共有しているということをお伝えしたいと思います。
 次に、コミュニティ・スクールとして10年、どのような成果があったかということですが、学校への理解が深まった。知れば知るほど応援したくなったというのが委員のコメントです。委員には、有識者や元企業人等様々な方がいらっしゃいますので、多彩なアドバイスを学校の運営に反映ができた。教育内容が充実し、教職員の負担が減った例として、キャリア教育で人を探す、企業に交渉する、いろいろなことで負担は減っていると思います。それから、防災を軸に、学校と地域を連携させ、小中一貫教育で推進したいという校長先生たちの意思があり、それを一緒に推進してくることもできました。
 この写真は中学3年生の家庭科で赤ちゃんとお母さんを招いて行った授業です。お母さんの話を聞き、赤ちゃんを抱っこする体験は、地域の幼稚園とも連携しています。春に授業に来てくれた赤ちゃんが、3月卒業間際にもう一度教室に来て、あんよする様子を見ることができます。
 この10年で中学生が地域でのお祭りや防災訓練などのボランティアに出ていくようになりました。また、小学生のときに土曜クラブに参加したり、キャンプに来ていた子が、中学生ではボランティアとなり、大学生になって企画に関わるという、そういう時間をつなげることこそ地域ができると思っています。
 過去にいじめの問題が起こったことがありますが、学校運営協議会が招集され、スクールカウンセラーを交えて、プロジェクトチームが立ち上がりました。
 また、防災をテーマに、地域の活動がゆっくりですけれども、じわじわと広がっています。最初は、そんなことはできないとか、いや、もう今までの防災訓練でいいと思っていた自治会、町内会の方たちもだんだん変わりました。
 学校と地域の連携のポイントは、テーマでつながること。全てでつながる必要はないので、防災やキャリアでつながればいいのではないかしらと思っています。そしてコーディネーターがつなぐということ。もう一つは、イコールパートナーとしてということです。下請でもないし、補完でもないし、私たちと先生方、それから、企業の方、様々な方が関わって一緒に子供たちを育てるということ。コーディネーターは、そのような関係性を伝える立場にもあると思っています。ペコペコお願いするだけではなくて、「一緒に子供を育ててみましょう」とか、「一緒に関わってくださいませんか」という、そういう合い言葉が大切です。これは佐藤委員が、忘れてらっしゃるかもしれませんが、かつて教えてくださった言葉です。
 それから、プロセスを共有するとき、堅苦しい会議は少ないのですが、ミーティングは頻繁にしています。だ円のテーブルがコミュニティハウスにあって、このようにお茶を飲みながら話し合っています。
 お手元に、「学校へ行こう!」というハンドブックがありますが、こういうものは継続性を持って、ぶれないようにして動くために必要です。
 最後に「大人が学ぶ」ということ。異なった文化や、今までのキャリアや価値観等が違う人たちが一緒に協働するためには、やはりそれぞれの強みを生かすとともに、自分を変容させていかなければいけない。新しい価値を受け入れていかなければいけない。仲良くしていかなければいけないという学びがあると思っています。今までの教員養成では「地域とともにある学校」ということは習ってきませんでした。新しい学びです。
 それから、保護者にとっても、中には要求型の人もいて、当事者意識の醸成はとても大事なことだと思っています。同時に地域のボランティアも学ばなければいけないと思っています。善意や熱い思いだけで学校に押し寄せたら、学校はやった振りをするか、貝になるか、どちらかだと思っていますので、やはり地域も学び、学校を理解した上で協働できるようになりたいと思っています。
 企業や市長部局の方も学校とつながること、社会総掛かりで教育に関わるということを学んでいただきたいと思っています。
 最後のページには、「子供のみらいのために」「まちのみらいのために」とありますが、この写真は都筑区で、かつて汚く困った風景の典型だった川です。それを小学校、中学校、企業、町内会、自治会、公園愛護会の思いと汗と資金が一緒になり、このような風景ができました。地域の方にとっても、学校にとっても自慢の風景で、カレンダーにもなりました。学校と地域をむすび、まちを良くしていくプロセスにはたくさんのコーディネート役がいたのではないかと思っています。

【加治佐主査】 
 どうもありがとうございました。
 それでは、先ほどの浅原委員と、今の竹原委員の2つの御報告について、御質問や御意見を受けたいと思います。いかがでしょうか。

【田崎委員】 
 熊本県の田崎でございます。浅原教育長にお尋ねでございます。同じ県の教育委員会として今日のお話というのは、本当に参考になるお話でございまして、私もこれを基にまたいろいろ本県でも取り組んでいきたいと思っていますが、何点かお尋ねです。先ほど「地域協育ネット」の、いわゆる総括コーディネーターのお話があり、これが100%ということでございました。小中学校のコミュニティ・スクールは90%というようなことでのお話があったと思いますが、この「地域協育ネット」の事業、あるいは総括コーディネーターの事業というのは、市町村ではなくて、山口県教委が主体的にされているのかというのが1点と、もう一つ、1ページ目にありますけれども、高校のコミュニティ・スクールというのが「やまぐち型地域連携教育」の推進の中にも入っていますが、高校のコミュニティ・スクール化を今進めておられるのであれば、その辺の進み具合、あるいは、どういう事業をされているのかというのを教えていただければ有り難いと思っています。

【浅原委員】 
 まず「地域協育ネット」についてですが、「地域協育ネット」そのものは、既に100%ですが、統括コーディネーターは現時点で六十数%です。これは配置できる予算は確保しているのですが、コーディネーターが「お金をもらってまではやりたくない」とか、「自分はボランティアでないとやりたくない」とかいろいろな状況があって、十分に進んでいないという状況ではありますが、進める用意はしています。
 それから、この取組は、三つの事業が統合されたときに県が市町村に説明をして、取り組んでいただいているという状況でございます。県が主導して、市町村に理解をしていただいたということでございます。
 それから、2点目の高等学校のコミュニティ・スクールでございますが、現在、高等学校については、日本全体で10校ぐらいではないかと思います。山口県は、現在はありません。高校は地域というのがなかなか難しい。広範囲から学校に通ってきており、通学区域も広い。一つの市町村だけに限らず、県下全域から高校に通っているという中で、地域をどう指定していくかというなかなか難しいところがあります。ただ、今年度から、統廃合等によって一つの市に一つの高校だけしかないところも何校かございます。それを3校指定して、今年度から研究をして、コミュニティ・スクールを導入していきたいと考えています。
 ただ、小中学校のように、どんどん進めていけばいいということは考えておりません。学校の状況によって進めた方がいいところもあるし、地域が広く、つながりを作りにくいところもございますので、その辺は柔軟に対応していきたいと。まずは3校から始めて、研究していきたいと考えている、そういう状況でございます。

