教員養成部会 教員の養成・採用・研修の改善に関するワーキンググループ(第1回) 議事録

1.日時

平成26年5月2日(金曜日)

2.場所

文部科学省東館3F1特別会議室

3.議題

  1. 主査の選任
  2. 教職課程の見直し等について
  3. その他

4.議事録

○主査について、髙岡委員が適任である旨の発言があり、了承された。
○髙岡主査から、岸田委員が主査代理に指名された。

【髙岡主査】
それでは、傍聴の皆さんの入室も終わったようでございます。主査等の選任に必要な手続も先ほど終了いたしました。これから議事を公開することになります。改めまして、本ワーキンググループの主査を仰せつかまつりました髙岡でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
今回このワーキンググループは前回の教員養成部会で設置することが了承されまして、本日第1回目ということになります。そのワーキンググループの名称が示しますように、教員の養成・任用・研修、全ての分野について、学び続ける教員像の実現のためにという、大きく言えばそういう理念が背景にあるものだと理解をいたしております。それにしても、論点は非常に多岐にわたりますので、限られた時間の中で、養成部会で本格的な審議をやっていただく論点をしっかり整理する、横にまず我々が広げて、それぞれのテーマについての深化をまた養成部会でやっていただくということだろうと思っております。
大変非力ではございますけども、委員の皆様方、特に部会からは小原部会長、無藤部会長代理、両先生にも時間の許す限り御出席をいただいて、その御指導も仰ぎながら議事を進めていきたいと思います。私としては文部科学省の全面的な協力、バックアップということも信じて疑わずに、主査の責めを何とか塞ぎたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、配付資料の確認をお願いします。
【柿澤教職員課課長補佐】
配付資料の確認をさせていただきます。まず、資料、議事次第の次でございますけれども、資料1といたしまして1枚物、このワーキンググループの設置についてというものでございます。裏面に委員の名簿も入っております。次に資料2といたしまして、教員養成部会(第70回)の議事録でございます。とじたものでございます。次に、資料3といたしまして「教員免許制度・教員養成の改善について」ということで、こちらも1枚物でございます。次に、資料4といたしまして「教員養成部会(第69回・第70回)における主な意見」というものでございます。
次に参考資料でございます。参考資料1「平成24年度 免許状授与件数等調査結果」で、こちらも1枚物でございます。次に参考資料2といたしまして「平成24年度 取得方法別免許状授与件数」でございます。こちらも1枚物です。次に参考資料3といたしまして、こちらは横の表になりますけれども、「平成23年度 学校種類別の免許状取得状況」でございます。次に参考資料4といたしまして「教員免許状取得に係る必要単位数等の概要」でございます。最後に参考資料5といたしまして「平成25年度 免許状種類別の課程認定を有する大学数等」という資料でございます。落丁、乱丁等ございましたら、事務局までお知らせいただければと思います。よろしいでしょうか。
【髙岡主査】
よろしゅうございますか。それでは、議事に入りたいと思います。まず、今日の表題のある議題は大きく1点ということでございますので、その点について事務局から御説明いただきたいと思います。
【小谷教員免許企画室長】
それでは、資料3を御覧いただければと思います。このワーキンググループにおかれましては養成・採用・研修の改善に関する専門的事項の御審議をお願いしておりますが、本日はそのうち特に養成の部分に焦点を当てて資料を御用意いたしました。資料3「教員免許制度・教員養成の改善について」でございます。まず、上半分は現在の状況についての課題認識をお示ししております。
まず、今、学校教育の充実方策の一環としまして、幼稚園と小学校、小学校と中学校、中学校と高等学校など、複数の学校種を通貫した教育、あるいは小学校高学年における専科指導を全国的に進めていくことが期待されている状況がございます。また、教員が英語、道徳、特別支援教育、ICT活用、総合的な学習等の個別具体的課題への対応力を高めていくことも求められております。
このような社会の要請を踏まえまして、複数の学校種において指導を行うことができる教員、そして専門性や実践性に優れた教員を十分に養成していく必要があるということでございまして、このために、免許状授与の所要資格を得させる教職課程について、枠組みや内容をどのように見直していくかということが教員養成の要になってまいります。
この教職課程におきましては、複数の学校種において指導を行うことができるような履修を実現するとなりますと、現行よりも履修内容を圧縮する、履修する単位数を削減することが不可欠となってまいります。特に、小学校と中学校の場合がその関係が強く出てまいります。このために、初任段階まで、採用されてから二、三年後までを見据えて、養成段階と現職段階で身に付けるべき事柄をどのように整理して、養成と研修が分担・連携・連動していくかという点が重要になってまいります。
このような課題認識の下に、本日は3点御議論いただくための観点を用意しております。一つ目が「教員免許制度の改善」でございます。これは小中一貫教育あるいは中高一貫教育等の多様な教育課程区分に対応していくこと、あるいは小学校の教科担任制といった専門性を重視した教育を行っていくために、現行の免許制度をどう改善していくべきかという、免許制度そのものに関わるものでございます。
そして、二つ目でございますが、こちらは「教職課程の見直し」でございまして、免許の外枠が決まりますと、その内容としましてどのような資質を身に付けていただく必要があるかといった観点から、具体的に習得していただく内容を詰めていくことが必要になってまいります。観点としましては、高い専門性・実践性にすぐれた教員の養成、それから複数の学校種において指導を行うことが可能となる履修、そして英語教育、道徳教育等の個別課題への対応、この三つを併せて御検討いただければと思っております。
そして、3番目でございますけれども、「教職課程の質の向上」ということで、単に単位数を圧縮するといったことだけをいたしますと、簡単に言えば、質が下がるのではないかといった懸念が同時に生じてまいります。そのようなことを回避していくために、質の向上のために現行の課程認定制度を見直すなどの何らかの改善策があるかといった点の御議論をいただければと思っております。
