資料1 教員免許制度・教員養成の改善の方向性について~論点メモ(法律事項)~

1 制度の基盤となる考え方について

1.教員養成の原則について

  教員養成は、「大学における教員養成」及び「開放制の教員養成」を原則とする、との考え方を維持することでよいか。
 教員養成の改善・充実に向け、新たに又は改めて、明らかにすべきことがあるか。

(参考)
「我が国の教員養成は、戦前、師範学校や高等師範学校等の教員養成を目的とする専門の学校で行うことを基本としていたが、戦後、幅広い視野と高度の専門的知識・技能を兼ね備えた多様な人材を広く教育界に求めることを目的として、教員養成の教育は大学で行うこととした(「大学における教員養成」の原則)。また、国・公・私立のいずれの大学でも、教員免許状取得に必要な所要の単位に係る科目を開設し、学生に履修させることにより、制度上等しく教員養成に携わることができることとした(「開放制の教員養成」の原則)。」(中央教育審議会答申「今後の教員養成・免許制度の在り方について」平成18年7月)

2.教員免許の性質について

 教員免許は、教員として最小限必要な資質能力を有することを公証するものであり、各教員免許は、教員として指導可能な校種や教科種に係る資質能力範囲を特定しこれを有することを公証するもの、との考え方を維持することでよいか。

(注)教員免許状のカード化を視野に、「教員免許状の授与」ではなく「教員免許」という行為概念として捉え整理していくこととする。

3.普通免許の対象者について

 普通免許は、1基礎資格(学位等)を有し、かつ、認定課程等で所要単位を修得した者、又は、2教育職員検定に合格した者(特定の免許や一定の教職経験を有する者に限る)に行う、との考え方を維持することでよいか。

(注)「特別免許」及び「臨時免許」については別途検討を行う。また、資格認定試験合格者は、制度的に特例として教員免許の対象者とされているものであるため、別途検討を行う。

4.普通免許を得るための所要資格について

 普通免許を得るための所要資格は、基礎資格(学位等)や特定の免許・一定の教職経験の保有と共に、大学において所要単位を修得することが要件とされており、当該所要単位の修得は、各教員免許に係る資質能力を備えさせる上で重要な機能を果たしてきたが、この仕組みを維持することでよいか。

2.具体的な制度の在り方について

5.普通免許の種類の構成について

 普通免許は、学校種・教科種別とされてきた(特別支援・栄養・養護・一部領域に係る免許を除く)が、校種間の連携・一貫教育や小学校専科指導を含む教科教育の充実、教科横断的な総合的な学習等を促進していくためには、複数校種や複数教科種の指導を行うことのできる免許保有者が増加することが望まれる。このため、各免許に係る所要単位数を減じつつ、現行免許種を基本に、複数免許取得を目的とした大学の課程の設置を促進するか。または、複数校種や複数教科種に渡る資質能力範囲を公証する免許など新たな種類の免許を導入(置換又は追加)する必要があるか。
 併せて、二種・一種・専修免許の区分や位置付けについてどう考えるか。

課題認識1

 法令上は、校種及び教科別に異なる資質能力範囲を公証するものとして各普通免許が設けられてきた(*1)が、実状として、教職課程認定基準(教員養成部会決定)により大学における授業科目の共通開設が認められてきた結果、異なる校種の免許について個人が修得する所要単位までもが、法令の定めを超えて共通化(合体・吸収)してしまっている。このことを前提に、免許の種類の構成を考えることでよいか。
 特に中学校と高等学校の免許は、一部の教科(国語、社会/地歴・公民、理科、美術、家庭)を除き、全ての所要単位について共通化(合体・吸収)が起きており、このため、両免許は、同一の資質能力を公証するものに過ぎなくなっている。このことから、中学校及び高等学校の免許のうち可能な教科は、同一の資質能力範囲を公証する免許として一元化することが適当か、または、異なる資質範囲を公証する免許として再構成すべきか。

(*1)法令上は、全校種の普通免許に関して、所要単位のうち下記については、他校種の免許に係る単位をあてられる旨の明文規定がない。つまり、これらの単位の修得は、免許種ごとに独立して行うこととされおり、このことにより、全ての免許が異なる資質能力範囲を公証するものされている。
・「教科に関する科目」の全単位
・「教職に関する科目」のうち
「教育課程及び指導法に関する科目」の半数以上の単位(中高は全単位)
「生徒指導、教育相談及び進路指導等に関する科目」の半数以上の単位

課題認識2

 戦後の教員免許制度は、現職教育を尊重し十分に配慮した仕組みが講じられ、「一層高い免許状あるいは別系統の職の免許状を得るに必要な条件」(『教育職員免許法同法施行法解説』昭和24年)が整えられてきた。
 仮に複数校種や複数教科種に渡る資質能力範囲を公証する新たな免許を創設した場合において、単一の校種・教科種に係る免許を有する現職教員が隣接校種や他教科種の免許を得た際には、新たな免許に相当する資質能力範囲を有し得るが、これを公証する免許は異なることとなる。このように、複数の既存免許を得ることにより獲得できる法的効力と同様の範囲を包括するに過ぎない免許を創設し併存させることは法制的に困難ではないか。このため、新たな免許と既存免許を併存させる場合には、新たな免許が公証する資質能力範囲を既存免許とは異なるものとする必要があるのではないか。
 また、既存免許を複数種類取得することを目的とした課程を大学に置くことを促進すれば、複数免許を包括する新たな免許に係る資質能力と同等の範囲を有する者を養成することが可能であるが、このことを踏まえ、新たな免許の必要性についてどう考えるか。

