資料2:小中連携、一貫教育に関するこれまでの主な御意見について(詳細版)

 

小・中学校間の連携・接続に関する現状と課題認識

小中連携、一貫教育の取組の現状

○小中連携は小・中学校それぞれ別々だという前提の上で、例えば教育目標やカリキュラムの共通している部分を協力してやることになるのではないか。小中一貫教育となると、教育目標、目指す子ども像、カリキュラムも一緒に作るという話になってくる。その点において小中一貫教育と小中連携は異なるのではないか。

○船橋市においては、小中一貫教育の定義を「小・中学校が目標を共有し、その達成に向け小・中9年間を通して系統的な活動の展開を要する教育」とし、小中連携については、「小・中それぞれの課題解決のために、小・中学校が連携をして行う教育。また児童生徒、教員の交流や合同の活動を通して、小学校から中学校への円滑な接続を目指す教育」としている。

○「小中連携」と「小中一貫教育」について、作業部会として言葉の定義をしていく必要があるのではないか。

○学校制度全体の見直しの機運や教育基本法改正等もあり、いわゆる義務教育の目的の規定も新しい教育基本法で入れられたこともあるので、そうした全体を踏まえた上で、小中連携、一貫教育の意味を書き込むのは、全体の流れとして必要ではないか。

○日本の教育全体の在りようをどのように構成し、つなげていくのかというのは、戦後ずっと取り組んできたテーマである。小中のつながりをこれまでの流れの中でどのように考えるかというのは大変大きな視点である。

○連携と一貫教育という概念の整理の仕方というものを、どこまでこの作業部会で踏み込んで整理していくのか。小中の連携、小学校・中学校の円滑な接続という考え方自体は必要で、それが6・3という義務教育をつかさどる学校制度である以上、そこのつなぎ部分がうまくいっていないという認識であれば、連携という観点で学校を改善していくことは重要な課題である。

○「小中連携、一貫教育」の書き方について、「小中連携と小中一貫教育」としっかり書いた方がいいのか、又は「小中連携・一貫教育」とすると意味が通るのか、整理すべき。

 

1.小中連携、一貫教育の目的、効果

○学校間の接続が重要だと考えたのは、中学校進学時に心身に不調を来し、学習意欲が低下し不登校になっていく生徒に直面した時。今後の教育の在り方を考える中で、なぜ小中一貫教育を推進するのかを明確に再認識して審議したい。

○重要なのは、何のための小中連携なのかということ。小学校から中学校への移行の際のいわゆる「中1ギャップ」問題、不登校やいじめの発生、自尊感情の低下、学習離れ等の問題にどのような対応をするのかという点に焦点を当てる必要がある。

○小・中それぞれに今まで培ってきた伝統というものがある。また、これまで小学校6年は高学年だとして高学年の責任を持たせてきたことが、9年間になったらどうなるのかという懸念もある。

○小中学校間の乗り越え難いギャップとは何かをきちんと議論する必要がある。暴力行為やいじめ、不登校は現象であってこれを無くすことが目的なのかどうか。小中学校で共通の目的意識をもって臨めばうまくいく。ゴールや目的を何にするのかをきちんと議論する必要がある。

○三鷹市では「三鷹の子どもたちをよりよく育てる」ことを目的としており、小中一貫教育やコミュニティスクールはツールである。目的に従って柔軟に変形していくことはあり得る。

○小中一貫のねらいを学習指導上又は生徒指導上の成果としているところが多いが、ネックになっているのは教員の学力観の違い。これからの子どもたちが身につけなければいけない学力とは何なのかを明確にし、これまでの学力観から抜けきれない教員がいる場合は教員の意識改革が重要となる。

○私立中学校においては、様々な背景を背負って入学してくる生徒のありのままを受け止めるということから始めることとした。不安を抱えて入学してくるということを前提とし、「あなたはここで勉強していいよ。」というメッセージを、教員がどのように伝えることができるかという事を重視した。

○小中学校教員の風土・文化の違いをなくすのではなく、違いを認めることが重要。違いがあるからこそ学びあえる。

○中学生段階の暴力行為やいじめ等への対応として小学校と中学校の交流に取り組んできた結果、中学生の自尊感情が高まり、暴力行為やいじめの件数は明らかに減少してきた。学校が落ち着いてくることにより、先生同士の情報共有が密になされるようになり良い循環となる。

○なぜ小中一貫教育を実施するのかに関するセオリーを定めるべきである。そのことが教員の授業観、指導観や評価観に大きく影響を与えることとなる。

○三鷹市や呉市で小中一貫教育が成功しているのは、関係者が共通の目標をもって取り組んでいるのが要因なのではないか。

○関係者、特に教員の理解を得ながら小中連携を進めることが重要であるが、その際、小中一貫教育により実際に子どもたちの姿が変わってくるのを見ると、先生方の受け止め方も変わってくる。

○教師の指導力向上という前に、教師の人間性を磨き、人として魅力的な者となり、子どもたちのモチベーションを上げさせるようにしている。

○三鷹市においては子どもに人間力・社会力を育成することを教育の目的としていたが、実は目指す子どもの姿の前に「教師を変える」ということがあるのではないか。

○得られた成果として、生徒指導上の成果や学力向上それ自体も重要だが、新たに掲げられた義務教育の目標、目的への接近が問われることとなる。

○三鷹市、呉市の育てる子どもの姿は、一方は「人間力・社会力の育成」といい、一方は「自尊感情の向上」と言っており、表現の違いはあるが共通している部分がある。平成18年大阪府で学力調査をしたときに、大阪大学の研究者が学力と何が相関関係にあるかという分析をし、小学校は授業態度と学校の取組となり、中学校は授業態度が直結し学校の取組が直結しない結果となった。授業態度の背景に何があるかというと自尊感情、自己達成感、受容感である。そのような意味で、教育の目指している目的は角度を変えれば共通している。

○小中一貫をしないと自尊感情は育たないのか。呉市の発表にもあったが、子どもたちの発達が2年早まっているのは事実であるが、その改善は小中一貫教育をやらないとできないのか。小中一貫教育をやる前にやるべきことを確認してから取り組むべき。

○小学校と中学校がそれぞれ固有に保有している、教員を含めた諸資源をより効果的に活用するツールとして、小中一貫教育の意味があるのではないか。

○現代は、子どもたちの価値観が大きく変わってきている一方、学校現場では旧態依然とした教え方をしており、対応できないので新しい方法(小中一貫教育)を導入し、うまくいっている。

○9年間にわたり、身体の成長や体力、運動能力の変化の記録、読書記録など続けることで、子どもたちは自分の成長を実感することができ、教職員にとっては、9年間で子どもを見て育てていこうという意識が生まれてくる。

○施設一体型でない学校でもできる小中連携の在り方として、系統的な教育課程を編成すること、豊かな交流活動を行うこと、教職員の意識改革を行うこと、の3点が考えられるが、特に3点目の教職員の意識改革が重要ではないか。

○小中一貫教育の効果について、冷静な議論ができるだけの評価、検証を見据えていくべき。

○船橋市立若松小・中学校教員に対するアンケート結果によれば、8割の教員が連携・協力意識の高まりを実感し、カリキュラム作成や連携授業、合同研究会を多数重ねることで小中両者で児童生徒を育む意識や小中相互の良さを取り入れる姿勢が生まれた。

○小・中学校教職員が互いのカリキュラム、生活面などの違いを知り合い、学びあい、尊重しあうところから本当の連携は進んでいく。教職員の意識改革は協働から始まる。

○小中一貫教育により、新しい学校文化を創る、という発想が必要。

○学習指導要領のねらいである、生きる力や人間力といった人格形成を、小中9年間で教職員が力を合わせ、地域も力を貸して取り組むことにより効果的に達成することが、小中一貫教育導入のねらいであろう。「新しい学校文化を創る」には賛成。

○紹介したデータの中で、小・中学校の連携は2~3割であり、連携は良いことなので、実施率を高めるための数値目標を定めたりすることも具体的に検討すべきではないか。

 