続きまして、資料4を御覧いただければと思います。資料4は教員養成部会第69回、第70回で頂きました御意見をまとめさせていただいたものでございます。今御説明いたしました観点に関連するもののうち、幾つかだけ簡単に御紹介をいたします。お開きいただいて2ページ目になりますけれども、一番上に2ぽつ「教員免許制度の在り方について」と書いております。教員免許制度に関して頂きました御意見としては、専修免許、一種免許、二種免許というのは業務の内容等について実際には違いがないのではないか、免許の意味を再確認すべきであるという御意見ですとか、6・3・3制の見直しの議論、学制改革の議論がある中で、そのような観点から免許制度を考えていかなければいけないのではないか。あるいは、他校種でも教えられるような副免許制度といったものの創設について検討すべきではないかといった御意見がございました。
次に、3ぽつ、真ん中あたりに「教職課程の在り方について」とありますが、これについて頂いた御意見としては、特に小学校高学年は内容が専門的になり、算数、理科、社会でつまずきがあるけれども、専門的な内容を小学校教員が指導できていないという状況にあるという御指摘がございました。あるいは、そこから下に下がっていただいて三つ目ですが、ICT、道徳教育、いじめなど、教職課程や研修の内容がどんどん増えて複雑になっているといった御指摘もございます。その下で、教職科目ごとに絶対に教えなければならない内容を明確にすべきといった御意見がございました。
次に、少し飛びまして5ページ目を御覧いただければと思います。枚数で行きますと3枚目でございますが、下の方に4ぽつで「教職課程の質保証の在り方について」というのがございます。これに関しては、教職課程の質保証のためには、実地視察に加え、専門家のピアレビューを導入すべき、専門家のレビューや評価結果を受けてどのように改善したかまでを評価することで、一定年限を掛けて教職課程の質の向上につなげるべきではないかといったような御意見を頂いております。こちらも御参考にしていただきながら御議論をお願いできれば幸いでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【髙岡主査】
ありがとうございました。それでは、今日は第1回ということで、委員の皆さんに満遍なくと申しますか、あるいは先ほど申し上げましたように論点は非常に多岐にわたることが想定されます。第1回の議論の中心は基本的には養成レベルの問題というところに特化をして議論してほしいという事務局からの御提案でございましたけども、それにかかわらず、委員の皆様方にはこのワーキンググループの委員をお引き受けいただいたときに一定の御覚悟がおありだと思います。どういう議論にするのかということについて、それぞれお一人お一人御意見があろうかと思いますので、まずそれをお出しいただいて、今後の議論の整理の参考にさせていただこうと思いますので、余り時間はございませんけども、お一人ずつ御意見を頂戴すればと思います。
ワーキンググループの委員は私も入れて八人でございます。オブザーバーとして部会長、部会長代理、お二人いらっしゃいますので、十人ということになりますので、お一人お一人の時間は極めて短いということになりますが、5分程度でおまとめいただければ有り難いと思います。
では、早速始めさせていただこうと思いますが、名簿順ということでよろしゅうございますでしょうか。
それでは、大坪先生からお願いできますでしょうか。
【大坪委員】
鹿児島大学の大坪です。よろしくお願いいたします。地方の教員養成学部にいる者として、その中で委員に選ばれているということの意味を考え、特に鹿児島に限らないんですけれども地方で過疎化が進む中で、小規模校、それから複式学級、少人数教育といったら聞こえがいいんですが、なかなかその分、今日もあるテレビニュースで流れておりましたけれども、臨時免許をたくさん発行しないと中学校とかで教科を担う先生がいないというような問題とかいうことが現実に出てきている。こういうことに対して、このワーキングで新たな教員養成に関する議論に参加できることを非常にうれしく思っております。
すなわち、私としては、先ほど小谷さんからもおまとめになられた内容に関連するんですけれども、例えば小学校の教員免許状の今の所要免許、所要単位数を考えていくと、そこへ中学校をくっつけるとかいろんなことをやっていく、特別支援をくっつけるとかやっていくと、国立系の教員養成学部ではかなり工夫してやっていますが、それでも学生たちは150単位以上単位を取得しなければなかなか難しいような状況がある。そういう中で、一方で教員養成学部にあっても小学校免許だけ、中学校免許だけしか取得せずに卒業する学生も多々あるという状況を考えると、そうした養成ができるところでは義務教育免許状という、私がイメージしている義務教育免許状というのは小学校と中学校だけではなくて、小学校と特別支援といったようなものも視野に置いてなんですけれども、そうすることによって、例えば先ほど小谷さんが説明された中にあった小学校における専科の指導の問題とかも、それぞれの小学校の先生方が何がしかの中学校の得意分野を持って卒業をすることが明確になるわけですから、すなわち義務教育免許状というのは、例えば小中の組合せであれば、小学校にプラスいずれかの教科あるいは特別支援という感じの組合せの形なんですが、そうすると、そうした教員が増えることによって、そうした専科を十分担える力のバックグラウンドもできるのではないかと考えます。
また、一方で議論には、教員養成部会ではこれまで出ていませんけれども、俗に中中免許と言っていますが、中学校複数教科の取得についてどういう形を保証していくのか。現実には校種が同じであれば教育実習は一つでいいわけですから、複数教科免許を取得するといっても、養成段階では一つの教科の実習はやったけれども、もう一つの実習は全くやらなくて大学の単位受講だけで取れてしまうような形もあるわけですね。いろんな形で、私は教員養成部会で制度疲労と申し上げましたけれども、そうしたことに対しても踏み込んだ議論ができればと思っております。よろしくお願いいたします。
【髙岡主査】
ありがとうございました。御意見、御感想等はまた後でまとめて少し議論していただきたいと思いますので、まずはお一人お一人御意見を伺うことにさせていただきたいと思います。それでよろしゅうございますでしょうか。
それでは、岸田先生、お願いいたします。
【岸田主査代理】
和歌山県の桐蔭中学校高等学校校長の岸田でございます。私は前職が教育委員会の和歌山県の学校教育局長という仕事をしていまして、教育行政を19年やってまいりました。その間、和歌山大学の方にも3年、交流教員の形で出ましたので、元々は高等学校の教員ですので学校現場、それから教育委員会、大学の教員、そして校長という形で、今回のテーマになっていることに関して様々な経験を持っているという意味で、この席に座らせていただいているのかなと思っています。
