学校段階間の連携・接続等に関する作業部会(第7回) 議事録

1.日時

平成23年10月14日(金曜日)15時~17時

2.場所

文部科学省16階 特別会議室

3.議題

  1. 作業部会における検討事項について
  2. 小学校と中学校の連携について
  3. その他

4.議事録

 【小川主査】
 では、定刻になりましたので、ただいまから、第7回の学校段階間の連携・接続等に関する作業部会を開催したいと思います。
 委員の皆様におかれましては、お忙しい中、御出席いただきまして本当にありがとうございます。
 御承知のとおり、第6回までは中高一貫教育に関する審議をしてきました。本日は、小学校と中学校の連携・接続の在り方に関するテーマで、最初の会議となります。
 最初ということもありますので、清水事務次官にお出でいただいておりますので、まず事務次官から一言御挨拶をお願いします。

【清水事務次官】 
 御紹介いただきました、事務次官の清水でございます、今、小川主査からお話もありましたように、第7回目の作業部会ということでありますけれども、これまで、学校段階のそれぞれの接続の問題として、まず、中高一貫教育に関する整理というものを、取りまとめていただいたところでございます。
 今回から、新しいメンバーの方々にもお入りいただきながら、小中連携に関する御議論を開始していただく、こういうことでございます。
 いずれにしても、学校というのは、制度としての学校、つまり、小学校、中学校、高等学校と目標があり、まさに目標、目的と、それに伴う教員の免許制度、そしてカリキュラム、そういうものが、いわば一体となって、制度として完結した学校という形になっている。
 一方で、小中あるいは中高も込みで、カリキュラムとしての改訂を考えた場合、一体その区切りというのはどうなるであろうか、そこは、様々な自治体でも御苦労をいただいたし、工夫していただいた、こういうことであろうと思います。
 その中で、例えば、保育所と幼稚園では、幼児保育との関わりにおいて、新しいシステムが今、構想されている。そういう枠組みの中で、制度としての学校、学校が果たしうる機能、そしてそのファンクションを果たすために必要なカリキュラムでありますとか、教員、教員の資格等々が、そこの中で自己完結できないという状態になりつつある。制度としての学校、教育施設のシステムと、そこに伴うファンクションの部分というものを、よくよく念頭に置きながら、そのニーズに対応するような連携・接続、1つのまとまりというものも考えていかなければならない、そういう状況になってきているのだろうと思っております。
 そういう意味で、例えば、教員の資質能力向上特別部会の中での、教員免許制度の議論などでも、まさに、免許制度を小中、中高、幼小、という形で、括りを、学校・教科相当別に、それだけで完結し、いわばそこが免許状相当しにくい形になっている。そこで本当に完結するものとして考えていってもいいのかどうか、ということでもありますし、それは同時に、行政の在り方の問題にも関わってくる、こういうことだろうと思います。
 そういう意味で、教員免許制度が、教員の資質能力向上特別部会の審議経過報告に取りまとめられた中でも、基礎免許状と、一般免許状という入職から10年目までの段階を構想するものと、それ以降の教職の将来生活の専門性の向上、あるいは、学校における職能分化に対応した専門免許状というようなものも、構想すべきなのか、すべきでないのか、というような議論がなされているのも、まさにそういうことであろうと思います。
 小中の接続ということを考えた場合、いわゆる中1プロブレムというのは、かねて言われて久しいところでありますし、そのために何をどうすべきか、ということも、期待される機能との関わりにおいて、いろいろ議論されているのだろうと思っております。
 いずれにいたしましても、義務教育全体ということを捉えた場合、小中の接続・連携の在り方はどうなのか、あるいは、もっと広がりを持って考えたら、様々な形で重要課題に対応するための環境整備はどうやったらいいのかという問題を、含んでいるわけではございますけれども、基本的に、段差の問題、その他も含めまして、小中の連携・接続等に関して、是非、御議論を賜ればと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

【小川主査】 
  ありがとうございました。
  それでは、本日の配付資料の確認を事務局からお願いいたします。

【小谷教育制度改革室長】 
  本日の配付資料は、議事次第に明記しておりますとおり、配付資料として、資料1から8まで、参考資料として2点、お配りしております、不足等がございましたら事務局までお申し付けください。

【小川主査】 
  よろしいでしょうか。
  それでは、次に、この作業部会のメンバーも変わりましたので、委員の皆様の紹介を、これも事務局のほうからよろしくお願いいたします。

【小谷教育制度改革室長】 
  それでは、今回、新しく委員に御就任いただいた方が多くいらっしゃいますので、改めて委員の皆様全員を御紹介させていただきます。
  御出席の皆様につきまして、御着席の順に紹介をさせていただきます。
まず、本作業部会で御審議をお願いしております中央教育審議会委員、臨時委員の皆様を御紹介いたします。
三鷹市教育委員会教育長、貝ノ瀬委員でございます。

【貝ノ瀬委員】 
  貝ノ瀬です、よろしくお願いいたします。

【小谷教育制度改革室長】 
  千葉大学教育学部教授、天笠委員でございます。

【天笠委員】
 天笠です、よろしくお願いいたします。

【小谷教育制度改革室長】 
 白梅学園大学子ども学部教授兼子ども学研究科長、無藤委員でございます。本作業部会の主査代理をお務めいただいております

【無藤主査代理】 
 よろしくお願いいたします。

【小谷教育制度改革室長】 
 放送大学教養学部教授、小川委員でございます。本作業部会の主査をお務めいただいております。

【小川主査】 
 よろしくお願いいたします。

【小谷教育制度改革室長】 
 京都市教育委員会指導部学校指導課参与、村上委員でございます。

【村上委員】 
 村上です、よろしくお願いいたします。

【小谷教育制度改革室長】 
 次に、本作業部会におきまして、この御審議のために御就任いただいております専門委員の皆様を御紹介いたします。
 東京都目黒区立第十中学校長、赤沼委員でございます。

【赤沼委員】 
 赤沼でございます、よろしくお願いいたします。

【小谷教育制度改革室長】 
 株式会社ベネッセコーポレーション、ベネッセ教育研究開発センター長、新井委員でございます。

【新井委員】 
 新井でございます、よろしくお願いします。

【小谷教育制度改革室長】 
 社団法人日本経済団体連合会社会広報本部長、井上委員でございます。

【井上委員】 
 井上でございます、よろしくお願いいたします。

【小谷教育制度改革室長】 
 大妻女子大学教職総合支援センター教授兼所長の酒井委員でございます。

【酒井委員】 
 酒井でございます、よろしくお願いします。

【小谷教育制度改革室長】 
 社団法人日本PTA全国協議会教育問題委員会副委員長、福島県PTA連合会会長、佐藤委員でございます。

【佐藤委員】
 佐藤です、よろしくお願いします。

【小谷教育制度改革室長】
 学校法人友学園常務理事、日本私立中学高等学校連合会理事、清水哲雄委員でございます。

【清水哲雄委員】
 清水でございます、よろしくお願いいたします。

【小谷教育制度改革室長】
 株式会社CIJ顧問、横浜市教育委員会委員、早稲田大学客員教授、野木委員でございます。

【野木委員】 
  野木です、よろしくお願いいたします。

【小谷教育制度改革室長】 
  広島県呉市教育委員会教育長、長谷川委員でございます。

【長谷川委員】 
  長谷川でございます、よろしくお願いいたします。

【小谷教育制度改革室長】 
  香川県高松市立高松第一小学校・高松第一中学校長、原委員でございます。

【原委員】 
  原でございます、よろしくお願いします。

【小谷教育制度改革室長】
  新たに御就任いただきました専門委員の皆様におかれましては、机上に人事異動通知書を置かせていただきましたので、後程、御確認ください。
  また、配付しております資料の2にございますように、本日御欠席でいらっしゃいますが、この他に高岡委員、向山委員、角野委員、國定委員、清水良一委員に御就任をいただいております、以上です。

