教育課程部会 教育課程企画特別部会(第19回) 議事録

1.日時

平成28年8月1日(月曜日) 13時00分~15時00分

2.場所

スタンダード会議室 虎ノ門ヒルズFRONT店 2階MAXホール
東京都港区虎ノ門1-22-14 ミツヤ虎ノ門ビル

3.議題

  1. 次期学習指導要領改訂に向けたこれまでの審議のまとめ(素案)
  2. その他

4.議事録

【無藤主査】    それでは、定刻となりましたので、ただいまより中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会教育課程企画特別部会の第19回を開催いたします。本日は、御参集いただきまして、ありがとうございました。
  それでは、早速、事務局から配布資料についての御確認をお願いいたします。
【大杉教育課程企画室長】    配布資料でございます。本日は、議事次第記載のとおり、資料の1から資料の3、その他机上に参考資料を配布させていただいております。不足等ございましたら、お申し付けください。
  また、机上の少し分厚い黄色の紙ファイルですけれども、学校段階等別部会・教科等別ワーキングの議論の進捗状況等として、現時点のまとめ文案や参考資料をお配りさせていただいております。
  また、審議に当たり参考となる審議会の答申でありますとか、関係資料をとじたファイル、また、関係団体からの要望等について配布されておりますので、御確認いただければと思います。
  以上です。
【無藤主査】    ありがとうございます。よろしいでしょうか。
  それでは、議事に入りたいと思います。
  初めに、本部会の審議等につきまして、初等中等教育分科会教育課程部会運営規則第3条に基づきまして、原則公開により議事を進めさせていただいてございます。また、第6条に基づき議事録を作成し、原則公開するものとして取り扱うこととさせていただいてございます。よろしくお願いいたします。
  なお、本日ですけれども、報道関係者より会議の撮影及び録音の申出がございます。これを許可してございますので、御承知おきください。
  なお、撮影につきましては、申し訳ございませんけれども、ここまでとさせていただきたいと思います。
  それでは、本日でございますけれども、次期学習指導要領改訂に関するこれまでの審議のまとめ(素案)につきまして、御議論を頂戴したいと存じます。
  まず、事務局より関係資料の説明を受けた後に、皆様から御意見を頂戴したいと存じますので、よろしくお願いいたします。
  それでは、まず事務局より資料の説明をお願いいたします。
【大杉教育課程企画室長】    それでは、審議まとめ(素案)の本体は資料3-1、3-2の丸1、3-2の丸2ということで、200ページ近くに及んでおりますけれども、この資料を御説明させていただく前に、全体像を少し捉えていただく資料1をごらんいただければと思います。この200数ページの資料のエッセンスだけをポイントとしてまとめさせていただいた資料が、資料の1になるところでございます。
  論点整理、8月のを踏まえまして、各ワーキングにおきまして、これまで審議時間も数百時間に及んでおりますけれども、これらの議論の取りまとめをお願いしているものでございます。
  改訂の基本方針といたしましては、変化の激しい社会の中でも、しっかりと志高く未来を創り出していくために必要な資質・能力を子供たちに育んでいくということ、よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創るという「社会に開かれた教育課程」の実現を図るということでございます。「何を学ぶか」「どのように学ぶか」「何ができるようになるか」という視点で学習指導要領を改善し、今後、学校教育を通して子供たちが身に付けるべき資質・能力や学ぶべき内容、学び方の見通しを示す「学びの地図」として、学習指導要領が幅広くその役割を果たせるようにするということでございます。
  現行学習指導要領、学力向上の成果などもございますけれども、一方で、根拠を明確にして自分の考えたことを述べることや、社会参画の意識等について課題があるということ。こうしたことを乗り越えながら、しっかりと「生きる力」を育むという、社会において自立的に生きるために必要な力ということの理念のさらなる具体化を図るということでございます。そのためにどのような資質・能力を育むかを3つの柱に沿って明確化していくということでございます。
  次のページは、アクティブ・ラーニングでございますけれども、こうした資質・能力を身に付けるために学習内容を深く理解し、社会、生活で活用できるようにするためには、学習過程を質的に改善していくことが重要ということでございます。「主体的・対話的で深い学び」という視点から、子供たちを生涯アクティブに続けるようにするということが重要であるということ、また、こうした教育課程の構造や、新しい時代に求められる資質・能力の在り方が全ての教職員に理解しやすいものとなるよう、今回は学習指導要領の「総則」を抜本的に改善して、これについて理解を深めると新しい指導要領の構造が分かるというような構造にしていくということでございます。
  こうしたことを手掛かりに、各学校の「カリキュラム・マネジメント」を促進していくということ、また、必要な条件整備、学習指導要領の理念を実現するために必要な指導体制や教材の在り方、ICT環境整備についても合わせて整理をさせていただいているところでございます。
  続きまして、5ページ目が具体的な改善の方向性ということでございます。資質・能力の明確化と学習過程、学習評価の重視ということでございまして、お手元の黄色い分厚いファイルにございますように、今回、全ての教科について、それらを学ぶことで身に付く資質・能力を明確化して、教育目標や内容として盛り込むということでございます。
  こうしたことを通じて、幅広く教育目標を共有しやすいものとし、家庭や地域との連携・協働を活性化していくということでございます。
  また、教科を超えてアクティブ・ラーニングの視点を共有しつつ、一方で、教科の特質に応じた学びの在り方ということを整理し、今後の指導事例集の作成につなげるということ。特に各教科における見方や考え方ということを示していくことで、子供たちが学習対象と深く関わり、理解の質を高めていけるような教材や指導方法にしていくということでございます。
  また、評価についての目標と観点を一致させるということ、また、一人一人の資質・能力の育成を支援するという観点から、特別支援教育、日本語指導、個に応じた指導、キャリア教育などということでございます。
  5ページ下、「カリキュラム・マネジメント」でございますけれども、教科と特活や総合的な学習といった領域の双方で構成されているという我が国の教育課程の強みやよさを生かしつつ、6ページでございますけれども、教育課程総体としての力を発揮させて資質・能力を育成するということであります。
  全て学習の基盤となる力や、これからの現代的な課題を踏まえて求められる資質・能力が、教科等を超えてしっかりと育成されるよう、教科横断的つながりを明示していくということ、言語能力や情報活用能力、あるいは主権者として求められる力、さまざま伝統文化に基づき未来を描く力など、現代的な課題にもしっかりと対応できるような教育課程の構造を作り上げていくということでございます。
  3ポツの下でございますけれども、学校段階別の改善の方向性でございますけれども、小・中・高を見通して「キャリアパスポート」で学びをつなぎつつ、それぞれの学校段階に応じた課題に対応していくということでございます。
  7ページ目、幼児教育でございますけれども、幼児教育につきましても資質・能力の三つの柱を踏まえて明確にしていくということ、現代的な非認知的能力の育成などに対応していくということ、また、5歳児修了時までに育ってほしい10の姿ということを明確にしていくこと、幼保の連携の観点からも幼児教育全体としての質を高めていくということでございます。
  小学校につきましては、低・中・高それぞれの発達段階に応じた指導上の配慮、それから幼児教育と「スタート・カリキュラム」を通じて学びをしっかりつないでいくということ、また、義務教育9年間を通じた見通しということも重要であるということでございます。
  8ページ目でございますけれども、特に学習や生活の基盤作りという観点からは、小学校低学年の学力差がその後につながるという指摘もあり、語彙力、言語能力をしっかりと育むということが重要であるということ、国語教育について、そうした観点からしっかりとした改善を図っていくということでございます。
  また、外国語教育につきましては、どのような職業に就くとしても求められる、コミュニケーションを図るために必要な基礎的な力ということ、高校卒業時までに、英検で言えば準2級、2級程度の高校生の割合を5割とするという目標がございますけれども、こうしたことも踏まえながら、小・中・高を見渡した観点で充実を図っていくということでございます。
  小学校段階では、高学年において「聞くこと」「話すこと」に加え「読むこと」「書くこと」、この全ての領域をバランスよく育む教科型を導入するということ。内容としては、年間70単位時間程度ということでございます。
  また、外国語についての慣れ親しみということで、中学年から「聞くこと」「話すこと」を35単位時間程度ということ、いずれにしても国語教育との連携を図るということでございます。
  また、9ページにございますように、外国語教育の導入に当たっては、指導体制の確保、教材の在り方を前倒しして、しっかりと計画的に準備を進めていくということ。
  また、授業時数につきましては、指導内容や、また教科の授業時数を削減するという選択肢をとることは困難な状況の中で、中学年・高学年においてそれぞれ年間35単位時間増となることを、全小学校において一律の取り扱いとするということではなく、柔軟な時間割編成を可能としていくこと。
  一方で、国や関係団体、教育委員会と連携しながら様々な効果的な創意工夫の在り方ということは、しっかりと調査研究し普及させていくということでございます。
  その他、国語における古典に親しむ学習でありますとか、地図帳を3学年から配布するといった社会科における世界の国々との関わり等を重視する学習、プログラミング教育の導入、情報活用能力の充実などの見直しを実施することとしております。
  11ページ目、中学校でございます。義務教育9年間を通じた資質・能力の育成ということを見据えながら、また、高等学校でそうした学習の成果をしっかりと受けとめていくということの重要性ということ。
  中学校、多様化する課題に対応していくためには、「カリキュラム・マネジメント」ということを軸としながら、全ての教職員や地域が課題や目標を共有していくことが重要であるということ。
  部活動については、現行の位置付けを維持しつつ、特に教育課程との関係性ということの意義を明確化していくということ、長期的には地域単位で支えるということも視野に入れながら、社会教育との連携を図っていくということ。また、関係教科と関連付けるなど、学校教育の一環であるということを踏まえ、例えば科学的知見ということを生かしたスポーツとの関わり方を考えるなど、多様な関わり方を考えられるようにすることが重要であるということでございます。
  また、部活動の教育的意義ということについては、教育課程全体の中で考えていくということが重要であるということ。
