高等学校教育部会(第10回) 議事録

1.日時

平成24年7月12日(木曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省庁舎3階 特別会議室1

3.議題

  1. これまでの意見の整理
  2. その他

4.議事録

【小川部会長】
 おはようございます。定刻になりましたので、高等学校教育部会第10回を開催したいと思います。お忙しい中、委員の皆様には御出席いただきましてありがとうございました。
 それでは、配付資料について、まず事務局からお願いいたします。

【小谷教育制度改革室長】
 本日の配付資料は議事次第のとおり、資料1から資料4までと参考資料となっております。不足等ございましたら事務局までお申し付けください。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 それでは、これから議事に入りたいと思います。
 4月以降、今日配付しております「課題の整理と検討の視点(案)」について、3回ぐらいにわたって皆様から御意見をいただきました。この「課題の整理と検討の視点(案)」というのは、8月以降、これから本部会において高等学校改革についての個別的な課題や、振興方策等々について順次議論していくわけですけれども、そうした8月以降の議論の検討の方向性を示すものです。今日、いろいろな議論があるかと思いますけれども、個別的な課題等々についての踏み込んだ議論については、今言ったように8月以降の方で各課題や振興方策に沿って検討していきますので、今日はできましたら、検討していく上での課題がこういう形でいいのか、また、検討していく際の議論の方向性がこういうことでいいのかという、そういう大筋のところで皆さんから御意見いただき、できましたら今日御了解いただければと思っております。その点よろしくお願いいたします。
 最初に、今日の資料について事務局の方から説明をお願いできればと思います。よろしくお願いします。

【小谷教育制度改革室長】
 それでは、資料1を御覧いただきたいと思います。資料1は、第7回の部会から御審議いただいております「課題の整理と検討の視点(案)」につきまして、委員の皆様から、資料3において整理しておりますけれども、前回の会議で頂戴しました御意見、また会議後にメール等でお寄せいただきました御意見をもとに、小川部会長や部会長代理に御相談しながら事務局で修正案を作成したものでございます。前回からの見え消しの資料と、それを反映させたものを御用意いたしましたが、委員の皆様方には事前に送付させていただいておりますので、ここでの説明は見え消し版を使って、前回からの主な修正点を御紹介いたします。
 なお、赤の見え消しが内容の変更を伴うものでございまして、青の見え消しは構成の変更等により、記述の位置を変更したものでございます。
 それでは、まず目次を御覧いただきたいと思います。
 これまでの委員の皆様の御意見から構成を変更いたしまして、これまでは「高等学校教育の課題」の次に、「今後の施策の方向性」という形で議論を進めておりましたが、その間に「高等学校教育に期待されるもの」という柱を立てております。
 それでは、1ページをめくっていただきたいと思います。
 「高等学校教育の現状」でございます。こちらの記述につきましては、1ページの後段から2ページを御覧いただきまして、この2ページの前半まで、先ほど御紹介いたしました「高等学校教育に期待されるもの」の中に移動しております。その上で2ページの30行目でございますけれども、前回の安彦部会長代理の御指摘から、大学入試の影響についての記述を追加いたしました。また、35行目からは、小杉委員の御指摘から職業学科についての記述を追加しております。
 おめくりいただきまして、3ページを御覧いただきたいと思います。28行目から4ページにかけまして、安彦部会長代理の御指摘から、学年制によらない単位制高等学校制度の創設についての経緯を追加しております。
 おめくりいただきまして、5ページを御覧いただきたいと思います。高等学校教育の課題についての記述でございます。安彦部会長代理の御指摘から、9行目から、青年期特有の問題について、また、14行目から専門学科についての記述を追記いたしました。
 また、21行目からも安彦部会長代理から御指摘のありました、学校に着目した記述を生徒に着目した形で整理をし直しております。
 おめくりいただきまして、7ページ、8ページを御覧ください。
 新たに設けました「高等学校教育に期待されるもの」についての記述でございます。この青字の部分は、先ほど申し上げました1ページ、2ページから移動したところでございます。その上で6行目からは、安彦部会長代理の御指摘から、後期中等教育の時期に生徒が期待されていることについて、思想的な自立、社会的な自立といったキーワードを用いながら追記をさせていただきました。
 また、34行目の丸でございますが、生徒一人一人に応じて、できる限り幅広く柔軟な教育を実施する必要があること。そして、最終行からは、安西委員からの御指摘もいただきまして、8ページにかけて、今後の高等学校教育は、どの高等学校においても、生徒の自立に向けて、全ての生徒に最低限に必要な能力を身に付けさせるとともに、生徒の適性や進路等に応じて必要となる資質・能力を身に付けさせることが期待されること。特に生徒に対応した教育を行うにあたっては、これからの時代の有り様を見据えて、各学校が地域の実情や生徒の希望等を踏まえて、目標とする人間像を明確にした上で、教育を行うことが期待されることを明記しました。
 ここで、これまで「人材」としておりました表現は、安彦部会長代理の御指摘から、生徒の視点に立った記述とすべきところは「人間」という形で改めております。
 おめくりいただきまして、9ページを御覧いただきたいと思います。今後の施策の方向性についての記述でございます。ここでは、高等学校教育に期待されるものが全ての生徒に最低限に必要なものを身に付けることと、生徒に応じて必要な質・能力を身に付けることの二つにあることに沿った形で全体の記述をまず整理いたしました。
 それに加えまして、19行目では、長南委員の御指摘から14行目の支援の具体的な記述をしていることを明確にするために、19行目に「具体的には」という形で追記をしております。
 さらに、10ページの方を御覧いただきたいのですが、12行目の丸では、荒瀬委員の御指摘から、単位認定を厳格に行うことについて追記をいたしました。
 おめくりいただきまして、11ページを御覧いただきたいと思います。1行目からの表現や8行目の丸も、先ほど申し上げました方針で整理いたしまして、13行目以降は、安彦部会長代理や川嶋委員、長塚委員、和田委員の御指摘から、各学校が目標とする人間像についての説明を追加いたしました。27行目の丸も同様の対応をとっております。
 12ページを御覧ください。12行目の丸でございますが、こちらも安彦部会長代理の御指摘から、心身の発達の視点などについても留意事項として追記をいたしました。
 おめくりいただきまして、14ページを御覧いただきたいと思います。高等学校教育の質保証についての記述でございますが、及川委員や川嶋委員、小杉委員の御指摘から、この部分の記述もこれまでの記述の流れに沿う形で、コア、そして、それ以外の部分という順序で展開するように整理し直しました。
 おめくりいただきまして、15ページを御覧ください。安彦部会長代理の御指摘から、17行目より、質保証の留意点に単位制と学年制についてどう考えるかということを追記しております。
 そして、16ページから19ページにかけましては、各種の振興方策についての記述でございます。ここでもこれまでの記述に沿う形で表現を整理し直すとともに、学校ではなく、生徒に着目した形で記述するように表現を改めました。
 また、長塚委員の御指摘からこの検討事項の中で、検討という文言があったり、なかったりして表記がそろっておりませんでしたので、ここで挙げられております内容全体が検討事項の例であるということをより明確になるように、丸々の検討といった表現は使用しない形で表現を整理し直しました。
 また、これに伴いまして、巻末の表の表現も本文に対応する形で修正しております。
 以上でございます。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 では、これから資料1に基づいて、皆さんからの御意見を伺っていきたいと思います。
 先ほど言いましたように、いろいろな個別の課題や振興方策等々については、もう少し踏み込んで書いたほうがよいのではないかという感想もあるかと思いますけれども、そうした点については、8月以降、個々の個別の課題や振興方策については、時間をとって順次しっかり審議を進めていきたいと思いますので、今日は8月以降、取り上げるべき課題の整理として、こういうことでいいのか、また、その課題を検討していくに当たっての視点や方向性というのが基本的にこういうことでいいのかという、そういうところで御意見をいただいて、今日御確認いただければと思います。よろしくお願いします。
 また、あと、これまではもう3回ぐらい議論してきておりますので、少し大括りで、前半、後半ということで御意見を伺えればと思います。
 まず前半は、1、現状、2、課題、そして、3、高等学校教育に期待されるものという、この1から3でまず御意見を伺いたいと思います。
 では、皆さんからどうぞ御意見いただきます。
 では、金子委員、どうぞ。

