学校段階間の連携・接続等に関する作業部会(第13回) 議事録

1.日時

平成24年3月13日(火曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省3階特別会議室1

3.議題

  1. 小中連携、一貫教育の成果と課題について
  2. その他

4.議事録

【小川主査】おはようございます。定刻になりましたので、ただいまから第13回の学校段階間の連携・接続等に関する作業部会を始めたいと思います。委員の皆様には年度末のお忙しい中御出席いただきまして、誠にありがとうございます。それではまず、今日の配付資料の確認を事務局からよろしくお願いします。

【小谷教育制度改革室長】本日の配付資料は議事次第のとおりでございますが、具体的には資料1、そして資料3から6が事務局からの資料、また資料2が本日御発表いただきます新井委員から御提出の資料でございます。不足等ございましたら事務局にお申し付けください。

【小川主査】よろしいでしょうか。ではこれから議事に入りたいと思います。これまで、資料1にあるとおり、小中連携並びに一貫教育に関する1から6までの主な柱立てに沿って、意見交換をお願いしてきまして、最後一つ残ったのが今日のテーマであります、義務教育学校制度に関するものです。今日はこの7の柱の義務教育学校制度に関して、皆様の御意見を伺いたいと思っています。まず、審議に入る前に、今日の議論に資するという意味で、新井委員の方から、ベネッセ教育研究開発センターで実施された調査研究データを御報告いただいた後に、資料3に基づいて義務教育学校制度についての審議を進めていきたいと思います。よろしくお願いします。では、新井委員から資料2に基づいて御報告をお願いいたします。

【新井委員】おはようございます。それではこれから少しお時間を頂いてデータを御紹介させていただきますので、いろいろ議論の参考になればと思っております。正面のスライドとそれからお手元の資料どちらでも結構ですので御覧ください。また、データにつきましては複数のデータが入っておりますので、データ間の単純な比較はできませんが、全体の傾向として捉えていただければと思っております。
(資料2(以下同じ)・2ページ)まず初めに、平成17年度に文部科学省の委嘱事業として行いました、「義務教育に関する意識調査」です。調査対象は小学生、中学生、保護者、教員、学校評議員、教育長、それから首長、となっており、かなり広範な内容になっておりますが、今回の議論に関係するようなところを少し御紹介いたします。
(3ページ)まず最初に、図の3-3-1。「1クラスあたりの子どもの数を少なくする」という問について、小・中学生、保護者、学校評議員、教員等の回答ですが、これを見ますと、小学生、中学生はやや反対、他の皆さんはだいたいが賛成ということです。これは、小・中学生は友だちと別れるのがつらいのではないかということがあります。また、今回の議論に近いところで、「6-3制を5-4制などに変更する」という問には、「どちらともいえない」という意見が大変多かった。
(4ページ)それから次に「小学校への入学年齢を5歳にする」という問については、賛成という回答は非常に少ないというデータになっています。
(5ページ)それから「義務教育の期間を9年より長くする」という問については、これも賛成が少ない。それから飛び級につきましては、評議員、首長の賛成がやや多い。
(6ページ)それから次のページに行きまして、今ちょっと話題になっております留年について。これは全体で見ると賛成が少ないということです。
(7ページ)それから次へ行きまして、「9年制の小中一貫校をつくる」という問ですが、これは特に教育長さん、首長さんの賛成が多く、全体として賛成がやや多いということになっていますが、一方で保護者の方は、「どちらともいえない」が多く、9.5%が「よくわからない」と回答しており、全体の半数の保護者の方が、判断しにくいということです。
(8ページ)それから次へ行きまして、教科担任制ですが、小学校高学年の教科担任制については、全体で言えば賛成が多いという結果です。
(9ページ)それから次へ行きまして、これは2008年。西暦で言いますと、先ほどの調査は2005年になりますが、これは2008年に私どもが独自で行った調査なんですが、教育改革への賛否ということで、下から三つ目、「公立の小中一貫校の設置」についてですが、これは保護者の意識としては、「賛成」「どちらかといえば賛成」を合わせて45.9%というデータになっています。これは先ほどとサンプルが違いますので比較はできませんが、参考までにということで御紹介いたします。
(10ページ)それから次へ行きまして、これは英語に関する調査なんですが、小学校と中学校の英語に関する連携はどうかという調査です。連携に関するデータがないかなと思って見ていたんですが、ここでは英語に関してはこのようなデータがありましたので、御紹介いたします。上は小学校間の連携ですが、下の中学校との連携につきまして、一番上の「小学校の先生と中学校の先生が集まる機会がある」というのは30.3%。それから「地域の公立中学校の英語教育について知っている」というのが24.2%。それから「公立中学校と英語の授業を見学しあう」というのが22.4%。だいたい2割から3割というところです。それから人事交流やTTのような乗り入れなどについての回答です。
(11ページ)それから次へ行きまして、小・中学校との交流の機会という点について、自治体の規模による差はあまりない、という結果が出ております。自治体の規模が右側にありますが、15万人以上と、5万~15万人未満、5万人未満と分かれておりますが、下から2番目の「近隣の小中学校との交流会の実施」という項目については、自治体の規模によって差はあまりないということが分かりました。例えば教員研修とか指導書などは自治体規模の差が出てくるのですが、交流会についての結果では差はないとなっております。
(12ページ)それから次へ行きまして、これも英語に関係するのですが、これは経年比較で、「中学校との接続・連携」というのが、上から四つ目にございます。これを2006年と2010年で比較しますと、若干ですが連携が増えているというような結果です。
(13ページ)それから次へ行きまして、これは2010年の調査なのですが、英語に限らず「校内研修の領域と回数」という内容で、小学校の校長先生、中学校の校長先生に質問したデータですが、「中学校との連携」、「小学校との連携」については、それぞれ23.9%、34.4%、だいたい約3割ぐらい校内研修をやっているというデータです。
(14ページ)こういった先生の勤務の実態はどうか、いろいろ講習とか研修も含めて、教員の勤務の実態がどうかという点を経年比較したデータがこの表です。これは上が小学校、下が中学校。これは2010年の調査なんですが、2007年と2010年を比較してみますと、やはり小学校、中学校とも勤務時間が増えている。それで横に書いてある集計資料では、中学校教員で、土日出勤は4.5日ということです。そうは言っても帰宅時間は早いじゃないかというような話もあるんですが、先生方は始業時間も一般の企業に比べると早いので、そういった意味では帰宅時間も一般の企業であればもう少し遅い時間と比較する必要があります。だいたい勤務実態は御覧のような状況です。
(15ページ)そうした中でも、小・中学校の先生方の満足度はどうかということが次にあります。これは、総合的に見て教員生活に満足していますか、ということなんですが、経年で見ますと満足度が上がっている。忙しいけれども満足度は上がっているというようなデータです。
(16ページ)一方、子どもの方の理解度はどうかというデータが次のページです。これは2006年のデータで、経年で比較しています。教科別になっていまして、小中高と御覧のように、経年で見ますと、おおむね理解度は上昇をしております。
(17ページ)一方で次のデータですが、家庭での平均学習時間というものを小中高で出したものですが、どうも小中高ともに2001年に向けてぐっと下がってきている。ここから「学びのすすめ」のようなアピールも始まりまして、ぐんと伸びてきているんですが、この中で、今回の義務教育のところとは違うんですが、高校生のところのデータを御覧いただきますと、偏差値別で見て、この「50以上55未満」ここが急激に下がってきている。この辺りは、中学までは受験があって、一定の水準がある程度保たれているのですが、高校ではぐっと下がっているというところです。
(18ページ)次のデータ、これも2006年ですが、学習上の悩みのデータです。小学校と中学校の大きな違いは、ここですね、「上手な勉強の仕方がわからない」というところ。小学生は少ないんですが、中高は多いというところが、小と中の大きな違いになっています。
(19ページ)次のデータが「指導上の課題」という、高校の校長先生から頂きましたデータです。とても多いのは「生徒の学習意欲が低い」というところと、「義務教育段階の学習内容が定着していない生徒が多い」というところで、この両方が特徴となっています。このAからDのグループというのは、学校の成績段階とか学力の段階で分けておりまして、義務教育段階の違いが出てくるようなデータとなっております。
(20ページ)次が、これは最近のデータなんですが、小学校6年の新教育課程について、その立ち上がり状況がどうかということを調査したものです。年間指導計画について全体としては遅れている。特に遅れている教科、学年ごとでは何かというところを見ますと、遅れているのは国語、それから算数の2年生。国語は分量が増えているということと、算数の2年生は3年の内容が前倒しになっている。そんなこともありまして、下のデータの「遅れている理由は何ですか」という問に対しては、やはり分量が多いということ、それから次に学力差が大きいということ、特に国語と算数で差が開いています。
(21ページ)次が児童の変化なんですが、特に下のデータを見ていただきたいんですが、疲れている児童、それから児童間の学力格差、ここのところが多くなったという数値が出ているという状況であります。やはりここでも児童間の学力差というのを感じていらっしゃるということです。
(22ページ)これも同じ調査で、一緒に「教員の悩み」というデータを取ったんですが、やはり教材研究とか教材準備の時間が十分に取れないということで、全体としてはやはり多忙感というものは出ているかもしれない、という結果でございました
(23ページ)次に行きまして、一方保護者はどうかということなんですが、「総合的に見て、学校に満足していますか」という質問なんですが、これは「満足している」「まあ満足している」で、ほぼ8割近くが満足をしている。次が期待と満足度の比較なんですが、ここをどう読み取っていくかですが、下の項目に行くほど、期待の部分と乖離がある。ただ総合的には満足している、ということです。特に最近学校で情報公開が進んでおりますので、そういったところが評価されているという、そういう意味での結果となっております。
(24ページ)次に行きまして、これは親の関与が非常に増してきているというデータです。赤い矢印のところを経年で比較してみますと、「勉強のことは口出しせず、子どもにまかせている」というところが減っている。これは小中共に同じ傾向です。それが良いことか悪いことか、両方あるかと思うんですが、いずれも親の関与が増えてきてるということです。
(25ページ)次に行きまして、親の考え方、学力観・勉強観ですが、数値そのものは一番上の、「将来ふつうの生活に困らないぐらいの学力があればいい」というのが結果としては高いんですが、一方で「成績にはこだわらない」というのは経年で減っておりますし、「できるだけいい大学に入れたい」とか、「勉強することが大事だ」とか「塾に通わせる」ということが上がってきている。それから英語につきましても、使える英語を身に付けるということが意識にある。
(26ページ)同じく2011年のデータで、これも保護者の方に、同じように学校への満足度を調査しておりますが、こちらもやはり満足度については同じような、高いスコアを示しております。これもやはり先ほど申し上げましたような情報公開されているということ等が評価されているのではないか。
(27ページ)一方次のデータで、とても課題だなと思っておりますのが、子どもの社会観です。これは2006年のデータなんですが、小中高比べてみますと、例えば、上から2つ目「日本は努力すればむくわれる社会だ」という項目が、小中高へと減っていって、「いい大学を卒業すると、幸せになれる」というところも小中高へと減ってきている。一方「日本は競争がはげしい社会だ」という項目が増えてきている、というような状況です。
(28ページ)それから次が、将来についてなんですが、「自分は将来幸せになれると思う」とか、「世の中を良くするためにがんばりたい」とか、「世界で活躍したい」とかが小中高とだんだんと減ってきている。
(29ページ)次に行って、なりたい職業の有無について。これは小中高と経年比較で見ていきますと、2004年と2009年で、高校で減少の幅が非常に大きいということです。
(30ページ)次に将来像なんですが、「40歳ぐらいになった時に、どのようなことをやっていると思いますか」という質問で、「親を大切にしている」「幸せになっている」「子どもを育てている」「自由にのんびりくらしている」という、そういう将来像を描いている。
(31ページ)それから最後のデータですが、日本社会についてです。これは小学校5年生から高校2年生ですが、日本社会について「良くなる」というのが減っていて、「悪くなる」というのが増えていっている。2009年のデータです。
(32ページ)というわけでざっと最後に整理してみますと、制度的なところの一つ目、5-4制については「どちらともいえない」というのが多かった。それから小中一貫校は、「反対」より「賛成」が多かったが、保護者や一般教員の半数は意見を明確にしていない。教科担任制は「賛成」が多いということ。ちょっと課題だなと思ったんですが、何らかの小中連携を行っている学校は2~3割ということですね。先生の多忙感は増しているが、満足度は高まっている。学力は改善傾向にある。それから学力差とか学力の低下というのは、高等学校段階で顕著である。これは小中学校段階でも拡大が懸念される。親の関与や満足度が増している。それからあとは子どもの社会観に悲観的な傾向がある、というようないろいろな課題が見られます。これらの個々の課題に対しまして、小中連携や一貫がどのように機能するのかということですが、期待する子どもの変容というものを可視化するための指標を作って、改善のためのPDCAサイクルをまわすということができないか。生徒の取った得点も大事なんですが、それだけではない他の指標を作る。社会に関わる力とか意欲とか、そういう生きる力の指標、こういったものを明確にして、どういうふうに機能させていくかということを見ていく必要があるのではないかと考えました。以上駆け足になりましたが、これで終わります。

