資料3-8 委員提出資料

「幼保連携型認定こども園保育要領(仮称)」の検討のため若干のメモ

民秋 言

 やっと訪れた保育界のチャンス。より充実した保育を展開する体制(システム、目標、保育内容、方法など)をつくるために、すなわちより適切な『保育要領(仮称)』を策定するために、つぎの諸点に留意したいと思う。

1. 幼稚園教育要領と保育所保育指針の関係

 幼稚園教育要領(以下、教育要領)は昭和31年(1956)年に制定以来4次改訂を経て、保育所保育指針(以下、保育指針)は昭和40年(1965)年制定以来3次改訂(定)を経て、それぞれ今日に至っている。これらをもとに50~60年の年月をかけ先達が努力をし、よりよい保育(幼稚園教育と保育所保育とを併せて保育とよぶ)をすすめてきた。教育要領、保育指針がこれで十分、完成というものではないかもしれない。とくに社会のニーズはますます多様化し、それに応えるようこれからも検討されていかなければならないが、今日においてそれなりの成果をあげているものといえよう。したがって、この度の『保育要領(仮称)』策定にあたっては、この2つの理念や趣旨、内容を存分に引き継ぐものでありたいと思う。
 尚、いうまでもなく両者の整合性はとられるべきである。(少なくとも子どもの発達、保育内容・方法の捉え方については)
 むしろ、いまの両者にはほとんど整合性は保たれていると思う。とくに、今次の保育指針改定(平成20年度)作業においては、教育要領との整合性に鋭意努めた、と理解している。したがって、この度は、両者をつき合わせ、適切な部分を抽出しまとめていく作業となろう。

2. 保育の目標・目的

 保育は、まず園で生活する乳幼児(以下、子ども)の「最善の利益」を考慮しながら、「生涯にわたる人格形成の基礎を培う」ものでなければならない。つまり、小学校からの「教育の基礎」を培い、「生きる力の基礎を培う」ものである。より具体的には、「健やかな心身を育て」、「豊かな心情、意欲、態度」を習得させることである。(※)

(※) ともすれば抽象的になるので、解説書ではできるだけ具体的に描きたい。

3. 保育の内容・方法

 保育の内容は、健康・人間関係・環境・言葉・表現の五つの領域で説明する。この領域は、さきの目標・目的としての心情・意欲・態度(教育要領・保育指針では「ねらい」として扱われている。)を捉えるためのカテゴリーでもある。
 この「ねらい」を達成する(子どもが身につける)ために、五領域ごとにみた園生活における活動や体験(経験)が「内容」として示される。「内容」は多くのところで、到達目標(とくに「できる・できない」の視点で捉える)であるかのように理解されているが、あくまで「ねらい」のための子どもの活動・体験である。この点、とくに注意したい。
 保育の方法としては、「適当な環境(※)」のもとで、「養護と教育が一体」となる保育をすすめることが欠かせない。

(※)「適当な環境」も、ともすればこの語句をあげるだけですまされることが多いが、出来るだけ具体的に、子どもの育ち(さきの目標・目的、あとの発達)との関連で取り扱いたい。

 「養護と教育が一体」となる保育については、しばしば誤解を生んでいる表記ではある。とくに「養護」についての解説はしばしばみられる。この機会に本意をしっかりと書きたい。いうまでもなく「養護」は「生命の保持」と「情緒の安定」である。それらが支え(基礎)となって「心情・意欲・態度」・「健やかな心身」などが習得されるための活動や体験が展開されることを「教育」という。したがって、「養護」が保育所保育のみに必要なものではない。「養護」のない幼稚園教育はありえない(程度の差はありこそすれ)。尚、教育要領には、その内容がとりあげられているにもかかわらず、「養護」という語は用いられていない。十分に検討の要するところである。(※)

(※) これらの点からも(=保育指針からみても)保育が幼児教育・幼稚園教育などの教育を包括する概念であることは明らかである。それゆえ、『保育要領(仮称)』という呼称もより適切であるように思われる。

4. 発達(育ち)の捉え方

 保育指針にいう「発達過程区分」と「発達の連続性」という語句の趣旨は、保育所保育のみならず幼稚園教育にも欠かせないものである。
 「発達過程区分」は、一人ひとりの子どもの育ち(発達)の過程(6年間の保育所生活)を8つの区分を設けてとらえるものであり、「発達の連続性」は、この8つの区分にみる育ち(発達)が連続している(前に後に行きつもどりつしながらも)という捉え方である。保育所6年間、さらに幼稚園3年間の生活を段階的でなくトータルに捉えて、健やかな育ちをはかっていこうとするものである。

5.小学校との連携

 学校教育法にまつまでもなく、保育の目的・目標は義務教育などの基礎を培うことであり、さきの心情・意欲・態度や健やかな心身の育ちが小学校からの教育につながっていくことはすでに述べた。小学校での教育のもと、充実した生活そして豊かな育ちとなるよう、保育がどうして「基礎を培う」ことになるのか、〔幼・保〕と〔小〕との結びつき=連携の必要性をしっかりと述べておきたい。     
 この際、「連携」という語の使い方にも注意したい。ただ単なる関係や関わり、つながりではない。私は連携とは「目的(目標)を同じくするものが、それぞれの立場でそれぞれの役割を果たすことによって共通の目的(目標)を実現するよう努めること」と定義する。「保育では、このような子どもを育てますから、小学校でもよろしくお願いします」というようなメッセージを発するような『保育要領(仮称)』としたい。併せて、一人ひとりの育ちを記載した「保育所児童保育要録」(卒園時に小学校に送付する)は大切に扱いたい。幼稚園についても、ほとんど同じものがある。認定こども園版をしっかり作りたい。小学校に入ってからの「子どもの成長を支えるための資料」であるから、小学校とますます連携を密にする『保育要領(仮称)』が望まれる。

 

お問合せ先

文部科学省初等中等教育局幼児教育課

指導係
電話番号:03-5253-4111(代表)(内線2376)

(文部科学省初等中等教育局幼児教育課指導係)