2.小中連携、一貫教育の推進体制の在り方

○中学校における問題行動の深刻なケースは小学校段階で既に兆候があり、小学校の先生に聞くとある程度は知っているが、「不登校」等の統計数値としては必ずしも出ていない。このようなケースの小・中学校間の情報交換をどう進めるかということを、本気で考える必要がある。

○小中一貫教育をやらないと社会で活躍できる人材が育成できないだろう、また小中一貫教育を推進するのに労力がかかる点にも配慮した審議をしていく必要がある。

○スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、地域ボランティアなど、多様な方に小中連携の現場に入ってもらい、そういう人たちの力を借りて小中連携を進めていくことが必要なのではないか。

○呉市においては、教員たちに9年間の義務教育という意識がなく、小・中それぞれのテリトリーの中で子どもを教育しようとしていた。これを交流させるために、全小・中学校に、一人ずつ「小中一貫教育推進コーディネーター」を配置し、小・中お互いの授業参観、交流、乗り入れ授業へと進めていった。

○地域も巻き込みながら学校同士を連携させる推進役を担うことで、教育行政の役割も変化し、地域の教育の推進になくてはならないものとして住民の中に定着してきている。これもいい流れだ。

○小・中学校の管理職を対象としたブロック別学校経営研修会を実施し、自分の校種以外の授業を参観することでそれぞれを理解することに役立てている。また、各学校1名の小中一貫教育推進コーディネーターの配置や、市費による小中一貫教育推進加配講師の配置を行っている。

○横浜市の併設型小中一貫校においては、小・中学校で校長が1名であり、迅速な意思決定の下、小中一体化した学校経営がなされており、副校長3名のうち1名は准校長として校長を補佐する(学校教育法でいうところの教頭)体制となっている。校長が迅速に意思決定することにより、児童生徒理解のための情報共有を目的とした合同会議や研修会が計画的に高い頻度で設定できる。また、兼務辞令を発令し、小中の教員全員が双方の学校で業務に当たり、相互乗り入れを実現しており、それの影響もあり、より柔軟な教育課程の展開が可能となっている。

○横浜市の併設型小中一貫校に関する成果として、校長が一人であることにより組織の意思決定のスピードが速く、小中の連携が綿密となること、中学校教員の専門性により、小学校児童の学習への意欲向上が見られること、小学校の児童・保護者、特に特別支援学級の保護者に中学校進学への安心感が高まっていること、等が挙げられる。

○横浜市の併設型小中一貫校に関する課題としては、校舎が別であることで行き来に時間がかかるとともに、業務上、一人で小中2校種分の負担をしていることとなり、特に中学校側の負担が大きいこと、准校長に小学校の学校経営の意思決定が委ねられていても、実質的に准校長の認識が保護者、地域に浸透せず、様々な場面で校長の存在が求められてしまうこと、等が挙げられる。

○施設一体型においては校長は一人であるべき、併設型においては、条件が揃って可能であれば校長は一人の方が望ましい、連携型においては、スムーズな学校運営の観点からすると地方においては校長一人は困難なところも多いのではないか。

○教員の負担軽減を図る観点から、1校単位ではなかなか克服できない課題を3校や4校でやることでスケールメリットを活かし、職員集団が大きくなればそれだけ色々な案件処理ができるので、全体としてどのように負担軽減が図れるかという観点が大切である。

○教職員の多忙感は大きな課題であり、これを解消するために、システムとして県教委、市教委を含め、負担を増やさないように考えていく必要がある。

○教員の負担増の解消策として、制度化された教員加配が必要ではないか。

○三条市においては、教育委員会事務局の小中一貫教育推進室に指導主事が配置されており、カリキュラム作成の調整を行った。

○教員の加配だけではなく、推進体制としてコーディネータのような教員が必要である。学校任せでは、小中一貫教育の推進体制が確立しないのではないか。

○小中一貫教育の目的に対して連携体制をどのようにとるかという観点で進めていく必要があるのではないか。コーディネータのような役割が必要であるが、地域連携も含む別の形のコーディネータも必要となっているため、それを集約していく必要があるのではないか。

○指導観や子ども観の共通理解のため、小中の教員の合同研修も必要ではないか。

○小中一貫教育を行っていく上で、財政難で十分な教員配置ができなくなると、教育の質が変わってしまうおそれがあるため、何らかの恒常的な制度が必要ではないか。

○小中一貫教育を進めていくときの肝の1つは、教育課程カリキュラム作りであるため、そのカリキュラムを作成するのに特化した人材が必要ではないか。

○小中一貫教育では、教育課程を中心とした研究を柱にしていくことが必要である。これを推進するため、教員の負担増にならないような工夫をしながら、小中の全教職員が関われるような校内体制が必要である。

○小中連携において、軸となっているのは、中学校の校長である可能性が高いが、そうすると、これまでの中学校の校長の在り方と、この小中連携の取組における中学校の校長の在り方、周辺の学校との連携を取りながら体制を整えていく、その場合の中学校の校長の存在をどのようにしていくのか検討する必要があるのではないか。

○乗り入れ授業を継続して実施していくためには、教員の加配が不可欠である。

○京都市でジョイントプログラムをやっていく中で、中学校の校長が小学校との連携が必要だ、との認識を持ってくれた。小中連携に対する意識は小学校の方が中学校よりも強いが、中学校ブロック単位で進めていくのが望ましく、そのためには、中学校が主体的に連携を進めるよう、仕組みを作っていくことが必要。それには、小・中学校に1、2人ずつくらい、小中連携について指導できるコーディネーターを置き、小中一貫の重要性と役割を明確にして進めていくことで取組が進んでいくのではないか。

○都道府県教育委員会としては、コーディネーターの配置等を通じ教員の負担軽減を図ることも重要だが、恒常的な定着は困難であるので、制度的な支援としては、定数措置されている教員の配置、加配措置されている教員の効果的活用方法について検討する必要がある。

○平成21年度より教員公募制を実施し、檜原村の一貫教育を実践してみたい教員や、興味がある教員、これまで一貫教育の経験のある教員を採用することができるため、この教員公募は、一貫教育を推進していく上で、重要な取組となっている。

○学園の組織として、学園長が中心となる経営委員会、副校長が中心となる教務・研修委員会で檜原学園としての諸活動の組織的、効率的な推進の企画立案を行っている。全教員は、教科中心となるA部会、領域中心となるB部会に所属し、学習指導や教育課題の対応について研鑽している。また、月1回の全体会では、全教員が各部会からの報告を聞き、共通理解の場としている。

○合同職員会議を必要に応じ実施する等、研究会や研修会、職員会議を合同で行うことで、互いの共通課題、教科指導、生徒指導、学力診断等について対応している。

○校長を1人制にすると、いつも小学校・中学校の校長会の会議に出て行かなくてはならないため、呉市では、今は一体校において、小学校と中学校の校長を2人制にしている。教頭も2人制である。どちらがメインにするかということを話し合って、今は小学校の校長をメインにしながら全体を統括するという形をとっている。この辺りを検証していく必要があるのではないか。今後検証していって、現状に合わせてやっていく方がいい。

○小・中学校の校長の兼務については、地域の状況によってかなり違うので、その辺はいろいろと記述すればいいのではないか。

○中1ギャップ等の問題で、一番問題なのは、情報共有ができていないこと。小学校の先生は中学校のことが分かっていない。中学校の先生は小学校のことが分かっていない。一人ひとりの子どもたちの情報が共有できていないところに大きな問題がある。そこで、ITを十分に活用してほしい。

○後補充のための要員が必要になるため、(三鷹市では)非常勤講師を自前で適正配置し、先生方にも相当努力してもらっている。小中連携、一貫教育が子どもたちにとって積極的によいことであると、コンセンサスが得られれば、国としても当然促進することになる。そのためのインセンティブを与えることも必要になるのではないか。