【小川主査】
  では、次に、事務局の紹介もお願いいたします。

【小谷教育制度改革室長】
  それでは、事務局の紹介を、座席順にさせていただきます。冒頭御挨拶申し上げました清水事務次官でございます。

【清水事務次官】
  清水です。

【小谷教育制度改革室長】
  山中初等中等教育局長でございます。

【山中初等中等局長】
  山中でございます。

【小谷教育制度改革室長】
  前川大臣官房総括審議官でございます。

【前川大臣官房総括審議官】
  前川です、よろしくお願いします。

【小谷教育制度改革室長】
  尾﨑大臣官房審議官でございます。

【尾﨑大臣官房審議官】
  よろしくお願いします。

【小谷教育制度改革室長】
  中岡初等中等教育企画課長でございます。

【中岡初等中等教育企画課長】
  中岡でございます、どうぞよろしくお願いします。

【小谷教育制度改革室長】
  平林教育課程課長でございます。

【平林教育課程課長】
  よろしくお願いします。

【小谷教育制度改革室長】
  白間児童生徒課長でございます。

【白間児童生徒課長】
  白間でございます、よろしくお願いします。

【小谷教育制度改革室長】
  教育制度改革室室長補佐、髙見でございます。

【髙見教育制度改革室長補佐】
  よろしくお願いいたします

【小谷教育制度改革室長】
  私、教育制度改革室長の小谷でございます、どうぞよろしくお願いいたします。

【小川主査】 
  ありがとうございました。それでは、これから今日の議題に入っていくわけですけれども、今日、小学校・中学校の連携・接続の最初の会合だということですので、一応、私の方から少し簡単な挨拶というか、この作業部会をスタートさせるに当たっての思いみたいなものを、少しお話させていただければと思います。
  先ほどもありましたように、今回が第7回ですけれども、前回の第6回までは、中高一貫教育制度に関する審議を行ってきました。
  中高一貫教育制度に関しては、国公私立及び各地の諸事情で多様な取組があり、中等教育学校、併設型、連携型に共通する課題と共に、それぞれの、独自の課題もありましたが、どちらかというと、ある程度検討すべき課題としてははっきり共有できていた面もありまして、作業部会としては、中高一貫教育制度の議論については、いろいろな激しい意見交換もありましたが、非常にやりやすかったかなという感想を持っています。
  ただ、今日からスタートする小中連携、小学校と中学校の連携・接続の在り方については、中高一貫教育制度よりもかなり多様で、なかなか議論の整理も難しいところがあるのかなと、そういう最初の印象を持っています。
  皆さん御承知のとおり、品川区のように特例を活用し、なおかつ、施設一体型で、事実上9年間の義務教育学校という先駆的な取組をしているところから、現行の小学校、中学校の法制度を前提にしながら、どちらかというと、小学校、中学校の先生方が、自分の学校種での教育活動、授業の振り返りをし、なおかつ、自分達の教育活動の点検を図る契機として、授業公開や教科部会などの交流会から小中連携のスタートを踏み出すという取組など、小中一貫とか、小中連携・接続と言っても、全国の取組を見ると、自治体や地域や学校レベルで、多様な取組が進められているというのが実情ではないかと感じています。
  そういう点では、小中の連携・接続については、目的や形態が、今言ったように、非常に多様である分、取組の手法や成果の評価、また問題の整理等、さらに、小中一貫の成果を更に広げていくための課題ということについては、そう簡単に整理できない、なかなか難しい作業になるのかなという印象を持っています。
  そういうこともありまして、この作業部会では、まず最初に、全国各地で取り組まれている小中連携・接続の実際を、丁寧に、そして正確にフォローしながら、問題と課題を、この作業部会の委員の間でしっかり共有していけるように審議を進めていければなと思っています。
  そうして共有した問題と課題の整理の上に、小中連携・接続の成果を発展させていくための何らかの手立て、これについても、9年制の、一条校の義務教育学校を作ってほしいというような要望から、カリキュラム上の、もう少し柔軟な組み換えとか、人事上の配慮とか、いろいろな対応があり、考えなければならない手立てというものが、これも多様に存在していますので、その辺りについても、小中連携のいろいろな取組のレベルに応じて整理しながら、前向きな意見交換ができればなと考えております。およそ半年くらいの審議になるかと思いますが、どうかよろしくお願いしたいと思います。
  それと、これから審議に入っていくわけですが、その前に、この作業部会の会議の公開と傍聴についての規程について、説明させていただきたく思います。配付資料の資料3を御覧ください。「学校段階間の連携・接続等に関する作業部会の公開について」という資料ですが、この作業部会は公開を原則とし、公開及び傍聴については、資料3の各項目に沿って進めたいと思っています。なお、カメラ撮影についても、頭撮りだけではなくて、フルオープンにしておりますので、この点も御了解いただきたく思います。よろしいでしょうか、この点について何か御質問等ございますか。
  それでは、この資料3に基づいて、この作業部会の運営を図らせていただきたいと思います。それでは審議に入っていきたいと思います、事務局から配付資料の説明をお願いいたします。

【小谷教育制度改革室長】
  それでは資料4を御覧ください。この学校段階間の連携・接続等につきましては、平成20年6月の初等中等教育分科会におきまして、当時の金森初等中等教育局長より、分科会に対して御審議をお願いしております。こちらにアンダーラインが引いてございますように、特に、小中の連携につきましては、教育基本法と学校教育法の改正により、義務教育の目的や目標が規定されたことを踏まえ、御検討をお願いしたところでございます。
  また、資料5を御覧いただきたいと思いますが、資料5に掲載しておりますように、平成17年10月の中央教育審議会答申におきましては、設置者の判断で、9年制の義務教育学校を設置することの可能性や、カリキュラム区分の弾力化などについて、今後検討を要する事項として挙げられておりましたし、あるいは、平成20年7月に閣議決定されました、現行の教育振興基本計画におきましても、小中一貫教育を含め、各学校段階間の円滑な連携・接続等のための取組について検討することとされております。
  こうしたことを受けまして、この作業部会の設置が、資料1にございますように、平成21年7月に、初等中等教育分科会で決定いただいております。
  これまで、冒頭、小川主査からもお話がございましたように、この作業部会では、中高一貫教育について御審議いただきまして、本年7月に審議の内容を、「主な意見等の整理」として取りまとめていただいて、初等中等教育分科会に御報告いただきました。
  また、幼小の円滑な接続ということにつきましては、無藤主査代理に座長を務めていただきました調査研究協力者会議において取りまとめていただいております。これらにつきましては、参考資料として配付させていただいておりますので、後ほど御覧いただければと思います。
  そして今回から、当作業部会におきまして、新たに小学校と中学校の一貫教育等を含めた連携・接続の在り方について御審議いただきますが、具体的には、例えば、小・中学校の円滑な連携・接続を図るための学習指導や、生徒指導等の在り方ですとか、あるいは、交流授業とか指導計画の作成、教材開発、人事上の配慮などといった、小・中学校間の人的、物的な連携の在り方ですとか、あるいは、更に一歩進んで、小・中学校間の連携を促進するための教育課程や、教員免許等の制度的な枠組みの在り方ですとか、そして、中教審答申でも指摘されておりますような、新しい学校種としての、9年制の義務教育学校の制度化の是非と、こういった事項につきまして御検討いただき、先ほど主査からお話がございましたように、来春ぐらいを目途に委員の皆様方の意見を取りまとめていただいて、初等中等教育分科会に御報告いただければと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

【小川主査】
  ありがとうございました。作業部会における検討事項と、今後の運営等についての御説明がありましたが、今の点について、御質問がございますでしょうか。ないようですので、次に進めさせていただきたいと思います。
  それでは、今日の本題である議題2、小学校と中学校の連携について、これも資料に基づいて、事務局から配付資料の説明をお願いいたします。

