教育課程部会 教育課程企画特別部会(第23回) 議事録

1.日時

平成28年10月31日(月曜日) 13時00分~15時00分

2.場所

スタンダード会議室虎ノ門ヒルズFRONT店
東京都港区虎ノ門1-22-14 ミツヤ虎ノ門ビル

3.議題

  1. 「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ」に関する関係団体からの意見聴取
  2. その他

4.議事録

〈2階会議室〉
【天笠主査代理】    それでは、定刻となりましたので、ただいまより中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会教育課程企画特別部会の第23回を開催いたします。
  本日は、お忙しい中御参集いただきまして、誠にありがとうございます。今回も前回に引き続きまして、関係団体からのヒアリングを行います。本日は14の団体からの御意見を頂くことになっておりますので、会場を二つに分けて行います。
  それでは、これより関係団体からのヒアリングを行います。
  まず、事務局から配付資料の確認をお願いいたします。
【西川教育課程企画室専門官】    本日は、資料の1から16を配付をしております。会議室にかかわらず、全ての団体からの発表資料を配付をさせていただいております。この会場での発表資料については資料3から8になりますので、不足等ありましたら事務局までお申し付けください。よろしくお願いします。
【天笠主査代理】    各団体の皆さん、本日はお忙しい中、御足労いただきまして、ありがとうございます。この時間帯にお見えになっている団体は、一般社団法人国立大学協会様、日本教育大学協会様、それから日本私立短期大学協会様の三つの団体であります。
  それでは、各団体様からの御発表を開始したいと思います。意見交換は、三つの団体の発表全てが終了してから行いたいと思いますので、まずは一般社団法人国立大学協会様からお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【一般社団法人国立大学協会】    一般社団法人国立大協会を代表いたしまして、専務理事の山本が意見を述べさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
  資料3に、配付されておりますけれども、長文にわたりますので、要約的に時間の範囲で述べさせていただきます。
  国立大学及び国立大学協会は、これまで我が国の高等教育と学術研究をリードするとともに、高等学校教育との適切な連携体制の構築と改善にも努力してまいりました。特に、現在進行中の高大接続システム改革の制度設計プロセスにおいては、国立大協会として、改革実現に向けて、主体的・積極的に関与し、対応しているところでございます。このような経過を踏まえまして、高大接続の観点から、国大協としての「審議のまとめ」に関する意見を申し述べたいと思います。
  まずは、高等学校教育改革の方向性についてでございます。
  「審議のまとめ」は、高等学校教育改革の最大の眼目は、「学力の3要素」をバランス良く身に付けさせる点であるとしております。そのためにアクティブ・ラーニングの視点から、学習・指導の改善を進め、質の高い学びを実現するという方向にしておりますけれども、これには賛同できるところでございます。
  今後、高等学校教育において、アクティブ・ラーニングの有効性が実証されれば、高校と大学が教育改革の方向性を共有することになり、円滑かつ実効のある高大接続に大きく道が開かれると期待しているところでございます。
  一方で、既に多く指摘されておりますけれども、アクティブ・ラーニングの視点による学習・指導の改善の実現には、教員の教材研究や授業方法に関する研究・研修への支援、アクティブ・ラーニングを主体とする授業及び授業を受けた生徒の評価方法の開発も必要と考えております。
  また、これもしばしば指摘されておりますが、教員定数の拡充やICT環境の整備など、教員の負担軽減、業務改善に向けた取組も必要であると考えております。
  さらに、生徒が「主体的・対話的で深い学び」を身に付けるためには、その前提として、学ぼうとする意欲を引き出す、すなわち学ぶ楽しさ、分かる喜び、新たな経験へのときめきの経験を蓄積していくこと、これが幼児教育段階から早くから求められていると思います。加えて、自分の感じたことを効果的に他者に伝えるために、日本語4技能、読む・書く・聞く・話すでございますが、を確実に育むことが重要なことだということも指摘させていただきたいと思います。
  次に、「審議のまとめ」の具体的記述について申し上げます。
  次期学習指導要領等の改善に当たりましては、幼児教育から高等学校教育までを見通し、全ての教科について身に付けるべき力を明確にし、教育目標、内容を整理した上で、総則に明示するなど、学習指導要領の枠組みを見直す方向性には、従来にないものとして評価しております。
  その中で、今回の「審議のまとめ」では、「生きる力」の育成すべき資質・能力を「三つの柱」、一つは、「知識・技能」の習得、二つには、「思考力・判断力・表現力等」の育成、三つには、「学びに向かう力・人間性」の涵養として、「三つの柱」として整理されております。
  一方、中教審の高大接続部会が26年の12月に発信しました答申では、「生きる力」を、1、豊かな人間性、2、健康・体力、3、確かな学力として捉え、この3の確かな学力の3要素として、一つは、「主体性・多様性・協働性」、二つには、「思考力・判断力・表現力」、そして三つには、「知識・技能」という構成に定義されております。このように両者の概念に関する記述が若干異なっていることにより、大学入学者選抜で評価すべき対象は何かについて、高等学校及び大学関係者に誤解と混乱を生む可能性があろうかと感じております。よって、今後の検討におきましては、両者の関係性及び統一性に配慮し、学力の3要素を明確に記載するなど、分かりやすい記述を御考慮いただきたいと思います。
  よって、今後の検討には、そういうことを御考慮いただきまして、さらには各教科の教員が具体的な教育目標とするところは、学習指導要領の各教科の記述によるところが大きいため、先ほど申しましたが、総則のみならず、各教科においても、何ができるようになるかの視点を明確に記述されることが望まれると考えます。
  例えば、従来の学習指導要領には、「何々を理解する」という表現が多く見られますが、今回の改訂では、「原理原則に基づいて何々を説明できる」とか、「何々の仕組みを説明できる」などのように変更するのがよいのではないかと考えるところでございます。
  さらには、学習指導要領等を「学びの地図」の役割として、更に効果的に活用できるよう、幼児教育から高等学校教育まで、習得を目指す三つの学力要素について、各学年と教科・科目ごとにマッピングし、各学年・科目の到達目標をマトリックス的に整理するなど、視覚的に理解しやすいような工夫も必要だと思われます。
  最後に、高等学校教育の質保証について申し述べたいと思います。
  現在、我が国における高等学校進学率は98.5%に達し、高等学校教育が義務教育ではないものの、実質、国民最後の共通教育の機会となっております。そのため、高等学校教育を通じて、共通に身に付けるべき資質・能力の保証、すなわち共通性の観点も重要だと思われます。
  「審議のまとめ」では、「共通性の確保」と「多様性への対応」を軸に、高等学校において育成を目指す資質・能力を踏まえ、教科・科目の構成を見直しておりますが、高等学校教育の根幹は「コア」となる基礎学力の確立ということに留意し、必履修科目数・単位数の設定を図るとともに、必履修科目で涵養すべき資質・能力が明確に位置付けられるべきだと考えます。例えば、「数学科」におきましては、必履修科目は「数学1」のみとなっておりますが、数学教育の強化、あるいは数学的素養を伸ばすためには必履修科目の拡大も検討すべきではないかと考えております。
  一方で、国語、美術、音楽などの授業で文学や芸術に触れる時間が削減されることのないように配慮も必要だと考えます。
  さらには、アクティブ・ラーニングの導入等を考えますと、総合的な学習の時間を高大接続の観点から、「探究の方法論を学ぶ授業」に位置付けられることを望むところでございます。
  最後に、幾つか指摘して終わりたいと思います。
  国立大学としても、今後、大学教育改革の内容や方向性を三つのポリシーの明確化や個別選抜試験改革を通して、高等学校教育改革の推進役として役割を果たしたいと考えておりますし、高等学校との連携等を図ることで、高校生の学習の成果を大学教育や入学者選抜に反映する不断の努力を行う必要があると考えております。
  これまでも国立大学は、高校生に対しては、出前授業など様々な形で、高等学校との情報交換、意見交換の機会を設けてまいりました。今後の改革プロセスにおいては、従来にまして、高大連携の緊密化を図る必要があり、例えば、高等学校に新たに設置される「理数探究(仮称)」などを含め、各教科・科目の内容の深化への貢献や学習・指導方法の向上に関する支援など、高等学校・大学関係者双方が協働し、地域の高等学校と大学の更なる連携の強化を図っていく努力が必要だと考えております。
  最後に、今後でありますけれども、今後の具体的な学習指導要領等の策定や運用の検討に当たりましては、大学関係者との緊密な連携・協議が図られることを希望いたしまして意見といたします。どうもありがとうございました。
【天笠主査代理】    どうもありがとうございました。
  意見の交換については、先ほど申し上げましたように、三つの団体が終わってからということにさせていただきたいと思いますので、続きまして日本教育大学協会様から御発表をお願いいたします。
【日本教育大学協会】    よろしくお願いいたします。日本教育大学協会の企画委員会の委員長代理をしております、東京学芸大学の佐々木と申します。
  資料4に沿って、説明させていただきたいと思います。
  日本教育大学協会としましては、今回の「審議のまとめ」の枠組みとか方向性については、そういった問題意識については基本的に共有しているものです。
  次に、「審議のまとめ」について、6点について、お話しさせていただきたいと思います。
  一つは、資質・能力の概念区分の整理についてでございます。
  「審議のまとめ」は、「教育課程の構造化」を掲げて、その重要な枠組みを全ての教科等や諸課題に関する資質・能力に関する要素としております。共通する要素として、「先行研究等による分析による三つの分類」、また、学校教育法30条2項が定める3要素、「資質・能力の三つの柱」など類似のものが記述されております。「三つの分類」「三要素」「三つの柱」、さらに「学力の三要素」、さらに教育基本法第2条の教育の目標の規定する資質の5区分、評価の観点、これらによって学校現場が混乱することのないように、それぞれの関係を更に整理するとともに、「資質・能力の三つの柱」が今日の議論によって新学習指導要領の基盤として総合的に整理されたものであることを明示的に示す必要があると考えます。
  なお、「審議のまとめ」においては、「何ができるようになるか」。「審議のまとめ」の一部ですね。「何ができるようになるか」について多くの記述を行っている一方で、「何を学ぶか」については、わずかな紙幅を充てるにとどまっておりますので、諸外国のナショナルカリキュラムにおいては、キースキルから教科の知識を重視する方向への揺り戻しも見られますので、「何を学ぶか」についても引き続き重要な観点であることを、改めて確認するべきであるというふうに考えております。
  次に、第2点目ですが、「学びの地図」としての学習指導要領の提示でございます。
  今回の改訂におきましては、学習指導要領の枠組みを整理して、「学びの地図」として示すことを提起している点は本協会としても高く評価しております。新学習指導要領の考え方を教職員等の関係者が共有するためには、「総則の抜本的改善」を図ると記述されております。これについては教職員のみならず、子供たち、家庭・地域、民間企業等を含めた関係者が広く共有することが必要でありますが、文部科学大臣の告示としての形態では限界があると考えております。全体を分かりやすく図表で整理したり、図解したりするなど、解説書や補助資料の工夫が必要であると考えております。
  次に、3点目ですが、アクティブ・ラーニングの視点について、話をさせていただきます。
  「審議のまとめ」は、「どのように学ぶか」についての学びの質を重視するとして、「アクティブ・ラーニングの視点の意義」を強調しております。アクティブ・ラーニングについては、学習指導要領の目玉として、学校現場のみならず、大学における教員養成においても大きな影響を与えるものと考えております。
  アクティブ・ラーニングは、従来は「アクティブ・ラーニングの方法」とされていましたが、「審議のまとめ」では「アクティブ・ラーニングの視点」とされております。「方法」から「視点」への変化については、アクティブ・ラーニングを特定の教育方法として定義することの難しさでありますとか、一面的な理解によって教育実践に与える弊害等を考慮したものと思われます。「審議のまとめ」は、アクティブ・ラーニングは「子供たちの『主体的・対話的で深い学び』を実現するために共有すべき授業改善の視点」とし、その意義を多様な文脈で説明しており、これは質の改善にとって重要であることは本協会としても同意するところでございます。しかし、そのような学びを実現する方法は、「審議のまとめ」も指摘するように、アクティブ・ラーニングに限らず、限りなく存在するものでありますので、学校が自ら授業方法の工夫改善を図る観点からも、補助資料で示されているアクティブ・ラーニングの課題についても明らかにすべきであると考えております。
  次に4点目ですが、小学校におけるプログラミング教育の導入についてでございます。
  「審議のまとめ」は、「将来どのような職業に就くにしても、時代を超えて普遍的に求められる『プログラミング的思考』などを育むプログラミング教育」が必要であるとしておりまして、小学校段階においてもプログラミング教育を導入することを提起しております。
  具体的には、「各小学校において」と記述されておりますように、実際のプログラミングの教育の内容・方法は各学校に委ねられております。有識者会議は「小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について」において留意事項等を示しておりますが、依然として小学校段階において行われるプログラミング教育のイメージや、その必要性の認識については、教育委員会関係者や教職員間でも十分に共有されていないのではないかと危惧されます。国におかれましては、これらについて更に議論を深めていただきますとともに、導入する場合には、安易に「各小学校」に委ねるのではなくて、国が責任を持って、教職員が適切にプログラミング教育に取り組めるよう、ICT環境を整備するとともに、各教科等で指導を展開できるような指導事例集の作成や教員研修体制の整備を支援していくことが求められていると考えております。
  次に5点目ですが、小学校における外国語教育への対応について述べさせていただきます。
  小学校外国語教育については、授業を担当する現職教員の指導力や専門性を高めるためのコアカリキュラムやモデルカリキュラムの開発・検証が東京学芸大を中心にして行われております。さらに専門性向上のために、平成28年度には、「小学校英語教育化における専門性向上のための講習の開発・実施」の事業が展開されております。ただ、この施策の対象は中核的教員にとどまっておりまして、全国の小学校教員を対象に英語に関する専門性を身に付けるという観点からは、実態としては限定的に展開されておりますので、更に抜本的な対策が必要であると考えております。また、この事業の拡充のためには受託大学、教育養成等を実施する教育委員会の十分な財政措置が必要であると考えております。
  次に6点目ですが、次期学習指導要領のための条件整備について述べさせていただきます。
  次期学習指導要領を実施するためには、学校及び教職員の人的、物的、組織的な条件の整備が必要であると考えております。社会に開かれた教育課程を実現するためのカリキュラム・マネジメント、小学校外国語活動の拡充、道徳の教科化など新しい教育課程上の変化への対応、アクティブ・ラーニングの視点からの授業作りや教材研究、教育評価の改善、インクルーシブ教育システムの構築、さらにはチーム学校の考え方を踏まえた組織運営などのためには、教育の研修機会の保証、授業の準備や打合せの時間の確保、コーディネート機能の充実、業務改善の取組が必要になってまいります。これらを進めるためには、条件整備の必要性について、抽象的に記述するだけでは不十分であると思われます。学校設置者や学校の教職員の努力だけに委ねることなく、国の責任において、人的、物的、組織的な環境や条件整備を進めることが不可欠であると考えております。
  次に、大きな3番目として、教員養成を担う国立の教員養成系大学・学部の立場から、4点について述べさせていただきます。
  第1点は、教員の資質・能力の向上の必要性についてであります。学校教育において子供たちが身に付けるべき資質・能力や学ぶべき内容を十分に理解して、次期学習指導要領において展開される「主体的・対話的で深い学び」等を実現して、カリキュラム・マネジメントによる教育課程を軸とした学校教育の改善を図るためには、それを担う教員の資質・能力の向上が不可欠であります。100万人を超える教職員の高度専門職化という要請に応えるためには、教員養成系大学・学部、教職大学院、修士課程の適切な役割分担によって、より一層、高度専門職業人としての教員養成を行うことが必要であると考えます。
  そのためには、現職教員が大学等で学ぶ機会を拡充するために、義務教育標準法に基づいて措置されている研修等定数の改善、基盤となる教員養成系大学・学部の条件整備、人的配置を行うための財政措置が必要であると考えております。
  次に2点目でありますが、新しい学びを支える教育支援人材の育成の必要性でございます。
  「審議のまとめ」の提起している新しい学習指導要領を展開するためには、多様な学校支援人材の確保が必要となります。スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなど、心理や福祉の専門性を有する専門的スタッフの確保、学校教育を支援する専門スタッフの配置の拡充等が必要であります。
  また、これらの十分な資質を備えた専門スタッフとなる人材が全国的に安定的に確保されるためには、国立の教員養成系大学・学部を活用して、専門スタッフを計画的に養成するとともに、研修の機会を提供することが必要であります。
  また、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、ICT支援員、司書教諭等、専門スタッフについては、時代の変化や教育課題に応じて継続的に職務内容の見直しを行ったり、資質・能力の向上を図る必要があります。その点で、国立の教員養成系大学・学部を活用して、その高度化を図っていくことが必要であると考えておりますし、そのための仕組みを構築することが必要となっております。
  3点目でございますが、次期学習指導要領に対応する教員養成の質の向上に係る財源の確保でございます。
  近年の免許法改正によって、新規科目の開設を余儀なくされております。また、次期学習指導要領においては、小学校外国語の拡充、道徳の教科化、プログラム教育の充実等に対応するために、新規科目の開設、人的配置の拡充を求められております。その一方で、国立大学の基盤を支える運営費交付金は、長期にわたって減少が続いておりまして、財政状況は非常に深刻でございます。次期学習指導要領に対応するためには、教員養成系大学・学部の人材、財務的負担を更に増すことが予想されておりますので、この点についても配慮した対応が必要であると考えております。
  次に、最後になりますが、4点目ですが、教員免許制度の実質化の必要性について述べさせていただきます。
  「審議のまとめ」が提起する次期学習指導要領の着実な実施、児童・生徒等の教育機会の均等の観点から各校種、各教科について深い専門性と実践的指導力を備えた教員を確保することが求められております。その一方で、中学校等においては、担当教科の免許状を持たない教員が授業を担当する免許外教科担当が常態化しているとの指摘もあります。特別支援学校等での特別支援学校免許状の保有率が十分でない実態がございますし、また、小学校においては、専科教員の配置の拡充も課題となっているところでございます。
  このような状況に対応するためには、全国の教員養成系大学・学部において、全ての校種、科目について資質を備えた教員を十分に提供するとともに、小中一貫教育の拡大や義務教育学校の制度化に伴って複数免許の取得についても促進する必要があります。聞くところによりますと、一部の大学では基礎免許を出すことが非常に困難になっているというふうな状況も報告されておりますので、各地域の核として教員養成を担う国立の教員養成系大学・学部がそのような役割を果たせるように条件を整備することが必要であると考えております。
  以上でございます。
【天笠主査代理】    どうもありがとうございました。
  それでは、続きまして、日本私立短期大学協会様から発表をお願いしたいと思います。
【日本私立短期大学協会】    日本私立短期大学から、副会長である八耳俊文が、中教審の教育課程企画特別分科会で行われました「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ」についての意見を言わせていただきます。
  高等教育機関の私立短期大学としては、次期に改訂される学習指導要領及び幼稚園教育要領に基づき、各段階での学校教育を経て、将来の予測が難しい社会の中でも、子供たち一人一人が多様性を尊重し、広い視野を持ち、志高く未来を創り出していくために必要な資質・能力を確実に身に付け、高等教育の学びへと、その成果がつなげられることを強く期待するものです。そのために下記の点について、更なる配慮を求めたいということで挙げさせていただきました。
  現在、短期大学は、将来に行われます大学入学希望者学力評価テスト、あるいは高等学校基礎学力テストに対し、高等学校での学習成果をどのように短期大学において発展させるかということで注目しているところであります。また、グローバル化が進む中で、外国語教育、その背後にあります多様な物の考え方の尊重がますます必要になってくると考えております。