【金子委員】
 少し大括りな議論に戻らせていただいて、議論させていただきたいと思います。
 この部会は、高等学校教育を高等学校教育の中だけで考えるというのでは十分ではないという観点でできたのだというふうに私は理解しています。中教審の総会でも、そのようなことは議論になりました。それで、私などが入っているのも、日本の学校教育全体、あるいは日本の社会の中で、高等学校教育が十分な役割を果たしているかどうかということを問題にするというのが、本来のこの部会の問題意識であったのではないかと思います。
 少なくとも私は、この部会が設置された時には、そのように趣旨を理解しておりました。そのような観点から見ますと、その現状のところに日本の高等学校教育がどういう社会状況の中に置かれているという記述が全くないというのはどういうことなのでしょうか。
 この会議の一番最初の時にも話題にしましたが、日本の高校生は勉強しなくなったわけです。これは非常に重要な事実です。受験勉強をする人たちはある程度残っていますし、あるいは、前からある程度勉強しなかった人たちはいる。しかし、真ん中で従来勉強していた人たちのかなりの部分、文部科学省の資料には、ボリュームゾーンと書いてありますが、このボリュームゾーンに入る層が勉強しなくなっているわけです。今、日本の高校3年生で、家に帰って学習している時間は1時間以下という高校生が半分になります。要するに、小学校低学年と同じなんですね。それで、その人たちがそのまま社会に出ていったり、大学に入ったりするわけです。それでいいのかというのは非常に重要な問題点です。
 その意味で、状況がここ10年か、15年ぐらいの間に大きく変わっています。しかしここに書いてあるのは、ほとんどもう10年か、15年ぐらい前と同じ記述だと思うんですね。現在起こっている危機をどう考えるかということを考え直すのが、この部会のそもそもの趣旨だったのではないでしょうか。
 さらにこれには様々な背景があると思います。例えばその労働市場についても、ここでは全く記述がありませんけれども、バブルの時代は新規学卒の高卒への求人は60万人ぐらいに達した時代があるのですけど、今は10万人ぐらいと、6分の1になっているわけですね。それは産業構造が変わっているからです。
 日本の製造業は急速に外に出ていっています。それから、あまり気が付かれていませんけれども、通信技術の発展によって、今まで高卒事務職がやっていた業務というのが急速に減っているんですね。これはアメリカでもそうなのですけれども、日本でも急速に減っている。こうしたことから、高卒に関しては、労働需要はすごく減っています。結果として、高卒の就職状況に非常に問題が生じている。従来のように、長期的なキャリアに結び付くような就職ができる高校生というのは多分、就職している人たちのうちの半分にもいかないくらいの状況だと思います。
 また高校3年生の勉強時間が少ないということは、大学教育にも非常に大きな影響を与えている。私どもは前から高校3年生の追跡調査をやっています。それによると高校3年生で、家での学習時間が1時間以下の生徒は、その影響は大学卒業まで残るんですね。大学に入ってからの学習時間が、やはりほかの生徒の学習時間と比べて1割ぐらい低い。また大学卒業後、1年に追跡調査したアンケートを見ても、大学が役に立ったという実感がやはり非常に低いんですね。就職率も悪いです。それから、就職先に対する満足度も低い。高校での学習時間の低さが結局、大学教育が意図しているものを十分に吸収することができない、という結果をもたらしていると思うんですね。
 そういう意味で、高等学校教育は非常に重要な、具体的な影響を与えているわけです。そういうことに対してどう対処をしていくかが、私は非常に大きな問題だと思います。その危機感について、全く記述がないですし、それをどう捉えていくのかという姿勢をちょっと伺うことはできません。ここに書いてあるのは全て、高等学校教育一般、あるいはこれまでの高等学校教育の経緯であり、新しい状況にどう対応していくかというところが、十分に語られていないのではないでしょうか。
 今後の検討課題という部分には、議論の過程で話題になったこととして記述は合いますが、その一例としてではなく、こうした新しい状況に高等学校教育がどのように対処していくのかが問題なのだ、という点が明確に述べられていなければ、その先を議論する基礎にもならないと思います。
 もちろん教育課程が変わっているわけですし、それを確実に実行していくことも課題なのでしょう。ただ、そういった順序だけを考えていたら、高等学校教育の抜本的な改革は10年後になってしまうんですね。それでいいのか。現在の政策課題と同時に、その根本に戻って、立ち返って考えなければいけない根本的な危機の検討こそ、私は並行していても決しておかしくはないと思います。
 もう一つ、PISAの調査結果が話題になっています。これは今まで初中教育の問題だとして捉えられてきていますが、実際の対象は高校1年生なので、高等学校教育にとっても非常に大きな問題を提起しています。PISAの調査を見ていて分かりますのは、日本の高校生の間に分化が激しくなっており、国際水準に照らしても学習時間が少ない、学習意欲がない生徒が相当あることです。私は、これは大変な問題だと思うんですね。高校生になって学習意欲がないんですよ。高等学校は、それについて正面から対処しているのか。いまだに高等学校での学習のモチベーションになっているのは大学入試です。入試の圧力が及ばないと勉強しないという構造。その構造を、何となくそれが当たり前というふうに思われてきているのですが、私はそれ自体に遡って考え直さないと、将来の高等学校教育を考えるということはできないと思います。
 冒頭にあまりひっくり返すような議論をしてはいけないと思いますけれども、そういった基本的な認識についての記述を入れていただきたい。それは今後の具体的な方策に関する議論に結びつくと思います。
 以上です。

【小川部会長】
 はい。ありがとうございました。
 今、金子委員がおっしゃったような点については、この部会ではいろいろなデータ等々を出していただきながら、いろいろなヒアリングの中で議論として出てきていたと思っています。それで、そういう点については、この部会では議論、指針に対しては、現状のそうした危機的な状況についての問題意識は共有はされていたかと思うのですけれども、確かに金子委員がおっしゃったように、この現状のところについては、そうした部会で議論されたところがきちんと書き込まれていないのではないかという指摘は正にそうかと思いますので、その点は少しきちんと踏まえて、現状のところに書き込みたいと思っています。

【小谷教育制度改革室長】
 すみません。部会長。

【小川部会長】
 はい。どうぞ。

【小谷教育制度改革室長】
 現状のところでは、確かにこれまでの経緯などが中心になっており、書いていませんが、5ページの高等学校教育の課題では、正にその学習時間の減少の問題ですとか、産業構造の変化や技術革新、情報化の問題ですとか、金子委員が従来から御指摘いただいております御意見も入れております。構成上、こちらの課題を現状に持っていくのか、その辺りの表現ぶりなのか、そこはもっと厚くするのかということだと思うのですが。

【金子委員】
 私は、最初の部分が、これまでの経緯や現状についての認識の記述にとどまるのではなく、そこでどのような問題が生じ、どのような課題が出てきているのかを明確に述べていただきたい。この報告は何を狙うのかということですよね。単に今までの高等学校教育の経緯を記述するということでいいのか。しかし、それであれば、例えば教育課程の審議会などでもやっておられるのではないか。この高等学校教育部会が、わざわざ中教審の一部会としてできているというのは、必ずしもそういった問題意識の枠内にとどまるものではないと思います。そういった意味で、課題の現状の認識自体に、そういった現状の問題点を私は掲げるべきだと思います。
 以上です。

【小川部会長】
 はい。よろしいでしょうか。今、高等学校の問題とともに、大学分科会や大学教育部会で大学改革について議論されていますけれども、私も教育振興基本計画部会で、間接的にですけれども、そうした大学分科会とか大学教育部会のいろいろな議論を聞く機会が多いのですが、大学分科会、大学教育部会の議論の前提として、今、金子先生がおっしゃったように、大学教育をめぐる、ないしは大学生の学習状況をめぐる、かなり深刻な危機的な認識を共有しながら議論をやっているというのが、すごく印象的だったんですね。確かにそういう状況等を想定すると、この部会でもかなりいろいろなデータに基づいて、皆さんで議論してきており、問題意識は共有してきたと思うのですけれども、この現状のところへの反映という点では少し書き込みが足りなかったのかなと思っています。今の金子委員の意見を踏まえて、その辺はしっかり書き込みたいと思っています。事務局の方もよろしくお願いいたします。
 ほかにいかがでしょうか。では、小杉委員、どうぞ。

【小杉委員】
 ありがとうございます。私は、高等学校教育に期待されるものの中の、多分後半の方になるかと思いますが、職業的自立というキーワードも是非入れていただきたいと思っています。職業的自立という言葉は、どうもその専門高校の中の職業教育だけにかかるように理解されがちですが、そういうものではない。普通高校も含めて将来の職業に向けての、職業的自立に向けての準備と言いますか、「向けての」という話になりますが、実際に自立するのは卒業した後の話ですので。今の金子委員のとも少し重なってきますが、職業的自立に向けての力という時に、産業界で今非常に重要とされているのは、実は学習力なんですね。学び続ける力。やはり変化の大きい社会の中で、目の前の仕事をこなしていくための専門的な力というのに加えて、変化に対応するために学習し続ける力というのが非常に重要な要素と指摘されているところです。
 そういうものまで含めて、職業的自立に必要な力というのを高等学校段階に身に付けるということは、普通科教育も含めて非常に重要なポイントだろうと思います。これは多分、前半の発達段階の話とは少し違うので、今後の位置付けの中のどこかに入ってくるものだと思うんですが、そういう職業的自立というキーワードがここに入っていることによって、後半の方の社会的、職業的自立に必要な力というのにつながってくるのではないかと思いますので、御検討いただければと思います。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 ほかにどうでしょうか。では、荒瀬委員、どうぞ。

【荒瀬委員】
 今、小杉委員がおっしゃった職業的自立というのは、正にキャリア教育・職業教育特別部会の中で、キャリア教育とは何なのかという時に、社会的・職業的自立を促す教育であるという定義をしたのですから、その意味では、今、全く小杉委員のおっしゃることに私も賛成です。かつ、また、金子委員がおっしゃったことというのは、私もとても重要な点だと思っていまして、この見え消し版の2ページの23行目から、「例えば」とあって、学力面については、「小学校及び中学校の学習内容を十分に修得していない生徒も少なからず見られる」ということが書かれていますけれども、実は左のページ、1ページのところに学校教育法の51条が引用されていますが、義務教育として行われる普通教育の成果を更に発展させて高等学校教育はあるということでありますので、実際のところ、高等学校教育の前提となる義務教育にも大いに言及しなければ、高等学校教育についての課題や現状といったものも見えてこないのではないかなと思います。
 高等学校教育と大学教育とをどのように接続させていくかということは、この後にも書かれていますが、そのことと同様に小中学校の義務教育と、それから、高等学校教育、いわば初等中等教育全体を見据えた上で、しかし、それによって高等学校教育をどうするのかという焦点がぼやけないようにしながら、気を付けながら考えていかなければならないのではないかなということを思います。
 4月から教育委員会にまいりまして、中学校教育の現状をいろいろと見てまいりました。高等学校におりました時には、一部しか見えていなかったものが、全体として中学校教育がどうなっているのか、それをまた支えている小学校教育がどうなっているのかというのを見ていますと、様々な努力というのがあるのは当然なのですけれども、やはり課題もたくさんあるということをつぶさに知ることができました。そこから考えますと、正にキャリア教育の観点ということにも照らしてもそうなのですけれども、この全体の書きぶりが、「学校が」というのではなくて、「生徒が」とか「一人の人間が」という視点で見ていこうということであるならば、正にその一人の人間が小学校、中学校、高等学校、各学校段階でどういう力を付けていき、将来、社会に出ていき、自立的に生きていくのかということに視点を置き、先ほども申しましたように、高等学校教育を対象にしているのに、それが曖昧になってしまってはいけないですけれども、しかし、その前提の義務教育の部分を考えていく必要があると思っています。高等学校の現状はそこから生まれているというのも、これは言えなくはないというふうに思っております。