【加治佐主査】 
 ありがとうございました。ほか、いかがでしょうか。

【松田副部会長】
 東京学芸大学の松田です。今の統括コーディネーターのことにつきまして、御質問させていただきたいことがございます。三つの事業を統括して行っていくという役割であると伺ったんですけれども、機能を統括していくという仕方と、もう一方で、地域を統括していくという、そういう2通りの統括のイメージがあったと思います。
 私も尼崎市の方で、このようなコーディネーターアドバイザーのような、そういう統括性を持った役割をどう潤滑に果たしていってくれるかということをやっていますが、確かに地方へ行けば行くほど、人が減っていますので、マルチプレーヤー化せざるを得ないという、逆にそういう面もございまして、そういう意味で、このコーディネーターの在り方というのは非常に重要なポイントだと思っています。
 機能を統括するという辺りは現地に根付いて、イメージがしやすいですけれども、逆に、地域を統括するという辺りで、山口県の事例でどのような成果や、課題が出てきているのかを教えていただければと思います。

【浅原委員】 
 はい。地域の機能の統括ということですが、明確にこれを意識してやっているわけではありません。8ページにありますように、コーディネーターの養成については、平成23年から昨年度までの受講者は556名います。そういった中で、やはり中心的になって、その地域をまとめていく、そういう人物にお願いしているということです。明確に機能の統括、地域の統括と仕分けてはいません。

【加治佐主査】 
 お二人の発表については、40分までということにしたいと思います。今、山野委員と、若江委員が手が挙がっているんですが、ほかにおられますか。では、その4人の方にしたいと思いますので、御協力をよろしくお願いします。御質問の方は簡潔にお願いいたします。
 それでは、山野委員、若江委員、平岩委員と井出委員です。では、山野委員からよろしくお願いします。

【山野委員】
 お二方にそれぞれお聞きします。浅原委員には、統括コーディネーターと地域連携担当教員との関係と、10年経験者研修を学校の中でどう位置付けておられるのかということをお聞きしたいと思います。
 それから、竹原委員には、教育委員会との関係、首長部局との関係であるとか、横浜市全体の中での位置を教えていただけたらと思います。

【浅原委員】 
 コミュニティ・スクールの関係で、地域連携担当教員の話と、それから、統括コーディネーターと10年経験者研修の関係ですが、担当教員は、要するに、その学校の中でコミュニティ・スクール等を担当する、あるいは地域連携を担当する教員ということで、校務分掌に位置付けるということです。そういう教員の配置を各校長会等を通して推奨していまして、それと統括コーディネーターが直接関係するわけではありません。それから、10年経験者研修との関係ですが、7ページに初任者、10年経験者研修講座と書いているのは、初任者の段階から、あるいは10年経験者研修においても、リーダーにしても、その全ての段階で学校と地域の連携をしっかりと理解してもらうということです。そのような初任者研修、10年経験者研修、リーダー研修等に学校と地域との連携という講座を盛り込んでおり、キャリアステージに応じて段階的に先生方の理解をしっかりと進めていく、さらには管理職についても研修をしていくことを位置付けているところです。

【竹原委員】
 横浜市では、学校支援・地域連携課が一昨年から指導部の中にでき、生涯学習課に在った研修機能等が移りました。それは、正にこのような動きに対応するためだと思っています。生重委員にも随分お世話になり、コーディネーター養成講座を開催し、約100人が毎年受講しています。ただ、370万都市で100人受けてもすぐに浸透するものではないので、どうフォローアップしていくかというのが課題です。
 方面別に四つの学校教育事務所があり、コーディネーターと連携担当教員との合同研修をしているところもあります。また、コミュニティハウスは市民局と教育委員会が両方で管轄し、予算は市民局から来ていますが、学校と地域の連携という面では教育委員会からのメッセージが届いているところです。

【加治佐主査】 
 それでは、若江委員、お願いします。

【若江委員】
 お二人のお話の中からは、私はベクトルを合わせた連携だということがとても印象に残ったんですが、それが事業であったり、組織であったり、時間であったり、空間であったり、いろんなことだと思うんですけれども、子供の未来、そして、地域の未来のために、連携の核となる、エンジンとなるものは何でしょうか。

【浅原委員】 
 連携というのは、学校と地域、家庭の連携だと思いますが、やはりコーディネーターが人をつなぐという意味で、とても大切だと理解しています。そして、学校の運営という立場からすれば、管理職、特に校長の意識、これが大切だと考えています。端的に言えば、コーディネーターと校長の意識ではないかと考えています。

【若江委員】
 それは先ほどのお話の中でお聞きしたんですけれども、もっとそれを機能させるために一番必要なエンジンとなるものは何でしょうか。

【浅原委員】 
 エンジンということになるかどうか分かりませんが、山口県のコミュニティ・スクールが100%に近くなっているというのは、実は自然になったわけではなくて、例えば、中学校が大変荒れていたという状況がありました。あるいは学力・学習状況調査でも成績がよくない状況がありました。また、小学校の例で言えば、学級王国という状況で、教育委員会が努力してもなかなか変わらない、そういう状況の中で、学校の先生だけに任せていたのではなかなか変わらないということがありました。地域の協力を得ながら学校を変えていきたいという思い。そういう思いが県の教育委員会にあり、コミュニティ・スクールを推進したわけです。
 そして、地域に進めていく中で、皆さんに御理解をしていただいた。特に山口県は、今、『花燃ゆ』をやっていますけれども、昔から教育に熱心な土壌がありました。地域の方も何か学校に協力をしたいが、どうしたらいいか分からないという状況の中で、コミュニティ・スクールで地域との連携という話が出てきたときに、皆さんに協力していただきました。核となるとすれば、その辺りだと思います。

【若江委員】
 ありがとうございます。推進するための、要するに、現状の方針をみんなで共有するということでしょうか。

【浅原委員】 
 そうです。

【若江委員】
 はい。ありがとうございます。竹原委員、いかがでしょうか。

【竹原委員】
 先ほど申し上げた大人が学ぶということが一つだと思っています。もう一つは、リーダーシップを執っている教育委員会や校長先生や地域で広域的に見ている人たちが、物語を語るように伝えていかなければ伝わらないのではないかと思っています。