そういう中で今日、前回の教員養成部会のときにもこの議論が始まるということで申し上げたんですが、その点を再度申し上げたいと思います。それは、ここでのテーマになっているものをいろいろと議論していくと、恐らく学部段階の教育課程、今小谷室長から圧縮していくという話がありましたけれども、それと裏腹に、どうしてもやっぱり膨らんでいくことにならざるを得ない。いろいろと学ばせておきたい要素をどうしても詰め込みたくなってきますので、膨らんでいかざるを得ないんじゃないかなと。
こうした考え方のヒントになる取組として、今、実は和歌山で、和歌山大学と和歌山県教育委員会が連携しながら初任者研修のモデル事業というものをやっているんです。試行的に初任者研修の18名を大学で学ばせているんですが、いわゆる行政研修ではなくて、大学で初任者をやっています。去年1年間やってきた状況を見ていると、かなりいい学びをしているという実感を私も持っています。それは正に学び続ける教師を作っていくカリキュラムをそこに導入して、そして学校現場での実際の指導と大学での省察的な学びとを融合させながら、教員として学び続ける資質の育成ができていると思っているんですね。
先ほどの話に戻りますが、このような初任段階のカリキュラムをどう作っていくか、この部分と、学部段階のカリキュラムとの系統性をやはりきちっと構築していく必要があるんではないかと思っているんです。つまり思い切って、学部段階で必要な要素を盛り込むんではなくて、この部分は採用してからの初任段階のところのカリキュラムでやればいいじゃないかという系統性を持たせた住み分けみたいなものをしていかないと、どうしても学部段階で膨らんだり、圧縮させたりというものになってくると。そうした系統性のあるようなことを思い切って考えていくべきじゃないかということが1点です。
それから、もう1点申し上げておきたいのは、これは前回のところでも指摘がありましたが、教科又は教職の扱いですね。これについては私も大学におったときに感じていたんですが、どうもこの中身が大学の中でも、私もそうでしたけど、概念規定が、どういう狙いかということについて、それぞれの大学で、あるいは教員によってばらばらの捉え方をされています。そしてこれが、本来の狙い通りの実質的な中身になり得ているかというと、どうも疑問があると思うんですね。ですから、これが一体どういう形でなされているかということを、少しちょっとアンケートのような形でも構いませんが、実態として把握するべきではないかなと思っているんです。それをした上で、これも前回ありましたけれども、検討しなければならない英語教育とか道徳教育とかICTとか総合的な学習の時間とか、あるいは教員免許法施行規則第66条の6に関わるものをどうするかという議論の中に、この教科又は教職の部分を含めながら、全体的にどう考えていくかという視点が必要ではないかなと思っています。
今日は1回目ですので、これだけ、取りあえず申し上げておきたいと思います。
【髙岡主査】
どうもありがとうございました。それでは続いて、渋谷先生、お願いできますでしょうか。
【渋谷委員】
渋谷治美と申します。私はこの3月に、ある地方大学の教員養成学部を定年退職いたしまして、そういう意味で、この場にいるのはいささか場違いかなとは思うんですけども、御指名いただきましたので精一杯務めたいと思います。
私は教員養成学部に32年前に着任しまして、時折申し上げているんですが、教員養成部会の中でも少数に属すると思いますけれども、教科専門担当でございます。具体的には、倫理学を担当しておりましたが、そういう意味で、いささかちょっと皆様方と違った角度から気付いたことを申し上げることができるのかもしれないと思っております。
最近、「SYNAPSE(シナプス)」という、教員養成に焦点を合わせた冊子に文章を寄せさせていただきまして、そこに書かせていただきましたけども、一つ思いますのは、教員養成はやはり非常に危機に直面しているということです。生物学の概念に均衡多型という考え方がありまして、あるバランスのレベルがあって安定していたのに、それがいろんな要因で一旦崩れると、上に行ったり下に下がったりするわけですが、またしばらくすると、どこか上か下か別の水準で均衡する、安定するという理論でございます。私は教員の質もこれに当てはまるのではないかと思っております。つまり、教員養成は戦後からしばらく前までかなり高いレベルでずっと質を保っていたんですけども、今の現状のまま放っておくと、これがぐっと質の低下を招いて、どこかずっと低いレベルでまた均衡するんでしょうけども、それが果たして日本の教育の水準、国家的な教育水準という観点からして放置していいのか、というふうな発想をしてみたりしております。
あちこちに書いたり何度も申し上げているのですが、その最も大きな要因はこの50年間で大学進学率が3倍化したことだと思います。しばらく前あるいは今ちょうど定年を迎えておられる小中高の先生方が大学に進学したときの大学進学率に対して、現在3倍強になっていると。これが教員の質に与えている影響を直視しない限りは、やはり教員養成及び教員の質の低下は防げないのではないのか、ということですね。ただ、進学率を3分の1に戻すとか、教員養成学部だけのレベルを何らかの方策で元に戻すということは無理でございますので、現状の大学進学率を前提にした上で旧来の教員の質を保持するためにはどの辺に戦略的な目標を据えるのかというあたりで、何か知恵を皆さん出し合っていったらよろしいのではないかというふうなことを考えております。
最初に戻るんですけども、私はそういうことで、教職専門でもございませんし、教科教育でもございません。32年おりました最初の10年は、有り体に言いまして、教員養成とは何かということを真正面から考えていたとはとても思えません。その後、いろんな事情で学部の管理職のようなものを10年超務めさせていただく中で、ようやく教員養成の使命の重大さついて目を据えるようになりました。
ということで、教員養成学部といえどもそういう大学教員が多くいることも現状としてありますので、その辺の体質というか、そのあたりを含めて、いろいろと発言をさせていただければと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
【髙岡主査】
ありがとうございました。それでは引き続き、細谷先生、どうぞお願いいたします。
【細谷委員】
全日本中学校長会の細谷と申します。私は中学校現場の代表ということでここへ招かれているのかと思いますけども、私自身も社会科の教員をやっておりました。それから、その後行政に入りまして、指導主事、あるいは人事課長、そういったことで、教員の採用にも関わってきたということで、そういうこれまでの経験を生かしながらの発言になるかもしれません。