【小川主査】ありがとうございました。今の資料2について、何か御質問がありましたらお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

【野木委員】ちょっと質問です。聞きそびれたかもしれませんが、19ページの、Aグループ、Bグループ、Cグループ、Dグループというのがございますね。これはどのような分け方でしょうか。

【新井委員】これは、私どものデータを、偏差値別に上から順番にAからDの順でグルーピングしたというものです。

【野木委員】分かりました。

【小川主査】17ページでは偏差値55以上、50以上55未満、45以上から50未満、45未満と4段階に分けていますが、要するにそれですか。

【新井委員】そうですね。その辺りが基準になっています。
 評定で言うと、Aが平均4.5から5、Bが3.5から4、Cが3、Dが1から2というふうに分けています。

【小川主査】よろしいですか?

【野木委員】はい。分かりました。

【小川主査】他に御質問はありますか。

【赤沼委員】すいません、20ページの、全国の公立小学校の「授業は、年間指導計画通りに進んでいますか」ということに対しての遅れの状況ですが、この調査が2011年ということは、小学校の新学習指導要領の実施との関連というのはここには出ているんですか。

【新井委員】はい、実施の年の1学期に調査をやっておりますので。

【赤沼委員】はい。分かりました。

【小川主査】よろしいですか。では清水哲雄委員。

【清水哲雄委員】ありがとうございました。幾つかのアンケートが混在しているので、ちょっと読み切れないところもあるんですが、このデータの中に、私立学校というのはどの程度含まれているのかお分かりになりますでしょうか。

【新井委員】公立を対象にしておりますので、私立は入っておりません。

【清水哲雄委員】ありがとうございました。

【小川主査】他にどうでしょうか。ではよろしいですか。新井委員、ありがとうございました。意見交換でまた参考になることがあるかもしれませんので、よろしくお願いします。意見交換の際に、これに関連するような質問等があれば、またその場で出していただければと思います。では今日の本題である義務教育学校についてですが、その前に事務局から関係資料の説明をお願いします。

