特別支援教育の在り方に関する特別委員会(第14回) 議事録

1.日時

平成23年12月9日(金曜日)15時00分~18時00分

2.場所

文部科学省旧文部省庁舎6階 第2講堂

3.議題

  1. 教職員の確保及び専門性の向上について
  2. 就学先の決定における専門家の確保、意見が一致しない場合の仕組みについて
  3. 合理的配慮等環境整備検討ワーキンググループにおける検討状況について
  4. その他

4.議事録

【宮﨑委員長】 それでは、定刻となりましたので、ただいまから第14回中央教育審議会初等中等教育分科会特別支援教育の在り方に関する特別委員会を開催いたします。
 本日は大変寒い中、御多忙の中を御出席いただきまして、ありがとうございます。
 さて、皆さん、御案内のとおり、12月3日から本日9日まで、障害者基本法に定められている「障害者週間」です。「障害者週間」は、日本国民の間に広く障害者の福祉についての関心と理解を深めるとともに、障害者が、社会、経済、文化、その他あらゆる分野の活動に積極的に参加する意欲を高めることを目的に定められています。本日の特別委員会においても、これまでの委員会と同様に積極的な御議論をお願いしたいと存じます。
 まず、本委員会の委員として新たに着任されました委員について御紹介いたします。熊坂委員でいらっしゃいます。

【熊坂委員】 熊坂です。どうぞよろしくお願いいたします。

【宮﨑委員長】 どうぞよろしくお願いいたします。
 次に、本日の委員の出欠状況ですが、大江委員、岡上委員、河本委員、杉山委員、露木委員、山口委員、そして品川委員が御欠席、その他の委員の方々は御出席でいらっしゃいます。
 なお、本委員会においては、御発言される場合には、必ず挙手をした上でお名前を述べていただいてから御発言をしていただきますようお願い申し上げます。また、通訳の方のために、御発言の際にはゆっくり御発言をいただきますようお願いいたします。
 それでは、議事に入ります。
 本日は三つの議題がございます。お手元の議事次第のとおりですが、一つ目が、教職員の確保及び専門性の向上についてです。この件については、何回か議論をしていただきました。本日もいろいろ委員から提出していただいている中身もありますので、きちっとした審議をしてまいりたいと思います。
 二つ目が、就学先決定の際の専門家の確保、意見が一致しない場合の調整の仕組みです。これについても懸案となっておりまして、いろいろ御意見を頂戴しているところですが、さらに深めてまいりたいと思います。
 三つ目が、合理的配慮等環境整備ワーキンググループにおける審議の状況についてです。
 以上、3点について御審議をいただく予定としております。
 それでは、まず事務局から、配付資料の御確認をお願いいたします。

【横井特別支援教育企画官】 特別支援教育企画官の横井です。
 まず、配付資料につきましては、議事次第のとおり、資料1から資料4までとなっております。資料1は1-1から1-4まで、資料2につきましては2-1から2-4まで、資料3は3-1から3-3まで、資料4は4-1から4-6までとなっております。また、参考資料として特別委員会の委員の名簿をつけております。不足がありましたら、随時、事務局までお申しつけください。
 以上で説明を終わります。

【宮﨑委員長】 ありがとうございます。
 続きまして、教職員の確保及び専門性の向上についての御審議をいただきます。
 まず、事務局から資料の御説明をお願いいたします。

【横井特別支援教育企画官】 特別支援教育企画官の横井です。
 まず、資料1-1から1-4まですが、1-2を御覧ください。1-2につきましては、資料1-1にある各論点について、これまで各委員から御意見をいただいたものを事務局の方で整理したものです。前回、第13回でいただいた御意見を新たに反映しております。前回第13回にいただいた意見、追加部分だけを簡単に御紹介申し上げます。
 まず、総論の部分ですが、1のところで教員免許状を取得して特別支援教育に必要な基礎的知識を持つことは最低限度である。一方で、その知識により子どもにとって必要な支援をアセスメントすることも大切で、アセスメントが行えるシステムを構築していくことが重要、といった御意見です。
 それから、2ページ目に参りまして――前々回の発言は御紹介を割愛します。恐縮です。2ページ目に参りまして、8ですが、特別支援教育の専門性とともに、特に中等教育においては、教科の専門性が犠牲にならないように留意する必要があるといった御意見。続いて9で、高発生頻度障害だけではなく、小児糖尿等の小児科の病気についても、すべての教師が免許を取るときに、最低限の知識と指導方法を大学でしっかりと学ぶべきであるといった御意見。それから、その下の10ですが、あまり教員の肩の荷を重くするとなり手がますますなくなるといった御意見。
 それから、その下の(2)の特別支援学校教員の専門性のところですが、2のところで、特別支援学校教員の免許を持っていない場合に調整額を変えてはどうかといった御意見。それから、3ページ目、3、4のところですが、特別支援学校の教員免許の義務付けは賛成ではあるが、課題解決が重要といった御意見。それから、5ですが、特別支援教育の免許状がろう学校、盲学校、養護学校の免許状に統合され、非常に浅い内容になってしまったと懸念している、大学の養成課程の教育期間を延長すべきといった御意見。それから3ページ下のところですが、8では特別支援学校教諭の免許を取るときに専門性を明確にする必要があるといった御意見。
 続きまして4ページ目以降の(3)小・中学校の特別支援教育担当教員等の専門性のところですが、5ページ目になりますけれども、5ページ目の上から2行目、6のところで、特別支援学級の担当教員には、それぞれの障害種別に加えて発達障害に関する理解・内容を含めた免許状を創設すべきといった御意見。7では特別支援学級担当教員の免許状は長期的な議論であり、早急に専門性の高い教員を確保することが必要であり、例えば認定や研修を受けたことを証明することも方法の一つといった御意見。8では現職のまま特別支援学校教諭免許状は取りづらいので、授業研究をして、その指導ができる元校長や元特別支援学級担任を講師として具体的に指導して力をつけてもらうことが大事といった御意見。
 続きまして6ページの(4)特別支援教育コーディネーターの専門性のところですが、1としまして、発達障害のグレーゾーンの子どもたちは教育方法により才能を開花させる効果が一番上がる部分で、中学校、高等学校でトラブルが起きてからではなく、小学校にこそ専門性が問われる、小学校のコーディネーターの資格を発達障害の概念に照らし合わせて議論することが必要といった御意見。
 続きまして7ページの(5)特別支援教育担当教員以外の教員の専門性のところですが、1として、発達障害は一般的な教員免許状でもしっかりと勉強するという仕組みづくりが必要ではないかといった御意見。それから3では、福祉・医療の現場実習の機会を設けてはよいのではないかといった御意見。4では、現状として介護等体験として1週間、5日間を福祉の現場で2日間を特別支援学校で学ぶといった取り組みが導入されているといった御意見。 
 次に7ページ中ほど、(6)特別支援教育支援員のところですが、1では、特別支援教育支援員について介助と学習面の2種類ある、最初の研修や半年たった際のフォローアップの研修が必要であるといった御意見。2では、教員の行うべき仕事と支援員の行うべき仕事が決して混乱しないようにしてほしいといった御意見。3では、支援員は教員免許を持つべき、といった御意見です。
 続いて、8ページを御覧ください。学校外の専門家、親の会、NPO、学校支援ボランティア等との連携のところですが、1では、例えば心理職、OT、PT、STを活用することにより、特別支援教育で求められているような子どもたちへの支援ができるのではないかといった御意見。2では、民間の力をある程度生かしていくべきであり、そのための先行投資として、親の会、NPO等、組織が脆弱なところを支援・育成し使っていくことが国や自治体において必要であるといった御意見と、それぞれ御意見をいただいたところです。本日の審議の御参考として活用いただければと思います。
 今の資料の7ページ、やや上のところで先ほども御紹介しましたけれども、前回、教員を対象とした福祉施設の実習の機会を設けてはどうかという提案に対して、介護等体験が行われているというやりとりがあったかと思いますが、それに関して事務局から資料1-3として参考資料を提出しております。
 介護等体験についての説明資料ということで、1番目の法律の趣旨にありますように、小学校及び中学校の教諭の普通免許状授与に係る教職員免許法の特例等に関する法律の中でこの介護等体験が位置付けられております。趣旨としましては、教員が個人の尊厳及び社会連帯の理念に関する知識を深めることの重要性にかんがみ、教員の資質向上及び学校教育の一層の充実を図る観点から、当面、小学校及び中学校の教諭の普通免許状取得希望者に介護等体験をさせるという内容です。
 2の制度の対象者のところですが、小学校及び中学校の教諭の普通免許状を取得しようとする者としております。
 3の介護等体験の内容等としましては、障害者、高齢者等に対する介護、介助、これらの者との交流等の体験を行うとなっております。
 (2)の実施施設ですが、盲・ろう・養護学校につきましては、既に現在では特別支援学校という形になっていますけれども、加えて社会福祉施設等となっています。
 期間は、(3)にありますように7日間以上となっています。
 5の施行期日のところですが、平成10年度の大学の入学者から適用されているということです。
 続きまして、資料1-4を御覧ください。
 資料1-4は、1-1の論点(7)教職員への障害のある者の採用・人事配置に関連した資料ですが、去る11月25日に厚生労働省から平成23年の障害者雇用状況の集計結果が公表されたところです。教育委員会につきましては法定雇用率2.0%と定められておりますが、達成しているのは、グレーで塗っております14府県という状況です。
 参考資料としまして、もう1枚おめくりいただきますと、文部科学省では、障害のある方の教員免許状の取得状況を毎年調査していますが、平成21年度で免許状取得者実数が約10万人なのに対して、障害者の免許状取得実数が88人という状況になっております。
 以上、情報提供としてお示しいたしました。
 資料1-1に戻っていただきたいのですが、資料1-1は、前々回から事務局の方で資料として提出している論点ですけれども、2ページ目を御覧ください。
 2ページ目、今回、議論をさらに深化いただくために、横断的な視点からの項目を追加しております。具体的には、(追加)と書かれているところですが、障害のある子どもの特性に応じた教育を行うために求められる教職員の確保及び専門性の向上のための方策について、1から5の教職員にどのようなものが求められるのかということで御意見を伺いたいと存じます。
 また、個々の教員でその専門性を確保するのみならず、学校として専門性を確保するためのシステムの構築、必要に応じて外部専門家といった学校外のシステムを活用したシステムの構築の在り方について御意見を伺いたいと存じます。
 本件につきましては、もう既に特別委員会で御紹介申し上げているところですが、昨年6月の閣議決定、2ページ目の(参考2)の二つ目の丸のところですが、こちらの方で閣議決定の内容として教育の分野では、障害のある子どもの特性に応じた教育を実現するため、24年内を目途にその基本的方向性についての結論を得るということになっております。
 それから、その背景としての問題意識としまして、3ページ目からつけております「障がい者制度改革推進会議」の第二次意見、昨年12月にまとめられた第二次意見におきましても、4ページ目の1行目からになりますが、「障がい者制度改革推進会議」の問題意識として、学校教育における多様なコミュニケーション手段の保障というところで、手話・点字・補聴援助・要約筆記等による教育、発達障害、知的障害等の子どもの特性に応じた教育を実現するため、ろう者を含む手話に通じた教員や視覚障害者を含む点字に通じた教員、手話通訳者、要約筆記者等の確保や、教員の専門性向上に必要な措置を講ずるべきであるとされております。この点につきまして御議論いただきたいということで、以上で説明を終わります。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 事務局からただいま説明がありましたように、本日は特に障害の特性に応じた教育のための教職員の確保及び専門性の向上といった点を主に御議論いただければと思っております。つまり、今の資料1-1で御説明があった部分、新たにつけ加わった部分、それから、障害者制度改革推進の基本的な方向性についての閣議決定の考え方などを念頭に置いた御議論をしていただくということにしたいと思います。
 それでは、御意見を賜りたいと思います。どなたからでも結構です。どうぞよろしくお願いいたします。
 尾崎委員、大南委員、お願いいたします。