【若江委員】
 ありがとうございました。

【加治佐主査】 
 それでは、平岩委員、井出委員の順でお願いします。

【平岩委員】
 先ほどから出てくるコーディネーター、この人はいいなと思っている方の具体的なイメージを付けたいんですけど、年齢とか性別とか経歴とか、ある一人のことを思い浮かべながら、こういう感じの方がいいコーディネーターですというのを教えていただけますでしょうか。

【竹原委員】
 昨年、コーディネーター養成講座の募集チラシに、校長先生が推薦するときにどんなイメージの人がいいかというので、漫画を付けました。吹き出しを付けて。例えば、「ボランティアを今までしてきました。」その中からコーディネーターになったというビジネスマン、OBがいます。それから、「PTA活動をしてきました。」長い間、子供や学校や地域のために動いた後、子供が卒業したので、今度はコーディネーターになったというイメージです。それから、山口県ですばらしい方にお会いしたことがあります。かつて老舗旅館でお客様を丁寧に迎えておられたそうです。キャリア教育等でボランティアに行く方をお見送りし、終えられたら、「いかがでしたか。」と声をかけ、とてもすばらしい対応をされていました。このように、コーディネーターには幾つかの典型があると思っています。

【平岩委員】
 ありがとうございます。

【浅原委員】 
 誰を挙げればいいのか分かりませんが、実はある山口市内の小学校のコーディネーターがおられて、その方はもう年齢は60を超えておられると思いますが、元ホテルマンで、そういう人間関係のつながりがいろんなところにあるそうです。そして、PTA、あるいはいろいろ地域の方との連携、調整ができる方です。もちろん若い方もいいのですが、やはり、ある程度地域とのつながりがあって、いろんな方を知っていて、いろんな支援の仕方が分かる。そういう方にお願いするというのが、一つの理想の姿ではないかと思っています。

【平岩委員】 
 ありがとうございました。

【加治佐主査】 
 それでは、最後に井出委員、お願いします。

【井出委員】
 3人の方の質問と重なるんですけど、重ね方をちょっと変えてお尋ねしたいと思います。
 私は教育委員会の事務局ですから、こういった仕組みを維持していく制度を考えていかなくてはならない。そのときにこの間、お話にありましたエンジンというか、エネルギーというか、そういったものを個人の体験とか経験とか資質、能力に依存していると、これはどこかで枯渇する。それから、こういった方法というのは、とかく予算事業化で、単年度でもできるし、あるいは経年でも、中長期という時限でやることもできる。それは金の切れ目が縁の切れ目ということにもなりかねない。そうすると、今までお話しされてきたような仕組みをフィックスしていく方法というのは、身分と役割を明確にして、制度化していくことが次に考えられるわけですね。だけど、この間、長い経験で考えてくると、フィックスした途端に機能しなくなる。制度として固めた途端に、それは制度として動くだけであって、成長しなくなる。つまり、非常に難しい側面を持っているなと。
 今、杉並区でも今後この事業をどういうふうに展開していくか考えているところなんですが、最大の難点はそこなんです。つまり、人材をフィックスする方法として、制度化して、身分や役割を明らかにして定着させていくという方法も一方ではあるわけですね。
 例えば定数の中に入れて、教員で任用するとすれば、それを定数化していくというのが典型的な制度化ですけれども、逆に、教員ではない様々なキャリアを持った方に関わっていただくとすれば、定員化するよりは、自由な形で、言ってみれば、任意の形で雇用関係を結んでおいた方がはるかに有効な働きができるだろうと思いますし、ちょっとその辺の何かアイデアといいますか、考えていることがありましたらお聞かせ願いたいと思います。

【加治佐主査】 
 お二人でよろしいですか。

【井出委員】 
 はい。

【浅原委員】 
 ストレートなお答えになるかどうか分かりませんが、90%といっても、今、取組を始めて、うまく進んでいるところと、これからのところがあるという段階です。例えば、山口県には市が13ありますが、その13市に予算措置をして、CSコンダクターという人材を今年度配置しています。モデル中学校に配置して、中学校と小学校の連携を推進するということでやっています。どんな人材かというと、校長のOBで、自分がコミュニティ・スクールを動かし、大変苦労をした。そして、甘いも酸いも分かっている方を、地域の小学校と中学校のコミュニティ・スクールとその連携を推進するためのコンダクターとして、しっかりと地域連携を推進していこうと思っています。そして、それは3年間続けていきたいと思っていますが、3年間で県内の全ての中学校区をCSコンダクターがカバーできる。そういうシステムを作っていきたいと思っています。
 3年後にどうなるか、まだ分かりませんが、まずは導入期ですから、豊かな経験があり、そういう力を持った人を、指導者として配置し、全体を引っ張っていくという形を今考えているところでございます。

【竹原委員】
 私もどのようにお答えしたらいいか、的確かどうか分かりませんが、アメリカで子供たちを育てたときの経験から気付いたことは、このようなコーディネート役を引き受けたり、ボランティアに関わることが社会的に大きな誇りであるという社会でした。つまり、どこかの企業で肩書があるという以上に、地域でこんなことをしているということが、その人のことをアピールする大きなポイントでした。そういう文化にしていくことが、底力を高めていくのではないかと思っています。
 実はこの同じ時間に、ボランティア講座を受け4年間学校支援ボランティアとして教室に入り、更にコーディネーター研修を受けてコーディネーターになった方が、地域のFMラジオでインタビューを受けています。現役のときからスタートされ、リタイア後の新しい世界を開かれました。そういう人が増えていくことが継続性が高まり、文化にすれば継続していくのではないかと思っています。

【加治佐主査】 
 どうもありがとうございました。今日の3人の御報告、あるいはそれに対する質疑はここまでにしたいと思います。
 これから、今日の合同会議は3時半までの予定ですが、3時25分ぐらいまで、今のお三方の御報告も踏まえつつ、最初に事務局から説明がありましたように、参考資料1の論点にある「時代の変化に伴う学校と地域の在り方」、そして、参考資料2の論点にある「学校と地域の協働の基本的方向性」、それぞれの作業部会の一番上の基本的な検討事項を中心に、できるだけ多くの方から御発言を頂きたいと思います。
 今日は非常にたくさんの委員が参加されています。時間も限られていますので、できるだけ簡潔な御発言をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
 では、佐藤委員、生重委員ですね。