○小中連携、一貫教育については、設置者及び都道府県教委がもっとイニシアチブをしっかりとって推進すべきである。推進体制の整備の観点から支援を行うではなくて、もっと積極的に、例えば検証を行う等、教育委員会が主体となって進めていくべき。教育委員会の関与の記載ぶりを強くしていくことが大事なのではないか。

○「過度な負担の解消」は非常に重要。コーディネーターについては、小中連携のみならず、特別支援コーディネーターや幼小連携、地域連携等いろいろなコーディネーターを必要としている。コーディネート業務が非常に増えている状況があるので、うまく担えるような形態にしておかなければならない。

 

3.「地域とともにある学校」づくりとの関係性

○地域との連携や信頼関係の構築を、コミュニティスクールや学校支援地域本部といった仕組みを導入することで推進していくことが重要。

○平成23年度は市内全小・中学校の8,000世帯に対し調査をかけたところ、90%以上が小中一貫教育に満足しているとの結果になっており、小中一貫教育を通じて地域社会の課題を皆で考えようという機運が高まっている。

○コミュニティスクールを基盤にした小中一貫教育、学校作りは、地域作り・町作り、まさにコミュニティソリューションということにつながっていく。

○今後、特に過疎地における教育の在り方ということと小中一貫教育は深く関係しており、地域の事情に応じた9年間の在り方、中学校区単位で学区や地域の諸機関との関係を踏まえる必要性、といった点に留意しながら審議を進めていきたい。(再掲)

○小中一貫教育を地域との連携と併せて取り組もうとする場合、保護者の多くがコミュニティスクールや学校支援地域本部について知らない現状があるので、まずはそうした制度等を周知する必要がある。

○学校が統合するのは地域が統合するということ。各地域には歴史、自負、誇りを持っているので、これを踏まえながら対応する必要がある。

○三鷹市においては、全ての子どもたちの学びと育ちのために、小学校・中学校の教員が連携・協働して、9年間というスパンで一緒に子どもを指導していこう、そして、まちぐるみでそれを支えていこうということを理念としている。

○小中連携、一貫教育の取組に関する周知を的確に行い、変化していく子どもの姿をきっちり地域に見せることができれば、地域の信頼、支援が得られるのではないか。

○三鷹市に関しては、教育の質を上げていくことを総合的に考えた場合に、町の核は小学校と中学校であり、地域に対しオープンマインドとなり地域の支援を得ながらやっていくのがいいと考えている。子どもたちをよくする、その成果をあげるためには、コミュニティスクールと小中一貫教育を合わせた形がベストなのでそのように取り組んでいる。

○コミュニティスクールにあえて取り組まなくとも、自治会など各地域がしっかりしており、地域見守り隊を作るなど、しっかりと学校を支援している。

○両市(三鷹市と呉市)とも小中一貫教育と地域との連携がセットになっている。一貫教育と地域の力を学校にということを何のためにやるか。これは確かな学力や生きる力を身につけるため、中1ギャップの解消を図る必要があるからだが、両市においては、市教育委員会としても方向性、目的を明確にした上で各学校もそれを意識して取組を進めてきている。これにより、先生方の意識が変わってきて、小中一貫教育がうまく機能しているのではないか。

○地域の理解を得ながら、場合によっては小・中学校の統合を伴いつつ、施設一体型の小中一貫教育校を設置するのは当然だが、それでも地域全体の理解が得られない場合には、最終的に、地域の意向は選挙を経た市町村議会議員の議決により反映するという、議会制民主主義に則り解決していく必要がある。

○小中連携、一貫教育の実施に当たっては、各自治体や地域関係者によって色々な思いが込められており、目的が極めて複合的、多面的な形で状況が展開している。複合的なものの中には、被災地において、学校再建の局面で小中一貫に1つの方向性を求めて、プランを出そうとしている地域があり、そうした自治体による取組を積極的に支援していくのは、1つの方向ではないか。

○コミュニティ・スクール等により、地域と学校がこれまで以上に相互理解・協力が図られ、地域の教育力を学校経営に生かすことができるようになってきた。

○小学校と学童の関係をどうするのか、どこがやるのかというところも、学校の開放の視点として必要ではないか。

○震災からの復興・復旧のところで、小中一貫、連携というところに一つの道を見いだそうとしている動きもあるので、その辺りをどう目配せしていくか。それから併せて、小中一貫、連携は、比較的子どもの数が減少した過疎地域等の動きでもあって、そこはどう考えるのか。学校の統合の裏側には財政の論理があるわけだが、ただ財政的に厳しいから小中一緒にすればよいということではないため、そういう状況においての理念、将来の指向性、カリキュラムの開発等のソフトの面にしっかりと配慮することが大切ではないか。

 

4.教育課程の在り方

○中学校の3年間で学ぶことが多すぎるので、6-3制は今の時代には合っていないのではないか。中高一貫ならそれもうまく吸収できる。なるべく中学校で職業を意識できるよう、小中一貫教育の実施にあたっては、中学校に余裕を持たせたカリキュラムが必要なのではないか。中学校の貴重な3年間を有益なものとしていけるようにしたい。

○小中連携に関しては中1ギャップに焦点を当てるべきだが、その解決のためにカリキュラムを変えるのは少し違うのではないか。

○小中連携を何のためにするかを考えたとき、多くの学校では中1ギャップの解決のために行っている。教育課程の在り方を変えて段差を別のところに設けたとしても、移行の危機はどこにでもあるのであり、そうした危機にいかに対応していくのかという観点が必要。

○新指導要領は理数系の時数が多い。小学校は履修主義であり、一通り授業で取り上げないと保護者から批判されるのが実態である。小学校段階の学力をいかにつけるかが大きな課題であり、本作業部会のどこかで、履修主義と修得主義について取り上げないといけない。

○指導要領上、例えば移行するのが困難と言われる算数と数学など、小学校と中学校の教科ごとのつながりを考えていくことが重要。

○小・中の節目は、子どもから大人へという大事な節目であるため、それを残すために、6・3と4・3・2のそれぞれの良さを生かした教育活動を展開している。

○「段差」は必要である。といっても各教員の力量の差などによる段差は排除すべきだが、子どもにとって緩やかでいい刺激になるような段差は必要である。

○三鷹市においては、9年間の区切り方を各学区に任せている。市内に7学区22校があるが、学区によって実態がかなり異なるので、9年間の区切り方は各学区で決めた上で、保護者への説明責任は果たすようにしている。

○呉市においては、小・中学校において市歌や仰げば尊しを式典の時に歌わせたり、清掃活動も行ったりして小中共通の取組を行うことで、課程を一貫させている。

○4・3・2制の良さは現在の子どもたちの発達に合っていることであり、発達の実情に即しているので、確かな学力、豊かな心、健やかな体の育成の為には非常に効果的であり、中1ギャップの解消にも効果を持つものと考えられる。

○高松未来科では、6年生と7年生がトータル8つのコースに縦割りで分かれ、一緒に学習をすることを特色としている。

○清掃は小学校低学年ではなかなか十分にできないので、中学生が一緒になって清掃活動を実施している。

○小中合同で行事や活動を実施する場合、既存の行事に相互が参加するケースでは、それぞれのやり方を主張してしまいがちになり、ねらいと役割を十分に検討していかないうまくいかない一方で、新設行事を取り入れることで小中の文化の違いが克服しやすくなった。

○4・3・2の区切りと小中教員の協働での指導体制により、安心感と専門的な学びを実現し、学級担任制から教科担任制へ緩やかに移行していくことができた。

○人間性育成の視点からの9年間カリキュラムの展開により、学習内容の系統性を意識した授業づくりや小中合同行事・活動の協議と実践が活性化されるなど、系統を意識した指導の充実が図られた。

○小学校段階の学びが中学校でこうなるということを、どれだけの教員が意識しながら子どもたちを教えているか、更に、教える子どもたちが小学校でどのように学んできたかということを、中学校教員がどこまで意識しているか、が極めて不透明である。