【尾崎委員】 全国特別支援学校長会の尾崎です。
 専門性の向上について資料を提出しましたので、資料に基づいて説明させていただきます。資料4-2になります。
 この資料は、全国特別支援学校長会の研究集録で、今年の6月に発行したものです。これが現物です。校長会として全国にアンケートをとって示したもので、そのごく一部を転載したものです。主に免許状の保有状況と、それから障害種別の専門性確保について全国の特別支援学校長たちはどのようなことを考えているのか、実態はどうかということでのお話になろうかと思います。
 まず、免許についてなのですが、1ページ目に保有状況の概要が書いてございます。全国の特別支援学校は約1,000校ございます。回答が987ですので、ほとんどの学校から回答いただいている中での数値です。「未所有」という数も、そこに書いてあるとおりです。
 2ページ目に行きます。
 2ページ目には、小・中・高等部それぞれの免許の保有状況についてということで書いてございます。ただ、一番下のコメントはちょっと訂正させていただきたいのですが、下から2行目なのですが、免許状未所有者は高等部というよりは中学部が33.6%で最も多く、次いで高等部の29%と、数字上ではそうなります。それから幼稚部の方は10%と、最も少ない状況にある。ということは、逆に言えば9割は取っているという状況にあるということが調査で分かっております。
 それから、それ以下の外部専門家の数等についてですけれども、全体的に言いますと、3ページにありますが、特別支援学校には看護師の配置があったり、あるいは、作業療法士、理学療法士、言語聴覚士等が入っている学校が多いということです。全体で1,000校ありますので、その割合はこういう割合だということで御覧になっていただければと思います。
 それから、今度は障害種別の状況ですけれども、まず盲学校の状況ですが、5ページ目に専門性の向上についてどのように取り組んでいるかということですが、当然、盲学校は94%で点字や手話の活用法について取り組んでいるということ、それ以外の方法もかなり高い率でいろいろ取り組んでいるということです。
 それから5ページの下の方にろう学校について書いてあります。ろう学校は、ろう学校の免許状保有率は若干減っているのですが、特別支援学校教諭の免許状の保有率は増えているということです。これは、異動等によることが原因、特別支援学校内での異動による状況かと思います。
 ろう学校におきましては6ページになりますが、当然ですが言語聴覚士の活用、大学等の研究者の活用をして専門性の向上に取り組んでいるということです。
 それから7ページ目には、知的障害特別支援学校の方なのですが、免許保有率は特別支援学校教諭の免許は盲学校、ろう学校も含めての免許保有率です。それが77%と非常に高くなっていますが、知・肢・病という、昔でいう養護学校の免許状ですね、その保有率は65%と、変わっていないということです。児童生徒数が非常に増えているのですが、変わっていないとはいえども、それを維持するのは、人数的には増えていると思います。
 それから、8ページには、導入している外部専門家なのですが、看護師をはじめ理学療法士、作業療法士の導入が進んでいるということです。全国的には肢体不自由と知的障害の両課程がある学校が非常に多いということも背景にあるかと思います。
 それから、学校として取り組んでいる中に教科の指導法以外に、最近ではマルチメディアの活用とか、それから地域支援・関係機関との連携というようなことにも取り組み始めたということです。それが特徴になっています。
 肢体不自由校につきましては9ページにございますが、導入している外部専門家の数ということでいえば理学療法士が多いということ、それから看護師、作業療法士が続いているということです。学校として取り組んでいる専門性の向上の取り組みの中の、9ページの下の方に書いてありますが、障害の特性への理解だけではなく、やはり地域支援・関係機関との連携というようなことも取り組んでいるということが書かれております。
 それから、病弱特別支援学校については10ページにあります。真ん中にコメントが書いてあるのですが、保有率が80%近くということで、現状維持をしているということが報告されております。
 それから、あと導入している外部専門家等については、看護師とか臨床心理士以外に、スクールカウンセラーとか、精神科の医師とか、そういったことについての導入も取り組んでいるというようなことが述べられております。
 それから、学校として取り組んでいる専門性の向上の取り組みでは、地域支援とか関係機関、教育相談というようなことにも取り組んでいるということが報告されています。
 まとめますと、特別支援学校は障害に対応する教科の指導とか自立活動の指導は当然取り組んでいるのですが、さらに地域・関係機関との連携とか、そういうものにもセンター的機能を発揮する上でもそういうものが必要になってくるということで取り組んでいるということの報告です。
 以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 今、特別支援学校の現状について全特長の研究集録から御報告いただいたのですが、これについてもう少し尾崎委員から、例えば今後、こんなような課題が残されているとか、そういうようなことがあったらちょっとお話しいただけますか。

