資料6 総会・分科会・課程部会主な意見

中央教育審議会総会(第95回,平成26年11月20日),初等中等教育分科会(第94回,平成26年11月27日),教育課程部会(第90回,平成26年12月4日)における主な意見―「初等中等教育における教育課程の基準等の在り方について」(諮問)関係―

【社会の変化と子供たちの現状】
○予想される人口減少や世界の新しい時流など,将来社会への展望の議論を前提として,新たな時代に向けた教育の重要性と改革の方向性をアピールしていく必要がある。育成すべき能力や学習内容についても,子供たちが生きる21世紀中盤社会の実証的予測に基づいて検討すべき。

【現状分析の必要性】
○子供の実態や教育課程の編成・実施上の課題など,現行学習指導要領の達成状況と課題の分析により,エビデンス・ベーストで新学習指導要領を検討する必要がある。特に,全国学力・学習状況調査やPISAなど明快なデータがある小中に比べ,高校はデータが不十分時数増による不登校への影響や体力と教員の年齢構成の高齢化などについても検証が必要

○過去や現在のデータだけでなく5~10年先を見据えた授業・学習の在り方が重要

「発達の早期化」という言葉は注意が必要。特別な支援を要する子供が増加する一方で体力等は低下しているなど,子供全体として発達が早期化しているわけではない。

○労働者に対する調査では,「学校で働くことについて教わったか」という問いに約7割が肯定的である一方,「実際のトラブルの際に問合せ等の行動を取った」という回答は数%にとどまるなど,知識を習得しても活用されていないという課題がある。

現行学習指導要領の経緯や理念について,教員や関係者間で共通認識を図るべき。

【アクティブ・ラーニング】
○主体的・協働的な学びであるアクティブ・ラーニングやそのための学習・指導方法の改善は重要

○アクティブ・ラーニングは目新しい言葉であるため,誤解により子供の現状を踏まえない固定的な指導方法が広がる危惧もある。学びの質や深まりのための議論であるという趣旨に基づき,子供を主体とした学習者の観点からの検討が必要。

「集団での学習」が学校らしさであり,世界的に高く評価されている日本の教育の良さが生きる方向性に持って行きたい。

【育成すべき資質・能力】
○「国家・社会の責任ある形成者の育成」のためには,予想し得ない将来社会の中で,最善の知識・技能を使って取り組んでいくことと,そのための責任感の醸成が必要。小・中学校段階からの流れの中でこうした意識の育成方策について検討すべき。

○変動する社会の中で主体的に生きるために必要な資質・能力の観点として,道徳性や感性も大事。また,「社会の責任ある形成者の育成」の観点を突き詰めていくと,自尊心や自己肯定感の問題を避けて通れない。これらは幼児教育からの検討が必要。

「学力の3要素」のつながりをより明確化できないか。

リーダーシップ教育やチームワーク教育は重要だが,個人とチームのバランスを考えるなど方法に工夫が必要

【目標・内容,学習・指導方法,評価の一体的検討】
アウトカム・ベーストの観点から,学習の成果の明確化,そのための育成方法,アセスメントの3点を,整合性を持った形で検討すべき。

○教育内容が教育方法を決める。国研のプロジェクト研究における「21世紀型能力」や資質・能力を支えるような学び方についても取り入れていくことが必要。あわせて,「何を題材にするか」という興味付けも重要。

○英語だけでなく各教科においても,育成すべき力を小・中・高一貫した形で整理し,各学年のカリキュラムとして具体的に育成すべき力をマッピングする必要がある。その際,どこに優先順位を置くかも重要。

CAN-DOリストの発想を他教科にも拡大させるとよい。ただし,そのためには教員研修の充実も必要。

【グローバル人材・英語】
英語を学ぶ理由について,キャリア教育の観点から子供自身に考えさせることが必要。

○英語教育は,単なる英語による授業の実施やALTの外国人の活用だけでなく,英語教育の中身を検証し,質保証を図るべき。

○将来や社会のグローバル化だけでなく,学校内の子供たちの世界でも既にグローバル化が進んでいることを念頭に置いて検討すべき。

○英語教育の充実においては,外国とのコミュニケーションだけでなく,日本の伝統文化を大切にすることと一体的に捉える必要がある。

【高等学校教育】
高大接続改革は初等中等教育にも大きな影響を及ぼす。大学入学者選抜の改革によって小・中・高・大を通じた主体的な学びが実現するとよい。

○高等学校教育がきちんと諮問で触れられたのは久しぶり。進学率が98%に達している現状等を踏まえ,人間としての在り方生き方教育や,高等学校での道徳教育の在り方,必履修科目と選択科目のバランス,キャリア教育,現行の地歴科・公民科の構成などについて議論が必要。

