資料2:特別支援教育の在り方に関する特別委員会(第12回)及び合理的配慮等環境整備検討ワーキンググループ(第4回)における意見の概要

(注:特別委員会での意見については冒頭に「(委員会)」と表示)

1.「合理的配慮」について

○1 合理的配慮の内容については、基本的な考え方として、状況に応じて提供されるもの、多様かつ個別性が高いもの、法律で合理的配慮の概念を定め、具体的な配慮の内容等については、配慮の視点を類型化しつつ、指針として定めることが適当である、ということは基本的にそうだろうと思う。一人一人の教育的ニーズに対応するということで特別支援教育が進んできている。具体的にどのような配慮が必要か、また逆に、合理的な配慮とは何かを考えていく方向もあろうかと思う。具体的な配慮、指針を考える中で、合理的配慮は何かということの合意が、このワーキンググループで形成されていくことが望ましい。

○2 合理的配慮を通常の学級においてはこういうことが必要というものと特別支援学校においてはこういうことが必要というものに分けて整理しないと、混同してしまって議論が拡散するのではないか。

○3 (委員会)合理的配慮については、特別支援学校までも含めるとすると教育制度全般に入っていって、焦点が十分に見えなくなる。

○4 合理的配慮は、教育を受ける場所に付随するものではなく、障害のある子ども本人 の個別ニーズによって規定されて、保障されるべきものである。インクルーシブ教育システムは多様な子どものニーズに合わせた支援を行うことだと理解している。

○5 合理的配慮が、理想論、文言で終わることなく、実効性の伴うものにすべきである。そのための財源的な裏付け、法律面での支援がないと、なかなか難しい。

○6 (委員会)合理的配慮については、例えば通常学校での合理的配慮では4つに分けていることがある。一つは、物理的なアクセスをできるよう、クラスの子どもと同じように平等にアクセスできるようにするための配慮。例えば、スロープをつくるとか、情報がわかるような手立て。それから、授業がわかるようにする手立て。席を前の方にするなど具体的な授業へのアクセスの配慮。もう一つは、テストへの合理的配慮。中身の平等性を確保しながら、障害のある方の配慮をしながらテストをする。もう一つは、カリキュラムへのアクセスをどう配慮するか。どうしても通常学級に知的障害のある方が入るときに検討すべき問題となる。また、障害種ごとに特有な、欠けてしまうものをどう補うかという配慮。例えば視覚障害であれば点字や歩行の学習を、通常の学校の時間に加えてしなければいけない。

○7 合理的配慮提供の実効性担保について、指針等により好事例を示しつつ、当事者間の話し合いや第三者が入ってのアドバイスの中で、必要なものを個別に考えていく。好事例を示すとは、我々の議論の中では、「こういった配慮が必要」というものになるのではないか。国立特別支援教育総合研究所の報告等も含めて、好事例を集め、合理的配慮について検討していきたい。また、第三者が入ってのアドバイスの中で必要なものを個別に考えていくという考え方は、教育の分野における個別の指導計画とか、個別の教育支援計画の考え方と通じるものである。

○8 労働・雇用分野における考え方を一つの参考としつつ、実際に行われている好事例をたくさん集め、そして、その中から概念化、類型化等も図るべく議論していくべきではないか。

○9 (委員会)一般的に、合理的配慮という言葉を使うとき、「すべきこと、しなければならない」と「望ましい、努力していきたいこと」、そのような二つの使い分けをする。「配慮すべき事項」という場合には、最低限これだけは用意しなければならない、という意味で受けとめることが、一般的である。「すべきこと」、「望ましいこと」、と言い方を分ける必要がある。特別支援学校の教育環境は、一般の学校に比べれば整備されている。「すべきこと」が、地域の学校の中ではやれることか、それを考えると問題も出てくる。「すべきこと」の基準を整理していく、そして望ましいが、例えば、予算上問題があり、できないという意見が出た場合、「やるべきであるが望ましい」という言い方が適切かを整理するべきである。

○10 合理的配慮を、「絶対的合理的配慮」と「相対的合理的配慮」の二つに分けて整理してはどうか。「絶対的合理的配慮」は、手当てできないと人権問題、差別となるものを類型化して列挙する。例えば、教育を受ける権利、就学先の選択権、アクセス権、保護者の付添いを求めないことなど、最低限のレベルを法令で担保することが望ましい。一方、「相対的な合理的配慮」は、学校教育においては一律に上限や制限というものを設けるべきではなく、地方自治体や学校現場の努力、あるいは創意工夫を促し生かす位置付けが必要である。ガイドラインにより類型化し、列挙するのではなく例示することが大事である。

○11 例えば、教育を受ける権利、就学先選択権、アクセス権(通学、バリアフリー)、保護者の付添いを求めないことを絶対的合理的配慮として実行に移すとなると、各市町村にある程度の財政力がないと実効性がない。実際困るのは、配慮を受けるべき保護者、児童生徒にならないか、という危惧がある。