【尾崎委員】 専門性の維持・向上というのは、免許状の保有のことと、それから学校間の異動のことは密接につながっています。ですから、障害種の少ない学校についてはどうしても保有率が低くなってしまうということです。ただ、全体的に特別支援学校に関する免許状を持っているかどうかということについては、増えてきていると思います。ですから、この免許状の義務付けの在り方等については、是非現状をさらに向上させる方策が必要だと思います。学校にいながら免許が取れる方策をさらに充実していく方法が必要と考えるのが1点です。
 それから、専門性の向上については、先ほど報告がありましたように大学等との連携が、今、かなりどの学校でも取り組むようになってきています。さらに今後は、大学等、それから関係機関との連携による専門性の向上を図るという方策を今後望みたいと思います。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 1,000校あるうちで障害種によっては免許状保有率に少しばらつきがある、このあたりをどんなふうにしていくかというあたりは大きな課題になろうかと、今、お話を伺ってお聞きしました。専門性の向上の在り方として、今日の大きな課題であります大学や関係機関との連携なども含めて、後でまた皆さんから御意見を頂戴できればと思います。
 それでは、大南委員、お願いいたします。

【大南委員】 全国特別支援教育推進連盟の大南です。
 障害のある子どもの特性に応じた教育を行うために求められる教職員の確保と専門性ということですけれども、そのもう一つ手前の段階で、通常の学級を担当している教員がちょっと心配なところが、最近、私、かなり小学校、中学校を回っているのですが、気になることがあります。
 それは何かといいますと、教科の指導等についてはかなり専門的な力を持っているのですけれども、子どもの理解がどうも十分でないような気がするのです。それは何かというと、学級経営がどうもうまくいかない。子どもがパニックを起こすとかいろいろなことがあるのですけれども、それに対して教員が、例えば学級全体をまとめようというよりも先に、その動いてしまう子どもに目が行ってしまって、学級の方がおろそかになるということがあります。その子どもが気になるというのは、実はもうちょっと広い視野と、それから待つという気持ちがあると、かなり解決できるのではないかということです。だから、ちょっと何かあると、もう障害があるのではないか、あるいは、この子は学級経営の中では非常に困る存在であるのではないかと、そう思ってしまうのが早過ぎるのではないかと思います。何とかしてほしい。それには子どもをもうちょっと理解する。それで、その理解したことによって教科の指導や学級経営をしていこうという、そこがまず一つあると思います。そして、その次に、ここで言う特別支援学校や特別支援学級の担当教員の資質の向上というか専門性の向上を考えなければいけない。
 尾崎委員が特別支援学校の教員のことを話されたので、私は小・中学校の特別支援教育担当教員、特別支援学級や通級指導教室の担当教員の資質の向上を考えてみたいわけですが、前回も申し上げたと思うのですが、後でも話題になると思いますが、特別支援教室の制度というかシステムを今後考えていく上では、特別支援学級や通級指導教室の教員の専門性を高めないと、なかなかそこへ行き着かない。特別支援教室はこうあってほしいと思いながらも、特別支援学級の教員の専門性が高まらないと、そこへは行けないだろうと思うのです。
 それで、これはいろいろ考え方があると思うのですけれども、まず私は設置者の努力をお願いしたいと思っているのです。それは何かというと、まず、教員の配置なのです。ちょっと言葉が過ぎたらお許しをいただきたいのですけれども、こういう話が出てくるのです。「ああいう優秀な先生をあの学級へやるのはもったいないじゃないか」と。これは何だろうかという感じなのです。
 だから、それはもったいないのではなくて、そういう優秀な教員を私は逆に配置してほしい。それで、異動も、できるだけ制約はありますけれども、市町村の中で考えられる範囲のことをおやりいただいて、特別支援学級に長い期間勤務ができるような体制、今、早いところは1年交代ぐらい、それから、ちょっと長くても3年ぐらいで大体交代してしまう。でも、3年というと、やっと子どもが分かりかけたぐらいですから、5年とか8年、場合によっては10年ぐらいをできると一番いいと思うわけです。
 そして、次が研修ですけれども、これも先ほど事務局から説明いただいた資料1-2の5ページに6、7、8というところでいろいろな研修の方法がまとめられていますけれども、こういう方法を何とか設置者のレベルでお考えいただいて御努力いただけたらと思います。
 それから、特別支援教育担当教員以外の教員についても、先ほど、子どもの理解ということを申し上げたのですけれども、教員は免許を持っているのだけれども、もう一度、子どもって何なのだろうということを理解してほしい。
 これはあるところで話をしたのですけれども、どうも子どもは大人のミニチュアであるという考え方が最近また出ているような気がするのです。これは、新しいというか近代の心理学では否定されたはずです。児童心理学では「子どもは大人のミニチュアではない」ということを言われたわけですけれども、どうも今、いろいろな話を聞いていると、例えば言うことを聞かないとか、じっとしていないとか、コミュニケーションがうまくとれないとかというそれは、大人の尺度を使い過ぎているのではないかという気がするのです。
 だから、子どもは子どもの特性があって、障害特性の前にもう一つ、子どもって何なのかというのを、私は十分理解してほしい。大学の教員養成課程の中でそういう授業は案外少ないのではないかという気がするのです。これは大学の先生方の批判になってはいけないですけれども、一番大事なところは、やはり子どもが分かる教員を育ててほしい。子どもが分からなくて教科の指導だけが先行したら、子どもはますます学校嫌いや教科嫌いを起こしてしまうのではないか、そんなことを考えております。また機会があれば、別の観点から話したいと思います。どうもありがとうございました。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 通常学級の担任の研修の在り方などに言及していただいて、特に小・中の特別支援学級、通級による指導の担当者をどうしていくかということは喫緊の課題でもあるのですが、大南委員がこれまでいろいろお話ししていただいているのですが、今回は設置者の努力の問題、人事配置の問題など、これも、これまで中教審の中でもかなり前の段階でも出てきていいるのですが、その在り方について、どのように私たちがこの中で書き込みをしていくかというのも大きなポイントになろうかと思います。
 それから研修の在り方です。具体的には、この研修の仕組みについては、今日これからいろいろまた免許状ではなくて考え方としてあるかもしれませんので、具体的に研修の仕組みを少し、例えば具体的な方策というのですか、どの程度ぐらいの研修をすれば特別支援学級や通級の指導の担当の先生として対応させていくことができるかというようなことなども、場合によっては考えていかなければいけない。免許がすぐなかなか仕組みとしてできない以上は、そのあたりも考えなければいけない。
 もし、具体的な案があったら、そのあたりも提案を、こういう方策で学級や、あるいは通級による指導の先生の研修のカリキュラムを作りましょうというようなことがあれば、出していただけるとよろしいと思います。また後で特別支援教室構想の提案もあるようですので、そういったこともあわせて提言していただければありがたいです。ちょっと私が余計なことを言い過ぎました。
 続いていかがでしょうか。
 それでは、木舩委員、それから清原委員、そして佐竹委員、そして太田委員という順に参ります。あと、久松委員、山岡委員、石川委員といきます。

