参考資料2 高等学校教育部会において出された主な意見

1.生徒の学力に関する意見

  • 公教育としての高校教育において、青年期の子どもたちを自立と個性という視点で育成することが必要。思春期以降、高校生は自尊感情が損なわれる時期にあり、このような子どもの発達段階を踏まえた上で、望ましい発達・成長をどのように促すかという基本的な議論も必要ではないか。
  • 中間層の学習時間が十数年で半分になっているなど生徒の学習時間が非常に少なくなっている。また、自発的に勉強できないという学習意欲の問題がある。偏差値に関わらず、学習意欲をどのように育んでいくかが重要。
  • 学習意欲との関係では、将来の夢や目標は何かというビジョンを持たせ、そのためにどのような勉強が必要かについて考えさせることが大切である。また、企業の採用試験では高等学校レベルの基本的な問題で足切りが行われていることやどこかの企業に勤めたり、何かを生み出していかなければ生活していけないという現実を理解させることが必要ではないか。
  • 各教科の内容を理解したかどうかという教科の学力ではなく、文章を書く、読み取るなどの基礎的な能力が不足している。コンピテンシーをどう形成すべきかが重要。
  • 高等学校は最後の学びの場であり、社会で自立していくためにどのような学びをすべきかを議論することが必要。
  • 高校生の知識レベルは高いが潜在化されていて表に出ていない。産業界の力なども活用しながら、学校において生徒が自分の将来について考える時間を持てるようにして欲しい。

2.高校入試に関する意見

  • 中学の3年間で既に学力の差がついている一方、公立高校における選抜は県内で一本化されている。生徒一人ひとりの学力を伸ばすために、入学選抜の在り方についても検討することが必要ではないか。

3.教育課程に関する意見

  • 日本の学校教育において高校教育をどのように位置づけるのか。アメリカは分権により州や地域によって教育内容が多様化しているが、今は全体の教育水準の向上のためにコモンスタンダードの取組が進められている。日本はコモンスタンダードがあるにもかかわらず実態は多様化しており、高校教育をどのように捉えるかが見えにくい。
  • 高校教育は義務教育ではないにもかかわらず学習指導要領に従ったカリキュラム編成が必要とされているが、一方で実態は非常に多様化しており制度的な齟齬が生じているのではないか。また、グローバル人材を育成するために、カリキュラムに縛られない授業を展開できるようにしてはどうか。
  • 生徒の学力を保証するためには、履修主義ではなく修得主義にすべき。また、学び直しを前提とすれば、高等学校学習指導要領の最低基準をより緩やかにすべきであり、生徒の実態に合わせた質の保証が必要。
  • 高校教育の到達度テストといった生徒の学習の目標になるような仕組みは必要だが、どれだけ社会的に認知されるかが成否の鍵ではないか。
  • 中学校における教育内容と高等学校入学後の教育内容にギャップがある。中学校における学習内容が十分身に付いていないことにより、高等学校のカリキュラムを理解できずに学習意欲が低下し、不登校になることが考えられる。現状を前提とすると、高等学校の授業時数又は年数を長くしないと、カリキュラムを身に付けさせることは難しいのではないか。