【小谷教育制度改革室長】それでは資料3を御覧ください。まず本日御議論いただきます義務教育学校制度につきまして、御検討いただく背景について御説明します。義務教育学校制度は仮称でございますが、これは現行の小・中学校の課程に相当する課程を併せ持ち、義務教育として行われる普通教育を一貫して施す9年制の学校という形で想定していただければと思っております。こうした新しい学校種を創設することにつきましては、四角の枠のところに書いてありますが、平成17年10月の中央教育審議会答申「新しい時代の義務教育を創造する」におきまして、下線を引いておりますが、「研究開発学校や構造改革特別区域などにおける小中一貫教育などの取組の成果を踏まえつつ、例えば、設置者の判断で9年制の義務教育学校を設置することの可能性やカリキュラム区分の弾力化など、学校種間の連携・接続を改善するための仕組みについて種々の観点に配慮しつつ十分に検討する必要がある」と記載されております。この答申では、義務教育の使命や目標の明確化も提言されておりまして、机上にお配りをさせていただいております机上資料の最初に、関係法令として添付しておりますように、その後の平成18年の教育基本法の改正では、第5条において、義務教育として行われる普通教育の目的というものが規定をされております。また、平成19年の学校教育法の改正では、従前は小学校と中学校の教育の目標が個別に規定されておりましたが、これが改められまして、まず第21条に規定してございますように、義務教育全体としての一貫した教育の目標が定められております。そして、小学校の目的につきましては、義務教育として行われる普通教育のうち基礎的なものを施すとされまして、小学校の目標は、この目的を実現するために必要な程度において義務教育の目標を達成するように行われるものとするとされました。また、中学校の目的につきましては、第45条でございますが、小学校における基礎の上に、義務教育として行われる普通教育を施すこととされまして、その目標は、義務教育の目標を達成することとなりました。このような改正がなされておりますが、9年制の学校種というものは設けられておりません。
 それではまた資料3にお戻りください。4ページでございますが、下の方にございますように、新学習指導要領の在り方につきまして答申がなされました、平成20年1月の中央教育審議会答申におきましても、この案件は、下線を引いておりますように、「引き続き中央教育審議会において審議することが必要」ということになっております。その一方で中央教育審議会以外の場におきましても、次の5ページにございますように、政府の会議といたしましては、教育再生懇談会ですとか教育再生会議といった場におきまして、法的な位置付けなどについて提言がなされております。このような経緯から、この作業部会におきまして、義務教育学校制度の創設の是非について、御審議をお願いしているところでございます。
 さて、また1ページに戻っていただきまして、中ほどから、これまでの御審議の中で、小中連携、一貫教育の推進に関連して、学校制度の改革について、幾つか御意見が出ておりましたので、それを列挙させていただいております。最初の意見は、第11回で意見発表された品川区教育委員会の御意見でございます。品川区では教育課程特例校制度を活用して、学習指導要領にない独自の教科を創設したり、あるいは学年間の指導内容の一部入替えなどを行ったりして、特色ある一貫教育を行っていらっしゃいますが、品川区によれば、この教育課程特例校制度は継続性が担保されていないということを御指摘なさった上で、一つの学校種として義務教育学校を創設することにより、器が人を作ることもある、との御意見を述べられておりました。
 次からは委員の皆様方から頂いた御意見でございます。
 二つ目の丸でございますが、こちらは中等教育学校があるので義務教育学校があっても良いと思うが、全国的に小中連携を進めるのであれば、現行制度の改善又は弾力的な運用等で解決できる、といった御意見でした。三つ目の丸のところは、4・3・2などの学年区分が広く多くの学校で取り組まれるのであれば、6・3制の前提で良いか確認しながら議論をする必要があるといった御意見でした。四つ目の丸でございますが、6・3制がいろいろな課題を露呈しているのは事実だが、現在の小学校は6年間という一つのゴールに向けて教育課程を編成しており、6・3制以外にどういう効果的なものがあるのかというのは現時点では見えにくい、といった御意見もございました。
 1枚おめくりいただきまして、2ページ、最初の丸でございますが、現行の学習指導要領でできるところが多いので、指導要領の範囲内ではできないところに限った上で、現場で選べる仕組みを作った方が現状に合う、といった御意見ですとか、また一方、二つ目の丸ですが、小中連携、接続の目的としては、中1ギャップの解消に焦点を当てて考えていく必要があって、現行制度の範囲内でできることに優先的に取り組むべきで、それをせずに教育課程に踏み込んで議論をするのはいかがなものか、といった御意見もございました。
 このような御意見をいただいておりますが、なお書きで書いておりますが、京都市、奈良市、呉市、品川区の4つの自治体を発起人として、平成18年に設立され、更に現在では三鷹市や三条市なども加えられて31の自治体等で構成されております、小中一貫教育全国連絡協議会という団体がございます。こちらが開催されるその全国サミットにおきましては、四角囲みの中の下線を引いた部分にございますように、「義務教育学校の設置を具体化できるような法整備を望む」という宣言を採択されているところでもございます。
 それでは3ページを御覧ください。このような義務教育学校制度の創設の是非について御議論いただくに当たりまして、事務局として考えられる論点を例示させていただいております。(1)の論点は、こういった制度創設の意義や必要性は何か、ということでございます。逆に、こうした新しい学校種を創設しないとできないことは何か、という点についても御意見を頂ければと思います。
 (2)の論点は、制度創設のメリットやデメリットは何か、ということでございます。
 また、(3)は、既存の小・中学校制度との関係をどのように考えるか、ということでございます。中等教育の段階では、資料5として参考資料を用意させていただいておりますが、中学校・高等学校と併存する形で6年制の中等教育学校があるわけですが、新しい学校種となる義務教育学校について、既存の小・中学校と併存させるのか、あるいは将来的に義務教育学校制度に収斂させることを目指すのか、というような論点もあろうかと思います。小・中学校と併存させる場合、あるいは、将来的に義務教育学校制度に収斂させる場合でありましても、現在の公立学校や私立学校の状況を考えれば、実態上は、当面、既存の小・中学校制度と併存させていくということになろうかと思います。そうした場合には、次のような論点があるかと思います。
 丸1の論点は、初等教育の段階から、中等教育のように学校教育制度を複線化させることとなる点をどう考えるか、ということでございます。
 丸2の論点は、現在市町村に課せられております小・中学校の設置義務についてどう考えるか、ということでございます。先ほど御紹介いたしました中高一貫教育制度につきましては、資料5の方にも書いておりますが、子どもや保護者の選択の幅を広げて、学校制度の複線化構造を進めるという観点から設けられた制度でございますので、市町村は、中等教育学校を設置しましても、中学校の設置義務を果たしたことにはなりません。したがいまして、別途、中等教育学校のほかに、就学指定のための中学校を設置する必要がございます。ですから、前回ヒアリングしましたような小規模な市町村は、小・中学校とは別に義務教育学校を設置するというのは、いろいろな意味で難しいかと考えられますので、義務教育学校の設置により、小・中学校の設置に代えることとしてよいか、という論点があると思います。
 続きまして丸3の(ア)でございますが、この論点は、義務教育学校の設置により、これは先ほどの丸2の論点とも関連しますが、市町村が義務教育学校を設置する場合、従来どおり教育委員会が就学校を指定するのか、ということでございます。その場合、児童生徒は選択の余地なく、住所地によって小・中学校か義務教育学校に就学することになりますが、それをどう考えるのか、ということです。またそもそも、市町村に小・中学校あるいは義務教育学校が1校しかなければ、その市町村に居住するということで、選択の余地なく小・中学校なり義務教育学校なりに就学するということになります。
 (イ)の論点は、これは、その市町村に小・中学校と義務教育学校が併存しているということが前提となるわけですが、義務教育学校への就学を保護者の選択に委ねることとするのか、ということです。いずれかの就学希望者が多数の場合、入学者の決定についてはどのように考えるのか、ということも論点になろうかと思います。
 続きまして丸4の論点でございますが、これは教育課程についてでございます。中等教育学校につきましては、前期課程3年間は中学校の学習指導要領、後期課程の3年間は高等学校の学習指導要領にそれぞれ準拠して教育を行うこととされつつも、学習指導要領の範囲を超えて、6年間一貫した特色ある教育活動を展開するために、教育課程の基準の特例が設けられております。第10回の作業部会でも御説明させていただきましたが、資料5の2ページの3のところに書いてございますように、選択教科による必修教科の代替ですとか、あるいは前期課程と後期課程の間の、そして来年度からは前期課程内においても、学年を超えた指導内容の入替えや移行を認めております。義務教育学校制度なるものを考えた場合に、小・中学校学習指導要領とは異なる新しい学習指導要領を作成するなどして、小・中学校とは異なる9年間の教育課程を考えるのか、あるいは小・中学校学習指導要領に準拠した教育を行うのか、ということも論点になろうかと思います。
 それから丸5の論点でございます。中等教育学校では、教員は中学校と高等学校の免許を併有することとされておりますが、こういった新たな学校種について新たな免許状制度を設けるのか、小学校・中学校の免許状を併有することとするのか、といった論点があろうかと思います。
 そして丸6の論点は、教職員の定数についてでございます。中等教育学校におきましては、設置基準は前期課程は中学校設置基準を、後期課程は高等学校設置基準を最低基準として適用されておりまして、公立については更に、前期課程ではいわゆる義務標準法を、後期課程では高校標準法をそれぞれ適用しております。義務標準法では小学校が学級担任制を、中学校では教科担任制を念頭にして制度設計されているわけですが、教職員定数についてどのように考えるか、といったようなことも論点になろうかと思っております。
 1枚おめくりいただきまして、丸7の論点でございます。校地・校舎は一体とするのか、分離したものも認めるのか、ということがあろうかと思います。それからその他考えられる論点はないか、ということについても御意見を頂きたいと思っておりますし、また(4)といたしまして、先ほど御紹介しました中高一貫教育制度との関係をどのように考えるのか、ということにつきましても御意見を頂ければと思っております。
 また、ローマ数字の2ということで、中高一貫教育制度には、資料5の9ページにありますように、一番左側の6年制の中等教育学校のほか、同一の設置者が設置し、中学校への入学者を無選抜で高等学校に入学させて6年間で一貫教育を行う併設型の中高一貫教育校、あるいは、異なる設置者でも連携して一貫教育を提供できる連携型の中高一貫教育校の制度を設けまして、それぞれ学習指導要領の範囲を超えた特色ある教育活動ができるように、一定の範囲で教育課程の基準の特例を設けておりますが、小中連携・一貫教育の推進のための仕組みとして、どのようなものが考えられるか、ということにつきましても、御意見を頂ければと思っております。
 続きまして資料4を御覧ください。資料3の義務教育学校制度(仮称)について御議論いただくための参考資料といたしまして、資料4のとおり、諸外国の義務教育制度の概要について簡単にまとめましたので、関係部分を御説明させていただきたいと思います。
 こちらに掲げております諸外国におきまして、小・中学校の9年間で一貫した教育を施す学校である義務教育学校といったようなものを制度化している国といたしましては、フィンランドが挙げられます。フィンランドは、義務教育年限が日本と同じ9年間でございまして、1998年に基礎教育法を定めまして、6・3制から9年制の総合制学校へと学校制度を変更しております。この基礎教育法では、初等教育段階である前期課程6年間と、前期中等教育段階である後期課程3年間を一貫して9年間の義務教育課程として位置付けられておりますが、前期課程の校舎と後期課程の校舎が別々に存在する場合も多くあるということでございまして、また、前期課程6年間が学級担任制で、後期課程の3年間が教科担任制という形になっております。
 また、義務教育学校の指導体制に関わることでございますが、例えばアメリカやドイツといった国では、州ごとにそもそも学校制度が異なりますので、国としては一律に述べることはできませんが、提示しております国々では、義務教育年限としては9年間が比較的多く、初等教育段階と中等教育段階に分かれている学校制度が一般的となっております。これにつきましては、別紙で学校系統図を付けさせていただいておりますので、これを御覧いただきますと、どのような形で区切られているのかというところの主なデータとなっております。また、シンガポールを除き、初等教育段階は学級担任制、中等教育段階は教科担任制が基本ということでございます。
 続きまして、学校教育課程の区分でございますが、初等中等段階の区分といたしましては、アメリカでは、最近、ミドルスクールの増加に伴いまして、5・3・4制とか4・4・4制が増加しているということでございまして、イギリスでは、6年制の初等学校、5年生の総合制中等学校というのが基本、フランスでは、5年制の小学校、4年制のコレージュ、3年制のリセ等となっております。ドイツは、複線型の学校制度をとっておりますので、4年制の基礎学校の後に、5年制のハウプトシューレですとか、6年制の実科学校、あるいは8~9年制のギムナジウムなどとなっております。お隣の韓国は、日本と同じように、6年制の初等学校、3年制の中学校となっております。また、シンガポールでは義務教育年限が6年でございまして、6年制の小学校のあと、中等学校の様々なコースに振り分けられるということでございます。例として挙げております国々の中で、初等教育段階において、学校を複線化している国は、イギリスの一部の学校、ドイツの一部の総合制学校ということになっておりまして、他の国では初等教育段階の学校種としては単一なものという形になっているようでございます。
 それから教員免許、教員資格の種別でございますが、教員免許や教員資格の種別としましては、アメリカ、韓国、フィンランド、シンガポールといったところが、初等教育、中等教育といったようなところの教育段階別。それからフランスは学校種別。ドイツは州によって異なりますが、教育段階別又は学校種別。イギリスは教育段階、学校種別がない制度というようなことでございます。
 それから最後に、就学校の指定の関係でございますが、義務教育段階での就学校の指定につきましては、例として挙げている国々の中で、日本と同様に、基本的には通学区域のようなものを設けて就学すべき学校が指定されている国として、フランス、ドイツ、韓国、フィンランドとございまして、就学する学校の選択が可能な国としては、アメリカ、イギリス、シンガポールとなっております。そうした就学校が指定されている国でありましても、日本と同様に一定の要件を満たせば就学校の指定の変更が可能となっておりますし、また、学校選択が可能な国でも、受入れ先の学校に余裕がある場合といった条件が付されているようでございます。事務局からは以上でございます。