【小川部会長】
 ありがとうございました。小林委員、どうぞ。

【小林委員】
 あと、この中でお願いしておきたいのは、やはり日本はものづくり国家だと思うんですね。私の資料の中にもありますけれども、ものづくりを教える教科が実はほとんど少ない。やはり全国98%の子供たちが高等学校に進学している現実の中で、やはり家庭科という教科はありますけれども、技術系の、いわゆるものづくりについては一切勉強することができていません。現在、情報はソフトウェアあるいはハードウェアが非常に進化していまして、今、情報教育を教える中身は、どちらかというと、倫理観とか、これをやってはいけないというルールを教えるのが主体で、ソフトウェアの中身を教えるなんていうのは、もうとてもではないけど、できていないのが現実です。
 ですから、そういうことも含めて、高等学校教育の中で、その情報と技術を合体したようなことにつながるようなものづくり教育の文言ももう少し入れていただければありがたいなということと、それから、今、荒瀬委員が言いましたけれども、私、工業高校から見ていますと、中学校の技術、家庭科の時間が戦後一貫してずっと減っているんですね。これはとても耐えられない現実でありまして、約300時間ぐらい勉強してきた子供たちが今は80数時間でもう終わってしまいます。この中で、ものづくりを楽しむとか、創意工夫するとか、失敗した経験を生かして、次に何かするんだというような体験は、若いうちこそできるのであって、それをないがしろにしている今の初等教育はやはり改善してほしい。そのためにもこの高等学校教育部会が何らかの提言で向こうに押し出しができれば大変私はありがたいと思っています。
 是非ものづくり教育のことについても少し触れていただければと思います。

【小川部会長】
 ありがとうございました。では、野上委員、どうぞ。

【野上委員】
 私は経済界の人間ですが、グローバル化が進行する中では、日本経済、そして現行の日本の教育には課題部分があるという指摘は、的を射ていると思いますが、一方で、日本経済のシステム、特に人材育成システムに高い関心を寄せる世界的企業が多数あることを承知しています。例を一社挙げますと、カルロス・ゴーンさんが率いる日産であります。彼は日産に乗り込んだ際、出身母体のルノーの人事システムを導入することなく、むしろその後、日産のシステムをルノーに持ち込んだのです。この人事システムは、何も日産固有のものではなくて、戦後、多くの日本企業が持ち合わせているものであります。そのシステムによって創出された人材こそ、日本企業発展の源泉なのです。
 では、その人材ですが、かの世界的経営学者ピーター・F・ドラッカーも指摘しているように、日本企業には技能労働者でありながら技術に精通する人材、つまり、他国に例を見ないテクノロジストの存在があります。少し具体的に言いますと、日本の製造業の現場では、何か問題が発生すると、技能労働者は自分が関わった工程で、技術者の指示、設計どおりでなかったことがあったのではないかと、また、技術者にしてみても、不具合は自分の設計に問題があるのではないかと、それぞれが課題は自分にあると、相手をおもんばかる人材の存在であります。では、いかにして日本にこうした人材の存在があるかと言えば、私は明治維新以降の教育、とりわけ戦後教育の中に、育成の要因、源泉があると思っています。
 したがって、現在行われている議論を何ら否定するものではありませんが、これまでの日本教育の良さをベースに議論を展開していかねばならないと思います。その日本教育の良さは、教育の現場にあります。先生方が意識しているかどうかは分かりませんが、数学の先生が数学だけ、国語の先生が国語だけを教えるのではなくて、生徒に日々接する中で相手をおもんばかることを、また誠実さ、真面目さが大切であるということを、明治維新以降、戦後教育の中で取り組み、育んできたからこそ得られたと思っています。ですから、そうした人材を育成してきた教育の良き部分を見失わないような制度設計をしなければならないと思います。

【小川部会長】
 ありがとうございました。ほかにはどうでしょうか。1から3までの内容に即して何かございますか。渡邉委員、どうぞ。

【渡邉委員】
 先ほどの小杉委員さんの御意見に、私もそのとおりだと思います。4月から埼玉県の普通科と総合学科、工業科の三つの学科を有する学校で、生徒の就職支援の仕事を担当しているのですが、民間の企業の方、特に採用担当の方と結構お話をする機会がございます。採用に当たりどういう生徒を望むかということで、私の方ではいろいろお話を伺うのですが、「専門的な知識や技能を持っているのはもちろんありがたいけれども、それよりも企業に入った後も新しいものを求めて学び続ける、そういう意欲のある生徒が欲しい。」こんな答えが多くの企業の方から返ってきます。そういう意味で、小杉委員が先ほどお話になったような記述について、私も是非入れていただきたいと思います。
 以上でございます。

【小川部会長】
 ありがとうございました。ほかにはどうでしょうか。

【安彦部会長代理】
 それでは一言。今日はむしろ委員の先生方から御意見いただきたいという気持ちなのですけど、今、金子委員のお話などで、前半のというか、3までの記述が不十分だというのは私も同感なので、前から似たことは申し上げてきたのですけど。ただ、全体としてはひとまず、それこそ何十年も前の高等学校教育の話を書いているにすぎないと言われますと、全くある意味で、僕もその点は同じ認識なんです。つまり、逆に言えば、我々の認識はほとんどその頃から変わっていないのです。そういう意味で、おかしいと言いますか、むしろそれが前提になっているくらい、大学分科会でも言いましたけど、高等学校関係の人たちというのはどちらかというと内向きで、鎖国状態というか、開かれてなくて、ごく一部の本当に、荒瀬先生とか及川先生のような方は意識してはおられると思いますけど、正直、私もこの1か月ぐらいあちらこちらで高等学校の先生に、特に進路指導の先生と出会っていますけど、本当に相変わらず、どこどこ大学に何人入れるみたいな話ばかりですよね。
 ですから、正直、例えば5ページのこの生徒の3類型を示されていますけど、もうここでこれ以上は言いたくないのですけど、全体にやはりこういう書き方しかできないということへの失望感。つまり、何が言いたいかというと、現状はある意味で分かりやすいのですけど、言ってみれば、その現状を前提にしてそれを文字化しただけで、何も新しい視点でもって捉えるというものがないわけで、正直このまま三つの類型を読むと、まるでこの生徒たちは、大学へ入ること、就職すること、そのことが目的かのように思われてしまうような誤解を生む。これはある意味で、みんな手段ですよね。自分の人生を創る上で。あくまでも、子供の側からすれば、そういう意味で、どこどこ大学へ行くなんていうのは手段にすぎないのに、まるで、そこへ入ることが自己目的化していくような、今の現状の多くの保護者及び子供たちの認識をそのまま書いただけになるわけですね。そこに何らか問題意識を持たせるような書き方が欲しかったわけです。
 そこがやはり、ここはとりあえず現状あるいは課題という、問題状況だという視点で書かれているので、これはこれでいいと思いますが、これは乗り越えるべき視点であるという、そういう認識で押さえておいていただきたいと思う。そういうことも含めて、金子先生あるいはほかの委員の方に、もっとこの1から3までのところというのは、正直、私も全体読み終わった時点で、文章としても分量は少ないし、全体にやはり、もうちょっとぐっと踏み込んだ文章が、この2倍近くぐらいは書かれてほしい、そういう印象を持ちました。
 この点、是非事務方に努力していただければというふうに思います。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 どうでしょうか。それでは、一度また全体を通して御意見伺いたいと思います。
 それでは、1から3を終わって、今度、4から7ですね。方向性、また、質保証、各種の振興方策、そして、高大接続ということで。そして、最後の添付資料で、今まで本文の中で検討事例ということで掲げられているものを、少し速やかに実施する事項と、今後、具体的な検討を行う事項ということで、少しこの辺のところは整理している状況もありますけれども、それも含めて4事項について御意見を伺えればと思います。
 いかがでしょうか。長塚委員、どうぞ。

