参考資料3-2 これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について(中間まとめ(骨子案))

平成27年6月23日
教育課程企画特別部会

目次

0.はじめに
1.検討の背景
2.これからの時代の教員に求められる資質能力
3.教員の養成・採用・研修に関する課題
 (1)教員の養成・採用・研修を通じた課題
 (2)教員研修に関する課題
 (3)教員採用に関する課題
 (4)教員養成に関する課題
 (5)教員免許制度に関する課題
4.改革の具体的な方向性
 (1)教員養成・採用・研修を通じた改革の具体的な方向性
  1.教員育成指標及び研修指針の策定
  2.教員育成協議会(仮称)の創設
  3.新学習指導要領の検討を踏まえた養成・研修の在り方
 (2)教員研修に関する改革の具体的な方向性
  1.継続的な研修の推進
  2.新たな教育課題への対応
  3.初任者研修の改革
  4.十年経験者研修の改革
  5.独立行政法人教員研修センターの役割の在り方の検討
 (3)教員採用に関する改革の具体的な方向性
  1.特別免許状制度の活用等による多様な人材の確保
  2.円滑な入職のための取組
  3.教員採用試験における共通問題の作成に関する検討
 (4)教員養成に関する改革の具体的な方向性
  1.新たな教育課題への対応
  2.学校インターンシップの導入
  3.教職課程の質の保証・向上
 (5)教員免許制度に関する改革の具体的な方向性
  1.中学校及び高等学校の教員免許状所有者による小学校での活動範囲の拡大
  2.教員の教職経験を考慮した免許状併有の促進
  3.特別免許状制度の手続等の改善
  4.特別支援学校教諭等免許状の保有率促進
 (6)教員の資質能力の高度化に関する改革の具体的な方向性
  1.拡充期を迎えた教職大学院の在り方
  2.教職大学院等における履修証明制度の活用等による教員の資質能力の高度化

0.はじめに

0-1

  • 平成26年7月、中央教育審議会において「これからの学校教育を担う教職員やチームとしての学校の在り方について」の諮問が行われた。諮問においては、これからの教育を担う教員に求められる指導力を、教員の専門性の中に明確に位置づけ、全ての教員がその指導力を身に付けることができるようにするため、教員養成・採用・研修の接続を重視して見直し、再構築するための方策について検討する必要があるとされた。

0-2

  • 本諮問については、初等中等教育分科会に付託され、教員養成部会において審議を行ってきた。同部会教員の養成・採用・研修の改善に関するワーキンググループにおける論点整理(平成26年7月)等を踏まえつつ、今般、その議論の状況を中間まとめとしてとりまとめたところである。

1.検討の背景

1-1

  • 知識基盤社会の到来やグローバル化、少子高齢化が進展する中、我が国の社会は大きく変化してきた。我が国が将来に向けてさらに発展し繁栄を維持していくためには、様々な分野での質の高い人材の育成が不可欠であり、学校教育の充実こそが我が国の将来を左右する。

1-2

  • 教員の資質能力の向上については、教育基本法第9条に規定されている通り、教員自身の責務であるとともに、国、教育委員会、学校などの関係者にとっても重要な責務である。

1-3

  • 一方、近年の教員の大量退職、大量採用の影響により、必ずしもかつてのように先輩教員から新人教員への知識・技能の伝承がうまく図られていない状況があるといった指摘もある。

1-4

  • 平成24年8月の中央教育審議会答申では、「学び続ける教員像」の確立が提言されたところ。

1-5

  • こうした中、内閣総理大臣が主催する教育再生実行会議の第5次提言(平成26年7月)においては、自ら学び続ける強い意志を備えた質の高い教師を確保する必要があること、第7次提言(平成27年5月)においては、教育の革新を実践できる人材を教師として得るための養成・採用・研修の改革を進める必要があることが提言されている。