【木舩委員】 広島大学の木舩と申します。
 障害のある子どもの特性に応じた教育を行うための教員の専門性で、まず、特別支援教育担当教員以外の教員、これについて資料を提出しております。資料4-3を提出しております。
 この中の該当部分は、2ページ目、下の方に3と書いてございます。現状、教員養成においてどうなっているかということの御報告になろうかと思います。
 現状としまして、そこに表がございます。教育職員免許法施行規則により数を数えてみました。これは小学校一種を取得する課程の単位数ですけれども、小学校免許科目として59単位で、教職に関する科目が41単位、教科に関する科目が8単位、教科または教職に関する科目が10単位となっております。
 この教職に関する科目の中に、第一欄、第二欄、第三欄と内容の区分がございまして、その第三欄「教育の基礎理論に関する科目」は6単位です。その中に、また下位の部分がございまして、2ページ目の一番下、最後のところ、「幼児児童生徒の心身の発達及び学習の過程(障害のある幼児児童生徒の心身の発達及び学習の過程を含む)」、これは2単位、これが明記されております。この科目を2単位取るとなっております。
 1コマ90分で15回の2単位で考えてみますと、その中に必ず「障害のある幼児児童生徒の心身の発達及び学習の過程」の内容を盛り込んで授業をするという趣旨になっております。これは「含む」でして、どの程度の時間数を含むのか、どのような内容を含めるのかということについては、各大学あるいは担当の講座教員等に任されているというのが現状だろうと思っております。
 以前、この特別委員会の前の調査研究協力者会議で詳しい資料を調べてみたことがございます。まだ全国的に大学でどのように取り組んでいるかというまとまった資料はございませんで、ホームページとか、あるいは知り合いの大学の先生に電話で聞いたりとか、そういった形の調査でしたけれども、まとめたことがございます。
 資料には、今、ここに積んであります資料の中には入っているはずですけれども、その中からかいつまんでお話ししますと、3ページの一番上の丸、各大学の取り組みの様子ということで、含む科目を開設し、さらに障害のある幼児児童生徒の心身の発達及び学習の過程に特化した15コマ分これだけでやるという科目を別開講している大学が複数ございます。ある大学の受講状況ですけれども、これは教職科目で小学校の免許状の科目ですので、当然のことながら小学校免許状を取得する学生の受講が多数を占めていた。これは通常の学級のすべての教諭に求められる専門性の向上に寄与するものである。私個人としては、多くの大学でこういった科目の開講が望ましいのではないかと考えております。
 今度は2番目の丸ですけれども、その他の課程認定において工夫できることについて。課程認定においては、特別支援教育の専門科目を教科または教職に関する科目としても認定を受けることができます。例えば私は、肢体不自由教育基礎論を専門科目として担当しております。課程認定上はこれを特別支援教育の専門科目と、それから教科または教職に関する科目として二つに認定を受けることができます。
 その下の丸、各大学の取り組みの様子(教科または教職に関する科目について)ですけれども、ある大学では、このような課程認定以後に、小学校免許状を取得する学生がこういう教科または教職に認定を受けている特別支援教育の専門科目を受講してくる、こういう人数が増えたという実績がございます。こういった形で、現行制度下でも様々な形で特別支援教育担当教員以外の教員の専門性を向上させることも可能かと思われます。こういった方策を推奨していく、あるいは推進していくことで貢献できるのではないかと考えております。
 以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 現行の大学の教員養成に関わる免許状取得の考え方について木舩委員からお話をいただきました。現状は大変ここは厳しい状況ですが、また、科目などで対応ができるのではないかという、そのあたりは、またこの中でも教員養成の在り方として、単一がもし整備できなければ推奨するというような動きで対応していくということなのでしょうか。

【木舩委員】 そうです。

【宮﨑委員長】 ありがとうございます。
 それでは、引き続いて清原委員。

【清原委員】 ありがとうございます。三鷹市長の清原です。
 本日、資料1-1の2ページに追加された、それぞれの教員によってどのようにそれぞれを確保、また、専門性を高めていくことが適当かという論点について幾つか意見を申し上げたいと思います。
 1点目は、特別支援学校の教員については、従来の免許制度ということで確保されていくとは思うのですが、2から5にかけては、教育委員会の取り組みだけではなくて、それぞれの自治体の首長部局も連携しながらこうした人材の確保に取り組むことが必要ではないかと改めて感じているところです。
 具体的に申し上げますと、私自身、久松委員と御一緒に、「障がい者制度改革推進会議」の議論を経て今年の8月5日に障害者基本法が公布・施行されたわけですが、その第16条がこの2ページにも掲載されておりますけれども、国及び地方公共団体が人材の確保や資質の向上等々の促進をしなければならない、となっているわけで、必ずしも教育委員会だけの仕事ではないとこの16条は読み取れるわけです。
 そうであるならば、例えば現在、特別支援学級の教員として携わっている人の中で、教員免許状としては特別支援教育のものを持っていない人が、現場の実践、あるいは現場での指導を受けながら、もし必要であれば特別支援学級以外に市長部局が持っております社会福祉施設等でのさらなる短期間の研修等を含めて総合的に評価されて、一定の免許状などを認定されるというのが現実的ではないかと思います。その意味で、教育委員会の取り組みに加えて、市長部局がさらなる幅広い研修の条件整備には加われるのではないかと思っています。
 また、特別支援教育コーディネーターについては、特に三鷹市の事例でもお話し申し上げましたが、社会福祉部門との連携は不可欠です。したがって、専門的な特別支援教育の知識や実践技能だけではなくて、幅広い関係機関との連携でありますとか、その子どもそれぞれの実情に応じた支援体制を実際に提案し、保護者や関係者と取り組める力量が求められますので、これもまた教育委員会に閉じられた存在ではなくて、市長部局をはじめ幅広い、例えば大学研究者でありますとか、児童相談所の場合、保健所の場合、いろいろな機関との連携があり得ますので、これもまた教育委員会と市長部局の連携の中で進められるのではないかと考えています。
 何よりも障害者基本法の理念は、地域社会で障害者が共に生きるということですので、それを保障していくのは教育委員会の取り組みにとどまらない、多様な地域資源を活用して人材育成と確保がなされるべきだと思います。
 2点目に申し上げたいのは、私自身、大学教員の経験を持っておりまして、その際、例えば同期に聴覚障害の学生がいる場合、もう本当に驚くべきスピードで同学年の学生は手話を覚えました。また、視覚障害の学生がいるときには、これもまた驚くほどのスピードで点訳を覚えたり、あるいはパソコンを使って資料等を点訳してくれる支援を教員にしてくれました。肢体不自由の学生がいれば、当然のことながら様々な介助であるとか、そういう支援をしてくれました。
 私は、やはり教職課程に積極的に障害のある学生が入ることによって、実際に特別支援に関わるカリキュラムやあるいは実習などを受けるだけではなく日常的に、これは限られた障害の仲間がいるということになって、すべての障害種別の学生さんがたまたまその大学に入るとは限りませんけれども、やはりそうしたことは大変重要で、これは発達障害の学生も含めて高等教育の教員養成課程の中にやはり障害のある学生が入学してくるような条件整備をすることによって、さらに教職課程で学ぶ学生の特別支援教育に対する理解と実践が高等教育の段階からも育まれるのではないかと実体験から感じたところです。
 最後に、今回、この資料は本当に事務局におかれましては丁寧に論点整理あるいは意見の集約をしていただきまして、私としても毎回出席していなくても、大変、話範囲の大きな見取り図が分かって感謝しておりますが、その中で、やはり資料1-2に整理してくださいました意見の中で、共通するものについてはできる限り今後の論点整理の中では、実現に向けた対応のイメージというのですか、そういうものも作り出していただくと、具体的なカリキュラムへの反映とか、あるいは、先ほど申し上げました各市町村の教育委員会だけではなく、都道府県の教育委員会との連携でできることはどういう内容なのか、あるいは市長部局と教育委員会で主として連携すべき内容はどういうことかというように、担い手という中に、ただ地方公共団体としますと、ちょっとすごく大きくなるものですから、私としては少し教育委員会が主として担うものと、それから、私がおります市長部局が担えるものと、そんなこともイメージを膨らませていただくと、現実的になるのかなと思いました。
 以上です。ありがとうございました。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 特に障害者基本法の16条の4項のことなど、首長部局との連携あたりが非常に重要だということと、それから、大学での在り方というか、これもここではなかなか書けないことになるのかもしれませんが、積極的に障害のある者の教員採用に向けた動きというか、教員免許状を取ってもらわなければいけないので、そこについては、どの大学も、今、努力をされているとは思いますが、日常的な支援の在り方などで対応していくということを積極的に大学に働きかけるというような仕組みも必要なのだというようなことをおっしゃっていただきました。このあたりも、今回の整理の中身で対応ができるのかもしれません。あとは、事務局への注文もつきましたので、よろしくお願いします。
 それでは、引き続きお願いいたします。齋藤委員、それから佐竹委員、そして、こちら。

