学校段階間の連携・接続等に関する作業部会(第3回) 議事録

1.日時

平成23年1月20日(木曜日)10時~12時

2.場所

中央合同庁舎第7号館(文部科学省)東館16階 特別会議室

3.議題

  1. 中高一貫教育校における学習意欲の向上を図る取組や入学者選抜等について
  2. その他

4.議事録

【小川(正)主査】 おはようございます。
 定刻になりましたので、ただいまから第3回の学校段階間の連携・接続等に関する作業部会を開催したいと思います。
 お忙しい中、御出席いただきまして、ありがとうございました。今日は、岩波委員と小川(暢)委員が御欠席ということのようです。よろしくお願いします。
 まず最初に、今日の配付資料の確認を事務局からお願いします。

【小谷教育制度改革室長】 配付資料の確認をいたします。本日の配付資料は議事次第のとおりでございます。資料1から資料4までございます。更に、こちらの机上資料の方にとじ込んでおりますけれども、御発表いただきます河合委員の方から全国中高一貫教育研究会の紀要という形で御提供いただいておりますものをとじ込めさせていただいております。
 以上でございます。

【小川(正)主査】 ありがとうございました。
 では、これから議事に入りたいと思います。今日は議題として議事次第に書いてあるとおり、「中高一貫教育校における学習意欲の向上を図る取組や入学者選抜等について」ということでお願いしております。
 まず最初に、事務局の方から現状認識などを踏まえまして、関係資料について御説明いただきます。その後に、今日はこの委員会の委員3名の方々からそれぞれの立場で御報告をいただくという予定になっております。よろしくお願いいたします。
 前回同様、3名プラス事務局からの報告、一括して後で大体60分程度の時間がありますので、審議、応答、意見交換ということにさせていただきたいと思います。
 では、まず最初に資料1について事務局の方から説明をお願いいたします。

【小谷教育制度改革室長】 それでは、説明させていただきます。恐れ入ります。資料1の説明に入ります前に、机上資料の206ページを御覧いただきたいのですけれども。先ほど御紹介しました紀要の前の資料でございます。206ページでございます。
 この資料は、前回の作業部会におきまして、会議の終了の際に小川主査の方から皆様方に時間が取れなかったので追加質問があればということで、その後承ったものを私どもの方から事務局として一括してそれぞれヒアリング対象校等にお聞きしたものの結果でございます。まず、これを最初に簡単に御報告させていただきます。
 まず最初の問いは小川主査からの問いで、教育課程の特例の内容についての要望でございました。その下にはヒアリング校3校の、まず兵庫県の芦屋国際中等教育学校につきましては合計で年間1,085時間とすることを認めていただきたいという御要望でございましたが、これは前期課程におきましても学習指導要領上は生徒の負担過重にならないようにすることを求めておりまして、具体的な上限を設定しているわけではございません。教頭先生にお尋ねしましたところ、兵庫県教育委員会より年間1,050時間を超えないようにとの指導を受けているということでございました。
 続きましては、滋賀県の守山中学校・高校からの御意見でございます。こちらにつきましては、今後、新学習指導要領の実施によりまして学校独自の教科・科目を設定できる時間数が減少・縮小するために、特色ある教育を実施していくことが難しくなるのではないかと懸念されるというものでございます。
 3点目は立命館宇治中学校・高等学校からの教科書の使用に関する御意見でございましたが、こちらに上級学年の教科書の使用ということ自体につきましては特段の規制はありませんので、これは現行制度上でも実現可能なものでございました。ただし、現在の中等教育学校や併設型の中高一貫校の教育課程の特例におきましては、中学校前期課程・高等学校後期課程間の指導内容の入替えですとか、移行は認めておりますけれども、学年制が適用されます中学校ですとか、前期課程内だけでの入替え等は認められておりません。したがいまして、別途教育課程特例校の認定を受けていただかないと、それがまた認められるかどうかという議論もございますが、例えば中学校第1学年で第2学年、または第3学年の内容を発展的な学習として当該学年の教科書を使用して指導をされたといたしましても、また改めて同じ内容を該当の学年で指導していただくということが必要になるというものでございます。ただし、教科書の使用自体については規制がございません。
 問2につきましては、これは柳原委員からいただきました、大学の入学者選抜の際についての御質問でございました。これにつきましては、芦屋国際中等教育学校、守山中学校・高等学校、立命館宇治中学校・高等学校、3校とも現在の大学入試について改善が必要であるという御意見を御覧のような形でお持ちでございました。
 問3につきましては、これは小川主査からいただきまして、学校設定教科・科目につきまして卒業に必要な修得単位数の上限を更に拡大して欲しいという要望があるかということでございまして、こちらにつきましては、上限を目いっぱい活用している学校に問い合わせをいたしましたところ、9校中4校から更なる拡大を求めるという回答をいただいております。その理由といたしましては、「その学校の特色を打ち出すことができる」ですとか、「より弾力的な教育課程を編成する余地が生まれる」ですとか、そういった、御覧いただいたような意見、理由で求めるというふうになっております。
 まず前回の追加質問の件は以上でございます。
 恐れ入りますが、続きまして、それでは資料1に基づきまして本日の議題に関する内容の御説明をさせていただきます。
 資料1を御覧いただきたいと思います。本日の議題は中高一貫教育校における学習意欲の向上を図る取組ですとか、入学者選抜等についてということでございます。
 まず、この制度当初の考え方ということで、平成9年の中教審の答申で示されました考え方を3ページ目からお示ししております。3ページ目、(1)でございますけれども、平成9年の答申におきましては中高一貫教育の導入に当たって考えられる利点として、高校入試の影響を受けずにゆとりある学校生活が送れるですとか、6年間の計画的・継続的な教育指導が展開できて効率的な一貫教育が可能であるとか、6年間にわたって生徒を継続的に把握することによって生徒の個性を伸ばし、すぐれた才能を発見できるといったようなことが挙げられておりまして、一方、内容にかかわる問題点といたしまして受験競争の低年齢化につながるですとか、受験準備に偏した教育が行われるおそれがあるとか、小学校の卒業段階での進路選択は困難ではないかといったことが示されております。
 答申では、(2)にございますように、これらを踏まえました上で中高一貫教育におきましては義務教育段階での基礎・基本をしっかりと身につけさせるとともに、年齢が進むにつれて多様化していく生徒の能力や適性、興味・関心、進路等に対応して生徒の選択を重視したできるだけ多様な教育を提供することが望まれるとしております。
 その一方で、4ページを御覧いただきたいのですけれども、中高一貫校で受験準備に偏した教育が行われることへの懸念を示した上で、受験競争の低年齢化を招かないといった観点から、入学者を定める方法の在り方としまして、特に公立の学校については学力検査を行わないといったこと、そして抽選や面接、小学校からの推薦・調査書等の多様な方法を適切に組み合わせて行うべきことなどが示されております。また、更に高等学校段階に進む時点での入退学につきまして、あるいは日常の指導や学校運営に当たっても十分な配慮を行うことが示されているところでございます。
 続きまして6ページの方を御覧いただきたいと思います。6ページからは、これは平成20年12月に当時の政権に設けられておりました規制改革会議においてなされていた議論の内容でございます。こちらは主に学校経営における公私間の諸条件のイコールフッティングを求めるといった観点からの主張に立脚いたしまして、その中高一貫教育校における入学者選抜の在り方について特に言及して、ひいては中高一貫教育制度の成果と課題を検証することが求められるところでございます。
 ここで掲げられておりますような議論の結果を踏まえました上で、9ページになりますけれども、規制改革推進のための3カ年計画におきまして、こちらのような閣議決定がなされているといったところでございます。
 こういったことも踏まえた上で、では現状はどうかというのが第1回もお示ししました実態調査の中から抽出しておりますが、関係する部分を見ておきたいと思っております。
 まず、12ページから御覧いただきますと、中高一貫教育校における教育活動の特徴としましては、多くの学校が生徒一人一人の個性・創造性を伸ばすですとか、教育課程をより効率的・効果的に行うですとか、学力・学習意欲の向上、進路希望の実現を重視するとしております。その上で、16ページ目以降なのですが、どういったことをねらいとしてやったのかということをお示ししております。更に成果・課題といったことを、それぞれ聞いているものをグラフとしております。
 こういったもの、30ページと31ページを御覧いただきたいと思います。こういったそれぞれの内容をまとめて紹介をさせていただいておりますので、御覧いただきたいのですけれども、多くの学校が学力の定着ですとか向上を図るといったことをねらいとして中高一貫教育を導入しまして、それに近い数の学校で成果があったとしている一方で、生徒間の学力差、個に応じた指導法の確立ですとか、高校入試がない等のために学習意欲の面で課題があると、そういう学校が多くなっておりまして、課題を課したり、別途試験を課したりするなど対応している傾向が見てとれます。具体的な、どんな対応をしているかというのが、戻っていただいて恐縮ですが、その1枚戻っていただきますと28ページ、29ページにそれぞれ公私を問わず回答があった、多かった取組、あるいは私立のみに回答が見られた取組、そういったものを○・△で分けた上で御紹介させていただいておりますが、こういったような取組がなされているということでございます。
 なお、特に今回公立のデータにつきましては、あわせて平成16年までに設置された学校、すなわち現時点において既に卒業生を出している学校のみを抽出したデータというのも調べてみました。これにつきましても、まだ卒業生を出していない学校も含めた全体と同様な傾向が見てとれたわけですけれども、あえて違いを申し上げますと、まず成果という点でいきますと21ページと22ページを見比べていただければと思います。それを見比べていただきますと、他の項目につきましては軒並み平成11年から16年度の設置校の方がより高い割合で成果を上げていると答えているのですけれども、学力の定着・向上という点になりますと、卒業生を出している学校の方が若干割合が下がっているという形になります。
 課題につきましては、また同様に25と26ページの方を見比べていただければというふうに思うのですけれども、これは他の項目でも同様の傾向を見てとれるものもございますが、学力面での課題といたしまして、高校入試がないために学習意欲の向上で課題があるとか、生徒間の学力差があるといった点につきまして、特に中等教育学校ですとか、併設型において既に卒業生を出している平成11年から16年度設置校の方がより多くの割合で挙げられているということが見てとれました。
 続きまして、飛んで恐縮でございますが、32ページから教育活動の現状についての御報告でございます。内容でございますが、交流事業ですとか、内進生と外進生の対応について掲載をしております。交流事業につきましては、多くの学校で中学校・高等学校双方の教員による交流事業が行われておりまして、1枚めくっていただきますと成果という形で34ページから挙げておりますけれども、高校教員の中学校教育に関する理解の深まりですとか、6年間かけて生徒を育てるという意識の共有ですとか、生徒の継続的な理解を挙げる学校が多い一方で、特に公私立について、学力の定着向上を挙げる学校は必ずしも多くありません。
 また、課題といたしましては、その次のページになりますけれども、中高間の打ち合わせ時間の確保ですとか時間割の編成、教材研究、指導法の不足を多くの学校で挙げていただいております。
 それから36ページを御覧いただきますと、併設型の中高一貫校の場合のその中学校以外からの入学者を受け入れている高校におけるクラス編成についてのデータでございますが、内進生と外進生を混合する学校・分ける学校、それぞれ見られるということがわかっております。授業の進め方につきましてはその次のページになりますけれども、進路別に分けて授業を行ったり、補講を行ったりの学校というようなことが多いということがわかっております。
 今度は39ページ目以降が入学者選抜の状況でございます。特徴は44ページの方に、文書の方ではまとめさせていただいておりますけれども、多くの学校が面接ですとか、小学校からの調査書・推薦書を用いておりますし、そのほか国公立の多くが適性検査を、私立の多くが学力検査を実施していらっしゃるということが実態としてわかっております。45ページからは、入試の倍率について書かれておりますけれども、中学校段階における入試につきましては、国立の平均倍率が高い状況になっております。公立・私立に際だって違いは見られませんが、併設型という形に絞りますと私立の方が低い状況にございます。ただし、高校段階になりますと私立も高倍率となっております。
 それから、49ページを御覧いただきたいと思いますが、中学校段階の卒業、修了者の高校段階への進学でございますが、中等教育学校と併設型については自校の後期課程への進級、あるいは併設されている高校への進学が圧倒的に多い状況でございます。ただ、一部、本人や保護者の意思のもとに他校へ進学される例も見られるところです。その一方で、連携型につきましては、連携している高校への進学というのは4割弱という形になっております。
 最後に、53ページからが設置者である教育委員会からの回答でございます。多くの教育委員会が中等教育の多様化、複線化ですとか、生徒・保護者の選択肢の拡大を意図して中高一貫校を設置されており、設置した成果としていろいろなことを挙げていらっしゃいますけれども、一方で生徒間の学力差や学習意欲の面をやはり課題として挙げられているということがわかっております。
 以上でございます。