  12ページ目にございますように、バランスのとれた子供たちの生活や成長に配慮するということ、こうしたことは高等学校においても同様ということでございます。
  あわせて、小・中・高を見通した観点からの外国語教育の充実、社会科におけるグローバル化への対応などについても、しっかりと図っていくということでございます。
  高等学校につきましては、育成すべき資質・能力を明確にし、それを踏まえながら教科・科目構成の見直しも図るということでございます。
  12ページ下には、国語、言語能力の特別チームにおいて示されました言語能力の在り方を踏まえながら科目構成の見直しを図ることとしております。
  また、13ページ目、地歴科でございますけれども、歴史総合、地理総合を共通必須履修科目としながら、選択科目ということを検討していくということ。
  公民科におきましては、公共を共通必須履修科目としながら、倫理、政経という選択科目を置いていくということ。
  また、理数科に共通教科としての役割を新たに持たせ、教科の枠を超えて理科における見方や考え方、数学における見方・考え方を総合的に活用しながら、自らしっかりと探究を行う「理数探究基礎」「理数探究」という科目を置くということ。総合的な探究の時間との読み替えも可能にするということでございます。
  その下に外国語科がございます。小・中・高を見通した中で、領域バランスよく育んでいく「英語コミュニケーション」という科目の系統と、発信力を強化するための「論理・表現」という科目の系統を置くということでございます。
  また、15ページ、情報科におきましては、全ての高校生が問題の発見・解決に向けて、情報技術を適切かつ効果的に活用できるよう「情報1」ということを共通必須履修科目として置いていくということでございます。
  また、総合的な学習の時間につきましては、総合的な探究の時間として見直すということでございます。
  16ページ目には、それぞれのワーキングにおける議論を踏まえました単位数のイメージを置かせていただいております。
  また、最後、17ページ目には、特別支援教育、インクルーシブ教育システムの構築の在り方、個別の教育支援計画などの作成、高校における通級の制度化などについて整理をしていただいているところでございます。
  以上がポイントになりますけれども、それらを具体的に、資料3-1の本文の方をごらんいただければというふうに思います。本日、資料3-1、3-2丸1、3-2丸2とございますけれども、既に教科別の議論につきましては一通り企画特別部会においてもごらんをいただいております。概要版を取りまとめさせていただいているものでございますので、本日は資料3-1を中心に御説明をさせていただきたいというふうに存じます。
  資料3-1は、お手元にもございます緑色の昨年8月に出されました論点整理を踏まえながら、その後の議論の状況を反映させていただいたものでございます。
  おめくりいただきますと、2030年の社会と子供たちの未来、論点整理の記述ぶりを踏まえながら、4段落目からは追記をさせていただいております。
  初等中等教育の総体的な姿ということの中で、学習指導要領に新たな役割が期待されているということ。先ほどもございましたような、関係者が学びの見通しを見通せるような学びの地図として幅広く活用できるようにしていくことが、社会に開かれた教育課程という観点からも求められるということ。
  論点整理を受けて、様々専門的な論点についても深く議論を重ねてきていただきました。また、中教審における議論と並行いたしまして、論点整理の内容を事務局としても幅広く広報させていただき、教育関係者における議論も促進させていただいたところでございます。
  本「審議まとめ」は、そうした議論の深まりも踏まえながら、今回の改訂の設計図を示すものであるということ、このまとめ自体が教育関係者の専門性を高めることに資するということとともに、指導要領自体、本年度内に示されるものについては社会各層に分かりやすいものとして示されることを期待したいということでございます。
  (1)新しい時代と社会に開かれた教育課程でございますけれども、おめくりいただきまして、新しい時代にふわしい学校文化の形成ということ、ここにおきましては、特に丸の3つ目からの昨今の人工知能の進化ということを踏まえた今後の社会の在り方の見通しということを少し追記させていただいております。
  そうした中で、2ページ目から3ページ目にございますように、社会が求める人材像ということが、学校教育が長年目指してきた子供たちの姿ということを重視していくというふうに、成熟社会に向かう中で共通の認識が形成されてきているということ、こうした中で子供たちに求められる資質・能力を確実に育成していくことを目指した学校の文化の在り方を形成していくということございます。
  「学校」の意義の再確認というところは、論点整理の内容を中心に再記をさせていただいたところでございます。
  また、4ページ目、人生を主体的に切り拓く「学び」の意義ということで、これは実は別の章立てにございましたけれども、全体的な考え方を示すものとして、この部分に移動をさせていただきました。学びの意義についてでございます。
  こうしたことを踏まえながら、5ページ目、社会に開かれた教育課程ということでございます。これにつきましては、論点整理で御提言いただきました丸1、丸2、丸3の考え方を再掲させていただいております。
  こうしたことが6ページ目、世界リードする役割、あるいは日本や世界の子供の学びを後押ししていくということでございます。
  (2)でございます。これまでの学習指導要領改訂の理念と子供たちの現状ということで、今回、7ページ目から少し子供たちの現在の状況でありますとか、課題ということを様々なデータを基に整理をさせていただきました。
  7ページ目の下からでございますけれども、子供たちの学力、改善傾向にあるということ。また、人の役に立ちたいということや、投票率等を見ますと、社会を創っていくことへの子供たちの関心が高まっている状況にあるのではないかということ。
  8ページ目にございますように、内閣府の調査によれば、子供たち、ほとんどが学校生活を楽しいと感じ、保護者のほとんどが学校に満足しているという状況、これらは学校現場の真摯な努力によるものであろうということでございます。
  一方で、学力面では、思考力でありますとか、主体的に学習に取り組む態度、あるいは社会参画への意識ということが、少し国際的に見ても低いというようなこと。主体的に学びに向かい、学習したことを活用しながら生かしていくということに課題があるのではないかということ。
  また、学習の基盤という観点からは、スマホの普及などに伴いまして、子供が読書をしなくなる傾向というのも指摘されているということ。教科書が読み解けていないのではないかという国立情報学研究所の調査結果もあるところでございます。言語能力の育成ということは、引き続き課題であるということ。
  また、体力についての課題、健康や安全についての課題、また8ページ目の下から上にかけましては、豊かな心や人間性に関する、昨今指摘されている課題なども掲載させていただいております。
  9ページ目は、こうした全般的な傾向のみならず、これからの社会の在り方を考えますと、一人一人の可能性を伸ばすという、子供一人一人の発達や学習を取り巻く個別の課題ということも視野に入れていく必要があるということ、子供の貧困率が上昇傾向にある中で、家庭の経済状況が学力等に大きな影響を及ぼしているのではないかということ、また、特別支援教育の重要性、あるいは日本語指導、それから様々な個性を生かして、興味、関心に応じた学びを進めていけるという機会の重要性ということでございます。
  10ページ目は、こうした子供たちの姿を踏まえながらということでございますけれども、学校教育を通じて育てたい姿ということでございます。今後の社会の在り方を目指しつつ、また一方で、教育関係法令など、普遍的に踏まえるべき目標や目的、あるいは初等中等教育の目指すべき理念である「生きる力」ということ、こうしたことを現代的に読み解きながら、これから育てたい人間の姿を描くとすれば、10ページ目の下から2つ目の丸の中にございますポツの3つ、これも論点整理で整理をいただいた内容でございます。こうした姿が実現されるよう、教育課程を通じて学校教育を充実させていくということでございます。
  11ページ目、資質・能力の育成ということでございますけれども、前回改訂の考え方も受け継ぎながら、今後の加速度的な変化を踏まえて学校教育のよさをさらに進化させていくというものであるということ、学力のバランスのとれた育成や言語活動や体験活動の重視といったことについては受け継ぎながら、一方で、しっかりと学力の三要素のバランスということを確実なものとしていくということ、また、言語活動の目的ということを明確にしていくということ、また、全てにわたって知・徳・体のバランスのとれた力である「生きる力」という理念のみならず、どのような教育を通じて、どのような力を育むことを目指しているのかという形で具体化し、教育課程を落とし込んでいく、浸透させていくという作業が必要になるということでございます。
  この「生きる力」の具体化の鍵となるのが、今回の「資質・能力」の議論であるということ。
  12ページ目にございますように、国内外で様々な議論がなされておりますけれども、これらは全て社会において生きる力、自立的に生きるために必要とされる力とは何かを具体的に特定し、学校教育を通じて育もうとする試みであるということ。
  前回改訂におきましても、こうした試みは少し行われたところでございましたけれども、教育課程全体に浸透させるというところまでは、まだまだ至っていないということ。それによって、現行の学習指導要領は各教科において教えるべき内容に関する記述が中心となっているということでございます。
  この一方で、「生きる力」の具体化や浸透、あるいは教科横断的に求められる力の育成という観点からは、しっかりと教科間のつながりを考えていくということ、教科間を超えた教育課程を見渡し、教育課程全体としての効果を発揮できているかどうか、有機的なつながりということを機能させていく必要があるということでございます。
  13ページ目でございますけれども、このように前回改訂の成果を受け継ぎなから、今後の変化を見据えて必要な改善を図っていくということ、評価の在り方や条件整備等についても一体として検討していく必要があるということでございます。
  こうした課題を踏まえながら、新しい学習指導要領が目指す姿でございます。「社会に開かれた教育課程」ということでございます。「社会に開かれた教育課程」という考え方の下、一番下の丸でございますけれども、学習指導要領には新たな役割が期待されているということでございます。関係者間が共有できるような学びの見通しを示す「学びの地図」として機能していくことが期待されているということ、14ページ目でございますけれども、そのためには何を学ぶのかということから議論をスタートするのではなく、何ができるようになるのかという視点から構成をしていく必要があるということ。
  このため、新しい学習指導要領に向けた検討は、そこの2つ目の丸の1から6にございますような軸を改善の検討の軸として議論を進めてきたところでございます。この審議まとめの章立ても、この1から6に沿った形で改善すべき事項をまとめているということでございます。