○小学校5年生10歳はクリティカルポイントであり、小学校4年生が終了した時点で一つの区切りを迎えるのは大きなポイントであると思うが、4・3・2の区切りの「3」のブロックで分けることについて、発達段階、教育課程などを考えた中で、どのような義務教育の制度が良いのかを考えることは大事であるが、小中一貫教育をやれば今までの問題が全部解消するというのはよく分からない。

○4・3・2の「3」の部分の「カリキュラム」にいろいろな要素が入っている。小中9年間一貫のカリキュラムの中の3年分という意味、呉市の発表にあったように生活の場としての「3」という意味、また、教科担任制を「3」に導入するという意味、中学校の入学時期を乗り入れるという意味が教育課程という言葉の中に含まれている。これらは、それぞれに効果を持っていると思うが、区別して考えるべき。

○指導要領そのものの体系化、9年一貫化を図ることは全国レベルでできることであろうし、教科担任制は個別の事例ごとに検討すべき課題が多い。

○4・3・2の区分けの議論は、まだきちんと検証ができているわけではなく、一つの試みとして取組が進められている。今後様々な形で取り組んでいただき、その内容について検証しつつ、意義、成果を考えながら進めていくことになる。

○小・中学校の教育課程の系統性という点では学習指導要領の範囲内で十分だが、だからと言って指導要領だけを小・中学校教員が進めていくと、より具体的な実践はできていかない現実がある。

○小学校と中学校が一緒になって、それぞれの学校の目標、グループの目標、一貫校の目標を具体的に実現するためのカリキュラムをどう再構築していくか、常にリニューアルしていけるかという仕組み作りを常にしていきたい。

○自分たちが育てたい品川区の子どもたちを実現するためのカリキュラムを作ることで、教員の改革意欲や今の子どもたちをこうしていこう、という機動力を湧かせることにつながる。

○大きな発達の区切りがあって6・3制があり、小学校5年生で区切るという考えもあり、高校や幼児教育をどのくらい射程に入れるのかということがある。

○4・3・2の区切りについて、三鷹市では小中一貫教育を平成18年に始めたばかりなので、この段階で「これだ」と決め打ちするのはいかがなものか。これは、教育委員会のマネジメントの問題である。先生方が当事者意識を持って、いかにしっかり取り組んでくれるかということに重点を置いたときに、どうしたらとよいかということ。

○小学校と中学校が教育課程について相互理解できる仕組み、制度をどう作るのかということが大事ではないか。

○学年区分については、確かに6・3制が成長等々の変化に対していろいろなことを露呈しているのは事実だろう。しかし、現在の小学校6年間という一つのゴールに向けて教育課程を作っており、6・3制以外にどういう効果的なものがあるかというのは現時点では見えにくいため、かなり議論がないと、教育課程の学年区分を定めることは難しい。

○10年間ほどさかのぼって、いろいろな研究開発学校のカリキュラムの取組の経緯について掘り起こしてみると、知見を加えることができるのではないか。区切り方については、現場の知見の蓄積ということとともに、義務教育の目標を達成するための在り方を探ることが大目標ではないか。改めて9年間の義務教育の目標を達成するためのカリキュラムの在り方という観点からのカリキュラム開発の取組を考えるときに、一つの方向として、小中の関係者がもっとミックスされて、9年間の教科の積み重ね、くくり方について研究開発の余地がまだある。

○小学校と中学校がそれぞれでやっていたところを小中一貫、小中つないで一緒にやれるような仕組み、そのような安定的な仕組みを考えていくことも一つの検討すべき課題ではないか。小学校と中学校の相互の理解を促すような、そのような仕組み作りというのは更に検討を重ねていったほうがよい。

○学習指導要領の範囲内において小中一貫教育の目的の達成は十分に可能なのか、小中一貫教育と小中連携教育は違いがあり、学習指導要領の範囲内でも、何か違うものがあるのではないか。

○小中一貫教育は、学習指導要領の枠があってできるかということよりは、義務教育であるため9年間全体では当然ながら学習指導要領が目指すものを実現するが、それに加えてどうするのかということ。現在の指導要領の範囲内では、小学校6年生で教えることと、中学校1年生で教えることを簡単には交換できないが、そのときに制度改正まで踏む込むべきか、あるいは教育課程特例校を活用した特例でできるか。これは丁寧に議論する必要がある。

○現行の指導要領でできるところが多いので、どうしてもできないところに限った上で、現場で選べる仕組み作った方が現状に合う。小規模な町村で、小・中学校9年間を同じ集団でいく地域と学区が複雑で複数小学校の児童が複数中学校に進学するような地域や、都市部で小・中学校段階で私立中学への進学が盛んな地域とでは事情が異なる。現場の判断で選べるようにした方がよい。一歩でも二歩でも踏み込めば小・中の教員の意識の差を乗り越えられるという実例を全国で積み上げていくことが重要。

○現行指導要領をベースに、小学校と中学校の段差だけではなく、小学校の中だけでも具体的思考から抽象的思考の段差がある。いずれについても接続部分にはのりしろがあり、この部分に各市区町村や学校でスペシャルなものを付加していこうとしている。(1)不易なものとしての今日的な課題や、(2)現代の社会的な課題に対する挑戦をしようとして、スペシャルなカリキュラムを付加したり、更なる指導の一貫性、子どもたちの成長の一貫性に筋を通そうとするとき、新たなカリキュラムが生まれてくる。我々はいかにそうした挑戦を制度的に後押しするか、ということ。35週の確保に各学校は大変だが、現行の指導要領の上に立ちながら特例校制度等をうまく活用すれば独自のカリキュラムを作り、独自の指導観、評価観を構築できると思う。

○(1)小・中学校の教員が互いの教育課程を理解し、学力観、指導観を小・中一貫したものにすること、(2)小学校教員が全教科担任で中学校が教科担任であるのは、発達に必要なことであり、そうした小・中学校の独自性を重視すること、以上2つのことが小中一貫教育においてできないといけない。

○教育課程について、指導要領に準じるか特例を使うか、様々な取組があるが、各学校、市町村においてどちらが適当であるかは、教育の目的によるところが大きい。

○国際感覚の育成を小中学校段階からやる必要があるのか、ということを疑問に感じる。国際感覚の育成については、高校から大学にかけて取組を加速させる方がよいのではないか。経団連としても、高校2年生に対し海外の国際バカロレアのカリキュラムに則った教育を受けるための2年間の留学への支援、大学3年~4年の海外留学への支援としての奨学金を持っている。小中連携においてはより基礎的、普遍的な内容や日本のことをしっかり学んでもらい、高校、大学の段階で英語などに広げていくのがいい。地域の実情に応じた取組も興味深いが、子どもたちがずっと地元にいるかどうかも不明であり、子どもたちの自由度を保証する意味でも、小・中学校の教育内容はそのようにしたほうがいい。

○小中連携、接続の目的としては、中1ギャップの解消に焦点を当てて考えていく必要がある。その際、現行制度の範囲でできる、例えば小・中学校の教員が互いに授業を見合う、児童生徒、教員が交流し合う、情報交換を密にする、といったことを先にすべきであり、そこを飛ばして教育課程の問題に踏み込んで議論するのはいかがなものか。学習指導要領の改訂は、色々なところで影響が出てくると思うので、最後の手段とすべき。

○社会全体の大きな課題として、少子高齢化への対応ということがある。現在1,200万人いる義務教育年齢の子どもが10年度には900万人に、4分の3になってしまう。人数が減ってしまう分、一人ひとりの能力を高めていく必要がある。そのために、教育課程の無駄な部分、重複している部分などは省いて、個人の資質を育む時間に充てたりすることが必要である。

○学習指導要領の作成会議になると、どうしても小学校は小学校部会、中学校は中学校部会で、と学校種ごとに進めていくことになってしまうというところがある。今後は、小中一貫教育の成果も踏まえて、次の改訂の時には、小・中学校をもう少し連動させていけないだろうかと思う。