【小川(正)主査】 ありがとうございました。
 質問等はまた後で一括でお受けしますので、よろしくお願いします。
 では、続いて河合委員の方から御報告をお願いします。資料2に基づいて御報告をいただきたいと思います。よろしいでしょうか。

【河合委員】 失礼いたします。座らせていただきます。
 本日報告させていただく資料は全国中高一貫教育研究会の、先ほど小谷室長からもありました研究紀要の第6号に発表されました研究会の研究委員会が一昨年より進めております一貫校の在校生・卒業生の教育、生活に関する調査の一部であります。
 中高一貫教育が導入されて10年を契機に教育効果の検証作業を開始するということで、平成20年11月の五ヶ瀬大会で研究会の承認を得た上で開始いたしております。中高一貫教育については様々な意見が出されておりますが、生徒や教員の意見・感想をニュートラルな視点から整理することを最大の目的としております。分析と評価に関する作業は研究グループが、調査票の発送等は東京大学、名古屋大学、奈良女子大学の付属が担当しております。
 本調査の目的ですが、そこにございますように、「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について」において指摘された利点と懸念について点検と評価を加えることにありました。利点として挙げられました「安定した学生生活」、「継続性ある教育指導」、「個性・才能の伸長」、「豊かな人間関係」などについて、また、懸念として挙げられました「受験競争・受験準備の低年齢化」、「固定される生徒集団」、「発達差の大きい生徒への対応の難しさ」、「中だるみ」などを、生徒たちはどのようにとらえているのかを明らかにできればと考えた次第であります。
 今回、御報告させていただくことはできませんけれども、同時に、教員に対しても調査を実施しております。この調査では、学校制度の複線化と選択的導入、設置者の裁量権の拡大、高校科目の中学校への展開というくさび型教育の効果などについても聞き取りをいたしております。私どもは、これらのデータに基づいて点検と評価を行い、中高一貫教育の改善を行いたいと考えている次第であります。
 方法でございます。お手元にございますが、回答は25校、回答者数は2,724名からいただいております。内訳は、中等教育学校8校、併設型中高一貫校は17校。回答者数ですが、在校生2,235名、卒業生489名でありました。このうち在校生は中等教育学校680名、併設内進在校生918名、併設外進在校生637名となっております。卒業生の年度別の分析はいたしておりませんけれども、ここでは全体についてですけれども、資料にありますように489名の回答をいただいております。
 結果でありますけれども、傾向をわかりやすくするために、紀要を見ていただきますと、紀要の中の図と方向をちょっと逆にしておりますので、「そう思わない」を1、「そう思う」を5として平均値を求めております。図中に統計的な優位さ、偶然ではなく意味ある形でそれが起きているということについても示されておりますが、全体的な傾向のみについて御説明をさせていただきます。
 各項目群についてお話をさせていただきますが、1番の入学に関してであります。中高一貫教育において懸念されていた問題の1つに、義務教育である中学校教育において導入される適性検査がありました。また、十分に自分の進路を考えることができない子供に中高一貫教育が選べるのかというような問題もございました。ここでは入学時点の子供たちの意識について聞き取りをいたしております。ちょっと見にくいかと思います。お手元の資料を見ていただければと思いますが、時間がございませんので特徴的な部分についてのみ説明をさせていただきます。受験負担についてでありますけれども、負担が少なかったとの回答が多くなっております。併設の外進生は高等学校からの入学となるわけで、他に比べると負担感が高くなっている。受験負担なしというところで、負担がないというのに対して二重丸になっておりますけれども、どちらとも言えないというので当てはまらないという方向に外進生は回答をしております。
 学力試験と適性検査への回答傾向は、一番下側、学力試験ですけれども、学力試験に賛成か反対かということでいきますと、在校生は平均しますとどちらとも言えないということになりますが、卒業生は賛成ではないという方向になっています。学力試験ではなくて現在の適性検査でよいのではないかという生徒たちの考え方を反映しているようにも思われます。
 次でありますが、2番目。学習内容に関しては以下の項目、17項目が挙がっておりますが、個々の項目については議論いたしませんが、学習満足度や特色ある教育、探究心を育てる教育への評価などについては、在学中もプラス方向への評価ですけれども、卒業後にそれらが更に意識されていると考えられます。このことは10年前の中高一貫教育の導入時に述べられていた大学に進学してから伸びるような、自ら学習する力を養成する、それが中高一貫教育の大きな目的であると。いわゆる難関校に入るためではなくて、入ってから学生が更に伸びて、日本を変えていく力を持って欲しいという、それが部分的には達成されているのではないかというふうに考えられます。
 逆に、卒業後に低下しているものが受験直結授業や授業を速く進めていくというような、いわゆる受験に偏したと言われるような内容のものでありますけれども、在学生はそれほど明確ではありませんけれども、卒業した生徒たちから見ると、それほどそういうふうな明確な授業が行われていた、自分たちが詰め込まれていたというような意識は持っていないのではないかと思われます。
 学校生活についてでありますけれども、この項目群についても卒業後の評価が高くなっております。特に学校生活の満足度は中等・併設に関係なく高くなっております。国際的な視野の広がりなども卒業生で高くなっております。総じて満足度は高いのではないかというふうに思われます。
 4番目が生活と人間関係であります。この項目群は制度導入時から、6年間の人間関係が利点として働くのか、懸念材料となるのかについて議論が分かれてきたところでありました。項目の35と38がボールドになっておりますけれども、この2つの項目はまさに利点と懸念に対応するものであり、今回の調査におきましても特徴的な回答傾向を示しております。深い人間関係が形成されたかという問いに対して、在校生も卒業生も「そう思う」と回答しております。そしてその傾向は卒業して、より高くなっています。この、卒業後にプラス面がより強くなるという傾向は比較的安定しているように思われます。これに呼応するように人間関係が充実していたという回答が卒業後に強くなっております。6年間がそれらの関係性をつくり出している可能性があるということは、併設校の外進生と比べて中等教育学校生と併設内進生が統計的にもより高く「そう思っている」と回答していることからも推察されます。
 同時に、6年間人間関係が変わらないことによって人間関係が固定することについての懸念も見られます。中等教育学校において人間関係に不安定な時期があったということが、在校生・卒業生ともに示されています。この点については慎重な検討が必要かと思われます。現在どの学年で、またどのようなときに人間関係が不安定になったのか、更に、そこからどのようにして復帰したのかということについて、自由記述データを含めて分析に入っております。これらは、多感な思春期の教育という意味からも今後の一貫教育を考えていくために重要なポイントになるのではないかと考えております。
 自己効力感でありますけれども、一般的な同世代の仲間たちと比べてということで、自己効力感は大学進学やキャリア発達だけでなく、社会人としての在り方や今後の国際的な競争力を持った教育を考える意味からも重要であると思われます。自己認知による評価であります。自分でどう思うかということでありますので、自己評価ということでありますけれども、中高一貫教育は学力だけでなく、自ら学ぶ力や人間教育にも効果を持っていることを示しているものと思われます。総じて、中等教育学校の生徒と卒業生において、これらの傾向が高くなっておりますが、企画・創造や思考・探究に関しましては、中等教育学校・併設内進生ともに高く、卒業後はその意識がより高くなっているように思われます。もちろん、これらは自己認識でありますが、一貫教育においては6年間のじっくりと物事を考え、解決していくという教育の効果を期待できることを示していると考えられます。
 最後ですけれども、中だるみについてであります。これまでの委員会におきましても議論となりましたが、中だるみ現象が懸念されておりました。これにつきましては、一部紀要にないデータを加えております。中だるみは在校生・卒業生・教員ともに「そう思う」という割合が高くなっています。その時期は3年生が最も多く、次いで4年生となっております。これに関しましては、残念ながら中だるみが本当に無気力で無意味なものなのか、それとも後期課程へのためとも言える充電の時期なのかについては、まだ検討が終わっておりません。しかし、中だるみ現象があるということについては、生徒・教員ともに認めているところであるかと思います。
 中高一貫教育が結果として、いわゆる難関大学への入学者数を高めていることなどについては、先ほども小谷室長の御説明でありましたように、これまで言われてきているところでありますが、この制度が導入された当時に期待された、学力とともに人間力をつけるという点についても、一定の範囲で期待されている効果が得られていると考えます。今後、更に詳細な分析を加え、人間関係における問題や中だるみに見られる学びの平穏化について問題点の整理と対応方策などの検討を加えるとともに、これらの利点を生かした大学教育との接続の在り方などについても検討していく必要があるのではないかと考えております。
 以上で研究会の結果の発表を終わらせていただきます。