4.高等学校と大学との接続に関する意見

  • 高校教育の目標が大学に入学させることになっているように見受けられるが、高校生の半数は大学に進学しておらず、高校教育は大学入学準備のためのものではない。後期中等教育において教えるべきことを教え、身に付けさせるべき。
  • 高大接続テストを大学入学資格としてやるのは難しいが、高校生としてどのような学力を有しているか測る意義はある。国民として身に付けておくべき一定の知識の達成度テスト等、大学の合否に関係しないところで高校生の学習の目標設定として活用すれば良い。
  • 大学入試が機能しなくなっている中で、大学においても十分に学習せず社会に出て行ってしまう現状にある。大学の機能別分化の議論ともあいまって、大学が機能別にどのような教育をしていくべきかということが高校教育にも連動してくる。
  • 有力な大学の入学試験の在り方も一緒に考えなければ、高校教育のゆがみ、特に進学を求める有力な大学に進学しようとする子供たちの教育のゆがみは治らないのではないか。大学側も求める人材像を提示し、ともに議論するべきである。
  • 大学においては、特色ある入試を実施しても、プラス・マイナスどちらの結果も出てこないものであり、かえって当初期待していない所で歪みが生じてくる。入試をどうこうしても期待した結果が出ない。
  • AO入試について、例えば、神戸大学医学部のAO入試では、実際に医学部の授業を受けさせて、その後ディスカッションさせて適性を判断するなどしており、このような入試の在り方が大事。
  • 現在でも能力と意欲のある高校生に対して、大学の教員が授業を行うといった高大連携が行われているが、双方のスケジュールが合わなかったり、単発的なものとなってしまったりしている。特定の高校以外の普通の高校でも優秀な生徒はおり、そのような生徒に学習機会を提供する必要がある。アメリカではアドバンスド・プレースメント(高校の教員が大学レベルの授業を高等学校で行い、大学進学後に単位として認定する)制度があり、こういうやり方もあるのではないか。
  • アメリカではアドバンスド・プレースメント(高校の教員が大学レベルの授業を高等学校で行い、大学進学後に単位として認定する)制度があり、イギリスでは、大学入学までのギャップイヤーでボランティア活動をしたりしている。日本の大学入試の仕組みをこのような方向に変えていければいい。
  • 大学受験のための勉強も必要だという意見もあったが、優れた才能を有する生徒が大学受験の段階でつまずいてしまうようでは、せっかく伸ばした芽が伸びないのではないかという懸念がある。才能を伸ばせるような機会を与える高大接続についても考える必要がある。

5.学びのセーフティネットに関する意見

  • 家庭環境等の理由により高等学校における学びが立ちゆかない生徒について、その学びを、どこまでどのように学校でカバーしていくかについて捉えることが重要。
  • 定時制課程・通信制課程は不登校の生徒が増えてきており、全日制の受け皿となっている。昼間定時制といった形態も出てきているなど多様化している。人的配置など様々な課題を抱えている。
  • 広域通信制については質保証がなされているかの評価をやっていく必要がある。
  • 中退者が5万3千人いるが、高等学校卒業資格を取得していることは社会において重要な意味を持つ。不本意入学の生徒でもしっかりと学べるシステムを作って欲しい。

6.教職員に関する意見

  • 教員が多忙化している現状を踏まえ、学級規模の減少や教職員定数の増加によって現状を改善していくことも含めて検討が必要。学校の特色に応じて、教職員定数を自由に決めることができても良いのではないか。
  • 校長の権限・裁量の在り方や学校を経営するという観点、学校組織や教員養成(研修)の観点も踏まえることが必要。

7.才能教育に関する意見

  • 生徒の才能や個性を伸ばすためには、見て感じる、聞いて感じる、触れて感じれるような感性教育の充実が重要。
  • 本当に優れた人は、非常に難しい研究をやっていても話がとてもわかりやすい。才能教育をやる上では言語教育も非常に大事。
  • 飛び入学では、大学を卒業せずに進路を変更した場合、中学卒業資格しかない。例えば、大学である程度単位を取った場合に、それを高校の単位に振り替える等の措置により高校卒業資格を認めてあげることができれば、より良いシステムになる。
  • 飛び入学、飛び級等を活用して1年早く世の中に出ることのメリットは、例えば、1年間を有効活用し、新しい経験を繰り返したりすれば、人間の広がりが増えるという非常に大きなことを得ることができることにある。
  • 優秀な生徒の芽を伸ばすということに関しては反対するものではないが、多数の生徒を対象とするような運用がなされることについては疑問がある。
  • 受験勉強だけではなく様々なことを体験できる機会やスポーツや芸術など生徒それぞれが有する特性を伸ばせるような時間的余裕を与えることが必要。
    また、学校において生徒の個性や才能を伸ばしていくためには、教員が独自性を持つことができるように、校務を効率化し、授業準備の時間や生徒と向き合う時間を十分に持てるように配慮することが必要。