【小川主査】ありがとうございました。今いろいろな資料の御説明がありましたが、この義務教育学校制度に関わるこれまでの政府の審議とか、中教審の審議の経緯を考えますと、やはりこの作業部会で、義務教育学校制度を今後どうするかということについて、何らかの意見を集約せざるを得ないかもしれない。そういうことで、今日は、できましたら全員の委員の方から発言していただいて、是非というか御意向を伺えればと思っておりますので、よろしくお願いします。御都合があって、11時に退席せざるを得ないという方がいらっしゃいますので、最初に井上委員から、先ほどの資料3に基づいて、全般的にでも構いませんので、御意見をお聞かせいただければと思います。よろしくお願いします。

【井上委員】今までの中教審等の検討状況について御説明いただきまして、義務教育学校の設置の可能性について、ある程度頭の中が整理されたのですが、いろいろな地域があって、新しい学校が設置されることによって、既存の学校がどういう形に集約されるのか、されないのか、おそらく集約されたところもあると思います。御存じのとおり、人口減少社会に入っておりますし、それも必ずしも地方において顕著だというわけではなくて、特に都市部の少子化という非常に大きな問題がありますので、やはり地域ごとに相当目配りをした対応をしないと、かなり混乱を招くのではないかなという感じがいたします。
 都市部の場合では、一方的に人口が減るというばかりではなくて、例えば、私どもの仕事でもあるのですが、一つの大きな再開発みたいなことがあると、あっという間に初等中等教育を受ける学年の子どもたちが流入してくるということがあるわけです。その時に、自治体が学校の整備に慌てるということもあって、そういった経済的な動きによって左右されるということが常に起こり得るわけです。したがって、施設の整備とか教員の配置も含めて、この義務教育学校と小・中学校という、種別が異なる学校を一つにすることによって対応可能なのかという気がいたします。
 もう一つは、これも私が長年手がけてきたいわゆる都市政策の世界の話なのですが、最近特に、地方の中心市街地が疲弊してきていますので、コンパクトシティにしてなるべく多くの住民を一つのところに住まわせようという動きがあります。今回の大震災でも、幾つかの町にそういう動きが見られますが、そうした新しく町を作り直すというような時には、こういった新しい制度によって、それに基づいた一貫性のある教育ができると、非常に正しい方向に向かうのではないでしょうか。町が変容することによって、人々の住まい方が変わって、子どもの育て方が変わる、実は学校制度というものは、そういうことにかなり左右されるのではないかと思います。逆に学校制度だけを一人歩きさせてしまうと、そういった町の子どもの育て方の変化に対応できなくて、結果的には学校の先生方も大変なストレスを抱えることになるだろうし、地域の教育水準についても向上が認められないという結果になってしまいます。したがって、自治体が中心になって対応することだと思いますが、町の形成とともに学校制度を合わせて作ると、かなりきめ細かな対応ができるということを制度的な提示とともにこの作業部会でもされるとよろしいのではないかと思います。少し抽象的ではございますが以上でございます。

【小川主査】ありがとうございました。それから今日は、先ほど申し上げましたように、これまでの政府内の審議や中教審での審議の経緯を踏まえますと、作業部会としてやはり何らかの意見の集約をしなければならないのかなと思いますので、できましたら、全員の方に発言を頂きたいと思っております。順番でというよりも、最初はまず自由に御意見を出していただければと思います。いかがでしょうか。では清水哲雄委員。

【清水哲雄委員】基本的には、多様な学校制度というのを目指すという方向性ではないかなと思っています。つまり各国の学校系統図を資料で頂きましたけれども、今までの20世紀型の教育というのは一律に同じような教育をしていくというような方向性を持っていたかと思うのですが、これからは、様々な子どもたちの個性を生かすという意味でも、制度としても単一な制度ではない形を初等教育段階でもやる方向ではないかなと思っています。
 ただ、具体的なことになりますと幾つか問題点があると思います。本日頂いた資料の中でも、中1ギャップのことについては気を付けなければならないということがありました。既に小中一貫教育を施していらっしゃる教育委員会の方に伺ったことがあるんですが、例えば中1ギャップを小中一貫によって解消できるのか、という発問をした場合、一部は解消できたけれども、しかしながら例えばいじめの問題を考えてみても、もう初めからあなたはあの中学校に行くのよ、と決められていて、いじめる子もいじめられる子も同じ関係のまま中学校に進学するという、そういう形になっていて、ちょっと限界がある、ということを内々に聞いたこともございます。したがって、それぞれの国のように、保護者の要望によっては必ずどこかに行けるというようなことも考えなければいけないと思いますし、それから中教審の答申にも出ていましたように、4、5年生のギャップというのは小学校の教育そのものの問題があるのではないかと私はどうしても思ってしまうんですね。その辺りを小中一貫だけで解決するということでなく、中身のテーマについては相当いろいろやらなければならないというふうに思っています。
 その一つに教職課程の問題もやはり関わってくるのではないかと思います。以前の教職課程の改正の時に、カウンセリングの必修の時間が増えて、その分教育哲学や教育史の時間がほとんど減ってしまってなくなっているという状況があります。そういう、学生の時に自己と向き合うとか、思想的なものをきちんと捉えないで、中高の非常に難しい子どもたちに向き合って教育するというのはなかなか難しいと思うんですが、教育哲学などというものは結果が出るようなものではありませんから、最近はそういうものはみんなカットされて、講座が無くなっているという状況があることは分かりますが、しかし教育に関係するものだけは、そういうふうに結果主義ではない形で教職課程を見直すと、そういうことをセットにしてやっていかないと、制度だけ作ってもなかなか成果は上がらないのではないかなと思っています。以上です。