【小川(正)主査】 ありがとうございました。質問等はまた一括でお受けしたいと思います。
 では、次に直原委員、東京都の教育委員会の取組について、御報告をお願いしたいと思います。

【直原委員】 それでは、私からは都立の中高一貫教育校で実際に行っている入学者選抜における適性検査問題というのはどのようなものか、そして今お話のございましたいわゆる中だるみ対策としてどのように取組を実際に行っているのかについて御紹介をしたいというふうに思います。お手元の資料3を御覧いただければと思います。
 1番のところですが、都立の中高一貫教育校は、こちらにありますように中等教育学校が5校、そして併設型の中高一貫校が5校開校してございます。
 まず、その適性検査の問題ですけれども、2番のところですが、適性検査問題で何を問うのかということですが、こちらに記載がありますように「学習活動への適応能力、学ぶ意欲や適性などをみる」ということで、そのために10校それぞれ各学校の特色に応じた検査問題を作成しているところです。
 次の3番のところですが、ここではその中の南多摩中等教育学校、こちらは昨春、平成22年度に開校した八王子市にある中等教育学校です。そこでの適性検査問題を具体的に御紹介させていただきたいと思います。
 (1)のところが、まず南多摩中等教育学校の特色ある教育活動ということで8つ列挙しておりますが、この中の2つ目の丸、3つ目の丸、4つ目の丸、このあたりが適性検査問題との関連性が深い特色ある教育活動だというふうに考えています。では、実際にどういうものかということなのですが、1枚めくっていただきまして、下のところにページがふってありますが、3ページ目を御覧いただきたいと思います。
 この問題は学校に近い高尾山という山があるのですが、そこで見られる様々な野鳥、その野鳥が幾つか種類がありますが、それぞれ各月にどれだけ観察されたかと、そういうデータをグラフを示しまして読み取る力を問うております。次の4ページに問題1というのがございますけれども、まず、このグラフから特定の月、実際には6月ですが、6月で観察可能な野鳥の種類、そして観察できる可能性の程度について読み取る問題です。これは単純なグラフの読み取りの問題です。あわせて、次にグラフから6月には観察できない鳥をすべて観察するためには、では何月に観察すれば最も適当なのかというのを考えさせる問題です。これはグラフから最も観察が難しい野鳥というのは何であって、その鳥を観察するには何月に観察すればよいのかというのがポイントだというのがわかればできる問題なのですが、このような探究活動に適した資料分析力ですとか、推理する力を見ている問題です。それから、その下の問題2というのは実際に観察するのに必要な知識や道具を考えさせる問題でございます。
 次に、6ページを御覧いただきたいと思います。左上に四角3というふうに書いてある問題ですが、これはちょっと写真が見づらいのですけれども、わき水が出ている、そのわき水が水路に流れている、そういう状態を示しまして、出ているわき水の水量をどうやったらはかれるか、それを考えさせる問題です。これは、この学校はフィールドワークを通じて思考力、判断力、表現力を育てるというのを特色ある教育活動にしておりますので、その関係でつくった問題のわけですが、フィールドワークに適した具体的な調査方法を考える力、そしてそれをわかりやすく説明する力を見る問題です。
 それから、次の7ページ、8ページについては、関連する幾つかのデータからわき水の発生地点が減少しているのですが、その原因は何なのかを考えさせる問題です。
 次に、これは全く違う問題ですが、10ページを御覧いただきたいと思います。この10ページは物理学者の米沢富美子さんのエッセイを読ませて設問をつくっているものですけれども、このエッセイは著者の幼いころの体験、どういう体験かと言いますと、母親が天ぷらをしていて、その後天ぷら油を天ぷら鍋からじょうごを使って缶に移すと。それを見て当時4歳のときの著者が容器に応じて形を変えていく、そういう属性の物質を一体何と呼ぶのだろうかと。当時幼いですから液体という言葉を知らなかったわけですが、そういう言葉があるはずだ、一体そういう言葉は何なのだろうかというのを考えて、そのもどかしさですとか、驚きや疑問を綴った文章なのですが、これを読ませて、まず1つはこの文章で筆者が何を言いたいのか、その読解力を問うとともに、その後、同じような驚きですとか疑問を、自分が経験したか、自分の体験を文章にまとめてくださいという、そういう設問で、自分の考えをどれだけ論理的に説明できるか、このような設問をしているものでございます。このような形で適性検査の問題でいわゆる思考力や表現力を問うているということでございます。
 次に12ページを御覧いただきたいと思います。こちらはいわゆる中だるみ対策としてどのような取組をしているか。これは都立両国高校の付属中学、ここは併設型ということですが、その第3学年を中心にどのような取組をしているかまとめたものでございます。1つ目が中学3年時に卒業論文を書かせるということで、書かせるための様々な取組を記載しております。2番目は外部の学習塾の模擬試験を受けさせております。それから3番目が保護者・生徒向けの進路講演会、4番目が、実際にはもちろん高校入試というのはないわけですが、高校受験を意識させる取組をしてございます。それから5番目には面接など個別指導、6番が高校生との交流、以下、学校設定科目等でございます。
 1つの具体例ということで御紹介させていただきました。
 以上でございます。

【小川(正)主査】 ありがとうございました。
 では、最後に3つ目の報告ということで、志田委員の方から新潟県柏崎中等教育学校の取組について、御報告をお願いいたします。