【佐藤委員】 
 浅原委員に対する質問みたいになってしまいますが、一応意見です。先ほど「地域協育ネット」と一体化という話がありまして、これは扱い方を変えると、そういうネット系の仕組みがあるから、もうコミュニティ・スクールは要らないと、そういう方に流れる可能性もあると思います。そのときにいわゆる「地域協育ネット」とコミュニティ・スクールはどう違うのか。あるいは、その魅力をどうアピールしたかというところが、これから学校支援地域本部や、そういう既存の連携の枠組みをコミュニティ・スクールに発展させるときの何か鍵になると。その辺をお聞きしてもよろしいですか。

【加治佐主査】 
 どうぞ。

【浅原委員】 
 地域協育ネットとコミュニティ・スクールの違いについてのお話だったと思いますが、1ページに書いていますように、山口県のコミュニティ・スクールの機能に、学校支援、学校運営、そして、地域貢献を入れています。今まで学校は、例えば、地域に協力をしてくださいという、どちらかというと学校の支援の要請をしていたことが多かったのではないかと思います。もちろん、学校も支援をしていただきたいと思いますし、学校運営の学校評価であるとか、授業評価や授業改善であるとか、いろいろな意味で地域に協力をしていただいています。それに加えて、今度は学校の方が地域にどう貢献ができるか。どういうお役に立てるかという取組もしています。
 前にもお話ししましたが、光市の浅江中学校の廊下に次のような標語が飾ってあります。それは「15歳は地域の担い手」という標語です。要するに、災害支援であるとか、ボランティアであるとか、特にお年寄りの支援であるとか、そのようなことに対して、中学生がどんどん関わっていくということを体験し、それに喜びも感じている。地域の方からいろいろ助けてもらう中で、逆にそれにお返ししなければいけないという気持ちに自然になってくると思うのです。そのように地域協育ネットで、いろいろなネットワークをつくり、地域は学校に協力をしながら、地域ぐるみで子供たちを育んでいく。コミュニティ・スクールでは、地域から支援を受けながら、学びの成果や自発的な活動により、地域にお返しをしていく。そして、子供たちが地域に愛着をもって、「やっぱり地域に住みたい。」「何か地域のために貢献したい。」そういう子供を育てていけることができるのではないかなと考えています。その辺が違うと思っています。

【加治佐主査】 
 生重委員、どうぞ。

【生重委員】
 質問ではなくて何点かあるのですが、この「時代の変化に伴う学校と地域の在り方」のところで。先日、滋賀県に行ってまいりました。滋賀県も地域連携担当教員が制度化され、置かれていました。3分の2ぐらいの方が何をやっていいのか分からないのだろうなというのが、私が受けた実感です。最後に、「今年は何をやっていいか分からないから、早く次の人にバトンを渡そう。」と思う前に、滋賀県は学校支援等をとても熱心にやっているので、熟議をしてもらうよう、先生たちにお願いしました。どういう子供を育てたいのかを地域の中で共有化し、発信していくことから一歩ずつ行い、次の人にバトンを渡してくださいとお願いしてきました。
 全国各地に行って常に感じることは、やはり意欲的な取り組みです。頼まれたら断らない2割から、そこに付いてくる8割をどう増やしていくかです。それによって、動く理解者を増やしていくということです。文化的な価値付けをするのだとしたら、理解者がいない限り、誰が文化だと思うかという話です。それは、エリアによって共有事項をどう住民として自覚化していくかということにほかならないと思っています。今、明治の改革以降の、日本の教育改革の大きなうねりが起こっていて、それを一方的に押し付けられるのではなく、我々が参加して、いいものに変えて、次代に未来の日本を託す教育改革だという理解の下で、それを話し合うしかない、土壌を作るんだということではないかなと思っています。
 何か形にしようとすると、すぐ形骸化するので、常にクラッシュ・アンド・ビルド。それを話し合っていくこと。今、求められていることを常に模索して、住民同士が共にそこを共有していくということではないかと考えます。

【加治佐主査】 
 ありがとうございました。分かりました。
 いかがでしょうか。それでは、初めての方を優先したいと思います。藤田委員。

【藤田(裕)委員】 
 京都市の副市長をしている藤田です。先ほどの発表も踏まえながら、3点ほど意見を述べたいと思います。まず一つは、このテーマにあります「時代の変化に伴う学校」を見たときに、やはり学校が果たす役割、一言で言いましたら、生涯学習社会における学校の存在というものが、機能として抜本的に根底から変わってきているということがあるのではないかと思っています。人生の中での学校教育が占める比重というのが、やはり総体的に著しく小さくなってきている。その意味では、生涯学習社会の中で、親が育っていく、地域住民が育っていくというような拠点として、学校が果たす役割は非常に大きいと思います。
 更に、子供の教育の関係で言うと、学校に在学しているときだけではなく、むしろ卒業してからも学び続ける、育ち続けられるような子供を作っていくということが学校の役割、時代の変化の中での学校です。また、地域で育っていくという意味で、地域との関わり方が変わってきていると思っています。それを保障する、進めていく装置が、まさにコミュニティ・スクールという存在ではないかという認識をしています。
 その意味で、2点あるんですが、先ほどコーディネーターという言葉が、統括コーディネーターを含めて何回か出てきました。先ほどのお話では、コーディネーターというのは全部学校、教育委員会サイドからの存在なり、人材育成のような形になっているような気がするのですが、やはり、コーディネーターの育成なり、役割の認知、発展ということを含めたときに、知事部局、市長部局などが、どのようにコーディネーターの育成なり、活躍の場作りに関わっていくのかという観点が、もう少し論議された方がいいのではないかと思います。従来の、狭い意味での学校の中でのコーディネーターではないコーディネーターの存在を、どこかで検討すべきではないかなと思っています。
 先生方に御質問ですが、学校運営協議会の委員とコーディネーターの関係と言うんでしょうか。私は、学校運営協議会の委員というのは、まさに、そういうコーディネーター能力を持っているような人、あるいはそのコーディネーターができるような人。各学校では学校運営協議会の委員として中心的な役割を果たす、あるいは経験をした方がコーディネーターになるという一体性があった方がいいと思います。しかし、今までの御説明を聞いている限りでは、学校運営協議会の委員とは別に、コーディネーターという存在があるように見えましたので、その辺り、融合されている例とかがありましたら、逆に教えていただきたいと思いました。
 最後に一つだけ。文科省に対してもお願いですが、学校の役割の中で、やはり教員の多忙化というのは、やはり目を覆う状況になっているのではないかと思っています。廣瀬先生の提案にありましたが、校務分掌に位置付けるという前提に、それを保障できるような教員体制、教員確保については、是非、また御賢察いただくことをお願いしたいと思っています。