  また、14ページ目の下からは、こうした1から6の視点からの教育課程の改善を実現するために、「カリキュラム・マネジメント」が非常に重要になるということで、論点整理よりも前の方に「カリキュラム・マネジメント」の項目を出させていただきました。記載されている内容は、論点整理と同様の内容となっております。17ページ目まででございます。
  また、こうした「カリキュラム・マネジメント」を実現するためには、各学校が、今回の多岐にわたる指導要領改訂に関する議論をしっかりと理解し、「カリキュラム・マネジメント」を実現していけるようにする必要があるということでございます。
  そうした新しい指導要領の考え方を共通するために、今回は総則を抜本的に改善させていただくということでございます。先ほどの改善の軸である1から6の柱立てに沿って総則の章立てをしていくということ、その章に沿って必要な事項を分かりやすく示し、日常的に活用できるような総則にしていくということでございます。
  ここからは総則の柱でもあり、先ほどの改善の軸、1から6に沿ってそれぞれ改善の内容をまとめていただいております。
  まずは、資質・能力についてでございます。
  3ポツ、(1)でございますけれども、資質・能力についての基本的な考え方でございます。まずは、資質・能力に関する議論を俯瞰するということでございますけれども、そうした議論を大別してみると、以下の四つに大きく分けられるのではないかということ。国語力や数学力のように、伝統的な教科の枠組みの中で力の在り方を論じているもの。一方で、言語能力や情報活用能力などのように、教科等を超えて共通となる全ての学習の基盤として育まれ活用される力について論じているもの。安全で安心な社会づくりのための力や、自然環境の有限性の中でよりよい社会を創るための力、環境教育などのように現代的な諸課題に対応できるようになるための力について論じているもの。丸4でございますけれども、学力の三要素やOECDのカリキュラムの構成要素に関する議論、国立教育政策研究所の構造的把握などのように、どのような資質・能力でも共通し、それを高めていくために重要となる要素に関するもの、資質・能力に関する議論を大きく分けて、この四つに分けられるのではないかということでございます。
  初中教育における教育課程は、先ほどごらんいただきました、育ってほしい姿ということに照らしながら、資質・能力を全人的に育んでいくということであり、特定のトピックに焦点化した学習プログラムを提供するものではないということ。したがって、この1から4までの全てを視野に入れながら議論していくとこが重要になるということ。
  これを課題として捉え直すと、18ページ目の下にございますように、各教科の意義をどのように明確化していくのかということ、全ての学習の基盤となる能力を教科との枠を超えて共通的な視点で育んでいくということ、19ページ目、上でございますけれども、現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力と教科の関係を明らかにし、カリキュラム・マネジメントを充実していくこと。
  4でございますが、共通の資質・能力の要素を明らかにし、その要素を基に教科等と教育課程全体や教育課程に基づく教育と資質・能力の間をつないでいくということでございます。
  こうした観点から、教育課程と教科のつながり、資質・能力と教育課程のつながりを明らかにして、子供に必要な資質・能力の育成が保証できる構造に改善していこうというのが、今回の教育課程の構造化ということで、各ワーキングで進めていただいた作業でございます。一言で言えば、社会において自立的に生きるために必要な「生きる力」とは何かを資質・能力として具体化し、それを確実に育めるような教育課程の構造の在り方を示すことであります。
  こうした観点から、特に丸4が構造の柱として機能する重要な骨組みであるということでございます。
  (2)は、丸4の共通する要素について書かせていただいておりますけれども、これについては論点整理において方向整理をいただいた事項でございます。
  20ページ目、上にございますけれども、「何を理解しているか、何ができるか」という知識・技能。ワーキング等において深めていただきました、特に知識とは何かということについても少し補足的に書かせていただいております。
  21ページ目は、思考力・判断力・表現力、これにつきましても、各教科のプロセスということを踏まえながら少し追記をさせていただいております。
  また、学びに向かう力、人間性、21ページ目の下、丸3でございますけれども、「メタ認知」に関わるもの、自己の感情や行動を統制する力、自主的によりよい生活や自主性を形成していく態度等、22ページ目、上でございますけれども、思いやりや感性などということでございます。
  こうした資質・能力の三つの柱は、先ほどの1から4の資質・能力の議論がある中で、全ての資質・能力に共通する要素となるということでございます。教育課程に落とし込んでいく際の重要なつなぎの役割を果たすものとして、教科等の目標や内容についても、この3つの柱に基づく再整理を図ることといたしております。
  また、初等中等教育や学校段階を通じて育成すべき資質・能力ということも考えていく必要があるということでございます。
  23ページ目の上に、例えば次のようなイメージではないかということを示させていただいておりますけれども、各学校段階において求められる資質・能力を育成するということを丸1、丸2、丸3、仮に3つの柱に基づいて整理をさせていただいております。今後、こうした資質・能力を具体的な答申、あるいは指導要領の改訂告示に向けて、総則に明示することを視野に入れながら引き続き整理を図っていきたいというふうに考えております。
  教科等を学ぶ意義が、23ページ目から24ページ目でございます。これにつきましても、主に論点整理において整理していただいた事項を書かせていただいております。
  主に教科の資質・能力については、9ポツにおいて記されてございますけれども、特に25ページ目、今回議論を深めていただきました「見方・考え方」について整理をさせていただきました。特に下から2つ目の丸でございますけれども、「見方・考え方」を支えている知識や思考の方法ということ、資質・能力が育まれると「見方・考え方」が豊かになり、「見方・考え方」を通じて学習活動を充実させていくと資質・能力が育まれるというような、相互に関係する関係にあるのではないかということでございます。
  26ページ目、こうした「見方・考え方」が、教科を学ぶ本質的な意義を形成するものではないかということ、今後の授業改善、後ほどアクティブ・ラーニングもございますけれども、「見方・考え方」を軸にということでございます。
  それから、教科等を越えて全ての学習の基盤としてということでございますけれども、27ページ目にございますように、言語活動を通じて育成される言語能力、ICTを活用した学習活動を通じて育成される情報活用能力、問題解決的な学習を通じて育成される問題の発見・解決能力等について、こうした学習活動と資質・能力、あるいは教科との関係を整理していく必要があるのではないかということでございます。ここでは特に言語能力と情報活用能力につきまして、関係するワーキングの議論を整理させていただいております。言語能力につきましては、27ページ目から30ページ目にかけて、言語能力特別チームの議論を掲載させていただいております。
  また、30ページ目から情報活用能力につきまして、情報ワークキングの議論を掲載させていただいております。
  それから、現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力ということで、31ページ目から33ページ目にかけては、論点整理の内容を少し編集させていただいております。まとめでは、健康・安全・食や、主権者として求められる力、創造性、グローバル化の中で求められる力など、現代的な課題に対応した能力、いわゆる丸々教育とも言われるものでございますけれども、様々な丸々教育は、これらのどれかの中にカテゴライズされるというふうに考えてございます。
  ここでは、例示的に健康・安全・食に関わる資質・能力について整理しておりますけれども、他についても、同様に今後3つの柱に基づく資質・能力の整理や、文章が切れておりますけれども、カリキュラム・マネジメントの中での教科との関係性を整理していくという予定でございます。
  それから、35ページ目が発達段階や成長過程のつながりということでございます。
  35ページ目、下が何を学ぶかということで、36ページ目でございますけれども、教科の横のつながりとともに縦のつながりということも見据えながら、何ができるかという観点から内容を構成していく必要があるということでございます。このために指導内容につきましても、資質・能力という観点から再整理を行っていくということにしているところでございます。そうしたことを踏まえながら、特に高等学校につきましては、科目構成にわたる見直しということを図ることとしているところでございます。
  37ページは、どのように学ぶかということでございまして、アクティブ・ラーニングにつきまして、「主体的・対話的で深い学び」の重要性ということ、また、38ページ目、指導方法を不断に見直していくための視点であるということ、また、39ページ目にございますような「主体的・対話的で深い学び」、それぞれの内容について整理をしていただいております。従来、丸1の深い学びのところに学習内容の深い理解が入ってございましたけれども、深い理解ということは対話的な学びや主体的な学びを通じても実現されるものでございますので、丸1の上の共通の項目として現在少し整理をさせていただいております。そして、深い学びのところにつきましては、学びの階層的な深さということに着目しながら整理をさせていただいております。
  40ページ目でございますけれども、「深い学び」と、先ほど述べさせていただいた「見方・考え方」の関係性、また、高度な学習課題だけではなくて、発達の段階、子供の学習課題に応じたアクティブ・ラーニングというものが施行されるべきだということでございます。
  それから41ページ目、子供の発達どのように支援するのか、小・中・高を通じた学級経営、ホームルーム経営の充実、42ページ目、学習指導と生徒指導ということを資質・能力を軸に捉え直すということ、キャリア教育の重要性、44ページの個に応じた指導、それから45ページ目、特別支援教育、特別支援学校のみならず、教育課程全体を通じて考えていくということ、47ページ目、日本語の能力に応じた支援の充実ということでございます。
  そして49ページ目、学習評価の充実ということでございます。目標に準拠した評価の実質化ということ、評価を3観点として見直していくこと、また、多様な評価等についても述べてさせていただいているところでございます。
  52ページ目、最後、実施するために何が必要かということでございます。
  53ページ目、教員の養成、採用、研修等も含めた資質・能力の向上ということ。
  54ページ目、下から55ページ目にかけましては環境の整備ということ、家庭・地域との連携・協働、56ページ目、必要な体制整備、57ページ目、業務効率化、そして社会で幅広く理念を共有していくことの重要性ということでございます。
  58ページは、幼児教育でございますけれども、これにつきましても既に学校段階別のワーキングの議論として御紹介をさせていただいております。