今、私は校長として、自分の学校の教員に対してもいろんな形で指導あるいは育成をしているんですが、特に、中学校現場も最近新規採用教員が増えてまいりました。ただ、彼らを見ている中で、非常にやっぱり不安を感じるのが専門性のなさ、それから実践力、指導力ですよね。この辺が不安な部分が非常に多いと。3年前に私はこのやはり教員養成部会のメンバーで発言をしたんですが、特に教材研究というのができない。簡単に言えば、料理人でありながら、料理の知識は持っていて、何を使えばこの料理ができるというのは分かっているんだけど、その料理ができない。そういった教員が非常に多いんですね。ですから、この辺は一つ大学の教職課程というものの中身を見直さなきゃいけないのかなと常々思っています。
3年前の教員養成部会のときには専修免許状についての話合いが中心だったものですから、大学院あるいは教職大学院の教職課程についての協議ということだったんですけが、そのとき申し上げたのは、やはりもう少し学校現場に学生さんたち、院生たちをよこして、どんどん実習の機会を増やし、なおかつそれを単位として認めながら、もちろんですが、学校の評価というものもかなり大学側で重視してもらえないかと。それと、専門性のなさについて、あるいは教材研究をさせることについても、小学校もそうなんですが、中学校にも教科ごとの教育研究会という組織がありまして、そこでかなり教科研究について実践的にやるわけですが、そういったところにも短期間実習、あるいは現場に来たときに所属させて、専門の先生方とのそういうつながりを持たせるようなことも必要じゃないかということを申し上げました。
その辺はこれからのまたいろいろと論議は出てくると思いますが、私も、先ほどどなたか発言がありましたけども、入り口の部分でいっぱい与えても駄目だと思います。やっぱりある程度経験させて、そこで現場というのはこういうものなんだといった中で、もう一度フィードバックして大学に行かせる、大学院に行かせるという意味で、教職大学院というのも非常に重要な位置付けがあるかなと思うんですが、ただ、現場の校長は出したくないんですよね。というのは、行かせようと思うのは優秀な教員が多いんですけど、行かせた後に大体講師対応で、かなりやっぱりそういう意味では質の落ちる指導者が学校の方へ来てしまうと。あるいは、教員自身が非常に忙し過ぎて、研修・研究しようというゆとりが出てこないということで、この辺は今日御出席いただいています前川局長とも、教員の条件整備について非常に頭を悩ませているところですけども、やはり現場の教員の条件整備が整い、なおかつ教員にゆとりが出てくると、そういう大学の連携とか、教員自身の研修・研究というものも、私は一気に進むと思います。本当にこれは私もいろんな教育委員会を見てきましたけども、いかに教員にゆとりを持たせるかというところから、私は全てがスタートするんではないかなと思っております。
雑多ですけども、そんな考えを持っているということで、発言の方はこの辺にしておきたいと思います。
【髙岡主査】
どうもありがとうございました。
では、次、堀竹先生、お願いいたします。
【堀竹委員】
全国連合小学校長会の会長の堀竹と申します。よろしくお願いをしたいと思います。
やはり話題になっている最大の問題は、教員の専門性として何をどの程度身に付けるというようなことが専門性を身に付けた教員なのかというところに関わってくるだろうと思っています。量が多ければ、当然大学の教員養成課程の中だけでは足りないというような中で、前回教員養成部会でもお話をさせていただきましたけれども、やはり教員養成の大学と、それから現場へ出てからの教育委員会の研修と、これを連続性を持った形で考えていかないと、養成の中ではもう限界が来るだろう。大学だけの問題ではない。また、現場で預かった教員を育てるのが現場の校長の役割ということを考えた場合、やはり教育委員会の役割とどう連携を付けてやっていくかということは、今後考えていく一つ大きな課題だろうと思っています。
それと同時に、もう一つは、今小学校にとっても様々な教育課題が来ています。これは教科の枠で捉えられるものとそうでないものと考えたときに、教科の枠で捉えられない中身が新しい課題としてかなり出てきているんだろうと思っています。そういったものを実際の教科の枠の中でどう入れ込んでいくのか。教員養成の中身としてどの部分にそういったものを入れていくのかというようなことも考えていかないと、結局いろいろな課題があるけれども、表面でなぞって、それが教員の資質・能力として確実に定着しないんではないかというような危惧を持っているところでございます。
それから、小学校の専科制の問題ですけれども、私は1年生から全て専科制というのは、やはり子供の発達段階からいったら多少無理があるんではないかと。小学校のどの段階から専科制を導入するかというようなことも、子供の発達段階を踏まえた上で考えることが必要であろうと思っております。
それから、大学の養成課程で足りない部分について後の研修でというような話をさせていただきましたけれども、実は今小学校、中学校もそうですが、非常に非常勤の教員の数が増えています。これがきちっと正規の教員であれば、教育委員会の研修等の機会で確実にフォローアップをする体制ができるんですけれども、今現実の中で増えてきている非常勤教員の指導力、かなり学校教育はその力に負っている部分がありますので、この問題も考えていかないと、教員養成の質的な向上というようなことについては十分な議論ができないんではないかなと考えているところでございます。
私の方から考えていることは以上でございます。
【髙岡主査】
ありがとうございました。それでは続いて、八尾坂委員、お願いできますか。
【八尾坂委員】
九州大学の八尾坂と申します。私は九大の前は教員養成系の単科大学にも12年ほどおりましたし、現在は今12年目、九州大学におります。それで、現在私の大学でも、総合大学ですが、教職課程は大体結構全学部で250人は超えております。多少ドロップして、4年生の段階で少なくとも150人ほどは免許状を取って、直接受かる方もいますけども、講師になったり、いろんなルートで進んでいっているようでございます。私も教育学系の教員として教職課程もサイクルでやっております。
そんな状況で、つい最近、先ほどのお話の中で関連したことがありましたが、私の教育学部では社会関係の免許状、国語、あるいは英語が取れるんですけども、私の指導学生で数学を取りたいという方が3年頃おりまして、どうしても数学の先生になりたいと言ったもんですから、そしたら御自分で探して関西の通信制の大学で数学の単位を取って、そして卒業はしましたけど、1年遅れて数学の免許状を取って、自分の母校の県の今年常勤講師として数学の先生になりましたが、そういう通信制の活用というのも、一般大学などではどうしても同一教科でない科目を取る場合、必要になってくるのかなと。多少厳しかったですけどもそんな例がございました。