【小谷教育制度改革室長】
  それでは、小学校と中学校の連携についての現状等につきまして、資料6、7、8を用いて御説明させていただきます。資料につきましては、あらかじめ、委員の皆様方にお送りさせていただいておりますので、ごく簡略に説明をさせていただきます。
  資料6を御覧ください。まず1ページにつきましては、小・中学校の連携・接続について検討する背景として、子どもの発達の早まりについてのデータをお示ししております。身長、体重ですとか、あるいは、第2次性徴といったことにつきまして、早まっていることが見て取れると思います。
  2ページにつきましては、教科等の時間の好き嫌いや、学校の楽しさについてのデータをお示ししております。アンケート結果からは、小学校5年生の段階ですとか、中学校1年生の段階で段差があるのではないかということが見て取れるのではないかと思っております。
  3ページにつきましては、こちらでは暴力行為ですとか、いじめ、不登校といった状況が、中学校1年生の段階で急増するといったデータを掲載させていただいております。
  4ページでございますが、こうした背景から、各地方公共団体におきまして、小中連携の取組が、様々なされておりますが、教育課程の特例につきましても、活用しているところ、いないところ、または、活用しているとしても、その範囲は様々でございますし、あるいは、学年の区切りだとか、小学校における教科担任制の導入の有無、あるいは、校地・校舎の状況も様々でございます。
  5ページを御覧いただきたいと思いますが、このうち、教育課程の特例を活用しているものといたしましては、平成23年度では、研究開発学校が9件、34校、そして、教育課程特例校につきましては、32件の778校といった状況でございます。
  その具体的な例でございますが、まず6ページでは、研究開発学校制度を活用した千葉県船橋市の若松小学校・中学校の取組を紹介させていただいております。天笠委員が、実際にこれらの学校の支援に当たっていらっしゃるとお伺いしておりますけれども、児童生徒のコミュニケーション能力の育成ですとか、人間としての在り方生き方教育の視点から、小中一貫教育カリキュラムの開発に取り組んでおられると伺っております。
  7ページにつきましては、ここでは、教育課程特例校制度を活用した取組として、「市民科」などを実施している品川区などの取組を紹介をしております。
  また、現行制度の範囲内で、小学校と中学校の連携強化を図っていらっしゃる取組ももちろんございまして、そちらにつきましては8ページで、貝ノ瀬委員が教育長をお務めになっていらっしゃいます、三鷹市の例を御紹介させていただいております。
  9ページでは、こうした小中連携や一貫教育について、校地・校舎に着目して、それぞれの自治体で分類されて、その地域の実情に応じて取り組んでいらっしゃる例で、品川区のように、施設一体型一貫校と施設分離型連携校の2つのタイプで行われている例ですとか、三条市のように、連携型、併用型、一体型といったような形で分けて、それぞれ地域に応じた形で取り組んでいらっしゃる、といったような例を図で示しております。
  また、10ページにおきましては、教員免許の状況を表にしてまとめております。中学校・高等学校と比較いたしますと、小学校・中学校の免許を両方有していらっしゃる教員の割合は低くなりますけれども、平成14年の制度改正後、隣接免許状を取得している教員の数も、かなりの数に上ってきているという実態がございました。
  11ページを御覧ください。これは、義務教育の9年間を、どのような学年のまとまりで区切られているかという例を表したものですが、こちらにございますように、4年・3年・2年、あるいは、4年・5年、5年・2年・2年、また、高校まで含めて4年・3年・5年といった形で、各自治体等において、それぞれのお考えで取り組んでいらっしゃるという実情が見て取れます。
  それから、12ページ以降につきましては、先進的な取組を行っていらっしゃる自治体のうち、幾つか、成果、課題などを簡単でございますが紹介をさせていただきました。先ほどもありました品川区、三鷹市、それから長谷川委員が教育長を務めていらっしゃいます呉市等の紹介をさせていただいております。学力の向上ですとか、不登校の出現率、保護者の意識などが成果として紹介されております一方で、小学校における教科担任制を円滑に進めるための時間割の作成ですとか、校務分掌のシステム化、教員間のビジョンの明確化、あるいは保護者等の支援体制の整備だとか、教職員の負担軽減といったようなことが課題として挙げられております。こうした事例につきましては、次回以降、関係される委員より事例発表ですとか、あるいは、その他の関係者の方をお招きしてのヒアリング、といったような形で、御審議を深めていただければと考えております。
  17ページを御覧ください。17ページは新井委員に研究統括を務めていただきました、「義務教育に関する意識調査」の内容の一部を紹介させていただいております。こちらにございますように、6-3制の変更ということになりますと、賛成とする意見は少ないという状況がございますが、これに比較いたしますと、18ページ目以降でございますけれども、例えば9年制の小中一貫校を作るといったこと、あるいは、小学校高学年を教科担任制にする、といったことにつきましては、保護者、学校関係者、首長といった方、それぞれについて賛成の割合が高くなっているという状況でございます。
  また、御参考までに、義務教育の目的、目標に関する法令上の規定を資料として添付させていただきました。
  続きまして、資料7について簡単に御紹介させていただきます。こちらは、昨年度、文部科学省におきまして、全国の都道府県、市町村教育委員会に行った、小学校と中学校との連携についての実態調査の結果をまとめたものでございます。
  まず、市町村教育委員会の回答が2ページ目からでございますが、3ページ・4ページに調査項目を掲載させていただいております。
  5ページ・6ページにつきましては、小中連携を推進するための方針ですとか、9年間を通じた教育課程の編成方針の策定状況といったものにつきまして、定めていらっしゃるかどうかを、お示ししております。
  それから7ページは、小中連携を推進するための乗り入れ授業を行ったかどうかといったこと。
  8ページは、小学校において教科担任制を実施しているかどうかといった状況につきまして、それぞれ導入した自治体があるかどうか、また、あった場合は何校ぐらいで導入されているのか、といったようなことにつきまして、確認させていただいております。
  それから9ページ・10ページにつきましては、小中連携のために、学校等においてどういった組織を設けているか、といったような形での聞き方をさせていただきまして、その状況をまとめさせていただきました。
  11ページにおきましては、教職員の小中間の兼務発令の実施状況をまとめさせていただいております。
  12ページにつきましては、学校施設の状況を表しております。
  13ページにつきましては、小中の合同の授業研究の状況を、また、14ページは市町村として研究指定事業などを行っていらっしゃるかということについてお聞きしたものを表しております。
  15ページにつきましては、これまでの項目のうち、施設面のものを除いたものを一覧でまとめさせていただきました。これを見ますと、いずれかの取組を行っている市町村の割合は、実に7割を超えているという状況が明らかになっております。
  それから16ページ・17ページは、小中連携を推進しつつ、なおかつ、コミュニティスクールなど、地域との関わりを深める取組を実施していらっしゃる学校の状況でございます。学校運営協議会ですとか、学校支援地域本部による取組のほかにも、「その他」ということで、17ページに掲げておりますけれども、地域のボランティアですとか、自然や施設を活用した取組ですとか、授業公開、学校評価における工夫などの取組が掲げられておりました。
  それから18ページ・19ページは、小中連携を進めるねらいについての回答の状況でございます。学習指導上の成果ですとか、生徒指導上の成果などのほかにも、教員の指導力や意識改革をねらいとしている、といったこと、あるいは、地域の核としての学校の機能を高める、といったような答えもございました。
  20ページ・21ページは成果ということになりますが、「生徒指導上の成果があった」とするところが74%と最も多く、それに続いて、学習指導上の成果、教員の指導力の向上といったことが挙げられております。その他の成果として記述していただいたことを21ページに挙げさせていただいておりますけれども、地域との関係といったところの指摘などがございました。
  その一方で、22ページ・23ページで、課題についてまとめさせていただいております。小中間の打ち合わせ時間の確保というのが75%と最も多く、時間割の編成や指導計画の作成など、教育課程に関わるものが多いのですが、その他にも、教員の共通理解を得ること、あるいは、所有免許の問題、あるいは、予算、専任の人材の確保などが課題として挙げられておりました。
  26ページ以降では、都道府県教育委員会の回答を御紹介しております。27ページに調査項目を示しております。小・中学校については、都道府県は中高一貫教育校を除き、設置者ではございませんので、どのような支援を実施しているのかについて言及して、研究指定事業ですとか、授業研究のための会議、あるいは独自の予算措置、人事上の工夫等について掲載をしているところでございます。
  続きまして資料8を御覧ください。資料8は、去る9月6日の初等中等教育分科会におきまして、小・中学校の連携につきまして意見交換をしていただいた時の、主な意見をまとめさせていただいたものでございます。こちらにございますように、小・中学校の役割に着目した御意見ですとか、あるいは、子どもの発達の早まりや学年の区切りに着目した御意見、学習指導方法に着目した御意見、地域との連携に着目した御意見、教員の意識に着目した御意見、教員同士の学び合いに着目した御意見等、様々な御意見をいただいておりますので、こういった項目ごとに整理をさせていただいております。
  私からは以上です。

 【小川主査】
  ありがとうございました。
  それでは、今日が初めての会合でもありますので、今、資料6、7で様々な調査資料及びデータを紹介していただきましたけれども、そうしたものを踏まえながら、皆さんから、自由に小中連携・接続に関する問題や課題、また、この作業部会の運営等々についても、御意見があれば御自由に御発言いただければと思います。
  野木委員、どうぞ。

 【野木委員】
  野木と申します、よろしくお願いいたします。
  私は横浜市の教育委員をしているのですけれども、横浜市には、小学校、中学校合わせて491校あるのですが、それを142ブロックに分けて、平成21年から、横浜型小中一貫教育というのを試みております。
  1中学校に対して複数の小学校があったり、それから、1中1小であったり、それからn対mという、そのような関係もあったりするわけですけれども、特に平成22年から、そのうちの、ちょうど1中1小になるところが4つございまして、その中の2つにつきましては、併設型の小中一貫というのを試みております。もともとそこが、ある意味、横浜の中で過疎になったりとか、統廃合が行われたりとか、そういうところだったものですから、かなり危機感を持って小中一貫に取り組んでおり、学校同士がすぐそばにありますので、併設型としてやらせていただいているのです。いろいろな問題点も出ていますし、かなりの成果も上がっているようなところがありますので、資料の中に横浜市の例がなかったので、ちょっと寂しいなと思いまして、できればここで紹介させていただきたいなということを思いました。よろしくお願いいたします。

【小川主査】
  私も横浜市についてはいろいろ調べたのですが、あそこは、特例などを使わないで、今の制度をベースとして、カリキュラムにかなり意欲的に取り組んでいます。教育委員会がベースカリキュラムみたいなものを作って、それをベースにしながら、各学校が小中連携の様々な特徴に応じて、カリキュラムの中まで踏み込んで取り組んでいるということなので、特例を使わなくても、こういうカリキュラムまで踏み込んだ小中連携が実際にできているというのは、全国的に見てもなかなか例がないので、非常に面白い取組かなと見ていました。また後でいろいろ御紹介いただければと思います。
 他にどうでしょうか。では最初ですので、順番に御意見を伺ってよろしいですか。では貝ノ瀬委員から順番に、よろしくお願いします。

【貝ノ瀬委員】
 三鷹市の貝ノ瀬でございます。よろしくお願いいたします。
 先ほど御紹介いただきましたように、本市は小中一貫教育に取り組んでいるわけでありますが、特徴としましては3点ありまして、いずれ詳しくは皆様方に御説明する機会があろうかと思いますが、今日は簡単に御説明申し上げます。1つは、制度内での実施であるということで、学習指導要領にのっとって、特例的なことは申請せずに実施している、というのが1点目。
 それから2点目は、いわゆる連携型で実施していること。ですから合築で、例えば小学校と中学校の建物を一緒にするとか、そういう、お金をかけて、金がないわけではないのですが、あえてそういうことをしなくても、今ある、物理的に離れたままの学校で連携して、先生が行ったり来たり、子どもが行ったり来たりした形で、カリキュラムを一貫させての小中一貫教育ということを進めているのが2点目です。
 それから3点目は、いわゆる、地域との協働の取組だということ。協働のキョウは協力の協に働く、ですけれども、もっと違う言い方をしますと、全ての学校がコミュニティスクールに指定されている。つまり、学校運営協議会が全ての学校に設置されているということでありまして、それを基盤にしながら小中一貫教育を進めているというのが3点目であります。
 特に3点目の、いわゆる地域の方々、保護者はもちろん、市民の方々、関係機関、そういう方々と、いわゆるパートナーですね、学校のお手伝いでこき使うような、そういう対象ではなくて、パートナーということで、お互いにフィフティ・フィフティで、話し合いをしながら取組を進めるというのが特徴であります。特に、この間、隣にいらっしゃる天笠委員が座長をお務めになった、「学校運営の改善の在り方等に関する調査研究協力者会議」から報告が出ましたけれども、もうお読みだと思いますが、この中で、「地域とともにある学校」というコンセプトがありまして、その内容と、結果的には軌を一にしているという、そういう取組でございます。
 つまり、単に地域と学校に信頼関係があって、そして協力関係も支援も十分にあり、その中で学校が運営されて、というようなことを超えて、もっと強固な形で、仕組みとして、地域との連携、信頼関係を仕組みとして学校運営協議会を設置して、その上で、市民の皆さんや保護者の皆さんと納得づくで、小中一貫教育を進めているというのが特徴です。
 つまり、何のために小中一貫教育をするのか、というのがそもそもの問題なのですが、本市の場合は、人間力・社会力を子どもたちに、ということで、教育ビジョンに基づいてそれが設定されているわけであります。その中身について、特色ある取組がなされていくわけでありますが、その時に、全ての学校で、市民の皆さん、地域の皆さん方が、私たちの学校、おらが学校として、納得して進めていけるようにするには、やはり、そこに協働の取組と言いますか、お互いに意見交換の場も必要ですし、また、たまには辛口の意見も言うようにして、学校が裸の王様にならない、そういう仕組みを作って、その上で、特色ある教育活動を進める、そういうことでございます。
 いわゆるメリット、これは、私どもは結局、三鷹の子どもたちをより良く育てようということが、元々の発想でありますので、そこに収斂されるように仕組みを作ってきているわけです。ですから、小中一貫教育にしても、コミュニティスクールにしても、これはツール、道具に過ぎないわけですから、目的に従って柔軟に変形していくということはあり得るわけです。そういうことで、弾力的に進めて来ているわけでありますが、やはり、そのメリットについては、市民の皆さん方が納得してくださっている。
 この間、検証についても、平成18年からずっとやっておりまして、慶応大学の金子先生を座長にした検証委員会の中で、一定の検証もされているわけでありますが、更に今年は、小中一貫教育は全ての学校でやっておりますので、全ての学校の保護者、8000世帯に調査をかけました。今、その中間のまとめを得たところですが、90%以上の方々が、小中一貫教育については満足しているということでありまして、90%以上ということになれば、ほぼ市民上げてということになるだろうと思いますが、それはやはり、学校運営協議会、コミュニティスクールという、そういう仕組みを通して、絶えず、市民の皆さんとの協働の相互交流というものが積み重なってそういうことになってきているのではないかと思っています。
 ですから、そういう意味では、まさに市民ぐるみ、町ぐるみで教育を応援していこう、子どもを育てていこうということですね。その中で、子どものことを目的として進められている取組ではありますが、しかし同時に、そこに大人が集うわけでありますので、その集った大人の人たちが、そこで学ぶ、学びの場ということになってきます。子どもの学びだけではなくて、大人がそこで様々熟慮をする中で学んでいくということで、その学びを生かそうという気持ちに当然なるわけで、その生かすということは、結局、地域社会の課題についても皆で話し合って、何とかしようではないかという、そういう機運が出てくるということであります。
 ですから、コミュニティスクールというものを基盤にした小中一貫教育というものは、結局は、学校作りということは地域作り、町作りにつながっていくと、まさにコミュニティソリューションということにつながっていくものではないかということを考えますと、単に小中一貫教育、カリキュラム論で小学校と中学校をつなげていくということを超えて、経営論といった観点からも考えたときに、地域との連携というのは盛んに枕詞のように言われますけども、実態として、小中連携を支えるものとして、信頼関係をきちんと仕組みとして、私どもの場合はコミュニティスクールですけれども、やはりそれに代わる、例えば学校支援地域本部なり、地域子どもクラブなり、そういうものを基盤にしながら小中一貫教育ということを進めるということは、非常に効果あらしめるのではないかと思っています。

