資料3-3  委員提出資料

幼保連携型認定こども園保育要領(仮称)の策定に関する合同の検討会議第4回意見

幼保連携型認定こども園保育要領の体裁と記載事項について

淑徳大学総合福祉学部教授 柏女 霊峰

  1. 体裁は、幼保連携型認定こども園の対象となる「3歳以上児と要保育認定を受けた3歳未満児」を受け入れている保育所の指針である「保育所保育指針」を基本とし、「保育」を「教育、保育」(「保育、教育」とすべきかについても検討が必要。)とする。したがって、目次は、以下の7章とする。
    目次案:第一章 総則、第二章 子どもの発達、第三章 教育、保育の内容、第四章 教育、保育の計画及び評価、第五章 健康及び安全、第六章 保護者に対する支援、第七章 教職員の資質向上
  2. 「総則」冒頭に、本要領における「教育」と「保育」の定義を置くこととし、以下のように記述する 。
    (記述案)
    第一章 総則 
    1  趣旨
    (1) この指針は、就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律第十条第一項の規定に基づき、幼保連携型認定こども園における学校としての教育(以下、「教育」という。)並びに保育(「養護と教育が一体となった行為」をいう。)の内容に関する事項及びこれに関連する運営に関する事項を定めるものである。
  3. 対象児童については、原則として認定こども園法の定義である「子ども」に統一する。
    (記述案)
    2 幼保連携型認定こども園の役割
    (1) 幼保連携型認定こども園は、就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律第九条第一項の規定に基づき、就学前の子ども(以下「子ども」という。)に対する教育及び保育並びにその実施する保護者に対する子育て支援事業の相互の有機的な連携を図りつつ教育、保育を行う施設であり、入所する子どもの最善の利益を考慮し、その福祉を積極的に増進することに最もふさわしい生活の場でなければならない。
  4. 教育、保育の目標については、認定こども園法第9条の6項目を入れる。なお、「養護」が「生命の保持」と「情緒の安定」を含む概念であることを明確化するため、第6号に保育所保育指針の養護に係る表現を追加する。第7として、現行保育所保育指針に記載されている「入所する子どもの保護者の支援の原理」を記載する。
    (記述案)
    3 教育、保育の原理
    (1) 教育、保育の目標
    ア 幼保連携型認定こども園は、子どもが生涯にわたる人間形成にとって極めて重要な時期に、その生活時間の大半を過ごす場である。このため、幼保連携型認定こども園の教育、保育は、子どもが現在を最も良く生き、望ましい未来をつくり出す力の基礎を培うために、次の目標を目指して行わなければならない。
    (認定こども園法第9条)
    一 健康、安全で幸福な生活のために必要な基本的な習慣を養い、身体諸機能の調和的発達を図ること。
    二 集団生活を通じて、喜んでこれに参加する態度を養うとともに家族や身近な人への信頼感を深め、自主、自律及び協同の精神並びに規範意識の芽生えを養うこと。
    三 身近な社会生活、生命及び自然に対する興味を養い、それらに対する正しい理解と態度及び思考力の芽生えを養うこと。
    四 日常の会話や、絵本、童話等に親しむことを通じて、言葉の使い方を正しく導くとともに、相手の話を理解しようとする態度を養うこと。
    五 音楽、身体による表現、造形等に親しむことを通じて、豊かな感性と表現力の芽生えを養うこと。
    六 快適な生活環境の実現及び子どもと保育教諭その他の職員との信頼関係の構築を通じて、心身の健康の確保及び増進を図ること。(現行保育指針を追加)また、十分に養護の行き届いた環境の下に、くつろいだ雰囲気の中で子どもの様々な欲求を満たし、生命の保持及び情緒の安定を図ること。
    七 (現行保育指針追加)幼保連携型認定こども園は、入所する子どもの保護者に対し、その意向を受け止め、子どもと保護者の安定した関係に配慮し、幼保連携型認定こども園の特性や教育、保育教諭等の専門性を生かして、その援助に当たらなければならない。
  5. 「第三章教育、保育の内容」末尾において、幼保連携型認定こども園に固有の配慮事項を、現行の平成18年8月4日付文部科学省・厚生労働省告示第1号「…施設の設備及び運営に関する基準」の「第五 二 認定こども園に固有の事情として配慮すべき内容」4項目のうち1-3を追加することが適当である。
    (記述案)
    第三章
    (5)幼保連携型認定こども園に固有の配慮事項
    ア 幼保連携型認定こども園の利用を始めた年齢の相違により集団生活の経験年数が異なる子どもがいることに配慮する等、0歳から就学前までの一貫した教育、保育を子どもの発達の連続性を考慮して展開していくこと。
    イ 子どもの一日の生活の連続性及びリズムの多様性に配慮するとともに、保護者の就労状況等の生活スタイルを反映した子どもの利用時間及び登園日数の相違を踏まえ、一人一人の子どもの状況に応じ、教育、保育の内容について工夫を行うこと。
    ウ 共通利用時間において、乳幼児期の特性を踏まえ、環境を通して行う教育、保育活動の充実を図ること。
  6. 幼保連携型認定こども園においては、保育課程と教育課程の双方の性格を併せ持つ「教育及び保育に関する課程」を編成することとし、第四章冒頭において以下のとおり記述する(両者を総称して「保育」とし、「保育課程」、「保育の計画」などとすることも検討)。なお、編成上の幼保連携型認定こども園に固有の留意事項については、「…施設及び運営に関する基準」第五 三「教育及び保育の計画並びに指導計画」の1-4項目を参考に記述する。
    (記述案)
    幼保連携型認定こども園は、第一章(総則)に示された教育、保育の目標を達成するために、教育、保育の基本となる「教育及び保育に関する課程」を編成する(「保育の計画」を作成するとすることも検討)とともに、これを具体化した「指導計画」を作成しなければならない。
    (以下略)
  7. 第四章の「障害のある子どもの受け入れ」については、近年の制度改正を踏まえ、以下の記述を加えることが適当である。
    (追加記述案)
    (エ) 専門機関との連携を図り、必要に応じて助言等を得ること。特に、「保育所等訪問支援」を活用するなど、専門家の協力や保護者との相談等を工夫し、計画的で継続的な個別支援ができるようにすること。
    (オ)障害者虐待防止法の理念にもとづいて障害児への虐待の防止に努めるとともに、防止にむけての措置を講ずること。
  8. 幼保連携型認定こども園における教育、保育に係る留意点の追加記述については、平成18年8月4日付文部科学省・厚生労働省告示第1号「…施設の設備及び運営に関する基準」の「第五 教育及び保育の内容」を参考として、特に第4章において追加記述する。
  9. その他、第6章においては、「…施設の設備及び運営に関する基準」「第七 子育て支援」を、第7章においては、「第六 保育者の資質向上等」を参考にして必要事項を加筆修正する。
  10. 平成20年3月以降の新制度について、必要事項の加筆を検討する。
    例:障害児支援関係児童福祉法改正(保育所等訪問支援、障害児の定義に一定の難病の追加等)、子ども・子育て支援法(他の給付施設、事業等との連携、地域子ども・子育て支援事業等との連携、放課後児童クラブとの連携、)、DV防止保護法との関係について加筆(通告の努力義務、お迎え時の対応、ひとり親家庭福祉サービスとの連携等)、育児休業との関係の記述(?)、その他