【志田委員】 よろしくお願いします。
 新潟県立柏崎翔洋中等教育学校は、新潟県の柏崎市というところにございまして、地図で言うとあの辺にあります。平成16年には中越地震、平成19年には中越沖地震に見舞われて、現在のところは大分復興してきて、町も大分元気になってきたかなというところであります。学校からは日本海が見えまして、米山という柏崎のシンボル的な山が見える学校であります。
 本校は平成14年に設置されまして、現在卒業生が2回出ております。新潟県では県立の中等教育学校が6校ございまして、本校は新潟県内では2番目、全国では3番目にできた学校であります。また、併設型中等教育学校が1校、新潟市の方で中等教育学校が1校、私立が3校あると、新潟県の中高一貫教育校というのはこのような現状であります。本校は、教員が約30名おり、クラスは各学年2クラスの12学級で編成されております。このような小さな学校であります。
 それでは、配付された資料に基づいて本校における学習意欲の向上の取組と、入学者選抜について説明をさせていただきます。
 本校独自の取組として、主に今回は行事について紹介させていただきます。まず、新入生オリエンテーション合宿は妙高にある青少年自然の家へ行って、入学して二、三日後に1泊2日で行う合宿であります。これは、最初いろいろな小学校から子供たちが来ておりますので、まず仲間づくりをして、人間関係を築いて、それから学習にスムーズに移行しようと、そういう意味で学習意欲を高めていきたいということで、集団生活やグループ活動を通じて主に仲間づくりをするということを目的にやっております。これは全体の様子であります。合宿ではこういうゲームをやったり、夜ろうそくをつけて、それぞれ自分の話をしたり、自分を知ってもらおうというような活動をしております。
 次ですが、これは志賀高原で夏季休業中に学習合宿を行います。「Shoyo Academic Camp」「SAC」という名前でやっております。3年生は3泊4日、6年生は4泊5日で集中的に学習に取り組みます。1日10時間くらい一生懸命みんなでお互いに励まし合いながら勉強する生活をして、やればできるんだ、10時間でも勉強ができるんだという意識をつけてもらいたいということでやっております。これは6年生全員がこんな感じで参加している様子です。このような形で勉強して、みんな同じようなTシャツをつくって心を1つにしてやっていこうということであります。これは勉強だけではなくて、朝もやの中散歩したり、自然の中の様子を見たりということをやっています。
 キャンプのときに、卒業生の方から6年生に対して、2期生というのは昨年の3月に卒業した子供たちなのですが、自分たちの経験を踏まえて現役の6年生に激励の言葉、いろいろ自分たちが体験したことなどについてこういうメッセージが送られます。これを見て現役の子供も「ああ、頑張ろう」という気持ちになっているようです。これは3年生に対して、昨年キャンプを経験した4年生が後輩に対して頑張れという激励の言葉を寄せ書きにして送ってくれたものです。めげそうになったときに、3年生などはこれを見て、またやろうという形でやっております。
 次に「SAT」という、翔洋アチーブメントテストというのがありまして、これは中だるみ解消の一環として昨年から実施したのでございますが、前期課程の学習内容で全範囲にわたったところから出題をしまして、学力を診断するものです。これは3年の8月にやるのですが、全員で何とかこれを乗り切ろうということでやっております。それで、最後に終わると認証式ということで卒業式みたいな形のスタイルをとっております。生徒だけでなくて保護者の方もたくさん参加されて、ちょっと儀式的な形なのですが、これに向けて頑張ろうということで、中だるみを解消したいということでやっております。
 次ですが、LFプロジェクトというものでございますけれども、リーダーシップとフォロワーシップをはぐくむプロジェクトで1年生から6年生までそれぞれの学年3人ずつ、合計18名を1グループとして活動しています。これは第1回目の活動なのですが、右側にいる子が1年生、左側にいる子が6年生で、学校生活に不安があったり、どういうふうに勉強したりしたらいいかとか、そういう相談を1年生が6年生に相談して、6年生の方が1年生に答えているものであります。この活動は、学校生活座談会ですが、下級生が上級生にそれぞれ質問をして、学習方法や生活の仕方の悩みを質問して、それで上級生が答える。そうすると、これは下級生だけではなくて上級生の方も入学当初の初心を思い出します。1年のときはこんなだったんだなということで、下級生だけではなくて、上級生もまた新たな初心に帰るという意味で効果が上がっていると考えております。
 あと、LFプロジェクトの中で、このようにあいさつ運動をしたり、あるいはごみ拾いということで、ボランティア活動をしつつ上級生と下級生の交流を図っているということであります。また、これは卒業生が本校に来て座談会をするという形で、現役の生徒が上級生にいろいろなことを質問して卒業生が答えてくれるということであります。これは6年生がセンター試験の前に、6年生に対して下級生の方が頑張ってくれというメッセージをつくっているところであります。こんな形で廊下に張って、上級生の方が見て、いろいろ不安にはなるのですが何とか頑張ろうという気持ちを持ってもらっているところであります。
 それともう1つ、海外研修旅行は、4年生が2月末にカナダへ9泊10日で行ってまいります。外国で実際の生活を見たり、ホームステイをしたり、それぞれの学校との交流をしたりする中で、自分を見つめ直したり、「英語って本当に必要なんだな」と、「もうちょっとやらないとだめなんだな」というような意欲喚起をしているということであります。これはホームステイ先の方と出会ってホームステイへ行って、そこへ行くともう英語しか話せませんので、最初はかなり戸惑っているのですが、帰ってくると「英語が通じるんだ」ということですごい自信になって帰ってくるようです。これは現地の子供たちと日本文化を紹介するということで折り紙をしたり、教えたりしている様子です。また、着物を持って行ってこういう着物を着せたりということで、自分の情報発信をしています。これが最後帰ってくるときのホストファミリーの方と別れを惜しんでいるところであります。
 それと、チャレンジウォークは、1年生は約18キロ、三、四年生は25キロ、五、六年生は30キロ歩くものであります。かなり長い距離で生徒は大変に思っているのですけれども、達成した喜びというか、そういうものを味わってもらいたいということでやっております。先ほど紹介しましたように海に近いので、このような海の近くをみんなで楽しそうに歩いています。これは学校に帰ってきて、「ようやく終わった」と、こういうようなものであります。
 それで、これらの行事を通じて生徒の感想を少し紹介させていただきますと、例えば、このチャレンジウォークなのですが、「今回のチャレンジウォークで頑張った自分を忘れずに、日々の学校生活や学習に生かせるように頑張りたいと思う」といった感想や、「最後に友達とみんなで腕を組みながら校門に入ったときには、達成感を強く感じることができた。今度は受験でこの達成感をみんなで味わいたい」という感想があります。
 また、先ほどのリーダーシップフォロワーシッププロジェクトの中で学校生活座談会というのがありましたけれども、そこでの感想を、紹介させていただきますと、「6年間という長いスパンで学習していくと、目標を見失うときが幾度となく訪れると思う。しかし、その目標を見失わないためには、強い気持ちと細やかな目標設定が必要なのだと自分自身再確認した」。あるいは5年生の子なのですが、「先輩の話を聞けて、やっぱり5年生と6年生では勉強の量が違うなと感じた。今回の話を聞いて、少し焦ったけれども、これをまた生かして頑張っていきたいと思った」。あるいは、今度は2年生の感想なのですが、「課題の提出はしっかりやりたいです。あと小テストや朝テストも軽く見ないで、しっかりと勉強したいです」、このような感想があります。
 それと海外研修旅行の感想を1例紹介させていただきます。「英語での日常生活はふだん学校で習っている英語とはかなり異なっていたり、全く知らない表現があったりして生きた英語を学ぶことはとても難しいと思いましたが、自分の実力を自覚し、英語を学ぼうという向上心を高めるいい機会となりました。この研修旅行を終えて、私たちは一人一人が本当に様々なことを学び、考え、精神的に一回りも二回りも成長できたような気がします」。このような感想があって、いろいろな意味で意欲が向上しているのではないかなと考えております。
 資料の2ページ目でございますけれども、県の事業への参加ということで、そこの中の2つを紹介させていただきますと、チャレンジセミナーという県がやっている事業にも参加しております。高校2年生、あるいは中等教育学校5年生を対象に春と夏に3泊4日で実施をしております。全県から200名程度の生徒が参加をして、国語・数学・英語の講義を聞く、あるいは意識啓発講演会を行う、あとOBの方が来て体験等話をしてくれます。
 本校は、非常に生徒数が少なくて、ほかの学校の生徒と交流をしたりすることで、非常にいい刺激になっているのかなと思っております。あと、サイエンス・パートナーシップ・プロジェクト事業で、数学トップセミナーというのもありまして、これも3日間やります。3日間のうち、最初は1日と2日に分けて、1日のときは丸1日やるのですが、2回目のときは1泊2日ということで宿泊をして別の学校の生徒とグループを組んで数学の問題を考える。これも他校との交流で、非常にお互いに触発し合っていい成果が上がっているのではないかなと考えております。
 学力向上の取組等については以上でございます。
 次に入学者選抜についてですが、考え方といたしましては県の教育委員会が示した実施要領に基づきまして一人一人のすぐれた点を積極的に評価して個性や能力、適性等を多面的にとらえるように配慮して、入学者選抜を実施しています。選考検査の内容と時間についてでありますが、作文、グループ活動、面接を行っており、学校からの調査書を参考にして行っていると。
 作文でございますが、このような形で出題されております。これは水資源の問題で、水不足を解消するには今後どうすべきかということなのですけれども、いろいろ調べていたらわかったこと、あるいはこういう資料を見て、この資料から読み取れることを書いてもらうことで、それに対して、これに基づいて自分の意見を書いてもらいます。
 次にグループ活動でありますが、これは無人島へキャンプへ行って、そのときにどういう計画を立てますかという問題であります。これは最初の方は1人で計画を立てて、その後グループでそれぞれの考えを発表して、それからグループでどうするかということを決めるということであります。グループ活動というのはわからないと思いますので、写真を撮ってきてあるのですけれども、最初このようにそれぞれが自分の考えをA3の用紙に書きます。その後、後半にはこのようにグループでそれぞれ分かれて、大きな紙、模造紙にまとまって自分たちのグループの計画を考えていくという活動をすることであります。
 評価の方法についてでございますが、それぞれ観点を決めて観点ごとに基準を設けて評価するということであります。作文については5つの観点について基準を設けて評価しております。グループ活動につきましては6つの観点について基準を設けて評価をしています。面接については、4つの観点について基準を設けて評価をします。選抜方法につきましては、その面接等の結果に基づいて特徴のある者や評価の高い者の中から、本校の特色に照らして総合的に判断して決定形でやっております。
 以上であります。