  それから、短期大学では、幼稚園教諭あるいは保育士の養成を担っている観点からも、今回の学習指導要領については十分注目しているところであります。
  また、能動的な学習ということで、アクティブ・ラーニングの視点が大きく取り上げられました。このことは高大接続という中で、短期大学においても、より重要な提起だと考えております。
  まず最初、学校段階間の接続・連続性の重要性についてというところであります。
  幼児教育をはじめとした、小学校、中学校、高等学校へと引き継がれていく発達段階に応じた学習成果により、興味や関心に応じた学びを深め、広げ、自らのキャリア形成の方向性を見出し、その実現のための高等教育機関への接続が円滑に進められることが重要であると考えております。このキャリア形成ということに関しましては、今回、社会に開かれた教育課程ということで、社会とのつながりを学校の中で意識させるということが充実され、キャリア教育についても多くのページが割かれております。まさに幼稚園の段階から小学校、中学校、高等学校とキャリア教育を行う中で、社会、あるいは職業において自律的、あるいは主体的に生きる力を持って18歳を迎え、次の世界へ進んでいくということが必要であります。高等学校卒業までに自身が描いた将来設計図を実現させるため、その後の進路選択が適切に高等教育機関へと引き継がれるように、各学校段階での確実な学びと、その接続・連続性が確保されなければならないと考えております。
  ただ、今回の接続・連続性の重要性ということはよく分かるわけですけれども、一方、不登校の児童・生徒数が依然として高水準で推移しており、また、実際に登校している児童・生徒でも、学習内容の定着は一律でないため、その接続・連続性を重視する一方、学び直しの機会であるとか、学び直しの視点というものを常に忘れないでいただきたいところであります。
  この「審議のまとめ」の96ページの「学び直しの充実」では、高等学校の項目でありますけれども、小学校・中学校での学習内容を十分に身に付けていない生徒も少なからず見られるということが書いてありますので、よりこの連続性を強調するだけでなく、もう一度学べるというチャンスも与えるように考慮していただきたいところであります。
  不登校になっても高卒認定を経て大学や短期大学に入学してくる学生が数多くいます。アクティブ・ラーニングの視点はこうした不登校生徒にも向けられ、学習する機会が与えられるよう期待しております。
  それから、2番目といたしまして、小学校、中学校からの外国語教育の導入についてであります。
  外国語教育については、外国語で多種な人々とのコミュニケーションを図ることができる基礎的な力を育成することが重要であり、小・中・高等学校を通じて一貫して育む指標形成の目的を設定し、初等中等教育全体を見通して確実に育成するとされております。当然のことながら、初等中等教育において身に付けられた外国語、特に英語力が高等教育機関に受け継がれることになりますけれども、よほど慎重に指導方法等を考えた上で実施しなければ、小学校中学年という早い段階から英語嫌いに陥ることになり、その後の中学校・高等学校における英語アレルギーを払拭することは非常に難しい状況になるおそれがあります。教員の資質に負うところも大きく、アクティブ・ラーニングなどの手法を最大限に生かした興味ある授業運営が不可欠であり、高等教育機関への接続に際しても障害となることがないよう願うものであります。
  「審議のまとめ」の259ページでは、外国語教育に関わる教員の人材の養成・整備ということが触れられており、外部人材の受け入れ、それから外国語担当教員の退職者等を非常勤講師として活用すると書かれておりますけれども、これで十分なのか、不安が消えないところであります。
  それから、言うまでもありませんけれども、小学校中学年からの外国語教育の導入に当たりましては、母国語である日本語教育と表裏一体のものでなければならない、そのことに十分配慮した改革であるべきと考えております。
  それから、3番目ですけれども、能動的な学習ということで、アクティブ・ラーニングの重要性についてであります。
  子供たちが「どのように学ぶか」に着目して、学びの質を高めていくため、「主体的・対話的で深い学び」の実現を目指した「アクティブ・ラーニング」の視点から、授業改善の取組を活性化していくことの必要性は十分に理解しているところであります。これまでにこのような視点が定着していないこともあり、全ての教職員が校内研修や多様な研修の場を通じて理解を深めることができるよう配慮しなければなりません。幼稚園、小学校、中学校、高等学校のそれぞれにおいてアクティブ・ラーニングの視点を用いた授業が効果的に行われ、その成果が高等教育機関へ引き継がれていくため、正しい理解の上に実施されたいということを望むところであります。この「どのように学ぶか」との視点は、高等教育においても共通の課題であると認識しております。
  今回の改訂では、学習内容の削減は行わないとされており、アクティブ・ラーニングの視点を生かし、十分にその学習効率をよくするためには、事前学習や、学習を可能とする条件整備は欠かすことはできません。また、アクティブ・ラーニングの視点を生かした授業改善をしていくには、様々なやり方があるとはいえ、地域により、あるいは学校によって条件が未整備なため、学びに浅深の違いが出ないか十分な配慮が必要であると考えます。全国の小学校・中学校では、クラス内に様々な学力の児童・生徒がおります。この現実にあってアクティブ・ラーニングを可能とするには、教員にファシリテーターをはじめとした指導力が求められます。この能力は教員になって初めて、あるいは高等教育で初めて意識されるのではなく、初等中等教育の中でも、児童・生徒の段階から、順次育成されることを期待したいところであります。
  それから、その次ですけれども、高大接続の視点からということで意見を述べさせていただきます。
  次期学習指導要領の高等学校教育の内容と、これまで行われてきた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の在り方を一体的に改革する高大接続改革との整合性は十分に考慮されたいというところであります。
  大学入学者選抜につきましては、冒頭に述べましたけれども、高等学校における学びの成果を大学教育において更に伸ばしていくためのものであり、そのためにおいても、大学教育においては、三つのポリシー、来年の4月から学校教育法施行規則の改正に伴って、アドミッションポリシー、カリキュラムポリシー、それからディプロマポリシーの三つのポリシーの策定が義務付けられました。生徒が将来を見据えて、大学においてどのような力を身に付けたいのかを考え、その実現に踏み出せる教育課程の編成、実施・改善、指導や評価の充実が必要であると考えるところであります。
  最後に、私立短期大学においては、分野別でいうなら幼稚園教諭、保育士の養成を行っている教育系の学科が最も多く設置されていることから、幼稚園教諭養成側から見た次期改訂幼稚園教育要領について触れておきたいと思います。幼稚園教諭に係わる研修体制の充実・促進についてということであります。
  幼稚園に入園する子供にとって、幼稚園は親元から離れ、初めて経験する社会となります。したがって、その担い手である幼稚園教諭が子供に与える影響は非常に大きく、責任も重いものであります。短期大学を卒業後、幼稚園教諭として働き始めても、3年以内の離職率が4割弱という高さが問題になっているなど、その労働条件は極めて厳しいものがあります。経験の浅い幼稚園教諭が孤立して悩むことのないよう、更なる研修体制の充実を図ることが課題であると考えます。地域における幼稚園教諭の教育課程を有する短期大学や大学との交流・連携を図り、様々な状況に応じた指導方法や最新の就学前幼児に対する研究の知見に基づいた教育、研究が求められるところであります。
  さらに、保育者ということで、保育士にも関連しますけれども、平成24年に改正認定こども園法が成立いたしました。ここでこども園という学校と児童福祉施設の両方の性格を持つ施設が法的に位置付けられました。平成27年度から子ども・子育て支援新制度が実施されたことにより、短期大学では幼稚園教諭、それから保育士の両方の免許、資格を有する保育教諭として働く卒業生も多くなっております。今回の幼稚園教育要領の改訂内容と、それから保育所保育指針及び幼保連携型認定こども園教育・保育要領の改訂内容との整合性を図り、幼児教育全体としての質を確保・向上させることは、養成を行う短期大学にとっても重要な関心事であり、十分なる検討を行っていただきたいと願うところであります。
  どうもありがとうございました。
【天笠主査代理】    はい。どうもありがとうございました。
  それでは、これより意見交換の時間に入らせていただきます。委員の先生方、御質問、御意見のある方は、よろしくお願いをいたします。いかがでありましょうか。では、上田委員からお願いします。
【上田委員】    どうも、御意見ありがとうございました。
  まず、国立大学協会様にお尋ねしたいんですけれども、この御提言の中で、総合的な学習の時間を高大接続の観点から探究の方法論を学ぶ授業に位置付けることを望みたいという御指摘がございますが、これは、具体的に、どういうことを想定されているかということが、もしありましたら、お聞かせいただけますと有り難いです。
【天笠主査代理】    ちょっとお待ちください。ほかに、今、国立大学協会さんに御質問というのがありましたら、お願いをしたいと思うんですけれども。
【小川委員】    私も同じところがお聞きしたかったです。
【天笠主査代理】    同様です。
  私の方からは、この必履修科目の拡大の検討という点についてなんですけれども、御承知のとおり、共通性と、それからここに書いてあります多様性のバランスの問題というところがあるかと思いまして、今回の場合には、言うならば社会系のそれなんかの方に、こうする、全体としてのバランスをということを考えた結果ということを、御承知のとおりかと、というふうに思うわけでありますけれども、改めて、そこら辺のところについて、御意見等々ということについて、そこのところ、何かありましたらお願いしたいと思うんですけれども。言うならば、必履修科目ということは基本的には変えないというふうなこと、それは共通性と多様性をバランスをとった、その思考の結果、こういう形で、今回、私ども検討、提起させていただいたという、経緯、経過があるわけでありますけれども、その点についても御意見等々がありましたらということで、まず、上田委員の質問から、お願いいたします。
【一般社団法人国立大学協会】    では、短く。
  総合的な学習の時間というのは、今までそれを経験した学生たちが大学には多く入ってきております。私も学習の経過からすれば、そういうことを身に付けた学生と、余り総合的学習の実質を経験していないような学生の両方が、くっきりと分かれているという印象を持っております。その点では、今、アクティブ・ラーニングという非常に積極的な視点という形でありますけれども、また、そのことが実質化されるためには、探究の方法を学ぶと言いましたけれども、学び方を学ぶといいましょうか、そういうことが豊かに経験された学生たちが必要であると、今までも言われてきたんですが、改めて、それが多くの学生に経験される形で実現していただきたいという趣旨でございます。
  それから、必履修科目でございますけれども、天笠先生がおっしゃったこと、十分承知しております。しかし、今のところ、例えば、数学でいいますと、データサイエンスなどのことが本当に、プログラミング学習とか言われておりますけれども、強調される中で、統計的な分野についての共通の学習も必要ではなかろうかと、その場合、数学はどういうふうに構成されるであろうかというような視点を提供させていただいたと理解していただければと思います。
【天笠主査代理】    それでは、ほかに。今の件に関連しても結構ですし、また、他の団体さんについての質問も含めまして、委員の方からお願いしたいと思いますけれども、いかがでありましょうか。
【小川委員】    今の国立大協じゃなくてもいいんですか。
【天笠主査代理】    はい、どうぞ。三つに共通してでも結構ですし、今のように一つの団体さんということでも構いませんですので、よろしくお願いします。
【小川委員】    御説明ありがとうございました。私は日本私立短期大学協会の御説明の中で、2ページの最後のところに、幼稚園教諭に係わる研修体制の充実・促進についてのお話の中で、離職率が4割弱になっていると、私はこういったことも存じ上げなかったものですから、そういったことの原因といったこと、もし少し具体的にお話しいただければありがたいなと思います。よろしくお願いします。
【日本私立短期大学協会】    幼稚園教諭につきましては、公立、私立があり、保育士についても同じく公立、私立がありますけれども、厳しい私立の経営状況におきましては、やはり給与の問題であるとか、勤務条件であるとか待遇面にかかわることが原因で、離職率が4割弱に至っているのだと思っております。
  公立の幼稚園、あるいは公立の保育士に行った場合は、比較的長い間働き続けることで、安定した給料が得られると思うのですが、私立の場合などでは必ずしも恵まれた条件ばかりではなく、早い時期に離職してしまい、その後も経験が浅いということで、低い給与であるとか、あるいは厳しい条件で働くことを余儀なくされるということもあるように考えております。
【天笠主査代理】    御意見ありますか。
【小川委員】    そういう離職率の高い中で、継続的に研修を進め、幼稚園教諭の質を高めていくといったことというのは、なかなか現実問題として、私立の場合には厳しいといったようなことが現状としてはおありになるんでしょうか。
【日本私立短期大学協会】    はい。
【天笠主査代理】    よろしいですか。
【日本私立短期大学協会】    はい。厳しい現実が幼稚園教諭の質を高める機会をつくりえていない現状があります。
【天笠主査代理】    分かりました。
  池野委員、お願いします。
【池野委員】    今回の改訂の基本的なことは四つあったと思うんです。一つは、資質・能力を大きく強調することと、そのする理由みたいなものが、社会に開かれた教育課程を作るということだと思うんです。学校や幼稚園だけで完結するんじゃなくて、社会との連携的なもの、あるいは現在の社会じゃなくて、未来の社会と結び付けるという考え方、それとあとアクティブ・ラーニングとカリキュラム・マネジメントと、こういう四つあったと思うんですけど、残念なことに、今回、三つの団体様は、社会に開かれた教育課程に関しては、ほとんどコメントいただけなかったように思うんですけど、この点に関しては、それぞれの団体さんはどういうようにお考えで、次期学習指導要領等を含めて、大学協会さんの方は、多分、高大接続が念頭にあると思うんですけど、さらにそれを含めて、社会に出ていくときに、どういうふうに考えられるのか。あるいは私立大学や短期大学さんのところも同じ問題だと思うんですけど、逆に幼稚園、あるいは家庭から学校、幼稚園や、入ってくるのも、ある面、社会に開かれたところの一つの逆のバージョンなんですけど、そういう場面に関しては、どういうようにお考えになっておられるのか、もしも御意見がありましたら、頂けるとありがたいなと思います。
【天笠主査代理】    これは三つの団体それぞれに御意見を頂ければと思いますけれども、そういうことで、まず国立大学協会様から、順次、お願いいたしたいと思います。
【一般社団法人国立大学協会】    大学は学術を中心にですけれども、最近、キャリア教育など含めまして、特に社会の経験というものを学習の中にどう取り入れるか、あるいはそれを一つのシステムとして、どういうふうに組み立てるかということについては、今、格闘中でございます。その点では、提言されました社会に開かれた教育課程という点については、我々も教育内容の編成という点で大変重要だと思っておりますし、そのことについては、これから大学の経験も、恐らく大学一番たくさん経験持っているんじゃないかと思いますけれども、その蓄積を、高大接続だけではなくて、それ以下の段階への教育界へのメッセージとしても作っていきたいというような立場で考えているというふうに思います。
【天笠主査代理】    それでは、日本教育大学協会様。
【日本教育大学協会】    社会に開かれた教育課程という考え方については、本協会としても全く同意するところでございます。社会が非常に激しく変化しておりますので、それに対応した教育の在り方というのは変えていかなければならないというふうなこと。
  それから、その変化に柔軟に対応できるような教育課程編成をしていかなきゃならないというふうなことで、各学校において、カリキュラム・マネジメントの能力を強化していかなければならないということについても、我々も同意するところでございます。
  以上です。
【天笠主査代理】    はい。お願いいたします。
【日本私立短期大学協会】    先ほどキャリア教育のところで、社会に開かれた教育課程について話させていただきましたけれども、短期大学におきましても、学生がインターンシップであるとか、いろいろな形で社会と結び付くことによって成長する場面をたくさん見てきております。そういったことより、幼稚園、小学校、中学校、高等学校のレベルから、社会の中で児童・生徒が自立し、主体的に生きるために、この社会に開かれた教育課程というのを、今回、学習指導要領の中で打ち出されたこと、評価しております。
【天笠主査代理】    よろしいですか。
  牧田委員、どうぞ。
【牧田委員】    日本教育大学協会様にお伺いしたいんですが、なかなか文章だけでは伝わっていかないというような議論がいっぱいありまして、図表で整理したいとか、図解するなどの解説書や補助資料が必要だと、私もそう思うのですが、その一方、授業作りの観点でいいますと、教員の創意工夫ということが重要視されておりまして、今ここにはプログラミング教育について、指導事例集の作成等のことも書かれておりますけれども、そのバランスだと思います。どこら辺まで指導事例、あるいは具体的な解説書を出して、どこから先を学校現場に任せるかという、そのバランスのことについて、お聞かせいただきたいと思います。
【天笠主査代理】    お願いします。
【日本教育大学協会】    非常に難しいと考えております。
  「学びの地図」としての学習指導要領を示すということで、今回、いろんな資料も示していただいて、非常に分かりやすいということもございますが、100万人いる教職員、また保護者という一般の方、教職員だけであればですけれども、さらに関係者、広く示すということであると、相当平易な書き方にしていかないとだめなのではないかなと思っております。そういう意味で、教員に分かるということでいいますと、例えば、プログラミング教育ですが、なぜ今、小学校でプログラミング教育が必要なのかということを明示していただくということが、まず必要なのかなということで、今回の「審議のまとめ」でも、非常にいろいろ記述していただいておりますし、また、有識者会議の方で、留意事項についても丁寧に示していただいております。そうはいっても、プログラミング教育を各学校でという抽象的な、そういうふうな感じを、どうしても教職員は抱いていると思っておりますので、例えば、特定の学年でとか、特定の教科でということであれば、イメージをして、自ら授業作りを進めるということも可能だと思っておりますが、そういうことがちょっと不足していれば、先生方はちょっと戸惑いがあるのかなと感じているところでございます。
  特に、こういった基準ということは、なかなか難しいと思いますけれども、我々が読んだ実感としては、そういった印象を抱いているということでございます。
【天笠主査代理】    よろしいでしょうか。
  私から教育大学教育様と、それから私立短期大学の二つの団体に御質問させていただきたいのは、それは私立大学協会様の、このレジュメにも、養成を行う短期大学という、そういう文言が記されていたところが改めて目に止まったという、そういうところもあるんですけれども、私はこの学習指導要領の改訂の成否の鍵の一つというのは、やっぱり人材をどういうふうに育てるか。とりわけ教員をどう育てて送り出すかということが、その一つの柱であるという認識をしております。そういう点からしますと、二つの団体は、そういう視点からの提起というところが、学習指導要領改訂等々の絡みからあったというふうに理解をさせていただいたわけなんですけれども、その中で、それぞれがこういう条件を整えることの必要性があるんだということは、私もある意味でいうと共通に理解するところは多分にあったというふうに聞かせていただいたんですけれども、もう一段踏み込んで、それぞれのお立場で教員を育てるということについての、今回の学習指導要領改訂の方向性に向けて、育てるということについての、ある種の当事者意識というんでしょうか、その立場からのそれとするなら、もう一段踏み込んだときに、今回の学習指導要領に、そのお立場から、どんなふうに関われるのか、あるいは関わることの場合に、かくかくしかじかのことだという、それがあったかと思うんですけれども、今回、教員を育てるという立場からしたときの今回の改訂と、それから皆さんの御意見等々からすると、改めてどういうことを。言うならば、当事者として、もう一方の、私はある種の当事者というんでしょうか、そういうお立場というのもまたあり得るんではないかと思っているんですけれども、そこら辺のところについて御意見がありましたら、聞かせていただければと思うんですけれども。では、日本私立短期大学協会様からお願いいたします。
【日本私立短期大学協会】    短期大学の教員養成といった場合、多くは幼稚園教諭となり、学習指導要領の最初の段階である幼児教育を担うことになります。
今回の学習指導要領全体を通じて、「生きる力」の理念の具体化がうたわれており、幼稚園のレベルから、それを順次、小学校、中学校、高等学校へと進め、それらを育んだ児童や生徒が学生となって、今度は幼稚園教諭となって、これがサイクルでつながっていくんだと考えております。
  ということで、今回は教員養成の視点から個別の学習指導要領の内容には触れませんでしたけれども、大いに期待しているところであります。
【天笠主査代理】    どうもありがとうございます。
  教育大学協会様、いかがでしょうか。
【日本教育大学協会】    本協会に所属している国立の教員養成系大学・学部というのは、非常にこれについては重大な責任を負っているというふうに、我々も自覚しているところでございます。
