資料2-2 長塚委員提出資料

 「高等学校早期卒業制度の創設」に関する意見

日本私立中学高等学校連合会常任理事
順天中学校・高等学校長 長塚 篤夫

 第9回の部会の最後に、標記の件についてはマスコミの誤報である旨や、本部会において論議すべき事項であることなどが伝えられ、次回の協議事項とされた。これらを踏まえると、この事項については、第10回の部会にてとくに十分に論議する責任があると考え、予め意見を述べておきたい。

1、生徒の普遍的発達段階からして、早期の高校卒業認定には問題がある。

 極めて特異な才能のある、いわゆる天才児の修学については、米国などでは小学生が大学で学ぶといった早修を認めている。とくに数学や音楽などの専門分野では、日本社会でも容認されるのではないかと思われる。但し、才能と障害が併存していることも多く、心理学の専門家によると特別支援的な対応が必要だとも考えられており、我国においては導入されていないのではないかと受け止めている。
 また、天才とは言わずとも、とくに優れた資質を有する者に対しては、例えば米国の高校の約6割が導入しているといわれるアドバンス・プレイスメントでは、高校に在学しながら大学の学習をし、大学入学後に単位が認定されたり、大学の高学年に編入したりすることができるようになっている。
 しかし我国においては、遺憾ながら、厳格な成績評価は大学入試制度に依存している。一部の私立大学付属の生徒を除いては、とくに優れた資質を有する高校生の多くは大学入試に向けた学習を余儀なくされており、さらには浪人をして大学に入学するという厳しい実態もある。そのような中では、高大連携によるアドバンス・プレイスメントの様な部分早修や拡充学習の進展は期待できない。
 元より、学校教育では生徒の普遍的発達段階を踏まえて、知育面だけでなく、徳育や体育などの全人的な発達を重視しているのであり、これは優れた才能のある生徒であっても例外ではない。また、日本の初中等教育の優れた点でもあるとも言える。そのことを賢明な多くの国民が感得しているので、安易な飛び入学は機能しないのではないかと考える。また、高校卒業資格は認定試験でも得られるのであり、早期の高校卒業認定には様々な問題がある。

2、学修年限が異なる高等学校制度の創設に繋がり、過度な多様化の恐れがある。

 18頁の16行目の「 社会におけるリーダー層やグローバル社会において国際的に活躍できる人材に必要な資質・能力の育成の振興方策(例)」として、26行目に「単位制をより重視することにより、高等学校段階において、厳格な成績評価の下で通常の生徒よりも優れた成績で単位を修得した者について、早期の卒業を認める制度の創設。」とある。
 しかしこれは、とくに優れた資質を有する者を対象として大学への入学を許可する「飛び入学制度」の不足を補うものとして、つまり飛び入学の際に高校中退となることを改善する策として提示されたと聞いているが、この振興策の文言には飛び入学との関係は明記されていない。これでは、ともすれば二年制高等学校や五年制中等教育学校のような、学修年限の異なる新たな高校教育制度を創設することに繫がりかねない。高校教育の多様化から生じた課題に対応しながら、さらに過度な多様化の弊害を生じる恐れがある。

3、高校早期卒業制度は大きな変更であり、少なくとも「創設の検討」に留めるべき。

 本案中、今後の施策の方向性として、9頁の24行目に「 加えて、現行の設置基準や学習指導要領などの高等学校教育制度が、高等学校が果たす役割に照らして適切なものとなっているか、また、生徒の興味・関心、能力・適性、進路等が極めて多様化している高等学校の現状に十分に対応しているかどうか検証し、制度の改善を含めた検討を行うべきである。ただし、その場合にも、拙速な制度変更に伴う混乱等を避けるため、十分に時間をかけて行うべきである。」とある通り、拙速な制度変更にならないようにすべきである。ついては、この部会の振興策では少なくとも「創設の検討」に留めるべきである。

 

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