【齋藤委員】 全国心臓病の子どもを守る会、それから前足立区の教育長の立場として発言をさせていただきたいと思います。齋藤と申します。
 先ほど大南委員からお話がありました人事権のことが、私は教育長をやっていたときに非常に重要なことだと思っておりました。東京23区では人事権は今、東京都にあり、6年ないし8年を異動の期間と決められております。ですから、例えば私たちの区に配置されてきた教員をしっかり育てようとしても、6年たつと初任者は完全にほかの区に行かれてしまう。そして、そういう初任者の人たちが、前回も申し上げましたけれども、足立区では1年に200人ほど入ってまいります。そうしますと、特別支援の教育まで回らないうちにほかのところに移ってしまう。そして、校長に至っては、すぐ行ってしまうので、特別支援学級を担当させても2、3年で通常学級を経験させないと、この教員がその後育っていかないだろうという配慮のもとに異動させるということも伺っております。
 そういう意味で、この会で是非人事権のことについても、是非触れていただきたいと思います。規模の大きい自治体でも責任を持って教員を育成して、特別支援も含めて良い人材を確保していくということに積極的に参加し、権限を使っていこうとしてもできない状況に今あるということです。
 それと、研修の件なのですが、子どもを理解していない教員という大南委員の発言がありましたが私も、そう思います。4月に赴任したある教員が、子どもを見ていたら、私の理想と違うということで4月中でやめました。これは本当に極端な例で、そういう教員はめったにいませんが、精神的に落ち込んだわけでも何でもなく、自分のイメージとは違ったということが理由だそうです。
 私は、心臓病の子どもを守る会でも毎年、各地域でキャンプを行っております。医療キャンプなのですが、そこにはお医者さんに協力いただいて大学病院から看護師さん、あるいは場所によっては保育士さんまで連れてきてくださって、その方々と子どもたちのキャンプをしております。そのときに、お医者さんから子どもたちの日常的な生活を見ていないので、子どもの状況が分からなかった、キャンプを経験することによって非常によく分かったということで、医療面でも役に立つというようなお話をいただいております。
 ですので、子どもって何だろうというように悩む学生には、是非障害をお持ちの団体では様々なキャンプをやっていると思いますので、そういうところに学生のうちに参加することで一定程度の単位を付与するような、例えばYMCAなどの社会体育専門学校ですと、単位としてくださるのです。そういうことがあると、理解をする上で、頭の中だけ、あるいは大学の講義だけではないものがつかめるのかなと思いますので、そういうことを研修することも必要だと思います。基本的には研修は、理論を学ぶことも大事だとは思いますが、その後ではOJTが一番重要だと思っていますので、OJTプラス障害者団体のこういう様々な催し物等に入り込んでいただくようなのが単位として認められるようになると、もっと進むのかなと思います。
 最後に地域連携のことです。清原委員がおっしゃったように、首長部局との連携なくしては教育委員会そのものも成り立っていかないということを私は随分感じてまいりました。足立区では、この特別支援教育のコーディネーターの人たちを中心としてですけれども、区内を7ブロックに分けております。この7ブロックというのは、福祉事務所の数で分けているということです。ですから、福祉事務所の管轄の方が必ず入るのと、それから民生・児童委員に強力に支援していただいております。これは、障害をお持ちのお子さんの家庭の中、あるいは障害をお持ちのお子さんにとっては不登校も絡んでくる状況もありますし、かなり複雑な地域との関係もありますので、民生・児童委員の活躍は本当に重要だと思っております。こういう7ブロックに分けた連絡会を年に必ず数回持っている、そういうことをやっておりますので、この区長部局との連携がなければ成り立っていかないと私も思っておりますので、是非そのあたりも強調するような中身になっていただくとうれしいと思っております。
 以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 特に都道府県の教員採用に関わる課題、それから人事の異動要綱などをどんなふうに扱うのかはとても難しいところがあろうかと思うのですが、教員と行政に関わる人の異動が同じぐらいの期間でいいのかというあたりも少し検討していかなければいけない話なのかなと思いながら伺わせていただきました。あとは教員養成の仕組みについての提言だったと思います。
 それでは、佐竹委員。

【佐竹委員】 全肢P連の佐竹です。お時間、ありがとうございます。
 お話を伺っておりまして、教員の専門性の向上ということですが、教員の専門性ということはどの障害種別においても大変重要ということで度々議論されておりますが、私たち保護者にとりまして教員の専門性は、あくまでも子どもが育つ、子どもが学ぶ上で、先生方が子どもの障害特性を理解した上での御指導に感謝しているところです。
 では、その先生方の専門性がどういったところで発揮されるかというのは、なかなか見えにくく、理解が難しいところもあるのも本当のことです。
 先ほど、大南委員のお話の中に、普通の通常の学級の先生方が教科指導は上手だが、子どもの理解が不十分というお話がありました。そういう中で思い起こせば、特別支援学校、特別支援学級の先生方は、多分、そういった一人一人の子どもに目が行き、いろいろなことの子どもの特性に抱擁できるお力がとてもおありになると思っています。その一方で、なかなか教科の方の授業がうまくないというのも言われております。
 先生方の教師としての資質の向上の一つには、教科を含めた授業が根幹ですので、そのほかの健康に留意するなどのところは枝葉の話ですので、もちろん全体的にいろいろなことが先生方に求められることですので、これができない先生はだめだとか、こうだとかという議論ではございません。あくまでも私たち保護者は、きちんとした授業、子どもがその授業によって育っていく、学んでいく、成長していくことで、先生方に大いに感謝している部分です。
 それから、特別支援教室構想について、特別支援教室は必要なことだと思います。というのは、特別支援学校には、特に高等部のお子さんが非常に小・中学校で苦労されて特別支援学校を選んで進学するというケースが多々増えてきております。これは知的だけではなく、肢体不自由でも同様の傾向が見られます。そういった中で、教室においての御指導が、どうも通常の教室において問題がある、じっとしていられないなどという、そのちょっとした支援が必要な子どもに対して、教室外へ抜き出してしまいますと、結果的には親御さんも本人も抜き出されることの受容ができない。何で僕はクラスから離れて特別支援教室に行かなくてはいけないかということが、理解がなかなか難しくなる。特別支援教室の役割はそういったことではなく、一人一人の支援にとって、抜き出した方がいいのか、それとも、もう少し先生が幅広く、いや先生1人で無理であれば補助員を1人、支援員の先生をつけて見守ることが必要なのか、それが担任1人のお力では難しいのであれば複数担任とか、そういったことでも進んでいくことではないかと思います。
 こんな話を聞いたことがあります。事実かどうかはちょっと分からないのですが、親御さんの話ですので、通常の学級の先生方が、非常に学級を乱す子どもに対して過敏になる理由の一つに評価があるということです。評価をされる。自分が学級担任として不十分であるからこの子が動いてしまう、この子が大きな声を上げてしまうのではないか、そういったことを恐れて、何らかの障害があるのではないでしょうかという分類に分けやすいという話を聞いたことがあります。親御さんにとってみれば、できないこと、支援が必要なことがイコール障害というのも、なかなか受容のできないことかもしれません。もう少し丁寧な、また、担任の先生に対しても何かお力添えがあれば、担任として力が発揮できるかもしれない、そんなふうに親は考えております。
 以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 特別支援教室構想については、また提言もしていただくと思うのですが、幅広にいろいろ考えておかなければいけないポイントがどうもあるということを指摘していただいたと思います。
 それからもう一つは、教員である以上は、授業力は当然ついて回らなければいけないことなので、特別支援学校だから子どものみとりとか障害のみとりだけでいいということではないということはやはりきちんと押さえておきたいと思います。
 お待たせしました。太田委員、お願いいたします。