【小川主査】何度でもかまいませんので、また後からでも御発言をよろしくお願いしたいと思います。他にどうでしょうか。では野木委員どうぞ。

【野木委員】横浜市では、横浜型小中一貫というのをやっておりまして、それなりに成果が出ております。皆様方のお話を聞いていても、非常に成果が出ているというところが多い。ただ私も、現行の制度でもできるのでしょうが、でもやはりこの義務教育学校のようなものを作っていただいた方が選択肢は広がると思うんですね。今も本当に様々な条件、様々な地域の要求等がございます。ですから、そこに合わせてそこの方々が選択できるような形で、選択肢を増やすというのはもう基本ではないかなと思います。そういう意味で、特に免許との関係で義務教育学校というものを一つの制度として作り、そして免許をもっとスムーズなものにしていく、そういうことについて、私は非常に賛成でございます。それと同時に、こういった多種類のものを作ることによって、先生の質を免許との関係でもっと上げていけないかと思います。今はほとんど一律ですよね。それをもう少し、付加価値を付けるような形にできないのかなということを思っています。以上です。

【小川主査】はい、ありがとうございました。他にどうでしょうか。天笠委員。

【天笠委員】三つ申し上げたいと思います。まず一つは、これまでそれぞれの学校・地域のケースをここで御紹介いただいて、勉強させていただいたんですが、その中で、もし時間の余裕があればもう一つ事例の紹介があってもよかったかなと思っております。ただ、日程的に御事情がありますのでやむを得ないと思いますが、それは何故かというと、震災地においてこの小中一貫がどう受け止められてるのかということについて情報を得ておいていいのではないかなと思いました。先ほど井上委員もおっしゃいましたが、新しいまちづくりと小中一貫とを非常に接近させた、そういう発想で捉えられた具体的な動きがあるということを、我々としてどう受け止めたらいいのか。また、現に被災地で緊急に避難している学校の中には、小学校と中学校を施設的に一緒にせざるを得ない。そういうところで一緒になっている子どもたちの様子について、とある学校に伺わせていただいたら、校長先生によれば、それが子どもたちの情緒の安定にプラスに働いているという、こういう話もあったわけです。全体としてはどうか分かりませんが、ただ、被災地においては、これからのまちづくりとか学校づくりの方向として、この小中一貫の在り方ということが一つの選択肢の中にあるということは、私の個人的な理解ですが大変重要なところではないかなと思っております。それが一つ目です。
 それから二つ目。今日の本題になる話かと思います。やや教科書風な話で恐縮でございますが、19世紀、20世紀、21世紀、こういう時間の流れからいくと、御承知のように学校の歴史というのは高等教育、大学を前提にしてそれから制度が降ろされてくるという意味における、今でいう高等学校、中学校という歴史と、一方においては庶民の学校があって、これを積み上げていく、そういう歴史がそれぞれあって、それが20世紀には中学校、高等学校というそういう両者の制度を一緒に折り合わせるような形になりました。先ほど20世紀型教育という言われ方をしましたが、20世紀型というか、ある意味でいうと、中等教育段階をサンドイッチにして小学校と大学がある。また、御承知のように、今我々がイメージしている、こういう姿が19世紀型、20世紀型とすると、折々にその制度的な矛盾というのがいろいろな形で出てきていて、今の段階ですと高等学校の先ほどお話に出ました格差という言い方になるのか、あるいは機能不全、という言い方はちょっと行き過ぎかもしれませんが、そういう形で折々に現れてきている。中等教育段階というのは、高等教育、大学教育との折り合わせという課題があって、だからこそこういう学校の接続ということが検討すべきものとしてこういう形で設けられているということと、そこを超えていくのが21世紀型とすると、この義務教育学校というのは、また一つの選択肢というか、あるいはこれまでの歴史を超えていく、そういう発想として定義されている部分があるのではないかなと思います。そういう意味では、もう一度義務教育のところをしっかりとてこ入れして、そこをしっかりさせながら制度全体を捉え直していくという、そういうこととしての一つの問題提起がこの中に入っているという、私はそういう受け止め方をしています。ですから、現在の学校のそれぞれの存在があって、その間の接続という在り方を我々が検討するという、そういう問われ方もあるんだと思います。その一方で今申し上げたように、もう一度全体の枠組みの中で改めて義務教育学校の位置付けを考える、そういう歴史的な位置付けについて検討の必要性があり得るのかなと思っております。それが二つ目であります。
 三つ目としては、先ほどお話があったコンパクトシティということとの関わりなんですが、私も現地に伺わせていただいた時に、そういうまちづくりということと、小学校、中学校がそれぞれ存在しているという中には、摩擦があったりミスマッチがあったりして上手く一体となって動いていないという状況もあるのかなと思いました。この点について、それぞれの地域においてこの話をそれぞれがそれぞれとして起こしているという時に、その辺りとの整合性ということもまた問われてくるのかなと思います。以上です。

【小川主査】はい、ありがとうございました。では高岡委員、そして向山委員ということでお願いします。

【高岡委員】私、今は筑波の教員研修センターというところにおりますが、昨年まで島根県の大学におりまして、大学が所在する松江市が、もう6、7年になりますでしょうか、小中一貫教育ということで、段階を踏んで、今は中学校区を中心にして小中一貫教育に一生懸命取り組んでいます。その途中の段階で、私の大学の附属学校において幼小中の一貫教育というものを作ろうということで、その時は確か幼稚園も含めて4・3・4というような枠組みを改めて作り直すということをやっておりました。
 もちろんその成果が松江市にしても附属学校にしても十分に現れたというところまではあまり行かないわけですが、それは時間が掛かる事ですので、ただはっきり言える事は、これまで幼稚園、小学校、中学校という、特に附属学校の場合は同一敷地内にあってもですね、学校が違うことによって全く背中合わせで仕事をしてきた。極端な例を申しますと少し恥ずかしい話なんですが、運動会でそれぞれのグラウンドを共用して使おうじゃないかという話が出た時に、小学校は中学校に貸さないとか、幼稚園の敷地に入ってくるなとか、そういう議論が7、8年前にはまだあったんですね。それで、その一貫教育ということを考え方としてきちんと取り入れながら幼小中の教員が協力しないとできないかと。その過程で小学校外国語活動というものも入ってきたりして、いろいろな交流が起こる。最初のうちはやはり人と人、持っている文化がどうも教員の世界で違う、小学校と中学校と全く違うという状況にお互いが驚きました。これも接触して初めて違うということが分かってきたなんて半ば笑い話みたいなところから始まったんです。結論ですが、やはりそういう学校の仕組み、学年の仕切りというものを変えていくこと、ここでいえば、9年制の一貫教育の義務教育学校を作るということは、やはり学校改革という観点から言えば大きな起爆剤になると、その点で私は期待をしています。
 それから更に一歩進めて、国と地方の関係の問題で言うと、この9年制の義務教育学校、様々な事例も教えていただいて、なるほどなと思う先進事例もたくさんあったわけです。その中で、うちは6・3で一貫教育やるとか、あるいは5・4でやるとか、4・5でやるとか、4・3・2でやるとか、そういう9年制なんだけれども、9年制という統一的な学校制度の枠組みの中でその年齢層とか学年の単位を少し小さく区切っていくような取組、そういうことがやはり地方の市町村レベルで自由に選択できる、こういう仕組みを作っていくということがやはり大事ではないかなと思います。枠組みとしての9年制というときに、それは9年一貫で間がないんですよという話ではない方がいいわけです。そうした中で国としての役割とは何かと考えてみますと、一言で言えばやはり基盤固めをしっかりやってもらうということではないかなと思います。義務教育制度、あるいは義務教育学校がより良い学校になっていくための国の役割、これがやはりあるだろうと思います。
 その場合に、財政問題、教員の定数問題などは一応置くとしますと、大きく二つありそうな気がします。一つはやはり先ほどから出ています免許の問題です。免許状の問題は、今構造的には、小と中の近接性よりも、中高の教科担任制という学校制度の下で中高の近接性はもう完全に確保してあるわけです。だから中高一貫教育というのは先に始まったかと思うわけですが、逆に言えば小中の近似性というのは免許法上確保されていない。むしろこれを一緒にしようと思えば2枚取れという話になってきますが、2枚取るというのは教員養成系の学校で相当頑張って両方とも一種免許になる。片方が二種免許でよければ卒業検定程度のところで処理できるかというような内容に今なっています。免許の中身の問題は別にして、現在の教育職員免許法というものが持っている仕組みは、小中一貫教育という観点からいえば相当変えていかなければいけない。つまりどちらが先かという問題になるかもしれませんが、義務教育制度というものを、9年一貫教育という仕組みもあり得る、あるいは枠組みとしてはそう考えるという観点に立った時に、次の段階で免許の問題は出てくるというのが妥当な見方かなと、免許法が先に変わるということはやはりあり得ないだろうと思っております。
 それともう一つ、今の免許法の問題は「教える人」の問題ですが、もう一つは「中身の問題」、教育課程の問題です。前々回、私、出させていただいた時にちょっと出ていたような気がしますが、この学習指導要領というものをどう編成していくのかということに大きく関わってくると思います。徐々に改善されてきて小中のものが一冊にまとめられたというお話も伺いました。その辺りは素人でよく分かりませんが、学習指導要領の次の改訂作業の時には、当然義務教育期間における学習指導要領という明確な論点をもって指導要領の改訂作業をやるべきだと思いますし、今、国の役割、基盤固めというところでやるのであれば少し論点を整理して早く取り組まなければいけない問題だと思います。