【小川主査】
 ありがとうございます。では、天笠委員どうぞ。

【天笠委員】
 3点申し上げさせていただきます。1つ目は、私がこの小中連携、一貫教育に関わるのは、先ほども御紹介がありましたけれども、研究開発学校が1つの軸になっております。したがって、9年間のカリキュラムをどう開発するか、ということが背骨になる問題意識であって、当初、もう10年ぐらい前になりますが、呉市の研究開発学校に関わらせてもらったというのが、今回の場合のスタートです。また同時に、当時は千葉県の和田町、今は南房総市になりましたけれども、そこでも同様に9年間の研究開発学校ということで、農業科とか町民科の開発を9年間、あるいは高等学校までつなげるという取組がありました。
 結果としては、千葉県の場合は3年間で研究開発学校の区切りとなり、それから、呉市の場合は更にプラス6年、それぞれ発展しながら、そこで、様々な形で御一緒させていただきながら、カリキュラムの開発としてどう捉えていくのか、9年間も有りかどうか、御承知のように4・3・2とか、いろいろな区切り方の在り方についてどうかとか、それを軸にしながら様々なことを考えさせていただいて現在に至っているということであります。今も貝ノ瀬委員からお話がありましたように、カリキュラムだけの話にとどまらずに、制度の問題になったり、組織の問題になったりですとか、様々に広がって、多様な角度から問題を捉えていかなくてはいけない、そういう状況になってきているのが現在の状況かと思っております。
 更にそこに、地域の事情というのでしょうか、スタートの時点では、教育改革を志向するというか、義務教育の在り方が問われた、そういう中で関わってきたかと思うのですが、それに過密、過疎、とりわけ過疎地における在り方ということと、この問題は非常に重なるようなこともテーマになってきて、そういう意味における地域の事情を反映した9年間の在り方ということが、おそらくこれからいろいろなケースで出てきて、そこで議論されることになるのかなと思っております。それが1点目であります。
 それから2つ目は、やはり、小学校と中学校の接近を捉えていくと、今のお話にもありましたように、どうしても中学校区というものをテーマにせざるを得なくなってきて、学区というものの在り方の中で、改めて中学校区の在り方、地域との関係ですとか、そこにおける、学校を含めた様々な教育関係の機関、施設との相互の関係ということも問うていかなければいけないのかなと、そんなことを考えております。これが2点目であります。
 それからもう1点、3点目であります。そういう中で、多くの学校の先生方と御一緒させていただいているわけですが、先ほども御説明がありましたように、その中で、推進要因、あるいは阻害要因というのでしょうか、比較的多く出てくる言葉が、小学校の先生と中学校の先生の保持している免許状の在り方で、とかく中学校における免許状の在り方というのが、小中の連携を促進するより、むしろ阻む要因だというような、そういう言い方で言われる場合があるわけです。先ほどの御説明でも免許状のことがありましたが、機会があったらここで免許状の在り方ということも御検討いただければと思います。一方において、私、現在、教員養成で仕事をさせてもらっておりまして、昨今の動きというのは、例えば、小学校と中学校の区切りをもっとはっきりさせろというような、そういう方向で話が動いていたりしまして、そのことと、先ほどの幼小と、あるいは小中と、中高の境をむしろなくするということとの方向性と、教員養成との動きというのが、どういうふうに全体として捉えていったらいいのか、そういう意味における教員養成、あるいは免許制度の在り方というところから見たところの小中連携・一貫の在り方ということも、繰り返しますが、ここで取り上げて議論があるといいかなと思っておりますので、御検討いただければと思います。以上です。

【小川主査】
 無藤主査代理については、後で総括的にまとめてお話いただきたいと思います。では村上委員、どうぞ。

【村上委員】
 小学校の校長をしておりましたとき、小中一貫教育も進めてきました。そういったところから少しお話をさせていただきたいと思います。
 小中の接続、関連を考えていかなければならないと思いましたのは、子どもたちが中学校に入って、学校が面白くないとか、学習は楽しくないとか、不調を来たす子どもが出てきました。それが不登校につながっていったり、それから学習の面でも意欲を失っていったりと影響してきますので、そういったところが問題だとかねてから思っておりまして、スムーズな移行をしていく必要があると思っていたからです。いわゆる中1ギャップと言われるものですが、そこからスタートいたしまして、小中一貫教育を進めてきたわけです。小中の接続の辺りで、いろいろ子どもたちが不調を来たす背景があると思うのですが、その背景になるもの、例えば、教科担任であったり、授業時間とか、授業のスピードが違うとか、指導方法の違いであったり、いろいろ考えられますけれども、その辺りをもう一度検討していく必要があるのではないかと思います。
 それに加えて今、これからの教育にとって必要なことは何なのかということを考えて、どういった小中一貫教育の在り方が良いのかというところをもう一度見直す必要があるのではないかと思っています。というのは、なぜ小中一貫教育なのかというところを明確にして、再認識していきたいと思っております。
 それで、いろいろな取組をしてきたわけですが、この調査の資料にもありますように、小中一貫とか小中連携を進めようとする場合に、何を核にするかというと、やはり学習指導上の成果を上げるとか、生徒指導上の成果を上げるというところに置いておられるところが多いと思うのですが、やはり1番感じましたのは、小中の学習の指導の在り方といいますか、学力観といいますか、そういう辺りが非常に違うということです。我々がやってきた成果もあるのですけれども、それがすごくネックになっていると思うのです。
 新しい学習指導要領が出来てきておりますし、それをきっかけに、もう一度、これからの子どもたちに付けなければならない学力とは何なのかというところを、再認識する必要があると思っております。現実を見たら、小学校の指導と中学校の指導はかなり違うのです。やはりこれまでの学力観といいますか、それが抜けきれないところがあると思いますので、そこの部分の、教員の意識改革も非常に大きな問題であると思っております。
 京都市は今、全市で小中一貫教育を進めておりますが、これからの学力ということを考えますと、小中一貫教育で、そして、高校、大学を見据えて、本当に社会に出て、世界に出て活躍する力をつけるところを大事にしたいと思っています。
 それに伴いまして、免許状のことや人員配置のことですが、小中連携を考えていこうと思いましたら、それなりの労力がかかると思いますので、そういったことにも議論が及ぶようにしていただけたらありがたいと思います。以上です。 

【小川主査】
 では赤沼委員、よろしくお願いします。

【赤沼委員】
 中学校現場から見た小中連携の視点になるかと思うのですが、中学校というのは、やはりどちらかというと中高の接続といいますか、1年生に入学した子どもたちを迎える時から、進路指導がもう頭にありますので、3年間で出口を意識しながら子どもをどう育てていくかという方に、現場は力が入っていると感じています。
 一方で、近年、やはりこの資料にありますように、中1ギャップは切実な問題です。小学校から中学校1年生に入った時の不適応、不登校の数の増加、それから問題行動、特に中学校側から言えば、学力の問題以前の健全育成、そちらの方の問題が大きく感じられているというのが現場の感じ方でございます。そうしますと、中学校としては、3年間で高校に行かせるだけの、義務教育を完全に終わらせるだけの力を付けて卒業させるためには、逆算していくと3年間では足りない、現状として上がってくる中1を見ていると、そこで小学校との連携が必要になるという、そういう考え方に今なっているように思います。
 小学校との連携を進める上で、やはり、先進的にやっている品川区ですとか、先ほどの三鷹市のお話もありましたけれども、そういうある程度のリーダーシップを持って、制度も利用しながらやるというのが、率直に言えば一番早く小中の連携の成果が上がるように思います。でも実際には、そうしているところは大変少ない。そうしますと、今、私がいます目黒区もそうですが、実際には区の支援をいただきながら、あるいは都の支援をいただきながら、国の支援をいただきながら、中学校区でそれぞれやっているというのが現状です。
 では、その中で、どういうことが地域ごとの特性を活かしながらできるのか。それから、本校も行っておりますが、実際に実施していく中で、やはりよく言われるのが、小学校と中学校の文化の違いと言いますか、そういうもののネックになっているのが、先ほどもお話がありましたが、教員の免許だと思います。全国的に見れば、小・中の人事異動、人事交流が行われている地域もありますが、東京都はほとんどございません。それぞれの校種の良いところを交流できるような制度改革、免許制度の見直しというものも、私としては非常に大切なことではないかと思います。小学校からの中学校へのいろいろな期待は、大変高く感じております。中学校から小学校に教員が行って、いろいろとしておりますが、小学校から中学校に来ることはほとんどないのです。子どもの交流はありますが、小学校の先生が中学校に来て何かをするということは、まずありません。逆に、私たちは高校から先生を招いています。そういう小・中の9年間の義務教育が目指すところと、義務教育が終わって高校へつなげるという両方を中学校が担っているということが現状ですので、実は小・中だけに力を割くわけにもいかず、どちらかと言えば現状は、高校進学を目指して、何とか力を付けさせたい。それから学力、健全育成で奮闘しているというのが現状のように思います。
 今回、このように小中連携についての作業部会に出席させていただいて、私も期待というか、心弾んでいるところがございます。小中連携が現場の方に、明らかにプラスになるであろうと感じておりますので、是非皆様の御意見を伺いながら、いい形での小中連携が深まっていくことを願っております。以上です。