【太田委員】 品川区立鈴ヶ森小学校の校長の太田です。私からは、資料4-1を出させていただきましたので、御覧ください。
 まず、この資料は、全国連合小学校長会と申しまして、全国の小学校の校長会で調査をした通常学級ベースの特別支援教育に関する調査の資料です。私は、この4月から全国連合小学校長会の特別支援教育委員会の委員長をしておりまして、今年度、この調査を、今、進めてまとめているところです。できれば、私が実際に関与した調査の報告をさせていただきたいと思ってずっと待ってきたのですが、どうもこの会の進みぐあいとこちらの調査のまとめとの日程がうまく合いませんで、間に合いそうにないということで、今年度、事務局の御了解を得て、こちらの方は昨年度の資料なのですが、おおむね傾向は同じだということが確認できましたので、こちらの方で少し通常の小学校の実態について御理解いただけたらと思っております。
 1枚めくっていただきますと、こちらの調査は昨年度の夏、7月7日から8月25日まで全国の小学校の約4%に当たる学校を各都道府県から指定していただきまして、そちらの方に調査の依頼をしました。その4%に当たる小学校は、この年ですと845校、回答率が99.5%というところです。今回の資料はたくさんありますが、今の教職員の確保及び専門性の向上についてに関わるところのみ時間の関係でお話しさせていただきます。
 もう1枚ちょっとめくっていただきますと、「発達障害のある児童に対する指導で困っていることはどのような内容がありますか」という、このようなことを全国の調査をしたところです。現状としては、やはり授業に参加できない、学習についていけない、というのが例年トップになっておりまして、こちらは今年度もその傾向が引き継がれております。また、2番目に友達とのトラブルが絶えない、それから3番目に注意しても聞かない、指示が通らない、こういったことについて困っているという、そのような訴えのあるものが上位を占めている、そして、その傾向は4年間変わらないというところです。
 その右側のページを見ていただきますと、そのような子どもに具体的にどのような教育的支援を行っていますかという質問がございます。こちらは、学級担任の個別的な配慮がもう圧倒的に多い。このグラフを御覧いただいても圧倒的に多い。そして、その次に、介助員、指導補助員、また、取り出し指導の時間をとるなどという対応になりますが、現状では通常の学級では学級担任の個別的な配慮というものがやはり対応の一番のトップに挙げられているということです。
 それから、実際、その後、ちょっと2枚めくっていただきまして、恐れ入ります、4の通常の学級に在籍する発達障害のある児童への教育を推進する上での困難点について、一番困難を感じていることは何ですかという質問をしております。ここのところも、やはり一番困難に感じていることは指導上の困難、その次に指導体制の困難となって、この二つが圧倒的に多いです。ただ、経年の傾向を見ますと、指導体制の困難は少しずつ減ってきております。少しずつ指導体制はとられてきているのかなということが考察されますが、指導上の困難は増えている。今年度もさらに増えているのが現状です。
 そして、右側のページを御覧ください。
 困難を解決するための対応ということで、どのようなことが挙げられるかというと、やはりトップには指導できる教員の増設置というところになっております。やはり指導できる教員をまず求めている、人をまず求めているというところがお分かりいただけるかと思います。そして、その次に、指導補助員、介助員、学生支援員等の配置、そして、3番目には1学級の人数を減らすことというようなことが出ております。
 このようなデータを御覧いただきますと、これは日本全国の4%の学校に当たりますけれども、この小学校でやはり現状、発達障害を含めた通常の学級での支援を必要とする子どもについて、やはり担任が対応することがほとんどであり、そこに対して指導できる教員を増設置していただくことが求められているということになります。
 また、ちょっと1枚戻っていただきまして、取り出し指導というのを行っているところがありますので、取り出し指導を行っている指導者の人数等についての設問がございます。こちらの方、指導者の人数としては、加配教員というのが一番多くなっています。これでちょっと説明をさせていただきたいのは、ここで言う加配教員とは、特別支援教育のための加配教員ではありません。これは例えば少人数指導だとか生活指導のための加配教員なのです。ですから、本来、目的が違う加配教員を校内でいろいろやりくりをして、そして、その特別支援教育の特に取り出し指導の指導者として充てているという現状が伺えます。ですから、やはり今後、特別支援教室構想のお話も出てくるかと思いますが、指導者というものをどうしていくかということについても、是非こうしたデータで御覧いただければと思います。
 特に、ちょっと今のグラフをよく見ていただきますと、指導者の中に教頭、それから校長というのが入っております。実際に個別の指導に当たるときに、校内の教員のやりくりだけでは足りなくて、実際に教頭や校長がその対応に当たっていることがここのデータにもあらわれているところです。
 このようなデータを少しちょっと遅ればせながらお示しさせていただきました。通常の小学校がやはり特別支援教育の一つの舞台となっていくわけですけれども、その中でやはりまずは教員の確保ということが大変求められているし、その時点で一番困難なことが挙げられているということを御理解いただけたらと思います。
 以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 全連小の調査に基づいて現状の小学校での具体的な特別支援教育の現状の説明をいただいたのですが、太田委員、これについて、先ほど来小学校に対する要望がありますが、そのことで何かあったら、一言お願いします。

【太田委員】 本当に私も、今、小学校の校長を自分自身がやっておりまして、例えば児童理解のためにじっくりと時間をとってとか、それから、やはりそういう専門性を駆使してとか、あるいは校内体制をきちんと整えてということを、私自身も随分考えつつやっておりますが、例えば我が学校にも、発達障害の子どもが複数いる学級があります。やはり複数といっても3人、4人。そうした子どもたちが一つのことをきっかけに、やはりいろいろなパニックを連発して起こしてきたりしたときには、どんなに力のある担任でもその担任だけでは無理です。また、校内体制をかなりとっても、本当に複数の子どもがパニックを起こし始めると、なかなかつらいところがあります。ですから、やはり特別支援教育のための人材が1人いてくれるとありがたいということを私個人としても思います。
 それから、研修は本当に、今、品川区内でもよくやっておりますし、校内でも校内委員会の中でも、研修、ケーススタディーもやっています。ですが、本当にやはり集団を統率していくのが担任の役目、そして、子どもたちの命を預かるのも担任の役目。そうすると、様々なトラブルでけがをしたりしないか、そういうことも含めてやはり人的な支援をいただけることが一番求められていると思っております。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 それでは、久松委員、お願いいたします。

【久松委員】 全日本ろうあ連盟の久松です。発言の機会をいただき、感謝申し上げます。
 前回の会議の場で、私は養成期間を6年間という提案をいたしました。委員長のほか、もっと具体的な意見をということを求められましたので、それにつきまして、今回、改めまして具体的な提案をまとめさせていただきました。資料4-5を御覧ください。
 今回、まず意見をまとめるに当たりまして、全国の大学の先生4人の方々の御意見をお伺いし、私の責任でまとめたものです。
 まず一つ、教員養成6年間ということなのですが、まず基礎として基礎コースといいますか、これが4年間。今までの特別支援学校教員の免許の制度といいますのは、昔のろう、盲、盲ろう、そして養護、この三つの分野にまとめておりました。そういう意味では、あらゆる障害を超えた様々な分野において勉強が必要だということを、非常にこれは評価できますが、ただ、逆に、このやり方に変わった後は、広く浅くという内容になってしまったのではないか。今までのようにろう教育を特化し、また、盲教育に特化し、また養護教育というような形で深く専門的なものを学ぶというやり方ができない。つまり、広く浅くという内容になってしまい、このまま特別支援学校に転任しても、十分な指導体制を作ることができないということも反省として考えた場合に、あと2年間、基礎の4年間を学んだ後、残り2年間は専門的な選択ができる仕組みを作ったらどうかという意見です。
 ただ、現状といたしまして、全国の教員養成系大学では、五つの障害領域すべてを整えた教員の数は、これは非常に不足している状況です。ですから、ろう教育の専門の先生もいない。また、盲教育の専門の先生もいない。ましてや盲ろうに特化した専門の先生もいないというような、非常に大きい課題がありますので、それぞれの専門に特化した先生を最低7名準備したらどうか。そうすると、6年間学ぶことになり、学生の負担もかなり大きくなると思えますので、専門コース選択に当たっては、この2年間は何らかの形で学費の補助をするシステムを作る必要があると思っています。
 そして、聴覚障害、ろうという選択をした場合には、手話に対する科目も必須科目として、教える人は今は大学の先生が担当するのは、ほとんど不可能に近いので、手話技術講師という名前、これは仮称なのですが、そういうものを別途枠という形で採用するという検討も必要ではないかと思っています。さらに、点字、指点字、また触手話という、そういったコミュニケーション方法も同じような形の仕組みが必要ではないか。
 また、学生の低頻度、例えば盲、ろう、盲ろうというような特別支援学校での実習の選択に当たっては、皆さんも既に御存じだと思いますが、ろう学校、盲学校は県の中に1カ所しかないという、そういう現状にありますので、広域的にほかの盲学校、あるいはほかの県のろう学校、そういうところで広域的な実習をするシステムを作る必要があるのではないか。また時間的・経済的な負担も大きくなることから、その負担を軽減するような措置も検討することが必要ではないかという提案です。
 次に、2番目になります。教員免許状の見直しについてですが、先ほどの説明の繰り返しになりますが、基本、そして特別専攻とし、4年間基礎を学び、次に専門の選択ができるような仕組みということになります。その場合には、もしろう教育を選択した場合、その後、実際の採用に当たっては、ほかの盲とか、知的障害、発達障害などを学びたいといった場合には、その研修制度を作る。つまり、複数の免許状の資格を取得できるようなシステムを作るということも意見として出させていただきました。
 また、コミュニケーション方法についてですが、そう簡単に技術が身に付くことは非常に難しいことがあります。今の大学の先生のレベルではその評価は非常に難しいと思います。ですから、コミュニケーション手段についての選択の場合には、その技術に対する評価システムをまた別途検討する必要があるのではないかと、これを課題として考えております。
 ただし、6年間学んでも、卒業した後、働く場がないという話にもなりますが、6年間学ぶので、この学部を選択する学生を集められないということもあります。そういうことを考えまして、特別支援学校、または特別支援学級の選択の枠、または採用数を明確に提示し、採用への働きかけを促していく必要があると思います。または、力のある学生を推薦する制度、これも盛り込む必要があるのではないかと思っています。
 そして、2番目ですが、やはり数が非常に少ないという絶対数の問題があります。各都道府県の単位を超えた広域的な採用制度というものも新たに仕組みとして設ける必要があるのではないか。
 次のページになります。
 また、各都道府県におきまして、人事交流が可能な制度も作っていく必要があるのではないか。また、その他研修の方法につきましても、言語というもの、及びコミュニケーション手段の習得のための研修制度も新たに創設する必要がある。
 2番目は、学校長の指導力・経営力による特別支援学校の人事交流、また研修参加を働きかける。
 3番目は、補装具等についての技術、これは言語指導等についての生活技術的な部分についての、あるいはまた心理等々ありますけれども、そういうものを身につけた仕組みも作る必要がある。
 4番目になりますが、言語コミュニケーションの基礎として、研修等、教員また講師についても、障害を持つ当事者が積極的に生かされる、活用されるというシステムを作る。先ほど、清原委員からのお話もありましたけれども、障害を持つ学生が最近、非常に増えているという現状もあります。障害を持つ学生に対する授業、また、実習における合理的な配慮を進めていく、また、障害を持つ教員であるからこそ、この養成セミナーの実施に当たることができ、また、卒業後に特別支援学校に定員配置をするというような様々なことを提案したいと思っております。
 あと、澤先生から特別に論文もいただきましたので、それを参考に添付させていただきました。御一読いただければ幸いです。改めてお手すきのときにお読みいただきたいと思います。
 具体的な意見として今日は提案させていただきましたので、御検討いただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
 以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 特に現在の特別支援学校の教員養成制度と、あとは採用に関することについて御意見を頂戴したのですが、現在、この委員会とは全く別に、「教員の資質向上特別部会」というところで教員の養成に関する、教員免許制度も含めた研修の在り方なども含めて検討していただいているところですので、こういった意見があるということをどこかで反映していくことも必要だとは思っておりますが、この件については、もし皆さんで御意見があれば頂戴することとして、このことについてはまた少し中身をこの委員会でも御議論していただくことにさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
 それでは、山岡委員、そして石川委員で、1回、そこで休憩をとりたいと思います。