【加治佐主査】 
 分かりました。
 2番目の運営協議会の委員とコーディネーターの違い、あるいは一体化について、何かお聞きしたいということですが、これはお二人の委員への質問ですか。

【藤田(裕)委員】 
 もし、具体的な、「こうですよ。」というのがありましたら。ほかの委員でも結構ですが。

【加治佐主査】 
 では、簡潔にお願いします。

【浅原委員】 
 学校運営協議会の委員とコーディネーターの関係ですが、全てというわけではありませんが、例えば、山口県で先進的な取組をしている萩東中学校は、本当にいいコミュニティ・スクールができていると思います。ここはコーディネーターがいません。なぜいないかというと、学校運営協議会の委員で、先ほど申し上げたコーディネーターの研修講座を受けている方がたくさんおられて、コーディネーターがいなくても、その役割を果たせるという学校運営協議会の委員がおられるので、付いていないという状況です。だから、まだ統括コーディネーターの配置率が64%と言いましたが、そのように学校運営協議会の委員とコーディネーターが重なっている。そのような方もおられるというのが実態であります。

【竹原委員】
 東山田中学校では、コーディネーターの何人かが学校運営協議会の委員をしています。それによって、審議したものが実際に動くようになっています。

【加治佐主査】 
 それでは、若江委員。

【若江委員】
 今日の検討事項にあります一つ目の時代の変化に伴う学校と地域の在り方のところと、二つ目のこれからのコミュニティ・スクールの在り方の上の丸について、3人の委員の方々の御提言で、いろんなことが明確に御提示を頂けたと思っているんですが、二つ目のところのコミュニティ・スクールの在り方について、以下の観点も含めて、どのように考えるかという、校長のリーダーシップの発揮、それと、その四つあるんですが、私は一番の問題は、観点を明確にするというよりも、それぞれがどのように、それぞれの本質をどう理解させるか、どうつないでいくかというふうなことがすごく重要だと思いますので、先ほどの生重委員のお話にありましたように、それを理解していくためのプロセス。ここに本当に大きなパワーを注(そそ)がなければいけないのではないかと感じています。

【加治佐主査】 
 ありがとうございます。私の言い方がよろしくなかったのかもしれませんが、今日は特に参考資料の1であれば、「時代の変化に伴う学校と地域の在り方」です。こちらでお願いします。

【若江委員】 
 失礼いたしました。

【加治佐主査】 
 次回以降、コミュニティ・スクールの在り方を検討いたします。今の意見も参考にさせていただきたいと思います。
 いかがでしょうか。それでは、早川委員、どうぞ。

【早川委員】 
 岐阜市教育委員会の早川でございます。私は4年前に、教育長として校長先生方に、この3年以内で、コミュニティ・スクールにしてくださいとお願いしました。あの頃は3.11があった直後で、地域の絆の大切さなど、ソーシャルキャピタルの論議がなされていて、チャンスだと思いました。反対もあったのは事実ですが、そのときに思ったのは、コミュニティ・スクールを難しい仕組みにしてはいけないということです。それぞれの地域と学校との関わりの中で生み出す仕組みであります。文部科学省の施策に対して、我々はよく何々県型とか何々市型というような言い方をして、その施策を自分の地域にあったようにあつらえ直して、やっているわけです。それは、文部科学省の意図をきちんと踏まえた上で、文部科学省が例示したそのことに合わせようとするのではなく、そのエッセンスを取って、自分なりの県や市や学校でその意思を伝えていくというのが何々市型、何々県型というやり方です。それは、その地域のやり方の主体性を喚起することになると思います。コミュニティ・スクールの取組はそうであるべきです。
 いろいろな先進的な事例は大変参考になりますし、私もすばらしいと思います。竹原委員のようなコーディネーターがいらっしゃれば、本当にどこもすばらしいことになると思うのです。しかし、一番我々が教育行政をやっていく上で肝だと思うのは、地域に影響力を与えることができる校長かどうかということです。その地域がすばらしいということももちろんありますが、その校長が転勤したら、次の学校でまたすばらしいコミュニティ・スクールを作るという事実はたくさんあるわけでございまして、校長になってくれる任用条件の中に、地域に影響力を発揮できる校長であるということは、これからはどうしても重要なことだと思います。
 地域を教育の場として、地域の教育者として、その地域の方々の教育力を促していくということは、困難な家庭の子供たちにも影響を与えることができますから、是非、そこが重要なところだと私は考えています。

【加治佐主査】 
 ありがとうございました。
 それでは、松田委員、どうぞ。

【松田副部会長】
 今までのお話を伺っていて、結局は、時代の変化とともにある学校という議題になっていますけれども、学校が変化しない部分というのは何かと考えましたら、やはり学びというものを支えているという、そういう公的な組織だという、この学びというものに関して、実は今の社会が弱くなっていて、求められている学びというのは非常に深いし、長いんですけれども、それに対応できなくなっているというようなところが背景としてあるのではないかと思います。
 基本、学ぶということは、出会うということとイコールなのではないかと思うんですけれども、そういうことで言うと、他者性とか異質性というものの中にないと、学びというのはそもそも成立しないということがあると思うんですけれども、そういう意味で、学校というのは本来そういう性質を持つ場であったにも関わらず、それが同質化してきていると。実は一方で社会教育も本来は異質性に非常にあふれた場だったのに、社会教育においてもその内容が同質化してきている。ですから、両方において異質性というものが求められているからこそ、この連携や協働していかないといけないのではないかという気運が高まっているというような見方もできるのではないかと思います。
 主体性と協働性というのが一番重要に思われるわけですけれども、そういうものは本来本当に異質なものとの出会いとか他者との関係の中で育つものですので、そういうことで考えたときに、本来、学校は、やりたくないことを教員になったらさせる場所ですし、学校教員というのは、基本的には同質な価値観を持っていますし、言葉を大事にして扱うのに対して、地域というのは、基本的にやりたいことをするという形で逆に関わられますし、そもそもは異質な存在ですし、また、具体的で、構造が非常に重視されている場ですね。そういうお互いの違いというものが、実は響き合う形で協働ができないと厳しくて、それがどうしてもどちらかに巻き込まれたり、巻き込まされたりという形になっていくので、その差配をする人。そこをうまくあんばいしていける人というものが多分コーディネーターという形で求められているのではないかと思います。

