資料3 書面による各団体提出意見

一般社団法人 全国保育士養成協議会  会長 山崎美貴子

幼保連携型認定こども園保育要領(仮称)の策定に関する意見 

 標記の件につき、本会として以下のような内容の明記を要望いたします。 

記 

 保育所保育指針、幼稚園教育要領のいずれにおいても触れられている保育の内容等に関すること以外で留意してほしい点、強調したい点等について以下に述べさせて頂きます。  

1.保護者支援、地域における子育て支援と「保育教諭」の専門性

 「幼保連携型認定こども園」は、教育ならびに保育を必要とする子どもに対する保育を一体的に行い、その健やかな成長と心身の発達を助長するとともに、保護者に対する子育ての支援を行うことを目的とする施設となっている。このことから、保育と保護者支援の担い手の中心である「保育教諭」の専門性の確保・維持と、質の向上のための研修等の保障は必須のこととなる。したがって、認定こども園の役割、機能としての保護者支援、地域における子育て支援のあり方について明記すると共に、「保育教諭」の専門性及び研修を中心とした質の向上のための仕組みについて明記する。

2.その他、特に明記することを要望する事項

(1)すべての子どもに対する保育・教育目標の明確化

 ここにはすべての子どもの最善の利益と、保育・教育の保障を基本とする視点を堅持する。特に障害児、社会的養護の対象の子どもなどについての視点も明確にしておく。

(2)子どもの成長発達保障の視点

  1. 子どもの成長発達にとってゼロ歳から一貫して養護が基盤であり、成長に応じて必要な教育がなされることの確認。
  2. 3歳未満児の保育の重要性と「保育教諭」の役割
    →幼保連携型認定こども園として運営する園に、3歳未満児の保育を担う園が多く含まれる。このことから、この時期に当たる乳幼児の保育の重要な意義につい て、保育要領でふれるとともに、とくに養護の専門性の確保と維持に関して明記する必要がある。また、ゼロ歳からの養護と教育を一体的に行う意義と留意事項についてもふれ、すべての保育教諭がその重要性を共有できるようにする。
  3.  障害のある子どもなど、特別な支援の必要な子どもの保育・教育について明記する。
  4. 子どもの健康、安全を再確認する。
  5. 食育に留意する。
  6. 虐待対応等も含めて、危機管理についても明記する。

(3)自己点検・自己評価、第三者評価など保育・教育の質の向上のためのありかたについて明記する。

 なお、保育士養成校は、保育要領が策定され実施されることにより、保育所保育指針と幼稚園教育要領に加え、保育要領について丁寧に教示する義務が生じる。このため、現行の養成のカリキュラムの体系や内容を通じて適切に教育する仕組みや新たな課題等について検討する必要がある。この課題に関しても、当協議会としてはできるだけ早期に国と協議していく必要性があるので、十分ご配慮いただきたい。

以上

一般社団法人日本保育園保健協議会  会長 遠藤郁夫

「幼保連携型こども園保育要領(仮称)の策定」に関する意見書

1.保育保健の現状(保育園における保健を以下保育保健と略す)

 保育所保育指針が改訂され、さらなる保育保健の質の向上をめざして感染症対策、アレルギー対応さらに食事の提供に関するガイドラインと矢継ぎ早に発出された。
 その結果、保育保健の現場へかなり高度な医療の問題が入り込んできた。そのため、園医および看護師が園のリーダーとして機能しなければ、保育保健は前に踏み出せない状況に立至っている。

2.これからの課題

(1)園内に保育保健の拠点としての“保健室”が必要。

  ○保育保健のリーダーとしての看護師が常駐する。
  ○保育保健関連資料が一括して管理される。
  ○園医および地域の専門職などとの窓口として機能する。 

(2)園に看護師が常駐し、保育保健のリーダーとして活動する。

  ○看護師が保育保健の業務に専念できる環境を整備する。 

(3)地域の専門職などの支援体制が不可欠。

  ○これからの保育保健の活動は、1園で対応できることは少なくなり、地域として広く多くの専門家たちとの連携無しでは不可能になっている。

3.幼保連携型保育要領に望むこと

(1)必置職員:看護師、栄養士を加える。

  ○食育に関するリーダーも重要となる。

(2)保健室(看護師の常駐する)