【長塚委員】
 私の方から2点ほど。
 まずは4番の、11ページでしょうか。これは内容というより表記の仕方の問題だと思うのですが、13行目に、「私立学校においては建学の精神に基づいて」と、私立学校のことも書き込んでいただいていることはありがたいと思うのですが、次の行に、「必ずしもそれは各学校ごとに単一のものとして定められるものではなく」という表現につながってしまっています。私立学校の建学の精神というのは、単一であったり、むしろ独自であったりするものであって、この「それは」というところは、上の方にあるいろいろな事例のことを言っているのだろうと思うのですが、私学においては、ももちろん建学の精神の下でいろいろ内容を目標としています。ここで言えば人材像を目標としているケースはあるわけですが、少しここは誤解を招きやすいと思います。私立学校はそもそも独自の建学の精神に基づいているのであって、上にあるような事例に必ずしも入らないものを人材像としている場合もあります。その辺を少し表現の仕方を工夫していただきたいなというふうに思いました。
 もう一点ですが、これは先般、大臣が発言されたという、早期卒業制度の問題です。今回これを議論するということで、前回、資料なども配られておりましたので、私の方から意見を事前に出させていただいております。具体的には、18ページの27行目のことでございますが、「単位制をより重視することにより、高等学校段階において、厳格な成績評価の下で通常の生徒よりも優れた成績で単位を修得した者について、早期の卒業を認める制度の創設」と書いてあります。「創設」と言い切った形で、特にマスコミなどでかなりセンセーショナルにこの高等学校早期卒業制度が創設されるものとして報道されましたが、それは今後この会議などでも議論することなのだということで、修正のお話がありましたけれども、非常に重要なことだろうと思います。やはりそういうふうに誤解されるというのでしょうか、いわゆる6・3・3制を半ばひっくり返すようなことにつながりかねないことでございますので、極めて慎重に扱っていただきたいと思います。この「創設」と本当に言い切っていいのか、全体の括りとして検討ということになっているということでありますので、検討事項であるというふうに強く認識していただきたいというのが私の考えでございます。
 そもそも、意見の方で述べておきましたけれども、詳しくは事例ごとに8月以降、また論議するということですので、その席にまた譲りたいとは思うのですけれども、この早期卒業の前提になっていた飛び級、あるいは飛び級の前提になっている大学の学習を高校生がいかにするかという方法論については、例えばアメリカなどでは、6割の高等学校においてアドバンス・プレイスメントで大学の学習ができるようになっていると聞きます。つまり、高等学校に在学しながら大学の勉強をして、大学の初年次の勉強などができていくというわけです。そして、大学には2年、3年という学年次に編入できるというような、そういう仕組みの方がむしろ優勢であって、それに対して特別にごく一部の生徒の問題というものが、ここで飛び級ということで取り上げられていると思います。全体の生徒にそういう大学の学習ができるようなことがまだできてもいない中で、一部の生徒の問題だけにいきなり行っているのはどうかなということです。
 そもそも日本の高等学校では、確かに5年で高等学校の教育課程を終えることができるような仕組みと言うのでしょうか、実態があるのだろうと思いますが、それはやはり大学受験に備えて早くやっているのであって、決して5年間で大学の初年次の学習をしているわけではありませんので、大学入試に備えての問題というのが非常にあるということです。それがある以上、本来、大学の学習を早めにすることができるような仕組みと言うのでしょうか、実態には変わっていかないのだろうというふうに思います。
 もしそう言いながらもこういう制度を創設してしまいますと、例えば2年制で卒業できる高等学校とか5年制中等教育学校とかそういうことを考えられなくはないわけでありますので、例外の救済規定が本来の原則を覆してしまうようなことにならないようにすべきです。ここで問題にされているのは、特に才能のあるすぐれた資質を有する者を対象としているのだということをここにも書き込んでいないものですから、大変心配したわけです。単位を早めにすぐれた成績で修得すれば、もう2年で卒業できるのだというだけであれば、これは本当に6・3・3制の制度をひっくり返すことになりかねないと思います。やはり限定して、特にすぐれた資質を有する者を対象とした場合のことであるということの表記が、ここは必要なのではないかということを強く感じました。
 私の方からは以上でございます。

【小川部会長】
 今、長塚委員が後半の方でお話しされた早期卒業制度の問題については、これは前回ですかね。作業部会で事務局の方から、それを検討する上での論点や課題を整理していただいた上で、これはこの作業部会で慎重に今後検討していくということで了解をいただいております。
 ですから、確かに今のようなお話を伺うと、ここの18ページの29行目でしょうか。例えば早期の卒業を求める制度創設の検討とかというふうにしていただければという趣旨として受けたのですが、そういうことでよろしいでしょうか。

【長塚委員】
 はい。正にそのとおりです。

【小川部会長】
 なるほど。分かりました。
 事務局の方、よろしいですか。そういう御意見もあるのですが。

【小谷教育制度改革室長】
 すみません。それで、冒頭御説明いたしましたように、確かに例えば今回直したところで、何々の検討と書いたところもありましたので、そういったことであるならば、当然ここも検討だろうと。そのとおりなので、逆にそれを書きますと、全てについて何々の検討と書かなければいけないので、今回はそういった表記を全て統一して、この6から9が全て検討事項例であるという前提に立って、あえて全て検討とは書かないという形で整理をさせていただきました。

【小川部会長】
 なるほど。ただ、この間のいろいろな反応等々を見ますと、やはりそういういろいろ危惧する御意見もありますので、これは少し事務局の方で表現ぶりは検討させていただければと思います。
 それでは、川嶋委員、どうぞ。

【川嶋委員】
 全体の方向性ですけれども、全体の文章あるいは前半の先ほどの議論のところで、これまでずっと高等学校教育への進学率が98%で、高等学校が非常に多様化している。そのため、義務教育程度の学力のない生徒も受け入れざるを得ないというような、ある意味、非常に後ろ向きの表現がたくさんある中で、最後の最後で、共通に身に付けさせるべきコアをきちんと定めて、それに基づいて質保証しなければいけないという表現があり、最後のところで、前向きの表現が入り、全体の方向性としてはこれでいいのではないかと思います。問題はここに書かれておりますけれども、共通に修得を求めるコアとは何かということが、これから大きな議論になるのだろうと思います。それから、もう一つはどうやってそれを質保証していくか。
 そのコアについては、いろいろこれから議論があるところだと思いますが、それを考える際には、先ほどいろいろな委員からも御意見があるのですが、教育制度の中だけで考えるのではなくて、やはり社会経済そのものが大きく21世紀になって、あるいはこれからも大きく変わっていきますから、そういう将来の若者が生きていく社会がどう変化するかということを見据えた上で、そのためにどういう力を身に付けさせていかなければいけないのかということを考えて、そこからコアというのが導き出されるのだろうと思います。その点で言えば、やはり高等学校教育だけではなくて、小学校からずっと大学教育まで一貫した形でそういうコアとなる力を育成していく必要があるのだろうと思います。
 そういう点では、先ほどからも多少議論が出てきていたのですけれども、最後のところに7で高大接続の項が出ているのですけれども、先ほどから議論を聞いていると、高大接続のみならず、やはり義務教育と高等学校教育の接続ということもきちんと考えていくということがこれから必要なのだろうと思います。その点が、今回のこの整理されたものから欠けているのではないかと、御議論を聞いていて感じました。
 あと一点だけ、些細なことですけど、15ページの丸3の到達目標の達成度をどのように把握するかというところで、例が三つ挙がっているのですが、前の二つは活用や実施・活用となっているのですが、3点目は、指標の組み合わせに関する実施モデルの検討と書いてあって、少し書き方が上の二つと最後の3番目、違うなと思います。それから、指標の組合せに関する実施モデルの検討というのは、具体的に何を意味するのか今一つよく分かりませんので、少しここの説明と書き方を工夫していただければと思います。

【小川部会長】
 事務局の方から何かありますか。

【小谷教育制度改革室長】
 工夫させていただきます。

【小川部会長】
 それでは、よろしいですか。

【川嶋委員】
 はい。

【小川部会長】
 ほかにどうでしょうか。及川委員、どうぞ。

【及川委員】
 今ありましたように、コアについてのことです。前半部分の8ページのまとめで、コアという言葉は出てきませんけれども、コアの考え方と、目標とする人間像を明確にした上でとして、基本的な今後の方向性が9ページから示されています。そのコアの部分の考え方なのですが、10ページに20行目の上の白丸ですけれども、そこにコアをどのように考えていくのか検討が必要であると書いてあって、その次に、コアとは別に、個々の学校が当該学校の特性に応じて、つまり目標とする人間像に応じてということだと思うのですが、修得すべき内容を定めていくということが書かれてあります。さらに、25行目に、例えばとして社会的・職業的自立、社会・職業への円滑な移行に必要な力といったようなことが出てきます。この「例えば」として示される中身が、コアに当たる部分なのか、それとも個々の学校の特性に応じて検討すべき部分なのかはっきりしないと思います。
 ところが、14ページに参りますと、20行目にコアをどのように捉えるかと書いてあって、コアとして考えられる例として25行目に示されているので、先ほどのことは、コアとして示されているものだと理解できます。それから、16ページに行くと、やはり同じように、16行目にそのような記述が出ていますから、コアの内容であると理解できます。
 しかし、また10ページに戻っていただいて、25行目に書かれているような社会的・職業的自立や社会・職業への円滑な移行に必要な力とは、欄外の注に出ているような基礎的・基本的な知識・技能、基礎的・汎用的能力、論理的思考力・創造力、こういったものを具体的に指していると思われますが、これは明らかにコアとして全ての生徒が身に付けるべきものであるという位置付けになっていると思います。
 少し長くなって申し訳ありません。そして、10ページには、29行目に、資質・能力という言葉があって、次の11ページには今まで出ていた目標とする人間像に応じた資質・能力が示されています。全部、資質・能力の育成ということなんですね。こういう書きぶりだと、10ページの欄外に書かれてあるようなものがコアとして示されているにも関わらず、目標とする人間像に割り当てられている、振り向けられているという印象を与えます。目標とする人間像に求められる資質・能力ということになると、コアの趣旨とは違ったものになってしまうのではないでしょうか。
 何を申し上げたいかというと、14ページに戻っていただいて、コアの捉え方として、22行目に、指導内容として定めるか、身に付けるべき能力や態度として定めるかということが出ていて、後半の書きぶりで言うと、コアについての考え方は、どちらかというと、身に付けるべき能力や態度の部分でコアが検討されようとしているというふうに感じられるんですね。コアとして考えられる例として示されているのは、市民性を含めて能力や態度です。しかし、22行目にあるコアの考え方として、指導内容として定めるかという観点もやはりあり得るのではないかと思います。
 それは先ほどから出ている高大の接続の観点からもそうでしょうし、それから、私は、金子委員のおっしゃったような学習意欲の欠如というのは非常に深刻な問題だというふうに現場としては考えています。そういう意味では教科内容であるとか、指導内容という観点からコアを考えてみる必要があるのではないかと思います。まとめますと、コアの考え方が今のところ、能力や態度といったところの方にシフトしているように思うのですが、指導内容という観点からも検討していく必要性があるのではないかということです。
 以上です。

【小川部会長】
 正にそういうことを8月以降、やるつもりですけれども、確かに10ページのところの、例えばの事例は、読み方によっては、コアの在り方ではなくて、後半の個々の学校の当面のということも含めてなので、この辺のところは後の記述と対応できるように書きぶりは少し工夫したほうがいいかと思いますけれども。