【山岡委員】 それでは、日本発達障害ネットワークの山岡です。
 まず、二つ、今日は意見を持ってきたのですけれども、一つ目の教職員の確保及び専門性の向上の論点についてのところで、特別支援教育支援員について取り組んでいるところをちょっと申し上げますが、ちょっとその前に1点、太田委員から出てきた全連小でやられた学校経営上の課題ということで報告をまとめていただいて、なるほどと思うのですけれども、当事者団体から見ると、これは一言言わなければいけないと思っています。
 要するに、学校経営上、発達障害のある児童がいて困っていることといいまして、教員の立場から困っていることを中心にこれは述べられています。特別支援教育の目指すところは、教員のための対策ではなくて子どもたちのための対策でなければいけない。だから、教員の方が困っていることを解決していくことが、子どもたちの問題を解決することにつながることも多いのですけれども、ここで課題として挙げられているところでは、お子さんが持っている課題は、大きく分けると学習面の困難と行動面の困難だと思うのですけれども、教員が困るのは行動面の困難なのです。ですから、先ほど挙げられている困難を見ていると、教員の方が困ることなので、ほとんどが行動面で何か問題が起きているケースが挙がっています。でも、静かに黙って学習面で困難を抱えているお子さんのことは浮上してこないのです。
 ですから、学校経営の立場でおっしゃっていることはすごく分かるし、すごくこれは納得性のある資料だと思うのですけれども、教員が困っていることも視野に置きながら、子どもたちが困っている困難とか障害に対してどうしていくかというのをこの場では考えるのを中心にさせていただければと思っています。
 二つ目ですけれども、教職員の確保及び専門性のところで、前回も特別支援教育支援員の資質とかというところについてちょっと意見を述べさせていただき、実はそのときさらっと申し上げたのですけれども再度お話させていただきます。お手元の資料4-6を御覧ください。4-6は特別支援教室のことについて説明しているのですが、後ろから2枚目のところに「民間組織・支援技術を活用した特別支援教育研究事業」というものが出ています。これは実はNPO法人全国LD親の会で平成21年から23年まで特別支援教育支援員の養成の講座や、養成をどうしたらいいかということについて、文部科学省からの委託事業として研究しているものです。
 特別支援教育支援員は、この前も申し上げましたけれども、約3万人が地方財政措置で配置されていますけれども、保護者から見ますと、その支援員の方の資質とか、研修については、ばらつきがあり、うまく活用されていないのではないかという問題点があります。教育委員会にもアンケートをとったのですけれども、その支援員を採用されるときに、約六、七割の自治体では研修をやっています。ただ、その研修の内容は一、二時間から五、六時間が大半でして、あまり体系だった内容が含まれていない。支援員をやるには、やはりその役割だとか基本的な知識、それから守秘義務とか、個人情報とかの倫理、あるいは対応の基本、障害の理解の基本とか、ある程度のものを学んでいただかないといけないと思うのですけれども、それらが用意されていないケースがあるということです。全国LD親の会で、特別支援教育支援員養成のカリキュラムの標準化や、研修のモデル化等ができないかということで取り組んでおりまして、今年が3年目です。
 裏の方のページを見ていただきますと、3年次の計画というところがありますけれども、3年間をやってまいりまして、こんなものがいいのではないかというカリキュラムの体系化したものを作ってあります。それから、シラバスです。カリキュラムごとにどんな項目が必要で、その概要や到達点というようなことを示すようなものも作ってございます。
 それから、その講座の事例として、実は渋谷区の教育委員会に御協力いただきながら講座を試行実施しています。今月、5日間の金・土・日、土・日という日程で実施している最中なのですけれども、支援員といって、学習面の支援をしない方については18科目24時間です。それから、学習支援員といって、教科まで指導する方については21科目30時間というカリキュラムで実施しています。
 それから、最後のページを見ていただきますと、私どもで作ったシラバス一覧があります。これは実は平成19年6月に特別支援教育支援員を活用するためにということで、今も文部科学省のホームページに載っている資料があるんですけれども、そこで示された研修の例がありまして、大きくここで1から6番のところまでは、その例で示されている大項目に基づいて、全国LD親の会でいろいろな障害者団体や校長会の先生方にも御意見を聞きながら科目等を精査してきて、体系化を図ってきたものです。
 これらについて、先ほど言いましたように試行的に講座をやってみた訳ですが、もしできれば、来年度は、できればテキストを作成したいと思っています。
 この事業は親の会がやっておりまして、なかなか限度があるのですけれども、実はその支援員の講座を受けて実際に現場に入っていただいた支援員の方の校長先生にアンケートをとったのですけれども、非常に高い評価を受けております。高い評価というのは、5段階の5、4がついたとかそういうことだけではなくて、コメントを読むと非常に高い評価だったなと感じるような内容でした。
 特別支援教育支援員につきましては、3万人もの方を使っているわけですので、市町村が実施主体なので難しいところがあるかもしれませんけれども、国として何らかの研修体系を示していただく等して、特別支援教育支援員全体の質を上げるようなことをしていただければと思っています。
 一旦終わります。以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 最後のところの、特に特別支援教育支援員の研修の実例として、現在行っていらっしゃるシラバスの案などが出ました。これは、先ほど冒頭私が申し上げたことと関係するのですけれども、いろいろ、こうした具体的な中身を、今回どこまで盛り込むかが大きなポイントになりそうな気がしますので、是非御覧いただいて、また御意見を頂戴できればと思います。ありがとうございました。
 石川委員、よろしくお願いいたします。