  特に次期の学習指導要領に関しては、いずれ教員の質をかなり高度化していかなければならないというふうに理解しておりまして、100万人いる教員をどうやって高度化していったらいいんだろうかというふうなことで、現在、考えているところでございます。
  現在でも大学の方では、アクティブ・ラーニングの手法を授業に取り入れたりしているところですし、それは教職大学院なんかの方では、講義式の授業はもうほとんどなくなっておりまして、現実の課題を前にして、どう改善していくかというような視点で授業を組んでいるというふうに変わってきております。
  そうはいいましても、今後、教員養成の高度化を進めていく上で、どういうふうな組織を組んでいくのかと。特に現職教員の研修にも貢献していかなければならないというふうなことを考えているわけですけれども、そのときに、今、修士課程と教職大学院の役割分担をどうするのかという議論があるわけですが、どうしても質の向上を図らなければならないけれども、量的にも圧倒的に足りないのではないかということも考えておりますので、国の政策の動向を見ながら、我々、本当、今後どうしたらいいのかということで日夜悩んでいるところですけれども、そうはいっても、我々自身も努力しなければならないことですので、教員の採用、研修、そういったところの改善を今後とも進めていきたいというふうに考えております。
【天笠主査代理】    どうもありがとうございました。
  続きまして、時間的にいうと、これが最後になるかもしれませんですけれども、国立大学協会様にちょっと御質問させていただきたい点があります。
  高大接続、その促進・推進ということについて御説明いただきました。私も基本的に、その方向で更に進展していったらという、そういう思いを非常に強く持っている一人でありますけれども、質問させていただきたいのは、高大接続の促進・推進に、今回の学習指導要領の改訂というのを、どういうふうに位置付けて、どういう形で展開していくと、より高大接続の推進に寄与していくのかどうなのか、そういう観点からしたときに、どんな今回の学習指導要領改訂の位置付けになるのかどうなのか、そのあたりのところについて、御見解、御意見があったら、話を聞かせていただければというふうに思います。よろしくお願いいたします。
【一般社団法人国立大学協会】    なかなか難しいですね。模範解答的には小・中、幼児教育から大学教育まで一貫して、そして社会に開かれてという趣旨で改革が構想されておりますので、先ほど必履修科目の問題とか、いろいろ申し上げましたけれども、そういう接続とともに、私ども大学としては、あらゆる大学生に対して、大学に入った時点の実情を踏まえて、全面的に責任を持つ教育の当事者として、教育的努力をすることが非常に重要かなと。だから接続の面と、あらゆる接続にもいろいろな課題が残るわけですので、大学教育は大学教育として、全面的に教育責任を負うという当事者的な自覚が一番必要かなというふうに、私自身は思っております。
【天笠主査代理】    どうもありがとうございます。
  委員の方、よろしいでしょうか。
  予定の時間になりましたので、前半のセクションにつきましては、ここで終わらせていただきたいと思います。御発表いただきました団体の皆様にはお礼を申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。
  頂きました御意見は、事務局にて整理の上、答申に向けた議論に反映させていただきたいと思っておりますので、改めましてお礼を申し上げたいと思います。
  よろしくお願いします。
【西川教育課程企画室専門官】    ありがとうございました。
  後半は14時5分より開始をしたいと思います。委員の皆様、少し御休憩ください。
  また、御発表いただきました団体の皆様、本日はこれで終了となります。誠にありがとうございました。
(  休憩  )
【天笠主査代理】    それでは、これより後半を始めます。
  各団体の皆様、本日はお忙しい中、ご足労いただきましてありがとうございます。
  この時間帯にお見えになっている団体は、全国都市教育長協議会様です。それから、日本私立中学高等学校連合会様です。もう一つは、全国学校栄養士協議会様です。この3つの団体でこれから進めさせていただきたいというふうに思います。
  各団体様からの御意見を開始いたしますけども、意見交換は3つの団体の発表全てが終わってから始めさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いをいたします。
  それでは、まず、全国都市教育長協議会様からお願いをいたします。どうぞよろしくお願いいたします。
【全国都市教育長協議会】   
  全国都市教育長協議会の会長の内田高義と申します。福井県福井市の教育長を務めております。よろしくお願いいたします。
  それでは、意見発表でございますが、まず、将来を見通すことが困難なこれからの社会に対応するために「2030年の社会」と、さらにその先の未来社会に目標を定め、そこに向けて初等中等教育が果たす役割を明示しようと意図されており、よりイメージがしやすいと思っております。
  まだ、次期学習指導要領等が目指す姿「社会に開かれた教育課程」「カリキュラム・マネジメント」「アクティブ・ラーニング」などを連動させた学校経営が、それぞれの学校や地域の実態に合わせてなされることで、その効果も大いに期待されるところです。
  そのために今後の答申を踏まえ、改訂される次期学習指導要領が限られたスケジュールの中でスムーズに学校現場に移行できるよう、しっかりとした条件整備を図ることが必要と考えております。
  そういった中で、まず条件整備の1点目といたしまして、教員の研修についてでございます。今回の改訂の柱の一つであります学校教育の改善、充実の好循環を生み出すカリキュラム・マネジメントを確立するために、全ての教職員が関わることは大切であると思っております。そのために、改訂が目指しているところの方向性や理念、文言等を十分に教職員が共通理解し実行に移すための計画的な研修の機会、また時間の確保が重要となってまいります。これらのことは、それぞれの教育委員会において対応すべきと認識しておりますので、また文科省等へ講師派遣等でお世話になると思いますけれども、よろしくお願いしたいと思います。
  続きまして、業務の効率化、教職員の多忙化解消についてです。このことに関しましては、要するにカリキュラム・マネジメントの実現やアクティブ・ラーニングなど、新たな学習指導方法等に対応するための教職員定数の拡充をお願いするものです。チーム学校の理念のもと、教員が教材研究や学習評価に専念できる環境、また、子供に向かう時間を少しでも確保できるよう整備をするためには、国による教職員定数の改善等が必要不可欠です。
  具体的には、通級指導教員や外国語指導教員の基礎定数化、また、スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーの配置の充実など、義務標準法の改正を含めた取組を是非とも進めていただきたいと強く要望いたします。これらのことは国際的も高く評価されております日本の学校教育をより充実させていくことにもつながり、日本の教育のよさをさらに世界に発信できるものと思っているところでございます。
  3点目は、教育の情報化推進のための財政措置についてでございます。情報活用能力の育成のためには、教育の情報化推進のための財政措置が必要であることは申すまでもありません。是非とも、財政措置についてはよろしくお願いしたいと思います。
  続きまして、授業時間の確保についてでございます。小学校の英語、授業時間増への対応には15分の短時間学習の設定、又は60分授業の設定、あるいは長期休業期間における学習活動、土曜日の活用や週当たりのコマ数の増など、地域や学校の実情に応じて組み合わせながら柔軟な時間割編成を可能としていくことが必要と示されているところです。まさに、そのとおりであると思っています。しかし、その工夫や実施に当たっては、容易なことではないということも感じております。したがいまして、英語科の授業時間数については、柔軟な時間割の編成が可能となるようなモジュール学習等に対応した教材の開発等が急務となってまいります。
  あわせまして、これら英語等の外国語活動のほかにも、小学校でのプログラミング学習や国語科の低学年から古典に親しむ学習の充実など、新しい学習への対応が教員の多忙化に拍車をかけることも懸念されますので、次期学習指導要領の実施に向けて計画的に準備ができますよう、早い段階での教材等の事例提示や情報の提供、いわゆる多様な活用例や先行事例の紹介をお願いするところです。
  続いて、中学校における部活動についてです。少子化のもと、学校単独での参加が困難となる中学校も増加しております。このような情報も含めて、持続可能な部活動の運営の在り方の検討が各教育委員会では課題となっております。学校教育課、社会教育課といった枠を超えての運営を支える体制の構築や基盤を整えていくための具体的な事例の紹介をお願いするところです。
  また、学校教育の一環としての部活動ですので、生徒の負担軽減の観点からも、休養日や活動時間を適切に設定するなど、バランスのとれた生活や成長に配慮する必要があります。是非そのような内容を盛り込んだ活動指針、いわゆるガイドラインを国が中心となり関係諸団体と連携しながら検討を進められ、一本化して示される、そういったことを是非要望しておきたいと思います。やはり部活動につきましては、学校関係の団体だけではどうしても無理がありますので、それも含めた、それ以外の関係諸団体との連携した取組、検討を進められて、とにかく一本化して皆さん一緒に取り組みましょうということでお願いしたいなと思っております。
  最後に、「社会に開かれた教育課程」に関し、保護者や地域に対して、説明と理解を求め、協力を要請することについてです。今回の柱の一つであります「社会に開かれた教育課程」の実現に向けてでは、そのイニシアチブはどこが担うのか。保護者や地域に説明と理解を求め、協力を要請することが求められておりますので、教育委員会や学校がその中心的な役割を担うものと認識をしております。したがいまして、その内容をしっかりと伝えていくことができるよう、国が学習指導要領の改訂の基本方針や改訂事項を分かりやすく示したパンフレットを作成されるとは思いますけれども、前回のように「生きる力」のパンフレットなどは、本当にあれ1つで全国津々浦々、同じような方向に向けて共通認識ができたと思います。今回は、特に「社会に開かれた教育課程」を強調されたパンフレットを作成していただきたいなと思っております。そして、そのパンフレットを活用して、国も、教育委員会も、学校現場も一体となって発信をし、保護者や地域に対して理解を求め、協力を要請していくことが大切ではないかと考えております。
  以上、今回の指導要領に向けての意見発表をさせていただきました。どうぞよろしくお願いいたします。
【天笠主査代理】    どうもありがとうございました。
  それでは続きまして、日本私立中学高等学校連合会様から御発表をお願いいたします。
【日本私立中学高等学校連合会】    このたびは意見聴取の場を設けていただきまして、ありがとうございます。
  それでは、時間も限られておりますので、書面も提出させていただいておりますから、これに沿って、少しかいつまんで述べさせていただきます。6点ほどございますが、1から3までは私が、それからその後は平方の方から述べさせていただきます。
  まず1点目でございますが、次期学習指導要領改訂の基本的な方向性などについてでございますけれども、子どもたちに未来の創り手として必要となる資質・能力を育むという視点から、教育課程の課題を整理しておられることは、大いに共感するところでございます。しかし、この資質・能力を学力の3要素に関連させて学習指導要領を改訂するということでございますが、その際、とりわけこの学力の第3番目の要素、「主体的に学習に取り組む態度(学ぶ意欲)」に関して、我が国においては課題があることは明らかでございます。
  このことについて、「学びに向かう力及び人間性の資質」というふうに解釈した上で、さらに「主体的に学習に取り組む態度」として観点別評価等をするということになっているわけでございますけども、この点については、高大接続改革の議論では、「主体性・多様性・協働性」としていたものでありました。これらの解釈の一連の関係性をより明確に分かりやすくしなければ、混乱するおそれがあるというふうに思っております。
  また、高等学校教育の改革は、この学力の3要素に沿って、いわゆる多面的な評価を行う大学入学者選抜及び大学教育の高大接続改革を一体的に実現しなければ、今次の改革ができないということでありますので、このことを特に強調すべきであろうと思います。
  2点目ですが、学習指導要領の枠組みの改善などについてでございます。「学びの地図」としての役割を果たすことを目指すということ、これは従来の学習指導要領の枠組み自体を改善しようとしている試みでありまして、その意気込みは大いに理解するところでございます。しかし、教科横断的な視点で各教科学習の目的達成のためにカリキュラム・マネジメントを促進するとされているわけですけども、実態としては、教科目の在り方が縦割りになっております。だから、そういうマネジメントが必要なのだというお考えであろうかとは思いますが、教育現場でカリキュラム・マネジメントをどのように実施するべきなのかが不透明という実感がございます。
  また、学習内容の削減は行わないで知識重視か思考力重視かという二項対立的な議論に終止符を打つとされておりますけれども、例えば歴史科目などでも、発展的な内容の選択科目を設けるなど、履修内容が拡大しており、かえって生徒や教員の負担が増えることが危惧されます。こうしたことから、歴史系の科目などを中心に所定の授業時数の中で全ての学習内容を習得させることは、なかなか困難ではないかと考えられます。資質・能力を重視するとしながらも、量的な拡大につながることによって、これがかえって改訂の本旨が後退していないか危惧しております。
  大きく3点目でございますが、育成を目指す資質・能力に基づいた柔軟な運用について、全ての教科などに育成を目指す資質・能力の3つの柱を当てはめて、それらの基準を詳細に構築するということが考えられているわけですが、これはかえって各教科などの教育が自己目的化もしくは固定化するのではないかと懸念をしております。学習指導要領が本来は大綱的基準にとどまるときに、現場の教師による資質・能力の育成を目指した創意工夫が機能するのではないかと考えるところです。
  特に中等教育の段階では、系統的に学習が行われる必要がございます。例えば、地理の例がここに記載してございますが、同種の教科でも中学校と高等学校間で断続的な学びとなっておりまして、学習内容が一部重複しております。中等教育の仕組みの中では、特にカリキュラムの運用については教育現場に系統性と柔軟性を持たせるような配慮が必要だろうというふうに考えております。
  では、続いて。
【日本私立中学高等学校連合会(平方)】    それでは、4番以降について簡単に御説明させていただきます。
  まず、アクティブ・ラーニングの具体的な在り方についてでございますが、昨今、アクティブ・ラーニングという言葉が盛んに使われるようになって、いろいろなところで研修が行われております。しかし、その多くは果たしてそうなのかと思われるような内容のものもないわけではないというふうに実感しております。主体的で、対話的で、深い学び、この実現を目指すためにアクティブ・ラーニングの視点から授業改善を行うということですが、そのときに学習内容の削減についてはどうするのか。学習内容の削減というよりも、合理的にやれるところが随分あろうかと思います。それと非常に大切なのは、本来の学びは、手段と内容の統合によって行われるべきであろうと思いますけれど、なかなかそういうふうになっていないのではないか。アクティブ・ラーニングが何か特別なものとしてつけ加えられるような印象を与えかねないところはありますので、もう一度繰り返しますけれど、手段と内容の統合によって行われるべき本来の学び、ここが疎かになって改訂されるのを非常に危惧するところであります。
  次に、5番の条件整備と財政的支援の必要性についてですけれど、ICT教育などを推進していくということですが、もう数年前からいろいろなところでタブレットを配布するとか、電子ボードを整えるとかという話がずっと出ていて、これは公立でも自治体によって整備状況に随分差があります。私立学校の場合、それを助成金と保護者からの授業料の中で賄っていかなければなりませんから、国が財政的措置をしていただくということが必須になると思います。そうでないと、日本の国のことだけを考えていればいいというICT環境ではありませんので、グローバル化に向けての改革を本当にするのであれば、世界的な教育の改革の中身をきちっともう一度見ていただいて、そこは進めていただきたいと思います。
  6番の「おわりに」になりますけど、次期改訂で知識の量や質、それから思考力等の両方が重要、これは当たり前のことでありますので、繰り返しになりますが、学習内容の削減は行わないという立場であれば、あくまでも、その削減を行わなくても、より学びの質を充実したものにするためには、やらなければいけないことが幾つかあると思います。先ほどから申し上げています施設、設備の設備もそうですし、当然、教員の資質・向上ということですから、研修をどのくらい力を入れてやるのか、そのための財政措置はどういうふうにしていくのか。今でも大分文科省にはお世話になっていて、私立学校でも、例えば英語の推進リーダーの研修とかはやっていただいておりますけれど、もっともっとそのほかのこともやっていただくようにしないと、本当の意味でのグローバル改革はなかなかできないのではないかと思います。グローバルリーダーを養成するための中等教育を充実させるのであれば、その辺のところをもう一度議論して、検討していただきたいと思っています。また、改訂に当たっては、あくまでも生徒の立場に立って、負担が大きくならないように行われるよう配慮していってほしいというのが、私たちの願いであります。
  以上です。
【天笠主査代理】    どうもありがとうございました。
  それでは、続きまして、全国学校栄養士協議会様から御発表をお願いいたします。
【全国学校栄養士協議会】    公益社団法人全国学校栄養士協議会の会長、長島と申します。
  本日は、意見発表の場をお与えいただきまして、ありがとうございました。次期学習指導要領に寄せる本会の意見を述べさせていただきたいと思います。
  まず、次期学習指導要領の理念についてでございます。次期学習指導要領の改訂では、「社会に開かれた教育課程の実現」を通じて、子供たちに必要な資質・能力を育成するという理念が示されました。確かに生きる力の育成には、習得した知識・技能を基に様々な状況において判断する力や行動する力、並びに自らの人生や社会のために生かそうとする力を具体的に体得する学習の場面や行動変容につなぐ活動の機会を設けることが必要であります。
  したがって、「何を学ぶか」「どのように学ぶか」「何ができるようになるか」を見据えた教育課程が編成されることは、大変重要で意義深いことと考えております。教育課程全体を通したカリキュラム・マネジメントが各学校で実施され、全教職員が共通理解のもと取り組む学校教育の改善、充実が図られることは、大変望ましいことと考えます。
  教科等横断的な視点で教育の内容を組織的に配列していくこと、教育内容の質の向上に向けてPDCAサイクルを確立すること、教育活動に必要な人的・物的資源等を効果的に組み合わせること等を踏まえたカリキュラム・マネジメントの考え方には期待するところが大であります。
  二つ目に、食育の重要性について述べさせていただきます。近年、社会環境の変化の中で、子供たちの生活習慣、食習慣にも課題が多くあります。複雑多岐化するこれからの世の中をしなやかに生き抜くためには、調和のとれた心身であることが重要ですが、それを支えるのは食であります。食育を通して自分や家族のために健全な食生活を営むことができる子供を育てる必要があり、生涯を支える健康づくりの基礎となる食育が、各学校において確実に行われることが重要だと考えます。そこで、「学びの地図」として示される改訂学習指導要領に基づき、全ての学校において食育が確実に行われるようにお願い申し上げます。
  私たち栄養教諭も、複雑・多様化する学校現場にあって、チーム学校の一員として専門性を発揮しつつ、子供たちの生涯にわたる健康と幸せを願い、発達段階における健康の保持増進を図り、心身の健全育成に資することを目的として教育活動に取り組んでまいります。私ども協議会としても、栄養教諭の資質・能力のさらなる向上を図ってまいります。
  次に、教科等横断的な「食育」の推進について述べます。現行学習指導要領に「食育の推進」が初めて明記され、食育は知・徳・体の根幹をなすものとして、教育活動全体を通して取り組むこととされ、栄養教諭は学校における食育の中核として児童生徒の生きる力のスキルアップ目指し、食育に取り組んでまいりました。食は生きていく上で最も基本的な営みであり、健康で豊かな心身を育む上で不可欠なものであり、健全な食生活は健康を育み、学力・体力の源となり、調和のとれた人格と生涯にわたる健康の礎となります。
  しかしながら、社会環境・生活環境の変化などに起因して、生活習慣病の低年齢化など、食をめぐる健康課題や学力、・体力との関連など、子供たちの食を巡る課題はますます深刻になってきています。また、新たな課題として、子供の貧困に伴う食生活のありようも懸念されております。
  「審議のまとめ」においては、「現代的な諸課題に対応して求められる資質・能力の育成」を掲げ、その例示として、「健康・安全・食に関わる資質・能力」を挙げています。前述のような「食育」の重要性を踏まえれば、食に関する資質・能力を教科等横断的な視点で育むことができるよう、教科等間相互の連携を図っていくことが重要であります。全ての学校において、食に関する指導が教科等横断的に確実に行われるよう、具体的な手立てが必要と考えます。
  例えば、教科等関連で取り組む食育の現状においては、食育の視点を踏まえた指導であっても、子供たちの変容を確認することまでは十分にできていないことから、食育について、個々の児童生徒のすぐれた活動を取り上げたり、子供自身が食生活に関する課題を解決していく力を身に付けることができるかを確認したりする取組を推進することが重要であります。