【小川(正)主査】 ありがとうございました。
 各報告者、時間をきちんと守っていただきましたので、およそ1時間くらい質疑応答、意見交換する時間がありますので、ではこれから後半に入っていきたいと思います。
 今まで事務局の方から調査にかかわるような説明と、今3つの報告をいただきましたので、質問及び意見等々ありましたら、これから御自由に御発言いただきたいと思います。ちょっと時間の調整はありますので、御質問・御意見のある方、今の段階でもしもありましたら、挙手をお願いできますか。
 では、直原さんから、よろしくお願いします。

【直原委員】 意見ということですけれども、先ほど私からは都立の中高一貫教育校の適性検査の問題をどのようにやっているかという具体例を御紹介させていただきました。それぞれの学校が、なかなかこの問題をつくるのは難しいのですが、工夫してつくってございます。
 私どもはこの中高一貫教育校の教育の考え方からして、生徒の思考力ですとか、判断力ですとか、表現力、あるいは探究心、そういった資質のある生徒を受け入れて、更に伸ばしていきたいと、それが基本的な考え方なのですけれども、入学者選抜に当たっての、それを適性検査問題だけでやっているのですが、ちょっとこれだけでいいのかなというのは実は考えています。
 現在、国の規則で公立の中高一貫校では学力検査はしてはいけないと、そういう縛りがあるわけなのですが、もちろん基本は、今お話ししましたように思考力、判断力、表現力、探究心を見るのが基本だとは思っておりますけれども、やはり学力の中には教科の内容に即した理解というのも当然ですけれども学力の重要な要素であることは間違いないわけでございまして、この部分について全く問わなくていいのかという問題意識は持ってございます。
 もちろん、これは冒頭御説明がありました当初の議論の中にありました受験技術を問うような学力偏重というものを、受験偏重というものをもたらしてはいけないと、これは大事なことだとは考えておりますけれども、そのような、いわゆる受験偏重をもたらすからいけないのであって、やはり基本的にその教科の内容の勉強をするのはいいことなわけでありまして、入学者選抜でそれを問うてはいけないという規制を加える必要は、私はないのではないか、その部分は改めた方がいいのではないかというふうに考えております。
 以上です。

【小川(正)主査】 ありがとうございました。今の話題についていろいろまた御意見があるかと思いますので、よろしくお願いします。
 今の質問にかかわって、僕の方からちょっと直原委員と、あと柏崎の中等教育学校の志田委員にお尋ねしますけれども、まず志田委員の方ですが、こういう入学者選抜の作文とグループ活動、あと面接というふうなことでいろいろな工夫をされてやられていますけれども、こういう入学者選抜での選抜と、入学された以降の学習の伸びの、そういう検証みたいな作業はされているでしょうか。
 大学では従来前期・後期ということで、後期がそういう教科というよりも多様な入学者を選抜するということでいろいろな工夫をされた選考法をやっていたのですけれども、大学ではそういう前期と後期で入ってくる学生が4年間でどういうふうに伸びるかということを実証データを活用しながら検証して、後期の方はあまり成果がないという、そういうふうなこともあって後期の入試を中止するみたいなところも出ているのですけれども、柏崎中等教育学校の場合にはこうした選考・検査の方法と入学後の学習の伸び、更には大学含めた卒業後の進路等々について、何か検証作業があるのか、ないのか。もしもあれば、どういうふうなものかというのを教えていただきたいし、都立ではそういうことをされているのかということも含めてお尋ねしたいのですが。

【志田委員】 今まで厳密な検証はしていなかったと思います。これから、8年目なのですけれども、私は4月から来たのですが、その辺はあるのかなと思ってみたのですが、どうもされていないということで、今後やっていかなければいけないと考えております。
 ただ、そういう意味で、総合的に評価をしたときの順位と、その後の生徒の様子を職員の方に聞いてきましたけれども、ある程度今のスタイルの中の順番と、その後の伸びというのは相関が強いように感じます。ただ、これは厳密な調査をしていないのでわかりませんが、今のところわかっているのはその程度でございます。

【直原委員】 都立の学校では、入学者選抜においてこのような思考力ですとか、表現力ですとか、探究心のある生徒を間違いなく入学してもらっていると思っておりますが、その後、中学段階、高校段階に進む中で学力差というのはかなり開いております。その理由というのが、どういうものなのかについて、今分析をしている途中です。学力の伸びが非常に弱い、なかなかついて行くのが厳しい生徒が現実に出ておりますが、しかし、ある面では非常に強い部分があるのではないかということもありまして、学力差が開いているから一概にだめだとも必ずしも言えないのではないかという点から、今、都においても分析しているところでございます。現時点では、データとしては出ておりません。

【小川(正)主査】 ありがとうございました。
 では、ほかにどうぞ。向山委員、どうぞ。

【向山委員】 どうも、それぞれの御報告ありがとうございました。
 河合委員に質問したいのですが、大変興味深く聞かせていただきまして、資料2ですが、資料2の1の「入学に関して」ということで、短い時間で御説明いただいたわけですが、特に小学校の校長の立場からは、送り出す側ですから大変興味深く見せていただきました。特にこの中の1の「入学に関して」の中で、5番の入学するに当たっての塾などに通う準備、それから負担に思ったかどうかという事柄、それから10番の入学適性検査についてどのような意識なのかと、この辺を非常に興味を持ちました。
 それで、このベースになっているのが今日の机上配付資料の18なのですが、ちょっと大変申し訳ないのですけれども、委員の皆様、18を見ていただいて。ファイルの。この中の真ん中に今日の御報告のベースになった一貫教育研究会の紀要第6号が白い表紙でとじてあります。ファイルの中の真ん中です。全国中高一貫教育研究会紀要第6号。その中の23ページです。これは2月に行った中高一貫教育全大会・シンポジウムの中で御報告なさったのが奈良女子大付属中等教育学校の副校長の勝山先生という方がずっと御発表なさっているのですが、23ページの2段になった右側のところです。それがこの辺の記述に非常に関係しているところです。ちょっと読ませてもらいます。23ページの上から4行目くらいです。「『いつごろから受験勉強をしましたか』という問いに対して、50~60%が『何もしていない』と答えています。6年生あたりから若干、塾などに通ったという数字も出ていますが、かなり低い」と。ただし、この豊田先生の記述であって、2002~2003年あたりから首都圏を中心に進学校にこれを併設する学校が増えていますので、やや新しいところでは高くなっている可能性があるかもしれないと。「しかしながら、受験戦争の激化という数字は、少なくとも先行する中高一貫校に関してはあまり出ていません」ということがあります。
 ちょっとこれからずっと行って数行下に行くのですが、「これに対して、適性検査については、在校生や卒業生は『このままでよい』と言っているのに対して」、教育の方は「学力試験を導入したい」という意見が多いと。これが、子供たちと担当されている先生方との明確に評価が分かれているということです。
 その後も、今度は抽選賛成という人は皆無だとなっていて、その後のずっと行ったところに、三、四行後のところですか、生徒の確保の問題が出ています。「生徒数の多い県庁所在地、または首都圏の地域以外では、生徒の確保が困難である」と。また、地方都市では進学校への併設ならば生徒は確保できるけれどもと。つまり存続が可能だと。しかし「残念ながら、本校」というのは、多分この場合は奈良女子大のことを言っているのだろうと思いますが、本校は上の条件を2つとも満足していないので、なかなか難しいと、こういうふうな背景も来ているのです。
 そこで、この辺のところでちょっと、私は実は銀座の小学校で大変受験生をたくさん抱えている学校でありまして、2タイプありまして、私立に受ける子供たちは、今もずっと6年生と面接していると、うちの学校は大体1日平均5時間くらい勉強しているのです。全国学力学習状況調査で見ると、大体東京の子供は、全国の子供も、大体土日は平均1時間くらいなのですが、うちの子はずっとそういう調査をしても早い時期から休みの日は5時間くらいやっていると言う。
 子供たちに聞くと、負担かというと、負担とはあまり感じていないです。ただ、寝るのが大体11時半から12時で、うちの子供たちは大体6時半に起きるのです。すると6年生から見ると、6時間半の睡眠時間はかなり少ないという感じで、負担は負担なのかなと思っているけれども、本人たちはそう感じていないと。その辺で、負担の問題なのですが、受かって中高に来た子たちは、もしかしたら、そこにうまく入れたので負担は感じないのかもしれない。しかし、うんと努力したけれども残念ながら受からなかった子たちは、もしかしたら逆の意識になるのかどうかと、この辺のところの調査というのは、やはりいろいろやってみないとわからないのかなと、個人的には思っています。
 ちょっと長くなりましたけれども、この負担感の問題ということと、それからいわゆる受験についての状況、その辺のところをもう少し補足していただければということと、担当している先生方の一般的な学力テストにしたいというようなところが、生徒数の確保の問題もあるというふうにここには書いているのですが、ほかの理由もあるのか、ちょっとその辺も補足的に説明いただければありがたいと思っています。