○学習指導要領の作成のプロセスにおいては、小学校部会と中学校部会、それぞれで作成したものを単純に合わせただけなので、9年間のまとまりとの観点が非常に弱い。それが、研究開発学校等で様々に取り組まれている特例の背景になっていると思われる。その点では、次回の学習指導要領改訂の際には、小・中学校9年間を見通したものを作成していく工夫が必要である。

○義務教育9年間で身に付けることを確実にするにあたっての障害として中1ギャップがあることは確認しておく必要がある。ただし、教育課程特例校や研究開発学校を全国に広げたところで、成果は広がらないのではないか。先進校では、先生方がみながんばっているから成果が出ているのであって、全国に広めると成果は薄まる懸念がある。また、特例校、研発における教育課程の具体的なプログラムをはっきりさせないと、やり方は広まらない。特に文部科学省が何か改革を打ち出す際には、業務のスクラップアンドビルドをした上で時間・校務の効率化とセットにし、仕事を増やすのではない形にしないと現場は対応できない。

○4・3・2や5・4といった学年区分が広く多くの学校で取り組まれるようになるとすると、小学校6年・中学校3年の年限は変更しないとの前提でいいかどうか、前提を確認しながら議論していくことが重要である。

○4・3・2の区切り方については、子どもたちの直観的思考力から、論理的・概念的思考力に移行する9歳・10歳期に注目し、授業の作り方でも参考にしたものである。

○公立学校で、効果があると言われて導入された総合的な学習の時間をどんどん削って、あるいは、感性を育てていかなければならない小・中学校において、音楽の時間等を削って特別な教科をやっていくことはいかがなものか。呉市における小中一貫教育は、中学生と小学生を交わらせることによる教育効果、子どもらしく健全な心を持った中学生を育てることができるのではないかと、そのような目的でやっている。

○学力を各学年でしっかりと捉え、それを指導に反映させていくこと、生活面の実態把握をし、それを学習や生活面に生かしていくことが必要。

○小・中学校の特別活動(児童会活動、生徒会活動、部活動開始年齢等)のつながりを考える必要性がある。小学校6年生は相当なリーダーシップを発揮するが、それが9年一貫になることでリーダー性を発揮する場がなくなってしまうのではないか、という懸念がある。また学校行事についても、例えば運動会の徒競走では9レース、学芸会では9プログラムにしなければならなくなり、ただでさえ過密なものをどのように充実化していくかについて、検討が必要。小学校の外国語活動と中学校の教科英語のつながりについても検討が必要。

○小・中学校の連携・接続の問題を検討する際、小・中学校教員が互いの教育課程を理解し、学力観、授業観を小中一貫したものにするという系統性を確認するとともに、小・中学校それぞれの独自性も大切にすることにより小・中学校教員が小・中学校の新しい学校文化を創るとの目的をもって取り組むことが重要。

○義務教育学校制度の創設に併せ、学習指導要領の在り方を、義務教育段階の学習指導要領、との明確な論点をもって次の改訂時では作成するようにすることが必要。

○義務教育学校では教育課程を弾力的に編成できるようにする必要がある。ただし、児童生徒が転学等した場合はどうするかについて対応の提案が必要。

○教育課程特例校により様々なことができるので、文部科学省から参考資料のような形で、可能な取組について明示すると、取組の広がりが期待でき、実践の蓄積が増え、検証できることとなり望ましい。

○幼稚園から小・中・高校までを見通した教育課程の編成が非常に大事である。義務教育と高校の接続を考えていくかで、中等教育学校がある中で、それとどのように整合的に9年間の教育課程を構想しているのかを言及すべきではないか。

○教育課程の在り方のところで、一応の分け方としては、学制に係る義務教育学校という、かなり大枠から変えることと、現行の小・中学校の枠を前提としながらも、その中で教育課程を一貫してつなぐ、現行の学習指導要領の在り方より精緻に綿密につなぐことなどができるだろう。現在の学制のまま、教育課程のつなぎ方、区分をすることはある程度可能である。その中の一つは何らかの特例措置であるし、特例までいかなくて、様々に実施できることもある。その場合に、国なり、教育委員会として支援、奨励、便宜を図ることなどが可能だと思う。

  どこまで特例を認めていくか考えると、特に大きな問題は小中間の指導内容の入替え。特に中等教育学校など、中高の連携をしているところである程度認めているが、それが小中の間でどのくらい可能になるかということ。大都市圏であると、特定の小学校から特定の中学校に全員行くとは限らないため、あまり極端なことはできないだろう。一方で、小学校にいる子どもはその特定の中学校に全員行き、それ以外は極めて例外的だという場合には、教育委員会において決めて、ある程度実施してもよいかもしれない。ただ、その場合に、設置者の判断で実施するとして、小中の9年間の質の保証をだれがどのようにやるのかについて、しっかりと念押しが要るのではないか。学制改革に入らないけれども、ある程度積極的な推進というものを奨励する動きを出したい。

○教育課程の特例の一部を設置者が判断するのは基本的に賛成。ただし、一定の歯止め、教育の目的、小中一貫教育のねらいが担保される形が望ましいのではないか。

○設置者の判断で実施することについて、この方向で検討すべき。現在、研究開発学校、特例校等から出てきたカリキュラム開発等の中身からすると、この中で生まれたカリキュラム等は既に許容的な範囲ではないか。

  設置者の判断とする前の段階の検討事項があるのではないか。それは、学習指導要領の作り方で、今のものを前提にしてこの議論をするのか、そもそも学習指導要領の作り方、例えば小学校と中学校を一緒にして学習指導要領を作るのかということがあると、議論の仕方が変わってくるのではないか。今の学習指導要領は、作られた当時は小中別々に作っているので、9年間で学習指導要領の現状をもう一度見つめ直して組み直すことを経た上で、教育課程の特例の話になるのではないか。

○学習指導要領の構築のされ方と、義務教育段階には小・中学校の2つの学校種があることをどう考え、どのように学習指導要領の作成方法なり改正を考えていくか。そのことによって、小中一貫教育の議論が見えてくるのではないか。

○小・中学校ではいろいろな事情で転校する子どもたちがいると思うが、小中一貫教育を実施している学校とそうでない学校で、教育内容があまりに異なるような場合には、例えば学習しない部分が生じるのではないか、その手当ができるのかという懸念がある。

○義務教育は基礎教育であるため、どこの学校に就学しても基本的に同じ教育が受けられることを担保する必要があるのではないか。このため、中高一貫のように義務教育の内容を学年間で入れ替えてしまうことが一般化されると、小学校段階で習うべきことを習わないまま、学年間又は転校先で困ってしまうこととなり、非常に危惧している。設置者の判断ということで記載されているが、かなり歯止めを書き込む必要がある。

○学年区分については、市町村教委がビジョンを示す中で一律に決定するやり方、もう一つは各中学校ごとに決定していくやり方もあるだろう。後者の場合にも、設置者たる市町村教委が全く関与しないことはあり得ないのではないか。

○教育課程の特例についての歯止めとして、特に義務教育については、教育基本法、学校教育法、学習指導要領の範囲の中で特色ある学校作りをすることが基本。学習指導要領を超えたところで特色を出していくと、隣接する学校との関係が難しくなってくるのではないか。

 

5.指導方法の工夫

○生徒についても、幼い子に頼られるという経験が家庭の中でもなくなってきている中で、小学生との合同授業、中学生による小学校での読み聞かせ等の機会を設けると、小学生が中学生に会うことを楽しみにし、地域でも声を掛け合うという関係が生まれてくる。

○小中連携、一貫教育に取り組む際には、例えば中学校の先生が小学校の授業に参観して緻密に分析をしたり、中学校の先生が小学校に行って乗り入れ指導を行ったり、取り組みやすいところから始めるのがよい。すると、例えば乗り入れ指導を行った中学校教員が小学生の反応から新鮮な気づきを得たりして、教員の意識が変わってくる。