1-6

  • また、現在、初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について審議を行っており、その中で、課題の発見と解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習(いわゆる「アクティブ・ラーニング」)の充実や、そのための指導の方法等を充実させていく必要があるとの方向で議論が進められている。

2.これからの時代の教員に求められる資質能力

2-1

  • 新しい時代に必要な資質・能力の育成、そのためのアクティブ・ラーニングの充実や小学校における外国語、ICTの活用、学校間連携など、学校を取り巻く課題は多種多様である。

2-2

  • このような中、学校は、「チーム学校」の考え方のもと地域の様々な専門性を持つ人材を効果的に活用しつつ、教員とこれらの者がチームを組んで組織的に諸課題に対応するとともに、保護者や地域の力を学校運営に生かしていくことが必要である。また、教員は、校内研修、校外研修など様々な研修の機会を活用したり自主的な学習を積み重ねたりしながら、これらの課題に対応できる力を身に付けるとともに、チームの一員として組織的、協働的に諸課題の解決のために取り組む力を育成していくことが求められる。 

2-3

  • また、主体的に学び続ける教員の教職生活を支えるため、教員を高度専門職として捉え、基礎的な知識や技能はもとより、従来から提言されてきた資質や能力、例えば使命感や責任感、教育的愛情、教科や教職に関する専門的知識、実践的指導力、総合的人間力等については、引き続き教員に求められるものである。

3.教員の養成・採用・研修に関する課題

(1)教員の養成・採用・研修を通じた課題

(1)-1

  • 教員の養成・採用・研修の各段階において、教職大学院を含む大学等と教育委員会の連携が図られていくことが望ましい。国、教育委員会、教職大学院、大学、学校等の位置付けなどを明確化した具体的な制度的枠組みが必要である。

(1)-2

  • このため、例えば、養成段階と採用・研修段階の両段階を通じて、養成や研修を計画・実施する際の基軸となるべき教員の育成指標を協働して作成するなど、連携を強化する具体的な制度を提案することが必要である。

(1)-3

  • また、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校等のそれぞれの学校種において、課題や専門性は異なるものであり、それらを踏まえ制度設計を進めていくことが重要である。

(2)教員研修に関する課題

(2)-1

  • 学校における業務の精選や効率化、教職員の役割分担の見直しや専門家の活用、組織体制の強化、地域との連携などチームとしての学校の力の向上を図ることによって教員研修等のための機会を確保することが必要である。

(2)-2

  • また、研修の実施主体が有機的連携を図りながら、教員のキャリアの段階に応じ、教員のニーズも踏まえた研修を効果的・効率的に行うことが必要である。この際、法定研修である初任者研修、十年経験者研修については、その実施状況や教育委員会、学校現場のニーズを把握し、より効果的な研修となるよう国としても制度や運用の見直しを図る。

(2)-3

  • さらに、新たな教育課題に対応した研修プログラムの開発と全国的な普及、研修指導者の育成、教育センターや学校内での研修体制の充実など、学校内外の研修を一層効果的・効率的に行うための体制整備も必要である。

(2)-4

  • また、公立学校の教員はもとより、国立・私立の学校の教員に対する研修を充実するための方策を検討する必要がある。

(3)教員採用に関する課題

(3)-1

  • 都道府県教育委員会等は、求める教員像を明確かつ具体的に示し、当該教員像に合致する者の採用に適した選考方法の工夫を行う取組を進める。

(3)-2

  • 都道府県教育委員会等においては、採用選考試験の作成が大きな負担になっているとの声も聞かれるところであり、多様で多面的な選考方法を促進するためにも、各教育委員会が実施する採用選考試験への支援方策が必要であるのではないかとの指摘がある。

(4)教員養成に関する課題

(4)-1

  • 教員としての職能成長が、教職生活全体を通じて行われるものであることを踏まえ、養成段階は、「教員となる際に必要な基礎的・基盤的な学修」を行う段階であることを改めて認識することが重要である。