【小川(正)主査】 河合委員、よろしいでしょうか。
 それと、今日は時間の関係で、教員向けのアンケート調査もやられているという話がありましたね。そのことも、もしも補足で教員アンケートの方でも何か御参考になるようなことがあれば御紹介いただきながら、今の質問に答えていただければと思います。

【河合委員】 教員の調査の方のデータは今手元にございませんので、お答えすることはできないのですが、負担感に関しましては、ここにありますように特別な受験勉強をしなかったというのと、入ってくるということに対して、この図でも見ていただけるかと思いますけれども、外進に比べると負担感はないということで、小学校6年生段階で負担感というのを実際感じないのか、感じていてもそれを負担というふうに思わないのか、そこはちょっとわかりかねますが、結果としてはこういうふうに。
 ただ、今おっしゃったように、本来就学指定でありまして、その中で抽選についてということがありましたけれども、抽選をしている学校のところに行きますと、同じ学校に行けるんだと思って臨んでいる子供たちが、目の前で抽選をして、その、まあ言えば自分の力と関係ないところで決まっていくということで号泣するというような姿を見ると、果たしてそれが本当にいいのかどうかということは考えるというような、そういう文章は少し記憶に残っております。
 先生方が生き残りのためと言いますか、学校の特性に応じて個々の努力をされているということは、調査の中にも地域性といいますか、そういうものはあらわれておりますけれども、ちょっと今の段階で具体の方を回答することはできません。また、この会議のどこかの時点でそれ以外のものについて、自由記述は非常に興味深いものがたくさんあります。ですので、また御報告させていただければと思います。

【小川(正)主査】 向山委員、よろしいですか。

【向山委員】 はい。

【小川(正)主査】 ほかにどなたか。では、柳原委員。

【柳原委員】 先ほど、基礎学力ということについてお話があって、まず入試のときに基礎学力を問うものはなくていいかという点と、あと、入ってからの学力差というお話だったと、何か学力的に基礎学力とかお話があったと思うのですけれども、まず1個、入るときに基礎学力を問うてはいけないとは思わないのですが、ただ基礎学力を問うものを入試にすると、多分それはわりと今までの勉強方法が確立しているものなので、そちらに勉強方法が集中していくようなことがあると、何か初めの意図が変わってきてしまうのではないかと思うので、その点もし基礎学力を問うものを入れる場合に、そのほかのものとのバランスがちゃんととれるようにしていかないと、またもとに戻ってしまうのではないかという点がちょっと気になりました。
 もう1個は、入学した後の学力差という点なのですけれども、その学力というものを、何をもって学力差とされているかというところをきちんと決めておかないと、要するに基礎学力だけだとすると、意図した、その思考力・判断力・表現力というものを学力にちゃんと加えていって検査をしていかないと、またその初めの設立した意図であったはずの生きる力というところ、それのはかる基準ということを忘れてしまってはいけないのかなというように感じました。

【小川(正)主査】 ありがとうございました。
 先ほど、直原委員の御発言も、すべて教科内容の理解にかかわる試験だけということではなくて、今までやってきたものも含めて、そのバランス、組み合わせの問題ということでお話しされていたかと思うのですけれども、何か、直原委員、今の御発言に対して御意見がありましたら。

【直原委員】 座長お話しのとおり、先ほど申しましたように、学校の設置の理念からして学力を一般に4つの要素くらいでとらえていると思いますけれども、その中の特に、お話ししましたように思考力ですとか、探究心ですとか、表現力ですとか、その点に特に留意して、その点に資質の高い生徒を入学者選抜で選んで、その力を更に引き出して伸ばしていきたいというのが学校の設置の考え方ですから、そこを入学者選抜に当たって中心に問うていくのが当然だと思っています。
 しかし、学力というのはそれだけではないわけですから、先ほどもお話ししましたように教科の内容に即した理解というのも重要な要素なので、その部分も全体のバランスを考えながら、私は問うた方がいいと思っています。それを今は制度的に公立の中高一貫校では入学者選抜において学力検査をしてはいけないということで、そこに規制をかけているわけなので、その規制をかけるのは適当ではないのではないかという趣旨であって、お話しのように学校の設置の考え方から中心になるのは、いわゆる思考力とか、表現力であろうというふうに考えています。
 それから、先ほど学力差が出てくるというお話をいたしましたけれども、もちろん現在、都におきましては、特に中学段階において観点別評価というのをやっておりますので、4つの観点から、つまり総合的に学力をとらえております。それでもやはり、そういう意味でも現実にはかなり学力差が出てくると、そういう状況があるということでございます。決して知識・理解の部分だけで学力差が開いているということではなくて、全体通じて広い意味での広義の学力という意味でも、学力差は出ているのは現実だというふうに思っています。

【小川(正)主査】 ありがとうございました。柳原さん、よろしいですか。

【柳原委員】 はい。ありがとうございました。

【小川(正)主査】 ほかにどうでしょうか。はい、どうぞ。
 では、上野委員。

【上野委員】 今のところというのは非常に大事なところだと思います。1つだけ質問させていただきたいのは、生徒さん全体に対してきっちりとした授業を行って学力の向上を目指そうとすると、それなりの対象者がそろっていないと非常に授業はやりづらいというのが現実としてあります。
 いわゆる学力に差があるということを考えたときに、一番いいのはどういう分野の科目でも、それなりにこなしてくださることが一番いいわけですね。ところが、人によっては結果として特定の科目は極めていい点をとれるのだけれども、それ以外はもうほとんど情けない結果しか残せないという場合がありますね。総合的には低くなります。そういう生徒さんについて、例えば先生方の意見はどうなのでしょう。

【小川(正)主査】 3人の委員の方に今の問いを。

【上野委員】 その方がいいと思います。

【小川(正)主査】 では、直原委員からお話しいただいて、その後、もし可能であれば志田委員、あといろいろなデータ等含めて、何かお話しできるのであれば河合委員ということで、よろしいでしょうか。

【直原委員】 先ほど、検証あるいはデータはそろっているかという御質問に対して、まだ今、東京都においては調査中ですというふうにお答えしましたが、幾つかの事例で申しますと、今おっしゃられましたように、ある教科については非常にすぐれているけれども、ほかの部分についてはからきしだめだという、そういう生徒も中にいるというふうに現場から聞いています。ただ、そういう事例もあるということであって、それが全体、学力差があるというのはそういうケースしかないのかというと、必ずしもそうではないだろうというふうに思っています。

【志田委員】 本校も直原委員がお話ししたのと同じなのですが、個々によってはすべてできる子もいれば、すべての教科にわたってあまり成果が出ていない子もいますし、特定の分野においてすごくできるという子もいます。そういう意味で、学力差というのは先生方が、教員が思っているのは、それぞれの思いがあって、先ほどもお話が出ましたけれども、定義が難しいという意味かと思いますが、そういう個々によって違うという現実があります。

【河合委員】 具体の事例については、私どもの方では把握しているわけではありませんけれども、個別の、本来的に当初の中高一貫校というのが、加配も含めて十分な教育体制を構築していくという制度設計の途上ということもあって、この結果を見る限りでは少人数の授業を受けていたという、一部その取り出し授業であるかどうかはちょっとこれだけではわかりませんけれども、個々の個別性に応じた少人数での教育というものが展開されていて、それについて子供たちは、自分たちはそういうふうな中で個々の個別性に応じた教育の体制で受けていたという、そういう認識はあるかというふうに思います。
 ですので、具体のものは少し把握できませんけれども、一人一人の進路等に応じて対応されていたのではないかというふうには思います。生徒の感想としてですね。だから先生たちはそういうふうに取り組んでおられて、かつ、生徒と卒業生もそのように個別性のある授業を受けていたというふうに感じているのではないかと思います。