○乗り入れ授業については、子どもたちが学ぶ楽しさを感じられるような教科において実施するのが望ましく、特定の教科から乗り入れ授業を始めると効果があったというものがあれば一般化できる。

○中学校で持ち時間の比較的少ない教員が小学校に乗り入れることで、負担があまりかからないような工夫をしている。

○どの教科について乗り入れ指導を行うかを検討する上で、現に小中一貫教育を実践している併設型なり一体型なりの学校の成果を提供することが必要である。

○小学生への教科指導が適切と考えた教科として、理科、英語など授業準備に時間がかかり、ある程度の専門的な技能が要求される教科や、図工、音楽など感性を育む教科は、より専門性が高い教員が指導を行った方がよい。小学校5年生の理科を小学校学級担任の指導とした理由としては、生命に関する内容を含むなど、児童の実態を捉えて指導した方が良いと判断したからである。

○連携に際し、小・中学校教員の動きを可視化した表を作成し、いつどこで誰が指導を行うか一覧できるようにした。

○小学生については小学校の学級担任がいる中で安心感を持って中学校教員の専門的な指導を受けられる体制をつくり、中学生については、小学校時代に慣れ親しんだ教員からの指導を受けることになり、中1ギャップの解消につながった。

○最も手っ取り早いのは、授業研究である。授業は連続して展開されていくので、授業研究によって、中学校教員が小学校の子どもたちの成長段階に触れる機会が多くなってくる。そうして、小・中学校という独自性を乗り越えて、施設一体型で新しい文化を創ることが必要なのだということを、小中連携教育を始めてから7年間をかけて徐々に教員たちが抵抗なく受け入れるようになってきた。

○中学校教員で小学校教員の免許を持っている者は27.5%である一方、高校教員の免許を持っている者は78.9%、これは日頃の指導にも顕著に表れており、中学校教員は「高校でこのような勉強をするから今これをしっかりやっておかないといけない」あるいは「これは本来高校で習うことだけど、少し先取りする」といったことを付言しながら指導している。その意味で、中学校教員は高校での指導内容を理解して指導していることが多いが、小学校における指導内容についてはあまり理解されていない部分が多い。小学校教員にしてみれば中学校での指導内容を理解して指導していると思われる。

○目的は中1ギャップの解消や、指導上の効果を上げるためなど、大体出尽くしているのではないか。問題はその先で、どのように小中連携、一貫教育を進めていくかの議論が必要である。市町村に押しつけるような制度は反発を招くのでやめたほうがよく、市町村に対して色々な選択肢を用意するようなものがよい。これまで議論されてきている課題として、先生が足りない、小・中学校の場所が離れているから連携が困難といった声を聞くので、こういうときこそITの活用が望まれ、インターネットによる授業の可能性について検討していく必要があるのではないか。

○科学技術振興機構が実施した小学校理科教育実態調査によれば、専科の教員を配置するかどうか、又は指導員を配置するかどうかによって、児童が将来理科の勉強を活かした仕事がしたいかどうか、また理科の授業がどの程度分かるか、といった質問項目への回答としてはあまり差異がないというような結果が出ている。その意味では、免許状更新講習の際に隣接校種の免許を取得してもらう、特定教科の免許をもった中学校の教員に小学校で教えてもらう、というだけではなく、小学校における教育課程のどの部分について教授してもらう、というような踏み込んだ工夫をしないと意味がない。

○現場においては、教科指導の中で生徒指導も行っている。小・中学校教員の乗り入れ指導における指導力の有無で見た場合、必ずしも教員免許所有者であれば優れているというものでもなく、例えば中学校教員の免許を所有する小学校教員が、授業中の生徒指導に対応できていないような例があり、他校種の免許を所有している現職教員についても、働きながら指導力を向上させるための学びの場を設け、小・中学校教員による授業研究で実践力を養うことは現実的で有効であると考えられる。

○各学年の教科・領域の年間指導計画に「他学年の関連と指導の重点」の項目を設け、学習のつながりを明確にしている。

○小中一貫教育の手立てとして、「学習状況票」と「児童・生徒連絡ノート」を取り入れ、「学習状況票」を基に児童生徒一人ひとりの実態や特性を話し合い、次年度に引き継いでいくとともに、「児童・生徒連絡ノート」は、9年間の記録をとることで、児童生徒理解を深め個に応じた指導をするために、有効な手立てになるものである。

○村の小・中学校は2学期制のため、通知表は年2回発行、その途中に「学習のあゆみ」を小学校が年4回、中学校が年5回発行し、子どもの学びがより保護者に伝わるようにしている。

○小規模な学校でできることとして、複数の学年が一緒に勉強することにより、上級学年の子が下級学年の子の面倒を見たり、教育効果が上がると思われる。

○5、6年生が一緒になって器楽の練習をしたり、子どもヘルパー活動は、4年生以上から中学校1年生の4学年が一緒に、必要に応じて行っている。

○「テレビ会議システム等を活用し、小学校から離れた中学校にいる教員が移動せず、小学校児童向けに授業を実施」ということが常に行われるべき、ととられないよう、ツールであることを明確にしないといけない。

 

6.教員人事や教員免許の在り方

○教員免許の在り方が小中一貫教育を阻む要因としてよく挙げられるが、逆に「小学校と中学校の区切りを明確にさせるべき」という方向性もある。今後、そのような議論との整合性をどのようにとっていくかに留意しながら審議を進めていきたい。

○小学校教員は全教科を教授する反面、得意教科でない教科の指導レベルを上げていく必要があり、中学校教員は教科を超えた学習指導をどのように可能にするかということがある。そのような課題について、小・中学校教員の合同研修会等をすると実りあることになる。

○小・中学校それぞれの校種の良いところを交流できるよう、免許制度の見直しというのも大切なことではないか。

○教員が中学校から小学校に行くことはあっても小学校から中学校に行くことはほとんどない。また、東京都としては、小学校と中学校の教員の人事交流はほとんどない。各々の校種のよいところを修得できるような交流をやっていくことが非常に重要である。

○アンケート調査等で見られる成果もあり、小中一貫教育の取組により、生徒だけでなく、中学校の教員側の自尊感情の高まり、授業改善のノウハウの獲得という効果があるのではないか。小学校と中学校の教員が、互いに対岸からモノを言い合うという関係から、協働と補完という関係に変わってきたのではないか。

○小学校の先生は大抵中学校教員の免許を持っているが中学校の先生は小学校教員の免許を持っていないことが多い。小中一貫教育は、先生方が各学校種の先生であるということを飛び超えて、制度依存型専門性から、子どもの教育のための専門家、自ら新しい課題を追及していく専門家に変わっていくということなのではないか。そのように教師の意識が変わってくれば、子どもの学力は上がってくるものである。

○教師の専門性として、小学校においては学級経営、中学校においては教科指導という棲み分けが現在はあるわけだが、もう一度専門性とは何かについて見つめ直す必要がある。

○教員免許は小中連携における大きな制限となっているが、小・中学校教員の人事交流は小中連携の根幹に関わる部分であり、これがうまくいけば小中連携のかなりの部分がスムーズに進むのではないか。

○小・中学校教員が乗り入れ指導をする際、(1)養成課程で隣接免許がとれるようにする、(2)現職教員が働きながら隣接免許とれるようにする、(3)現職教員が、免許はとらないが、研修の受講により実際他校種で教えるための知識や技能を身に付けていく、という3段階の考え方があってよい。ただ、大学の4年間で例えば幼小中高全体の免許を取ることはおそらく不可能かと思われ、大学教育として望ましくない部分もかなり出てくることが危惧される。それよりは、例えば、免許状更新講習の機会を活用し、小・中・高どの段階のどの教科に関する指導技術を身に付けたいかにより、特定部分の講習を受けられるようなことも検討すべき。従前より、小学校の教員といっても、低学年、中学年、高学年ではそれぞれ指導技術が異なることから、それらに分けた方がいいのではないかと考えている。特定部分を明示した研修があってもいい。