【小谷教育制度改革室長】
 はい。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 荒瀬委員どうぞ。

【荒瀬委員】
 12ページですが、15行目に「観の自己形成」という観点から、という言葉があります。これは安彦先生がこれまでも何度もおっしゃられたことに基づいてということですが、このままだと少し意味が十分に伝わりにくいのではないかなと。少し例を挙げていただかないと唐突な感じがするのではないかなということを思います。
 それからまた、16ページの18行目、キャリア教育・職業教育特別部会の時もそうでしたが、こうした話題になると常に「産業社会と人間」が例として挙げられています。「産業社会と人間」を否定するわけではありませんけれども、むしろ全ての高等学校においては、総合的な学習の時間で、学習意欲を引き出すような取組をしていくことが新しい学習指導要領においても非常に重要なポイントとしてあるわけですから、総合的な学習の時間をどのように活用していくのかということが、しっかりと挙げられていることが必要なのではないかなということを思います。
 それと、先ほど学校教育法の51条のことを申し上げましたけれども、日本の学校が求められているもの、よくフィンランドとか外国の学校と比較して、日本はどうのこうのと言われますが、学校として求められる機能が諸外国と日本の場合は少し異なるように思います。先ほど言った早期卒業についてもそうですけれども、高等学校が完全に単位制であって、授業しか教えないのであれば、それならば留学ももっとしやすいでしょうし、それからまた、早期卒業というのも単にこの内容をクリアしたからオーケーということで、単純にみんなが認められやすいものになると思うのですけれども、日本の学校、高等学校も含めて、求められているものはそれではないということが51条に示されているわけですね。ですから、その点から考えると、51条に書かれていること、これは学校教育法という法律に明記されていることであるわけですから、これがしっかりと実現できているのかということの議論が具体的に必要ではないかなと。
 各高等学校の教職員はここに書かれていることを責務としてやらなければならないし、ここで求められている力をどのようにして付けていくかについて考えていくような発信を高等学校教育部会からしていく必要があるのではないかなということを思います。

【小川部会長】
 安彦委員に少しお考えをお聞きしてもいいでしょうか。12ページの「観の自己形成」という、これは安彦委員の御意見を踏まえて記載されていたのですけれども、これは価値観とか人生の構えとかということかと思うのですけれども、いかがですか。

【安彦部会長代理】
 今お話にあったように、何か例示をしないと、というお話は是非そうしていただければと思いますが、これは何も私だけというのではなくて、むしろこの高等学校の学習指導要領を作る時に、現場の先生及び大学の先生から出たことの一つです。重要な高校時代の役割というか、それは、やはり人生観とか結婚観とかを、すぐ社会へ出ていく、将来が身近に感じられる頃に問題にする。大体その関心自体は中学校、思春期以後には芽生えますけど、中学校段階ではまだ断片的なんですね。けれども、中学校段階では断片的なものを、高等学校へ来るとやや身近になってきますから、つなげていって、自分の人生観を固めなければいけない、とりあえず固める方向性で動き出す。その時に今の受験体制がむしろそれを棚上げして、大学へ行くまで考えるなとか、そういうふうにさせてきている。そこがかえって今の生徒の意欲にせよ、全体の人間性の未熟さにせよ、そういうものを生んでいるのではないかということ。そういう意味で、正に人生観とか結婚観、職業観、社会観、歴史観など、もろもろの「観」について、関心がやはり生まれてきて、それをある程度固める時期、それが大学の一般教養の辺りの年齢までなのですけど、その時期にそういう関心が共通に生まれてくるのをすくい取って、いろいろその部分について考える時間を与えてあげたいという、そういう趣旨です。それを押し付けるのではなくて、その子供たちが自分で形成していく上で、いろいろな刺激を回りから与えていくということが必要。それがほとんど今行われていないのではないだろうか。ところが、むしろ逆にそれを棚上げさせておいて、受験勉強だけ、学力だけ付けるような方向になっているという、そういう趣旨ですので、そういう意味で例示を入れていただければと思います。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 ほかにどうでしょうか。あと、7のところ。北城委員、どうぞ。

【北城委員】
 まず17ページの15行目ですけれども、ここに校長裁量予算の導入やマネジメント能力を身に付ける云々と書かれています。管理職のマネジメント能力の向上と、後は裁量予算ということだけが書かれていますが、本質的には「学校運営に関する校長権限の強化や校長裁量予算の導入及び」というふうに書くべきと思います。校長先生に権限がない時にマネジメント能力を発揮すべきであり、これを研修だけで実現することは非常に無理があると思います。やはり校長先生の指示の下で教員が活動する。それを的確に実行しているかどうかを評価する。評価を処遇に反映するというようなことまで踏み込まなければいけないと思います。ここでそこまで書きにくければ、少なくとも「学校運営に関する校長権限の強化や校長裁量予算の導入」と書いていただいた方がいいと思います。後々の検討の中で、校長権限の強化というのはどういうことなのか考えていきたいと思います。そういうことを後で議論していただくということで、高等学校とか、初等中等教育におけるガバナンスを検討すべきです。運営責任者が何を責任として持たなければいけないのか、また、その責任を果たすためにどういう権限が必要なのかということを考えるべきです。いろいろここに書いても実際に行われる学校の現場でそれが実現できないのではないかという心配が1点目。
 それから、これは7で高大接続のことを書いていただいていますが、これは最初の現状とか現状の課題の方に関係すると思うので、先に問題ということを書いておいていただいた方がいいと思います。先ほどの小杉委員の意見にも出ていましたけれども、企業は自ら学ぶ意欲だとか行動する力があるとか、論理的に考えられるとか、そういう能力を求めています。これは高校生だけではなくて、大学生にも求めているわけです。現状の問題の中で選抜制の高い高等学校に関して言うと、大学受験が学ぶ動機付けになっていると言われています。しかし、大学入試が高等学校の勉強の動機付けになっているというふうに考えることには問題があります。選抜制の高い大学入試への準備というのはどちらかと言うと出ている試験問題に答える能力を身に付けるようになってしまう。それでは社会に出て活躍ができないという意味では、選抜制の高い大学に関して入試の改革をしなければいけないということです。一方で、選抜制の高くない大学に関して言うと、入試が高等学校で勉強する意欲に結びつかないということになってしまいます。したがって、この大学の入試の在り方を変えないと、高等学校の教育に大きなひずみをもたらせているという辺りを、最初の現状の問題の方に書いていただかないと、何で7番がここに出てきたのかというのが分かりにくいのではないかということです。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 それでは、長南委員。

【長南委員】
 19ページの二つ目のポツのところです。不登校の生徒を積極的に受け入れる学校の配置の促進という表記がありますけれども、よく考えると、これは必要なのかなという感じがしますね。最初から不登校生徒が出ることを予測しているというのは、不登校というのは普通ないことなわけですので、ですから、この表記は私は要らないのではないかというふうに思います。
 それから、そのページの一番下から二つ目のポツ、専門性のある指導体制の確保、ここはいいですね。教員支援員等の人事配置という、その教員支援員という、この用語もちょっと分かりにくいですね。どういうことをする支援員なのかですね。ですから、こういった読み手がどういうふうな理解をするのかと、また、それを読んでどういう行動に結び付けようとするのかという、そういうことも分からないような用語というのはやはり使わないほうがいいのではないかなというふうに思います。

【小川部会長】
 はい。どうぞ。

【金子委員】
 今の不登校のお話ですが、少し私は違う意見を持っていまして、実は私、改革特区の委員会に出ているのですが、通信制高校で実際今は不登校の生徒を受け入れることになっているのですが、かなり営利目的のところが多くて、非常に劣悪と言いますか、生徒が2,000人いるのに教師が16人しかいないとかですね。そういうようなところで、しかも、かなりもうけている。これはかなり今、日本にはそういった学校が多くなっていまして、これは盲点なんですね。ある意味では、それは我々の目からすれば、これは高等学校教育と言えるのかと思いますが、しかし、やっている人から見れば、それでは、この子たち、どうするんだと。ある意味で説得力があるわけです。これはやはり高等学校教育についての建前と現実というのが、非常に大きな乖離が、典型的に不登校の生徒の扱いに現れていまして、私は、これはやはり現実は現実として不登校になっている子が出ているので、この子たちに対してある程度の手当をするというのは、やはり政策としてきちんと位置付けるべきだと思います。そうでないと、結局その人たち、親も子供自身も何かのつながりを持ちたいというので、そういったことを求めるのでしょうが、そこで与えられている高等学校教育の機会は、実はかなり高等学校とは言いがたいものになってしまっているという現状があるわけです。
 ここの書き方自体については、いろいろとまだもう少し書き方はあるだろうと思いますが、少なくともそういった現実自体には対処するという姿勢はやはり説明すべきで、不登校児になるという、これは高等学校に入る人の1割近いですよね。これは相当大きな、10万人近い人たちが行くところがない状況になっているというのは、これは非常に深刻な事態でありまして、そういう意味で、何かの記述は必要なのではないかと私は思います。

【小川部会長】
 はい。分かりました。実際、不登校の生徒を受け入れている特区でそういう学校も設置されていますので、その辺のところは少し表現ぶりを工夫して、これはあくまで振興策の事例の一つですので、またその議論のところでそういう生徒の問題を扱う際に、集中して議論してみたいと思っています。
 一つは事務局に質問ですけれども、教員支援員というこの用語自体は使われているものですか。

【小谷教育制度改革室長】
 表現が十分ではないので、工夫させていただきます。

【小川部会長】
 そうですか。これも少し工夫してみたいと思います。
 ほかに、先ほど北城委員の方から高大接続の点についてお話ありましたけれども、安西委員、この20ページのところは基本的には高等学校関係者と大学関係者による合同の検討をするというのが、そういうことの趣旨が基本でして、その接続の課題等々についてはあまり踏み込んで書かれていないのですけれども、この辺は大体こういう書きぶりでよろしいでしょうか。