8.グローバル人材の育成に関する意見

  • グローバル人材を育成するには社会を構成するあらゆる主体が横串的に連携することが大事。
  • 国際バカロレア認定校であってもインターナショナルスクールは高等学校ではないため、その授業を受けても高等学校における単位として認めてもらえない現状がある。これを解決すれば国際バカロレア認定校が増えるのではないか。
  • 全ての現職の英語担当教員にTOFELあるいはTOEICの試験を1度は受験するよう制度化し、結果が不十分であれば指導・改善を直ちに行うべきではないか。また、他の教科についても、教員の力量をどのように測れば良いのか議論することが必要ではないか。
  • JETプログラム等を使って、英語を正しく発音するアメリカ人等の外国人に教育をやってもらうようにすべきではないか。また、英語以外の授業においてもgravityのような英語から来る専門用語は無理に日本語化せずにそのまま用いるようにするだけでも、国際的な語学力が身につく。
  • 留学先でインターラクティブな授業を受けるためには数十頁のテキストを読む力が必要であり、いわゆるコミュニケーション英語という聞く、話すばかりに重点を置くべきではない。
  • 大学入試の受験資格にTOFELやTOEICの達成基準のようなものを導入すれば、大学を受験する生徒は聞いたり、話したりすることに対して努力するはずである。
  • 現在のセンター試験の英語は相当難しく実用的なものとなっている。問題は大学教育の方にあり、アメリカでは大学で文章を読んだり書いたりする訓練をして、能力を高めているが、日本ではそういった訓練がなされていない。
  • 英語を使うことが生徒にとって意味のあるものとなるように意欲を持たせ行動につながるような工夫が大事。

9.その他の意見

  • 普通科の生徒に対する職業準備教育が不足している。専門学科についても地域の労働力需要にマッチした仕組みにしていかなければならない。
  • 高校生の離職率の高さやコミュニケーション不足等の課題は、家庭教育における積み重ねでもあり、家庭と地域における教育を充実させることが必要。
  • 「普通科」という名称がよいのかどうか、文化が違えば「普通」がよいかどうかの捉え方が異なる。名称をより意欲的なものにしてもよいのではないか。
  • グローバル化の時代では、内向き志向ではなく、潜在的な知識・能力を活用して積極的に外に出て行けるようにすることが必要。
  • どのようなカリキュラムの編成や授業実践が生徒の学びに繋がるのかといった情報が蓄積されておらず、各学校間で共有していく仕組みがない。
  • 「生徒の優れた才能や個性」が従来の考え方で良いのかという疑問がある。東日本大震災後の対応を見ても、一流大学出身者が必ずしも活躍しているわけではなく、高等学校において、従来のような一流大学を目指すという方向で良いのかどうか、高校教育の在り方を改めて議論する必要があるのではないか。
  • SSH等の優れた取組もその広がりはまだ十分とは言えない。教育手法や教育プログラムについて、特定の生徒が集まる学校以外にも広めていくことが必要であり、そのための支援の在り方を考えることが必要ではないか。
  • 大学進学後に大きく進路変更する場合などもあり、また進路が多様化しているにも関わらず、高校における進路指導の考え方が硬化している部分もあるように感じられる。進路指導の在り方も考えるべきではないか。
  • ICT教育は、単に機械を相手として生徒一人一人が勉強するものではなく、ものを作り出したり、残したり、共有するにあたり非常に有意義なツールである。社会に出てからは、必ず他者と一緒に何かを作り出すので、このようなことを踏まえた情報活用能力を育成すべき。
  • 情報教育については、教科「情報」の2単位時間の中で狭い意味での情報教育に限定するのではなく、各教科において発展的な内容を教えたりプレゼンテーションにおいて情報機器を用いるなど、教科横断的な活用を行うように学習指導要領上も工夫が必要ではないか。実態として、ほとんどの生徒は表計算やワープロの活用ができる状態で高校に入ってきており、情報に限定して2単位時間やるのは時間が惜しい。

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