○養成課程において、小学校の教員になろうとする者に小学校の内容を教えるのか、中学校教員の免許状も取得しようとする者に小学校の内容を教えるのかにより、教える内容が大分変わってくる。例えば「学級経営」という科目においても、小学校と中学校全体を見据えた話をするか、小学校は小学校、中学校は中学校とするか、いずれもとり得るわけだが、そこをどのように考えるか。養成課程については、小学校と中学校を判然として特化すべきとの議論もあるが、そうしてしまうと、義務教育9年間を見通した方向性と相反することとなる。よって教員養成において、9年間の子どもの発達段階や9年間を通した物事の見方、考え方ができる教員の養成というカリキュラムが開発されるべき。

○乗り入れ指導には大変手応えを感じるが、問題はTTでないといけないところ。小学校の先生が中学校に行って、T1、T2で打合せをしながらやっている。これが時間的にも非常に厳しく、なかなか実現できない1つの壁になっている。それが制度上の壁だとすれば、その意味では隣接免許の取得は大事だ。免許更新時に隣接免許をもう少し容易に取得できるようにならないか。養成段階で義務教育免許をとろうとすると、単位数が多すぎて教職をとらなくなる者も出てくるのではないか。それよりは、新採の者の人事交流は効果が高いと思われるので、例えば、中学校で採用されても何年は小学校で勤務する等のルールを作ってもいいかもしれない。

○全校種の免許を持っている者の方が優れているということとなると、教員養成系大学における養成ばかりになってしまい、開放制が形骸化していくことは十分予想される。そうなると各教育委員会での採用倍率が下がり、かえって質の低下が起きる危険性もある。そうした方向よりも、現職教員に他校種の免許を取得してもらったり、研修で隣接校種についての学習をさせたりすることで十分対応できるのではないか。

○教員養成大学においても、小中高の教員免許が取得できるようになることが望まれる。

○教員免許を義務教育段階でスムーズなものにしていく必要があり、そうした取組を通じ教員の質の向上を図る必要がある。

○教員免許状の在り方が現状では小・中学校段階で大きく異なるところを、義務教育学校の制度化に併せ、近接性を高めることが必要。

○小中一貫教育が中1ギャップを解消できたかといえば、いじめ等があっても同じ人間関係が9年間固定し限界がある等、解消できていない点がある。また、4、5年生のギャップについては、小学校教育の在り方に問題があるのではないかと考えており、これに対応するには、小中一貫教育だけで解決するということではなく、教職課程の在り方を見直し、教育哲学や教育史といったものを必修とする等とセットで実施しないと制度だけ作ってもなかなか成果が上がらないのではないか。

○教育哲学や教育史の必修化を図るような形の教員免許状更新、又は取得が重要ではないか。

○現行の免許制度の運用は、各学校種の固有性、独自性を強調するという伝統的なやり方となっており、小学校は小学校の教員として、中学校は中学校の教員として、両者を判然とさせるような方向の運用を各教員養成大学に求めているのではないか。そうすると、両方の学校にまたがる視野、物の見方・考え方ができる教員が養成されず、問題があるのではないか。学校をつなぐ物の見方・考え方のできる教師の養成について言及すべきではないか。

○小中一貫教育を拡大するのであれば、当然のことながら、教員養成課程でカリキュラムを両立できるようにするなど、市町村が独自に教員養成を実施しなくても済むような条件整備が必要ではないか。

○呉市では小中一貫教育実施している中学校区間で差が出てきている。その差の原因は、校長の理解度が非常に大きく影響していると感じる。校長の人事について、書き込んでいく必要があるのではないか。

 

7.校地・校舎、通学区域等に関する工夫

○今後、特に過疎地における教育の在り方ということと小中一貫教育は深く関係しており、地域の事情に応じた9年間の在り方、中学校区単位で学区や地域の諸機関との関係を踏まえる必要性、といった点に留意しながら審議を進めていきたい。

○小中連携を進める際の学区の在り方をどのように考えるのか。生活圏から離れたところに通う場合、子どもたちがコミュニティーの中で自分の役割を認識しながら成長していけるのか。特に小学生の場合、かなり遠くの学校へ通い、そこで勉強をすることが本当によいことなのかという懸念がある。小中一貫校とする場合、生活圏に近いところで子どもの成長を見守りながらやるのがいいのではないか。

○全ての学校を小中一貫教育校にすると、既存の施設をどうするのだという問題もある。

○一般に教育界においては学校同士の横の情報共有がなされていないことが多いので、ITを積極的に導入する必要がある。ITはハードが離れたところをソフトでつなぐツールとなる。

○施設分離型でも一体型でも教室間等の移動時間は、教員、子ども双方の問題であり、どのように克服していくのかという観点が大切である。

○学校事故を防止する観点からも施設に関わる動線に対する配慮が必要である。

○多くの場合、4・3・2カリキュラムを掲げているが、それが現実の学校の校舎の配置、実際の状況等々を見ると、カリキュラムは4・3・2でありながら、運用、又は具体的な空間の設計は6・3という矛盾をどのように収束させていくのかについて、検討開発すべきではないか。

○保護者に4・3・2制を説明しても、施設一体型の一貫校ならまだわかりやすいが、施設分離型の小・中学校については実態が6年、3年になるため、理解を得がたい。

○隣接している校舎であっても建物が違うと顔を合わせる機会が減り、連絡や打合せの時間はほとんどとれないので、授業の前や後ろに打合せを行っていく必要がある。

○校舎を併設させ、兼用できる部分については兼用しており、体育館、ランチルーム、特別教室、図書室を兼用にしている。

○小中一貫教育を実施する小・中学校においては、今後は一体型の職員室の設計と運用を考えていくべき。小中合同の職員室の在り方についてさらに検討を深め、実践例を集積しながら知見を集めていくことが必要。

○小学校1年生と中学校3年生の身体的発達の違いに配慮して校舎の設計をする必要がある。

 

8.義務教育学校(仮称)について

○義務教育学校の制度化も重要であり、中等教育学校があるので義務教育学校があって良いと思うが、全国的に小中連携を進めるのが主旨であれば、広い網がかかっている現行制度の改善又は柔軟な運用等で解決できることが多いのではないか。

○教育課程特例校はあくまで特例であり、継続性が担保されていないことから、継続性確保のため、しっかりとした法整備が望まれる。また、小中一貫教育に取り組んできてもなお埋まらない小・中学校の教育の壁を感じており、校種として義務教育学校を見ることにより、器が人を作ることもあるという点で、制度をしっかりと確保すべきである。

○6歳で小学校に入るのは変えないのが前提なのか。4・3・2で区切るのは個人的にはいいアイデアだと思うが、そのスタートをいつにするのかという議論はありえないのか。

○4・3・2や5・4といった学年区分が広く多くの学校で取り組まれるようになるとすると、小学校6年・中学校3年の年限は変更しないとの前提でいいかどうか、前提を確認しながら議論していくことが重要である。

○実践を見ると小中一貫教育は成果が上がっている部分があり、現行制度のままでもできるが、義務教育学校制度を創設した方が現場の選択肢が広がり望ましい。地域の状況は様々であるので、各地域において選択できるようにした方がいい。

○大学側から下りてくる中学・高等学校の在り方と、庶民の学校から積み上げてくる学校の在り方があり、20世紀型の教育はこの両者が折り合って、現在の小学校から大学までの学校制度となった。中等教育段階の折り合わせという課題を超えていくのが21世紀型の教育だとすると、義務教育学校はその一つの選択肢であると考えている。全体の枠組み、歴史的な位置付けから見て義務教育学校の検討の必要性はあり得る。

