資料7-6:高山恵子氏 提出資料

特別支援教育の在り方に関する特別委員会
合理的配慮等環境整備検討ワーキンググループ 資料

特定非営利活動法人 えじそんくらぶ
高山恵子

NPO法人えじそんくらぶはADHDの理解啓発を推進している支援団体です。当事者やADHDのある子の親が理事になっており、教育、医療、心理等の支援機関と連携をとりADHDのある子、そしてともに悩む家族や先生方にHPや冊子で情報を提供しています。

(1)子どもの成長のために学校教育に期待すること

  • ADHDのある子はLDやASDの合併があるため、児童生徒一人ひとりの特性に配慮した障害特性への個々の教育が受けられること、またアンバランスのある子に関わる学校内でのいじめ防止のための人権教育を視野に入れた学級・学校経営のための具体的な職員研修が重要です。
  • 児童生徒のキーパソンは主に母親です。ADHDという特性から宿題提出や物の管理など自己管理が苦手な子を育てることに多くの悩みを抱えています。児童生徒の直接支援だけでなく、虐待防止を視野に入れた家族支援を含めたトータルな支援が効果的です。

(2)早期からの教育支援についての配慮

  • 保育園・幼稚園・小学校・児童相談所・保健所・子育て支援センター・療育機関等の間での親子の情報の共有し、2次障害が悪化する前の早期の支援体制が特に重要です。3歳検診等の情報を幼稚園と共有し、集団での支援を重視したアセスメントと支援が不可欠です。
  • 保護者が早期に無理なく子どもの特性を理解することが可能となるように、スタッフとして当事者の親なども含めた教育相談の場の確保と親支援講座の充実が必要です。

(3)教育内容・方法についての配慮事項

  • 通常学級に所属することが多いため、ADHDの特性(不注意・時間や物の管理、衝動性、多動・多弁など)を理解し、表面的な行動観察だけで、叱責することなく、以下のような指導力を備えた教員の育成が不可欠です。
  • 作業記憶が弱いため、指示は短く簡潔に、視覚的にフローチャートなどを活用
  • 衝動性抑制のためのセルフモニタリング力を育て、適切な行動をおだやかに提示
  • 注意散漫になりやすい不必要な掲示物を減らし、やる気が高まる言葉がけ
  • 宿題や教科書・教材・プリントの管理の方法を具体的に繰り返し指導
  • 発言や移動に関して事前にルールを明確にし、適切に発言・行動が可能になるよう支援
  • 特別支援学級に在籍する児童生徒に対する交流及び共同学習の実施に当たっては、通常の学級と密接な連携を進めて行き、特に本人の自尊感情の確保に配慮し、通常の学級の子どもたちからの不適切な対応がないように十分に留意し、居場所の確保が必要です。
  • 体得型の学習スタイルが特徴であり、実体験を重視した指導内容の充実と、それぞれの児童生徒の発達障害等の特性(LD、ASD,2次障害、虐待など)に応じた指導法の選択が大切で、学年間での情報の共有が必要です。

(4)学校における支援体制についての配慮事項

  • スケジュール、提出物や物の自己管理が苦手であるため成績に実力が反映しないことがあります。能力を発揮するための学習コーチングなどカウンセリング以外の支援も必要です。
  • 人事異動において、コーディネーターや専門性の高い教員の移動による支援体制のギャップが生じないように、人材育成や異動については十分な配慮を望みます。

(5)設備・施設についての配慮事項

  • 学校のホームページに各クラスの宿題の内容・提出日が記載された場所を設置し、何回でも内容を確認できるシステムが重要です。必要に応じて親にメールで配信する仕組みがあるといいでしょう。
  • 卒業生の不要になった教科書や教材のリサイクルなども活用し、「貸し出し用教科書・教材」を貸し出す仕組みが必要です。

(6)学校外における支援体制についての配慮事項

  • 医療的支援を有効に活用するための医療機関・保健所と養護教諭・コーディネーター、親との連携(特に薬物療法の正確な情報提供と薬物の効果測定等)が重要です。
  • 巡回支援の有効活用:関係機関の情報の共有と外部の専門家が巡回中に親(多くは関係機関に相談に行くことに抵抗を持っています)の相談を校内で受けられる相談支援体制が有効です。
  • 虐待を誘発しやすいため地域での周囲の理解と協力が必要です。特に学童、民生委員、家庭相談員、児童相談所職員等親子の支援に関わる支援者のADHDの研修が必要です。

(7)幼稚園、小、中、高等学校の各段階における配慮事項

 全ての機関で、次の所属場所への移行プログラムが必要です。

  • 幼稚園・小学校では遊び・活動を中心にルールを明確にした環境で、社会性を高め、意欲を引き出し、達成感を持たせ、自己肯定感を育てる活動が大切です。今後の価値観の土台を形成する時期に、インクルージョンの環境下でクラスでの「違いを認めあう」場つくりが重要です。
  • 中・高等学校では、自己理解に焦点をあてた、早い時期でのキャリア教育の実施と進路指導の推進が大切です。暗記力を必要とする教室内の試験は苦手でもボランティアや職業体験などの学校外活動で才能を見つけ、引き出す実践的で、卒業後に必要な力を育成する支援が重要です。
  • 特に社会自立にむけての自己の感情の安定を図るためのアンガーマネジメントやストレスマネジメントの個別指導が大切です。特に部活動はソーシャルスキルを習得する場として、自己理解・他者理解を深め、良好な対人関係が学べるように重点を置く必要があります
  • インターンシップ(職場等の体験実習)では、企業側への啓発活動が重要です。
  • 高校・大学進学・入試については、配慮(休憩時間を増やす、口頭試問にするなど)が必要です。また、学校内の移動に関しても困難しないようにわかりやすい誘導の表示も必要です。
  • 高校や大学、専門学校での学生支援センターの設置など診断名がついていない学生を支援する場が必要であり、その支援者と教員への実践的な研修が不可欠です。とくに長期の実習先への啓発活動と実習中の個別サポートし、適性があまりないように思われたときの転部、転科が柔軟にできるようなシステムの構築が重要です。

(8)その他

  • 私立幼稚園・私立学校の特別支援教育の実施率は、公立と比較すると低いです。発達障害の情報提供と研修制度の義務化が必要です。

★ADHDのある子どもたちの多くが知的障害は無いため療育手帳を取得できませんので、障害がありながらも一般就労しなければなりません。自分の障害をカバーし、自己の能力を最大限発揮できる力を幼児教育、義務教育・高等教育でつけていただきたいと思います。また、当事者への教育だけでなく、ADHDのある児童生徒のいるクラスメートが専門的なサポートでなくともナチュラルなサポートができるよう期待しています。それが職場での定着率をあげ、ニートを減らし、社会で活躍する人材を育てることになります。彼らのQOLを高めるための配慮を充実させていただくことを願っております。

以上

お問合せ先

初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)