【安西委員】
 一つに、今、小川部会長が言われましたように、今後、高等学校関係の委員会と大学分科会等々がやはり密なコミュニケーションを持って、本当にこれからの時代の教育の考え方、それから、実際の政策につきましてもいろいろな提言をしていくという、そういう方向が見えてきておりますので、それは大変うれしいことだと思いますし、是非そういう方向に向けて一緒にいろいろな議論をして、実践というのでしょうか、そちらへ向けていければと思っております。
 その上で、高等学校と大学の接続の問題につきましては、大学入試が現実の問題としてそこを触らなければ何事も解決しないだろうというのは、そのとおりだというふうに思っております。ただ、その一方で、これはコインの裏と表というのでしょうか。高等学校の今議論のありましたコアについてです。高等学校を卒業する生徒であれば、こういう基礎的な知識、スキル、それから、人生の姿勢ということも含めて、やはりそれをどのレベルでどういう内容を身に付けているべきかという、そういうことが本当に具体的な方策として出てくるということをやはり仮定すべきだと思うのですが、その上で大学入試をどうするかということを考えなければならないと思います。
 それから、もう一つは、そのコア以外の、いわゆるジェネリックスキルとかコンピテンシーと言われているような部分について、それと大学入試の関係ということをどういうふうに見ていくのかということがあるわけです。そういうところは合理的にクールに、高等学校関係者側と大学関係者側、あるいは社会の側の方々が一緒になって、大学入試の在り方をもう少し詰めて、きちんと議論する必要があるのではないかと思います。
 私は大学の関係者に大学入試を変えないと、もうどうしようもないということを、それはかなり強く言っております。ただ、大学入試を変えるといっても、では、批判的思考力のそのレベルだけ見ればいいのか、ということになりますと、これは掘っていくと、やはりクールに考えて、入試の設計というのはここで議論されていることが煮詰まってくるということと関係があると思います。そのことは是非御理解いただければと思いますので、この書きぶりについてはもう少し今のようなことを書かれるとうれしいです。

【小川部会長】
 ありがとうございました。

【安西委員】
 大学入試を変えなければならないということ、そのことはそのとおりだと思います。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 ほかにどうでしょう。和田委員、どうぞ。

【和田委員】
 失礼いたします。今御意見いただいた高大接続の件ですけれども、そういうふうにおっしゃっていただいて、非常に心強いと言いますか、今まではほとんど大学入試というのは大学側の都合でといったら、高等学校側のひがみかもしれませんけれども、ほとんど高等学校側から何かアクションを起こすということはできなくて、受け身であったということがあると思いますので、是非そういう意味において、高等学校側からの意見もしっかり取り入れて議論していただければと思います。
 もう1点は、かなり大きい話なのですけれども、私学だからそうなのかもしれませんが、我々私学としてはやはりお客様、生徒及び保護者が来てくださらないと学校としては成り立っていかないという部分がありまして、そのニーズに応えるという部分が非常に強いわけです。
 そのニーズがやはり大学入試だということであれば、それにある程度対応していかざるを得ないというのが現状であります。そういう意味でも学校制度をどうするかという前に、日本の国としてそういう国民意識と言いますか、大学教育に対しての期待とか、それを受けたいという期待が大きいために、まず大学に入ることが大事だという考え方が広がっているように思えます。そこで、果たしてそういうことでいいのかというようなことを呼びかけるような提案から始めることが必要なのではないかなという気がしているところです。
 それを飛ばしてしまいますと、そういう国民のニーズに合わない教育改革ということにつながってしまう可能性もあるわけで、その辺も是非呼びかけていくような書き方をしてほしいなと思っております。

【小川部会長】
 ありがとうございました。今の最後のところもいわゆる現状のところの問題にも絡むところですので、少し確認したいと。
 それでは、安西委員、どうぞ。

【安西委員】
 すみません。今の和田委員のことも踏まえて付け加えさせていただきますけれども、やはり見方として、我々が持っていなければいけないのは、高校生あるいはこれから高等学校に入ってくる生徒たちが、やはり20年後、30年後にどういう社会で本当に幸せに前向きに暮らしていくことができるかという、そういう視点だと思います。学校教育法の第51条には社会という言葉がたくさん出てきまして、これを今までの社会というふうに見ずに、20年後、30年後の社会というふうに見るべきだと思います。
 その時には当然、今でもそうですけれども、産業構造は相当変わってきておりまして、それから、人口構成ももちろん変わってきています。そういう中で、もちろんグローバル化というのも、この中にもグローバル社会で活躍する、国際的に、と書いてありますけれども、グローバルという言葉が20年後、30年後に生きているかどうか。もう当たり前といいましょうか、そういうふうになっている可能性もありますし、高等学校を卒業して就職する、そういう生徒さんたちが外国からの流入してくる人たちとある意味競争になっている可能性も当然あると思いますし、そういうことを見極めた上での、想像した上での社会ということを考えて申し上げたいのは、コアについてです。コアを設計していく時に今までの高等学校教育あるいは現状の社会ということではなくて、今の高校生あるいはこれからの高校生がせめて30代ぐらいの時に一体どういう社会になっているかということを想定した上で、それではっきりしたそういうウォーム、温かいというのでしょうか、生徒たちに対するウォームハートを持った上で、クールに合理的な設計をきちんとするべきだと思います。そういう方向を早く出していただくということが大学入試に対する影響としても非常に大きいのではないかと思っております。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 それでは、小杉委員、どうぞ。

【小杉委員】
 コアということに絡みまして、コアという言葉でかなりあいまいに表現されているのが現状で、多分これをこれから8月から議論するということになるかとは思うのですけれども、職業的・社会的自立、移行に必要な力というのはコアの一つの例として挙げられていますが、ここで注意書きを見ていただくと分かるとおり、非常に広範なものを含んだものでございます。そもそものキャリア教育・職業教育部会の中でのこのキャリア教育というものの中で培うべき能力というような形で記載されたのは、特定の何かこう、象徴的には科目の名前を挙げていますが、特定の学科をつくってそれでやれというような話ではなくて、教育の捉え方自体を正に将来の個人の職業やキャリアあるいは産業界、職業界、労働界の要請するものという、そういう接点であるところとして、教育というそういうものの考え方で捉え直そうという、そういうものの見方、考え方ということにかなり立脚した概念だと思います。だから、これをコアというのは、確かにそういう考え方がどこの学校でも必要という意味では非常にコアなのですが、これを一つの教科、科目の中に落とし込んで、これはコア科目ですというような言い方に集中できるかというと、それも非常に難しい。コアという言葉の中には今のところ非常に雑多なものが入り込んでいるので、人によって多分捉え方が違っている。8月からの議論だと思いますが、これからが大変大事なところだと思います。

【小川部会長】
 正にそうです。では、どうぞ。

【安彦部会長代理】
 今、安西委員から言われたこと、これは本当に、私が今回この案で、「人材」という言葉をやめてほしいと言って、「人間」に変えてもらいました。これはやはり多くの方が、どこまでその意図をお分かりいただけたか分かりませんけど、今まで文部科学省に関わってきて、小中学校を中心に関わってきて、人材という言葉でこういう答申あるいはまとめがつくられたことというのはほとんどないはずです。経済産業省が作る文書であれば私は納得しますけど、やはり子供側の視点というのはきちんと入れておいて、今、安西委員は「温かな」という言葉を使われましたけど、そういう個人的な部分と社会的なものを背中合わせにした、接点となっているところが教育的視点でして、そこをやはり外さないでほしい。だから、この「人材」という言葉が、高等学校ぐらいだと多少いいのかな、多くの人は割合抵抗ないのかと思いましたけど、特に大学だと、もうある程度大人である学生が前提なので、自分でそういうことを突き放して考えますからいいのですけど、高等学校まではやはりまだ、そういう小中学校の連続で考えますと、この言葉で全面的に書かれたりするというのはすごい抵抗があったわけです。
 前からずっと気にはなっていたのですけど、ほかの委員、どなたもおっしゃらないので、ある時点でやはりはっきりと言わなければいけないのではないかと思って申し上げたので、悪者になったような気がします。ですから、今、安西委員のお話など伺うと本当にそういうことも含めて、やはり大学関係者でさえ、そういうふうにお考えですし、今後、今のコアの話もそうなのですけど、決して社会の側からだけでコアを見てほしくないし、子供たちが意欲的に前向きに未来へ向かって、希望を持って関われるような力というのを育ててあげてほしいわけで、そこを社会の側からだけで議論するというのはやはり避けていただきたいというのが私の意図でございました。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 ほかによろしいでしょうか。後は荒瀬委員、川嶋委員、ほかにいいですか。では、最後に金子委員ということで、では、荒瀬委員からどうぞ。

【荒瀬委員】
 今、安彦委員から言葉についてのご指摘がありました。そもそもコアという言葉そのものが曖昧に使われているというお話もあったように思います。平成9年ごろに教育課程を考える時に、ベース、コア、オプションという三つの種類を考えました。ベースというのは基礎科目でありまして、学習指導要領上、絶対しなければならないという必履修科目をベースとして、では、コアは何かというと、その教育課程が生徒にとって円滑に進めていけるような、学習意欲を高めるような機会になる科目をコア科目というふうな位置付けをしました。これは学習指導要領が前回変わりました時に、その内容を総合的な学習の時間として構成し直しました。ですから、私のイメージで言うと、先ほど安西委員がコア以外の、いわゆるジェネリックスキルとかコンピテンシーと言われているような部分、とおっしゃいましたのに対して、私はそれこそがまさにコアなのではないかなというふうなイメージを持っています。ですから、このコアといったような言葉についてもいろいろと、これからやっていくことになるのかもしれませんが、少し気を付けないと、思いはそれぞれにあって、その意味で、「人材」という言葉か、「人間」という言葉かというのに対しても思いがそれぞれあるということですから、是非そういった定義も含めて、検討していかないといけないのではないかなということを思いました。