【小川主査】
 では、新井委員、よろしくお願いします。

 【新井委員】
 ベネッセの新井と申します。先ほど御紹介いただきました資料にも、以前に御協力させていただきましたが、私どももいろいろな調査・研究活動をしておりまして、その中で小・中・高と横断的に傾向を見てみますと、中・高はいろいろな点で比較的近い傾向にあるのですが、小がやはりちょっと違う傾向にあるということが、データとしては非常に多いです。やはり小と中のギャップということはかなりあることがデータを見ても分かるのですが、そうしますと、今回の議論の小中連携はやはり非常に重要なテーマであろうと思います。その辺りのことを機会がありましたら私どものデータを御紹介して、一つの題材の提供ができればと思いますし、できるだけエビデンスベースで議論ができればいいと思っています。それから、先ほど先生もおっしゃいましたけれども、高校の問題も非常に大きいと認識していますので、そのことが中高連携にどうつながっていくかということ等も認識しながら、小中の連携をどういうふうにしていくかということが重要かと思っています。そう考えますと、冒頭に先生がおっしゃった、多様な形態がある中で、目的や性格を、この作業部会で、一旦これまでのものを整理してみて、今後の案の参考になっていく形ができればいいのではないかと考えています。例えば、切れ目の問題につきましても、小中が連携しているからこそ出来る切れ目だと思いますので、小中連携をしたことで出来た成果とは何だろうか、形態ごとにどういうものがあったのだろうか、とういうことが整理できますと、次につながっていくのではないかと思いますので、その辺りに期待を持ちながら参加していきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

【小川主査】
 ありがとうございました。井上委員、よろしくお願いします。

【井上委員】
 経団連の井上でございます。前回の作業部会から引き続き委員を拝命いたしまして、前回は中高一貫ということで、比較的議論がしやすかったという率直な感想を持っております。と申しますのも、私ども産業界の立場というのは、原則はやはり大学教育の充実です。そこに向けて、中・高の6年間で一貫して職業というものをどう考えていくのか、自分が身に付けるべき知識、学力とはどういうものであるのか、それを意識しながら大学に進み、企業に入るという流れの中で議論ができたためです。小・中となりますと、今御専門の方々からたくさん御指摘、留意点をお話しいただいたのですが、産業界から見ると相当遠い感じでございます。
 例えば、学区の問題ですとか、免許制度の問題ですとか、カリキュラムの問題、こういう点は、私ども全く知見がございません。中・高になりますと、文科省で用意されている様々な制度の中で、私も何校か視察させていただきましたが、例えば、高校のスーパーサイエンスハイスクールなどには企業がどんどん出向いていって、かなり高度な実験を大学の研究室と共同でやっているということもあります。こうなると、スーパーサイエンスハイスクールに指定された学校に付属する形で中学があれば、中学生は現実にその場を見学できるということで、非常に意識は高まるのではと思うのですが、小・中となりますと、9年間という長い期間でどういう形で役割分担をしていくかということについて、教育の世界の御専門の皆様の御意見を聞いて、勉強していくしかないかと思っております。
 そういった点で、私の申し上げる、職業の観点からの意見は追々お話しさせていただきたいと思うのですが、私自身も、横浜・東京で小中高の学校をすごしておりますし、子どもを二人育てておりますので、その点の意見なども織り交ぜて、今後もお話をさせていただきたいと思います。実は先ほど御指摘のあった、学区の問題がまずあります。私自身が育ち、そして私の子どもを育てた横浜ですが、やはり都市部だということもあり、小学校区と中学校区が必ずしも生活圏として一致していないケースがかなりあるのです。少子化が進んでおりますので、学校がある程度統廃合されるということで、例えば小中一貫で同じ施設であった場合、自分の生活圏からかなり離れた所に通うというケースも出てくると思うのですが、それは現実的なのだろうかという感じがいたします。子どもたちがしっかりとコミュニティーの中で自分の役割を認識しながら成長していくことができるのだろうか、特に小学生の場合かなり遠くまで通ってそこで勉強をすることが本当によいことなのかということで、若干違和感がございます。現実的に、私も、私の二人の息子も、私立の中学校に通いました。それは、公立の中学校がある場所が、私どもが住んでいる生活圏とは違う所にあったためで、これであれば私立でもいいのではないかという判断をしたわけです。その辺りはもちろんひとつの事例にすぎないのかもしれませんが、この学区の問題というのは非常に大きいのではないかと思います。もちろん、施設が違う小中学校が連携・交流するということはあるかもしれませんが、その点の工夫は必要かと思います。
 それから、先ほど目黒区の赤沼先生からカリキュラムのお話があったと思うのですが、まさに私自身も子どもたちも感じたこととして、小学校の6年間と中学校の3年間という、この「6年」「3年」というのが、今の時代に合っていないのではないかという感じがいたします。中学校の3年間の中で学ぶべきものがあまりにも多くて、どうもはみ出してしまう。どちら側にはみ出せばいいのかは分かりませんが、中高一貫であれば、中学・高校の6年間でうまく吸収していくことができると思うのですが、単独で中学の3年間でやるとなると、非常に厳しくなる。そうすると、実際問題、6・3という制度自体をどう考えるのかというところまで、本来ならば議論すべきではないかということになります。もちろん、カリキュラム上の工夫で対応すべきものもあるのではないかと思います。ひとつの良い例が英語教育だと思いますが、英語教育は私ども産業界も非常に期待をしておりますし、小学校から英語教育が始まるということで、大変よいことだと思います。加えて、先ほど申し上げましたように、中学の段階で将来の職業を意識させるということを考えますと、中学では若干余裕を持たせたカリキュラムが必要なのではないかという感じもいたします。
 したがいまして、先ほどからいくつか申し上げた点を総括すれば、非常に大事な中学の3年間という時期を、うまくカリキュラムを再構成して、高校、大学につなげていくという観点から、この小・中の接続について御検討いただければと思う次第であります。私もその点から意見を言えるように勉強したいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

【酒井委員】
 よろしくお願いいたします。酒井と申します。私は今回初めて参加させていただきます。まず、少し自己紹介をさせていただきたいのですが、私は専門が教育社会学という領域でして、主に子どものいろいろな問題行動と言いますか、不適応問題と制度の関係を中心にやっております。非常に幅広くありまして、ついこの間出したのが「保幼小連携」のテーマなのですが、要するに「小1プロブレム」の問題。それから、「中1ギャップ」問題、「不登校」。今やっているのは「中退問題」。全ての校種の問題なのですが、いろいろな問題を抱えている子どもの問題を、制度の中でどうやって支えていくのかということを中心にやっております。その観点で幾つか申し上げたいのですが、今回の小中の連携、接続というときに、先生方がおっしゃったように、「何のためにするのか」ということが多分一番大事なところだと思いまして、私自身は、移行の際の「中1ギャップ」問題をどうするのか、その不適応をどうするのかという問題に、焦点を当てる必要があるのではないかと思います。この問題は、カリキュラムを変えるという問題とは、おそらく少し違うレベルにある問題だと思っていまして、その中では、中1に上がった際に、不適応なり不登校になっていく、いじめがいろいろ起きる、自尊感情が低下する、学習離れ、ということがあると思うのですが、そうした問題に対して、どういった対応をするのかという問題があると思います。その際に、スムーズに移行していく子はたくさんいて、移行したことによってやる気を出して、中学生になってまた頑張ろうという子はたくさんいるわけです。その中で、何人かの子どもたちが、その移行を非常にストレスに感じてしまう。その子たちをどうするかという問題。幾つかのディメンションがあると思いますが、おそらくそういう問題があるので、その辺に焦点を当てていただきたいと思っております。
 あと二つ申し上げます。2点目は、この問題を教員養成の問題に絡めてきた話だったのですが、いろいろな問題が起きてきて、学校が抱えるファンクションが非常に拡大していく中で、それを教員が何とかしろという話。もちろんそれはよく分かるのですが、やはり多様なリソースを入れることによってそこをクリアする、という視点も必要で、例えば、スクールカウンセラーですとか、スクールソーシャルワーカーですとか、そうした方が、例えば小中連携して動く在り方ですとか、いろいろなことが考えられる。あるいは、地域のボランティアの方をそこにどう入れるのかとか、そうしたことも含めてこの課題を乗り越える術を考える必要があるのではないかというのが私の意見です。
 3点目は、大きな話が出ていると思うのです、制度改革、免許改革。その話に行くのは非常に大事なのですが、幾つか既存の中でもできることがあるだろうということを私は思っていまして、反対に、大きな制度改革をしますと、全て小中一貫にすると、既存の箱をどうするのだという問題もありますし、あるいは、小学校は小学校で今まで培ってきた伝統というものがあり、6年間の教育の、要するに、小学校6年は高学年なのだと、高学年の責任を持たせるというのは9年間になったらどうなるのだろうということもあります。免許制も、小・中の両方を取らせる方向で行けば、どんどん閉鎖性に近づいていきます。そういうことが、かえっていろいろな弊害を生む可能性もある。ですから、いろいろな問題を組み込みながら考える必要があると思います。今の三点だけ、最初に申し上げたいと思います。よろしくお願いいたします。