  さらに、義務教育9年間をはじめとする各学校段階を通じて食育に取り組むことについて、教育課程の連続性を明確にしていただきたいと願います。
  次に、各教科等における食育の推進について述べます。学校における食育の重要な場面は、まずは毎日行われる学校給食の時間であります。特別活動に位置付けられる学校給食の時間については、授業時数の取り扱いに加えられない時間となっているため、大切な教育活動としての姿が見えにくい状況があります。給食の時間における学級担任と栄養教諭の連携した食育は、短時間の指導であっても、毎日繰り返し行うことの積み重ねによって大きな教育効果を上げることができます。まさに現代的課題に対応する重要な時間であり、給食時間において食育の指導の充実が図られるようにしていただきたいと思います。
  また、「体育科」・「保健体育科」においては、食に関する指導に当たって、栄養教諭の専門性を生かすこととされております。「家庭科」・「技術・家庭科」は「体育科」・「保健体育課」と同様に食育と密接な関係を有する教科であり、「食育を一層推進するための食事の役割や栄養・調理に関する学習活動を充実する」に当たっては、教科の教育的効果を上げつつ、食育の視点を抑えた指導を行うことができるよう、栄養教諭と担任が連携して実践的な授業が行われるようにしていくことが必要であります。
  さらに、成長期における児童生徒に対して、学校行事、受験期の食事、部活動などの機会を捉えた食育も重要で、栄養教諭の専門性に基づいた科学的な視点に立っての食や栄養の指導によって効果を上げることができることから、栄養教諭による全体指導や個別的な相談指導が各学校において充実されるようにしていただきたいと思います。
  最後に、学習指導要領の理念を実現するために。学習指導要領に食育が明記されてから10年、学校における食育推進の中核となる栄養教諭が配置されている学校においては、食育推進の指導体制も整い、食に関する指導の全体計画も整備される中で、質の高い食育が行われてまいりました。栄養摂取の偏りや朝食欠食といった食習慣の乱れに起因する肥満や生活習慣病、食物アレルギー等の健康課題に対して、栄養教諭は専門的知見に立った適切な指導助言を行っております。また、校内指導体制をつくり、教職員、保護者と連携して子供をめぐる食や健康の課題の解決に向けて取り組んでもおります。
  また、災害時、自らの命を守り抜くことのできる食や栄養の確保について、防災教育の重要な一端を担ってもおります。私たち栄養教諭がまさに食育をもって育てたい子供の姿は、食を教材に「何ができるようになるか」「何を学ぶか」「どのように学ぶか、何が身に付いたか」を視点とした新しい学習指導要領改訂の基本的な方向と一致するものであります。
  一方では、栄養教諭未配置校がたくさんあり、全ての子供たちに等しく食育を行うためには、教職員の人的整備にあわせ、チーム学校の一員としての栄養教諭の配置基準定数の見直しを検討していただきたいと考えます。
  あわせて、食育の教材としての役割を果たす学校給食の実施率を上げ、義務教育において学校給食を行うものとして位置付け、充実した食育を推進することができるよう望むものであります。
  以上、よろしくお願い申し上げます。
【天笠主査代理】    ありがとうございました。
  それでは、これより意見交換の時間に入らせていただきます。御質問、御意見のある委員の先生方はよろしくお願いをいたします。上田委員、お願いいたします。
【上田委員】    どうもありがとうございます。小学校の英語の教育について、二つの観点から御意見をお伺いできればと思います。
  一つは、小学校の教員の先生方が実際に教員の訓練を受けたときに、英語を教えるということは、まず最初の段階では想定されていなかったような先生方がたくさんいらっしゃると思いますけども、今回、こういう本格的な科目として授業を導入するときに、現場の感覚として、何かこういう支援が必要とか、あるいはこういう点はまだ検討する余地があるとかという問題点がありましたらお伺いしたいと思います。
  それから2点目は、英語教育というのは小学校から始まって中・高と続いていくと思いますが、中・高の立場から見たときに、どういう教育をなされることが小・中の連携の観点からいって望まれるかということについての御意見がありましたらお聞かせ願えるとありがたいです。よろしくお願いします。
【天笠主査代理】    そうすると、教育長協議会と私立中高、そういうことでよろしいですか。では、教育長協議会様からお願いいたします。
【全国都市教育長協議会】    1点目ですけれども、これまで外国の活動ということで、小学校においては、担任がそれを担っておりました。したがいまして、小学校の担任は英語に移っていっても、ある程度、これまでの経験等でやっていかなければいけないという思いがある一方で、やはり教科となるということで、その専門性が必要とされる。そうしますと、英語の免許を持った教員が指導に当たるようなことも必要になってくるかと。そのあたりが、担任が英語の活動をしてきてある程度ノウハウを備えている先生方も多いですけれども、今後、専門的な免許を持たれた教員が対応するのが望ましいかなと思っております。
  それから2点目ですけれども、小学校、中学校との英語をどのようにすみ分けていくかということですが、これまでも英語活動の中でそういったことが話題にもなってきております。といいますのは、学校とか地域によって活動に差が多少ありまして、それが中学校に来たときにどうなのかと。そこで中学校区教育がある程度進んでいるところにつきましては、そういったことも含めて、小学校、中学校が連携をとりながら活動を含めた中で次につなげていけたということもありますので、今後、そういったこともまた全国的に重要になってくるのではないかなと思っております。
  以上でございます。
【天笠主査代理】    お願いします。
【日本私立中学高等学校連合会(平方)】    それでは、中・高の立場からコメントさせていただきます。
  まず、小学校に関しては、今の状況では多分、相当苦戦するということは、英語を専門に免許を取得した教員数が少ないというのが決定的な理由だと思いますけれども、それは早急に改善しないといけないと思います。と同時に、これは中学の方も高校の方もそうですけど、英語の教員だけが英語ができればいいという、そのスタンスはもうやめにした方がいいと思います。なぜかというと、非英語圏といいますか、英語を母国語としない生徒たちの英語の取得には2,000時間かかると言われています。でも、これは、中学や高校の英語の時間だけを足し算しても、とても足りません。日本は、文法や、書くことや、そんなことしかしていないからだめだという批判がありますけれど、そうではなくて、絶対的な時間が足りないということをちゃんと自覚しないと難しいですよね。そのためには、英語の教科だけを英語で教えるのではなくて、他の教科を英語で教えることもよしとするような、そういう学習指導要領になるように是非検討していただきたい。そうしないと、本当に国際公用語としての英語に日本の若者たちが対応するというのは、相当これからも大変だろうと思います。ですから、一つのことだけ、これをやればできるということでは決してないと思いますので、日本の若者たちに英語力を付けるためにはいろんな要素があるので、そこの部分に1つ1つ対応していくしかないと思います。よろしくお願いします。
【天笠主査代理】    どうもありがとうございます。はい、どうぞ。
【日本私立中学高等学校連合会(長塚)】    補足してよろしいでしょうか。私から、ちょっと加えて意見を述べたいんですが、全体的なことについては今のとおりだと思うんですが、それは中学校に入ってくる生徒で、もう小学校の卒業段階で、例えば英検でいうと準1級レベルを持っているような生徒もいます。つまり、英語力に関していうと、学年進行で学んでいくような段階ではなくて、その個人個人によって、相当に差があるということです。中1で高卒のレベルに入っている子がいるということを踏まえて、これからそういうことが進んでいくんだろうと思います。ですから、学年進行型の英語の学び方をするのではなくて、能力に応じた学びを相当柔軟に行わなければ対応できないのではないかと思います。
【天笠主査代理】    どうもありがとうございます。ほかの委員の方。先に牧田委員。
【牧田委員】    違うことでいいですか。
【天笠主査代理】    違うことで結構です。それから、その後、小川委員、お願いいたします。
【牧田委員】    ありがとうございます。
  今、全国都市教育長協議会の会長さんの方から、中学校教育の話が出たんですが、きょうのプリントの6番でも、保護者や地域に対して説明と理解を求めるというようなことについても、中学校教育というのはすごくいい方法だと思いまして、今、現に進められていて、今回の学習指導要領改訂は、非常にいい事例を全国的に広めていこうというような趣旨もあるかと思うんですが、私、ほかで話をさせてもらうときに、どうすれば中学区として違うところが影響をとってやっていけるのかというようなことをよく質問されるわけです。そこのところを一つ、教えていただけたらと思います。
【天笠主査代理】    はい、お願いします。
【全国都市教育長協議会】    中学校区教育、かなり全国的に話題になって取り組まれているところも多いんですけれども、私のところで例を出し申しわけないんですけれども、実際進んでいくのに4、5年かかります。軌道に乗るまでといいますか、もうこれで10年ちょっとたつんですけれども、小学校と中学校だけでなく、その地域も含めての取組というのが大事になってきます。だから、学校選択制とかいろいろやっておられる地区にしてみると、逆にそのあたりは難しいのかなという思いもしています。でも、小学校と中学校が一体となっていろいろと先生方も研修することで、先ほどの英語なんかも、進みぐあいとか、そういったことも当然ある程度共通理解できますし、もう一つ言うと、保育園、幼稚園の違った子が小学校へ入ってきたときに、もう既に1年生の対応が違うので、今度は幼稚園、保育園と小学校との連携、そういったことも含めて、あわせて学校・家庭・地域、まさに新しい指導要領の一つの柱、「社会に開かれた」というところは、そういった意味でも、これまでになかったことを少し表に出してやろうというところで、どこも苦労されると思いますし、逆に、ここをきちっとやらないと意味もないのかなとも思っております。
  以上でございます。
【天笠主査代理】    それでは、小川委員、お願いいたします。
【小川委員】    ありがとうございます。
  カリキュラム・マネジメントについて、全国都市教育長協議会の御提案の中には、まず1番のところの教員の研修というところで、全教職員がかかわりながらのカリキュラム・マネジメントを確立していくことが非常に重要だというような、そのための研修というお話がまず最初にございました。また、私立中学高等学校の方からは、2番目の枠組みの改善のところで、横断的な視点や、それから各教科学習の目標達成のためにカリキュラム・マネジメントが重要だという、実態としてその教科の縦割りの中で意識も、それから固定化されている中でカリキュラム・マネジメントをどのように実施すべきなのか、不透明であるというような御意見もありました。非常にどちらも、まさしくそのとおり。だからこそ、子供たちの「学びの地図」を作っていくためにも、そのカリキュラム・マネジメント力というのを付けていかなければいけないというふうに切実に思っているのですが、何か具体的に、こういったことが課題になっていてとか、障害になっていて、なかなか教員が全員でカリマネを実施することが難しいのではないかといったようなことや、また逆に、どのような研修、取組が必要であるというふうに思われているのか、具体的に考えをお聞かせいただければありがたいと思います。
【天笠主査代理】    それでは、今のカリキュラム・マネジメントについて、それぞれのお立場から御意見をお願いできればと思うんですけども、お尋ねしたいのは、教育長協議会の私立中高ですけども、加えさせていただいて、栄養士協議会さんもカリキュラム・マネジメントについて言及がありますので、教育長協議会さんから順次、それぞれお願いいたしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【全国都市教育長協議会】    今回のカリキュラム・マネジメントにつきましては、これまでは各それぞれの教科ごとのカリキュラムという捉え方が主でございました。今回は、教科を超えて学校教育全体でとか、そういった広い視野になってきますと、教職員が同じ共通認識、言葉の概念です。例えばアクティブ・ラーニングにいたしましても、皆同じ思いをしているのかと。一人一人認識が違っていたら、その時点でなかなかカリキュラムが共通できませんので、そういった意味で、最初の段階で、今の段階から理念とか文言について、そういう時間が必要だと。現場でなかなかそういう時間がとられないんですけれども、それでも月に一度とか全体で職員会議がありますので、だからそういったことで計画的にやっていく必要があるということを感じております。
  以上でございます。
【天笠主査代理】    どうもありがとうございました。続きましてお願いします。
【日本私立中学高等学校連合会(長塚)】    これは、高大接続改革会議のところで非常に議論になったことに関連してくると思っています。ゴールのところがどのようなことになってくるのか、中等教育の学びの最終的な評価について、特に大学入試の中でどういう問題が出されてくるのかによって学び方を現場の教員は考えていくわけですので、そういう方向に向かうこと、カリキュラム・マネジメントは5教科横断であり、総合的な学びを行うということは、うたい文句はなっているんですが、今回のまとめを拝見すると、分量的にも余りそこが言及されていないように感じたわけでございます。そのことを大変心配しております。そこが変われば、教育現場ではいわゆる教科・科目ごとの学びを超えていかなければならないという意識に変わるというところから始まっていくんだろうと思います。実は、現場では、そこがまだ非常に疑心暗鬼なんです。「そうはいっても大学入試は変わらない」、「教科・科目ごとの中でやらなきゃならないんだろう」というような意識が払拭されない以上、その方向に向かっていかない。
  「学びの地図」を資質・能力の三つの柱で示してくれるのはありがたいですが、実は、本来ならば、課題発見、解決型の力を育てるというのであれば、最初からマニュアルめいたもので全部与えられてしまうと、それが全てなのかとか、それが指針として変えられない基準であるかのように考えてしまうのが、今までの指導要領に対する受けとめ方だったわけです。それが詳細になればなるほど、詳細にそのとおりやらなければならないという方向へ行ってしまうのではないかということを危惧しているわけです。実はそうじゃなくて、「学びの地図」には、まさに課題発見、解決の資質を育てるためには、自分たちで創意工夫して考えていく必要があるんだということについてディレクションを示していただくだけでいいんじゃないかという思いがしております。
  以上です。
【天笠主査代理】    ありがとうございます。
【日本私立中学高等学校連合会(平方)】    いいですか。
【天笠主査代理】    どうぞ。
【日本私立中学高等学校連合会(平方)】    すみません。まさに今、長塚が言ったとおりだと思いますけれど、特に今、大学入学者希望評価テストの議論が盛んに行われていますけど、ただ、現学習指導要領が2020年まで行われるわけで、今、それ以降の学習指導要領を検討しているわけですけれど、「高校教育イコール大学受験教育」、これが今までの、ずっと長い間続けてきた高校教育だと思います。それを根本的なところから大学入学準備教育、ここに視点を置いて教育課程を作れば自然と変わるはずだと思っていますけれど、なかなか私が参加している委員会では、そういう方向にはいっていません。
  以上でございます。
【天笠主査代理】    栄養士協議会さん、いかがでしょうか。
【全国学校栄養士協議会】    私どもが職務としている食育は、教科ではないというところが絶対的な違いがあるところなんですけども、食育は教科としての位置付けがないために、学校全体で共通理解があって、必要なものとして認められなければ行われにくいところにあります。さらに、教科ごとに縦割りで行われる教育課程においては、ましてや、食育を行う場面がない。しかしながら、教科横断的に行えば、概ね食育の目的は果たすことができる。
  例えば、具体的になって申し訳ないんですけども、家庭科で御飯の炊き方を学ぶ、社会科で稲作をしていると、あるいは給食の時間にその作ったお米を使って家庭につなぐというような、こういうマネジメントが行われれば、食育も、今の段階でそれなりの成果を上げていくこができるということで、これをつむぐカリキュラム・マネジメントの中で、教職員の意識改革と併せて食育は大事なものだという形で担っていただけることを大いに期待しているところでございます。
【天笠主査代理】    どうもありがとうございました。池野委員、いかがですか。
【池野委員】    ありがとうございました。たまたまこの団体さんは、教育長さんのように教育委員会も代表しておられるし、ある面、学校の経営的な部分の学校全体の方と、栄養教員のように、個々の先生の立場で今の新しい指導要領を見ていただいているんですけど、そのときに、教育長さんや教育委員会は一種のバックグラウンドみたいなものが問題になっていて、学校はそのもので、先生方は特定の領域に問題関心があって、なかなか全体を統合的に見るというのが難しいように思うんです。ですから、本当はこの3者の方々がどこかで1つになることができることが、一つの我々の狙いだと思うんですけど、そこで、教育長さんの側から見た場合に、学校や先生方に研修という立場だけが問題なのか、もっと大きな違いがあるのかというのが、教育長さん会議のところにお聞きしたいことで、私立の中学高等学校なんですけど、小学校だとか、各先生方が、公立と違ってどういうことが一般的に、公立よりもある面、私立は柔軟にやっておられると思うんですよね。そういうものの経験をどういうように教育課程の新しいことに反映させようとしてほしいと思っておられるとか、栄養教諭さんから見れば、今ちょっと言われたんですけど、教科を超えるというのは、ある面、ほかの教科でも、例えば私、専門は社会科なんですけど、社会科なんかは、昔々は、昭和20年代というのは、もっと豪華的な部分があって、経験学習的な生活学習というのをやっていたんですけど、そういうことを見ると、本来は教科を超えていくところに、どの教科も本来はあるんだと思うんですね。結果的には、子供たち自身がどういうような学びをして、どういう力を付けるかということに帰するんじゃないかなと思うんですけど、それぞれの立場から見た場合に、隣の方だとか、隣の団体さんが言っておられることに関しても含めて、教育課程自体がどういうふうに総合的にやればいいか、何か提言いただけるとありがたいなと思います。
【天笠主査代理】    教育長協議会さんから順次お願いいたします。
【全国都市教育長協議会】    私も全国都市教育長の会議の中で、一つは、それぞれの市によっていろいろと問題点が実は違うという実感をしています。だから、こちらで特に問題なくても、あちらではすごく問題になっているとか。だから、そういった中で、トータル的に、じゃ、どうなのかといったところで、国が一つのこういった方針を出される中で、同じことをやるにしても、ある程度の幅の中で対応していかなければいけないという、そういう難しさ。あと、バランスをとりながらやっていかなければいけない。そういったことを感じています。
  でも、そういった中で、学校の立場、教育委員会の立場、県の立場、国の立場、保護者の立場、トータル的に見て何がいいのか、どうするのがいいのか、今の状況の中で、今の条件の中で、これを考えていくのが我々の仕事ではないかということで、今対応をさせてもらっているというところなんです。
  ちょっと今のは回答になっていないかもしれないんですけれども、そういうことです。
【天笠主査代理】    どうもありがとうございます。続きまして、いかがでしょうか。
【日本私立中学高等学校連合会(長塚)】    ほかのことを言うのはなかなか難しいんですけど、大学は8割、高校は3割強が私立です。中学は7%ぐらいで少数なんです。ですから、公立のことを言うに当たっては、中学についてはなかなか難しいと思いますが、中学2年生ぐらいまでは非常に日本全体の中等教育はいいと、世界的に評価されていると書いてあることは、そのとおりだと思います。しかし、私学の場合には、とりわけ大学を意識して、大学から幼稚園までつながっている学園も少なくないわけです。7百数十校の中学校、それから1,300校の高校ということなんですけれども、大学と関係している系属の高校が、ちょうど半分あります。ですから、大学との関係性を非常に重視しているということで、大学入試がどう変わるか、内部からの大学進学のつながりもそうなんですけれども、広い意味で大学入試の在り方をどう変えていけるかというところにかかっていると思います。今次の改訂は大学入試との関係で、高校教育を問題にする立場に立っていますが、社会の変化に大学が対応できていない。そのために大学入試の在り方が問題になっていて、高校教育も変えなきゃいけないということがあったと思うんですが、そのことをもっと強調しないといけないのではないかと思っております。
【天笠主査代理】    栄養士協議会さん、いかがでしょうか。
【全国学校栄養士協議会】    先ほどもお話をしましたように、食育の推進というのが学校教育の中に明確にうたわれたのは、現行学習指導要領が初めてであります。そのために歴史も浅い、そして栄養教諭制度もそのあたりから始まっておりますので、教諭としても歴史が浅いというところで、非常に重要な食という命の根幹に関わるものを抱えるものでありながら、まだ教育課程の中に担保されているところが薄い部分があります。したがって、食育は栄養教諭おのおののコーディネート力が非常に評価されるところなんですけれども、重要なのは、管理職である学校長のリーダーシップにより、取り組まれるというところが大変大きいですので、そのあたりのところも意識付けをしていただきながら進めていただけたらと思います。