【加治佐主査】 
 では、山野委員、どうぞ。

【山野委員】
 3人の皆様の発表で、やはりプロセスを共有する、松田副部会長のお話のように、市長部局であったり、地域住民であったり、それから、学校教育を中心とする人たちがいろいろな形でアクターをそれぞれ変えながら、プロセスを共有するということが非常に重要ではないかと思いました。その例として、横浜市の、これは本当に丁寧なプロセスが書かれていて、すごく分かりやすい。こういったミクロな事例をイメージしながら、これをマクロに作っていくことが、協働の在り方なのではないかなと思いました。

【加治佐主査】 
 はい。それでは、関委員よろしくお願いします。

【関委員】
 私は今日の話を聞きながら、従来の社会教育、例えば公民館で取り組んできた地域教育が基盤にまだまだ残っている地域かなと、自分の地域のことを思います。先ほど竹原委員の横浜市の事例の中では、学校の中に公民館的な機能が組み込まれているような地域、それが東山田ではないかなと思うんです。従来、本当は地域の社会関係資本を今まで築いてきた公民館のような土台がまだ残っているところであれば、そこと学校をうまく結びつけていくような機能をコーディネーターに求めていくべきではないかと思います。
 今から先、この中で地域創生に向けた学校を核とした地域づくりの在り方という提示がこの中になされていますけれども、学校教育の中にあえて今までの社会教育的な機能をこれからもっと拡充して、学校の中に地域の人がもっと入っていくような、あるいは学校が大人の学びの場になるような方向をこれから前面に押し立てていくのかどうか。
 これから先も社会教育と学校教育の立ち位置。社会教育がだんだん弱くなってきているような感覚を私も持っていますけれども、そこも強めていくような機能が今から本当の意味の地域の力を付けていく方向性ではないかと思っています。

【加治佐主査】 
 あと20分ぐらいの時間で是非発言したいという方は、名札を立てておいていただけますか。ほかの方も名札の数に応じて、自分の発言時間を調整していただけると有り難いです。
 それでは、順番は、浦崎委員、貞広委員、牧野委員、永山委員、そして田崎委員。そういう順番で進めたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

【浦崎委員】
 岐阜県立可児高等学校の教員をしている浦崎と申します。
 大局的に物事を考えないといけない、具体的には明治に遡って考える必要があると思っています。学校が入る前、地域は、次世代育成機能を持っていた。学校はなくても、次世代を育成できたという時代があったという歴史的事実に遡る必要があると思っています。そして、その上に学校を取り入れたから日本はここまで繁栄してきたと考えています。ところが、近年になって、地域から次世代育成機能が失われてしまった。それで連携の必要性が叫ばれるようになってきたんだという経緯を確認する必要があると思います。
 これからはいわゆる地域と公助、新たな関係性を模索するということなんですけれども、そのときにはまずは共助。自助、共助、公助のうちの共助の再生をしないと、新たなる協働というのはできないのではないかという見解を持っています。私も一教員です。実際、学校にはすごく負担が掛かっています。これは市役所の方々とも話をしても全く同じで、いわゆる公的機関、公助に今、過度な負担が掛かっている時代だと認識をしています。
 そこで、市役所などの方々に対して共助を再生していきましょうという、メッセージを発しますと、是非一緒にやっていきましょうという反応が返ってまいります。ですから、まず共助の再生ということになろうかと思います。そのときに教育課題としては、大学入試改革、地方創生では人口流出という問題がありますけれども、これは待ったなしですので、これを非常に速いテンポでやっていこうと思ったら、実は高校生、特に普通科の進学校に在籍する生徒を、積極的に地域に送り出す取組を早急に進めていかざるを得ないと考えています。そのとき、市町村の首長部局と都道府県立学校、あるいは都道府県教育委員会との連携が大きな鍵になると考えています。高校生を地域に出すことによって、地域に対する当事者意識は間違いなく高まります。このような経験を踏まえた上で、地域のために専門性を身に付けようと大学に進学すれば、今、大学で問題になっている種々の問題も緩和されると考えています。
 今、アクティブ・ラーニングの重要性が叫ばれていますが、地域に出ていくと、嫌でもアクティブ・ラーニングをせざるを得ない。つまり、地域でアクティブ・ラーニングを学ぶことによって、高校におけるアクティブ・ラーニングの導入も円滑化するという見解を持っているところです。

【加治佐主査】 
 ありがとうございました。
 それでは、貞広委員。

【貞広委員】 
 千葉大学の貞広と申します。二つ、意見と質問を申し上げたいと思います。一つは、こうした会議でいろいろな知恵が出され、地域とともにある学校の新しいやり方というのが出てきて全国に広がっていくと思うのですが、そのときにそれがいいものになればなるほど、実際に汗をかいて、そこに担い手になりたくても時間的になれない人たちがどんどん周辺部分に追いやられていき、例えば、現役世代の方々です。先ほどコーディネーターはどんな方ですか、というイメージの話が出てきたときに、リタイアされた方であるとか、女性であるとか、そういう像が出てきたように思うのです。では、そうではない人たちがますますその地域の外の周辺に追いやられていくのではないかという危惧を持っています。
 社会総掛かりで育てる、又はその教育の担い手となっていくということがすごく社会的に評価されることだという文化を作り出していくのであれば、担い手になりたくてもなれない、物理的には担い手になれない人たちが巻き込まれて、かつ、達成感を得られるような仕組みも併せて考えていかないと、一部の地域を地域と呼称するようになるのではないかと思います。ここで本当に検討するべきことではないかもしれませんが、目配りをしないと、社会全体でというのが、本当は全体ではない社会を示すようになってしまうのかなと思いました。これが意見です。
 質問のような意見のようなものがもう一つ。これはコーディネーターの継続性に関わってですが、コーディネーターもずっとやっていると、マンネリ化していったり、ルーティーンになってしまったりする。その一方で、校長先生が異動されるということを考えると、コーディネーターの方には、ずっと継続していっていただかなければいけないという問題があり、その辺りをどのようにバランスをとられているのか、していったらいいのかなというところを考えます。
 あともう一つは、このコーディネーターの方々の研修をされているということですが、専門性があるということのであれば、必ずしも住民代表じゃなくてもいいわけです。自分の住んでいる地域とは全く別の地域でコーディネートをしてもいいかもしれないけれど、やはりそこには住民に対する助勢というのが必要なのか、その辺で、何か御意見がありましたらお聞かせいただければと思います。