(4)-2

  • アクティブ・ラーニングに関する指導、ICTを用いた指導法、特別支援教育の推進、小学校における外国語活動、道徳教育等、新たな教育課題に対応した教員養成が必要である。

(4)-3

  •  また、教員養成課程を有する大学学部の附属学校を積極的に活用するなど、実践的指導力の基礎の育成に資するとともに教職課程の学生に自らの教員としての適性を考えさせるための機会として、学校現場や教職に関する実際を体験させる機会を充実させることが必要である。

(4)-4

  • 教員養成上の様々な課題に対応し、各大学の個性や特色を発揮した教員養成を行うためには、養成段階で真に必要な基礎力を明確にした上で、各大学の学部等で開設される科目全体の中で総合的に教員の養成を図るという視点からの取組が必要である。

(4)-5

  • 教職課程の質保証・向上のためには、教職課程実地視察以外にも、事後評価の実施や全学的に教職課程を統括する組織の整備を促進していくことが必要である。

(4)-6

  • さらに、学校を取り巻く様々な教育課題に対応できる教員の養成を行えるよう、教職課程の科目を担当する教員の意識改革や資質能力の向上も重要である。

(5)教員免許制度に関する課題

(5)-1

  • 教員免許状については、幼保連携型認定こども園制度の改善や学制改革の検討が進められる中、学校種横断的な免許状の創設等の必要性を指摘する意見がある一方、当該免許状の有効性への疑問や免許状制度の一層の複雑化、学生や大学への負担の増加等の課題も指摘されている。

(5)-2

  • これらの課題については、教員養成部会において今後免許状制度の総合的な在り方について検討する中で議論を行う。

(5)-3

  • 一方、義務教育学校制度の創設や学校現場における多様な人材の確保の必要性が高まる中、平成26年11月の教員養成部会報告等も踏まえた対応が必要である。

4.改革の具体的な方向性

(1)教員養成・採用・研修を通じた改革の具体的な方向性

(1)-1

  • 上記の課題に対応し、学び続ける教員の養成段階から研修段階までの資質能力の向上施策を、教育委員会、大学等の関係者が一体となって体系的に取り組むための体制の構築が不可欠である。

(1)-2

  • 既に教育委員会や大学の一部において、このような点を意識した取組が進められており、こうした先行事例を参考にしながら以下のような取組を全国的に推進していくことが重要である。

1.教員育成指標及び研修指針の策定

(1)-3

  • 大学と教育委員会が教員の育成に関する目標を共有し、連携を図りながら、教員のキャリアの段階に応じて身につけることが求められる能力を明確化した教員育成指標が全国的に整備されることが必要である。

(1)-4

  • 子供たちや学校、教員、地域等の実情はそれぞれ異なるため、各都道府県等の教育委員会毎に大学等の関係者との協議・調整を行い、学校と地域の連携・協働体制を構築しつつ、教員育成指標を整備していくことが必要である。また、各地域の自主性や自律性が最大限発揮される制度となるよう配慮が必要である。

(1)-5

  • 一方、グローバル化をはじめとする大きな社会構造の変化の中にあって、全国を通じて配慮しなければならない事項やそれぞれのキャリアの段階に応じて最低限身につけられるべき能力などについては、国が整備指針・研修指針・教職課程コアカリキュラムなどにおいて大綱的に示していくべきである。

(1)-6

  • その際には、各教育委員会や大学における先行事例を参考にしつつ、関係者等の意見を聞きながら別途十分な検討を行った上で提示することが適当である。

(1)-7

  • 都道府県等の教育委員会は、国の研修指針や地域ごとの教員育成指標を踏まえ、地域ごとの体系的な研修計画を策定し、当該研修計画に基づき各種研修を行うことが適当である。

(1)-8

  • また、大学においては、教職課程を編成するにあたり参考とする指針(教職課程コアカリキュラム)や地域ごとの教員育成指標を踏まえつつ、大学として養成すべき教員像を明確にした教員スタンダードを策定し、既存の科目構成・内容を見直すなど教職課程の改善充実を図ることが適当である。