【小川(正)主査】 上野委員、今のような感じでよろしいですか。

【上野委員】 はい。

【小川(正)主査】 では、向山委員。

【向山委員】 直原委員に質問なのですが、この南多摩の適性検査の御紹介をいただいて、これはやはりおつくりになるのはおそらく当該の学校の先生方、だれか補助的な人がお手伝いであるのかもしれませんが、またあるいはシークレットの部分もあるもかもしれませんが、例えばこの高尾山の鳥の問題でも、適性範囲の中でおさめるという中での御苦労がきっとあるのかなということをお聞きしたいということだけなのです。つまり、いわゆる学力検査にしないで、適性検査の範囲の中でおさめるということなのかと。
 例えば、それで僕はちょっと1つ例なのですが、これは仮に結局学力の部分を、いわゆる知識とか技能の部分を補って、この高尾山の問題をやれば、例えば等高線のグラフを出して、高尾山の高さとか方位とか出したり、それから棒グラフの読み取りで数量にしていって、例えばカワセミがどこで何羽とかいう、このグラフの読み取りから数量の計算まで持っていくこともできる。それから2月と6月の平均気温のグラフを出して、そこからもまとめていくと。
 つまり、国語や算数、理科・社会で使っていった技能とか知識とか、そういうふうなものをもっと総動員すれば、この高尾山の問題も相当やはり多様で、いろいろな能力・適性を調べる問題につくり変えることができるわけですね。
 僕ら小学校の現場の校長から見ると、そういったことも含めた力というものを見て、やはり多摩の学校もそれは生徒さんが欲しがるのだろうと思うのです。ただ、縛りがあるとなかなかこういったような図鑑と、それからこのくらいの問題になる。そんな御苦労があるのかどうか、もう1回お聞きしたいと思います。

【小川(正)主査】 これは直原委員のほかにも、そういうことで御苦労されている志田委員にもお聞きしたいのですけれども、つまり適性検査というふうな枠の中でも、やろうと思ったら先ほど出てきたような教科の学力みたいなことも組み合わせながら、いろいろ工夫はできるのではないかと。ただ、それがやはり今の枠の中でかなりそういうところが実際難しいのかどうかということも含めて、今の御質問に、では直原委員と志田委員、お答えいただけますか。

【直原委員】 まさに今はこの範囲でとどめています。そこは、ですから各学校で問題をつくっておりますけれども、私ども東京都教育委員会もそのプロセスに関与しまして、ここまでということで、そういう意味では制約を課しております。

【志田委員】 新潟県では適性検査はやっておりませんで、作文とグループ活動ということでございますので、いわゆる知識を問う出題というのはそこの中では入れないというか、入るとまた趣旨が違うという形になるので、そこは入れないで作文とグループ活動の問題をつくっているということになります。

【小川(正)主査】 ありがとうございました。向山委員、いいですか。

【向山委員】 はい。

【小川(正)主査】 ほかにどうでしょうか。御質問があれば。
 はい、では古川委員、どうぞ。

【古川委員】 すみません。河合先生の調査のところで少しお聞きをしたいのですが、入学に関して自分自身の希望だったというのがございますが、その希望というのはどういう希望を本人たちが持っていたのか、もしわかりましたら。
 それと、これは志田先生にもなるかと思いますが、わりと勉強のお話が日常的に飛び交うと言いますか、わりとそういう、一般の公立の場合と違って勉強中心の話題が多いというふうに思うのです。そういう勉学への励ましというか、雰囲気づくりというか、そういうのはかなり意図的にされているのではないかと思うのですが、そのあたり、もし先生方の御工夫といいますか、あれば少しお聞かせいただきたいと思います。

【河合委員】 1点目ですけれども、自分の希望かどうかというのは、その自分の通学区にある中学校ではなく中高一貫校に進学したいという、自分がそれを望んでいる。

【古川委員】 どういう理由で思ったのか。

【河合委員】 そういうことを問おうとしてこれを聞いております。自分が進みたいと思って、親が行けと言ったから来たのではなくて、自分がそこを受けてみたいと思ったというふうに判断していいのではないかと思います。

【古川委員】 それがどういう理由で行きたいと思ったのかというあたりはいかがでしょう。

【河合委員】 そこまでは聞いておりません。
 ただ、自由記述のところなどを少し見ていると、小学校から中学校へ上がっていくという段階であるということで、普通はなかなか自分の進路のことについて親と話をするということはないのだけれども、そういうことについて話をするようなことはあったというようなことは言っております。

【志田委員】 どんな理由で志望するかということについてでありますけれども、本校も地元の中学校と本校を選ぶということで、小学校さんの方へ行かせていただきまして学校説明会を行ったり、あるいは本校の説明会をやって、本校ではこういうビジョンで教育活動をしていますと説明をさせていただきます。そこの中で自分の将来の夢とか、どういうふうに生きたいのか、小学校6年生のときに1回考えていただいて、それでどちらがいいのか選んで、本校に来るなら本校に来て、また一生懸命やってもらいたいし、地元の学校に行かれるなら学校へ行ってもらいたいとお話ししていますので、自分の将来、あるいは自分の適性等を勘案して志望していただいていると思います。
 本校は生徒の数が少なくて、どちらかというと部活がなかなか充実していませんので、中には部活を充実している中学校さんの方へ行かれるお子さんもいるし、その辺の選択肢というのはいろいろな価値観がございますので、その中で、本校はあまり部活はそんなに充実はしていないのだけれども、6年間ゆとりを持って少人数授業等もやっておりますので、そういうところで選んでいただいているのかなと、こう思っております。
 あと、勉強をするような雰囲気づくりに関する工夫ということでございますけれども、勉強というのはなかなか一人でやっていくというのは大変でありますので、みんなで頑張ろうということで全員で頑張ろうというような雰囲気をどうつくるか。仲間づくりをしたり、合宿をしたり、みんなで自分の夢を達成するために頑張ろうというようなことをさせております。あと、家庭学習の習慣がありませんので、その辺を家庭学習記録を書いてもらったり、そこの中で担任が生徒と話をしたり、また保護者の方に来てもらって話をしたり、雰囲気づくりについてはやっております。

【古川委員】 ありがとうございました。

【小川(正)主査】 古川委員、それでよろしいですか。

【古川委員】 はい。

【小川(正)主査】 ほかにどうでしょうか。はい、では柳原さん。

【柳原委員】 学校でこういういろいろな取組をしているという話はよくわかってすばらしいなと思ったのですけれども、例えば志田先生の学校では生徒さんが弊社がスポンサーをさせていただいている科学技術コンテストのアメリカ大会に出られて、非常にいい成績をおさめられたという、そういう個人的なアチーブメントもこういう特色ある学校環境から生まれてきているように思うのですが、もし何かこういうことをやっていらっしゃるということのほかに、それを受けて、生徒が自主的にやってこのような何かアチーブメントがありましたというような例とかがありましたら、どういう生徒自身の自主性にどういうような影響を与えているかというような例がありましたら、ちょっとお聞かせいただければと思います。

【小川(正)主査】 よろしいですか。

【志田委員】 ISEFに行った子は本校始まって以来でもありますし、どちらかというとレアケースだと考えているのですけれども、ただ、高校入試がございませんので、そこの部分に本人が研究をするというゆとりがあったという意味で、よかったのかなと思います。
 あといろいろな、絵をかいたりする子もいますし、美術の先生がいないものですから、正式に指導していないのですけれども、コンクールに出たりという子もいるのですが、やはり6年間ゆとりの中でやれると、高校入試がない部分のところでじっくり放課後等も取り組めるというところで、成果が上がっているのかなという感じがします。

【柳原委員】 個性を伸ばすというところにおいては、非常にいいシステムと言えるということでしょうか。

【志田委員】 6年間長いので、普通の中学・高校というと3年・3年スパンになりまして、高校入試がありますと、地域によっても違うかもしれませんが、新潟県あたりですと3年の夏休みくらいからそちらの方へ大体がシフトするという形になりまして、運動などにしてもそうなのですが、その間部活もできなくなったりというケースがほとんどだと思います。
 でも、うちは部活にしても、研究にしても、そのシステムもございませんので、その約半年間はじっくり継続して取り組めるというところが大きな違いではないかと考えております。

【小川(正)主査】 何かございませんか。

【柳原委員】 1つ言わせてください。

【小川(正)主査】 はい、どうぞ。

【柳原委員】 今のお話を伺って思ったのは、私の会社は今社会貢献で教育支援をしていて、その1つが起業家養成のサポートと、起業家養成に関しては大学の方々と一緒にさせていただいているのですけれども、その大学の先生とお話をしてわかったのが、大学の先生がおっしゃるには、大学に来て急に起業家と言われても遅いんだよと、よくおっしゃるのですけれども、ですから、その起業家のアイデアは大学で得るかもしれないのですが、思考力・判断力・表現力・探究心といったような、いわゆる生きる力とか、21世紀に使える力というものは、多分もっと初等・中等のころから育成していかなければならないもので、先ほど志田先生がおっしゃられたように、そういう中学校と高校で切れない、その間で自分の好きなことができて、社会に影響を及ぼすようなプロジェクトもその間の中で実施することができるということは、やはり将来大学に入って、大学を卒業したそのときにも何か役に立つのかなというふうに、ちょっと私の心の中で理解させていただきました。ありがとうございます。