【天笠主査代理】    ちょうど予定していた時間になりました。これで終わりにしたいと思いますけども、食育という観点から、改めて教科という在り方というのをどう考えたらいいのかという受けとめ方、また、高等学校における教育課程、あるいはカリキュラムというのは何なのかということについて。それから、教育長さんからは、改めて重要なリーダーとしての、教育長さんのリーダーシップの発揮の仕方を含めた研修、リーダーとしての今回の学習指導要領による研修の在り方ということが、それぞれのお立場から、私なりに一つの問題提起という形で受けとめさせていただきました。
  時間でありますので、後半のセクションはこれにて終了したいと思いますけども、御発表頂きました皆様の御意見につきましては、事務局にて整理の上、答申に向けた議論に反映させていただきたいというふうに思います。どうもありがとうございました。
  最後に、事務局より今後の日程について連絡をお願いいたします。
【西川教育課程企画室専門官】    皆様、本日はありがとうございました。次回は、11月4日月曜日、15時から17時です。場所は文部科学省3階の第1講堂にて開催をいたします。詳細は追って御連絡申し上げます。
  また、本日の資料につきましては、郵送を御希望される方は、机上に資料を残しておいていただけましたら、後ほどお送りをさせていただきます。
【天笠主査代理】    それでは、閉会いたします。どうもありがとうございました。


――  了  ――



〈3階会議室〉
【無藤主査】    それでは、定刻になりましたので、ただいまより中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会教育課程企画特別部会の第23回を開催いたします。本日は、お忙しい中、御参集いただきまして、ありがとうございました。
  今回も、前回に引き続きまして、関係団体からのヒアリングを行います。本日は、14の団体からの御意見を頂くということでございますので、会場を二つに分けて行うということにしてございます。
  それでは、これより関係団体のヒアリングを行いたいと存じます。
  まず、事務局から配布資料の確認をお願いいたします。
【石田教育課程企画室専門官】    本日は、資料1から資料16を、議事次第にございますように、お配りをしております。会議室に関わらず、全ての団体様から頂戴しました発表資料を配布しております。
  本会場で御発表いただく団体様の資料は、資料9から資料16となります。不足等がございましたら、事務局までお申し付けいただければと思います。
  以上でございます。
【無藤主査】    ありがとうございました。各団体の皆様、本日はお忙しい中、御足労いただきまして、ありがとうございました。
  前半と後半に分けてございますけれども、前半の時間帯にお見えになっている団体でありますが、公益財団法人日本体育協会様、公益社団法人高等学校文化連盟様、公益社団法人全国公立文化施設協会様、公益財団法人日本宗教連盟様、以上、4団体でございます。
  それでは、各団体様からの御発表を開始したいと存じます。意見交換は、4団体の発表全てが終了してから行う予定であります。
  それでは、各団体10分ということで、まず、公益財団法人日本体育協会様からお願いいたします。
【公益財団法人日本体育協会】    日本体育協会の泉と申します。本日は、学習指導要領の改訂に当たりまして発表の場を頂きまして、ありがとうございます。
  日本体育協会は、国民スポーツの推進を目的に、国民体育大会の開催、スポーツ指導者の養成、スポーツ少年団の育成等に取り組んでいる公益法人でございます。次期学習指導要領等に向けたこれまでの「審議のまとめ」について、運動・スポーツへの多様な関わり方を学べる点、アクティブ・ラーニングの視点、部活動の考え方等、本会といたしましても賛同いたします。そこで本日は、教育現場において指導される際の観点について、本会での取組を踏まえまして御説明をさせていただきます。
  資料9の、カラー刷りの資料を見ていただければと思いますが、資料ナンバー、右下の数字の1番のスライドページをご覧ください。御承知のとおり、学校体育及び運動部活動は、多くの子供たちにとってスポーツと出会う最初の場であるとともに、生涯にわたる豊かなスポーツライフを実現するための基礎となるものであり、「審議のまとめ」の体育の見方、考え方にある「する、みる、支える、知る」といった多様な関わり方は大変重要な視点であると認識をいたしております。また、幼少期の運動・スポーツ体験や習慣が、子供時代の健康や体力だけではなく、大人になってからの運動・スポーツ習慣、健康や体力にも影響を及ぼすと言われておりまして、子供たちの運動・スポーツの環境整備は最重要課題と考えております。
  1枚めくっていただきまして、2番のスライドページをご覧ください。生涯にわたって豊かなスポーツライフを送るためには、運動・スポーツを行うことによって体を動かすことの楽しさを実感すること、それによってスポーツの価値を理解することが必要であると考えております。これは、日本体育協会が2011年に創立100周年を迎え公表いたしました「スポーツ宣言日本」にある、「スポーツは、自発的な運動の楽しみを基調とする人類共通の文化である」との定義を踏まえた考え方でございます。
  3ページ目を見ていただければと思います。ここで説明いたしました内容を実践していく際の指導上の留意点といたしまして、4点御説明をさせていただきます。
  まず1点目は、スポーツの価値の理解、2点目につきましては、アクティブ・チャイルド・プログラムの活用、3点目といたしまして、指導における暴力の根絶、4点目といたしまして、プレイフルネスの概念と主体的な学びの4点でございます。
  4番、5番のスライドページをご覧ください。本会のスポーツ医・科学研究では、新たなスポーツ価値意識の多面的な評価指標の開発という研究プロジェクトを行っております。この研究では、人間が文化としてのスポーツとの多様な関わり方を通して得られるスポーツの固有の楽しさ、喜びこそが内在的な価値であり、中核的なスポーツの価値として位置付けられ、こうした価値の享受が十分に尊重され充足されるときにストレスの解消、人との交流、健康、体力の維持増進などといった周辺的スポーツ価値や教育的・経済的な価値等といった派生的スポーツ価値が個人や社会全体に創出されるといったスポーツ価値のダイナミクスが重要であると考えております。子供たちの指導に当たっては、教員や運動部活の顧問などが、まずスポーツの価値の捉え方として、スポーツ固有の中核的な価値を広め共有することが最も重要であることを確認いただきたいと思います。
  また、5番目のスライドのところですが、スポーツ価値の内容を御紹介させていただいております。併せて、後ほど御確認をいただければと思います。
  1枚めくっていただきまして、6、7番のスライドをご覧ください。近年、子供の体力の低下傾向に歯止めが掛かってきておりますが、運動する子供とそうでない子供の二極化の傾向が見られることや、体力水準が高かった昭和60年頃と比較しますと、依然として低い状況が見られることなど、課題がございます。この背景には、近年、日常生活における子供の身体活動量の低下や運動離れなどが指摘されております。こうした運動離れなどは、既に幼児期から起こっているものと考えられます。本会では、こうした社会的な課題に対応するため、2011年に文部科学省の委託事業といたしまして、アクティブ・チャイルド・プログラムを作成いたしました。このアクティブ・チャイルド・プログラムについては、運動遊びを通してスポーツの基礎となる様々な動きを習得させることが可能であり、子供が体を動かすことを心から楽しいと感じることにつながり、ひいては健全な発育、体力向上に貢献できると考えております。
  6番のスライドでございますが、小学校が主体となって、アクティブ・チャイルド・プログラムを進めている事例でございます。この小学校では、アクティブ・チャイルド・プログラムの制作メンバーを講師に招きまして、児童に様々な運動遊びを体験してもらうことで、体を動かすことの楽しさを感じてもらうことはもちろんのこと、教員を対象とした研修会も併せて開催をいたしまして、教員にも興味を持ってもらい、体育の授業や休み時間の運動に活用してもらうことを狙いといたしております。
  また、2015年には、幼児期からのアクティブ・チャイルド・プログラムを開発しており、7番のスライドページもございますが、幼稚園での導入事例を紹介いたしております。楽しさを感じるような雰囲気作りをしながら、プログラムを取り入れている様子が分かります。御紹介したとおり、幼稚園や小学校などの現場において、例えば、休み時間の外遊びや体育のウオーミングアップ、体つくり運動の一環として御活用いただけるのではと考えております。これに限らず、子供たちが体を動かすことの楽しさを感じられることが重要であると考えております。
  8番のスライドをご覧ください。大変残念でありますが、スポーツの現場でもまだまだ指導時の暴力行為がなくならないのが現状であります。学校現場においても、多くの教員は適切な指導を行っていますが、ごく一部、体罰を行って処分を受ける方、また、運動部活動でも指導時の暴力行為が依然なくなっておりません。本会では関係団体と連携をいたしまして、「スポーツ界における暴力行為根絶宣言」を発表いたしました。資料には指導者に関する項目を抜粋しておりますが、指導に関わる全ての方がこの4点を理解することが重要と考えております。本会といたしましても、引き続き子供たちが楽しくスポーツができるよう、環境整備に取り組んでまいります。
  9番のスライドページをご覧ください。運動遊びは、子供への体力、運動能力の向上をもたらすだけではなく、心理社会的側面に好影響をもたらすことが明らかとなっております。このことから、本会では平成25年度から社会心理的側面の強化を意図した運動・スポーツ遊びプログラムの開発及び普及・啓発に関する研究を進め、運動遊びがもたらす心理社会的効果に影響を与える概念として、プレイフルネスを提唱いたしております。
  プレイフルネスとは、より楽しく面白い状況に変える、又は、そのような環境を作り出す個人の能力などと定義をされております。子供の運動・スポーツの習慣作りを行うためには、指導者が子供たちのプレイフルネスを育てるため、教える、やらせるから、気持ちを引き出すことに重点を置く必要があると考えられます。これは、「審議のまとめ」にございます学習指導の改善・充実や教育環境の充実等の主体的・対話的で深い学びを実現する指導とも関連しており、必要な観点であると考えております。
  この研究において、運動遊びに関連するプレイフルネスを満たす要素として、没頭、自己決定、有能感、ルール遵守、社会的関与、楽しさの六つを挙げております。教員や運動部活動の顧問が、これらの要素を強化すること、過度な指導ではなく、子供たちが必要としているときに必要な手助けをする指導を行うことが子供たちの自主性を引き出し、主体的な学び、また、他者との関わりや対話を通じて学習する対話的学びにつながるものと考えております。
  最後となりますが、10番のスライドをご覧ください。今回の「審議のまとめ」といたしましては、資料に記載の教育環境の整備や体制整備の必要性について触れられております。本会として御協力させていただける項目として、4点掲載をしております。現在実施できているものや今後取組を始める予定のものもございますが、教員養成から教員向けの研修、体育や運動部活動を充実させるプログラムツール、運動部活動の運営支援など、学校における教育環境の充実に向けた協力により、子供たちの運動・スポーツ環境の充実に貢献をしてまいりたいと考えております。
  以上となります。どうもありがとうございました。
【無藤主査】    ありがとうございました。
  それでは、引き続きまして、公益社団法人高等学校文化連盟様からの御発表をお願いいたします。
【公益社団法人高等学校文化連盟】    それでは、失礼をさせていただきます。全国高等学校文化連盟会長の髙橋でございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
  改めまして、今回、これだけの貴重な発表、意見交換の場に参加させていただくことを許可いただきました関係各位、改めまして御礼を申し上げるところでございます。
  御承知のとおり、全国高文連、大きな見方をしますと、高校生の文化部の活動の全面的な支援とその育成に当たるということで、主に、毎年夏に行われます都道府県持ち回りの全国高総文祭の開催、その3部門における優秀校を東京に集めましての優秀校東京公演の実施、さらには秋から冬にかけまして指導者講習会という大きな事業を積み重ねながら、生徒の文化部活動の支援に努めていくということでございまして、特に近年、ここ3年は文化庁様の御指導の下、「文化部活動事例集」の刊行等に助力をしておるところでございまして、どちらかというと、日の当たらない影の、日なたの文化部の活動というイメージにつきまして、全国的な活動を展開できるようにという配慮でもって1年間を過ごしている状況でございます。
  実は、高文連の立場から、このカリキュラム等、あるいは指導要領等にという御要望等もございましたが、正直申し上げまして、現在のところ、私も地方の一高等学校の現職の校長でございます。やはりこういった学習指導要領等、将来の子供たちを育てている上で、何が大事なことか、何が必要なことか、何がこれからの大きな課題かということを検討する場合、本当の意味では文科省様のこういったお膝元のところで一介の校長が何を物申すかというふうな、そういった御指導あるいは、お叱り等を受けることは覚悟、そういったことは承知の上で、今回の改訂に当たられる骨子と、これから展開されるであろう学習指導要領等に、特に私どもから、この点については是非こうあるべき、あるいは、こうしていただければという、そういう観点で以後申し上げることといたします。失礼をお許しいただければと思います。
  まず初めに、資料の1ページ目でございます。改訂に当たりましてということで、頂きました資料等をじっくりと読ませていただいたところでございます。本当の意味で「グローバル化」という言葉にごまかされる、そういう懸念を排除するために、いろいろな意味で、これはかつて、20年、30年も前からのお話ではございますけれども、いわゆるグローバル化というのは、今、いきなり始まったものではございませんでして、「国際化」という言葉に始まり、あるいは「ボーダーレス社会」という言葉に始まり、それらの延長線上に今日の大きな変化をこの言葉で表現したもの、あるいは、知識や技能やそういったものだけで評価することなくという観点も、既に20年、30年も前の学習指導要領の中に新しい学力観と生徒の思考力、判断力、表現力、そういったものをきちんと見極める、そういう評価が必要だということは現場の中では重々に承知の上で今日を迎えたところでございます。
  殊更、高等学校の教育において、既に小中学校の継続性を持ってやってきた、この学習指導要領、指導の内容につきまして、高校が今更、随分とおたおたをしている、あるいは慌てているという、そういう実情は否めないところもございますけれども、ただし、やらなければいけないということではなくて、今回の改訂の骨子にございますが、2030年、この年をどんなイメージで迎えるかということで、高等学校がやれることは一体何なんだろうということを改めて考えさせていただくいい機会になっていると私自身も認識をしておるところでございます。
  何よりも、外に対して、国際社会あるいはグローバルな社会、変化の社会において必要なこと、日本人として何としても、伝統や文化に立脚した、そういった広い視野を持てということは何よりのことであり、私自身、日常の指導の中でも、グローバルというのは、外国のそういったことを知ることはもちろんのことだが、日本人をどうやって日本人として外に伝えるか、表現するか、そういった姿勢がなければ、もともとの日本の教育というものの原点が失われてしまうと。確かに知識や技能、それらがなければ、思考や表現、判断力、そういうものには結び付いてはいきません。興味、関心だけで、知識や技能や、そういった思考、判断が身に付くというものではなく、これらの三者のバランスをよくということはまさしくそのとおりだろうと私自身も考えております。
  中でも、その中で2点ほど、いわゆるカリキュラム・マネジメント。ともすれば、学校の先生のやる仕事、生徒が学ぶべきことではなくて、先生のお仕事という、そういう観点で見られてきたものがカリキュラムという認識がございます。いわゆる当事者を増やしていくことで、要するに、教員が新しい学習指導要領が導入されますよ、じゃ、一体、次は何をすればいいんだろうということ、自分たちの仕事が増えたということではなくて、これからの子供たちをどんなふうに育てていくか、みんなでアイデアを出し合いながら現場の授業に努めていくべきではないか。つまり、保護者や地域や生徒や教員が、私たちの立場から言うと、学習指導要領カリキュラム、特にカリキュラムというのは、何といっても、生徒、子供たちのためのものでなければならないという大前提、自分たち、先生方の教えやすさとか要領のよさを追求するためのものではなく、どうやったならば、それこそ学びの地図になり、なおかつ2030年の、大人になっているであろう今の子供たちをそういった状況に導くことができるかという点にあろうかとは思います。
  したがいまして、私自身もその二つの四角のところに書かせていただきました。単なる周囲の人間が学校の指導に対する、カリキュラム等に対する、こうではならん、ああいうふうにはしちゃいかん、こういうふうにあってほしいという意見を申し述べるレベルでは、それは確かに聞く耳を持つものではありますが、やはり当事者性を持つ、自分たちがこうするために、こんなふうなカリキュラムというふうな、物を申すのであれば、いわゆる「チーム学校」の一員として、しっかりと子供を育てていくカリキュラム、どんなものがよろしいかという、そういったことをきちんと聞けるような、そういう体制ができていくことが望ましいのではないかと考えております。
  ともすれば、地域や保護者の学校のカリキュラムに対する要望、高等学校に関して言えば、何人大学に入れられますかとか、どういう進路に結び付けることができるんですか、本当にこれで勉強ができるようになるんですかというような目先の短絡的なそういう要望にとどまってしまいがちな傾向ではあるわけですが、特にそういったものではなく、将来に向けて生きていく大人たちを育てていく学校のカリキュラムというのは、多くの人々の知恵、あるいは、いろいろな教育を基にして、「チーム学校」として取り組んでいく。そうした意味でのカリキュラム・マネジメントというのは今後大いに展開をされるべき、私どもも一校長として是非推進していかなければならない、そんなものであると深く認識をしておるところでございます。
  次に、アクティブ・ラーニングについてでございます。実は、子供たちにいろいろな物事を伝えるというのが教員の仕事でございます。ところが、伝えるという場合に、どうしても言葉、あるいは文章、そういったもので伝えなければならんという、そういう視点、もちろんこれはこのとおりなわけでございますけれども、一番のポイントは、伝えるのは、分かっていることを伝えるということではなくて、お互いがお互いに違う人であればあるこそ、人が違う、立場が違う、日本人、外国人、当然立場が違う。初めから違うという認識に立って、どのような点で歩み寄れるのか、どういったことを学べばいいのか、そういったことをじかに対話を通じながら、違った方向性に出たとしても、どう組み合わせれば次の方向性を得ることができるか、そういった意味でのアクティブな思考を深めていく。要するに、単なる勝敗を決するためのディベートゲームに終わらず、ブレーンストーミングや、あるいはディスカッション、議論を本当の意味で行えるという、そういった授業の展開が確かに私たちの大きな反省点でもあると同時に、今後大いに求められるべきものと考えておるところでございますし、併せて、言葉以外にも伝えられるものはたくさんございます。
  例えば、芸術の世界、音楽にしても美術にしても、確かにそれは作品というものではありますが、物は語ってはくれませんけれども、それを見せること、あるいは鑑賞することによって、作者の意図やら、あるいは表現するものを身に取って感ずることはできるわけで、特に音楽の世界等においては、鑑賞のみならずアナリーゼ、歴史的な背景でもって、この音楽がどうやってできたのか、あるいは、どういうモチーフでもって、この絵画が描かれたのか、そういったようなことは言うまでもなく、考察力、分析力、そういったものに結び付いていく。ですので、私ども全国高文連の言葉をかりて言うならば、やはりアクティブ・ラーニングも積極的に進めていく上で、芸術系あるいは芸術、芸能その他、こういった要素は決して失っていってはまずいのではないかと考えておるところでございます。
  併せまして、以下、小学校から高等学校までのところ、今回の変化に対応すべき、そういった文科省様の御指摘等について、若干の意見というよりも感想を述べさせていただいたところでございます。やはり変わっていくものに対して、いや、こちらの現場がしっかりとそれを受け止め、何がやれるかということを第一に考えていかなければならないもの。ともすれば、田舎の高等学校では、いろんな地域の人材を活用しながら、あるいはいろいろな御意見を伺いながら、実際に人がいないとか、あるいは小学校で英語なんかやってどうするんだとかという、そういった、やりもしないで、いろいろな指摘をする、そういう傾向がないわけではございません。しかし、学習指導要領というのは全国のスタンダードでございます。全国の教員が、この考え方に導けるような生徒の育成というものを第一に考えていく、そういう取組の姿勢。
  したがいまして、あえてお願いをするということであるならば、天下津々浦々、このような形での結果に導かれることは望ましいところではありますが、やはり地域や生徒の実態やら学校の実態、それに応じた取組も段階的に、ある程度の許容、寛容の精神で見ていただければと考えておるところでございます。
  本当の意味で人間に課すことのできる最大の難問は、まさしく学校教育であると。かつてのカントはそのように申し述べたところではございますが、私どもの実践が一つでも多く、新しい学習指導要領、カリキュラム養成にお役に立てればということで、気持ちを改めまして、また日々、日常の実践活動に取り組んでまいりたいと考えておるところでございます。大変ありがとうございました。
【無藤主査】    ありがとうございました。
  それでは、引き続き、公益社団法人全国公立文化施設協会様からの御発表をお願いいたします。