(1)-9

  • 国が示す整備指針や研修指針、及び各地域で策定される教員育成指標や研修計画については、初任段階で求められる能力から、中堅・ベテラン、更には管理職に求められる能力までを含む全体が示されるものであるとともに、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校等のそれぞれの学校種における教員の専門性等を十分に踏まえつつ、学校種ごとに策定されるべきものである。

(1)-10

  • 市町村の教育委員会は域内の都道府県ごとに策定される教員育成指標や研修計画を踏まえ、市町村独自の研修目標や研修計画を策定することが期待される。また、市町村教育委員会や教員研修センター、学校などは都道府県等の教育委員会が定めた教員育成指標や研修計画を踏まえ、教員の資質や能力の育成に関するより具体的な研修目標を定めて研修を実施していくことが期待される。

2.教員育成協議会(仮称)の創設

(1)-11

  • 各地域において教員育成指標や研修計画を策定するためには、都道府県等教育委員会と大学が相互に議論し内容を調整するための場として、教育委員会と大学を主たる構成員とする「教員育成協議会」(仮称)を創設することが適当である。

(1)-12

  • 「教員育成協議会」(仮称)においては、教員育成指標や研修計画以外にも、教員の育成の効果的な取組のため、養成、採用、研修に関する教育委員会と大学との連携協力の在り方や相互の人事交流、教師塾等の実施等具体的な施策等についても幅広く議論されることが期待される。

(1)-13

  • 以上について教員育成指標や研修計画の策定、「教員育成協議会」(仮称)の創設の具体化のため、関係法令の改正を含めた取組を講ずる必要があり、詳細な制度設計に向けた検討を進めるべきである。

3.新学習指導要領の検討を踏まえた養成・研修の在り方

(1)-14

  • 現在、次期学習指導要領の在り方について審議が進められる中で、高等学校における新たな教科・科目の在り方等についても検討が行われている。こうした教科・科目の趣旨を十分に理解し、それぞれの教科・科目を指導する上で求められる指導力を培うような養成・研修の在り方について、検討が必要である。

(2)教員研修に関する改革の具体的な方向性

1.継続的な研修の推進

(2)-1

  • 教員の資質能力の育成・向上のためには、法定研修や各教育委員会が計画・実施する各種の研修はもとより、自発的、継続的に校内研修が実施されることが不可欠である。校内研修が組織的に行われることにより、教員間での組織目標の共有化とそれに伴う協働が進み、学校の組織力の向上にも大きく寄与することが期待される。

(2)-2

  • 教員の研修に係る計画及び実施は、任命権者である都道府県や政令指定都市の教育委員会以外にも、市町村など、学校の設置者である教育委員会や学校経営の責任を有する学校長等も、教員一人一人の成長を支える重要な存在であることを認識するとともに、校内研修等、継続的な研修の意義や重要性を理解し、その活性化に最大限努めるべきである。

(2)-3

  • 校内研修の充実について、いわゆる「メンター方式」などの先進的事例も踏まえつつ、都道府県・市町村の教育委員会は、管理職に対する研修の実施や校内研修リーダーの養成研修、校内研修の実施マニュアル等の整備を推進すべきである。

(2)-4

  • また、学校内においては、校長のリーダーシップのもと、研修リーダー等を校内に設け、校内研修の実施計画を整備し、各教員の自発的かつ主体的な学習意欲を尊重しながら、研修チームを設けるなどして組織的、継続的な研修が行われることが期待される。

(2)-5

  • こうした学びの機会を提供する際には、人事交流を図り、例えば大学教員が校内研修に関わるなど、教職大学院等の大学や関係機関の協力を得ながら、当該機関等と協働して取り組むことが必要であり、前述した教員育成協議会(仮称)において、そのための協議を行っていくことが望ましい。