【小川(正)主査】 ありがとうございました。
 残り、10分、15分くらいになりましたけれども、ほかに。
 では、青木委員。

【青木委員】 選抜に関してのことは、私の周りで一貫校に入ってくる子たちの親の話なのですけれども、やはり塾に通って適性検査にせよ、それなりのテクニックを学んで入ってくる子たちもいるという話も聞きますので、いかにテクニックを磨いても、基礎学力がない子たちは結局入学してから自分たちが苦労することになるので、入試に学力テストのようなものを入れても、適性検査でも、入ってきた子たちがそれから伸びるかどうかは、その入ってきた学校での教育いかんによるのではないかと思いますので、そのあたりのことは、これから学力差がないように学校の中でいかに先生たちが頑張るかというところにかかっているのではないかと思います。
 ちょっと質問なのですが、中だるみというお話もありましたけれども、先日、中等教育学校の保護者の方とお話をしたときに、名前の呼び方を1年生から6年生までということで、3年から4年生に上がるときに卒業式というような形もなく、「今日から高校生よ」ということもなく、そのまま6年生までずっと来るので、気持ち的に中だるみというか、何か精神的なもので今日から高校生というような段階がないので、親の方もだらだらと来てしまっているというようなお話を聞いたのですがけれども、世間一般的には中学生・高校生という呼び方が日本の中で一般的なのですが、この中で1年生から6年生という呼び方で来る子供たちに対して、気持ちの切りかえと言いますか、前期課程・後期課程という呼び方はありますけれども、そこら辺で上級生になっていくに当たって子供たちに対して何かフォローというものがあるのかどうか、伺いたいのですけれども。

【小川(正)主査】 ありがとうございました。
 ほかにどうでしょうか。はい、山本委員、どうぞ。

【山本委員】 今日の御報告を聞いて、一定の効果、いろいろ学力などが向上している効果があるのだなというふうに理解したのですが、入学の選抜のときにおいて、保護者における条件等というのを設けておられるのでしょうか。例えば、ひとり親であったり、経済力であったり、そういったことを問うような内容というのがあるのでしょうか。
 というのが、先ほど新潟の学校の例を見ましても、非常に充実した研修をされているなというふうに感心したのですけれども、反面、保護者に対する負担もかなり大きなものではないかというふうに感じました。逆にそういった条件がないにしても、おのずとそういう状況であれば、家庭の経済力の格差というものがそういう進学を判断する条件の中の1つの大きなファクターになっているのではないかと思ったものですから、まずそういう選抜における何か条件があるのかということと、ないにしても、そういう経済的な援助や補助をするようなものが何かあるのかということをお聞きしたいと思います。

【小川(正)主査】 志田委員でしょうか。

【山本委員】 限らず。総合的に見て、あれば教えていただきたいと思います。

【小川(正)主査】 わかりました。
 それとあと、志田委員については、先ほどカナダに9泊のということで、かなり諸経費がかかりますけれども、そういうことについての何か配慮とか、支援等というのはあるかどうかというふうな御質問かと思いますけれども。

【山本委員】 そうです。

【小川(正)主査】 そういうことを含めて少し何か今の御質問にお答えいただければと思います。どなたがよろしいですか。入試制度として、ほとんどそういう点の制約というのはないかと思うのですけれども、一応確認ということで。
 では、志田委員の方からお答えいただけますか。

【志田委員】 入学選抜においては、先ほど言った学校からの調査書とそれぞれの入試で検査するということで判断をしますので、ほかの要素というのは入る余地がないかということで御理解願いたいと思います。
 あと、経済的格差でというのは、カナダなのですけれども30万円くらいかかるのですが、入学してから毎月分割をして貯金をしていくというか、出していただくという方策をして、月々七、八千円くらいずつ集めて、40回近くにわたって集めるということをやっています。
 あと、その他、では学校として補助は何があるかというと、高校は授業料が今なくなったものですから、授業料があったときはその授業料減免というのがありまして、そういう方にはPTA会費とか、そういう会費のところでも免除しています。
 あと、前期課程の子については柏崎市の方から就学補助を受けている方もいらっしゃいます。
 あと、なるべく経費がかからないようにして欲しいということは、常々職員の方にお話はしています。

【小川(正)主査】 山本委員、今の御質問で、よろしいですか。

【山本委員】 はい、ありがとうございます。

【小川(正)主査】 ほかにどうでしょうか。どなたかございませんか。
 無藤委員、何かありますか。

【無藤委員】 質問ではなくて感想なのですけれども、すみません。先ほど調査報告が出て御紹介いただいたわけですけれども、特に卒業生へのアンケートなどを見ると中等学校の一定の成果というものが明らかにあるのではないかと思って感銘を受けました。
 また、特に東京都の中等学校の入試問題の例というのを見させていただいて、思考力をはかるという意味で相当工夫されている問題だなというふうにも思ったわけです。
 それに加えて基礎学力も見たいという御要望というのはもっともだと思うのですけれども、私もそういう道を開くというのは1つ、特に中等教育学校の後期といいますか、高校レベルまで考えたときには必要かもしれないと思うのですけれども、既に私立中学受験というのは、当然公立小学校、公立中学から見れば、たくさんの、いい影響もあれば、悪い影響もあるのかもしれませんがいろいろな関連が出てきているわけです。
 特に基礎学力ということで言うと、難問奇問というのは出やすくなるとか、それからどうしても一定時間の中でたくさんの問題を解くために、基礎学力には違いないにしても、相当訓練しないと解けないといったことが出てくるのです。
 つまり、言いかえれば基礎学力的な部分というのは、特にある程度優秀な受験生になるとほとんど差がつきませんので、そこで受験生を選抜するとなると、どうしてもそういうところに行きやすいというのは、私は私立中学受験で既にかなり見られる状況ではないかと思います。その場合に抽選をでは増やせばいいかというと、先ほどちょっと御指摘もありましたけれども、抽選のやはり受験生・生徒へのショックもありますので、それがいいかどうかわかりません。
 そういう意味で、基礎学力を仮に入れるにしても、本当に基礎の部分のチェックといいますか、いわゆる足切りとか、使える場合の制限というのは十分あり得ることではないかと思います。
 それから今後の調査といいますか、現場の報告でもいいのですが、仮に中等教育学校が私立から更に公立、また首都圏の都心部から更にいろいろな方へ仮に広がるとしたときに、やはり公立中学校への影響というものはどうなのかというのを見定める必要があるのではないかと。これは向山先生ならわかるわけですけれども、小学校は受験という意味で影響があるのだけれども、公立中学はいわばできる子供なり、リーダー層の子供が大幅に抜けるための弊害は東京都の場合ではかなり前から指摘されているわけです。
 つまり、中等教育学校そのものが繁栄して素晴らしい生徒を出す可能性は高いでしょうけれども、今度は公立中学がそのために荒廃しては困るわけですので、そのあたりの実態の検討がいろいろ要るというような感想を持ちました。

 以上です。

【小川(正)主査】 ありがとうございました。
 1点、すみません。先ほど青木委員の方から中学校から、高校へのチェンジの話ですが、切りかえとフォローに関するご質問がありました。志田委員の御報告の中で既にお話をされていたと思われましたので、どういう形でお答えいただくかなということをちょっと迷いながら、きちんとお答えを促すようなことをしていませんでした。すみませんでした。
 志田委員から再度お答えいただけますか。中学・高校への、切りかえとフォローをどううまくやっていくかという学校側の工夫等がございましたら、お願いします。

【志田委員】 先ほども紹介させていただきましたが、昨年からアチーブメントテストをやりまして、その後、それに合格したら認証式を入れまして、それで卒業式ではないのですけれども、あのような形で式辞もきちんと校長が読むという形で気持の切りかえができればということで取り入れてあります。
 子供たちの様子を見ますと、中学3年生の子は4月、5月、6月の様子と、そのテストが終わって8月・9月の様子を見ますと、ちょっと大人になったかなというような感じがありますので、そういう意味ではいい成果が上がっているのではないかなと思います。
 また、新潟市にある私立の中等教育学校では、立志式というものを取り入れて、そこで一貫生の方は切りかえをやっているということも聞いたことがありますので、そういう式みたいなものでそういう面をフォローしているということであります。

【小川(正)主査】 青木委員、今のようなお答えでよろしいですか。はい、ありがとうございました。
 もう時間が残り少ないのですけれども、ほかにどなたか御質問、ないしは御意見がございますでしょうか。よろしいですか。
 では、なければ、今日の審議はこれで終わらせていただきたいと思います。
 では、次回以降の運営について、事務局の方からよろしくお願いいたします。

【小谷教育制度改革室長】 次回でございますが、今度は中高一貫教育校における生徒異年齢集団の交流の取組ですとか、あと教職員の負担といったようなことに少し焦点を当てて御議論いただければというふうに思っております。
 次回は2月以降の開催を予定しておりますが、第5期の中央教育審議会としての作業部会は本日が最後という形でさせていただきます。ですから第6期中央教育審議会がまた最初の総会、初等・中等教育分科会の開催後、改めて作業部会を開催させていただく形になりますが、第1回の会議で中岡課長の方からお願い申し上げましたとおり、御就任いただいております委員の皆様方、引き続きまた御就任いただきたいと思っておりますので、また引き続き御指導の方、どうぞよろしくお願いいたします。
 以上でございます。

【小川(正)主査】 ありがとうございました。
 では、五、六分早いのですが、これで今日の会議を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。

―― 了 ――

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