【公益社団法人全国公立文化施設協会】    公益社団法人全国公立文化施設協会の松本と申します。本日は意見表明の機会を頂き、ありがとうございます。
  私どもは、全国に約2,200ある国公立の劇場、音楽堂等の文化施設を会員とし、地域の文化振興と地域活性化、ひいては我が国の文化・芸術の発展に寄与することを目的に設置されました公益社団法人でございます。
  今回の指導要領改訂に当たりまして、文化・芸術をより積極的に教育の現場に取り入れていただきたいという視点からの意見を述べさせていただきます。組織内で意見調整するいとまがございませんでしたので、多分に私個人の見解を含みますが、御了承いただきたいと思います。
  まとめ全体に対する感想でございますが、変化著しい社会の中で未来を創り出していくために、子供たちに必要な資質・能力を確実に育む学校教育を目指し、自立的に生きるために必要な生きる力の理念を具体化するという方針の下に、全般にわたって緻密かつ網羅的にまとめられており、評価できると存じます。
  ただ、文化・芸術に関する立場から申し上げますと、文化・芸術の力を積極的に教育に生かしていこうとする姿勢が十分に感じられない、正直申し上げまして、そのように思っております。現在でも、鑑賞教室やアウトリーチという形で、文化・芸術に触れるための取組はされておりますが、まだまだ十分ではないと思っております。全ての子供たちが、学校や地域でもっと良質な文化・芸術を豊かに体験できる多様なプログラムを整えていく必要があると考えております。
  では、文化・芸術にどんな力があるのでしょうか。資料にございますように、2001年に制定された文化芸術基本法の前文で、文化・芸術の意義が示されております。「文化芸術を創造し、享受し、文化的な環境の中で生きる喜びを見出すことは、人々の変わらない願いである。また、文化芸術は、人々の創造性をはぐくみ、その表現力を高めるとともに、人々の心のつながりや相互に理解し尊重し合う土壌を提供し、多様性を受け入れることができる心豊かな社会を形成するもの」「世界の平和に寄与するもの」「更に、文化芸術は、それ自体が固有の意義と価値を有する」「国民共通のよりどころとして重要な意味を持ち」「自己認識の基点となり、文化的な伝統を尊重する心を育てるもの」とございます。
  外国では、教育をはじめ、福祉、医療などと連携したプログラムを実施して成果を上げております。例えば、高齢者や障害者を対象としたプログラムをはじめ、青少年のひきこもり対策や認知症患者へのアプローチ、中には刑務所から出所して間もない人を対象とした社会復帰プログラムなどが成果を上げております。
  文化・芸術を取り入れた教育プログラムでは、その効果として次のような点が挙げられます。演劇や音楽、舞踊などを鑑賞し、参加し、自ら創造に参加することによって、生きる喜び、生きる意欲、自信の回復、自己肯定感の醸成、創る方の創造力、思う方の想像力、批評的思考の向上、協働作業、グループワークを通じた社会性、責任感の体得、表現力、コミュニケーション能力の向上、そして、基礎学力の向上。一つの教科にとどまらない、他の教科との複合的あるいは総合的な学習の可能性などがございます。
  新しい学習指導要領等の策定に当たっての理念として、社会に開かれた教育課程と生きる力を育むことが掲げられていますが、文化・芸術プログラムはそのための重要なツールとなり得るものだと思っております。特に子供が主体的に取り組むアクティブ・ラーニングの具体的な方法として、芸術ワークショップや対話型鑑賞プログラムなどは、自らの感想や考えを論理的に述べる機会が得られるとともに、他者への理解を促し、多様性、寛容性を深め、コミュニケーション能力を向上させることができ、ひいては、生きる力の涵養につながるものと存じます。
  次期改訂に向けて多くは盛り込めないかもしれませんが、私どもからの具体的な提案として、三つ掲げさせていただいております。一つは、基本的な方針の中に、文化・芸術の本質的な意義と本物の文化・芸術に触れる体験が子供の教育と成長にとって重要な要素であることに配慮いただきたいということ。二つ目は、関係する教科や総合的な学習の時間において、文化・芸術による教育プログラムを進めるために、劇場、音楽堂等や美術館、博物館などの文化施設、文化芸術団体等と学校が連携協力した取組を推進するように配慮していただきたい。三つ目は、地域での文化資源や環境、学校の創意工夫によっては取組に差異が生じる可能性がありますので、文化・芸術による教育プログラムの実施に当たっては、時間数や実施方式、各教科間の連携などについて、一律ではなく柔軟な調整ができるように配慮していただきたい。
  以上、3点でございます。
  実際、こうした取組を進めていくためには多くの課題があることも事実でございます。今後の課題として、一つには、公立の劇場、音楽堂等は全国に約2,200施設がございますが、事業や活動内容が多様であり、取組体制も十分整っていない状況があります。しかし、数年前に制定された劇場、音楽堂等の活性化に関する法律及びそれに基づく指針では、文化・芸術の普及啓発や地域社会のきずなの維持及び強化、共生社会の実現に資するための取組を行うこととされており、今後、地域貢献活動の一環として学校教育との連携を積極的に推進していく必要があり、私どもも積極的に後押ししていきたいと考えています。
  二つ目は、文化・芸術による教育プログラムを具体的に進めるための人材の育成と確保が十分でない状況があります。文化・芸術の各分野、演劇、音楽、舞踊、ダンス、伝統芸能などにおきまして、文化・芸術の専門知識と実践力、指導力を備えた専門人材として、外国で定着しているティーチング・アーティストやコミュニティ・アーツ・ワーカー、地域アート・コーディネーターなどの専門人材の育成と活用の仕組みを整えていくことが必要です。
  三つ目は、それらを継続的に長期的に実施するための財源確保です。文化・芸術による教育プログラムを持続可能な形で進めていくためには、必要な財源を国及び自治体はもとより、学校と文化施設、芸術団体等が連携協力して確保していくことが必要です。
  4番目に、各教育機関や学校側の意識の問題があります。教育行政職員や教職員等が学校の中で完結するのではなく、広く地域や他の機関、団体と連携協力して、質の高い文化・芸術に触れさせていこうとする意欲と姿勢を持っていただくことが重要だと思います。
  最後になりますが、今、子供を取り巻く地域社会や家庭環境が大きく変化する中で、子供の多様で良質な文化体験の機会に格差が生じております。是非教育の現場で、心の成長のインフラとも言える文化・芸術の豊かな体験ができる環境を整えていかなければなりません。2020年の東京オリンピック・パラリンピックと連携して、文化プログラムを展開されようとするこの時期に、将来に向けたレガシーとして、是非文化・芸術による教育プログラムの積極的な展開を願うものです。これは、日本の未来への意義ある投資と言えるのではないでしょうか。学校現場にもっと文化・芸術の力を活用していただきたい。そのために、学校と文化施設や文化・芸術団体が密接に連携していけるよう、私どもも努力していきたいと思います。
  私からの意見表明は以上でございます。ありがとうございました。
【無藤主査】    ありがとうございました。
  それでは、引き続きまして、公益財団法人日本宗教連盟様からの御発表をお願いいたします。
【公益財団法人日本宗教連盟】    私、公益財団法人日本宗教連盟の理事長、植松と申します。このような機会を頂きましたこと、感謝申し上げます。
  次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめに対する、私たち宗教者の意見を述べさせていただきます。読み上げさせていただきます。
  「公益財団法人日本宗教連盟は、昭和21年に創立した日本における諸宗教団体の連合組織です。教派神道連合会、全日本仏教会、日本キリスト教連合会、神社本庁、新日本宗教団体連合会の五つの団体で構成され、日本における宗教法人数の90パーセント以上が参画しております。当連盟は、平成15年1月に行われた教育基本法改正に伴う中央教育審議会基本問題部会等において意見陳述を行い、『宗教知識教育』や『宗教文化教育』についての公正な学びの必要性を要望してまいりました」。
  「総論」ですけれども、「このたびの学習指導要領等の改訂にあたり、『伝統や文化に立脚した広い視野を持ち、志高く未来を創り出していくために必要な資質・能力』を育む教育を目指すのであれば、伝統・文化の根底にある我が国の宗教に関しての公正公平な『宗教知識教育』と『宗教文化教育』の推進は避けて通ることはできないと考えます。教育基本法第2条第5項には、『伝統と文化を尊重し』と明確に定められており、この基本法の目標を達成するためにも欠くことのできない要件です。
  グローバル化が進行するなか、国際交流の場においては、対話の促進と相互の信頼醸成のために、さまざまな民族や宗教、歴史的・文化的背景を持った人々と接触し、宗教文化や信念を背景として生きる人々を理解することが必須の条件となります。そのためにも、世界の主要な宗教に関する知識理解は欠かせません。
  子どもたちが、豊かな情操や倫理観を持ち、物事を多面的・多角的に吟味し見定めていく力を身につけ、多様な価値観をもった他者に対して寛容的な態度をとり、互いに思いやりながら協働し、『自立的に生きるために必要な生きる力』と人間性を育むためにも、公正な『宗教知識教育』並びに『宗教文化教育』が行われることが必要です。このことにより、宗教的な感性や宗教的情操が涵養される基礎が育まれるのです」。
  次に、3点ほど、重要だと思うことを述べさせていただきます。
  一つ目に「グローバル化社会で国際人として必要不可欠な一般的教養としての『宗教知識教育』を身につけるとともに、多様な価値観に寛容である態度を育てる」。総論で申しましたように、「子どもたち一人ひとりがグローバル化社会で活躍できるようになるためには、初等中等教育等における宗教に関する知識教育が公正に行われ、宗教に関する一般的な教養を身に付けることが必要不可欠であると考えます。国際的なビジネスシーンを例に見てもわかるように、宗教に関する一般的な教養は、相手の価値観や思考の傾向性を理解するために心得ておくべき事項であります。また、国際社会のなかで、『持続可能な開発のための教育』に参加していくのであれば、一人ひとりの価値観や違いを受入れ、相互に寛容である態度を育成することが重要であります。
  近年、宗教を名乗る一部の過激派組織が国際社会で無差別なテロ行為を繰り返すことによって、宗教=こわい、平和を脅かすもの、といった誤解や偏見が生まれていることを危惧しております。これらをただす意味でも、宗教に関する適正な理解を促す教育が今日ほど緊要な時はありません。子どもたちが宗教に関する適正な理解と相互寛容の態度を養うことができれば、互いの価値観を理解して多様性を尊重しながら協働する力や『生きる力』を育むことにつながっていきます。
  『宗教知識教育』は、なんらかの信仰を強要するものではありません。一人ひとりの信教の自由が尊重されることが重要であります。
  教育基本法の改正に関する中央教育審議会の平成15年3月20日付け『答申』では、『宗教に関する寛容の態度や知識、宗教の持つ意義を尊重することが重要』と明確に述べられています。今こそ、この見解が教育現場で実質化されることが求められているといえましょう」。
  二つ目に、『社会に開かれた教育課程』では、『宗教文化教育』によって身近な社会を構成する一人として、他者との関係性の中で共に生きる知恵を育てることが大事だと思います。
  「古来、宗教は、生活や伝統、文化、芸術に溶け込みながら、宗教的な感性や宗教的情操を涵養し、『いのちの尊厳』や『思いやりの心』を育み、人々の精神面を支え、社会の規範としても役割をはたして来ました。日本では、日常の挨拶で『お元気ですか?』『おかげさまで。』という受け答えがあります。『おかげさま』は、相手と自分、誰かと自分、という他者との関係性のなかに生かされていることを表す感謝の言葉です。日本にはそのような国民性や宗教性があるといえます。
  地方から都市部への人口集中が進むなか、子どもたちが身近な社会を構成する一人として地域社会のなかでどのように協働し共に生きることができるのか、具体的に経験を積むことはたいへん有効であると考えます。他者との協働を通して、関係性のなかで生かされている自分に気づき、そのなかで生きていく知恵を育むためにも、『社会に開かれた教育課程』によって体験的な学習の機会が持たれることを期待しております。学校等をとりまく身近な地域社会の伝統や文化には、寺院や神社、教会などの、行事やお祭りといった宗教と関わり深いものがあります。そのような身近な文化に触れる『宗教文化教育』が行われることで、宗教文化をとおして地域に親しみを持つ良い機会となり、子どもたちのアイデンティティを支える一助となると思われます」。
  三つ目に、学校教育における宗教の位置付けについて申し上げます。
  「教育基本法第15条第1項に、宗教教育については、『宗教に関する寛容の態度、宗教に関する一般的な教養及び宗教の社会生活における地位は、教育上尊重されなければならない。』と定めております。また、同条第2項には、『国及び地方公共団体が設置する学校は、特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない。』と明記しておりますが、同条第2項が禁止しているのは、公立学校における『特定の宗教のための宗教教育』であって、次期学習指導要領等において、宗教に関する一般的な教養を育むためには、必要かつ適切な『宗教知識教育』を実施すべく、配慮されなければならないと考えます。
  また、このほど道徳の教科化に際し、『中学校学習指導要領解説  特別の教科  道徳編』(平成27年7月・文部科学省)の60頁には、『宗教について理解を深めることが、自ら人間としての生き方について考えを深めることになるという意義を十分考慮して指導に当たることが必要である。』と明記されました。宗教や思想は、数千年にわたり、人々の生活の指針となり、心のよりどころであり続けたのであり、人類の叡智ともいえるものです。ですから、このように道徳編に明示されたことは、大いに評価しております。次期学習指導要領等の改訂において、この『解説』の趣旨が具体化されることを強く望みます。
  『審議のまとめ』によれば、教科・科目構成の見直しによって共通必履修科目に『言語文化(仮称)』、『公共(仮称)』が設定され、選択科目には人間としての在り方、生き方を学習する科目として『倫理(仮称)』等が設定されるようであります。宗教に関する一般的な知識や教養については、これらの科目で学習するだけでなく、国語・英語・音楽・美術・道徳などの関連教科において横断的に学ぶことが効果的であり、宗教知識や教養に関する学習が明確に位置づけられる必要があります。また、持続可能な開発のための教育の一環として、『環境教育』や『食育』などは、宗教との関係性のなかで考察することで、アクティブ・ラーニングの教材の一つとして扱うこともできます。
  以上のような横断的な学習指導ができるように、教職課程においても国内外の宗教知識について幅広く学ぶことができるカリキュラムを導入して、教員自身が『宗教に関する一般的な教養』を養うとともに、特定教科だけではなく、宗教に関する各教科の知識を相互に関連させて学習できるよう進めていくべきであると考えます」。
  「むすびに」「これまで述べてきたように、公正な『宗教知識教育』、『宗教文化教育』を行うためには、専門性があり学問的にも妥当な教材が必要で、特に教科書への適正な導入、及び、教員の十分な研修が欠かせません。これらの点については宗教界も協力を惜しみませんが、関係する学界からの指導や助言を求め、公教育における『宗教知識教育』の公正性を担保すべきものと考えます。
  憲法第20条及び第89条の宗教条項(いわゆる、政教分離の原則といわれるもの)を厳しく運用するあまり、戦後一貫して、公教育において宗教に関する教育の扱いが軽視されてきました。憲法と教育基本法(第15条第2項)が禁止するところは、特定の宗教や一宗派のための宗教教育であって、中教審『答申』がいう通り、学校でも『宗教に関する知識、宗教の持つ意義を尊重することが重要』であり、このことから逃げ続けている限り、我が国における宗教教育の本来化は望むべくもありません。
  人間は本質的に不完全な存在です。不完全であればこそ、自己の能力の過信に陥らず、常に謙虚で創造的・献身的であるためにも『超越せるもの』の存在や『人知を超えた真実』に気づくことが大切です。科学は人類に恩恵をもたらしていますが、絶対ではありません。
  昭和41年の中教審『後期中等教育の拡充整備について・第20回答申』には、『生命の根源すなわち聖なるものに対する畏敬の念が真の宗教的情操である』と明記されています。『生命の根源』や『聖なるもの』を視野に入れない『いのちの教育』は形骸化したものとなり、これでは『生かされているいのち』『自分のいのちは自分だけのものでない』という自覚を育てることは期待できません。『宗教知識教育』『宗教文化教育』は、子どもたちの宗教的な感性や宗教的情操の基礎を涵養し、『いのちの尊厳』や『思いやりの心』を育むとともに、豊かな人間性の基盤を形成して、『自立的に生きるために必要な生きる力』の根底を支えるものとなると確信いたします」。
  次期学習指導要領等の改訂に当たり、以上の諸点につきまして御留意賜り、更に御審議、御高配いただけましたらば幸いでございます。ありがとうございました。
【無藤主査】    ありがとうございました。それでは、これより意見交換の時間に入りたいと思います。4団体の御発表がございましたけれども、どの団体に対してでも結構ですので、委員の皆様、御質問、御意見があれば、ネームプレートを立てていただければと思います。よろしくお願いいたします。
  では、渡瀬委員。
【渡瀬委員】    いろいろ御意見をありがとうございました。まずは、公立文化施設協会様から御意見を頂いて、これは単に意見ですけれども、意見というか、私たちが新学習指導要領についての話し合いを始めた初めの頃に、随分と地域の博物館、美術館、音楽堂等々との関わりを重視しなくてはいけないという話が話題の中に上っておりました。上っておりましたけれども、確かに「審議のまとめ」を読んだときに、そこの部分が、あのときに出てきた意見ほど、ひょっとするとないかなということを今、きょうも御意見を伺いながら、そういうふうに感じているという感想でございます。
  それから、別のことで、日体協からの発表をいただきました中に、部活動の問題ですね。地域の部活動の運営支援、スポーツ指導者の派遣ですとかそういうことについてお話がありました。私たちも、特に中学校、高校もですけれども、の部活動の在り方というのは、教員がどこまで関わるべきで、また、「チーム学校」という考え方が取り入れられている中で、じゃ、どれぐらい地域のスポーツ指導者の方々に、この御使命を賜れるのか。例えば、何か事故が起きたときの責任問題のことですとか、いろんな問題があると思いますけれども、地域のスポーツ指導者が学校にどれぐらい、どういう形で協力していくことができそうとお考えになっているか、ちょっとお話を伺えたらと思います。
【無藤主査】    ありがとうございます。四つの団体、最後にまとめて御質問なり補足も含めて、それぞれということでよろしいでしょうか。済みません。
  では、荒瀬委員。
【荒瀬委員】    どうもありがとうございました。大変参考になる御意見をたくさん頂きました。日本体育協会様のお話は、どれもこれも、なるほど、なるほどという。恐らく学校体育が今、どちらかというと、健康であるとか楽しさであるとかといったようなことに非常に大きく、そこにかじを切ったというのは、今更ながらの話ですけれども、随分前からそのようになっているのは、こういった全体的な動きの中で、そういう価値が見出されてきたんだろうなということを思いながら承りました。
  それから、高等学校文化連盟様のお話ですけれども、地方の一高校の校長がとおっしゃいましたけれども、恐らくそんなことはなくて、それぞれの学校の先生方が、それぞれに教育課程に対してどのような意見を持たれるかということの集大成が、これからのこの国の教育を変えていくと思いますので、その意味では是非今後も、どしどし御発言をお願いしたいということを思っております。
  それから、途中でおっしゃいました、地域とか生徒とか学校の実態に応じた取組をどうか認めていただきたいというようなお話がございましたけれども、そもそも教育課程というのは各学校が編成するべきものであって、その際に、当然のことながら、生徒の実態とか地域の状況とか、あるいは学校そのもののありよう、そこからスタートしないと、それに立脚しない改革とか、あるいは学校経営とかはあり得ないと思いますので、是非その点も、それぞれの学校でお考えいただくように、高文連としても様々な形でアピールをしていただければと思う次第であります。
  それから、公立文化施設協会につきましては、先ほど渡瀬委員からもありましたように、私も自分自身が発言したことで覚えておりますのは、博物館とか美術館とか、ヨーロッパでは高校生までは基本的にただです。ところが、日本の場合は、高校生料金という形で若干安くはなっていますけれども、しかしながら、ただでないと。私が思いますのは、学校として様々な形で、こういう文化施設に行って、観劇をするとか鑑賞するとかといったようなことも大事だし、博物館に行くとか美術館に行くというのも、学校として行くというのも大切だと思うのですが、それはあくまでもきっかけ作りであって、あとは個別に、高校生なら高校生が自由に行くことができるというようなことが必要ではないかと思うのです。
  私、京都に住んでいますけれども、京都の真ん中に四条烏丸というところがありまして、地下鉄が走っているんですけれども、京都駅から四条烏丸駅までは通学の定期券を持っているから、それで電車に乗りました、地下鉄に乗りました。その後、その地下鉄から国際会館であった催しに参加するために、これ、京都の方ならすぐお分かりになるんですけど、四条烏丸から国際会館まで歩いたと高校生は言うんです。それぐらい、やっぱり高校生というのは、まあ、いろんな生徒がいるわけでしょうけれども、自由になるお金が必ずしもない。それは、若者にとってはその方が私はいいと思いますけれども、そういった生徒たちが本当に行こうと思えば行けるようにするためには、もちろん学校も努力するわけですけれども、是非文化施設協会でも、いろいろな形で自治体とかに働き掛けていただけるというのはありがたいな。