  ○保育保健の拠点となる場所
  ○体調不良児などの経過をみる場所
    → 従来の医務室とは異なり、学校保健における保健室と同様なものが必要。

(3)地域の専門職などを含めた支援体制の整備

  ○学校保健においては、どこの市町村にも学校保健安全会があるように、就学前の子どもたちの健康および安全を守るための体制が必要。

(4)子どもの権利をしっかり守っていただきたい

(5)健康管理体制の強化

  ○健康管理台帳の標準化(幼保連携型こども園モデルを)
    ・ 予防接種歴、既往歴が一覧できる
    ・ 就学までの健康記録が一覧できる
     ○予防接種の義務化
         ・ 長時間・集団生活を送る子どもたちには必須のワクチンおよび接種時期を示しここに含まれるワクチンを公費負担(全額)として、入園の条件に必要なワクチン接種が終了していることと明記する。
 なお、6か月以前からの入園児にはロタウイルスワクチンおよびRSウイルスに対するシナジス(免疫グロブリンでワクチンとは異なる)の接種を公費で行う。

 最後には細かい事も入りましたが以上が日本保育園保健協議会としての「幼保連携型こども園保育要領(仮称)の策定」に関する意見および要望です。 

保育園を考える親の会代表  普光院亜紀

「保育要領」に要望したいこと

  幼保連携型認定こども園で実施される保育について、就労家庭の立場から、次の点をご配慮いただきたくお願いいたします。 

1 「生活の場」としての役割を充実させること
  一日を過ごす子どもと就労家庭が必要とする支援を配慮すること

 私たちは、一日を園で過ごす子どもたちが必要とする保育、あるいは家庭の就労を支える支援が確保されることを強く望みます。現在、認定こども園その他の幼保連携型施設の保護者からは次のような訴えが複数と届いております。 

 ×午前中だけの子どもに「不公平」にならないように午後は特別なことはしないという保育方針がとられている。
 ×午前中に活動が集中する、午後に午睡がない、などのために子どもが疲れている
 ×平日の保護者参加行事が多く、仕事を休まなくてはならない日が多くなってしまう
 ×園から一方的に保育時間を短くするように言われている
 ×保育所なら保育してもらえるようなケガでも「お休み」するように言われる
 ×(学童の場合の参考事例)全児童対象の放課後遊び場事業(独自事業、教育委員会主管)に学童保育を吸収したある区では、生活の場としての機能が年々奪われていき、室内スペースは100人以上が出入りする喧噪な教室しかなく、就労家庭の子どもたちは休息をとったり宿題をすることもできない環境で1日過ごさざるを得なくなっている。今年度から、一般児に不公平になるからという理由で、おやつも廃止された

 保育を必要とする子どもたちは、現在、保育所で朝から夕方まで、一日の生活リズムや活動のメリハリが考慮されたカリキュラムによる保育(養護と教育)を受けており、保護者は就労の状況を理解され支援されています。認定こども園においても、これらの配慮が行われるように、「保育要領」を定めていただきたいと思います。
 なお、在宅子育て家庭と就労家庭が必要とする事柄は異なっており、その個々の状況を見ることなく、「公平にする」「区別しない」とする考え方は適切ではないと考えます。また、保育の場の「生活の場」としての充実は、教育の効果も増大させるものであることにも着眼する必要があります。 