2.新たな教育課題への対応

(2)-6

  • アクティブ・ラーニングの充実に関する指導力の向上のためには、教科の特性を踏まえつつ、特定の教科だけの課題ではなく、学校全体の取組として校内研修を進めることが必要である。

(2)-7

  • ICTを用いた指導法については、授業のどの場面でどのような教材を提示すれば児童生徒の関心意欲を引き出したり,理解を促したりしやすいかという観点を含めて授業力の育成を図る必要がある。また、ICTの実践的活用や情報セキュリティ等を含めた情報モラルなどの情報活用能力の育成に資する指導に向けた教員研修が必要である。

(2)-8

  • 道徳教育の充実のため、特に中学校教員の専門的指導力の確保のための研修の充実、「特別の教科 道徳」の趣旨を理解し実践に生かすための計画的な研修、校内研究や地域研究の充実のための道徳教育に関する研究委嘱事業等の充実、柔軟な発想力とリーダー性を備えた「道徳教育推進リーダー教師」(仮称)の養成等が必要である。

(2)-9

  • 英語教育の充実のため、次期学習指導要領改訂の検討状況も踏まえつつ、国は外部専門機関等との連携により、各地域の指導者となる「英語教育推進リーダー」の養成を推進する。各地域では、リーダーが教育委員会と大学等が実施する研修の企画・運営への参画、研修講師等の役割を担うことが可能となるような体制整備が必要である。

(2)-10

  • また、小学校教員が教科化に向けた専科指導や、小・中・高校の一貫した学びの接続に留意した指導に当たることが可能となるよう必要な研修を充実するとともに、「免許法認定講習」の開設支援等による中学校英語免許状取得を促進する必要がある。

(2)-11

  • 特別支援教育の充実のため、特別支援教育に関する基礎的な知識・技能を身に付けるための研修を実施する。

(2)-12

  • また、小中学校等の特別支援学級等担当教員や特別支援教育コーディネーターの専門性向上のための専門的な研修の実施に併せ、必要に応じて外部人材の活用等により、学校全体としての専門性を確保する必要がある。また、特別支援学校の教員には、多様な障害や重度・重複化への対応、特別支援学校のセンター的機能発揮のための地域の小中学校等との連携等についての専門的な研修が求められる。

(2)-13

  • 特別支援学校や小中学校における特別支援学級等の教員の専門性の担保のため、採用・人事・研修を通し、特別支援学校の教員は必須化も視野に入れ、免許状保有率の向上を早急に図る必要がある。

(2)-14

  • 平成27年度から、子ども・子育て支援新制度が施行されたことなどを踏まえ、質の高い幼児教育を提供するため、幼児教育アドバイザー(仮称)の養成、教員の研修等に関する研究委託事業等の充実、幼小の教員等の合同研修などを行い、相互の指導方法・原理に関し理解を深めることが必要である。

(2)-15

  • これらの内容の詳細事項については、次期幼稚園教育要領、学習指導要領の検討状況等を踏まえつつ、引き続き検討していくこととする。

3.初任者研修の改革

(2)-16

  • 初任者研修に関しては、前述のメンター方式の他、経験豊かな再任用の教諭や指導力の高い教諭が担任する学級に初任者を副担任等として配置し、ジョブ・シャドウイングを用いたり、学級担任の教諭をメンター役として常時初任者に指導や助言を行い、初任者を育成する方式等、先駆的な取組が行われており、これらを参考に改善方策を検討することが適当である。

(2)-17

  • また、これらの方法による初任者研修の実施を支援するため、国は、引き続き必要な定数措置に努めるとともに、研修実施マニュアルの配布等の必要な措置を講じるべきである。さらに、初任者研修がより効果的に行われるよう、学校管理職や直接初任者の指導に当たる指導教員等を対象とした研修を実施することが必要である。