【加治佐主査】 
 お二人の方に。

【貞広委員】 
 はい。お聞かせいただきたいと思います。

【浅原委員】 
 なかなか答えにくいのですが、コーディネーターの継続性のことですが、ずっとやるとマンネリ化する。しかし、校長が替われば、というお話がありましたが、確かにそうだろうとは思います。ただ、コーディネーターうんぬんということもあるんですが、校長が替わって、学校運営が変わるということは絶対に避けたいと思っています。人が替われば、今までやっていたことができなくなる。それは、業務の継続性からどうしても難しいと思いますので、よく人に付くプログラム、学校に付くプログラム、地域に付くプログラムというような言い方もしますが、是非この取組をコーディネーター一人に頼むのではなく、その地域で学校を支えるという形で。校長先生が替わっても、その地域がある程度固まっている。変更ができない。変更ないというか、学校が少々変わっても、地域がしっかりとしていれば、子供たちの教育に揺るぎないものが与えられるというような形に是非していきたいと思っています。コーディネーターが替わるうんぬんというのは、何とも言えませんが、そのような考えを持っています。

【竹原委員】
 二つの質問の中で、最初に担い手に偏りがあるかもしれないという話でしたが、私たちのところでは、ささやかですが、IT関係の方の現役世代が、月1回のミーティングだけ参加して、あとは在宅で活動してくれる方たちもいます。ただ、裾野はそこまで広がっていません。そこを広げるためには、働き方、ワーク・ライフ・バランスの検討が必要です。今、育児に関してはかなりの社会的な動きがありますが、地域活動やボランティア活動をすることがやりたくてもなかなかできない。PTA会長を引き受ける男性が今ニュータウンでは増えてきました。三、四十代のお父さんです。手を挙げて、やられている方もだんだん増えてきましたが、まだやりたくてもできない層がいると思いますので、コーディネートの工夫も必要ですが、社会全体の働き方など、仕組みの変革がなければいけないのではないかと思っています。
 それから、二つ目のコーディネーターの継続性ということで、各学校区や地域で一人ということもありますが、コーディネーターが複数配置されていると、徐々に新しい人にバトンタッチをすることもでき、継続性が生まれてくると思っています。
 もう一つ、コーディネーターを発掘していく目がなければいけない。「私はコーディネーターです。」と、最初から言う人はいません。コーディネートの資質がある人、学校と地域の連携に興味があって、熱意があって、学ぶ気がある人を発掘するには、校長先生にその目がなければいけないし、地域にもそういう視点がなければいけないと思っています。

【加治佐主査】 
 ありがとうございました。
 それでは、永山委員、牧野委員、田崎委員、そして、平岩委員の順番でいきたいと思います。
 この4人でよろしいですか。どうしても御発言したいということであれば、今の時点で申し出ていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 それでは、永山委員、お願いします。

【永山委員】
 東京の世田谷区立塚戸小学校の永山です。世田谷区では、全小中学校の約100校がコミュニティ・スクールです。地域や学校を支えてくれているメンバーを見ると、何らかの形でPTA、役員、それから、おやじの会に所属しており、そういう人たちは子供が卒業した後、例えば地域の青少年委員や地域の何とか委員をやり、町会とつながっていくんです。そう考えると、今いるPTA、おやじの会を育てていくと言うんでしょうか。学校に関わってもらうような努力を学校がしていくことが、将来の地域を支える人材育成になるのかなと思います。おやじの会がイベントをするときには、そのおやじさんの子供が付いてくるんですね。そういう大人の姿を見ている子供たちが、また将来の地域を支える人材になるんだと思いました。
 それから、地域や学校を支えるコーディネーターには、学校の状況がよく分かる人材が現場としてはいいんです。教員の思いとコーディネーターの思いが違ってしまい、かえって地域連携が苦痛になってしまう教員がいる。うまく行っているときは教員が助かる。その違いは何かというと、コーディネーターが学校の内情をよく知っているかどうか。そこに限ると思います。
 教員は本当に忙しいんです。学校で一番困るのは、教員に倒れられること。これはもうガタガタになってしまうので、何とか休みはとってほしい。でも、地域連携を考えると、土日に出なければいけない。そこのはざ間で学校現場はいろいろ工夫をしているところです。そこで管理職の出番で、教員が地域に出ているように、管理職が地域にアピールしていく努力はしていかなければいけないと思っています。