  60ページ目、61ページ目にございますような、幼児教育の終わりまでに育ってほしい10の姿を明確にすることなどの見直しを図ることとされております。
  また、68ページ目から小学校でございます。言語能力の育成ということ、国語教育の充実や外国語教育の充実、74ページ目、プログラミング的思考の育成、「カリキュラム・マネジメント」を通じた弾力的な時間割編成ということでございます。
  79ページ目、中学校教育についてでございます。特に多様な課題に対応するための「カリキュラム・マネジメント」の実現ということ、80ページ目、部活動の在り方について整理をいただきました。
  82ページ目は、高等学校教育でございます。先ほどから概要版でごらんいただきました科目編成ということも含めて、「高大接続改革」も視野に入れながら、しっかりと資質・能力を育むような、あるいは84ページにございますような学び直しの充実ということを整理いただいております。
  89ページ目には、専門学科、総合学科についても整理をしております。
  91ページ目、特別支援教育でございますけれども、現状と課題、それから具体的な改善事項、特別支援教育、あるいは特別支援学校のカリキュラムの在り方にわたって御整理をいただいたところでございます。
  まだまだ整理が不十分なところがございますので、是非、細かい点も含めて御指摘をいただいて、さらなる改善を図っていければというふうに存じます。
  また、本日は、御説明は少し省略をさせていただきますが、資料3-2の丸1、丸2は、各ワーキングにおいて御議論いただいた議論の概要版を中心におまとめをさせていただいているところでございます。これにつきましても、適宜ごらんをいただき、御質問あるいは御意見等ございましたらお申し付けいただければというふうに存じます。
  私からは以上です。
【無藤主査】    ありがとうございました。それでは、ただいまの御説明を受けまして意見交換ということでございますけれども、最後にまた申し上げたいと思いますけれども、ただいまの審議のまとめ(素案)については、本日の議論である程度収束するようであれば、次回、8月中を予定してございますけれども、そこで最終的なまとめ(案)に持っていくという段取りを前提に置いてございますので、そういったところも含めながら、是非、きょう、いろいろな御質問、御意見をお出しいただければというふうに思っております。
  それでは、いつものように御意見のある方は名札をお立ていただければ順次指名させていただきますので、よろしくお願いいたします。
  それでは、よろしくお願いいたします。
【今村委員】    失礼します。14時に退室させていただかなければいけないので、先に発言をさせていただきます。膨大な取りまとめをどうもありがとうございました。
  こちらの審議のまとめのポイントの資料1の15ページに、高校総合学習のところについて、「生涯にわたって探究する能力を育むための、初等中等教育最後の総仕上げとなる重要な時間」という表記をいただいておりまして、これについては本当にそのとおりだなと、ここを強調していただいていることはすばらしいと思っております。
  加えてなんですけれども、今回の全体的な改訂の中で、ここにおける全ての高校までもが、全ての教科をアクティブ・ラーニングにしていくという方向性を打ち出されていることによって目指すべき状況に近付いていくことになると思うんですけれども、現行の総合的な学習の時間を改め、次の総合的な探究の時間がほかの教科のアクティブ・ラーニング化の次にくる重要度の低いミッションという形に認識されてしまわないように、ふたば未来学園の事例が以前の会議で取り上げられていましたけれども、例えばふたば未来学園のルーブリックのような、この総合的な学習の時間はカリキュラム・マネジメントの出発点であるということをもう少し強めに打ち出してはいかがかなと思っております。どうしても学校の先生方の忙しい時間配分の中で、総合学習までは手が回らないという声も多く聞く中で、さらに手が回らない状況になるんですけれども、総合を中核にして高校という居場所を再構成するからこそ高校がよりよくなるのだということを強調していただくと、総合的な探究の時間が本当の意味で実現してくるのではないかと考えます。
  以上です。
【無藤主査】    ありがとうございました。総合的な学習といいますか、今度の新しい言い方で、総合的な探究の時間の趣旨は、今村委員のおっしゃるとおりだと思いますので、しっかり伝わるように少し検討していただきたいと思います。
  では、キャンベル委員、お願いします。
【キャンベル委員】    私もおおむね、大変よくまとめられていて感謝したいと思います。
  言語活動について、二つほどお聞きするというよりは、お願いがあって、今マイクをとったんですけれども、資料3-1の27ページから言語能力について、今まとめていただいたんですけれども、このワーキンググループの中で、ここに書かれていることと並行してといいますか、一緒に、外国語と日本語、国語の教育を、それぞれの教科があって、しかし、共有する、あるいは共通するタスクであったり、マネジメントのことも含めて、どういうふうに総合的に能力を向上できるかということは、かなり具体的に議論されていたと思います。
  この素案を拝見しますと、それぞれ俯瞰的にどういうことが議論されたかということは、大体すくい上げられていると思いますけれども、具体的に外国語と国語の教育の中でどういうところに接点、あるいは通路を作ることによって、相互に学びを豊かにできるかということが欠けているようにお見受けします。音韻、表記、言語に対するメタ認識も含めて、連携をする形でその学び活動を向上させるという議論が、別の場所にまとめられているのかもしれませんけれども、これを拝見しますと、ちょっと欠けているように感じました。
  もう一つ、47ページに、同じく日本語についてですけれども、外国語が母語の子供の教育について、平成26年度以降の特別の教科課程の制度化を受けて、通級による指導ができるということがここに明記されていますけれども、その支援といいますか、26年度以降の実績というものに基づいて、それはどういうふうに今の時点で総括でき、どういう問題が出、そして次の指導要領の中ではどういうふうにそこを改訂していくのか、あるいは強化していくかという視点も、ちょっと見いだせないので、もう一歩積極的に、外国人児童の日本語、そして外国人児童が教室にいることによって日本人の児童がより豊かな学びができるかということを、能動的といいますか、具体的に記していただけないかというふうに、今読んで思った次第です。
  以上です。2点です。
【無藤主査】    ありがとうございます。いずれも個別の部会では議論があったように聞いていますので、それが分かるようにもう少し書き足す工夫を是非お願いしたいと思います。ありがとうございました。
  それでは、ほかにいかがでしょうか。門川委員、お願いします。
【門川委員】    ありがとうございます。この間、欠席が続いて誠に申し訳ありません。先生方の議論、ワーキンググループ等の議事録等は拝見させていただいてきました。非常によい審議のまとめ、提案を作っていただいたと感じております。感謝申し上げたいと思っています。
  京都市でこの十数年、熱意あふれる教職員と地域、親、民間企業等々、市民ぐるみ、社会総掛かりで様々な教育改革を実践してきて、成果と同時に課題もあります。この場において、そうした提言もさせていただきました。これまで取り組んできた開かれた学校づくりが、社会に開かれた教育課程という形で学習指導要領の理念として高められてきている、あるいは特色ある学校づくり、校長への権限委譲等々がカリキュラムマネジメントという形で深化していることについて、非常に心強いものを感じています。今後の課題は、こうした理念、考え方をどう教職員一人一人にしっかりと伝え、そして、さらに子供や親、地域社会、企業、大学に伝えて、社会総掛かりで実践していくのかということになろうかと考えています。
  その視点で幾つか申し上げます。かつて総合的な学習の時間が学力低下を招いたというような大きな誤解が広まってしまったことがありました。しかし、総合的な学習の時間は、学力向上への切り札であり、総合的な学習の時間にしっかりと取り組んだ学校は、確実に学力向上している。こういうことがあまり社会に理解されていません。今回の改訂については、学習指導要領の理念を「ほんまもん」にしていく努力こそがこれから大事ではないかなと、こんなことをまず感じています。
  次に、18歳選挙権が施行されました。こうした状況も踏まえ、全国的に主権者教育を一生懸命やっていても、選挙離れ、政治離れは起こっている。今回、京都においては教育委員会も教育現場も頑張ってくれたおかげで、全国の平均からいえば、18歳、19歳の投票率が8ポイントほど高かったこれは非常に評価できることではないかなと。制度を改正したとき、真に成果を上げるためには、まずは関係者がその理念・趣旨をしっかりと共有し、そして行動に移してしていくことが、何より重要であると、このように思っているわけです。
  次に、これまで進めてきた学校運営協議会の取組をはじめ、開かれ学校づくりについてです。今、小中学生の10倍大人がいます。こういう視点で考えたとき、大勢の大人たちが本気になって子供の教育に参画していただく、こんな仕組みづくりがやはり大事だと思います。文部科学省は、生涯学習も担当しておられるが、生涯学習の成果を子供の教育に生かす、地域の教育力、学校の教育力向上に生かしていく、そんな視点が大事だと思います。学びの成果をしっかりと生かすというのは、大人にとっても大事なことだというように改めて思っています。
  次にワーク・ライフ・バランスというのが厚生労働省を中心に叫ばれています。京都市では、「真の」ワーク・ライフ・バランスと言っています。「真の」意味は人間らしく生き生きと働く、同時に家庭も大事にする。さらにもう一つ、地域貢献、社会貢献をする、そのことが人間として豊かな人生になっていき、そして地域社会も家庭も充実するということ。こうした視点を子供も地域社会全体で学ぶという見地から、大人の生き方も含めてこの社会に開かれた教育課程という大改革に生かしていけないだろうか、こうしたことがいまこそ必要なのではないかなと思っています。ワーク・ライフ・バランスの中身にエデュケーションが入っていく。ワーク・エデュケーション・バランスにしていく、そうしたことをこういう場から訴え、働くことと家庭と地域貢献、地域で子供を支援する、学校を支援する、といったところに広まっていくと、本当にこの社会に開かれた教育課程の実践につながる。そして政府総掛かり、社会総掛かりで実践していく、こういうことだと考えています。
  その次に、京都市では学校評価ということをずっと実践してきました。しかし、学校評価の限界も感じています。子供の学びと育ち全体の評価、学校と家庭と地域社会、そして企業も大学も含めて、それが子供の学び、育ちにどううまくつながっているか。学校評価を子供の学び、育ち、地域全体の評価につなげみんなで高めていく、こういう地域社会全体の評価に変えていかなければならない。そしてそれぞれが実践し、こういった視点も踏まえ、今回の学習指導要領の改訂が、学校評価も含めあらゆる仕組みを変えていく、社会のあり様に変化をもたらすといった視点も大事ではないかなと思っています。