(2)-18

  • さらに、近年、多くの都道府県等においては、若手教員の育成の強化を図るため、2年目研修や3年目研修を実施するなど若手教員のための研修を継続して実施しており、成果をあげている。このようなことから、国においては、今後、初任者研修の弾力的な運用を可能にするよう現在の初任者研修の運用方針を見直すことが必要であり、前述した国の策定する研修指針に反映させることが適当である。

4.十年経験者研修の改革

(2)-19

  • 十年経験者研修に関しては、免許状更新講習との整合性を含め、各任命権者の判断で、実施時期を柔軟化して実施できるようにする必要があるとの方向で議論が進められてきた。

(2)-20

  • 一方、各地域において、教員育成指標や研修計画が策定されることを前提とすれば、現行の十年経験者研修の実施者がより自主性を発揮し、創意工夫が図りやすくなるような制度とした方が望ましい。

(2)-21

  • 具体的には、各任命権者の責任の下、現行の十年経験者研修を例えば「中堅教員能力向上研修」とするなど、十年を標準として任命権者が定める年数に達した後相当の期間内に実施することが可能となる制度改正が望ましく、教育職員特例法の規定の見直しを行うことが必要である。

5. 独立行政法人教員研修センターの役割の在り方

(2)-22

  •  上記のような研修に関する様々な課題に対応していくためには、研修の実施主体だけでなく、国における対応も充実させていく必要があり、独立行政法人教員研修センターの研修対象の拡大など、これまで以上に積極的に役割を果たしていく必要がある。

(3)教員採用に関する改革の具体的な方向性

1.特別免許状制度の活用等による多様な人材の確保

(3)-1

  • 複雑化・多様化する教育課題に対応するためには、これらの教育課題に対応できる高度の専門性を持った外部人材など多様な人材を確保し、資質能力の向上を図ることが重要である。

(3)-2

  • 今後、特別免許状の授与の手続きの改善を図るなどして特別免許状の活用を促進する必要がある。 

2.円滑な入職のための取組

(3)-3

  • 採用の際のミスマッチを防止するとともに新規採用の教員が円滑に教職を開始できるようにする取組などが重要である。また、一部の教育委員会では、新規採用の教員の円滑な入職や学校における必要最小限の実践力を身につけさせるため、教員志望の学生を対象に教師塾等を実施したり、採用前の時期に採用予定の学生を対象に、配置予定校において校務の体験や教員から説明を受ける機会を設ける取組を行っている。

(3)-4

  • これらの取組は、ミスマッチの解消のみならず教職に必要な最小限の実践力を身につけさせることにも有効であると考えられることから、より一層の普及が期待される。

3.教員採用試験における共通問題の作成に関する検討

(3)-5

  • 各都道府県等における教員採用の際の試験問題の作成上負担の軽減や、新たな教育課題を踏まえた適切な試験の実施等の観点から、各都道府県等の採用選考の内容分析やニーズの把握等、必要な検討に着手すべきである。

(4)教員養成に関する改革の具体的な方向性

(4)-1

  • 教職課程の改革にあたっては、教職課程が教員として最低限必要な資質・能力を育成することを目的とすることや履修の適正化を図る観点から、教職課程も含めた総単位数が大学設置基準の範囲内であることも前提として、教員免許状の取得に必要な単位数は増加しないことを前提とするべきである。

(4)-2

  • その上で、学部段階と教職大学院あるいは現職との系統性や接続を踏まえ、新たな教育課題に対応できるよう教職課程の内容を見直すことが必要である。また、学生に教職のための意欲を持たせたり、定期的に自ら教職への適性を確認させるような機会を設けることも重要である。

(4)-3

  • さらに、教員の資質能力の向上のためには、教職課程における質の高い教員養成が行われることが必要である。このため、大学において教員養成を全学的に推進していくための体制の整備や、教科に関する科目の充実、教職課程の評価の推進などの取組を総合的に実施することが必要である。