【加治佐主査】 
 ありがとうございました。
 それでは、牧野委員、お願いします。

【牧野委員】
 少し違う議論になるかもしれませんけれども、私は少し議論の射程を伸ばすのかどうかということも考える必要があるだろうと思っています。今日の議論は、今現在どうするかという議論に近いと思うのですが、例えば学校を核とした地域創生という議論をする場合に、今後の日本の社会のどの辺りまで射程を伸ばして議論するのかといったことが課題になるのではないかと思います。
 例えば、私は今、社会教育や生涯学習の他に高齢社会の問題にも関わっていますが、現在、高齢化率26%で、あと15年で3割を超え、あと35年で4割を超えます。2060年には、総人口はこのまま減っていきますと、8,700万人ぐらいになって、そのうち現在の医療水準ですと、要介護の方が850万人になります。大体全人口の十人に一人が要介護の時代がやってくるわけです。それに対して、日本創成会議が出したような地方消滅の議論ですとか、現代のうば捨てみたいな議論が出てくるわけですけれども、そういう議論を含めて、高齢社会の抱える課題を地域社会でどう解決して、新たな社会をつくっていくのかという議論をせざるを得ない状態になっているのだと思います。
 しかも、その2060年には、子供(統計上は0歳から14歳)の数は700万人ほどになりますので、実は要介護の人よりも子供の数の方が少ない時代がやってくるわけです。こういう日本社会を、これからどう考えていくのか。そこでは、地域コミュニティをどう強くしていくのかということが課題になってくるだろうと思います。しかも、現在子供の貧困率は約16%から17%ぐらいですか。しかも、片親家庭の子供の5割が相対的貧困だといわれている状況で、どうやって子供を支え、育てていく基盤を形成していくのかといったことが問われているのだろうと思います。更に今、世代間競争、世代間格差と言われますけれども、実は高齢の方々も2割は相対的貧困なのです。
 こういう状況に直面して、学校を核にした地域コミュニティの活性化という議論をせざるを得なくなっているのだろうと受け止めているわけですが、その中心は、こういう状況下で、学校を核にして子供たちをどう育てていくのかということなのだと思います。それは現在の子供をどうするのかということと同時に、将来の主権者をどうするかという議論につながらざるを得ないだろうと思います。
 そのときに例えば、少し抽象的な議論になりますが、いわゆる個別意思といいますか、各個人のニーズを重ねたものが社会の総意だという形で議論をしていくのか。又は、いわゆる一般意思を探りながら、地域を担っていくような人材、つまり人々の一般意思を組織化して、ある種の権力構造をつくり、それを担っていく、つまり住民自治を鍛えていく人材を育成するのか。こういうことも議論をせざるを得なくなっているのだろうと思います。つまり、子供たち自身が将来の担い手として地域を経営できるような力をどう付けていくのかということを議論するのと同時に、地域基盤つまり生活基盤を確かなものにしつつ、そこに新しい経済をどう創出していくのかということを考えなければいけない。子供たちが将来どういう職に就くかということは、今もう誰も予測ができなくなっているわけですから、子供たちに社会総掛かりで関わりつつ、彼らがいろいろな社会体験をして、彼ら自身が自分の人生を設計し、創造できるような力をつけていくのをどう支えるのかという議論もしていかざるを得ないと思うのです。
 ただ、私が少し危惧しますのは、地域コミュニティをベースにして、学校を核にしてという議論になりますと、下手をすると、いわば学校を通した社会管理的な、住民動員的な議論になっていかざるを得ないところがあるので、そこをどう回避しながら、住民のネットワークを張り、各自治体の団体自治を鍛えていくのか。そして、その基盤である住民自治をどう豊かに形成するのかといったことを、やはり議論せざるを得ないのだろうと思います。こうしたことも、ここの場で、学校を中心にして子供のことを考えながら、議論していく必要があるのではないかと考えています。

【加治佐主査】 
 ありがとうございました。
 田崎委員、お願いします。

【田崎委員】 
 地方の現場の話をさせていただくと、過疎地域を含めて、いわゆる地方創生の話が出ています。この地方創生の流れにどう乗って、そのような過疎地域が活性化していくかという話が今進んでいます。ある意味「まち・ひと・しごと」というこの流れの中で、やはり学校を核として、地域作りの核として、今がチャンスですよと。そういう形で進めていくに当たって、教育委員会制度も変わり、総合教育会議もできて、市町村の首長とそのような話し合う場もできているのですから、そのような形の中で各市町村が作るビジョンや戦略の中に、この学校を核とした地域作りということをしっかり入れていってくださいと、私も各市町村の教育長に話をしています。
 ただ、各市町村で心配されるのが、今、子供が減っているというのが現実としてあり、これからも減っていく。学校の統廃合というのも一方にあります。そのような中で、地域を核とした、学校を核とした地域作りという形で大きく出していくと、そちらの話と矛盾しますので、あまりそれを声高に言えないという意見もあります。
 私自身も県立学校の統廃合をして、この3月に最終的な案を出したのですが、地元のまちからは、本当に悪人のように言われました。「教育長が言っていることは、いわゆる地方創生の流れに逆行している。」というような、そういう流れが一方にあります。ですから、地方創生、地域作りの核として学校があってというのは非常に理想的でいいのですが、一方で、1学級40人など、一定の規模の生徒がいないと、学校としては問題だとか。その辺りも大きく変えていくようなことをやっていかないと、何か議論が理想論だけで終わるように思います。現場では、本当に子供が少なくなって、統廃合とかが一方にあるものですから、そのような視点でも、何か考えていただければと思っています。

【加治佐主査】 
 分かりました。
 では、最後に平岩委員。

【平岩委員】
 地域とともにある学校というのは一体どんな学校なんだろうと想像をしました。例えば地域の人が学校に延べ年間1,000回通っている学校があったときに、10人が100回行って1,000回というのと、1,000人が1回行って1,000回。これはどちらが地域に支えられているのかというと、どうも後者の方なのではないかと思うわけです。1,000人が1回ずつ何かしらのお手伝いに学校に行きましたと。地域とともにある学校と言っていても、やはり限られた人だけが熱心にやっていて、あとの人は蚊帳の外。先ほどどなたかおっしゃっていたような現役世代の人は全然関係ないとかですね。そういうのは少し違うのかなと思うと、一度でもどうしたら足を運んでくれるかを考えていくことが一つの手だと思います。
 私はずっと放課後の活動をやっているんですけれど、一度でも学校に来ていただくと、ものすごい当事者意識が湧いて、町を歩く子の顔が違って見えて、何か我が子のように思えてくるわけです。ですから、一度でもどうしたら来ていただけるかと考えると、一つは、放課後や土曜日を活用するというのは絶対にあるべき視点だと思いました。それからもう一つが、大人が学びの場として学校を活用する。夕方までは子供たちが使って、夜、学校に入れる場所を作ってあげて、そこで大人も学ぶ場になるというのが恐らく一度足を運んでいただくのにはいいだろうと。そして、当事者意識を持った人たちにいろいろなことを投げ掛けていくと、自分たちもこの当事者だと思って乗ってくる。
 つまり、学校という場所の日中の活用、夕方の活用、夜の活用、この時間にはこんなことをしたらいいのではないかと、そういう視点の議論があると、また一つ活性化してくると思いました。

【加治佐主査】 
 たくさんの御意見どうもありがとうございました。地域と学校の関係について、いろいろな変化を踏まえた、あるいは地域性を踏まえた新しい意見や視点がたくさん出たのではないかと思います。今後の議論や報告のまとめにつながっていく内容ではなかったかと思います。
 それでは、皆様の御意見を踏まえまして、また次回以降、議論を進めてまいりたいと思っています。また、必要に応じてこの合同会議も開催することになっています。
 次回以降については、事務局からお願いいたします。

【廣田参事官補佐】 
 失礼いたします。本日、第2回の合同会議という形を取らせていただきました。お手元の資料4ですが、第3回目は、それぞれ作業部会、部会において御議論いただきます。初中局の作業部会は7月3日、学校地域協働部会は7月2日です。よろしくお願いします。
 なお、第4回につきましては、合同会議という形で議論をさせていただきたいと思います。どうぞ、よろしくお願いいたします。

【加治佐主査】 
 それでは、これで終わりたいと思います。ありがとうございました。

 ―― 了 ――

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