  それから、アクティブ・ラーニングですが、主体的・対話的、深い学び、非常に大事な視点であります。しかしここでまたぶれてはいけないのが教えるべきは教えるということです。審議まとめの中にも、生きて働く知識の習得、知識量ということもしっかりと書かれていますが、どうも現場というのは一方に振れる側面があります。生き生きとして楽しかったら授業が成立しているような感じになる。これではいけないということは、すでに抑えていただいているとは思いますが、念のために申し上げておきたいと思っています。
  最後に、学校現場、本当に多忙であります。学校をブラック企業にしてはならない。民間企業だったらブラック企業ではないか、元教育長として、反省も込めてそう思うんですけれども、この状況の改善のためには、社会全体が学校を支援する、教職員を支援する、同時にいろいろな業務改善が必要であります。しかし、何よりも教職員の定数改善、ここで議論することではないのかもしれませんけれども、そのことなしに、この学習指導要領の改訂は成功しないのではないかなということを申し上げておきたいと思います。こうしたことも何らかの形で書き込んでいただければありがたいなと思います。よろしくお願いします。
【無藤主査】    ありがとうございました。幾つかの論点、大事なことばかりなんですけれども、学校も広く社会とのつながりをもっと強めるというのが、まさに社会に開かれていく教育課程という基本的な考えだと思いますので、今回の指導要領は、全ての教職員とともに保護者や地域社会にどう伝えていくかということと、既に学校と地域の協働性を各学校で実施していこうという取組が始まっているわけでありますけれども、それが1つ。
  それから、教えるべきことといいますか、しっかり知識を身に付けるということとともに、子供たちの意欲や思考力を育てるという組み合わせこそが、今回の指導要領の基本、理念だと私も理解しております。
  そういったことや多忙性などについて、少し事務局から、今ここでは指導要領自体を議論しておりますが、ほかのところでいろいろな議論なり提案があったように思うので、少し説明していただけるといいかと思いますが。
【大杉教育課程企画室長】    本日は、資料はちょっとお配りしてないんですけれども、先日の会議では、少し業務改善等に関する議論の状況なども御紹介させていただきました。地域連携なども含めて、新しい教育課程の在り方を支えるために必要な議論ということを様々、同時並行で進めておりますので、そういったこともしっかり、少し整理をさせていただきたいと思います。ありがとうございます。
【無藤主査】    ありがとうございます。
  それでは、品川委員、よろしいでしょうか。
【品川委員】    ありがとうございます。事務局におかれましては、本当にすばらしくまとめていただき御礼申し上げます。そのうえで306ページ全部熟読したところで幾つか申し上げたいと思います。
  まず1点目は、今、門川委員がおっしゃったとおり、これをいかに教育現場だけではなくて保護者、それから関わる全ての人たちに理解してもらうかという、そこがものすごく大きいだろうなということを感じております。学校関係者も校長先生、教員だけではなくて、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、学校図書館の学校司書の方など、学校に関わるあらゆる方々がこの理念を理解するということをどう徹底させていくのか。そこのところを是非また今後、もう少し踏み込んでいただければなというのが1点目です。
  そのためには、この素案をまとめていただいた薄いものがあると思うんですが、実はそれがすごく大事だなと思っております。素案を非常に分かりやすくまとめていただいているのですが、きょうの資料の1です。この1ページ目に三つの柱がございますが、実は今回の改訂の肝はここにこそあると私は考えているのですが、ここの説明がすごくあっさりとしておりまして、3行で終わっているのは、ちょっと切ないなという思いとと同時に、これだけが出回ったら新しい学習指導要領の狙いそのものが誤解されるというふうにすごく思うんです。これが出回ったときには、アクティブ・ラーニングなんだ、カリマネなんだと、そこだけが独り歩きすることを非常に危惧します。我々が非常に議論を重ねたのは、どういう世の中になるからどういう子供たちをそんな世の中に送り出していくのかというところだったので、ここの3本の柱のところは、もうちょっと詳細に、明確にしていただければありがたいというのが1点目です。
  2点目は、全体を通してなのですが、この資料3-1と3-2の1と2の2を拝見して幾つか申し上げたいと思います。
  総論のところには、学びの意義というところで入れていただいているんですが、2回ほど読んで印象に残ったのは、自分のことを、もっと可能性を高めようとか、自分を深めようとかいう視点というか、文言は非常に多かったんですけれども、自分と異なる他者を認め、尊重するという文言が、ちょっと弱いという点です。冒頭のところには書いてあるんですが、例えば学校の意義のところも、それから資質・能力の関連性のところも、後半の特別支援のところには書いてあるんですけれども、なかなか「多様性を認める」ということを具体的に指摘する文言が見当たらず、もう少し書き入れる必要があるなということを痛感しております。それは、先日の相模原の事件もそうですし、ヘイトスピーチもそうですし、恐らくこの学習指導要領が実際に稼働してくるときには、例えば移民の問題ですとか、今日以上にもっと多様性のある背景を持った人たちと私たちが生きていくということが前提になると思うんです。だからこそ、論点整理のときにはそこまで踏み込まなかったんですが、やっぱりここではしっかりと自分とは異なる他者を認め尊重するということを随時入れていく必要があるのかなというふうに思っております。
  そこと関連するんですが、総論のところには書いていただいているんですが、実はこの学科、各教科関連のところですね。学校種のところとか、それから教科のところを読むと、あまり「一人一人の発達特性」とか、「認知特性や学習スタイルを踏まえる」という文言がないように思われます。創意工夫の方法というか具体例を紹介するということは入ってくるのですが、私はこの点はそこまで踏み込んで、あらゆる箇所に随時書き続けるということが正しく伝えていくポイントだと思っております。そうしませんと、医学診断があるお子さんは特別支援教育、若しくは通級に行くというふうになりますが、じゃあ、医学診断には満たしていないけれど緩やかに傾向のあるお子さん、若しくはボーダーなケースは、またニッチに落ち込んでしまう可能性が出てきます。特別支援教育か通常教育かという教育の場の問題ではなくて、あるいは個々の子どもの意欲等情動的な問題ではなくて、その子が学べるかどうかは教える側の問題、指導の在り方にこそあるというふうにしっかりと書いておく必要があるということを感じました。それが2点目です。
  もう一つ、これは情報活用能力のところに、それからあと教科のところの読書のところにも少し触れられてあったのですが、学校図書館に関する記述が余りにも少ないというふうに感じました。
  ICTのところで、丸の最後の方に2行ぐらい、学校図書館も準備する、みたいに書いてあるのですが、それでは余りにも寂しい。実際、現在、学校図書館の会議も開いておりますので、しっかりと公共図書館と学校図書館との連携であるとか、まさにアクティブ・ラーニングというのは学校図書館が拠点になり得るものなので学校図書館の整備・充実、それから蔵書構成の確認等、そういったところも踏み込んで書いていただければありがたいというふうに思っています。
  それから、最後に一点、質問です。実は今まで余り評価のところの資料がなかったので、今回頂いたものをよく読み、私がよく分からないので事務局に教えていただきたいのです。総則のあらゆるところで個に応じた指導とか多様性を認めるということは書いてありますが、今ここに書いてある評価の在り方になった場合に、例えば、診断のあるLDのお子さんやディスレクシアのお子さんは通常学級に在籍しておりますが、例えば、小学校で英語の教科化が実際に始まったときに、本来の障害特性に対する効果的な指導がないままの一斉指導だけでは、なかなかその単元が目的とするものが学べない可能性が考えられます。そういった場合の評価、観点というのは、どういうふうになるのでしょうか。現状ですと、本人が最大限の努力をし、すごく頑張っても、結局、その単元が目指すものが獲得できませんと1が付くわけですよ。それは本当の意味で公正性の担保になっていないのではないか。そういう状況で本人にやる気を出しましょうと言ってもかなりしんどいうえ、アンフェアな気がしてなりません。ただ、現状ではこの問題は今のところ通常学校と特別支援教育と2本立てなので、しようがないのかもしれないんですが、新しい学習指導要領では、やはりそこを踏み込んで書いていく必要が、例えば、評価の場面こそ合理的配慮をしっかりと行うなど、やっぱり踏み込んで書きませんと本当の意味のインクルーシブな教育制度にはなり得ないのではないかなということを考えております。いや、今のこれで、もう十分それは可能だということであれば、全然それで問題ありません。しかしながら、私はそこをよく分からなかったものですから、教えていただければと思います。
  以上です。
【無藤主査】    ありがとうございます。
  ちょっと整理する、幾つかありましたので、三つの柱についての記述。特に資料1のポイントについて、もう少し分かりやすくということと、他者、特に多様な人々の理解というものをもっと明確にということ、また学習、指導の過程で、個人の様々な特性を生かす指導法に触れるべきであるということ、更に学校図書館の役割をもう少し詳しくという、いずれもそのとおりだと思いました。
  最後の評価のところ、非常に難しいポイントなんですけれど、事務局から何かございますか。
【大杉教育課程企画室長】    今すぐ御返答できずに申し訳ございませんけれども、少し特別支援教育課の方に現状等を聞きながら、品川先生にも御相談させていただきながら、少し整理をさせていただきたいと思います。ありがとうございます。
【無藤主査】    評価のところについては、大分以前に、この教育課程部会の中での議論の報告というのも、相当前ですけれども、してございますけれども、やはりそういう中でも、今、御指摘の部分は一番難しいところなんですが、通常学級の中で特別診断名がない場合には、例えば、知識として不十分であれば不十分だと、ある観点ではするしかないわけでありますけれども、ただ、評価の本来に照らしてみれば、評価というのは最終的な評定をするということよりは、観点別な評価の中で、その生徒の学習を励まし、次にどこに向かうかを示唆していく働きであるわけですので、もう少しそこがはっきり出てきて具体化できると望ましいのかなというのは、ちょっと個人的に思ったところでございます。
  それはちょっと御検討いただくとして、それでは、池野委員、よろしいでしょうか。
【池野委員】    ありがとうございました。まとめ、とても膨大なものだったと思いますし、後で、それをちょっと皮肉りたいなと思っているところもあるんですけど、大きくは三つお願いしたいというか、少し整理するとともに、書き込んでほしいなというのを申し上げたいと思います。