2 児童福祉施設としての使命を明確にすること
  多様な育ち・家庭の状況を受け入れる社会的責任を明記すること

 上記にも関連しますが、保育所保育指針の総則は、保育所について「保育に欠ける子どもの保育を行い、その健全な心身の発達を図ることを目的とする児童福祉施設であり、入所する子どもの最善の利益を考慮し、その福祉を積極的に増進することに最もふさわしい生活の場でなければならない。」としています。幼保連携型認定こども園の「保育要領」にもこのような児童福祉施設としての役割を明記する必要があると考えます。関連して、保育所には現在、国の施策において、障がい児・発達障がい児保育、ひとり親家庭支援、要保護児童等の支援などの一端を担うことが期待されていることもふまえる必要があると考えます。 

3  「教育」と「保育」の用語に配慮を

 子ども・子育て支援法では、法内部での定義として「教育」は3歳以上児を対象に学校(幼稚園)のみが実施するものと規定していますが、これは教育基本法の用語にも合致しない狭義の定義であり、新しい「保育要領」においては、このような定義を用いることは不適切であると考えます。保育所保育指針は幼稚園教育要領の教育を包含した保育内容を示しており、これが「教育」ではないと表現することは、保育所の保護者の不安をあおり、保育所在籍児童への偏見を招くものであると考えます(別紙「狭義化する『教育』と『保育』」参照)。 

4 保育所保育指針・第2章の活用を

 「保育要領」においても、保育所保育指針第2章を保持・拡充してください。指針第2章が示す乳幼児の発達観は非常に重要であり、これによって保育者や保護者は一人ひとりの子どもの発達をより理解し、その発達に応じた対応をすることができます。少子社会ではともすれば子どもに対する理解が不足し、子どもを「小さな大人」と見なし、発達に合わない対応をしてしまいがちです。科学的知見に基づいた発達の過程、その姿が指針として示されていることは現場にも家庭にも助けになると考えます。 

以上

【参考資料1】ある保護者からの訴え

 私の子どもが通う園は、保育園(認可外)と幼稚園(公立)が併設された幼保一体型施設です。
 制度が始まって2年目に入り、保育園を卒園した子どもたちが、幼稚園の長時間保育に通うようになりました。今、長時間保育の保護者、つまり働く保護者たちから不満が噴出しています。
 具体的には 

・ 保護者参加の平日の行事が多すぎる(平均月1、2回)。休みが多くなったため、正社員からパートに格下げになった方もいる。
・ 短時間保育の子どもたちが帰った後のプログラムが何もない。外にも出さず、園内で遊ばせているだけ。「お外で遊びたい」と訴えている長時間保育の子どももいる。
・ 連絡帳が活用されておらず、お昼寝をしたのか、食事をどのくらいしたのかが全く分からない。

等が挙げられます。長時間保育の保護者が不満を伝えたところ、「幼稚園は短時間保育の子どもたちのためのものですから」と言われたとのこと。幼稚園側に変わろうとする姿勢がないようです。
 私はまだ子どもが保育園に通っているため、上記の内容はほかのお母さんたちから聞いたことになりますが、とても通わせることはできません。
これで「待機児童ゼロ」と言われても困ります。

  これらの不満を伝えるために、自治体の担当者・教育長と面談をしました。
 そこで一番問題だと思ったことは、幼保一体型制度をスタートさせた後、現場に任せきりで、現状を把握しようとしない、問題点を洗い出して制度をさらに良くしていこうという行政側の姿勢が全くないということです。
 幼保連携型認定子ども園保育がスタートしても同じことが起こるのではないかと危惧しています。つまり、制度を作って現場に投げっぱなし、やりっぱなしになるのではないかということです。
 定期的な制度の見直しを行う規定を、「保育要領」にぜひ含めてほしいと思います。
 色々話を聞くにつれ、幼保一体というのは不可能なんじゃないかと思うようになってきました。幼稚園に対するニーズ、保育園に対するニーズが根本的に異なっているからです。この幼稚園について言えば、短時間保育と長時間保育の保護者間での対立も生まれてきているようです。この対立を解消するためには、幼稚園の職員の意識改革が重要だと思います。


 

参考資料2 日本保育協会「保育界」2013年6月号掲載  

  

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