【安西委員】
 そうは申し上げていないので、もしそういうふうに聞こえたとしたら申し訳ありません。先ほどからありましたように、コアの定義自体がはっきりしていないと思いますし、コンピテンシーと言われている部分が非常に大事だと思っております。

【荒瀬委員】
 申し訳ありませんでした。

【小川部会長】
 もう既に8月以降に考えている個別の課題にも踏み込み始めているので、もう総論というか、前段のところの議論はそろそろおしまいにして、個別のところで議論を始めたいという、そういう意向も見え隠れしますので、この案についてはできれば今日で終わって、8月以降からは個別のところの審議に入っていければなと思っています。それはまた後で、皆さんからの了解を得なければいけませんので、後でお話しさせていただきたいと思います。
 川嶋委員、どうぞ。

【川嶋委員】
 意見というか、質問というか、少し確認したいことなのですけれども、11ページの一番下の白丸のところに少子化のことが書かれているのですが、これはもう既に何年後に高等学校進学者の数がどれくらい減るかというのは明らかなわけで、都道府県ごとによっていろいろ差異はあるのでしょうけれども、その一方、高等学校進学率が98%で、ほぼもう天井へ来ているわけです。これについて、今後その10年後とか20年後、若年人口の低下について、何か文部科学省としてはそれについての具体的な対策を検討しているのでしょうか。ここでは教育方法についてのみ書かれていて、学校規模の縮小等と書いてあるのですけれども、例えば統合とか廃校とかいろいろ具体的な課題が高等学校については起きてくると思うのですが、これについては何か具体的なシミュレーションなどそういう対応を考えてらっしゃるのかということをお聞きしたいと思います。

【小川部会長】
 高等学校や小中学校は確かに児童生徒数が減少しており、各自治体で、学校統廃合を含めて、学校の再配置の問題はかなり政治的な課題も伴いながら、教育上の大きな課題にはなっていますね。ただ、文部科学省としては、予想等々やって、それなりの検討はされているかと思うのですが、実際の主体は都道府県や市町村ですので、その辺、文部科学省とすればどういう立ち位置で対応をするかということは非常に微妙な面もあるのですが、何か今の御質問に関して事務局の方からございますか。

【小谷教育制度改革室長】
 人口の少子化の状況がどのように進んでいくかというような統計はありますので、それを基にしての把握はしておりますけれども、今、小川部会長から御指摘があったように、実際に公立の高等学校を再編整備していくのは、各都道府県でそういった再編整備計画を策定されて進めていらっしゃるのが実情でございまして、私どもはそういった情報を収集して、各県でこういった状況が進んでいるというような情報提供をしているというのが現実のところでございます。

【小川部会長】
 おそらく11から12のところは、今言ったように、学校統廃合というのは自治体のかなりシビアな問題ですので、学校統廃合の問題をストレートにここに書き込むというのは報告案では少し難しいかなということで、学校規模の縮小とか、あと、そういう方法というようなレベルで書かれているかと思うのですが。ただ、これは恐らく個別課題のところで議論していく際には、何らかの形では触れざるを得ないかと思うので、またその時にでも文部科学省の方でもいろいろなデータを出していただきながら議論できればなと思っております。よろしいでしょうか。
 次に、では、野上委員、よろしくお願いします。

【野上委員】
 先ほど人材の話が出ましたけれども、教育課程を修了した人材の受け入れ先である企業の中には、最近、企業が内外に発信する公式情報に、「人材」の「材」を「材料」の「材」ではなくて、かいへんの「財」とする企業が多くなりました。それで、経営者に、公式文書にこうした表現、表記でよろしいのですかと尋ねると、新たな価値を生み出す人を「人財」、つまり「人のたから」とするのは当然、との答えが返ってきました。
 こうしたことに加えて、現在経済人の考え方も大きく変わっている、ということも、これから議論を交わす際に意識に入れておいていただきたいと思います。
 それは、これまでの経営思想に反省点があるというものです。どういうことかと言いますと、従来の企業には、技術的に優れた、革新的な製品を世に出せば市場から信認されるという、生産者の論理が根底にありましたが、現在ではそうしたイノベーションによる製品を市場に出しても、その製品が社会的な関心事項、例えば環境に反するようなものであれば、また、消費者のニーズに適合しないものであれば、信認されないということを、企業は認識しなければ立ちゆかないのです。
 つまり、新たな製品を世に出しさえすれば市場の信認が得られるという、経済中心主義から、社会の中に起こる現象、つまり社会の変化に敏感に反応する企業でなければ持続的な繁栄は得られない時代に突入しているということであります。したがって、これからの教育はこのような状況に適応、対応することができる人材の育成を軸とした制度設計をしなければならないと思います。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 では、金子委員、どうぞ。

【金子委員】
 今までの高等学校教育をめぐる議論は、教科、特に学生、生徒の多様化に応じて教科課程の多様化といったことを機軸にして、それをいかに生徒に、どのように合わせていくかというところに議論の軸があったのではないかと思います。それに対して今回の視点案は、教科と別に、もちろん関係あるのでしょうけれども、基本的な能力と言いますか、人格形成とかそういったものが必要であるということを正面に出したということに重要な点があると思います。またそれがメッセージとして、やはり社会的にもきちんと主張していくべきものだろうと思います。
 ただ、先ほどお話になっているように、コアというのはいろいろな捉え方があります。国際的に見ても、実はコア・コンピテンシーとか類似の概念は20年くらい前から先進国で様々な議論がされてきているところです。率直に言いますと、私はこれこそが正解という答えは、そんな簡単に出てこないだろうと思います。あんまり抽象的に走らずに、様々なデータとか、やはり国際的にどのようなことが考えられているのかという点を含めて、総合的に判断するということが非常に重要ではないかと思います。
 大学入試との関連について、一つ付け加えておきたいと思います。大学入試というのは二つ考え方があります。一つは、大学教育に関する適性を測るという考え方です。もう一つは、高等学校でのアチーブメントという、高等学校で課されている教科をどのくらい吸収しているかということを測るという考え方です。戦後すぐには適性を測ろうとする考え方もありましたが、結局それは無理で、アチーブメントを測るという考え方になり、それが基本的に今の考え方になっています。問題は、これから入試を変えていこうという議論が始まる時に、大学の側としてはむしろ適性で判断するという方向に行くかもしれないということです。しかし、高等学校の側が高等学校で発達する課題というのをきちんと定義して、それをどの程度達成しているかを測るという姿勢は、やはり私は非常に重要だと考えます。こうした点で、高等学校と大学の考え方は決して簡単に一致するものではないわけです。そういった意味でも、高等学校の側として何が達成課題なのかというのを、自らきちんと明確に定義するという姿勢は非常に重要になるだろうと思います。
 以上です。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 後何名ぐらい御発言希望されていますでしょうか。小林委員、どうぞ。

【小林委員】
 少し時間がありそうなので、ちょっと何点かお話しさせてください。
 17ページの教員の指導力の育成のことなのですけれども、ここにるる書いてありますけれども、13行目で、教員養成の修士レベル化と書いてあります。そうすると、これは6年ありきなのかなという形になってしまいますが、私はやはり学部卒の4年で現場に来ていただいて、現場でインターンシップ制度のような形で、現場育ちを是非やらせていただきたいなと思っています。この修士レベルの方も必要ですけれども、やはり私が工業高校を預かっていろいろやっていた時に、若い工業科の教員は、大学の中で、いわゆるものづくりに対して非常に弱いんですね。できれば、採用して、その新人教育なり、何年間の教育期間の中で、研修期間の中で、企業さんとコラボさせていただいて、そこで実践力を高めて、それを基に高校生にしっかりとした職業観なり、技術・技能の修得を目指すような教員を育てていただければなと思いますので、この教員養成の修士レベル化という、この「修士レベル化」という文言はここではとっていただけると、私はいろいろなことで考えられるのではないかと思います。これが1点です。
 それから、2点目が、18ページの14行目になります。高等学校専攻科における学修の大学における単位認定制度の創設、大学への編入学の制度化ということで、これはもう大変ありがたい文言です。ただ、現在、高等学校の専攻科は各地区にいろいろありますけれども、工業高校の専攻科についてはなかなか今いい形ででき上がっていません。水産科とか家庭科とか農業科については、様々な国家資格等につながっていますので、それを基にきちんと就職なりができています。けれども、工業高校についてはなかなかうまくいっていない。ここら辺のところも2年間の専攻科が終わった時には、いわゆる卒業資格の付与を与えていただければありがたいと。結果的にこの工業高校専攻科を出ても、いわゆる工業高校卒という免許しかとれませんので、ここら辺の何か方策も考えていただければ大変ありがたいと思っています。
 それから、三つ目です。16ページですが、これは荒瀬委員と同じ意見になってしまうと思うのですけれども、前から言っているように、18行目の例として、教育課程にキャリア教育の中の括弧の中に、「産業社会と人間」というのがあって、又はそれに類する教科・科目とありますけれども、今、総合学科高校でこれを実施しておりますけれども、私6月あるいは5月に現職の総合学科高校の校長5人にいろいろインタビューしたところ、どうやっているのと言ったら、産業と社会の教科書を使っている学校は少なくて、やはり学校独自にいろいろなものを作っているのだけれども、学年担任プラス副担任のチームティーチングで何とか1年間を乗り切っていると。次の学年はそれを踏襲するかといったら、あまり踏襲していません。結果的に学年の先生の主体の下にその学校として「産業社会と人間」を実施していると。そうすると、年度別によって中身も若干違うし、目的も違ってしまう。そうすると、責任の所在があまり明確になっていない。となれば、私はこの教育課程、このキャリア教育のこの中核となる時間を明確に位置付けるのには、やはり単位認定の責任ある立場の人間を育成して、その人がやはり職業教育、キャリア教育をしっかりと教えられるような制度に、私はするべきだと思いますので、これも産業社会と人間という言葉はとっていただいて、これがありきにならないようにしていただけるとありがたいなと思っています。
 三つです。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 今の件。修士化の件ですね。