課題認識3

 仮に複数校種や複数教科種に渡る資質能力範囲を公証する新たな免許を導入した場合において、異なる教科の免許を同時に又は将来取得しようとする場合、同校種の免許のほか、異校種の免許を選択することも可能であるため、各組み合わせに応じて所要単位の調整(共通履修が可能な部分と不可能な部分の整理)が必要となる。このため、制度が複雑となり、運用上の煩雑さや困難が増す可能性が考えられるが、このことについてどう考えるか。

課題認識4

 普通免許は、基本的に学校種・教科種別とされ、高等学校を除き、二種・一種・専修免許の区分が設けられてきたが、今後の二種及び専修免許の位置付けについてどのように考えるか。
例えば、二種免許は、一種免許への足掛かりや導入的位置付けとしての意義が認められるが、高等学校については二種免許が設けられていない。このことを、新たな免許を導入する場合にどのように考慮するか。
また、現行の専修免許は、「教科に関する科目」又は「教職に関する科目」のいずれを履修しても得られるため、新たに修得する資質能力範囲に共通性はなく、一種免許を基礎に量的に学びを深めたことを公証するものとなっている。このことを踏まえ、教職大学院等における一定範囲の共通性ある内容の履修により教員としての専門性や実践性が高度化したことを明確に公証する新たな種類の免許を導入することについて、どう考えるか。

(注)「普通免許状」のうちの特別支援・栄養・養護・一部領域に係る免許、及び「特別免許状」「臨時免許状」については、別途検討を行う。

6.大学において習得する所要単位の枠組みについて

 大学において修得する所要単位は、「教科に関する科目」「教職に関する科目」「教科又は教職に関する科目」の3つの区分で設定され、これに応じ大学は授業科目を開設することとされてきたが、この枠組みを維持することでよいか。または、新たな考え方を導入することが適当か。

課題認識

 教員は、教科に関する専門分野の学術的知識・技能に限らず、これを背景に、幼児・児童・生徒の発達段階に応じて、学習指導要領に定める各教科等の目標及び内容に則り適切に指導を行うことのできる実践的知識・技能を有することが不可欠である。
 「教科に関する科目」は、教科に係る専門分野の学術的知識・技能を広く深く修得させることが主な目的とされてきたが、これを独立的に履修することに留まらず、学術的知識・技能を背景に、免許を受けようとする各校種の各教科が、学習指導要領に則って1どのような内容や構成で成り、2各内容・構成にふさわしい指導方法や教材活用方法等としてどのような種類・技能があるのか、を有機的・融合的に履修する(又は大学にそのような授業科目の十全な開設を求める)制度設計とすることが、教員としての専門性や実践力の修得・向上のために必要ではないか。

7.所要資格を得させるために適当と認める課程(認定課程)について

 普通免許の所要資格の一部である所要単位を得させる課程は、文部科学大臣が認定を行うこととされており、これにより一定の質の確保が図られている。しかしながら、現行法においては、当該課程の認定に関する根拠規定や要件規定が十分に整備されておらず、わかりづらいものとなっている。このことを踏まえ、所要単位を得させる課程に求められる基本要件を整理し、法律に明示すべきではないか。
 また、現在は、一度認定を得れば、原則として永続的に認定課程を維持することができるが、教員養成の質保証の観点から、一定期間の取組を評価し、認定課程としての適正を確認するような新たな制度的仕組みが必要ではないか。

 課題認識1

 所要単位を得させる課程については、現行法においては1原則として大学に置かれ、文部科学大臣が認定することと、2当該課程において修得を要する最低単位数が科目区分ごとにあること、が示されているのみである。これらに加え、課程を置く大学等の教員養成の理念や教育課程の全体・年次構想、教育体制などの基本事項を明らかにする必要があることを、認定の基本要件として明示することが適当ではないか。併せて、詳細要件についても、継続的に満たすことが必要な最低基準としての法的位置付けを明確化するため、文部科学大臣の定め(省令又は告示)として明示することが適当ではないか。

課題認識2

 幼稚園及び小学校の免許に係る所要単位を得させる課程は、「幼稚園教諭又は小学校教諭の教職課程は、教員養成を主たる目的とする学科等でなければ認定を受けることができない」(「教職課程認定基準」(教員養成部会決定))こととされてきた(昭和36年~)が、その必要性や妥当性についてどのように考えるか。

課題認識3

 認定後の課程の質の確保・向上を図る制度的仕組みとして、教員養成部会課程認定委員会が年間30~50大学等を対象に実地視察を行い、その結果を公表する取組を行っている。しかしながら、現下、認定課程は約24,200課程(学部・学科等数は約8,000)に上るため、全体的な質の確保・向上につながりにくく、また、同一大学内に同一免許種の認定課程が複数存在し授業内容が異なるなど、大学としての質の担保・保証にも課題が見受けられる。このような状況を踏まえ、認定後も大学ごとの特色を発揮しつつ教員養成の質の確保・向上を促す新たな制度的仕組みを導入する必要があるのではないか。

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初等中等教育局教職員課