【向山委員】事務局が説明していただいた資料3の3ページ(1)、(2)に関わって3点話をさせていただきます。義務教育学校を作ることの意義ということなんですが、小学校1、中学校1という、1+1を足し算して2ではなくて、これを作ることが2.5とかあるいは3になるというようにプラスのものが出てくるというのであれば義務教育学校を作る意義があると思います。例えば、1+1を2にすれば学校の子どもの数が増えて規模が大きくなる、あるいは教員組織が大きくなる、あるいは年限が長くなりますから非常に計画的な教育活動ができるようになる。あるいは上級生のメンター機能といいますか、下の子どもをリードしていくようなリーダー性を作れる。また、保護者のことはこれまで議論していませんが、PTAだって1年生から9年間できれば、上の年齢の高い保護者が若い保護者をリードしていくこともできる。私も小学校の校長を11年やっていましたが、地元の中学校のPTAは3年間ですから、どうしてもどんどん親も変わっていくんです。9年間になれば保護者集団というのは大変しっかりできてくると思います。そういった、規模も大きくなる、年限も増えていく、それが1+1が2ではなくて2.5とか3になっていけばいい。あるいは今の小中一貫校がやや不安定で、首長さんなり自治体の教育長さんの強い思い入れがあったり、住民の一定の理解があるところは進んでいるんですが、まだまだしっかりしていない。それがこういったものを作ることによって、長く安定してやっていけることも1+1が2.5になるというところの意義だろうと思います。
 二つ目はやはり心配な面です。6歳から15歳の子どもたち9年間が、一つの場で学ぶのはやはりどう考えてもいかにも長いという気がしてならないんです。これももちろん、成功していろいろなことを気概を持ってやっていける保護者ともそれなりの関係を作れていければいいんですが、何か途中に、挫折なりいろいろな問題があったり事が起きた時に、9年間を同じ空間で過ごしていくことの重さというのは、心配があります。もちろん、自治体が小中一貫校を選択してそれぞれのやり方でやっていくことはいいんです。しかし義務教育学校として9年間というふうにやっていってしまった時のその9年間の重さ、これは私たち大人がどう考えるか、デメリットの部分をどう考えていくか慎重な議論が必要と思っています。
 三つ目です。いろいろな自治体があるわけですが、その中には人口減少地域もある、学校数が少なくなってきている地域もある、そういう中で統廃合して二つの小学校と中学校をまとめていくというのは、これはやはり経済的にも大変効果があるでしょう。首長さんもこれを進めたいということがあるとは思います。それは一つの方法なんですが、安易という言葉を使っていいかどうか分かりませんが、その自治体の経済的なものを何とか興していくために小・中学校を一つにまとめて義務教育学校を作り、ランニングコストを抑えていくということで進めていってしまうと、何か大きな失敗をしてしまうのではないかと思うのです。そうしないようにするためには、例えば定数上の問題も小学校と中学校であったものをそれよりも少しハードルを高くするなど、もしかしたら校舎の基準なども含めて、安全性の問題も含めてハードルを高くするような仕掛けが多分必要かもしれません。併せて、やはり義務教育学校というふうに合わせていけば、我が国の義務教育の学校数全体が減っていく可能性があるわけです。今はざっといえば、我が国は小・中学校は約3万校あるわけです。私はよく校長会などでも、大体寿司屋の数が3万で、郵便局の数が2万5千で大体同じくらいの数なんだと。コンビニが約4万5千くらいですかね、イメージとしてね。町の中にそういった小学校なり、あるいは小・中学校があるということで日本の国家というのは形成されているわけです。そういう学びの場というものが町の中、村の中から少なくなっていくということは、学びの文化の拠点といういうのはやはり長らく持ってきた我が国の風土があります、そういう中でそういったシンボルが減少していくという、その辺についてはどう考えていくのかということです。もちろん、跡地利用で公民館にしていくとか、老人ホームにしていくとかいろいろなことを考えていくのもまたいいのかもしれませんが、学びの拠点をどうしていくか、減っていくということをどう考えるべきかという辺りの慎重な議論が必要だなと思います。以上です。

【小川主査】はい、ありがとうございました。では赤沼委員。

【赤沼委員】はい、小中連携・接続の目的というのが、中1ギャップの解消であったり、学力向上であったり、あるいは健全育成であったり、コミュニティの力そのものの向上であったり、あるいはこの間の産山村や檜原村のように小規模校の教育活動の活性化という側面もあったり、いろいろ目的が違うところから出発した小中連携が今、行われていると思うのです。そうしますと、その目的がそれぞれ違っている中で、ベストな形は義務教育学校制度を創設することかどうかということになると、私は中学校の現場におりますが、やはりそれで全てが解決するとは到底思えないです。それに今回この会議で、いろいろな事例の発表等もございまして、その中ではそれなりの成果を収めてはいますが、それはその研究校として、また先進的な取組として、また行政側のリーダーシップの下に行われてきて成果と課題がそれぞれまとめられている。そしてまたその成果と課題も目的がそもそも違う、多少ずれているので、全て同じではない。ということになると、今回議論している義務教育学校については、私はやはり現時点では義務教育学校を設立しようという結論にはなかなか行けないと思います。現在の小・中の6年と3年の間で小中連携が必要だというのは現場にいる私も非常に強く感じています。それらを目的として、中1ギャップの解消、それから健全育成という面が本校の場合などは一番の目的ですが、小中の連携の必要性というのはあるけれども、現時点でじゃあどういう形でやるかという選択の中に、義務教育学校制度にすれば解決するというふうにはどうしてもならないと思います。学校の実情、地域の実情、それから行政の考え方、そういうものが今のところ、それぞれ別々の形で進行していて、そこで、この会議で義務教育学校の制度を創設することについて、できるとか将来的には全ての学校をそうしようとかということにはならないと考えています。