  あるいはまた、高校生のための企画ということ、高校生、中学生、小学生のための企画ということで無料開放する期間を何日かだけでも持っていただくとか、そういったことも大変ありがたいのではないかということを各界から承っておりました。
  それから、最後に日本宗教連盟からおっしゃいましたことで、公立学校においても、こちらでおっしゃるところの宗教知識教育というのはやっておりまして、むしろ特定の宗教についてしないというのは当然のことでありますけれども、しかしながら、例えば、仏教であるとかキリスト教であるとか、あるいはイスラム教であるとか、そういったような世界の代表的なことは割と高校段階ではやっていると思います。ですから、宗教イコール怖いといったような、そういう誤った考え方を持たないようにということの努力は相当しております。かつまた、最後におっしゃいました命の尊厳とか思いやりの心ということにつきましては、これは様々なアプローチがありますわけで、そういったことは、一つには宗教知識教育とか宗教文化教育とも同じように連帯するような形で、各教科の授業を通してとかいったようなことでも進めているように思っております。
  それから、3ページの一番上のところにお書きになった「他者との協働を通して、関係性のなかで生かされている自分に気づき、そのなかで生きていく知恵を育むためにも」という文言ですけれども、ここの部分は、今回の学習指導要領の改訂に向けた「審議のまとめ」でも大変重視しているキャリア教育という点からも進めていきたいということを考えておりますので、その点もまた、併せて、どうぞよろしくお願いします。
  長くなりました。
【無藤主査】    ありがとうございました。
  平川委員、何かございますか。一言でもどうぞ。
【平川委員】    ありがとうございました。感想になってしまいますけれども、失礼いたします。日本体育協会様のこちらの御発言は、私も中学校の校長をやっておりますけれども、本当に納得のいく内容かと思い、拝聴させていただきました。
  また、全国公立文化施設協会様と、あと全国高等学校文化連盟様のお話も、実は文化庁の芸術派遣でありますとか、あるいはNPO、あと各企業などから様々、ダンサーですとか音楽の演奏者、本校も取り入れてやっておりますけれども、何と申しますか、学校が取り入れようと思えば、そういうようなことをやってくださるところは非常に多いなと思っておりまして、ここにまさに書いていただいておりますティーチング・アーティストとかコミュニティ・アーツ・ワーカーとか、このあたりの方々がもっともっと経済面でも支援されてしかるべきだと私も思っておりますので、本当に賛同しながら聞いておりました。
  また、宗教につきましても、荒瀬先生が高校でもとおっしゃっていましたけれども、中学校の公立においても様々工夫をしておりまして、例えば、本校でも博報堂の博報財団様の御協力を得まして、今年もブラジル、タイ、マレーシア、スリランカ、モンゴル、オーストラリア、イギリス、トルコとかといった国の日本語を勉強する中学生が来ることによって、特定の宗教のところが怖いとかというようなことが、やはり子供もそうですし、私ども大人も、さーっと消えたような気がいたしました。このような工夫をして、様々教育課程に取り入れて、また、時数の方も、やると決めたら解消いたしますので、各学校がそういった工夫をアクティブ・ラーニングの中でやることが重要かなと思って聞かせていただきました。ありがとうございます。
【無藤主査】    ありがとうございました。
  それでは、4団体からお答えなり補足なり、余り時間なくなってまいりましたので、短くお願いしたいと思います。
  まず、日本体育協会様、お願いします。
【公益財団法人日本体育協会】    今、一部御指摘のございました、学校の現場に指導者がしっかりとリンクできないかということについて、当然、我々も今考えておりまして、実は全体で約45万人の本会公認のスポーツ指導資格者がおります。そのうち、競技別の資格者としては約13万人の指導者がいるんですが、どうも学校の部活の現場とマッチングできてないと認識しています。今までは各都道府県別にスポーツ指導者の活用促進ということで、有資格者の名簿を作成し配布していたのですが、これが個人情報保護の観点から作成できなくなったこともあり、学校現場に指導者をどう派遣していくかというところが非常に大きな課題でございます。我々としても部活動と指導者のマッチングについて、そこに穴を開けていかなければならないと考えております。また是非、御支援を頂ければと思います。
【無藤主査】    ありがとうございました。
  それでは、高等学校文化連盟様、お願いします。
【公益社団法人高等学校文化連盟】    端的に申し上げます。いろいろな意味で高等学校、あるいは中学校も含めてでございますが、学校生活の中で心豊かな安定した、そういう生活ができることが、スポーツやら、あるいは文化・芸能活動やら、いろいろなものにその目が、関心が向くというもので、特に、これからの学校教育の中にあって、これらが喫緊の対応であり、言うまでもなく、変化に対応する目を育て、それらに直面したときにどのように生き抜いていくかということを育てる、それは最も大事なことであるという認識には変わりございません。
  ただ、現場の高校の校長から言わせていただければ、是非これは御配慮いただきたいということは1点でございます。そういった形での指導をこれから展開していく上で、高校3年間で学んだことが具体的にどのように大学入試選抜を通して評価されていくのか、そのビジョンそのものについて新たに御意見その他、こちらから申し述べる機会があれば、いつでも応じるところではございますし、御指導等、今後とも賜ればということが1点でございます。今後とも、どうぞ御指導よろしくお願いいたします。
【無藤主査】    ありがとうございました。
  それでは、全国公立文化施設協会様、お願いいたします。
【公益社団法人全国公立文化施設協会】    今回の資料を読ませていただきまして、その中に「文化・芸術」という言葉がどのくらいあるだろう、「劇場、音楽堂」という言葉、「美術館、博物館」。残念ながら、「劇場、音楽堂」もないし、「美術館、博物館」も、私が見る限りなかった。やはり文化施設と文化の力というもの、文化の力は人間力につながるものでございますので、やはり文化に関わるようなところを是非御配慮いただきたい。
  それから、先ほど、文化・芸術はきっかけ作り、教育プログラム的なもののきっかけ作りが大事だとおっしゃいましたが、そのきっかけというのが、地域によって非常にばらつきがあるわけですね。格差がございます。そのきっかけを、ある程度学習指導要領の中に盛り込むことによって、少しでもそれを標準化していくということ、そういう取組は必要なんではないかなと思います。
  それから、もう一つ、やはり人材をいかに確保し、育てていくのか。芸術系の大学というのは結構あるんですが、そこを卒業してもなかなか食べていけない芸術家がいっぱいおります。ほんの数パーセントしか、職業として生計を立てていけないという状況があります。やはりそういう芸術系の中に、こういうティーチング・アーティストとかコミュニティ・アーツ・ワーカーのような、そういう人材を育てるカリキュラムを是非考えられないだろうかと私どもも思っているところです。いずれにしましても、教育の現場と我々文化施設、文化団体、これが連携して、一緒にこれからの日本の礎となる子供たちの成長に資する取組をしていきたいと思っております。
  以上でございます。
【無藤主査】    ありがとうございました。
  それでは、日本宗教連盟様、お願いします。
【公益財団法人日本宗教連盟】    委員の先生方の御感想、本当にありがとうございました。何か、とても勇気付けられる思いがいたしました。やはり私は今、本当に感じておりますのは、いじめの問題ですとか自死する子供たちですとか、そういう子供たちを何とか一人でもなくしていきたいという中で、宗教的な情操、宗教的な生き方、何かその子供たちの中にもっともっと広がっていかないか、そのことを今、私は一番大事に考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
【無藤主査】    ありがとうございました。
  それでは、前半のセッション、ここで終了とさせていただきます。御発表いただきました団体の皆様、誠にありがとうございました。頂いた御意見につきましては、事務局にて整理の上、答申に向けた議論に反映させていただきます。ありがとうございました。
【石田教育課程企画室専門官】    どうもありがとうございました。後半は14時10分から開始をいたします。委員の皆様は、少し御休憩をいただければと思います。
  また、御発表いただきました団体の皆様、本日はこれで終了となります。ありがとうございました。
(  休憩  )
【無藤主査】    それでは、4団体の皆様、おそろいですので、後半を始めたいと存じます。各団体の皆様、お忙しい中、御足労いただきまして、誠にありがとうございました。この時間帯にお見えになっている団体でありますけれども、全国都道府県教育長協議会様、日本教職員組合様、全国教育管理職員団体協議会様、一般社団法人全国高等学校PTA連合会様の4団体でございます。
  それでは、各団体からの御発表を開始したいと思います。意見交換は、4団体の発表が全て終了してから行いたいと存じます。各団体10分ということでお願いいたします。
  まず、全国都道府県教育長協議会様からお願いいたします。よろしくお願いします。
【全国都道府県教育長協議会】    埼玉県教育委員会教育長の関根でございます。全国都道府県教育長協議会を代表いたしまして、次期学習指導要領等に向けた、これまでの「審議のまとめ」につきまして意見発表させていただきます。
  まず、学習指導要領等改訂の基本的な考え方について、必要な資質・能力を子供たち一人一人に確実に育むという考え方や、「社会に開かれた教育課程」を実現するという考え方について賛同いたします。「生きる力」の理念を具現化し、教育課程がその育成にどのようにつながるかを分かりやすく示すことや、「何を学ぶ」かということの見直しにとどまらず、「どのように学ぶか」、「何ができるようになるか」という視点を加えることなども重要と考えております。
  次に、学習指導要領等の改訂の基本的な方向性について意見を申し上げます。
各学校において充実した取組ができるよう、「カリキュラム・マネジメント」による学校教育の展開に係る具体的な事例及びそれらの考え方、方針をお示しいただきたいと思っております。高等学校の新たな共通履修科目、「公共(仮称)」の学習の題材として「政治参加」等が取り上げられておりますが、これらには客観的かつ公正な資料に基づいた指導が必要でありますことから、補助教材や授業における留意点等を含む授業実践事例をお示しいただきたいと思っております。
  防災等に関する安全教育が計画的、継続的に進められるよう、各教科等における防災等に関連する教育内容を明らかにする等、教育課程への位置付けにつきまして具体的に示すとともに、教育効果が見込まれる指導計画や指導方法についても御提示をいただきたいと思います。
  教育課程の構造や新しい時代に求められる資質・能力の在り方、とりわけ「アクティブ・ラーニング」の考え方等について、全ての教員が理解を深めることができるよう、学習指導要領の総則を改善し、必要な事項を分かりやすく整理していただきたいと思います。
  また、「主体的・対話的で深い学び」を実現するために必要な授業改善の視点を教科等を超えて共有できるように、各教科等の特質に応じて、考え方を整理した指導事例集や映像資料を作成していただきたいと思います。
  キャリア教育における学校段階の効果的な接続や特別活動を軸としたキャリア教育の在り方、高等学校における新設科目とキャリア教育とのつながり等について、こちらについても具体的な事例をお示しいただきたいと思います。
  通常の学級に多く在籍している特別な配慮が必要な児童生徒に対して、「個別の教育支援計画」や「個別の指導計画」を作成し、適切な指導・支援を行うとともに、次学年や進学先学校等に確実に情報を引き継ぎ、継続的な支援を行っていくことの重要性を学習指導要領の中で明記していただきたいと思います。
  また、高等学校における通級による指導の制度化に当たり、単位認定・学習評価の在り方等についての考え方及び方針を示すとともに、高等学校における通級による指導の普及、充実を図っていただきたいと思います。
  学習評価については多様な評価方法が例示されておりますが、その考え方を整理した指導事例集等を作成していただきたいと思います。また、学習評価の在り方や指導要録の改善、高大接続の際の評価に反映する仕組みなど、学習効果を適切に評価するための仕組みを明確に示すとともに、学校現場での十分な周知期間を設けていただきたいと思います。
  次に、各学校段階、各教科等における改訂の具体的な方向性について意見を申し上げます。
  小学校における外国語教育の拡充に当たりましては、効果的な指導ができる教員を確保しつつ、現職小学校教員もその専門性を向上させていくことができるような制度設計を検討していただきたいと思います。また、授業時間数の確保が困難な状況にありますので、地域や学校の実情に応じて選択可能となるよう、時間割編成等の具体的事例や配慮事項を豊富に示していただきたいと思います。さらに、教科化に対応した新たな教材を計画的に整備してください。英語科の評価をどのようにしていくのか、学校が不安を抱えている現状であるため、評価方法の見直し等を検討し、公表していただきたいと思います。
  プログラミング教育については、学校がプログラミング教育を適切に推進していくために、できるだけ早い段階で「プログラミング的思考」の内容や小学校教員が活用しやすい各教科等の教材をお示しください。
  中学校における部活動の実施体制については、教員の負担軽減の観点も考慮して、部活動指導員(仮称)の配置促進や活用に際しての留意事項等、明確でかつ実効性の伴う国としての方針及び方策を示していただきたいと思います。
  一方で、部活動を実施する規模や指導体制を維持するため、複数校を含む一定規模の地域単位の運営を支える体制の構築に対して支援を行うことが必要でありまして、これらを実現するために、更に日本中学校体育連盟の規程等の見直しを強く求めてください。また、指導者教育を行う研修の在り方や休養日、活動時間の適切な設定についての考え方をお示しいただきたいと思います。
  なお、部活動の在り方につきましては、他の学校種においても課題となっていることに留意をお願いいたします。
  特別支援教育コーディネーターは、その重要性を踏まえ、各学校で計画的に育成、配置されていくことが必要であり、そのための支援を検討してください。また、高等学校への配置がほとんど進んでいない現状があるため、高等学校において特別支援教育支援員の配置拡充が進むための取組を検討してください。
  「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の導入が検討されておりますが、できるだけ早い段階で試験方法や試験問題例等、検討内容を具体的に示すとともに、十分な周知期間を設けていただきたいと思います。
  最後に、学習指導要領等の理念を実現するための具体的な方策について意見を申し上げます。
次期学習指導要領等の理念を実現するためには、国が教育予算総額の拡大を含めた充実した財政措置と教職員定数の改善を行い、児童生徒の実態や地域の実情に応じた柔軟な学級編制を可能にするとともに、専門性の高い教員の確保と教員に対する専門性向上のための支援を充実させることが前提となります。
  学校を取り巻く新たな課題に対応していくために、「チームとしての学校」の実現が重要となる中、より資質・能力の高いスクールカウンセラーの十分な確保と学校への配置のため、スクールカウンセラー養成システムの充実について検討してください。
  さらに、現在、子供たちが抱える問題の中には、学校だけでは解決しがたく、各種機関からの支援が必要なものも多いことから、スクールソーシャルワーカーの拡充についても十分検討をいただきたいと思います。
  学習効果や「情報活用能力」を高めるために、ICT環境の整備のための財政措置を強く求めます。また、ICT機器を活用した授業を推進、充実するために、全国のICT機器を活用した先進的取組の共有を図るとともに、各教科における具体的かつ効果的な授業方法について具体的にお示しください。
  以上、多岐にわたりましたが、意見発表を終わります。ありがとうございました。
【無藤主査】    ありがとうございました。
  それでは、引き続きまして、日本教職員組合様からの御発表をお願いいたします。
【日本教職員組合】    日教組で書記次長をしております瀧本です。本日、発言の機会を与えていただきまして本当にありがとうございます。時間が限られていますので、早速本題に入っていきたいと思います。
  まず、資料の説明に入る前に、学校の1日の流れというのを改めて説明させていただきたいと考えています。日本の一般的な小学校では、子供たちは大体8時過ぎには登校を始めています。8時15分ぐらいから10分程度の読書の時間若しくは算数や国語のドリルの時間、又は朝の運動の時間が始まります。その後、担任とともに朝学活を行い、1校時目が始まります。時数確保や放課後の時間の確保のために、従来授業の間にあった10分程度の休み時間がなくなり、2校時と3校時の間に15分から20分程度の中休みが設けられている学校が多くなっていると思っております。
  その後、3校時、4校時と学習をし、12時過ぎてから給食の時間になります。給食の時間は、配膳と片付けの時間も含めて大体30分程度ではないでしょうか。給食を食べた後に昼休みがあります。そして、午後の授業は大体1時前後から始まる学校が多いと聞いています。年間授業時数の確保が絶対という状況で、学校現場では突然の臨時休校などにも備えることから、日常から多めに授業を行っているという状況になっています。そのため、小学校の中学年でも6校時までの授業を行うことが多くなっていますし、その後、清掃を行います。地域によっては、6校時の終了時刻が15時半を過ぎる学校も多いです。放課後には、班活動や児童会活動、翌日の授業での発表のための調べ物学習とか、そういったことをした後に子供たちは下校することになっています。
  中学校では御承知のとおり、1単位時間が小学校の45分とは違って50分となっていますので、授業の終了時間も当然小学校よりも遅くなります。また、それに生徒会活動、部活動などで連日、夕方の6時を過ぎてからの帰宅になろうかと思っています。子供たちは、まさに朝登校してから下校するまで、本当に余裕のない時間を過ごしているのではないかと思っています。
  さらに、教職員は子供が学校にいる間は当然子供の対応を最優先にしますから、授業の準備や教材研究、そして学級事務等を行う暇はありません。昨年3月に文科省が発表した平成25年度学校教員統計調査によると、週当たりの教科等担任授業時数は、授業担任のみで小学校で23.8時間、中学校で17.5時間となっています。ただ、この集計には、1時間とか2時間しか授業を持たない教頭や主任なども含まれていますから、実態としてはもう少し持ち時間は多いと考えています。
  聞くところによると、小学校では、例えば、低学年で教科担任を持っていないというのであれば、担任が26時間を持っているとか、高学年でも26時間の授業を持つというようなことも聞いていますし、中学校では生徒指導等の課題での授業への応援や校内巡視といったものは全く含まれてないということです。是非、次期学習指導要領の改訂に当たっては、このような学校の現場の実態を考慮したものとなるよう、強くお願いしたいと考えています。
  それでは、お手元の資料のポイントを説明させていただきます。
  まず一つ目ですが、今、学校現場の実態については説明させていただきました。文科省は、学習指導要領の改訂に当たっては、ゆとりか詰め込みかという二項対立的な議論には戻らない。知識量を削減せず、学習課程の質的改善を行うという方針を示していますが、これでは子供や教職員の負担は増すばかりであると考えています。単に知識量を削減すればよいと言っているつもりではありません。ただ、何らかの精選を図る、そして、時間を生み出し授業や日課に余裕を持たせるということがなければ、やはり学校は立ち行かなくなるのではないでしょうか。教育内容の精選を行わないまま、外国語の教科化やプログラミング教育、高校における教科・科目の再編成等、新たな教科内容を加えることは、学校現場の実態を踏まえないものではないかと考えています。新たな内容を付加するのであれば、教育内容を精選すべきと考えています。
  次に、外国語活動や外国語の教科化についてです。先ほども説明したとおり、既に朝の時間や休み時間などは、多くの学校で読書や計算、漢字の反復学習等に活用されています。さらに、夏季休業期間等の短縮による時数確保や土曜授業を活用しての外国語の実施は、日常の学習活動との関連性を、どちらかというと無視したものではないかと思っております。また、指導者に関わってですが、中学校教員を小学校で指導させるとか、特別免許状によって英語の指導できる教員を確保するとかいうことも検討されていると聞いておりますが、果たして全国で同様の対応ができるのかと危惧しています。
  特に地方では、既に小学校が1校、中学校が1校となっている自治体もあります。規模にもよりますが、中学校の英語教員が担任を持っていた場合など、実際に小学校に行って指導する時間を確保できるのかということを疑問に思っております。さらに、地方では都会と違い、特別免許状による英語教員を本当に必要な人数を確保できるのかということも十分に検証していただきたいと考えています。結果として、十分な研修すらできないまま学級担任が英語を指導せざるを得ないということになってはいけないと考えています。
  以上のことからも、小学校中高学年への外国語活動と外国語の教科化については、是非とも再考を求めたいと思っています。
  次に、特別の教科、道徳についてです。今現在も、従来から各学校では地域教材を使ったり、独自の教材を作成して授業を進めてきました。是非とも、これらの従来から使われている教材や資料を積極的に使うよう明記をしていただければと思います。また、評価についてですが、相対評価ということは当然あり得ないと考えていますが、個人内評価ということであっても、客観的評価が難しいという課題もあります。是非とも、今後も十分な検討をしていただきたいと思います。