1.新たな教育課題への対応

(4)-4

  • アクティブ・ラーニングを用いた学習に関する指導力や適切な評価方法については、全ての学校種の教員が身につけるべき能力や技能であり、これらの育成が適切に行われるようにすべきである。

(4)-5

  • ICTを用いた指導法については、教員がICT機器の操作方法そのものを身に付けるのではなく、ICT機器を用いて効果的な授業を行ったり、適切な教材を開発・活用したりすることができる力を育成すべきである。

(4)-6

  • 発達障害を含む特別な支援を必要とする子供に関する理論及びその指導法は、学校種によらず広く重要となってきていることから、教職課程においてより充実した内容で取り扱われるようにすべきである。

(4)-7

  • さらに、小学校英語教育、道徳教育、地方創生や起業体験など新しい観点を踏まえたキャリア教育、生徒指導の充実、学校間連携なども課題とされているところであり、教職課程においてその取り扱いの充実を図るべきである。

(4)-8

  • これらの内容の詳細事項については、次期幼稚園教育要領、学習指導要領の検討状況等を踏まえつつ、引き続き検討していくこととする。

2.学校インターンシップの導入

(4)-9

  • 現在行われている学校インターンシップや学校ボランティアなどの取組は、教育実習とともに実践的指導力の基礎の育成に有効であるとともに、学生が自らの教員としての適格性を把握するための機会としても必要である。このため、既存の教育実習との関係を整理しつつ教職課程に位置づける方向で検討することが適当である。

3.教職課程の質の保証・向上

ア 教職課程を統括する組織の設置

(4)-10

  • 大学においては、学内の教職課程のカリキュラムの充実や複数の教職課程間の科目の調整等のための教員養成カリキュラム委員会等の設置が進んでいる。また、学生への教職指導や教職課程を担当する教員に対するFDの実施や学校インターンシップ等の企画・実施等を行う教職センターを設置する大学もある。

(4)-11

  • これらの組織は、全学的に効率的・効果的な教職課程の実施や教職課程の質の維持・向上にとって極めて有効であり、教職課程を担当する教員の育成にも役割を果たすことが期待されることから、こうした取組を制度的に位置付けることを検討すべきである。
イ 教職課程の評価の推進

(4)-12

  • 教職課程の水準の向上を図るためには、教職課程に関するPDCAサイクルが適切に機能することが必要である。このため、まずは教職課程における自己点検・評価の実施を制度化するとともに、将来的には第三者評価の取組が進むことが期待される。
ウ 教職課程担当教員の資質能力の向上等

(4)-13

  • 教職課程においては、教職に関する実践力の基礎や新たな教育課題に対応できる力を持った教員の養成が求められることから、教職課程の科目を担当する教員は、これらの力を学生に身につけられるように、その指導力を高めることが必要である。

(4)-14

  • このため、全学的に教職課程を統括する組織や教職大学院が中心となって、教職課程の科目を担当する教員に対し、学校現場体験を含む実践的な内容の研修やこれらの教育課題に対応した研修を行うことが必要である。また、大学は、教育委員会とも連携して実際に学校現場に携わる教員等を大学の教職課程の教員として配置する取組も一層進めるべきである。
エ 教科に関する科目の充実

(4)-15

  • 教科に関する科目については、学校教育の教科内容等を踏まえつつ適切に実施されるべきである。このため、教科に関する科目を担当する教員に対し、大学において全学的に教職課程を統括する組織等がFDを実施するなどして、教職課程の科目であることの意識を高めることが必要である。また、教科に関する科目の実施に当たって、教科専門の教員と教科の指導法を担当する教員が講義を協働で行うといった教科と教職の連携を進めることも重要である。

(4)-16

  • また、教科に関する科目の中に「教科の内容及び構成」等の科目を設けて、学校教育の教育内容を踏まえた内容で授業を実施している大学もある。このような取組は、教科に関する科目の一層の充実に資することから、今後拡大していくことが期待される。