【小川主査】はい、ありがとうございました。他にどうでしょうか。では、酒井委員。

【酒井委員】前回は欠席いたしまして申し訳ありません。まだ整理が上手くできないんですが、今赤沼先生からお話があったトーンに私は近いのですが、連携と一貫というのはかなり違うものだと考えております。ですから赤沼先生がおっしゃったとおりで、今の6・3制なり、それを制度改革で合意を要請する時だとかは勿論かもしれませんが、その中でその間をつなぐ上で何をしたらいいのかという議論と、9年間一貫して教育することを議論するのとは随分、違う類の議論をすることになるのかなと思います。この部会では連携・接続のために何をしたらいいのか、今ある様々な問題を解決するためには何が必要なのかという点が多分一番重要で、このための方策を検討していくことが一番の課題だと考えています。
 その上で義務教育学校についてなんですが、整理すると二つ、一つは9年間を一貫して教育することの是非、それからもう一つは一部の学校に義務教育学校を導入すること、つまり選択肢の一つとして導入することの是非、ということを分けて考えなければいけないと考えております。
 前半の方は、やはり今の6・3制のメリットという部分について、ここではその改革の事例がありますが、今の現行の6年制の教育、3年制の教育が何を効果としてもたらしてるのかの検証というのは実は非常に難しいんですが、ただそれはあると思うんですね。そこをやはりしっかり確認した上で次に向かわなければいけない。日本の学校は特に、アメリカはいろいろな事例がありますが、学校単位での教育効果ということを非常に重視した、特に特別活動を非常に体系化していく性格の学校だと思いますが、その中で、国が制度変革をするとそれをも崩すことになる。それがいいのかどうかということがあると思っております。
 二番目に、先ほど申し上げました自治体の中の一部に義務教育学校を一つか二つ作るということ。これは明らかに、複線型になっていく。現行で中等教育学校がありますので、同じ自治体の中に小学校、中学校、中等教育学校、それから義務教育学校ができるという、そういう形の制度設計になると思います。そこで選択とおっしゃるんですが、特に義務教育段階ですと入学時は6歳ですので、行く範囲は限られている。そうしますとその地理的な問題でどこかに割り振られる、それが選択でありながら選択でない部分がある。その同じ自治体の中にいろいろなものが走っていくということがシステムとしてどういう効果をもたらすのかが見えないのですが、市自身がその公教育の在り方としては一律のサービスをできるだけ十全にする。その辺りで学校ごとの所管があることは大事だと思いますが、それはある範囲の中でだと考えています。というようなことで、やはりこれはかなりいろいろなことを考えておく必要がある、義務教育学校にすることが先ほど申し上げました連携のための形として一番に置くということでは疑問だということになると思います。以上です。

【小川主査】はい、ありがとうございました。では、新井委員、よろしくお願いします。

【新井委員】先ほど御紹介しましたような学力の観点、学力格差とか学習意欲とかを考えますと、やはり9年間でどうするかという観点では、義務教育学校というものはオプションとしてはあり得るのではないかなと思います。その時の課題は、中1ギャップという言葉はなくなっても、卒業した後の高校への問題の先送りになっていくだけだと意味がないということになると思います。御紹介しましたように高校ギャップは非常に大きいので、そこをそうならないようにするということになりますと、やはりこの資料3の3ページにあります教育課程の問題については、弾力的な運用ができないとそのメリットが生かせないということになるかと思います。一方で義務教育学校以外の学校も残るわけですから、そこでのその中1ギャップの課題はどうするのかという問題は別にあるわけです。ですから一方でその多くの現在の学校の連携はどうするのか、それから一貫をどうするかという課題は残るわけで、この課題はどうするのかということと、それから多様な学校が並立した時に、義務教育ですから転校とか、学校を移る場合の対応はどうなるのかという辺りの提案が必要になってくると思います。

【小川主査】はい、ありがとうございました。では、村上委員、清水良一委員、そして佐藤委員、お願いします。

【村上委員】失礼します。この議論がされてきたのが、小・中学校の段階で、とりわけ、連携・接続というところをやはり考えていかなければならないということだったと思いますし、それが中1ギャップの問題も大きかったと思うのですが、やはり小・中学校で、問題というか、もっとこうしたらいいということで考えていくとすれば、前回も言いましたけれども、やはり小・中教員が互いの教育課程を理解して、学力観、授業観を小中一貫したものにする、系統性というものを今一度きちんと考えていかないとならないということだと思っています。それから、小学校が全教科担任で中学校が教科担任であるのは、児童の発達上必要なことでもあるし、そうした小・中学校の独自性を重視する、そのいずれの観点も大事にして小中一貫教育を考えていくと。そこにいくには、やはり小・中の教員が小・中学校の新しい学校文化を作ろうということで、もう一度教育課程を中心とした学校づくりをするのだという、目的を持って考えていきましょうということがすごく必要だと思うのです。少子化の問題とか、いろいろな社会の変化など、対応しなければならない問題も、地方でも都市部でもいろいろあると思いますが、それらも考え合わせてやはり今、小中一貫で9年間で子どもを育てるというところに視点を置いて、義務教育学校というものを、今後どういうふうに考えていくか、義務教育学校の位置付けというのがすごく大事になってくると思っております。それを義務教育学校でやるのであれば、やはりそういう時期でもあり、そういう点ももう一度考え直すということ。ベースにしていくことは今まで議論してきた小・中学校段階のそういう問題点であり、それをどう解決していくかいうことも含めて、そして、これからの教育をどのようにしていくかということを合わせて考えていく必要があるなと思います。それが義務教育学校であるとすればその位置付けをはっきりしなければならないと。一つは、例えばですが、義務教育学校をどうするかということになると、義務教育学校を押していくとすればどの学校もやらなければならないということで、義務教育学校でまずできるところからやりたいというふうに学校が選択できることが必要だと思いますし、全部の学校がやらなければならないので、いずれ全部の学校がしますという方向が必要かなと思います。保護者がこの学校に来たい、私は義務教育学校に、私は従来の学校にと、そういう学校ができたら選択しなければならないですよね、そういう選択はどうかなと思います、義務教育ですから。だから、学校選択が行われているような地域であればできるかもしれませんが、保護者が学校を選ぶという仕組みは現実問題としては難しいと感じているところです。以上です。

【小川主査】ありがとうございました。では、清水良一委員、お願いします。

【清水良一委員】私も学校種間の連携・接続の在り方に大きな課題があるという御指摘については、全くそのとおりであり、今回いろいろな御意見、お考えを聞かせていただいたことは有り難く思っております。しかし、課題解決のために制度改革を検討することは重要でありますが、初めから制度改革ありきとしてしまいますと、これまでにもあったように、やはり現場がその対応に追われ、振り回される可能性がありますので、気を付けなくてはいけないと思っております。ただし、色々な選択肢を探っていく、可能性、必要性を探るという意味におきましては、今、お話になっております義務教育学校制度について検討する、その必要性はあると思っております。けれど、やはり視点としては、大人、学校を運営する方の立場とともに、学ぶ側の視点といいますか、児童、生徒にとってそれがいかなるものであるか、私はやはりこの義務教育学校というのは9年間となりますと、学ぶ側からすると息が詰まる、また新鮮さが出し切れるかどうかというところも大事になってくると思います。そういう意味では、大人の視点とともに学ぶ側の子ども達の視点から見てそれがどうかなというのも大事になってくるように思っております。そして、私どもが何よりも大事と思いますのは、やはり視線をもっと下に落として、つまり子ども達の、学ぶ側のところに視線を落としていって、今ある学校制度の中で、生涯学習社会、あるいは知識基盤社会と言われる中にあって、「学ぶ」って、面白くって、面白くって、面白くって仕方ないというような子どもたちを日本中に育てていくこと。私どもがおつかえしている小学校段階ではその下地を子どもたちに付けていくことだと思っているんです。そのためにはやはり、忙しくて手が回らないというのが多くの先生の現状であり、余裕がない、教えなければならないことがありすぎる、ということが今言ったことにつながってるのではないかと思っております。今日、とても興味深い御説明を新井委員から頂いて、資料2の18ページのところに「学習上の悩み」が載っております。子どもたちは、「上手な勉強の仕方が分からない」と言っているわけですね。これは正に私ども教員に責任があるのではないかと思っております。それはやはり振り回されているということがたくさんあるのではないかなと思っているんです。そういう意味では、興味深い説明を頂いたことに感謝するとともに、この作業部会ではいろいろなところで御説明がありましたが、小中連携とか一貫教育とか、それをどう定義をしていくか、この作業部会としてその辺のところに踏み込んで言葉の定義をしていく必要があるのではないかと思っております。以上です。

【小川主査】ありがとうございました。では佐藤委員。

【佐藤委員】この作業部会は、学校段階間の連携・接続ということで、当初から、例えば中1ギャップの解消であるとか、または学力の向上、創造性の向上といったことが目的だというところから私は入ったような気がいたします。その中で、いろいろなヒアリング等で聞かせていただいて、いろいろな問題、またはメリット、デメリット、それぞれ出たと思うのですが、その中でやはり一保護者の立場からしますと、やはり全てがケアできるような、そういうことはまず無理だと思うんですね。そうすると一つのメリットがあると、そちらに振っていくのがいいのかなという考えもありますが、実は、話が飛ぶのでこれは例えになるかどうか分かりませんがお話しさせていただきます。私は今回の被災県、福島県から来ておりますが、この一年間、まず現在の制度の中で学校は運営せざるを得ないのですが、その中で、私もちょっとおかしいんじゃないかなという感じがしたのが、子どもたちが「学ぶ」ということ、「学習する」ということ、その部分が欠けているのかなというような気がいたしました。学校の現場はコマ数を合わせるのが精一杯だったと、それを「求められている」とは先生方も言いませんが、そこが結構苦労したようで、とにかくコマ数だけを合わせる、学習はその後、二の次三の次になるということを結構裏の方で聞いております。そうするとやはり、こういう震災があった時でさえも対応できない、そういった制度であれば、やはり新しいものが必要になるのかなと。
 それに例えば、9年間の一貫教育をやった場合に、今までにもどなたかおっしゃっていましたが、小学校と中学校それぞれで同じ事をダブってやっている、それは無駄だと、そういったところが9年間の一貫教育をやることによって変わっていくのかなと。そうすることでまたいろいろなことができるのだろうということで、現制度、それも大事なんでしょうが、そういったことも選択できるような、義務教育学校制度といったもの、柔軟な対応ができるようなものがあってもいいのかなと思います。そういう意味では多くの生徒が多分からんできていると思いますので、それで一つ一つ詳しく見ないといけないこともあるんでしょうが、そういった部分もなければやっぱり難しいのかなと。でなければこういった作業部会でそういった話が出てくることはなかったのかなと思いますし、そういう課題があるから、こういうことはどうしようかという提案になってきたのかなという感じがいたしました。