そういう経験もございますが、今日は養成という焦点ということでしたので、やはり連携という言葉がこれまで教員養成部会でも出ましたけども、ある程度任せておくんじゃなくて、緩やかなそういう規定というのも必要になるのかなと思いますね。そんな意味で、多分国立大学とその地区の教育委員会は進んでいるかなと思うんですが、それ以外の一般大学あるいは私立大学の教職課程もあるわけですので、そのような大学はまずそんなにほとんど連携してやっていくなんていうのはないですので、やはり大学コンソーシアムみたいに本格的にやるのであれば、そこのコンソーシアムが集まって、教職課程について教育委員会とどういう連携をしていくのかというような形をとっていかないと、全国ばらばらで、進んでいるところとまた進んでいないところということがあるかと思います。そういう意味からも、ある程度地区ごとの大学の連携と、そして教育委員会との連携という在り方の中で、養成・採用・研修を考えていくことも必要なのかなと思います。
また、養成段階では確かに、私の大学でも教職課程ではなくても、体験的な学習を授業科目として入れていますが、学生にはすごく人気があります。そういう意味で、実体験は1年段階からといいますか、そういうカリキュラムを一部の国立大学の養成系ではやっているわけです。でも実際、普通の大学ではほとんどできません。ですから、それも何らかの仕掛けの中で、財政支援も含めて、あるいはカリキュラムの規定上の中に入れるということも必要なのかなと思います。
それと関係して、現在一部の都道府県で、東京の教師養成塾のような、割合、政令指定都市も含めて養成塾などどんどん増えておりますけども、その中身としては自分の県・市にどうしても入りたい人を養成するということで、一部の枠ですが、そういう志を持った人をきちっと大学も関わってその教育委員会とやっていくという仕組みは、一つの選択肢としても、一定枠ですが、あってもいいのかなと思います。それこそ正に、教育委員会主導のように見えますけども、大学ももっとこれからも関わって、そういう地域の大学全てとの協定の中でやっていくやり方は、現在大学が増えて教師の質、養成される学生さんの質がどうという問題があるわけですので、そんな点で一つの考える余地もあるかなと思います。
それと、養成段階でこれまで私たちも実地視察とかやってきました。実地視察も当然全国全ての大学がということは実現可能かどうか分からないけども、その段階では影響力があって、各大学あるいは近隣の大学がそういう条件にそろうように報告書なども担当者が読んで、いろんな急きょ図書の準備とかしたとか、聞いたりしたことはあるんですが、それも一つの効果なんだと思います。教職課程の先生とか、一般大学、あるいはトップのリーダーがですね。ですが、それが終わるとどうかということを、五、六年もたつと、またということもあるわけでしょうけども、そういう点から考えると認証評価的なこともあってもいいと思います。ただ、負担とかいろんな問題はあります。大学評価などもありますけども。すると、それは悪いとは思いませんが、やはり毎年自分の大学の教職課程がどんな強みを持って、どんな課題があってとか、いい点を、こういう点をこうやっているというのを各大学に年次報告してもらってもいいのかなと。それを毎回報告するだけでも、かなり教職課程を充実していこうかという、地域の大学全体がそういう組織的な取組になっていくんじゃないかなと思ったりするんですが、実地視察を補完する役割として私は考えております。
以上でございます。
【髙岡主査】
ありがとうございました。それでは、最後になりましたけれども、若月委員、お願いいたします。
【若月委員】
ありがとうございます。昨年の4月まで品川区の教育委員会で教育長を14年ほどやっておりました。現在は財団法人の学校教育研究所、それから政研大の方でお世話になっております若月でございます。私は今各委員の方々がお話しになったこととちょっと違う別の観点からお話をさせていただこうと思います。
このワーキンググループの委員をやれというお話があったときに、私が初めに考えたことは、このワーキンググループの上に養成部会という親部会があるわけですね。その親部会の要請を受けてワーキンググループができた。そして、今日事務局の方から示されました、特に資料3でありますけれども、幾つかの観点で、教員養成に関する取っ掛かりというものも示されているわけです。そうしますと、ワーキンググループというのは基本的な性格として、持っているミッションとして、親部会の期待に応えるように、ワーキンググループですからかなり具体的な、実際的な提言をしなければならないんだろうなと考えたわけです。誤解を恐れずに言えば、幾つかこうあったらいい、あああったらいいという各論はかなりもう出てきていると思うんです。だからそれを整理して、このワーキンググループでどれを選択するか、そしてそれを具体化するためにはどういうようなことから始めたらいいかというような、ごくごく具体的な提言をするのがこのワーキンググループなのかなと考えてきたわけです。
ところが、そう考えますと、先ほどこれも冒頭髙岡主査が御挨拶の中でお話しになっていましたけど、非常に一つの問題に取り掛かっていって具体策を考えていっても、やはり課題が多岐にわたってきますね。そうしますと、さてこれはどこまで、自分はこのワーキンググループの中でどういう立ち位置で、一体どこまでの発言をしたらいいんだろうか。理念を言ったところで、あるべき論を言ったところで始まらないんで、それを具体化するためにどうしたらいいか。そう考えたときに、今の現行の制度の中で、それを前提として、より教員養成の、例えば教職課程なら教職課程の在り様といったようなものに手を加えていくという一つのコンセプトなのか、それとも、これも髙岡主査が先ほどちょっと御挨拶の中で、場合によっては法改正、制度改正といったようなことも視野に入れながらというようなことをお話しになりました。私はそれを伺って、ああ、私としてはよかったなと思うわけでありますが、やはりどうしてもそこにワーキンググループといえども提言をしていかざるを得なくなるんじゃないだろうか。そこまでやっていいものなのか、どうなのかというのが一つ分からなかったわけです。
例えば、具体的にお話をしますと、教員養成について、あるいは今の教員に求められる資質等々、いろんな提言があるわけですけれども、長い間教育委員会にいてつくづく思うことは「それは世間の皆さん、ちょっと御無体な」という気持ちがないわけでもありませんでした。というのは、教育というものに関わって、「教員はゼネラリストたれ、されどスペシャリストでもあれ」と、ゼネラリストとスペシャリストを同じように教員に求めてきているのが現状だったわけであります。
そう考えてくると、今八尾坂委員からもお話がありましたし、先ほど岸田委員にもちょっとお話がございましたけれども、例えばスペシャリストとゼネラリストの両側面をやはり兼ね備えているのがこれからの教員だとしたならば、そして生涯学び続けていく教員を育てていくならば、その視点に立って、大学ではスペシャリストとしての基礎をどこまで教え、指導し、それからゼネラリストというのはいわゆる教育問題についてのゼネラリストですね。そういった意味でのゼネラリストですけど、それについてはどこまで教えるのか。そして、今日の資料3にもありますが、次々に出てきている、例えば英語だとか、道徳だとか、特別支援だとか、ICTだとか、そのときそのときの時代の要請に対しての課題が出てくる。それに対してはやはり対応していかなきゃならない。これはある意味では、教育者としてのゼネラリストの側面をやはり要求されている。そうなってきたとき、それにやはり具体的に対応できるのは教育委員会をおいてほかにないだろうと私は思うわけであります。