【佐藤委員】
 佐藤です。よろしくお願いいたします。今日参加されております委員の皆様のうち、私だけが本当の素人ということで、話をすればするほど私だけが焦点を逸れて違う道へ行ってしまうような感じもしないわけではないのですが、ただ、この小中連携というものは数年前から言われており、私も非常に気にはなっておりました。
 この6・3制度というもの、これは、保護者の多くが、これで当たり前なのだと、これで来たからというのがあると思うのですが、委員の先生方からもお話がありましたように、6・3という制度の中では、もう限界なのだろうなと思っています。この資料を見ますと、そのねらいというものがございますけれども、多分私が子どもだった頃とは成長度合いがまるっきり変わっていまして、小学校の6年間を見ただけでも、幼稚園を出て自分の名前をやっと書くような子どもが、6年生、あるいは5年生になった時には、大人と対等に話ができるくらいに成長しているわけです。
 ですから、6年と区切って、再度3年間という、これはやはり見直す時期にきているのだろうと思います。そこで5年であるとか、4年であるという、そのような括りもあり得るのだろうと考えます。それから、先ほど、ツールとして「学校支援地域本部」あるいは、「コミュニティスクール」があるということでございましたが、この資料を見させていただいて、取り組んでいる学校が、2.9%、8%とかなり低いということが気になりました。実は、昨年度、私ども日本PTA全国協議会の教育問題委員会の方で、教育に関する保護者の意識調査を、文科省さんの御指導を受けながら実施をいたしました。この中で、まず保護者に「コミュニティスクールを知っていますか」という問いかけをしましたところ、91.7%が「知りません」という返答でした。県や日本PTA全国協議会の方も、役をやっている関係上知っているのかもしれないのですが、結構新聞等を見ても目に付く名称だったのですが、そういった数値で非常に少ないと感じました。
 また、「学校支援地域本部」についても、約4割が「全然知りません」ということで、一貫教育をやる上でのツールであるとすれば、非常にもったいないなと、そういう感じがいたしました。今回資料を見させていただいて、また、委員の先生方のお話を聞いて、初めて聞くことばかりですので、何か分からない点があれば、その時にはまた発言させていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

【小川主査】
 では、清水哲雄委員。

【清水哲雄委員】
 清水でございます。どうぞよろしくお願いいたします。委員名簿を見ましたら、もう一人清水委員がおりまして、そちらは立教女学院の小学校長でございます。そのダブル清水で、小・中・高の私立の代表という形になるのかなと思っております。私立は関係ないと思われる方も、もしかしたらいらっしゃるかもしれませんが、日本の大事な公教育の一翼を担っております。パイは少ないですけれども、頑張りたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 私は、長い間現場におりまして感じることがございます。それは、この「中1ギャップ」というのが、ざっと見て15年くらいで、明らかにあるということです。つまりその前は、そんなことはあまり聞かなかったと思います。もちろん、80年代前半の荒れた中学校の問題はありましたけれども、私どもの学校ではそういうことはあまり感じませんでしたが、ここへ来まして、「中1ギャップ」という言葉がはっきり見てとれるような状況があります。私たちとしましては、その対策をどうするかということで、既成の制度の中で何ができるかということで取り組んだのは、第一に、中学校1年生を「その子のありのままの形で受け止める」ということからスタートするということです。様々な過去を背負ってうちの学校に入って参りますけれども、それを「あの子はだめだ」ということではなく、ありのままを受け止めるということから始めることにいたしました。この表に出ておりますように、非常に不安を抱えたまま中学校に入ってくるということを前提とするということです。
 その子どもたちをどのように扱うかということなのですが、先ほどどなたかがおっしゃったように、自分が認められる位置にあれば、自然と学びの意欲が出ますけれども、自分の居場所がないと言われた瞬間、そこで勉強するというスタンスは出ない。これは単純な論理ですので、「あなたはここで勉強していいよ。」というメッセージを、先生方がどのように伝えることができるかというところに、中学校1年生のテーマを置いたということです。
 別の言い方をしますと、以前感じていた小学生なりのwillとrespectのバランスが、最近になって崩れたまま入ってくるということでもあろうかと思います。もちろん、大人でもこういう自分自身の意志と、他者に対する尊敬の念のバランスの悪い人はいますけれども、子どもも一個の人格がありますので、小学生は小学生なりに持っているはずなのですね。それが、どうしてもバランスが崩れたまま中学校に入ってきてしまう。ここに問題点があって、先ほど見させていただいた表の中の、5年生のところの下降ですね。あそこが一つのキーだろうと思うのです。つまり、6・3・3・4制の根拠は何だったのだということですね。昭和22年に出来た法律ですので、あの当時のアメリカの制度がそのまま残っていることになりますから、もう一度この部分は精査する必要があるのではないか。簡単に言えば、発達心理学などをきちんと踏まえた制度設計を、もう一度する必要があるのではないかと思います。
 それからもう一つ、新しく学習指導要領が変わりました。その内容は皆さんもちろん御存じだと思いますけれども、量的にも質的にもかなりハイレベル、特に、理数系に関しましては、大変な量、レベルになりました。こういう中で、今までのスタンスでやっていって大丈夫なのかなということを大変心配しています。つまり、小学校も基本的には履修主義で習得主義ではありません。つまり、「やった」という事実がないと、保護者から「教科書があるのに何でやらないのだ」、「隣の先生はやっているのに、あなたのクラスだけ何でやらないのだ」と言われますから、どうしても通り一遍やらざるを得ないのですね。あれだけの量を、履修主義で流していって、本当に大丈夫なのか。第6回までの、中高一貫教育の議論で、公立中高一貫教育校の適性検査の問題が出て、基礎学力が付いていない子たちが入ってきて大変困るから、学力テストに変えろと、強い意見が出ましたけれども、でもこれを中高一貫のレベルで話していても答えは出ないはずなのです。もし、小学校の方で、きちんとした学力が担保されていれば、基礎学力の試験はおそらく必要なくて、適性検査などで、今までどおりできるはずだと思うのです。
 したがって、小学校での学力をどう付けるかということは大変大きな問題で、昔「七五三」という言葉がありましたが、今はそれもないのかと、それは言いすぎかもしれませんけれど、制度の設計と同時に、もう一つ大きな問題として、履修主義と習得主義のことをどこかで取り上げないといけない。それは、ここかどうかは分かりませんが、頭には置いておかなければいけないのではないか。そんなふうに思っています。
 そういうことを踏まえると、実態調査の方の20ページのところに、取組の成果ということで「学習指導上の成果があった」が58%、「生徒指導上の成果があった」74%というのは、大変大きな数字であると私は感じました。それで、後で結構ですので、「学習指導上の成果があった」と書いてありますが、具体的には何を指しているのか知りたいです。それから、「生徒指導上の成果があった」と書いてありますね。生徒指導上の成果とは、具体的に何を指しているのだろうかと思います。
 実は、うちは実質的な中高一貫校をとっていますが、気を付けたのが、中学校3年生に責任感をどう持たせるか、だったのです。つまり、中高一貫にすると、上級生が面倒を見ますから、中3生としての自覚は非常に出しづらいのですね。ですから、中3生にどれくらい責任感を持たせるかというのは大きなテーマだったのですが、先ほどどなたかがおっしゃったように、小中一貫にした場合、小学校6年生は、上級生としてどういう意識を持つかということは大変大きな問題です。それは、次のページの「その他」の中にでも入るのかと思ったのですが、この辺りも是非、機会があったら教えていただきたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。

【小川主査】
 ではまた、野木委員、何かございましたらどうぞ。

 【野木委員】
 私は先ほど話させていただいたので、手短にさせていただきます。私は横浜なのですが、先ほど井上様、どうも失礼いたしました。横浜市の学区ですね、少し言っておきたいと思います。私自身はITの人間でございます。40年間、ずっとITのエンジニアとしてやってきた人間なので、どうもITのことが気になってしまうということがございます。それで、この作業部会の委員になるに当たりまして、先ほど横浜市は2つ併設型をやっていると言いましたけれども、そこへ行って参りました。先生方がおっしゃるのは、小中一貫というのは非常に良いと。「中1ギャップ」というのが、不登校の問題、学校が楽しいかどうか、教科の学力、これにおいてかなり遜色ないというように言われておりました。
 もちろん、このような小中一貫等、最初に手を上げるところは、大体「成功するかもしれない」というところがやっているので、そこが成功しているから、そこがいいからと言って、全てがそうであるとは言えないし、これを一般論で展開するのは、先ほど主査がおっしゃっていましたように、非常に難しい部分はあると思うのですが、でもやっぱりこれは進めていくべきではないかと思います。それで、その中で、私どもが横浜でやっているのは、隣同士に学校があるとか、非常にハード面で恵まれているところでございました。だけど、一般的にはそのようなことはほとんどあり得ない場合でございますね。
 要するに管理職が大勢になるわけですよね、それで、筆頭の校長先生が束ねていかなければならないのですが、そこで、私は校長先生に、「情報共有をどうされていますか」と聞きました。黒板が一つあるだけなのですね。「ここに見に来ていいよ、としています」と。「はぁ?」と。「スマートフォンとかないのですか」と。要するに情報共有が、この教育界はあまりできていない気がします。フィンランドは、最初から情報をきちんと表に出しまして、ITのインフラ等きちんと整えてやっています。それで、その先生方に「ここはもっとITを導入しないのですか」と聞きました。すると、「したい」と。「多分、したら非常に良いと思う。だけどそこまでとても手が出せないのだ」と。「誰か一人でもいいから、そういう専門家を付けてくれるような予算でもあればいいのだけれど」、とおっしゃったのですよ。
 本当に、今の先生方はすごく忙しくて、その先生方の涙が出るような御苦労で、いろいろなことをしている場合が随分ございます。それを何とか、本当にスマートフォンが一つあれば、随分楽になる部分もあります。もちろん弊害もありますが、そういったIT技術をもっと活用するということを、教育界に問答していきたい。しかも、小・中というのは離れていますから。ハード的に離れているところを、どうやってソフト的にしていくかというところも、全て情報共有でございます。そこのところを、私は頭に入れながら発言させていただきたいなと思っております。以上です。