【小川主査】はい、ありがとうございました。では最後、無藤委員、お願いします。

【無藤委員】私は義務教育学校の必要性はあるのではないかと思うのですが、やはり現行の全国的な状況を考えれば、オプションとして提示しながらどれがよいかを何年かかけて検討していかなければならないと思っています。そもそも先ほど事務局から御紹介がありましたように、中教審の義務教育特別部会の報告というのがありましたが、その中で打ち出された一つの考えは、義務教育そのものをしっかりやろうということだと思うのです。そう考えてみると、国の役割として一番大事なことはその義務教育を修了した時の学力の保証だろうと思うんですね。そうだとすると、その途中のカリキュラムについては、そのためにある程度国として提示していくけれども、できる限り地方、あるいは学校現場に委ねるところ、できることはそちらに移送していくという理念がございます。つまり、義務教育特別部会の報告の中に多分あったと思いますが、国としてそのインプットとアウトプットに責任を負って、その間のプロセスをできる限り現場に委ねていくということだろうと思うのですが、そう考えてみますと、義務教育学校というのは極めて当然の発想なのではないかと思います。
 それからもう一つ思っているのは、私も小中の連携等の実践に関わって、極めて印象なんですが、様々な問題がそこにあって、これ以上それを広げていくためには、組織の改革にも手を付けていかないといけないのではないかという気がしています。今でもいろいろできる事はたくさんあるんですが、全国的には、義務教育学校とか、名称はなんでもいいのですが、そういうものを作ることもできるという国としてのメッセージというのは非常に大事な意味があると思います。それとともに、前回私は欠席したのですが、小規模の学校の実情についてのお話があったと思うのですが、私もそういうところに関わりが少しありまして、そういう小さな町で、小学校一つと中学校一つ、更に言うと保育所も一つあるのですが、それで子どもたち十数名が、0歳から15歳までがずっといるという状況を考えた時に、まだ小学校はそれなりに成り立つというか、先生の数が10人くらいにはなりますよね。けれども中学校として独立に維持するというのは、先生の数からいうと極めて無理があるんですね。中学校教育というのはもともともう少し大きな規模で想定されていると思うので、そうすると、だから小学校と一緒にすると上手くいくということではないんですが、もうちょっと組織として何とかしないと校内の勉強会すら成立しないという状況になります。その辺の問題もあると思います。
 仮にオプションであれ、義務教育学校のようなものを9年制一貫学校として作る時には、私は二つほど留意点がいると思っています。一つは、品川区その他を見ても、完全に1年生から9年生まで一貫という形も一つの構想としてあり得るわけですが、その間を5・4で切るとか、あるいは3・3・3とかいろいろな区切り目があり得るわけですね。それでその区切り目というのは、国としての指導要領をある程度満たしながら、独自のものを作るなりなんなりということが、あるいは場合によってはその区切り目に卒業式に類したことを入れることだってできるわけで、そういうことが一つあり得る。つまり9年制を取り入れるということは必ずしもその子どもにとって1年生から9年生までばーっと進むとか、教員にとって1年から9年まで区切り目なく進むとは限らないようなやり方があるというのが一つです。
 それからもう一つは、当然ながら今の、特に都市部の状況を考えれば、私立学校を受験するとか、あるいは単に転校するとか、そういう意味で途中で抜けることへの対応というものは、それを子どもの保護者に任せるというよりは、やはり義務教育の範囲ですので、学校としての対応というものについて責任を持っていただきたいと思います。
 更にもう一つ、意義なんですが、一つは以前に申し上げたと思いますが、現行の特区なりあるいは特区ではない様々な制度の緩和、規制の緩和がありまして、その中で自主的にいろいろなことができるわけです。そういう意味では、仮に義務教育学校を作るにしてもこれは法律の改正を伴うし、多分様々な議論を整理するのに時間がかかると思います。一方でそういうことが必要だと考える地域にとっては、早くそういうことをしてほしいということがあって、とすれば現行の枠の中で、あるいは特区その他の制度を活用する中でかなりできる事がある。それをもう少し文科省としても、参考資料のような形で明示していくと、実質的に進みますし、もっと広がっていけばそこでの検証の幅も広がって、先ほど御意見にあったように指定校だけだった、だけで上手くいくのかもしれないという話ですね、もう少し検証できるのではと思います。免許のことはいろいろ聞きますが、前にも申し上げましたとおり、やはりこれは十分、いろいろな他の部会でも検討する必要があるとは思います。以上です。

【小川主査】はい、ありがとうございました。一通り、伺いましたが、もう少し時間がありますので、もう少し追加の御意見がある方がいらっしゃればお聞きしたいと考えますがいかがでしょうか。また、今日の資料3にありますとおり、義務教育学校以外で、小中連携・一貫教育を推進するために更にこういうことが必要ではないかというような御意見がもしもあればお聞かせいただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。はい、では、新井委員。

【新井委員】連携の話なんですが、今日改めて報告させていただいた資料を見る範囲ですと、ざっと見て、2割、3割なんですね、連携しているのは。それでこれまでいろいろ事例を見せていただいた連携の事例そのものは非常に重要なことですので、この連携をですね、どのくらいのその数値目標といったらおかしいかもしれませんが、それを高めるための目標値とか、具体的にケアしていくような方法を考えていく必要があると思いました。

【小川主査】ありがとうございました。今までの何回かの審議のその時々で、義務教育学校をどう考えるかという議論が出てきたんですが、今日、真正面から義務教育学校をどう考えるかということを少し時間をとってまとめてみました。もう私の方でまとめる必要はないと思うのですが、こうやっていろいろなことが学校であって、接続等々の問題がいろいろな形で顕在化していく中で、義務教育学校を考えていく意味というのはあるのではないかなという御意見の方もいらっしゃいました。ただ、けれどもその際も義務教育学校を一つのオプションとして、選択肢として自治体や地域の事情に応じて選んでいく、創意工夫していく一つのツールとして、選択肢の一つとして考えていくということは少し前向きに検討してもいいのではないか、しかし、その際にも、それをどういう形で、そしてどういう条件の下で問題を軽減していく上でどういう条件づくりが必要なのかと、その辺のところは、例え研究学校として、一つのオプションとして考えていくにしてもかなりいろいろ詰めるべき問題もあるのではないかという、そういう意向があると思います。
 もう一方では、やはり現時点で義務教育学校を一つのオプションとして提案するということについてもかなりもっと慎重であってもいいのではないか、今必要になるのは、小学校と中学校をつないでいくために何をすることがいいのかという、その辺のところの詰めの作業というか、小中連携、小中一貫と言っても全体から見るとまだまだ、僅かなパーセンテージですので、むしろそういう小中連携、小中一貫を広めるために、促進するもっと違った方策を考えるという方が、現時点ではメインの課題になるのかなという、そういう御意見の方もいらっしゃいまして、作業部会全体としてこういう方向でというようなことですので、義務教育学校に関するある意見に集約する、ある方向にまとまった意見に集約するというところまでは今日は行かなかったのかなと思います。今日頂いた意見を更に部会でまとめる中で、これから整理していきますので、またその整理のたたき台のところで再度この義務教育学校を作業部会としてどう評価していくか、意味付けていくか、もう一、二度皆さんの意見の中でもんでいきたいなと思っていますが、今日はこのくらいにさせていただければと思います。ありがとうございました。では、次回以降の日程がもしありましたら。

【小谷教育制度改革室長】次回の日程でございますが、資料6で御案内しておりますとおり、4月23日15時から17時、文部科学省16階特別会議室で予定しております。

【小川主査】次回以降はこの作業部会のまとめ、整理となります。今日はありがとうございました。これで終わります。

 

―― 了 ――

 

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