○12 過度の負担は、経済的なことばかりに目が向くが、実際は障害を持っている当事者の子どもにとっても地域の学校で学ぶということは本当に大変なことである。また、同じ障害を持った子どもとの交流も必要である。そうした意味での心理的な、教える側も、そこで学ぶ者にとっても、いろんな意味で負担がないような配慮になってほしい。

○13 保護者と教員のコミュニケーションのための情報保障は合理的配慮に含めるべき。

○14 (委員会)当事者の教職員を配置した場合に、そのための合理的配慮について議論する必要がある。モデルになる学校の先生から学べること、当事者である学校の教職員がきちんとした教育活動ができるような環境を整備することも、合理的配慮の中に盛り込むべきである。

○15 合理的配慮について、疑義・紛争は当然生じる可能性があり、その場合、教育委員会ではなくて第三者機関による調査・判定、あるいは不作為に対する不服申し立ての仕組みづくりなども必要になってくる。

2.共通事項について

(1)配慮事項のまとめ方について

○1 ガイドライン、仕組みをどうするかが重要。それぞれの子どもの将来の社会参加や自立に向けて、どう教育を成立させるかを考えた時に、障害種としては一つの障害種であっても、いろいろな子どもが入ってくる。その子どもの状況を見極める必要がある。その子の状況により、どのような配慮が必要か、各区市町村の財源で、できることとできないこと、教育内容は学校、施設・設備は各区市町村の教育委員会などと仕切りをつけながら、ガイドラインを整備する必要がある。

○2 ガイドラインができることは、通常の学級に、いろいろな障害の方が入ってくれば、こういったものを用意しなければならないといった指針になる。今までは、施設だけではなく、例えば教員の意識にしても、そのようなものを持ち得ていなかった。示されることは良いことであるが、肢体不自由であれ、知的障害であれ、子どもによって状態は様々である。この障害はこうすれば良いというのが、必ずしも通用するとは限らない。個々のニーズに応じる必要があり、ガイドラインができたとしても、いろいろな状況の子どもがいるというのが今後の課題。

○3 障害種別のまとめでは、例えば通常の学級に障害のある子どもが入った時に最低限このぐらいは必要、ということが、合理的配慮に近いところと思うが、プラスアルファで欲しい支援があると良い、ということも入っており、整理しないといけない。

○4 (委員会)特別支援学校を含めた各障害種別の配慮を整理する必要がある。通常学校でも行う配慮が、特別支援学校等でも根拠があるものであるということをきちんと整理する必要がある。それによって生徒が安心して力を伸ばせる。

○5 ヒアリングのみならず、ほかの情報もかなり広く収集し盛り込んでいき、まとめていくことも必要ではないか。

○6 例えば、個に応じた支援が必要、個別性がある、といった障害種別を超えて共通するもの、障害種別に特有のもの、さらに、個のニーズがあればできる限り応じるというプラスアルファのようなもの、その三段階の構成をつくると分かりやすい。

○7 特別支援学級や通級による指導に言及されている障害種とそうでないものとあるので横並びで整理してほしい。

○8 特別支援学校において現に提供されている支援の水準を維持・向上しつつ、地域の学校に就学している障害のある子どもたちの支援の水準を底上げするということを基本的な考え方としたい。

○9 現在の特別支援学校のレベルを維持する、あるいはそれ以上のものを供給するというのが、大事なことではないか。特別支援学校は長い歴史があり、今までそれなりの成果も上げてきている。インクルーシブ教育という概念で地域の学校に入ったときに、特別支援学校で行われている教材、教具の提供であるとか、専門性を持った教師の配置等がどれぐらい地域の学校で提供できるかというのがネックではないか。

○10 (委員会)例えば、共通事項としてハード面の問題、就学前の教育の在り方など様々なものがある。また、その障害に特有なものもあり、それを整理するべきである。

○11 「学校教育に求めること」と「配慮すべき事項」の線引きは難しいと思うが、学校教育に求めることと具体的な配慮事項との関係をある程度整理して書くことが必要である。

○12 「学校教育に求めること」については、障害種別にいろいろなまとめ方になっており、まとめる場合には、肢体不自由を例にすれば、自立を目指した教育、あるいは一人一人の教育的ニーズに応じた教育、これらは共通の範囲、また、肢体不自由の障害種別で焦点化したものを書くことが良い。共通で取り上げたものを再度、例えば肢体不自由や病弱の中で、それぞれの障害別に合わせて焦点化して詳細に書くこともあり得る。

(2)各障害種に共通する事項

○1 医療的ケアについては、各障害種において濃淡はあるものの触れられている。各障害種において詳細に触れても良いが、視覚障害から重複障害まである分類以外に、医療的ケアというまとめを一つ設けることもあり得るのではないか。その場合、医療的ケアと病弱の線引きが難しい。