【藤原教職員課長】
 失礼いたします。教職員課長でございます。ただいま修士レベル化について御発言がございましたので、それについて1点だけ申し述べさせていただきたいと思います。
 これは中央教育審議会の特別部会で議論してきたところでございますけれども、その議論の中では、小林先生がおっしゃったように、必ずしも最初から修士を持って現場に出ないといけないというような制度ではなくて、それもあってもいいのですけれども、現場に出た上で、学部レベルで出て、それからまた戻って、その修士レベル化の学びをするということも含めて、トータルで教員が生涯にわたって学び続けると、そういったものを支援していくような体制を作っていこうということでございますので、その点だけ御説明をさせていただきました。

【小川部会長】
 ありがとうございました。よろしいでしょうか。
 振興策のポツのところの具体的な事例というのはあくまで議論を進めていく上での検討事項例ですので、議論を方向付けていくという、そういうものでもありませんので、その辺は御了解いただければと思います。ですから、その書きぶり等々については、今日、様々な御意見をいただいたのですけれども、いただいた内容に則して全て書きかえるということはできないかもしれませんので、その辺は御了解いただければと思いますが。
 あと、全体を通じて何か気がついた点等々ございますか。

【安彦部会長代理】
 金子委員からのお話や、それから、今、先生方の話を聞いて、やはり感じたことは、どうしてそういう、ある意味で大きな視野とか本質的な視点が我々に欠けていたかというと、正直、昭和59年の通達によって、高等学校教育の重要な部分である入学の判定や単位認定その他については、設置者及び学校の判断に任せるという通達があって、以後、国はある意味ではずっとそこについてノータッチで来ているんですね。ですから、もう本当に各学校が、ある意味で自由に単位認定をしてきていまして、その責任意識というか、そこのところがだんだんぼけていったとしても、チェックがかからなかった。そういう意味で、今回、高等学校教育部会が立ち上がって、初めて国レベルでもっと高等学校として、全体としてどうなのかということを議論しようという意識でここに集まった。そういう観点で見ると、やはりどうも今までが、高等学校現場の意識というのは、どうしても目の前の自分たちの学校のことだけで閉じてしまう。国全体として高等学校教育はどういう位置付けを、あるいは役割を果たさなければいけないか、みたいな発想はほとんど飛んでしまってきたわけです。ですから、改めてこの場で多分、今後問題にすべきは、やはり一つの大きなものとして、国の役割ですよね。国はこの高等学校教育にどういう位置付けをして、どう一定の役割を果たさなければならないか。今までの適格者主義とか単位認定とかというようなところではなく、もう少し原則的なところで国が果たす役割というのを明確にする必要があるのではないか。やはりどちらかというと、原則の部分は国が握りますよ、それなりのチェックをかけますよ、という方向。個々の具体的な現場での工夫というのはそれぞれでお願いするということはあると思うのですけど、共通の原則的なところは、やはり国が常に見ていますよという、そして、チェックをかけ、場合によっては助言も勧告もしますよ、というような位置付けが望ましいのではないかなというふうに思います。
 少なくともそういう方針、全体の方針転換を念頭に置かないといけないのではないかなということを、次の検討の課題では是非意識していただければと思います。

【小川部会長】
 ありがとうございました。ほかによろしいでしょうか。時間も迫っていますので。
 では、今日は、いろいろな御意見いただきました。特に1の現状のところについては、何人かの方からもっと踏み込んで書いていただきたいというようなこと。また、それがその後、課題の方向や振興策の議論の方向にも影響を及ぼすので、やはり現状のところはもう少し踏み込んで書いていただきたいというのは、これは部会長としてもきちんと受けとめて、書き直してみたいなと思っています。
 ただ、今日いただいた意見を踏まえて、更にまたこの課題の整理と検討の視点案を次回の部会で議論するというのは、今日、もう皆さんから個別の課題についての踏み込んだ意見も出始めていますので、次回、更にこの検討の視点案をもう一度部会として時間をとってやるということはできれば避けたいと思っています。ですから、今日いただいた意見については、事務局と私と部会長代理の方で整理し、後はメールのやりとりで、この案を詰めて、それで了解いただくということにしたいと思いますけれども、それでよろしいでしょうか。
 できれば、次回から個別課題の議論に入っていきたいと思いますので、その辺よろしくお願いいたします。
 では、今日はこれで終わりたいと思うのですが、今日、せっかく文部科学審議官がいらしていますので、何か一言。8月から新しいステップに向けての議論がありますので、山中文部科学審議官、何かあれば、御発言をよろしいでしょうか。

【山中文部科学審議官】
 文部科学審議官の山中でございます。初等中等教育局長の時に、まず高等学校教育について、高等学校の無償化がありましたけれども、その無償化するということ、それは就学支援金で、私立の方には公立と同程度の助成金を生徒さんにお出しするという制度ができました。そういう中で、安彦先生の方からもございましたけれども、高等学校教育そのものについてどう考えるのかということについて、今まで文部科学省の中で、非常に弾力化を図るという、生徒の多様化に伴って弾力化を図るということを打ち出してきたのですけれども、それによって一体レベルがどうなっているのかというところについて、大学の方の学力調査を伴わない入試と言いますか、入学者が増えたということもございまして、ここのところを大きく問う必要がある。
 また、グローバル化する中でリーダーを育てるとか、あるいは中堅のしっかりした社会人を育てるという機能、ここは正に高等学校が担う中核的な機能ではないかということで、これを大きく検討する必要があるのではないかという発想でございます。
 そういう意味で、国として今まで弾力化して、それぞれの学校、都道府県の方にやっていただいたところについて、一つの方向性と言いますか、そういうものをお出しすることができればということで、まずは20ぐらいのいろいろな高等学校の皆様方から、先生方からヒアリングをいたしまして、それを基にして、いろいろな検討の項目もお示ししながら御議論いただいたわけでございます。今後こういう方向性の中で具体的に議論していただきまして、是非具体的にどうやっていくかという方策について踏み込んでいただくとありがたいと思います。
 一方で、グローバル化社会の中で、インターナショナルバカロレアスクールというのを200校ぐらい日本の中に作ってはどうだという提言が、政府全体の中でも出てきております。この中で、インターナショナルバカロレアでの、特に高等学校の、大学に入学するその資格を認定するというプログラムコースが世界で二千数百校ありますけれども、そこに200校と言いますので、これは10%ですから、インターナショナルバカロレアの方からも、何だろうという感じで、政府の方にもと言いますか、文部科学省の方にもアプローチがございまして、あそこは全部、英語とフランス語とスペイン語ですけれども、今、ドイツ語と中国語のモデルプログラムというのを行っているので、日本語でもそういうのをやってはどうかというアプローチもございます。
 このアプローチ、インターナショナルバカロレアの場合、先ほど安彦先生の方からございました正にカリキュラム設定が、日本でもカリキュラムがありますけれども、独自のカリキュラム設定があります。それから、どういう成績を評価するのか、標準レベルと高いレベルというような二つのレベルと言いますか、いくつかのレベルがありますけど、そういう基本的にはレベル設定があって、では、どういう試験をやって、どのぐらいの点数をとれば、それが認められると。外部評価がついて、その評価されたもので、インターナショナルバカロレアの認定を受けていれば、そこでAレベルということになれば、世界的に著名な大学の中でもほとんどそれで入学資格が与えられるという、そういうような感じでございまして、正に外部評価というか、外部的なところで成績評価が評価されているという仕組みがございます。
 そういうものもいくつか日本のインターナショナルスクール等ではありますけれども、ほかの形でも200校を目指して作っていこうということでございまして、ここの中でも大きく出ておりますが、目標設定とその到達の評価について、学校だけに委ねるのではなくて、外部のそうした組織なりに委ねるという、そういう形によって、国際的に通用するような高等学校教育というものに日本の教育もなっている、ということを打って出ようと言いますか、そういう考えでございます。
 それは、インターナショナルバカロレアという組織がありますので、そこを使うものですけれども、では、国内でそういうことを考えた場合、どういうものがあり得るのかとか、その辺り、いろいろな高等学校も、この中でも分類されておりますように、いろいろな生徒を対象にして教育をやっておりますので、そういうものに合った形で、そういう外部的な認証やシステムというようなことまで考えるのか、それとも、一律に高等学校ということでの必要な努力というものについて、何らかの認証システムを作るのか。それはやはり、それぞれ個々の学校の認証、そういうものに委ねていって、あるレベルの大学に行くためにはこういうものを使いたいという学校はそれを使うとか、いろいろなオプションと言いますか、考え方があろうかと思いますが、ここの辺り非常に高等学校の関係者の方、大学の関係者の方、思いは同じと言いますか、育てたい生徒像、人間像は同じですけれども、その手法はかなり異なっているところがありますので、このせめぎ合いと言いますか、ここのところ、最後にあります高等学校と大学の接続の部分、この点についてまたよく御議論いただければありがたいと思います。
 また、あまり一律にこうやろうとすると、必ず反対が出るものですから、できれば実現可能性という面では、いろいろなオプションと言いますか、こういうのをやってみたらどうだというような感じでの提言もいただけるとありがたいと思っています。
 今後の議論に期待申し上げたいと思います。文部科学省としてもいろいろなモデル的なプロジェクトについては、積極的に取り組んでまいりたいと思います。
 どうもありがとうございました。

【小川部会長】
 ありがとうございました。
 では、最後に、今後の日程について事務局の方からお知らせください。

【小谷教育制度改革室長】
 次回の日程でございます。資料4に配付させていただいておりますが、8月10日金曜日13時から15時、また、同じこの会場で行わせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

【小川部会長】
 それでは、今日の会議は終わります。ありがとうございました。

―― 了 ――

 

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