【小川主査】
 長谷川委員、よろしくお願いします。

 【長谷川委員】
 呉市の長谷川でございます。呉市は、平成12年度、今から11年前、この小中連携というよりも小中一貫教育という名前で、研究に取り組んで参りました。その当時から、天笠先生に大変な御指導を受けながら、ずっとやってきました。と申しますのは、やはり「中1ギャップ」を何とかしようではないかと。中学校1年生に入って不登校、いじめ、暴力行為というものが非常に多いと。それで呉市も悩みました。何故だろうかと。
 そこの視点として、やはり少子化が進んでいる中で、家庭に帰っても兄弟達と争うこともない。それから、やはり、小学校がそう、その前の保育所・幼稚園時代からそう、いわゆる序列の中でずっと固定されていく。そうすると、成長が早まる中で、やはり自我に目覚めてくる。それが「なぜ自分がそういう位置にいるのだろうか」「なぜ自分がこういうふうになるのだろうか」という疑問と不満が生じてくる。それが解決できなくなると、いろいろな問題行動に走る子どもがいる。これを解決するには、やはり自尊感情を育ててやらなければならないのではないかということで、実験的に、小学生と中学生を交わらせてみた。
  その中で、中学生がどうなるかという変化について、平成16年度に、中教審で発表させていただきました。中学生が小学生と交わって、運動会、あるいはゴミ拾いをする中で、非常に柔和になる。「お兄ちゃん、すごいね」「お姉ちゃん、すごいね」と、そういう言葉を掛けられることを今まで全く経験したことがない、そういう生活をしてきた中学生が、本当に柔和な顔になってきた。頼りにされる経験を通して、自尊感情が芽生えてきた。そうした結果から、平成19年度から、28中学校区、当時小学校は53校ありましたけれども、とにかく一斉に取り組もうではないかということで、全部の中学校区で取り組み始めました。
  その中で、課題や成果として、生徒に関することと教師に関することが明らかになってきます。この小中一貫教育の中で、まずは教師の問題。これを全部の中学校区で始めたときに、ほとんどの学校では、研究一つしていない、研究報告を聞くだけのことでしたから、相も変わらず中学校で子どもが問題行動に走ると、「小学校は一体何を教えていたのだ」と。小学校の先生は、「あれほどいい子だった者が、中学校に入ったら何であんな非行に走るのだ」と。いわゆる、9年間が義務教育だという意識は先生方に全くなくて、小学校は小学校、中学校は中学校というテリトリーの中で子どもを教育しようとしていた。これを、何とか交流させようということで、全部の小・中学校に、一人ずつ「小中一貫教育推進コーディネーター」というものを配置しまして、小・中学校の先生が授業をお互いが見合う、それからお互いが交流する、さらにできる限り乗り入れ授業をしてごらんと指導する。そういういろいろと手立てをやって、現実的に中学校の先生が小学校に入る、小学校の先生が中学校に入る時には、免許がありませんからTTの形で入ります。中学校にTTの形で入ると、「先生、何しに来たの」「先生、懐かしいね」「ああ、頑張っているかい」というやりとりの中で授業を行う。そういうことをやっていく。
  それから中学校の先生が小学校の授業を見ると、非常にきめ細やかに子どもたちを指導している。中学校の先生が小学校に来て、国語を教えた例を挙げますと、例えば「源氏物語」を教える。非常に専門的ですよ。そうすると、子どもたちが腰を浮かすようにしてそれを聞いている。そういうことをしているうちに、その中学校の先生が洒落たことを言うのですね、「君たち、来年うちの中学校に来るのだね」と。「待っているからね、先生は!」と。その一言で、子どもは中学校へ行くことの不安というものがすごくなくなっていくのですね。そういうことによって、「中1ギャップ」というものを少なくしていく。19年度からまさにそれで取り組み始めて、呉では暴力行為が、平成19年度には中学校1年生で40件ありました。これが、平成22年度になると、21件に減少しております。半減しております。それからいじめは、31件ありましたものが、平成22年度には11件になっている。そこまで落ちてきております。学校が落ち着いてくる。そういったことで、先生たちの意識が、小学校から中学校の9年間で、「小学校のときはこういうことを教えて下さいね、中学校ではこういうことをやります」、小学校の先生は「こういうことを教えています」と、そういう連携を取り始めて、中学校は中学校、小学校は小学校という意識が、まずはなくなった。
  次に、生徒の問題ですけれども、先ほど申しましたように、自尊感情というもの、幼い子に頼られるという経験が家庭の中でもなくなってきている中で、小学生と一緒に合同授業をする、あるいは中学生が小学校で読み聞かせをする。そういう授業、機会を組みますと、小学生が中学生に会うことを楽しみにする。地域の中で会ったら、声を掛け合うという、まだまだ田舎ですから、そういう機会もあります。同じ中学校区の地域では、行き来する、祭りで会う、そうすると、そこでお互いが声を掛け合う。そういう中で、中学生は問題行動が少なくなってくる。そういう面で、小中一貫教育には、一つの成果がある。
  学校教育法第21条において、義務教育の目標ということで10項目に定められましたが、これは、大変大きな問題ですよと、今まで、中学校の目標、小学校の目標ということがあったのだけれども、義務教育の目標として定められた。このことは、小学校、中学校が一つのものとして協力して子どもたちを育てていかなくてはなりませんね、このことを保護者にもきちんと伝えて下さいと、呉市では、校長先生にお願いし、様々な場面で保護者に話をするようにしております。保護者のアンケートでは、また報告しますけれども、今のところ、呉市においては7割以上の保護者が、この小中一貫教育は教育的効果が上がるとアンケートでは答えていただいております。更にこれをどのように普及させていくのか。普通の教育としてこれを行うということで、自信を持ってこれを推進していこうではないかということを、呉の教職員には言っておりますけれども、是非ともこの場を借りて、皆様方の意見をお聞きしながら、更にこれをブラッシュアップしていきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

【小川主査】
  では、原委員、よろしくお願いします。

【原委員】
  失礼いたします。私、先ほどは、香川県高松市立高松第一小学校・高松第一中学校長と御紹介いただきました。これは正式名称ですが、平成22年度に、中学校が2校統合しまして、新たに高松第一中学校が開校いたしました。そして、昨年、3つの小学校が統合して、高松第一小学校が開校し、それに伴って小中一貫教育校である、高松第一学園――教育委員会は、「愛称」と呼んでいるのですが――という9年間の義務教育を一連のものと捉えた小中一貫教育を行う高松第一学園が出来上がりました。ということで、高松第一学園としましては、本年2年目を迎えております。中学校が先行統合した時からそうですが、その準備や調整が、実は大変でして、貝ノ瀬委員がおっしゃったように、地域を抜きにして学校というものは絶対に考えられません。学校が統合するということは、結果的には地域が統合するということです。地域は、それぞれが自己完結した社会であり、それぞれ歴史と自負と誇りを持っておりますから、そんなに簡単に一つにはならないのです。私の今の大きな仕事の一つは、その地域の願い、想いをしっかりお聞きして、それを踏まえて学校作りをしていくということです。今はその途中、ほぼ軌道に乗りつつあるという状況でしょうか。ですから、日々、小中連携、小中一貫ということをまさに実践しているということを、最初に申し上げたいと思います。
  「高松第一学園はどんな小中一貫教育をやっているのですか」と聞かれますと、最も短的な答えは、「6・3制の良さと、4・3・2制の良さを融合した小中一貫教育を実践しています」ということになります。これは若干あいまいに聞こえるかもしれませんが、私はこの発想、この手法が大事だと思うのです。何でもそうですが、硬直化したり、一つに決めてしまうと、必ず問題が起こってくる。実際、全国では、小・中の連携や一貫教育を広域的・計画的に進められているところもありますが、香川県高松市では本校だけが、四国でも初めてできた施設一体型の小中一貫教育校ですから、あまり奇をてらったことをするつもりもありませんし、無理なく長続きする、いいとこ取りの、柔軟な形でやっていこうと考えています。実は、それには歴史がありまして、最初は特区から始まり、それから教育課程特例校としてやってきて、本年度からそういう指定も何も無しに、いわゆる学習指導要領の枠の中で教育課程をこなしています。実は、標準授業時数よりは、少し多い形でやっているのですが、多いことについてはあまり問題なかったようです。最初に、6・3制は現在の子どもたちの成長に必ずしも合っていないというお話がありましたが、昭和22年にできた6・3制が、未だにずっと続いているのが現状です。小・中には、もちろん義務教育として括られているという意味もありますし、小学校・中学校のそれぞれが果たすべき本来の役割もあると思っています。
  さて、中1ギャップが云々という話がありますけれど、「中1ギャップ」としてよく挙げられるのは、不登校とか、暴力行為、いじめです。しかしそれは、顕在化している現象であって、乗り越えられない大きなギャップとは一体何なのか、それをしっかり、洗い出して共通理解を図っていく。日本全国で、「中1ギャップ」というものがきちんと捉えられているかと言うと、私はあまり捉えられていないのではないかと思っていますので、その辺りをきちんと整理していく必要があると思います。
  話が前後して恐縮ですが、4・3・2の区切りは、子どもたちの成長からすると、効果的であると思います。そこで、確かな学力、豊かな心、健やかな身体を育てるためには、4・3・2を取りましょう。それ以外のところについては、6・3を取りましょう。それは、小中の節目は、子どもから大人へ、児童から大人へという大事な節目ですから、それは是非残したいということで、6・3と4・3・2のそれぞれの良さを生かした教育活動を展開しているというのが、本校がめざしている教育の方向です。
  もう一点は、小・中の教員の連携についてです。いろいろなところで述べられているとおり、小中間にはやはり、風土とか文化の違いがあるが現実だと思います。それが無くなると思うのは、私は幻想であると思っています。また、無くす必要もないと思っています。互いの違いを認め合うところから、本当の協働が始まると思っています。今、本校では、小学校と中学校の全教員が兼務発令されており、960名くらいの子どもたちの教育に、80名余りの教員が当たっています。本来は小・中というベースがあるけれども、違いがあるからこそ、その違いから、様々なことをしっかり学び合えるのだと思います。9月6日の初等中等教育分科会の資料でも述べられていましたが、学び合うことはたくさんあります。共通の目的意識を持ってしっかり学ぼうと思えば、お互いに理解し合える。尊重しあって、組織として一つになっていくことは、私は可能であると考えています。今まさにそれを目指して私たちは努力しているわけです。絶対にできないことはないと思っています。ただ、共通の目的意識を持って、何を作っていくのか、ゴールを何にするのか、目的、手法を何にするのかということを上手に設定することによって、教員集団が、小・中の教員の壁とか、中学校の中の教科間の壁等も乗り越えることができるであろうと思っています。
  高松市では、本校がモデルケースとして今やっていること、1年半から2年間やってきたこと、準備段階から含めると5年間かけてやってきたことを、11月18日に実践発表会で報告いたします。2年後は、成果報告会と名称を変えてやるのですが、経年変化のデータを取りながら、子どもたちの良い変容をしっかりと捉え、また、問題点を洗い出しながら、市内に発信していきたいと考えています。市教委はそういうものに基づいて小中連携を一層進めていこうと計画しています。今後、具体的なことについては述べさせていただく機会があろうかと思いますので、以上で終わらせていただきます。