○2 全体的に共通する部分として早期教育が挙げられる。早期教育の必要性については、すべての障害種で求められており検討範囲に入れるべきではないか。早期教育では、保護者の取組が大きいが、保護者も一緒に訓練を受ける必要があるなど、仕事をやめる、経済的な負担が重いため放棄されている。

○3 「学校教育に求めること」については、障害は、早期発見、早期対応が大事である。例えば、個別の教育支援計画と個別の指導計画の作成については、いつ、どのような機関が、どのような方法で行うのか。予算その他も伴うかもしれず、ある程度踏み込んだことも配慮事項その他で具体化しないといけないという懸念を持っている。例えば、市町村において、発達支援を行う専門家集団が保護者を支援する、といったものがないと、学校に入ってからの先生の対応だけではうまくいかないのではないか、という懸念を持っている。例えば、スクールカウンセラーの派遣と同様に各教育委員会、学校に、特別支援教育関連の専門家を派遣できるシステムが今後必要ではないか。

○4 就学前の段階で保護者がどのぐらい本人のことをきちんと把握しているか、考えられるか、という基盤が必要になってくる。合理的配慮等の前段階として、保護者が教育に臨む段階で、本人のニーズが何かをしっかり認識できるような支援の仕組みがあることが大前提である。

○5 (委員会)平常時のシステムだけではなく、災害時のシステムの中でも考えておかないと、命に関わる問題である。その災害時のシステムを入れるべき。

○6 (委員会)特別支援学校においては、すべての子どもたちが必要とする整備が全国的にそろっているわけではない。特別支援学校においても、ハード面、ソフト面、教育面において、まだ不十分なところがある。

○7 肢体不自由の特別支援学校においては、肢体不自由と知的障害の重複の子どもは非常に多い。重複障害とのすみ分けをどうするかが課題である。

○8 どの障害についても、主障害以外の部分の障害の配慮についても押さえることが重要ではないか。特に、発達障害等の目に見えにくい障害の場合は、主障害の物差しでのみ測ると、発達障害等がその物差しが測りにくい。

○9 (委員会)重複障害については、知的障害・肢体不自由に関する重複障害と、視覚障害・聴覚障害の重複障害が取り上げられているが、視覚障害や聴覚障害の特別支援学校にも、知的障害を伴う重複障害の子どもたちがおり、言及されるべき。

○10 「盲ろう」というのは、単に視覚障害と聴覚障害それぞれの特性を配慮すれば良いものではなく、全く別の障害とは言わないが、視覚障害、聴覚障害の従来の指導では補えない部分もある。単に視覚障害、聴覚障害の配慮を合わせれば「盲ろう」の配慮事項になるというものではない。

○11 個別のニーズに基づく配慮は大事であり、それが実効性の担保になる。主籍と副籍という学籍の問題で、インクルーシブ教育だから、すべての籍を地域の学校に置くということではなく、特別なニーズを求めている児童生徒については、特別支援学校に主籍を置いた上で、副籍を地域の学校に置くなどの弾力的な制度の仕組みをつくらないと、機械的に、インクルーシブだから地域が良いということにつながる心配がある。主籍、副籍という考え方を入れてほしい。

○12 学校に主籍と副籍を置くということは、これからの特別支援教育にとって、とても大事な部分であり、できるだけ早く導入の方向で考えられればと思う。

○13 (委員会)知的障害では、特別支援学級のことが述べられているが、他の障害についても、特別支援学級の位置付けを明確にしておく必要があるのではないか、それは、交流及び共同学習を考える上で、大事な内容になってくるのではないか。

○14 (委員会)高等学校については、入試の問題をどう考えるかという課題はあるが、特別支援学級、通級による指導も視野に入れて考えていくと幅が広くなるのではないか。

3.教職員等の専門性に関すること

○1 教員の専門性については、ある程度配慮事項の中にも触れる方向としつつも、専門性をどう維持、向上させるのかということは、特別委員会本体で検討いただき、ワーキンググループでは合理的配慮としての教員の専門性の意見を出していく。

○2 教員の専門性については、特に子どもの見立てが重要である。重複障害についても、子どもの見立てができることが基本になる。専門性の中でもアセスメントは押さえていただくことが重要ではないか。

○3 (委員会)合理的配慮については、特別支援教育の専門性として、しっかりと位置付けていくということが必要である。これは担当教員、特別支援教育コーディネーター、学校外のボランティアといった特別支援教育に関わる方はもちろんのこと、全体として、合理的配慮に対する認識を高めていくということが重要である。全国民が認識することが重要ではあるが、まず、特別支援教育に関わる教員や担い手は、合理的配慮についての認識と行動力を持っていただきたい。

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