  第1点目は、今回の学習指導要領改訂の一つの柱として、社会との関係といいますか、社会に開かれた教育課程だと思っているんですけど、そのときの一番大事なことは、18歳の学びといいますか、18歳のときにどういう子供たちを育てたいのかというのが見えるということが一つあると思うんです。それが生きる力なり、生き続ける力なりになっていることだと思うし、それが生涯、社会の中で働くなり、学び続けるなりするときの基礎になるようなものを培うことだと思うんですけど、そういうものをもっと強調してほしい。学校だけではなくて、社会の中でそれが発展的に続くという点を考えてほしいということです。
  それから二つ目は、カリキュラム・マネジメントのポイントは、今回出てきた一つの字異様な点として、「学習指導要領は学びの地図です」という言葉があります。これは多分、二つの意味で解釈できるだろうと私は思います。一つは、子供たちがどのように育っていくかが示されていますよ、一つの模範として、モデルとして示されていますよということだと思うんです。幼稚園から小学校、中学校、高等学校、18歳までの子供たちがどういうように学んでいくかが一つのモデルとして示されていると。それからもう一つは、先生方からいえば、18歳のときに、こういうとこまでするためには、どういう力をそれぞれの学校で担わないといけないのかが、あるいは各教科なり領域などで担わないといけないのかが示されていますよということだと思うんですよ。この二つが同時に満たされたときに、学びの地図がきちっと見えて、幼稚園から高等学校まで、どういうように育っていくか、それぞれの役割がどうなっていって、縦と横の関係がこうなっているから、こういう子供たちを育てることができますよという、それこそマップとしての、地図としての役割を果たしているので、例えば、中学校2年生の国語だったら、こういうことをやらないといけないんだよねとか、社会科では、こういうことを学ぶ必要があるんだよねというのがポイントとして見えるということだと思うんです。そういうことができるように、縦と横の関係がカリキュラム・マネジメントとして見えるようにしてほしいということです。それが、やっぱりある程度必要だろうというのが二つ目です。
  それから三つ目は、それをどのように子供たちの学びとして評価がされるのかということを、当然、カリキュラム・マネジメントの点でもそうですし、子供たちの育ちの点でもそうですけど、先生方がつながって、理解されていって、学びがより促進するようにしないといけないと思うんです。
  例示として、キャリアパスポートのキャリア教育の中で出てきているんですけど、一般的には通信簿と言われるものを作って、先生方はするんですけど、私から見ると、それは学校の中の金庫の中に入って、誰もその次の先生や学校につながっていかない、金庫の中に入っとるだけという感じです。だけど、それが本当につなげようと思うと、A子さんやB子さんが小学校5年生のときこうだったのが、中学校1年生はこうなったというようにパスされて、子供たちがつながって、生きる力なり、あるいは学びの力なりが育っていくことが見えるようにしておかないといけないんだと思うんです。その見えるものを、何かやっぱり手立てがもう一つ必要ではないかなと思います。キャリアパスポートのような、何の教科でも、それから学年でも、学校間でも、そういう何かの手立てが必要だと。これは学校の中で見つけ出すことも必要なんですけど、私たちも少し提案する必要があるんではないかなというのが私の意見です。
  最後、付け足しなんですけど、たくさん資料あるんですけど、あり過ぎて、多分読むのが大変というのがあります。前にも言ってますように、簡単な何か分かりやすいパンフレットを作ってほしいというのが私が最後に言いたいことです。
  以上です。
【無藤主査】    ありがとうございます。
  最後のパンフレットの方は是非お願いしたいと思っておりますけれども、大きく三つのことだと思いますが、子供たち、生徒の学びが18歳までどう展開していき、また、その後も学び続けていくということを目指すという辺りをもう少しクリアにしていくことが1点目でしょうか。学びの地図というところが、その言い方は今回初めてかもしれませんけれども、要するに、子供たちがどう学んでいくか、子供たち自身にも、教師にも、保護者にも共有できて、未来が見えていくことなんだろうと思いますけれど、その辺をはっきりするということ。それから最後は、子供たちの学びの経過みたいなものを補完し、学年、校種を超えて、伝え生かしていく在り方だと思いますけれども、ある意味では、学びの地図というものがもしあるなら、その履歴というのは過去になるんですけれども、というものを具体化するというのは、評価の議論でいえば、ポートフォリオ、その他、提案はあるんですけれど、少しその辺りで、事務局から何かコメントがあれば、加えてください。
【大杉教育課程企画室長】    ありがとうございます。
  御指摘のとおり、少しポートフォリオ評価については書き込ませていただいております。
  キャリアパスポートは、少し特別活動における具体的な位置付けを置きながら、かなり学習指導要領における明確な位置付けを置きながらというものになりますけれども、御指摘のような学びの履歴ということですね。指導要録や通知表の在り方、それからこのキャリアパスポートの在り方、ポートフォリオ評価の在り方、少し整理をさせていただきまして、キャリアパスポートのような位置付けとするのか、池野先生の御発言にもありましたように、その学校における工夫を促していくのか、少し検討させていただきたいと思います。
【無藤主査】    ありがとうございました。
  それでは、渡瀬委員、お願いします。
【渡瀬委員】    よろしくお願いします。
  書いていただいたのを、もしかすると見落としているかもしれませんし、大杉室長の御説明を聞き落としているかもしれませんけれども、是非2点、明記していただけたらと思うことをお話しさせていただきます。
  1点目は、先ほどキャンベル委員がおっしゃいました言語能力のところについてです。この中に外国語と国語の関係についての記述はなされていますけれども、外国語と国語以外の教科との関わり、それぞれの教科の特性を生かしながら、外国語とどういうふうに関わりを持たせることが可能性として考えられるのかということについての記述があると良いのではないかと思います。
  もう一点は、現行の学習指導要領が教えるべき内容に関する記述が中心になっていたというものを、今回は何ができるようになるのか、そして、そのために何を学ぶのか、どのように学ぶのかという観点で進めていくということですけれども、それを目指すためには、学ぶべき内容を概念レベルの問いの形で記述していくということが、私はとても効果があると思うんです。社会科のワーキングで、それを一覧表にしたものを見せていただいたと思いますけれども、やはり単元ぐらいのまとまりの中で、どういうふうな概念を身に付けたら良いのかというのを問いの形で示すのがよいと思います。どうしても先ほどの現行の指導要領は、教えるべき内容に関する記述が中心だったというふうにありますけれども、問いの形にした方が、それが単なる教えるべき内容の記述に終わらないような気がします。ですから、是非、この問いの形で記述することを、社会科以外の教科でも試みていくような方向性が示せると良いのではないかと思います。
【無藤主査】    ありがとうございました。
  最初の言語能力のことは、おっしゃるように、もちろん国語と外国語が中心ですれど、全ての教科等で育成するという根本がありますので、それがはっきりするようにという御指摘だと思います。
  2番目のところもおっしゃるとおりでありまして、今回、見方・考え方を身に付けていくというのは、子供の側からいえば、どういう問いを立てて考えていくかということでもあろうと思いますので、問いという、より具体的に指導が見える言い方、非常に重要だと思うので、是非、取り入れる方向で御検討いただきたいと思います。
  それでは、市川委員、お願いします。
【市川委員】    私の方は、何か要望ということよりも、去年の論点整理以降、これだけ議論を積み重ねてきて、こういう点がすごくよくなったんではないかという点、2点、ちょっとお話ししたいと思うのですが。
  一つは、社会に開かれた教育課程ということの意味ですね。論点整理が去年出た頃からよく言われていたのが、次の指導要領改訂の目玉はカリキュラム・マネジメントとアクティブ・ラーニングであるというようなことがよく言われていたと。現場でも、そこに意識が集まっていたでしょうし、報道も割とそういうところが強調されていた。もちろん、それは目玉ではあると思うんですけれども、カリキュラム・マネジメントというのはマネジメントですから、どちらかというと学校経営の話で、アクティブ・ラーニングというのは、どのように学ぶかですから、ある意味、方法の話。この社会に開かれた教育課程というのは、理念そのものであると思うんです。一体何のために学校で学んでいるのかということに対する学校教育の理念そのものに関わる非常に重要なことではあったと思うんですが、やや書きぶりも注目度も当時は低かったんではないかという気がしていました。やっぱり片仮名の新しい言葉の方が目立つのかもしれませんが、社会に開かれた教育課程って、ちょっと地味だと思います。
  ただ、5ページ目に、そのことの意味が非常にはっきり書かれたということは、私は重要なことだと思います。5ページ目のマル1では、要するに、子供たちや先生の視野ですね。社会や世界の状況を幅広く視野に入れるとか、学校教育を通じて社会を作っていくんだという目標を持ってほしい。教育課程を介して、その目標を社会と共有するというようなことが、まずこれが一つの意味ですね。それから2番目は、これが資質・能力ということなんですが、資質・能力というのが、これからの社会に生きていくための資質・能力という、そういう資質・能力を伸ばすんだということが書かれていると。それから3番目は、実際にそういう教育課程を実現するときに、社会と連携しながらやっていきましょうということが書かれていると。この社会に開かれたということの三つの意味というのが非常に重要なことで、大分これでイメージが湧いてくると思うんです。
  それとも問題は、実際のカリキュラムの中で、この三つの視点がどれだけ生かされるかということと、学校の先生や子供たちがこっちに向かっていくかということです。それから最後に、じゃあ、こういうことをどう評価するのか。
  子供たちが、こういう社会に開かれた力を身に付けたかどうかという、個々の子供の力を評価するという面もありますが、学校なり行政なりが評価されるということもあると思うんです。こういうことが本当にできたんでしょうかと。実際に学校教育がこういうふうに動いたということが、例えば、10年後、20年後に評価されるという、そういう教育をする側の評価。これは何も文面に書き込んでほしいということではなくて、じゃあ、それをどういう形で評価していくのかと。確かに、このとき以来、今回の改訂以来、こういうふうに変わりましたということが評価されるかどうか、どういう評価をしたらいいかということが、今後大事かなと思いました。
  もう一つの点は、アクティブ・ラーニングなんですけれども、これが教育方法とはいいながら、何のために、そういう方法をとっているのかという理念と、あと注意点がかなり書かれるようになったということ。これが18ページ、19ページにもあると思いますし、あとアクティブ・ラーニングの具体的なところです。
  すいません。私、間違えていました。アクティブ・ラーニングについてですので、38、39です。