そう考えると、どうしても若干制度だとか、現在の法ですか、そうしたようなものに関わってこざるを得ないんだけれど、そこまで踏み込んだ発言をしていっていいのか。あるいは、あくまでも現行の制度の中だけ、これをいじらないでその中での創意工夫といったらいいでしょうか、単位数はちょっと圧縮してこういうものを入れましょうとか何とかという、本当に実務的な、実際的な提言で止めておくのか。ここら辺の見通しといったらいいでしょうか、ここら辺も私自身ちょっとまだ、実はこの御下命を受けてからはっきりしない気持ちで、今日この席に来ているわけであります。したがいまして、その辺の我々のミッションといったようなものをどこまで踏み込んでいくものなのかということによって、大分議論の仕方が変わってくるだろうと。だから、教員はいかにあるべきか、これからどう育てるべきかというのは、もっと言えば、学校というのは一体何なのかということにさかのぼるわけであります。
今考えてみますと、簡単に言いますと、日本の場合には学校というのは教育サービスを提供する場なんですね。だから、教員に何でもかんでも来るわけであります。しかし、これからの時代はコミュニティースクールだとか、外部の教育力を活用するとかいうようなことを考えていくと、教育サービスを提供する場たり得なくなるんじゃないか。もっと言うならば、学校というところは教育サービスが展開されるサイトになる、フィールドになる。そうすると、そこにはいろんな人間が流れ込んでくる。そうなってきたとき、教員に求められる資質だとかいったようなものも、おのずと変わってくるだろうと思うわけで、そうすると、今度は大学で何を教え、教育委員会でどうそれに引き継いでフォローしていくかということも変わってくるという大きな問題になってくる。したがって、これは広げるとどこまで広がるか分からないものですから、適当なところで考えなきゃいけないわけですが。
この辺の、だから制度、法改正に関わる議論をどこら辺までやっていったらいいのか。ここら辺は髙岡主査の腕一つというと失礼な言い方になりますけど、要するにそこら辺は差配の一つだろうと思うんですが、ここら辺もこれから明確にしていっていただけると有り難いなという気持ちで今日やってまいりました。どうぞよろしくお願いいたします。
【髙岡主査】
ありがとうございました。今お一人お一人、ワーキンググループの委員の先生方の御意見を伺って、論点を整理してみますと、やっぱり15項目ぐらい出てくるような気がします。
最後の若月委員の御発言にもございまして、やはり今教員養成・任用・研修という制度そのもの、枠組みそのものがぎりぎりのところまで来ているんではないかという認識では、先生方は共通しているものがあるのではないかと思います。それは養成部会の皆さんもそうだろうと思いますし、政策をつかさどっておられる文科省も同じではないか。制度疲労という言葉が浮かびます。だからそれをどう改善するのかというぎりぎりのところまで議論は煮詰まってきていると思います。
前回養成部会でもちょっとございましたけども、たしか兵庫教育大の加治佐委員から、ワーキンググループを作ってどこまでやるのか、その目線をどこに置くのか、視野をどこまで飛ばすつもりなのかという御質問もありました。そのことについて、また事務局ともこのワーキンググループの持ち方という点で議論をしておかなければいけないことだろうと思います。今日のところは、やはり先生方の御意見を伺って、私の個人的な感想ですけども、問題は多岐にわたるし、広いと。しかし、その一つだけを何とかすれば何とかなるというような特効薬もない。その点では、やはり全体として前へ進めていく議論をした上で、ひょっとするとそうやって全部荷物を抱えていれば吹っ飛ぶかもしれませんけども、しかし、そのことは試みるに値する課題であろうし、我々はその論点をしっかり整理して養成部会に上げていく、そこでまた改めて深化していただくということになるのではないかと思っております。私の心持ちとしては、今先生方の御意見を伺った上で、なおそういう気持ちを一層強くしたところでございます。
ということを踏まえて、小原部会長、オブザーバー参加ということになるんですけど、でも、せっかくおいでいただいて、御指導いただかなければいけないと私も思っておりますので、是非御発言いただいて、今後の在り方についての御示唆を頂ければと思います。
【小原部会長】
これから中教審の教員養成部会で教員養成の改善について検討していくことになります。そのためにワーキンググループを設置させていただきました。委員の方々にはいろいろ改善策を考えていただくことになりますが、日本語の欠点は複数なのか単数なのかよく分からないことです。ですから、たたき台といってもそれは一つの案なのか、二つ以上なのかが曖昧だと思います。部会長としてはできれば複数の案を出していただきたいという願いを持っております。といいますのは、教育委員会側(がわ)、いわゆる採用者側(がわ)の要望もありますし、校長先生、現場を預かる側(がわ)の意見もあるでしょうし、一方、養成する大学側にもそれぞれお家の事情があって、それを反映した意見もあると思います。いずれにしろ、このワーキンググループで一つの案だけしか出てこないと、今度部会でそれに対する丸かばつの選択肢となります。もし、ばつになったらもう一度ワーキンググループの方に差し戻して、次の案を提出してもらうことになります。できればA案、B案、望ましくはA案、B案、C案を三つ頂ければと思います。一つですと○か×ですが、三つですとベストが出てきます。その中から更によりよい案も出てくると思います。それがいわゆるPDSAのサイクルを回す上で欠かせない手順だと思いますので、よろしくお願いします。
一方、これは養成する側(がわ)は大学ですので、大学では教員養成だけをやっているのではありません。大学全体としての課題を抱えております。その一つが単位の実質化です。今までのように単位の量さえ多ければよかった時代から、設置基準どおりの勉強をして卒業に至っているかということを厳しく問われていますので、124単位(要するに大学という定義)の中で、いかに効率のいい教員養成をしていくかということを考えていただきたいと思います。先ほどから聞いていますと、この力が足りない、あれもやらなければいけない。ここにも書いてあるように、小学校の場合は8教科既にぱんぱんの状態のはずなのに、この上に英語や、道徳もやらなければいけない、特別支援もやらなければいけない、更にICTとなると、本当に124単位の中で、求められている専門性と実践性というものが付くのかどうかという問題も出てきます。是非124単位の枠の中で可能なことで考えていっていただきたいと思います。