補遺
大綱化と第2、5、6、7章の必要性について

(1)大綱化の必要性を否定するつもりはないが、単なる簡素化では誤解を生ずることとなる。幼稚園教育要領も、長い実践の積み重ねのなかで共通理解が図れたために大綱化ができたものと考えられる。親子の育ちを支えるために必要なことを包括的に表現し、実践においてその原理が再現できる内容になっていることが大切である。これから実践の蓄積が行われる幼保連携型認定こども園においては、現段階では保育所保育指針のような具体性を要すると考える。

(2)「第2章子どもの発達」の必要性について
 「第2章 子どもの発達」に関しては、現行の幼稚園では教職課程で学ぶものとされ、幼稚園教育要領には詳細は記されていない。一方で保育士は国家資格ではなかった歴史が長いため、保育所保育指針には子どもの発達の理解を共有するための章が必要だったと考えられる。今後、保育教諭の養成システムと内容がしっかりと確立され、子どもの発達に関する理解が養成の段階で共有されるならば、保育要領から削除することも可能かもしれない。しかし、幼稚園から幼保連携型認定こども園に認可替えする園が多くなることを考慮すると、当面は「子どもの発達」の理解(発達観や乳児の発達を含む)を共有するために「子どもの発達」に関する章を挿入しておく必要があると考える。

(3)第5章は児童福祉施設としての責務から、第6章と第7章は、幼稚園教育要領にも文言としては記載されており、その原理と方法を共有しながら展開するため詳細に記すことが必要と考えられる。

 

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(文部科学省初等中等教育局幼児教育課指導係)