○18歳を大人とみなす議論は重要。まずは大人が「責任を持った大人」といえる社会を作るべき。新科目の設置については議論が必要

○義務教育9年間での多様な経験を踏まえ,高等学校では単に知識・技能を教えるのではなく,「学び方」を示していくことが大事

【幼児教育】
3歳以降の子供たちは皆幼稚園や保育所などで公的な教育を受けることを前提とした就学前教育の議論や,幼小接続の観点が大事。

【特別支援教育】
通常学級にいる特別な支援が必要な子供たちの学び方についても専門的に議論すべき。

【スポーツ・健康教育】
○2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて,スポーツや子供の体力を伸ばすチャンス。海外では日本の体育の授業は高く評価されており,授業の中身だけでなく,体を動かす機会の充実が必要。施設,用具,安全面などもあわせてスポーツのハード・ソフト両面からの環境整備が必要。

○「子供たちの運動・スポーツに対する関心・意欲の向上」に関し,今回の議論では,部活動をより明確に位置付ける方向で議論いただきたい

【評価】
○前回改訂時は学習指導要領の後に評価を取り上げたため,議論やその浸透が不十分という問題があった。評価も一体的に検討する視点は非常に大事であり,丁寧な議論が必要

○目標に準拠した評価が定着し切れていない。教員がより理解できるものとなるよう,学習指導要領と評価の観点との整合性を図る必要がある。

【カリキュラム・マネジメントと環境整備】
他教科・科目との連携の意識やバランスが大事。知識・技能を統合し主体的・協働的に学ぶ観点から,教科共通の課題を整理しつつ,教科を横断した学びの深まりについて検討し,子供たちの学びの全体像を捉える必要がある

○各教科の議論を丁寧に行うべき。例えば,家庭科の男女必修化後の世代では,出生率の改善や育児への参画の観点で成果が出ているという声もある。いわゆる五教科以外の教科についても丁寧な議論が必要

○チームワークやアクティブ・ラーニングの充実,進学・就職におけるミスマッチ解消等の観点から,小・中・高・大の連携によるカリキュラム・マネジメントが必要。

○高大接続や個に応じた指導の充実,カリキュラム・マネジメントの定着等の観点から,学習環境の諸条件整備とそのための財的支援が必要。具体的には,教員や支援スタッフ,指導主事等の配置促進などの量的拡充,教員のICT活用力や英語力向上等を目的とした教員研修の充実と時間の確保などによる質的向上の両面からの支援が必要。

○教員養成・採用・研修の視点も必要であり,教育課程部会と教員養成部会で連携した議論を行うべき。

○教職員定数については,1学級40人から35人では教育効果は急激には改善されないため,よりドラスティックな改善が必要。

○教育課程の編成・実施においては,コミュニティ・スクールや学校支援地域本部,土曜授業などのプラットホームを総合的に活用し,学校・家庭・地域・企業の連携によるチーム力で子供の力を伸ばしていくことが必要

○主体的・協働的な学びやアクティブ・ラーニングを支える学習環境として,学校建築の観点も重要。

○学校安全部会の審議のまとめを踏まえ,安全教育(特に防災教育)の充実と指導時間の確保について検討すべき。

○アクティブ・ラーニングは教科で区切れないことも多いが,教科横断的な学びを進めるには時数が限界既存の教科の枠にこだわらない見直しをすべき。

○学習成果の獲得までに要する時間に差がある観点から,学校間・学年間の飛び入学・飛び級についても考えるべき。

【その他】
○新教科などの新しい議論が注目されがちであるが,言語活動をはじめとする学び方の研究や,他教科の学びとの連携など,現行でもできることから積み重ねていく必要がある

○都市部と地方には格差があり,例えば英語教育でも,外国人や海外経験のある人材がいない地域においては,デジタル教科書などのICT環境の充実が必要になる。公教育はどこに住んでいても基本的な環境がそろっているべきであり,そのための基準や道筋が示されるとよい。

私立学校教育も含めて公教育であるという観点が大切。

広報の充実が必要。現行学習指導要領の広報戦略をたたき台に,更なる広報活動の充実策について検討すべき。

教科調査官や国研による実地視察の成果を共有し議論を深めることが必要。

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