  また、高校の道徳に関わってですが、高校生の発達段階を考慮すると、社会一般の中で自然に道徳心が養われていくべきと考えております。是非とも、そういう観点での見直しをお願いしたいと思っています。
  次に、高校における大規模な教科・科目構成の見直しについてですが、「審議のまとめ」で示された教科・科目の見直しは余りにも大規模なものだと思います。現場の混乱を避けるためにも、現行の科目で対応できるものについてはそのままにしていただけないかと考えています。
  次に、部活動についてです。部活動は、各種調査からも、子供と教職員の大きな負担となっていることは明らかで、社会問題化していると思っています。「審議のまとめ」で教科との関連性が触れられていますが、いたずらに関連性を明記していくというものではなくて、部活動は学校だけで担うのではなく、地域や関係団体等と連携して行うものであることを明確にしていただきたいと考えています。
  次に、主体的・対話的で深い学び、いわゆるアクティブ・ラーニングについてですが、アクティブ・ラーニングはあくまでも学習方法の一つだと押さえています。また、「審議のまとめ」では、アクティブ・ラーニングの視点の必要性を強調されていますが、是非とも、子供、地域の実態に応じて、今まで従来から行われてきた教育実践を損なわないような配慮をお願いしたいと思っていますし、また、学習指導要領は大綱的基準ということですので、指導方法や評価方法まで詳しく記載しないよう求めたいと思っております。
  もう大分時間も過ぎていますので、最後に、教育条件整備について意見を述べさせていただきたいと思っています。冒頭でも、学校の1日の日課を説明しながら、多忙な学校の実態を述べました。また、ちょうど3日前、28日に開催された第38回教育再生実行会議の中でも、安倍総理から、「学校教育においても、教師の長時間労働の問題が顕在化しています」という発言もありました。中教審で、この後どんなに審議を重ねて、新しい学習指導要領の改訂をしたとしても、いわゆる条件整備が伴わなければ形だけで終わってしまうのではないかと考えています。条件整備とは、法改正による教職員定数を改善することはもとより、今進めている「チーム学校」による専門職員の配置も必要だと思っています。
  しかし、単に人を配置しただけでは不十分ではないでしょうか。授業準備と学級経営などの業務を勤務時間内で遂行するため、教員の持ち授業時間の削減も必要です。また、必ずしも教員のニーズに合っていない研修会、研究会活動、学校外主催の行事、また、各種報告物の提出なども多忙化の原因になっています。それらにも是非メスを入れていただきたいと思っています。これらの条件整備が指導要領の改訂までに早急に進められるべきだと考えておりますし、中教審としてよりよい改訂を目指すのであれば、答申する際には、条件整備をこれまで以上に強調していただきたいと考えています。
  以上、若干オーバーしましたけれども、「審議のまとめ」に対しての日教組の考えを述べさせていただきました。どうもありがとうございました。
【無藤主査】    ありがとうございました。
  それでは、引き続き、全国教育管理職員団体協議会様からの御発表をお願いいたします。
【全国教育管理職員団体協議会】    我々は、現役の校長、教頭、副校長で組織をしている職員団体であります。
  まず、文科省が長年にわたり、我々、全国教育管理職員団体協議会と深い連携を結んでいただいていること、このような場を頂いたことに感謝申し上げます。ありがとうございました。
  次期学習指導要領については、教育課程課長、合田様をはじめとして、複数年、密接なやりとりをさせていただいておりますので、意見書に幾つかの項目を示させていただきましたが、我々は文科省の示された方向性を全面的に支持、支援いたします。
  外国語教育拡充に伴う時数増については、その対応に不安を抱く声が全国から聞こえており、意見2(1)にあるとおり、我々も大きな課題と考えておりました。しかし、文科省が、小学校におけるカリキュラム・マネジメントの在り方に関する検討会議を前倒しで立ち上げられ、全国の実情に合わせた解決策を検討、協議いただいていることが分かりました。文科省の先見性、特段の配慮、姿勢に敬意と感謝を表します。時数増の不安が全国津々浦々で払拭され、有効な取組になりますよう、今後も連携を深められたらと考えております。よろしくお願いいたします。
  さて、次期学習指導要領のキーワードは、社会に開かれた教育課程、アクティブ・ラーニングの視点、「チーム学校」です。その実現のためには、財源の確保が必須です。数年の財務省との予算攻防の厳しい状況を鑑みますと、教育予算の必要性を国民が理解し、世論が動く以外に道はないと確信をしております。秋の臨時国会において審議される、チーム学校運営の推進等に関する法律は、大きな追い風になると、成立への期待をしております。我々の活動方針の核は、学校教育の正常化、教育諸条件の整備、処遇の改善です。各団体の皆様も、それぞれの活動方針や理念、立場、御意見がおありのことと十分承知をしております。しかし、今こそ、我々教育関係団体が、職能団体、職員団体、研究団体、PTA団体の枠を超えて、チーム教育関係団体として結束する潮目に来ているのではないでしょうか。
  それは、このところへの教育への関心の高さです。国営放送、都版のコーナーでは、東京都の副校長の多忙等が大きく取り上げられ、政治経済を論じ、大衆に人気の司会者による民放番組においては、芸能人、知識人をゲストとして、日本の先生の多忙についてが興味深く語られました。某有名雑誌でも同様の記事が特集され、反響を呼んでいます。視聴率が取れる、雑誌が売れるということは、教育は票、金にならないという一般常識が覆りつつある兆しでもあると言えるからです。チーム学校運営の推進等に関する法案もメディアを大いににぎわせてほしいと切に願います。我々の結束が世論を動かし、政治を動かす施策、教育目的税等、教育財源の確保に結び付き、次期学習指導要領に魂が吹き込まれるよう、チーム教育関係団体として、ともに手を携え、文科省への支援をしていくことを呼び掛け、全国教育管理職員団体協議会からの意見表明を終了いたします。ありがとうございました。
【無藤主査】    ありがとうございました。
  それでは、引き続きまして、一般社団法人全国高等学校PTA連合会様からの御発表をお願いいたします。
【一般社団法人全国高等学校PTA連合会】    ありがとうございます。略称で、全国高P連の会長を仰せつかっております佐野と申します。私どもPTAは、学校と家庭と地域を結ぶ存在であると標榜して長年活動してまいりましたが、昨今の教育を取り巻く動き、そして、この次期学習指導要領の実施に当たって、学校の教育力だけではなく、家庭の教育力、そして地域の教育力の総力を挙げなければ目指すところは実現をされないものだろうと考えておりまして、一層責任の重さを痛感しているところでございます。
  意見書の1の、「『主体的な学び』を修める」の「修める」が「納付」の「納」になっておりまして、「修業」の「修」でありますので、御訂正をお願いしたいと思います。これにつきましては、学校が小学校、中学校、高校、あるいは大学と分かれていても、親にとって、あるいは子供の人生にとって、1人の人間の成長というのは学校の段階によって切られるものではなくて連続をしているものでありますので、保護者、親の願いである、社会において自立的に生きるための力を子供たちが着実に身に付けていることが分かる、連続をした評価や軌跡を表わすものを是非活用すべきだと考えているところであります。
  2番目は、高校に限らず、学校の教育課程、何をどのように学ぶのかが今まで非常に閉じられておりましたので、社会に開かれた教育課程という今回の目指すところについては非常に高く評価をするものであります。
  3番目が、高大接続との連動というところでありますけれども、これまで様々な改善等が重ねられておりながら、なかなかそれがもくろみどおりにいかなかったのは、やはり大学入試の選抜方法が知識、技能の定着度合いを測ることに偏っていたことが非常に大きな障害であったろうと思います。それが今回の高大接続システム改革の提言のとおりの方向で進むのであれば、私どもとしても非常に望ましいと賛同いたします。高校での多様な学びが大学教育につながっていくような入試改革を是非実行していただきたいと考えているところであります。
  4番目、教科・科目の指導内容の見直しにつきましては、教員の皆様方の学ぶ時間も十分に確保していただきたいと考えております。平成34年度までに教科・科目の構成を変更するに当たっては、各学校が段階的に十分準備できるような体制作りをする計画的な取組をしてほしいということと、そのために必要な教職員の増員あるいはカリキュラム・マネジメント・アドバイザーの配置、地域人材の配置、施設整備等々については着実に進めていただきたいと思っております。
  それから、アクティブ・ラーニングに関しましても、いわゆる講義重視、一斉授業的な授業から、生徒参加さえすればいいということではなく、アクティブ・ラーニングが目指す主体的な学び、深い学びを実現するためにはどのような授業内容がいいかということを慎重に考えていただきたいと思っております。
  いずれにしましても、先ほど冒頭に申し上げましたけれども、これは学校だけで完結するものではなくて、ますます地域、そして家庭との連携、あるいは協力というものが必要になってこようかと思っておりますので、地域・学校協働体制という視点をどんどんと取り入れて、アメリカやイギリスのように、学校の中には教員は半分、あとの半分は地域人材なり、ほかの専門資格を持った方たちというような形が望ましいのではないかと思っております。
  最後に1点だけ。評価という点でありますけれども、学校において、あるいは、日本の社会全体において、評価というものが序列を決めて、はい、ここから上は合格、ここから下はバツということに使われるのではなくて、評価が評価を受ける人間の更なる能力向上のモチベーションにつながり、そして、指導のための課題を見つけて、指導改善に役立つという、評価というものは何のためにするのかということを全体で共有することが重要だろうと考えております。
  以上であります。
【無藤主査】    ありがとうございました。
  それでは、4団体の御発表をいただきましたので、意見交換ということで、委員の皆様からの御質問、御意見を頂戴したいと思います。どなたからでも結構ですが、お願いいたします。
【平川委員】    本日はありがとうございました。1点、全国都道府県教育長協議会様、それから、日本教職員組合様などからも頂いております部活動の件につきましてですけれども、先日のこういったヒアリングの中で、こちらにも書かれております中体連様から、全国中学校体育大会引率細則でありますとか、あと、中学校の体育大会の複数校の合同チームでありますとか、あるいは地域とのアライアンス、このあたりにつきましては、スポーツ庁様、本日いらっしゃっていませんけれども、こちらで御調整いただけるという力強いお言葉を頂きましたので、私も現場の中学校の校長としては楽しみにしておるところでございますけれども、こちらの御提案ありましたので、一言、付け加えさせていただきたいと思います。済みません。
【無藤主査】    ありがとうございます。それで、4団体の皆様、最後にまとめて質問なり補足なりしていただきますので、まずは委員から発言させていただきます。
  では、荒瀬委員、お願いします。
【荒瀬委員】    どうもありがとうございました。多くの団体から条件整備ということで、これはもちろんのことであろうかと思います。なかなか学校現場が元気が出ないとしたら、やっぱりそれはお金が教育に十分につぎ込まれないといいますか、これは本当に未来への投資でありますので、その点につきましては、私たちも文科省の皆さんに常々お願いをしていることでありますので、それぞれの団体からも、また、様々な形で、そういった条件整備につきましてお声をお上げいただきたいと思います。
  全国都道府県教育長協議会様からも、あるいはまた、ほかからもありましたけれども、高大接続システム改革ですが、これはこの場でこういうことを申し上げるのが適当かどうか分かりませんけれども、少なくとも高大接続システム改革会議の3月の最終報告と、それから、今回の学習指導要領の改訂とを、それこそ最後、全高P連からおっしゃいましたように、本当につないでいかなければならないということで動いております。それは、あくまでも、これからを生きる若い人たちにどのような力が必要なのか、ひいては私たち大人も、今の社会を生きていく上でどういう力が必要なのかということとつながっていくわけですけれども、そのことをしっかりと応援して、実際に付けていけるような、そういう取組にしていかなければならないと思いますので、一どきに全てが変わるかどうかというのは、これはなかなか難しい面がいろいろありますけれども、しかし、だからといって、ただ単に立ち尽くしているだけではだめなわけですので、少しずつでも前に進めていくべく議論がなされていると思っております。
  したがいまして、その結果がどうであったかということに対する評価はもちろん各方面から頂かなければならないと思うんですが、だからといって取組が止まるとかいうことではありませんので、今後、また長いスパンでやっていかなければならないこともありますので、その点、また各方面から御意見を頂戴できればと思っています。
  最後に、佐野会長から頂きました評価のことですけれども、これは本当に重要な視点で、5、4、3、2、1という評定を付けるということは、これはずっと続くと思うんですけれども、要は、それをすることが評価であるということにならないように、そのためには、やっぱり教員の時間確保、児童生徒と取り組める時間確保が非常に必要ではないかと思っておりますので、そういった点につきましても、私たちも議論しておりますし、この点につきましても皆様から是非どしどしと、また御意見を頂戴できればと思います。ありがとうございました。
【無藤主査】    ありがとうございます。
  渡瀬委員。
【渡瀬委員】    いろいろな貴重な御意見をありがとうございました。私も、どなたに対してということではなくて、四つの団体から伺ったことを全部併せて考えてみたときに、理想を追い求めて、こういうふうな教育をしたいとは考えますけれども、それを進めるに当たって、やっぱりどうしても時間ですとか人のこととか資金の問題ですとか、そういうことで条件整備が必要になることは間違いのないことだと思います。
  ただ、できるだけそれを文科省にも要求し、国にも要求しということではありますけれども、それでも、私も現場の教員ですけれども、そのとおりにならないということが出てきたときに、やはり今回のカリキュラム・マネジメントというのが、教育課程のいわゆるカリキュラムだけをマネジメントするのではなくて、やはり人、物、お金、全てをトータルで、そして、教育の内容と併せて、どう効率よく進めていくかということが今回言おうとしているカリキュラム・マネジメントではないかなと考えますので、各学校や地域でどういうカリキュラム・マネジメントをしていくかというのが、なお一層大事になるなということを、きょう、御意見を伺いながら感じました。ありがとうございました。
【無藤主査】    ありがとうございました。
  私も一言だけ。一言、二言ぐらい、委員として発言させていただきますけれども、どの方もおっしゃっておりますけれども、条件整備については、中教審としても、それぞれの部会の中で必ず複数の委員が発言してきたわけでございます。文部科学省としても恐らく、概算要求などを見ても、その方向で御努力はされるということを伺っておりますけれども、それが本当に実現するか、また十分かについては、本当に団体の皆様方にも更に御意見、御発言を頂きたいと、むしろ思っているところです。
  特に小学校の外国語、具体的には英語でございますけれども、やはり新しい教科となれば、時間を増やすだけではなくて、中身の指導の在り方も問題だと思います。そういう意味で、時間の工夫とともに、例えば、文部科学省として教材提供とか英語の専科教員の増員、いわゆるALTの増員、あるいは小学校教諭における英語免許保有者の増加などなどの計画があるようですけれども、御努力いただきたいとも思っているところであります。
  それと、例えばアクティブ・ラーニング等をするためにも、教育内容を減らさなければならないという御指摘については、他の団体からもそういう意見をお聞きしている場合がございますけれども、中教審としては教育内容そのものを減らすことはしないということを明記してございます。
  ただ、それも、カリキュラム・マネジメントの考え方とか、あるいは知識面について、必要な知識はちゃんと教えるということでありますけれども、同時に、知識内容の構造化を図りながら、重点化を付けるといいますか、めり張りを付けながら、より重要な概念をしっかり分かるようにしながら教えていくという中で、量的な確保と質の向上の両立を図ろうとしているわけであります。
  それについても、現場の実践からして、なかなか難しい面があるという御指摘、もっともだと思いますので、更に努力していきたいと考えているところでございます。ありがとうございました。
  それでは、各団体から、直接の御意見、御質問はなかったような気がいたしますけれども、コメントなり補足なりをお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  それでは、全国都道府県教育長協議会様からお願いします。
【全国都道府県教育長協議会】    今回ご提出したものは、全国から意見を収集して作成したものですので、これを是非詳しく見ていただいて対応していただければと思っております。我々は、国で決めたことについて、都道府県教育委員会として推進する立場でありますが、ただ、学校現場がとにかく困らないように、かみ砕きながら、我々は打つ手を打っていきたいと思っておりますので、いろいろなアイデア等を頂ければと思っております。よろしくお願いいたします。
【無藤主査】    ありがとうございました。
  それでは、日本教職員組合様、お願いします。
【日本教職員組合】    ありがとうございます。最後の無藤主査がおっしゃられた教育内容のことについてだけ、一言話をさせていただきたいと思っています。
  私たちも、削減をしてくださいという言い方はしていないつもりです。あくまでも「精選」という言葉を使っていまして、それは同じじゃないかとおっしゃられるかもしれませんが、実を言うと、無藤主査もおっしゃったとおり、今回の学習指導要領の「審議のまとめ」では、例えば、「学びの地図」という形で、各教科の関連性に焦点を当てたと思っております。そういった中で、やはり教える中身の重点化とかそういうことが図られるのではないか。だから、今まで以上に各教科の関連性を見ていく中で、教えるのに掛ける時間なんかも少なくしていくことによって、トータルとして精選していけるんじゃないかと、そういうような観点で考えています。
  前のときのように、一つの単元をぼんとなくしてしまうとか、そういうようなことではなくて、トータルの、全教科の関連性を見ていきながら時間を生み出すというようなことができないだろうかという趣旨で「精選」という言葉を使わせていただいたということを補足させていただきます。
  以上です。
【無藤主査】    ありがとうございました。
  それでは、全国教育管理職員団体協議会様、お願いします。
【全国教育管理職員団体協議会】    やはりお金はなかなか、今の経済状況の中で厳しい。プライマリーバランスの黒字化計画も、消費税が先送りになるということで、なかなか難しい部分があるんですけれども、先ほど申し上げたように、本当に教育への高まりが今出てきていると思います。文部科学省は、直山先生という調査官、すばらしい論客もおりますし、今の平川委員の話も、私も先日お聞きしましたけれども、本当にアピール力がある方が、是非、いわゆるそういう発信をしていただきたい。マスコミは動くと、教育にも本当に関心が高まって、国民は、やっぱり少し税金、これから先の子供たちにというふうな思いを抱くような、そういった仕掛けも考えていただけたら、我々も是非応援、支援をしてまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。【無藤主査】    ありがとうございました。
  それでは、全国高等学校PTA連合会様、お願いします。
【一般社団法人全国高等学校PTA連合会】    ありがとうございます。懸念しているのは、社会に開かれた教育課程、あるいは目指すべき日本の教育の姿というものを地域家庭と共有していくときに、両親がそろっている家庭だけを標準にできない時代だということを、最近、つくづく感じます。経済的困窮家庭も、多くがシングルマザーやシングルファザーの家庭であり、必死に働いても平均的な年収の2分の1、3分の1というところでありますし、結局、子供の教育、あるいは日本の教育に関心はありながら、それに向ける時間がないという家庭が一定割合あるということを念頭に置く必要があります。
  そういう意味では、社会全体で家庭教育を支援することも大事だろうと思いますが、それを全て行政がやるのではなくて、それこそ地域の力、これをいかに活用していくかが大事だろうと思います。
人づくりは社会づくり、教育は地域全体、総がかりで取り組む社会を実現するために、PTAも、本来的な存在意義を忘れず、一生懸命やっていきたいと考えております。ありがとうございます。
【無藤主査】    ありがとうございました。それでは、これで後半のセッションを終了とさせていただきます。本日は、全体、これで終了といたします。
  御発表いただきました4団体の皆様、誠にありがとうございました。頂いた御意見につきましては、事務局にて整理の上、答申に向けた議論に反映させていただきます。
  最後に、事務局より今後の日程について御連絡をお願いいたします。
【石田教育課程企画室専門官】    本日は誠にありがとうございました。次回は11月4日、金曜日の15時から17時、場所は文部科学省3階第1講堂にて開催いたします。詳細は、追って御連絡を申し上げます。
  なお、本日の資料につきまして郵送を御希望される方は、机上に資料を残しておいていただけましたら、後日、お送りさせていただきます。
  以上でございます。
【無藤主査】    ありがとうございました。
  それでは、これで本日の教育課程企画特別部会を終了いたします。皆様、ありがとうございました。


――  了  ――

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