○町づくりと学校の在り方がミスマッチとなっている場合には、各地域において学校の在り方が問われることとなる。

○松江市は6~7年小中一貫教育に取り組んできており、島根大学の附属学校においても同様に幼・小・中で一貫教育をしようとしたとき、同一敷地内にあっても全く連携・協力関係がなかった。学校の仕組み、学年の仕切り方を変えていくことを考えた場合、義務教育学校は学校改革の起爆剤として期待したい。その際には、9年一貫にしたからといって、中も9年一本とするのではなく、4・3・2等学年を市町村の判断で小さく区切ることができるようにすることが肝要。国の役目は基盤固めであり、大きく言ってまずは2つのことが必要。一つは教員免許状の在り方が現状では小・中学校段階で大きく異なるところを、義務教育学校を制度化に併せ、近接性を高めること、もう一つは学習指導要領の在り方を、義務教育段階の学習指導要領、との明確な論点をもって次の改訂時では作成するようにすること。

○義務教育学校は選択肢としてはあり得るのではないか。義務教育学校では教育課程を弾力的に編成できるようにする必要がある。ただし、児童生徒が転学等した場合はどうするかについて対応の提案が必要。

○全ての課題をクリアできる策はないので、保護者からすれば、一つでもメリットがある方法をとってもらいたい。震災後、福島県の学校ではコマ数を合わせるので精一杯であり、子どもたちが「学習する」ということが2の次、3の次となっており、それは違うのではないかと思った。

○以前小・中学校で同じことをやっているのが無駄であるとの指摘があったが、義務教育学校制度によって、柔軟な対応ができるのであれば制度があってもいいのではないかと思う。

○義務教育学校制度の必要性はあるのではないか。ただし現行制度の全国的な状況を考えれば、選択肢として提示しながら数年かけて制度化の検討に取り組んでいく必要がある。国の役割で最も重要であるのは、義務教育が修了した時の学力保証だと思う。その途中のカリキュラムについては、ある程度、国が提示していくが、できる限り地方、又は学校現場にゆだねていくという理念がある。義務教育答申にも、国としてインプットとアウトプットに責任を負って、その間のプロセスをできる限り現場にゆだねていくということが必要であると触れられている。この流れからすれば、義務教育学校制度の創設は極めて当然な発想ではないか。義務教育には様々な問題があり、その解決のためには、組織の改革も含め考えるべき。義務教育学校制度を作る際に留意すべき点としては、(1)いかに9年制の学校といっても、5・4や3・3・3といった内部の区分は、学習指導要領を満たしながら設置者独自のものを作れるようにすること、(2)特に都市部においては、転学や編入学への対応を、保護者任せにするのではなく、学校として責任を持つべきということ。

○義務教育学校制度の創設は、多様な学校制度を目指す方向ではないかと思うが、小中一貫教育が中1ギャップを解消できたかといえば、いじめ等があっても同じ人間関係が9年間固定し限界がある等、解消できていない点がある。また、4、5年生のギャップについては、小学校教育の在り方に問題があるのではないかと考えており、これに対応するには、小中一貫教育だけで解決するということではなく、教職課程の在り方を見直し、教育哲学や教育史といったものを必修とする等とセットで実施しないと制度だけ作ってもなかなか成果が上がらないのではないか。

○小学校1と中学校1を合わせた義務教育学校が2ではなく、2.5や3になるのであれば義務教育学校制度を作る意義はあると思うが、一方で心配な面として2点ほどある。一つは、6歳から15歳の子どもたちが一つの場で学んでいくことを考えると、9年間は長く、途中で挫折があった時に同じ空間で過ごしていく重さが心配だという点、もう一点は、例えば少子化が進む地域で小・中学校の統合を考えることは当然あり得ると思うが、仮にランニングコストを抑えるために小・中学校を義務教育学校に改編する、というようなことがあった場合、これは何か大きな失敗をしてしまうのではないかと思うので、仮に義務教育学校を作る場合でも、教職員定数や校舎の基準などは、小・中学校を単純に合わせるよりも、義務教育学校を作る方がハードルを高くする、といった仕掛けが必要になるかと思う。ただ、やはり、学びの場として町を形作っている小・中学校の数が減る、学び・文化の拠点が減るのは大きな問題であるので、義務教育学校制度については、慎重な議論が必要である。

○現在の小中連携・接続の目的は、中1ギャップの解消、学力向上、健全育成、コミュニティの力の向上、小規模校の教育活動の活性化など自治体によって様々であり、義務教育学校を作ればそうした諸問題の全てが解決するとは到底思えない。ただし、小・中学校の連携は必要であり、本校の場合は中1ギャップの解消、生徒の健全育成のために小中連携を実施しているが、そうした目的が義務教育学校制度を作ることで解決するとは思えない。結論として義務教育学校制度の創設まではなかなかいけないと思う。

○小中連携と小中一貫教育はかなり内容の異なるものであり、6・3制を前提にしてそれを円滑につなぐために何をするかというのが小中連携であり、9年間を一貫して教育するために何をするかというのが小中一貫教育である。今あるどのような課題の解決のために何が必要なのかが一番重要であり、その際、(1)9年間を一貫して教育することの是非、(2)一部の学校に義務教育学校を導入していくことの是非、に分けて考える必要がある。(1)に関しては、現行の小学校6年、中学校3年の教育効果を検証する必要がある。(2)に関しては、学校教育制度の複線化となるが、複線化するといっても、6歳の子は通学可能範囲が限られるため、行きたい学校があっても地理的に通えないこともあり得るため、複線化の意義は限定的である。公教育の在り方としては、一律のサービスをできるだけ十全に提供すべきと考えており、やはり義務教育学校を作ることが小・中学校教育の連携の在り方を考える上でベストなのかは疑問である。

○小・中学校間の連携・接続の在り方の課題解決のために制度改革ありきとするのは、現場がその対応に追われ、振り回される可能性があるのでいかがなものか。ただし、いろいろな選択肢を探るという意味において義務教育学校制度について検討する必要性はあるのではないか。児童生徒側としては9年一貫は息が詰まる等の思いがあり、学校を運営する立場の大人の目線だけでなく、学ぶ側の児童生徒の目線まで下がって制度改正すべきか否かを考えていく必要がある。

○新しい学校が設置される場合に既存の学校が集約されるのかどうかが最大の問題となると思われ、地域ごとにかなりの目配りをしないと現場は混乱するものと思われる。

○ 例えば、都市部の再開発を行う地域においては、大量の学齢児童生徒が流入するが、現実問題としてそれに対応する施設整備、教員の配置など、義務教育学校と小・中学校という種別が異なる学校を1つにすることによって対応が可能なのか。

○ 地方の中心市街地が疲弊し、コンパクトシティ化する動きがあるが、そうした中で、新しく町を作り直すときには新しい学校(義務教育学校)制度を導入したら、きめ細かい対応をすることができ、よいのではないか。町の変容に合わせ、学校制度は決められるべきではないか。

○義務教育学校制度を創設する場合、学校が義務教育学校としてやっていくことを選択できることが必要。しかし、学校選択が行われている地域であれば可能かもしれないが、小学校又は義務教育学校への就学を保護者に選択させるのは現実問題として困難。

○都道府県、市町村の6・3制という義務教育制度に対する権限について、研究開発学校、(教育課程の)特例という扱いではなく、都道府県、市町村レベルに義務教育学校の学年区分を基本的にゆだねるという方向で議論するのか。あるいは、そうではなくて、6・3という枠組みは守ってもらった上で、その工夫・改善の余地がこの程度あることから、連携するという議論で整理できるという説明なのか。その辺りをきちんと整理した方がよい。

○小中の義務教育の段階で、特別な形の学校を設定することについてはどうなのか。

○通常の学校と義務教育学校と並立して設置した場合、子どもたちや保護者に選択を迫ることになる。

○義務教育の9年間をどのような学校制度で担っていくかという、その制度論は一応、法律改正が必要であり、もっと国民的な議論が必要だということになるが、一貫教育という視点で9年間をもう一度見直し、その中を更に4・3・2、5・4という区分で考えていくという、その多様性をどこまで認めるかという側面がある。それは、地方分権と国の権限の関係の問題ではないか。

 

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