  実際にこの1年間の間、アクティブ・ラーニングということが、かなり現場でも言われて、私もどこの都道府県に行っても、あるいは小・中・高通じて、アクティブ・ラーニングというのが物すごく大きな影響力を持って、キーワードになっていると。そのときに、でも、アクティブ・ラーニングって一体何なんですか、何をやればいいんですかという中で、これをやればいいんですよねという特定の型のみが先行してしまうというようなことも、この1年間、あったような気がしていました。ここではっきりと、何も特定の型をやれば良いというものではなくて、一体そこにどういう狙いがあるのかということが、はっきり視点として示された。やっぱりこういう趣旨で、こういう狙いがあるのだという、そこが大事だということが、かなり強調されたということと、逆に、ここでかなりはっきりと、ただ活動すればいいというものでないと、活動があって学びなしになってしまっては困るということが、かなり注意点のようにして、ちょっと厳しいような書き方に見えるかもしれませんけれども、これだけはっきり書かれると、やっぱり大事なことは、一体そこで子供たちにどういうことが身に付くのか、深い学びを目指すということとかですね。対話的というのも、単に形だけの共同学習にすればいいのではないというようなことが、これだけはっきり書かれたということは、この1年間の動きをいろいろ見た上で、これだけ書き込まれたと思いますし、非常に大事なことだったのではないかと思います。
  以上です。
【無藤主査】    ありがとうございます。
  社会に開かれた教育課程とアクティブ・ラーニング、それぞれ、この1年間、この特別部会で、皆様方に一生懸命議論していただいた、その最重要ポイントを明確にしていただけたと思います。ありがとうございます。
  それでは、平川委員、お願いします。
【平川委員】    失礼いたします。
  この世の中の要望が非常に多い中で、本当によくまとめていただき、ありがとうございます。また、私どもも、委員一人一人が、いろんな立場で、いろんなことを言う中で、本当によくおまとめいただき、感謝しております。ありがとうございます。3点ばかり、改めて一読させていただいて感じたことをお伝えしたいと思っております。
  まず、3-1の素案の3ページ目の、学校の意義の再確認のところでございます。
  皆さんおっしゃっていますように、社会に開かれた教育課程とか、いろいろ言っていただく中で、学校の意義というのを改めて言っていただいて、本当に感謝をしております。
  学校長の立場として、また教員に今後、学校の意義をどう伝えるかということですけれども、これは当たり前なんですけれども、なかなか教員が忘れがちな、学校の存在意義で一番大事なのは教育課程であるというところが、ちょっと。長く仕事をしていたり、日々の多忙に流されてしまったりと、どうしても中学校ですから部活動に必死になってしまったりという中で、教育課程が大事なんだけれども、ついつい忘れがちなので、ここに少しその辺りのところを加筆していただけると、全国の先生方にも、やっぱりそうだというふうに思っていただけるんじゃないかと思いました。
  もう一つ、中学校の校長としてもお話しさせていただきたいと思いますが、80ページの部活の部分でございます。ここの部分については、この会でも多忙化、負担軽減というようなお話が出て、この81ページにも加筆していただいて、大変感謝しておるところなんですけれども、OECDの国際教員指導環境調査でございますが、こちらの方でも、かなりやっぱり中学校の教員の多忙な部分というのが浮き彫りになりまして、本日も、今、夏休み中ですけれども、土日にも、休みにもかかわらず、やはり中学校は部活動で、部活動、部活動で、教員も頑張って、真っ黒になりながら頑張っております。
  本校で、部活動は教育課程外でありながらも、大切な学校教育活動の一つですということを、保護者、それから地域、教員などに口を酸っぱくして申し上げておりますと、教員も多少、そうなんだと、やっぱり部活動は教育課程外なんだということを認識しまして、自主努力というか、例えば、土日ずっとやっていたのを、日曜日のちょっと午後だけ外してみようとか、そういうような形でやり始めているかなというふうに感じておりますので、ここのこの部活動は教育課程外であるというところも、保護者も知らないですし、教員も知らないことが多いので、微妙なところではありますけれども、はっきりくっきり書いていただきたいなと思います。
  それと、最後に品川委員がおっしゃいました学校図書館の記載、確かに本当にないなと私も思っておりまして、本校でも学校図書館改装しましたところ、20人しか昼休みに来てなかったカビ臭い図書館が、今や160人も昼休みに来るような人気スポットになりまして、このアクティブ・ラーニング、調べ学習ですとかリファレンスの充実、あるいは深い学びとか、教科を一貫するとか、あるいは言語能力の向上というところには、この学校図書館を起点とした充実をしていかないと、どうしてもなかなかできないんじゃないかと思っておりますので、ここの部分の記載を改めてお願いしたいと同時に、学校図書館充実させるというのは、門川委員がおっしゃるように、本当に外の力をかりないとできません。本校でも学校図書館を改装するとき、200人のボランティアに来てもらいました。そうじゃないとなかなかできないんですが、保護者も地域も喜んで、必ずやってくれるので、親和性が非常に外の力をかりるというのは高いので、是非、ここの記載はお願いさせていただきたいと。高校生の不読率の調査でも、たしか50%と以前頂いた資料でも出ておりまして、驚いたのを覚えておりますけれども、是非、この学校図書館を起点とした学校教育の充実というところをお願いできればと思っております。
  以上です。
【無藤主査】    ありがとうございます。
  学校図書館は、まさにアクティブ・ラーニングを進める中核だと思いますので、是非、詳しく強調していただきたいと思います。
  それとともに、学校の意義の部分で、もちろん学校の中核、そして時間的にも教育課程に関わる教育活動が中心ですから、おっしゃるとおりのことを明記していただければと思いますけれども。
  3点目の、部活動と教育課程との関係は、少し事務局からコメント頂ける方がいいかと思います。
【大杉教育課程企画室長】    少し表現ぶりを検討させていただきます。
【無藤主査】    部活動については、学習指導要領の特別活動の部分で言及されておりますので、教育課程内という部分を含んでいるとは思うので、ちょっと微妙なところがあるので、より正確に記載をお願いしたいと思います。ありがとうございます。
  では、牧田委員、よろしいですか。
【牧田委員】    ありがとうございます。すごい忠実に、たくさんの事柄を全て盛り込んだ審議のまとめになっていると思います。
  私、現場の立場で思ったことを少し言わせていただきますと、論点整理が出てから、いろんな議論が学校現場で巻き起こりましたけども、私が感じている一番遅れている部分は評価の部分だと思うんです。評価観の転換というのは、生徒、教員、保護者、どの面を切り取っても、やっぱり値踏み、点数化、ポイント化という評価観が根強くありまして、いいところをきちんと見てあげようと、価値付けてあげようというような評価観がなかなか現場に生まれてきていません。そういう面でいいますと、これがどういう形になるか分かりませんけれども、「審議のまとめ(素案)のポイント」というところがございますけれども、そこにも余り評価のことが触れられていないので、そこを少し強調していただけたらなと思います。
  それが1点と、2点目ですが、同じく(素案)のポイントの2ページの一番上の丸ですけども、これは私だけの感覚なのかもしれませんが、そこの一番上の丸の最後の行に、「知識重視か思考力重視かという二項対立的な議論に終止符」と、こうあるのですが、これって随分前に終わってるんじゃないかなと、私はそう思っていたんですけど、今回のこれで「二項対立的な議論に終止符」というのは、私の感覚が違うのかもしれませんが、ちょっとしっくりこないところでございました。
  3点目ですが、これも長い方のどこかに書いてあったとは思うのですが、学びを、いろんな学習をリンクさせていくのは子供自身でございます。それを教員がきちんと評価をしながら、子供の中で資質・能力を培うということになるんですけれども、そのためには、余りせかせかしてはいけないと思うんですね。長期的な視点で学習をする方も、それと保護者も見守ってやらないといけないかなと思うんですけれども、こうやって学習内容のことが、やっぱり指導要領ですから、次々出てくるのは仕方ないんですけれども、それを少し長期的な視野で見守ってやると。学習自体も細切れの学習ではなくて、ロングスパンの学習という議論もございましたけれども、少しそういうゆとりを持って学習に取り組む、周りも見守ると、そういうふうな視点も欲しいかなと思いました。
  以上です。
【無藤主査】    ありがとうございました。
  評価の基本的な考え方は、長い方の資料には割と書いてあるんですけれども、それをポイントにも反映させるという御指摘、ありがとうございます。
  それから、2番目の知識重視か思考力重視かではないというのは、確かに10年前の中教審答申に同じことが書いてはあるんでありますが、十分伝わり切れていないかなという懸念のために書いているのかなと思うので、中教審なり文部科学省、指導要綱、今まで二項対立していたと言っているわけではないんですけど、それをより明確に、じゃあ、書いていただければと思います。
  最後の学び、長期的にというのは、私の考えでは、資質・能力の考えが、まさにそれなんだと思うんです。資質・能力で、ここを三つの柱で整理しているのが、1時間1時間じゃない、もっと長く、しっかり育てるということなので、そういう意味合いが分かるようにお願いしたいと思います。ありがとうございます。
  では、小川委員、よろしくお願いします。
【小川委員】    ありがとうございます。
  本当に膨大な資料をまとめていただきまして、どこを見ても本当に大事なことがたくさん載っているわけなんですけれども、私、現場の立場から、授業を今後どのように授業改善、これが最終的に一番求められることだと思うんですよ。授業の質を高めていくことということが、ここにまとめられているものを具現化していくことにつながっていくのだろうというふうに思います。
  今、本校、校内研修でも、アクティブ・ラーニングの三つの視点、主体的、対話的、そして深い学びというような三つの視点で取り組んでおりますが、やはり深い学びというような視点の研究というのが現場でも非常に難しい、どういうふうにやっていこうかというようなところが、今、夏休みの校内研修の課題でもあります。
  その深い学びとセットになっているのが、見方・考え方だと思うんですけど、このおまとめいただいたものの中の40ページのところにも、今回、かなり深い学びと見方・考え方ということで、学びの深まりの鍵となるものは見方・考え方であると。なるほど、そのとおりだというふうに。それを軸としながら、幅広い授業改善の工夫が今後展開されていくことが求められる。それが学習課程の質的な高まりになっていくのだろうということが分かるのですが、このまとめに対して云々ではないのですが、では、そういう見方・考え方というのは、今きっと、恐らく各教科等で整理されていて、それらが一覧できるような形で総則などにもまとめられるのかもしれませんが、是非、現場として取り組みやすい、特に小学校の現場の教員がそういったものを理解しやすい、取り組みやすい、実践化しやすいような、何かまとめ方というようなことをお願いしたいなというようなことが1点です。それがアクティブ・ラーニングの成功につながっていくのではないかなというふうに思っています。