(4)-17

  • 特に、教員養成学部・学科等においては、教員養成に資する教科に関する科目の取組を充実させることが重要である。このため、他学部等と連携し、高度かつ最新の専門的知見に基づく科目を開設したり、上述の「教科の内容及び構成」に関する科目を積極的に教科に関する科目等として位置付けて実施するなどの工夫を行うことが強く求められる。

(5)教員免許制度に関する改革の具体的な方向性

1.中学校及び高等学校の教員免許状所有者による小学校での活動範囲の拡大

(5)-1

  • 今後全国的に小中一貫教育の取組が一層進むことが予想される。また、小学校における英語教育のさらなる充実などが検討される中、教科に関する高い専門性を持つ中学校等の教員を小学校として活用し易くするため、教科等に加え学級担任も可能にするよう制度改正を行うことが必要である。

2.教員の教職経験を考慮した免許状併有の促進

(5)-2

  • 今後、小中一貫教育の推進や多様な教育課題への対応等により、教員が学校種を超えて活躍する機会が広がっていくことが想定されるため、現職教員の他校種免許状の併有を促進すべきであり、一定の年数以上勤務経験のある教員の免許状併有を行いやすくするよう制度を改善することが必要である。

(5)-3

  • 具体的には、取得しようとする免許状に関係する学校における勤務年数を単位数に換算可能として新たな免許状の取得のための負担を軽減することにより、他の学校種の免許状の併有を促進することが考えられる。

3.特別免許状制度の手続等の改善

(5)-4

  • 特別免許状の授与を行う場合、授与権者は、あらかじめ、学校教育に関し学識経験を有する者等の意見を聴かなければならないこととされているが、法令上学識経験者の範囲が極めて限定されているため、その確保や迅速な審査の実施が困難になっていることが指摘されており、手続きの見直しが必要である。

(5)-5

  • また、特別免許状の授与条件の在り方については、今後更に検討を進めることが適当である。

4.特別支援学校教諭等免許状の保有率促進

(5)-6

  • 特別支援学校の教員の特別支援学校教諭等免許状の保有率は71.5%であり、その保有率の向上が課題とされている。

(5)-7

  • このため、現職段階での免許法認定講習での特別支援学校教諭免許状保有促進だけでなく、教職課程における免許状取得の促進が必要である。

(6)教員の資質能力の高度化に関する改革の具体的な方向性 

1.拡充期を迎えた教職大学院の在り方

(6)-1

  • 平成24年8月の中央教育審議会答申を踏まえ、各都道府県に教職大学院の設置を推進するとともに、特に国立の教員養成系修士課程の教員養成機能を教職大学院に移行させることとしている。なお、当面は、現在の修士課程の規模を踏まえながら、教職大学院の量的な整備を行っていくことが必要である。

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  • このため、今後は教職大学院を、質的な面のみではなく、量的にも大学院段階での教員養成の主軸として捉え、高度専門職業人としての教員養成のモデルから、その中心に位置付けることが必要である。その際、教科教育などの修士課程で主として担ってきた能力をどのように教職大学院で養成するかを検討する必要がある。

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  • また、教職大学院は、より学校現場での指導経験のある実務経験者が指導に当たる体制を構築し、教育委員会と連携して学校現場での実践に即した教育内容の充実を図るとともに、教職大学院修了者へのインセンティブを付与することも必要である。

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  • さらに、教職大学院において、管理職候補者となる教員に対する学校マネジメントに係る学修の充実を図り、管理職コースを設置することや、教育委員会との連携による管理職研修を開発・実施することも必要である。

2.教職大学院等における履修証明制度の活用等による教員の資質能力の高度化

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  • 教員の一層の資質能力の高度化のため、将来的には教員養成の大学院レベル化も視野に入れつつ、教職大学院等と教育委員会が連携しながら教員の養成や研修を進めていくことが必要である。また、教員がこれらの方法により学習した成果を専修免許状の取得や能力証明に結びつけられる方策も重要である。

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