私も小中高の教員を雇用をする立場にもありますけども、多くは卒業まで160単位とか180単位取ってくる学生です。たくさんの免許を持っているのですけども、本当に1単位45時間の勉強をしてきたのかと疑わざるを得ません。そういうことですから、大学でやるということを念頭に置いて、これからの検討を出していっていただきたいと思います。
それから、質の問題ですけども、こうなってきますと、ある程度全国教員養成を行う上で共通整理というものがなければ、質の比較もできなくなります。たとえは悪いかもしれませんけれども、自動車のペダルは二つか三つありますが、一番右にあるのがアクセルペダルで、その隣にあるのがブレーキです。これが会社の特色を出すということで、右側がブレーキで、その左隣にアクセルがあると、これは質の問題以前になります。そういうことがないように、我々として今考えていく上で、ある程度全国どこの大学でやったとしても共通性のある教員養成課程あるいは内容というものを説いていかなければならないかなと思っております。
私はオブザーバーですので、このあたりで発言を終わらせていただきたいと思います。これからもよろしくお願いいたします。
【髙岡主査】
ありがとうございました。先ほど若月委員からも出していただいた議論、少し論点を絞っていく方向ということについて、部会長自らが御意見いただいたというふうに、今のお話を私なりに理解をいたしました。一つは大学教育の質保証ということの枠組みの中で教職課程というものをちゃんと考えてほしいと。124単位という、設置基準上の最低履修単位ということになりますが、その中で考えるべきではないか。だから、あれもこれもということではないという御意見。
それから、そうだとすれば、やはり増えてくる教育内容に関わって、例えば全国共通あるいは免許共通のある種コア科目的な中身はあるんじゃないのかと。そのあたりも探し出せないかという御意見だったというふうに思います。我々の議論の若干方向をお示しいただけたと思います。ありがとうございました。
それでは、無藤副部会長さんにも御意見いただきたいと思います。お願いします。
【無藤部会長代理】
私もオブザーバーですので、そういろいろな意見ということではないのですけれども、このワーキンググループ及び教員養成部会の議論というのは基本的には今年度ある程度まとめてということが期待されているだろうと思います。そういう意味で、非常に難しいことをワーキンググループにお願いしているという気がいたします。一方で、例えば義務教育の在り方とかが、規制改革についていろいろ、特に政府与党で議論されているということでありますし、また、私は別なところで幼児教育に関わっておりますけれども、そちらはそちらで幼稚園教諭と保育士の統合問題がいずれ出てくるだろうと思います。そういう意味で、いろいろ制約といいますか、並行したところで、全面的にここだけで決められないところがたくさんあると思っています。
それからもう一つ、何より一気に変えるということはなかなか現実の大学の問題を考えたときに難しい部分はやはりあって、国立大学と私立大学があるということもあります。それから、同じように国立大学といっても、教員養成に特化した学部とそれ以外の開放制の部分。それから、私立大学も非常に規模の大きいところ、中規模、小規模、いろいろあります。例えば、小中免許を一緒にしていくという方向は大きくあると思いますけれども、現実には中高免許だけ出しているところもありますし、逆に小学校だけを出しているところもある。それから、私が関わっている小さな私立大学ですと、幼稚園教諭・保育士とともに小学校免許を出すような、幼保小モデルというのもかなり広がっております。そういう意味で、それらについて一挙にそれが駄目だというふうにはなかなかしにくい部分があるだろうと思います。そういうことを現実的に考えますと、その一方でしかしながら、義務教育学校なり、小中の一貫学校の可能性というのはかなり出てくるかなとも思いますので、そういう意味では小中の一貫ということを免許上もやりやすくする必要があるのではないかと思います。
義務教育という大きな枠組みでするということも将来的にはあり得ると思いますけれど、当面のところはそこまで一気に学制改革が行くわけではありませんから、小学校の免許、中学校の免許というのはある程度維持しながら、相互乗り入れをどう実現していくかということが現実的な線だと思うんですね。つまり、小学校免許を取る、あるいは中学校免許を取りながらも、何かを幾つか加えることによってそれぞれ乗り入れられるような工夫がいる。小原先生がおっしゃったように、総単位数を余り大きくしないで、どうやってそれを可能にするかという工夫がいるんだろうと思います。
同時に、ここでは先ほどの事情で幼稚園教諭免許に触れないことになっておりますけれども、現実には幼稚園・保育士とともに小学校を出すようなモデルのところがいろいろあるわけですが、そういうところで見れば、そこに中学校免許も取らないと小学校免許を出せないというふうに義務付けられますと、かえって小さな大学で無駄に肥大していきます。中学校の先生になる気がないのに取らなきゃいけないのはやはり無駄が多いと思いますので、そういう意味での現実的なところを考えていただきたいと思います。
それから、もう一つはこれも皆さん方おっしゃっているように、養成課程の問題と今後はやはり現職の研修の問題が切り離せなくなると思います。現職といいますか、教職大学院のように大学院に行くとか、あるいは通常の大学院の中で専修免許を取るといったことも含めて、言うなれば四年制大学の免許を取った後の問題です。これが1年間、あるいは3年間、5年間という最初の数年間の研修について、どうやって踏み込んで文科省として義務付けを入れるのか、入れないのか。あるいは、方角を示しながら都道府県教育委員会などにある程度中身を、設計を委ねていくか。いろいろ考え方はあると思うんですが、その辺を少し考える必要がある。少なくとも提案はできるのではないかと思います。
つまり、四年制の大学の中で完成させて、それで教員として一人前として送り込むということはある程度必要ですけれども、しかしながら、特に新しい課題とか、隣接学校種の問題については、あるいは中学校の複数科目などについても、現職に就いてから、あるいは教職大学院等で付加的に学ぶということも、現実的には考えざるを得ないのではないかと思います。そういう意味で、このワーキンググループの議題そのものにそこまでは入っていないと思いますけれども、是非それも念頭に置いて議論をお願いしたいと思います。