  それからもう一つ、小学校の方で、言語能力育成の重要性ということが書かれて、私も本当にそのとおりだと思います。豊かな言語能力によって子供たちの生活が豊かになっていくというのは、本当に日々実感しているところなんですが、ちょっと、よく読んでいけば、きちっと理解できるのだと思うのですが、語彙量を増やすとか、質を増やすとかということが、単純に量が増やされればいいのだというようなことなどに流れていかないように気を付ける対応、豊かな活動や体験があって、また様々な教科等々の関連があって、そして本来の意味での骨太な、そして活用できる語彙につながっていくというようなことなどを大事にしていただきたいなというふうに思っています。
  2点です。以上です。
【無藤主査】    ありがとうございます。
  言語能力のところは、おっしゃるとおりなんだと思います。
  それから最初の部分、まさに今回の改訂の肝は、授業の質をどう上げるかなんだと思うんですけれども、そのためにアクティブ・ラーニングに基づく三つの視点などがあり、更に、特に深い学びなどでは、見方・考え方を身に付けるということを強調しているわけなんですけれども、多分、「見方・考え方」と抽象的に言われても分かりませんので、より具体的には、例えば、教科書などに出てくる様々な単元、教材がどういう見方・考え方に具体的にはつながるかとか、あるいはそれ以外のいろんな教材や授業、単元が、学習指導要領上、どこの部分につながって、見方・考え方のどの部分を流すかとか、そういう仕組みを何か作れる方向というのが必要なんだろうと思います。ありがとうございました。
  それでは、神長委員、よろしいでしょうか。
【神長委員】    本当に膨大な内容を分かりやすく、毎回毎回整理を重ねてくださいまして、ありがとうございます。
  幼児教育の立場からですけれども、どちらかというと幼児教育の特性を踏まえつつというところで、アクティブ・ラーニングにしても、カリキュラム・マネジメントにしても、これまでの議論であると、ちょっと置いておいてというような言葉は十分ではありませんけれども、議論でしたけれども、今回の中教審の議論の中では、全て幼児教育から高等学校、また大学までを見通した中で議論できたこと、またこういうまとめの中に入ってきたことということは、幼児教育の骨組みといいますか、学校教育としての、その立場がしっかりしてきておりますし、幼小のつながりということ、また一貫性というものが明確になってきたと思っております。
  特に、きょう、まとめの方で、ポイントの方で出してくださった、学び方の見通しを示す学びの地図というのは、幼児教育の立場からすると非常に分かりやすい言葉で、遊びを通しての総合的な指導の中で、子供たちがいろんな体験をしてきたことが、実はこういった育ち方、またカリキュラムを通して、一人一人の子供の中にしっかりと身に付いていくということが、今回のこのポイントだけでも読みながら、非常に明確になったかなと思っております。
  ただ、このポイントの7ページですけれども、よく研修会等に行きますと、この図が10項目ですね。幼児期の終わりまでに育ってほしい姿10項目が話題になるんですけれども、そのときに、なぜこういう10項目を、今、課題として、みんなで研修するのかということを話しているうちに、ここに入る前に1時間ぐらい議論が絶えません。それだけ密度の濃い内容です。ここになぜということがしっかり伝わると、学校教育の始まりとしての幼児教育が、ますます明確になってくるかなと思います。当分は、この議論を重ねながら、幼児期の終わりまでに育ってほしい姿が、なぜ今明確にすることが必要なのかということを共有していきたいなと思っております。それは、議論に参加させていただき、幼児教育がより明確になったという意味で、お礼をしたいということが一つです。
  あともう一つ、これからの課題として考えていることは、この資料の3-1の方の23ページの一番下にあります、「幼稚園教育要領においては」というところの文言ですけれども、これをよりよく広く伝えていくためには、やはり養成校の役割すごく大きいと思います。特に幼児教育の場合には、幼稚園もあり、保育所もあり、認定こども園もありという形で、いろいろな施設の中に伝わっていくためには、連携しながら伝えていくことも実践の場でも必要ですけれども、やはり養成校を通して、地域の幼稚園や保育所の先生方と一緒に学べるような場を作っていくということはすごく大事なことだと思いますけれども、実際には、ここで養成校の場合には、非常に課題も多いなと思います。「幼児期の特性を大事にしつつ、幼児期においても育みたい資質・能力を明確にし、幼児教育と小学校の各教科における教育の接続の充実や関係性の整理を図る必要がある」という、この文言だけを読んでいても、養成校の、私も養成校にいるから余り言えないなとは思っていますが、どのくらいに理解をして、これをいわゆる学生に伝えることができるのか、また実際の先生方と一緒に学べるのかということは非常に課題があるなと思います。養成校の中では、この5領域について、ようやく定着してきたというようなところもあるので、そこに対する質の確保・向上をしていくための仕掛けが必要なのかなということを感じております。
【無藤主査】    ありがとうございました。最初の方は、大きく言えば、幼・小・中・高についての縦のつながりを、今回、非常に強調し、明確にして、枠組みをはっきりさせた良さをいろいろ御指摘いただいたのかと思います。
  もう一つの養成校の問題は、中教審の中のもう一つの部会で、今、進めている最中ですけれども、多分、ここの部会としても、新しい指導要領の考え方や中身を、養成校教員にどう伝えるかということも含めながら、教員養成部会と協力する必要があろうと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
  それでは、門川委員、よろしいでしょうか。
【門川委員】    総論部分の10ページなんですけど、非常によくまとめていただいたと思いますし、いいものができたと思っております。一方で、先ほどの品川さんの話にも刺激を受けているんですけれども、これだけいろんな取り組みをしても、いじめの問題が、あるいは大人になって虐待の問題が、あるいは社会全体で寛容の精神のようなものが失われていくといったことが起こっている。弱者に対するいたわりとか、そういうことが失われていると感じることがあり、  そうしたとき、私自身、学校現場の先生方と、生きる力・生き合う力ということをよく議論していました。生きる力の中には生き合う力というのが入っていると思っています。人間は嫌な人でも、意見の合わない人でも、いろんな人と一緒に暮らしていかないといけない。生きていかないといけない。それを余り苦に思わないような優しさとか、感謝、寛容の精神などを含めた生きる力。これは、たくましく生きましょうという「生きる力」という言葉の中に受け止められているものと感じています。
  今、世の中で起こっている様々な問題というのは、この「生きる力」の中に入っている「生き合う力」が育ってないからではないでしょうか。素案の10ページには、教育基本法が目指す教育の目的や生きる力の理念を踏まえつつといったことが書かれているとともに、子供たちの未来と学校教育を通じて育てたい姿が3点が挙がっています。特にその2点目、他者に対して自分の考えを、根拠を明確にしながら説明するとか、対話を通じ、議論を通じてとありますが、今、社会で起きている問題を見たとき、弱者に対する思いやりとか、優しさとかが育まれてないのではないでしょうか。例えばそれはお年寄りに対して、さらに言えば自分の親でもちゃんと面倒見ない、こんなことは行政にやってもらえばいいと言い放つといったことにも表れていると感じます。やはり何かちょっと世の中おかしくなってきている。日本人が、人間が本来大事にしてきた、弱者に対する思いやりとか、優しさ、そういったものが育ってない、こうしたことについても、非常に強いメッセージ性を持たして、訴えていかなければならない。主体的に学ぶ、主体性のある人間を育てようということが、きちっと強調されている、これも大事です。しかし、書きぶりとして、ちょっと足らへんのと違うかなと。何を育てたいかという部分で、人間が本来大切にしてきた他者に対する思いやりや優しさ、感謝、相互理解、寛容といった資質が、さらにはもっと弱者に対する目線、優しさ、いたわり合い、そういうことが主体的にできていく、そして「生き合える」というようなことも、書き込むべきと考えます。どう表現したらいいのかが、少し出てこないんですが、こうしたことが、今一番あらゆるところで求められていることなんじゃないかな、このように思っております。優秀という字は、人偏に憂えると書いてある。憂える人に寄り添うのが優でありすぐれているんです。優秀とか、すぐれて秀でるではなしに、優しさに秀でると、こういうメッセージもあります。非常にいい言葉です。だから、人間、本来の持っているものが、この生きる力の解説の中で、少し抜けているんじゃないかと感じています。
【無藤主査】    ありがとうございました。
  子供たちの現状、社会の現状の中で、まさに、きょう、「生き合う」という言い方を教えていただきましたけれども、優しさ、思いやり、また異質な人々との共存や寛容の精神、より育てるということは、本当に今の学校教育、今後の学校教育で非常に重要な部分、あるいは一番重要かもしれないので、それが伝わるように、しっかり表現したいと思います。ありがとうございました。
  そろそろ時間なんですけれども、あと一言というようなことがあればと思いますが、とりあえずよろしいでしょうか。はい。ありがとうございました。
  それでは、大体時間が近づきましたので、きょうはここまでとさせていただきたいと思います。また追加の御意見等、思い付かれましたら、事務局までペーパーでお知らせいただければと思います。
  それでは、いろいろな御意見を頂きまして、いろいろな形で、きょうの頂いた御意見を素案に反映を、事務局として、していただきたいと思います。
  また、最初に申し上げましたけれども、きょう承った意見につきましては、ほぼ素案の中に組み込みながら改善できるかと思いますので、次回、8月中にございますので、そこで教育課程企画特別部会としては一通りの区切りというふうに考えてございます。
  それでは、最後でございますけれども、次回の日程などにつきまして、事務局より御説明をお願いいたします。
【大杉教育課程企画室長】    先生方、貴重な御意見ありがとうございました。
  次回、8月19日金曜日10時から12時の開催でございます。場所については、追って御連絡させていただきます。審議のまとめ(案)についての御議論をお願いしたいと思います。
  主査からお話がございましたように、本日の素案に対する御意見、細かい点でも、大きな論点でも構いません。ペーパーによる御意見、ファクス、メール等でも構いませんので、お寄せいただければと思います。
  なお、本日の資料、郵送を御希望される場合には、机上に残しておいていただけましたらと存じます。よろしくお願いいたします。
【無藤主査】    ありがとうございました。
  それでは、これをもちまして、本日の教育課程企画特別部会を終了させていただきます。どうもありがとうございました。


――  了  ――

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