【小川主査】
  では、無藤委員、最後によろしくお願いします。

【無藤主査代理】
  副座長という立場ではありますが、一委員として、という程度で発言させていただきます。
  私も、いろいろな自治体などで小中の一貫、連携に関わって参りました。そこでの印象などについて少し整理したいのと、委員の皆様方の御意見で、いろいろな問題が網羅されてきましたので、私も同感である部分を話します。
  一番根本となるのは、やはり小・中というのは義務教育でありまして、9年間が義務教育としての責任を当然ながら持っているということです。その中の6・3というのは、極端に言えば便宜的な区切りであるわけですから、義務教育として最終的に中学卒業の時にどういった子どもであるべきか、あるいは、どういう子どもに育てているかという説明責任があると思っています。
  ただ、その際に、「じゃあ、中学はどうなのだ」ということもあるのでしょうが、やはり中学としては、ほとんどの生徒は受験を控えるわけですし、教育内容もかなり高度化しています。そうすると、小学校で基礎学力をしっかり身に付けてくれればちゃんとできるのだよ、という話になる。しかし今度は小学校にそういう話を持ち込んでいくと、「中学が…」という非難もあるし、というお話もありました。あるいは、幼稚園でちゃんとやればいいと。私も幼児教育に関わっておりますが、幼稚園にそういう話を持っていくと、「いやいや、家庭が問題なのだから…」ということになります。逆に高校では、特に進学校は大学受験を控えているので中学にかまってなどいられない、中学卒業くらいそっちでしっかりやってくれと。
  私の大学というのは中堅クラスで、学力幅が大きいのですが、一方で中学の英語すら怪しい子たちに、「どうするのだ」と大学教員がぶーぶー言って、「中・高がいけない」と言っているわけですが、要するに、お互いに非難し合ってもしかたないわけで、そういう仕組みの中でお互いにどういうふうに良くしていくかということを再確認すべきだということが、一つあると思います。
  もう一つは、いろいろな事情をお話しいただいたわけですけれど、やはり日本全国を見ると、義務教育と言っても極めて多様、中身の学習指導要領は同じですけれども、実情は様々です。先日たまたま中国地方のある田舎町に行く機会があったのですが、新幹線の駅から車で1時間以上かかるところで、人口は小さいのですが面積は大きくて、小学校が幾つかあって、その町の教育予算のかなりの部分は交通費にいっておりました。バス代とタクシー代です。子供たちはタクシーで毎日通うのだと。そのお金が大変だから他のことは全然できなくて、校舎の修理もできないという話をしている。一方で、横浜や東京のようなところもある。特に都心部になるので、横浜の中心もそうですけれども、私学に行くお子さんもいる中でどうするかという問題。また、小・中の学区が複雑に絡んでいる場合がある。おそらく、これからの5年くらいを考えてみれば、小・中学校の再編、統合は避けられないですね、少子化が進んでは。となると、そこでどうしていくか。そこまで見通していくと、これまで小・中を6・3である程度できた、という話も、これからの5年間はそろそろ難しくなっていくと思います。ただ、その多様性に充分配慮しながら、どういう在り方がいいのかということを考える必要があるということです。
  3番目としては、既に御発言もあり、資料の例にも出ておりましたけれども、小中連携あるいは一貫での様々な仕組みとか、ポイント、要になるいくつかの点も相当洗い出されてきていると思うのですね。先行事例はたくさんあります。それをもっと上手く整理すればポイントは出てくるし、それを広げるときの具体的な在り方、これが例えば学校教育法の大きな学制改革まで行かなくても、できることはいろいろあるのではないかという気がします。
  その辺りで、私が気になっていることを簡単に整理すると、一つは、既に出ている生徒指導の問題です。これは、私の研究室では非常に関心を持っていて、中学校の特に非行問題の調査をやって、まだ皆さんにお話しできないのですが、小学校5年生の子どもたちを中3まで5年間追いかけるということをしています。今、その5年間の半ばに来ましたので、あと2、3年して調査が終われば成果を披露できますが、途中の段階でもある程度分かるのは、従来言われていることを確認しているのですが、中1で割とふらつく子はいるわけですけれども、より深刻なケースは小学校に芽生えがあるということです、簡単に言えば。その芽生えは、小学校の先生に聞くとある程度は知っている、ただ、統計数値として「不登校」とか「非行」とは必ずしも出ていない、こういうことがたくさんあると。その辺を、どう情報交換するのかということを、もっと本気で考える必要があると思っています。それで、昨年文科省から出た生徒指導提要、あれが画期的だと思うのは、基本的には小学校と中学校の垣根を越えた仕組みで作られているのですね。そういう意味では充分参考になると思います。
  2番目は学習指導の問題で、学習指導要領を改訂したときに、かなり教科ごとにつながりが整理されていると私は思いました。指導要領上で、ですね。それをどうやって形にしていくかというのは、なかなか難しいとは思いますけれども。教科ごとの小中のつながりをもう少し考える必要があるというふうに思います。とりわけ大事な部分、難しい部分は、おそらく算数・数学と、英語だと思いますね。小学校英語も導入したのですけれど、来年度中学が学習指導要領の本格実施になって、英語が4時間になりますが、小学校英語を学んだ、活動した子が入っていくとどうなるか、非常に難しい問題が出るはずだと思います。
  3番目は、教師の研修の問題ですが、小学校の教員の現状、特に首都圏では若い教員が増えておりますので、そういうレベルで見ると、教科指導のレベルを上げていかなければいけないだろうと思うのです。つまり、小学校の先生は理科から社会まで全部持っている中で、得意教科はあると思いますが、そうでない部分をどう上げていくか。逆に中学の場合には、教科を越えた関係をどう作るか、教員同士の連携、関係をどう作るかということがあります。少子化の中で、中学校で例えば校内研究会をやろうと言っても、英語と理科と数学の先生がどう授業を話し合うのだと。そういう問題は、結構深刻です。教科を越えて学習指導をどう可能にするのかということがあって、それを小学校・中学校が一緒にやる中で、かなり実りのあることにもなっていくと思っています。
  あと、これはこの作業部会で議論することではないと思いますが、私は心理学が専門なので非常に気になっていることがありまして、発達障害の問題があります。これは、小学校ではかなり対応が進み始めましたけれども、当然ながらそういう子の一部は特別支援学校、中学の特別支援学級と入りますけれど、一部は通常学級にいるわけですよね。それで、多動性の子とか、アスペルガー障害とか、最近少しずつ研究も進んできたのは、学習障害の中のディスレクシア、読み書き障害ですね。読み書き障害というのは、日本語の場合にはアルファベットと違って、仮名はやさしいので、低学年というよりは漢字が増えてくる高学年で増えて、それが中学1年の英語が入ってくるところで極めて多くなる、ということが比較的最近の研究成果です。ですから、中1で英語がほとんどできない子の一部はディスレクシアだろうと思うのですが、そのための指導はおそらくほとんど手が付いていないと思います。そういうことも含めて、小学校と中学校でもう少し情報交換をすると、対応は可能だと考えています。

【小川主査】
  ありがとうございます。
  今日は、全員に御発言いただきました。およそ、作業部会で審議しなければならない課題と思っていたことが、皆さんから出されたかなという印象です。改めて、小中連携、接続の問題を考えていくに当たって、課題が多くあるということを皆さんからの御発言で感じました。果たしてこの半年で、審議し尽くせるかと不安もよぎったのですが、これは事務局と相談しながらスケジュール等々考えていきたいと思います。よろしくお願いします。今日、皆さんから頂いた意見については、再度、事務局と整理して、これからの審議のスケジュールに即して、テーマ別に課題を再整理して、皆さんの議論に付していくようにしたいと思います。
  事務局の方から何かございますか。前川審議官、何か感想などありますか。 

【前川大臣官房総括審議官】
  大変楽しかったです。

【小川主査】
  では、今日は総括的に皆さんからの御意見を頂きましたので、頂いた御意見を少し整理しながら、課題ベースに、次回以降ある特定のテーマに即して集中して議論していくことになるわけですが、事務局の方から次回の予定についてお願いします。

【小谷教育制度改革室長】
  次回は11月8日火曜日、13時から15時、今回と同じ文部科学省庁舎の16階特別会議室で開催の予定でございます。また改めて開催通知により御案内させていただきます。よろしくお願いいたします。

【小川主査】
  はい、分かりました。
  では、若干早めですけれども、これで終わりたいと思います。本日はありがとうございました。御苦労様でした。

――― 了 ―――

 

 

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