それから、3番目ですが、教職課程の在り方について議論されるんだろうと思います。特に、教職課程を大学として責任を持って進める体制を作っていただくということでありまして、それは非常に重大なことだと思います。そういう意味で考えると、その中に養成課程を担う教員の研修とか、あるいは養成課程を担う教員の養成の問題まで展望してもいいのではないかと思います。どの程度義務付けられるかは別として、そういうことも大事なことなんだという認識を、養成課程を担う先生方に喚起していく必要はあるのではないかというようなことを思いました。
以上です。
【髙岡主査】
ありがとうございました。これで委員の先生方、部会長、副部会長も含めて、一通り御意見を出していただくことができました。まだ、あと七、八分時間がございますが、特段にどなたかに対する御意見とか御質問とか、そういう相互のやり取り、少し残っておりますけどいかがでしょうか。あれば御発言いただきたいと思います。
それでは、私もこのワーキングをどう今後進めていくかということについて、もちろん事務局と十分相談をさせていただきながらやることになりますけども、学び続ける教員像という理念の実現ということが、ある種教員政策の一つの哲学として提示されたと理解したいと思います。そこに向かって制度改革をどうやっていくのかという議論はしっかりやっていくんだということだろうと思います。加えて、今日事務局からお示しいただいた資料でいえば、更にどこでも教えられる先生を育てないといけないという課題が出てきた。それから、多様な課題をちゃんと担える教員を育てなければいけない。そうなってくると、先生方の議論の中にもございました、養成段階で全部できるかという疑問、パンクしているんじゃないかという議論、そうすると、必然的に養成段階だけではなくて初任研のレベルや現職研修のところも含めて、教員の育ちというものをトータルに見直す必要があるんじゃないかとそういう観点に立てば、一回一回の議論は養成の問題、任用の問題、採用の問題というような議論になるかもしれませんけども、やはり全体を見越した、見通した一つ一つの細部にわたる論点整理ということが、このワーキングの議論としても必要になってくるだろうと思います。
実は私の勘違いかも分かりませんけども、「さあ、ここら辺でちょっと単位が減るか」というような印象もあるんですね。あらゆるものが出てくる、あるいは横に広げる学校種を超えて、免許を取らせる。そうすると、これまでずっと単位として増え続けてきた教職課程というものを、どこかでスリム化することも必要かもしれない。これはかなり大きな発想の転換が背景で起こっているということにもなります。そういうものも見据えていきながら、このワーキングで情報も提供していただき、お考えもお聞きしながら、先ほど小原部会長におっしゃっていただきましたように、こういう考え方、ああいう考え方という複数論の提示というようなところまでは是非たどり着きたいと思っております。
制度論的にいえば、大学は今や評価文化に大分なれてきている。しかしこの教職課程だけは入り口管理にずっととどまっていて、いたちごっこといいますか、もぐらたたきといいますか、そういうことの繰り返しだという、ここの制度疲労の問題もあります。したがって、教職課程の認証ということを今後考えていかなければいけないだろうという議論もまた存在をしているわけで、そうした多岐にわたる論点をできる限り整理していきたいと思います。
というところで、ほぼ時間になりましたが、これで今回第1回のワーキングの議事を終わらせていただいてよろしゅうございますでしょうか。
では、最後に前川局長から一言、お願いいたします。
【前川初等中等教育局長】
ワーキンググループの委員の先生方には、連休の谷間であるにもかかわらず、おいでいただきましてありがとうございます。
このワーキンググループには非常に重要な仕事を担っていただくことになると思っておりまして、最近は中教審でもA案、B案、C案というのがはやっておりますので、本当に突っ込んだ様々な御意見を頂きまして、意見が合わないところはそういう形で整理していただくことは十分考えられると思いますので、意見が対立するところまで御意見を頂きたいと思います。
今は教育再生実行会議が政府にございまして、様々な提言を次々と出しています。ただ、そのボールはみんなこっちに投げられてくるわけでございまして、受け取る方の議論というのはここの中教審の場でやらなければならないと。しかも、その具体的な制度設計となりますと、こういうワーキンググループのようなところでやっていただかなきゃならんということになりまして、その意味で非常に重い仕事をしていただくことになると思っています。
教育再生に関しては様々な議論も既に進んできているわけですけれども、今ちょうど学制改革の議論もしていらっしゃいますし、その中で教員の資質向上の在り方についても御議論いただだいているということでございます。教員の資質向上に関しましては、教育再生実行会議の議論を踏まえつつも、中教審は中教審として自律的に御意見を頂きたいと思っております。ただ、教育再生全体の中で考えていただく必要があるということでございますので、教員養成、あるいは教員の資質向上に限らず、教育課程はどうなるかということも含めて考えていただく必要があります。
実は教育課程の議論は今年の秋頃に中教審に諮問することになるだろうと思うんですけども、この次の教育課程の見直しもかなり大きな抜本的な視点を打ち出していくような、そういう改定になるのではないかと思います。そういうことも含めまして、学校教育全体に関わる見直しの方向性とにらみ合わせつつ、御意見を頂ければと思っております。今年中ぐらいに一定の結論が見えた部分につきましては、来年の通常国会には免許法の改正案として法律改正をしていきたいと思っておりますし、それが1回で終わるものではないと思っていますので、更に御議論をいただいて、更に中長期的な問題についてはその次の通常国会あるいは臨時国会もあるでしょうし、2度、3度と法律改正をするということもあり得るんではないかと思っています。少なくとも来年の通常国会、今頃は免許法の改正法案が国会に掛かっているということを想定して御意見を頂ければと思っております。これは免許法だけの問題にはならないかもしれません。学校教育法も恐らく、学制改革の議論もございますから、学校教育法を見直さなければできないような部分もあるかもしれません。そういうものも含めまして御議論いただいた中で、これは法律改正にのせられるというものがあれば積極的に法律改正していきたいと思っておりますので、来年の通常国会に必要な法律改正ができるんだということを前提にして御議論いただいて構わないと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。
【髙岡主査】
どうもありがとうございました。
【柿澤教職員課課長補佐】
次回の開催につきましては別途御連絡を差し上げますのでよろしくお願いいたします。
【髙岡主査】
それでは本日はこれで閉会といたします。ありがとうございました。

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