【石川委員長代理】 石川です。
 今、私たちは、障害を持った子どもたちの教育的な利益に資するような教員の確保と専門性の向上ということで話し合っているわけですが、それから少しはみ出してしまう話になるかもしれません。
 というのは、何について言いたいかというと、障害を持っている教員の配置についてなのですが、このテーマを取り出して一つの柱として議論するのはなかなか難しいかなと思いまして、このテーマがちょうど専門性の確保の中でどのように位置付けられているかということを、もう1回、ここで確認することを通して、これについてちょっと問題提起をしてみたいと思いました。
 参考資料の2に障害者制度改革推進の基本的な方向性についての閣議決定があって、24年内を目途に専門性向上についての基本的な方向性の結論を得るとなっていまして、その中に、手話に通じたろう者を含む教員、点字に精通した視覚障害者を含む教員の確保、発達障害・知的障害等の専門性のある教員の確保、といったような書きぶりというか、文言になっているわけですけれども、つまり、障害者の雇用促進、働く権利の保障、それに対する合理的配慮といった一般的な議論のほかには、教育現場では、点字の技能であるとか手話の技術であるとかといったようなことが障害を持った教員の専門性というか存在価値として積極的に評価されているに過ぎないようにも読めてしまうわけです。
 そうなのだろうか。つまり、手話に通じていないろうの教員や点字のできない視覚障害の教員であってもいいはずだ。いいはずなのですよ。そういうことが問題なのではないということが、やはりインクルーシブな学びの場として地域の学校を作りかえていこうというときの基本的な考え方だと思います。
 なので、そういうことをどこかでこの委員会としては何か書けるといいという感じがしていて、どういうことが言いたいかというと、もちろん教員は、教育力、それから指導力、包容力、いろいろな力を持っていなければいけない。だけれども、完全な人間であるということは不可能だし、そうである必要もないというか、そういうものだと思うのです。
 最低限、ここは押さえておいてもらわなければ困るということはもちろん、つまり子どもの利益のためにそれは仕事をするというのが教員ですから、それはそうなんですけれども、だからといってオールマイティーであったり、完全であるということは、求めるべきでないし、また、求められない。それでいいのではないかという感じがするわけです。
 それで、つまり、障害のある教員というのは、障害のある子どもたちにとってロールモデルになるといったようなことももちろんあるけれども、ただ、障害のない子どもたちから見たときに、障害のある教員はどういう存在なのかということですけれども、助ける・助けられる、教える・教えられる、見守る・見守られるというような関係が、障害のある・なしとかということとは基本的に独立して無関係である。あるいは、その状況、状況で、大人と子どもの関係も、関係が入れかわったりすることもある。自分が助ける側に回ったり、「先生、そこは違うよ」と教えられる側に回ったりとか、いろいろなそういう関係が相対化したり、双方的になったりする場所がインクルーシブな場所なのではないか。そのことをいわば否応なくというか、表現してしまうというか、表現できる存在として、つまり、いつも何でもできる、何でも知っているというふりができない存在としてあり、弱い存在でもある、だけれども、子どもたちに対していろんなことを教えたり、見守ったり、話を聞いたりできる存在としての障害を持った教員のアドバンテージみたいなことを何か言えたらいいのではないかと思います。
 一般的な就労支援という枠組みと、それから、特殊な技能を持った存在としての存在価値というだけで位置付けるのは弱いのではないかと思います。というのが私の意見です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 とても大事な視点を指摘していただいた気がします。いわゆる私たちは、一言でロールモデルみたいなことを言ってきたわけですが、そういったことではなくて、共生社会を実現するために必要な教員、社会の中に障害のある教員を迎える意味をきちっと位置付けてということがまずあるということだと思います。これについて、また御意見があれば承りたいと思います。
 前段の部分、また後でも御意見があれば加えていただいていいのですが、ここで一旦10分ほど休憩をしたいと思います。後ろの時計で50分まで休憩にしたいと思います。よろしいでしょうか。
 それでは、休憩に入ります。

( 休憩 )

【宮﨑委員長】 それでは、再開いたします。
 「教職員の確保及び専門性の向上について」は、一旦終わりますが、また御意見があれば、頂戴したいと思います。
 とりあえず次の議題に進みたいと思います。
 就学先決定の際の専門家の確保、意見が一致しない場合の調整の仕組みについて、これから論議をしたいと思います。
 それでは、まず事務局より御説明をお願いいたします。

【横井特別支援教育企画官】 特別支援教育企画官の横井です。
 まず、資料2-1を御覧ください。
 1としまして、就学先の決定の際の専門家の確保について整理しております。現在、就学先を決定する際に専門家の意見を聞くこととしておりまして、専門家としては以下の専門家が考えられるということで整理しております。
 教育分野では、大学教員、教育センター職員、教員、特別支援学校の教員等、医療の分野では医師等、心理の分野では臨床心理士、スクールカウンセラー等、その他の分野では保健師、保育士、児童相談所職員、児童福祉施設職員等福祉関係者等が挙げられるかと思います。
 資料2-2を御覧ください。
 資料2-2は、第2回の特別委員会で各県からのヒアリングを行った際の資料を再整理したものです。8月の第11回のときにも一度提出した資料ですが、1ページをおめくりいただいて2ページ目の岩手県教育委員会の資料を見ていただきますと、2の「就学指導の現状」として、市町村の就学指導体制、(1)の3としまして、主な構成委員として、教育関係者6割、医療関係者1割、その他、市町村保健福祉担当職員、相談機関職員等としております。
 また、3ページ目、千葉県教育委員会の資料では、1の「就学相談体制について」の四つ目の丸のところですが、市町村の就学指導委員会の委員は、教育関係者が66%、医療関係者が16.7%、福祉関係者が10.7%、心理関係者が2.9%となっていると。それで、六つ目の丸のところですが、課題としては発達障害分野の医師や心理関係者を確保したいが、人材を地域で探すことは困難であるといった課題が挙げられているところです。
 また、昨年12月におまとめいただいた論点整理におきましても、この専門家の確保のところでは、自治体によっては、専門家の専門性が十分でない、あるいは単独で専門家を確保することは困難といった課題もあるという御指摘をいただいておりますが、そこで例えば専門家の確保をほかの自治体と共同で実施することや、都道府県教育委員会からの支援を受けることも考えられると御整理いただいているところです。
 また、同じく論点整理におきまして、教育においては、言葉・文字が果たすべき役割が大きいとの指摘もあることから、専門家に言語発達に知見を有する者を加えることについても検討する必要があるという御整理をいただいたところです。本件、専門家の確保について御意見を賜ればと思っております。
 資料2-1にお戻りいただけますでしょうか。
 資料2-1の2「意見が一致しない場合の仕組みについて」、これについても、8月の第10回の特別委員会で御議論いただきました。特にこの(1)の部分を資料に出して御議論いただいたわけですが、現在、総務大臣及び内閣府特命担当大臣(行政刷新)を共同座長とする行政救済制度検討チームにより行政不服申し立て制度の見直しが行われている。その中心は、審理官制度の創設等により公平さにも配慮した簡易迅速な手続のもとで柔軟かつ実効性のある権利・権益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することとなっております。
 これが意見の一致しない場合の仕組みとして活用いただけるかという御議論も行っていただいたところですが、その際に、その前段階として何かできないかというような御意見をいただいたと承知しております。
 前段階として考えられるものを紹介させていただきますが、まず(2)ですが、資料2-3を御覧ください。
 資料2-3ですが、「都道府県が域内の市町村の行う就学指導に対しての協力・援助の状況」ですけれども、こちらにつきましては、すべての都道府県教育委員会が何らかの指導・援助を行っているという状況です。その中で、都道府県の就学指導委員会も関与した形で行っているのは36都道府県あるということです。
 資料2-2をもう一度御覧いただきますと、資料2-2の1ページの中ほど、やや下のところから始まっております「2 都道府県教育委員会の取り組み」のところの(2)「関連した取り組み例」にありますように、岩手県では保護者の意見との相違がかなり大きいケースにおいては、所管する教育事務所や県の教育委員会の担当課が相談に応じる場合もある、としております。それから、岩手県の下の千葉県のところですが、市町村の教育委員会から通知された県立特別支援学校への就学予定者について調査・審議を行い、その結果をもとに県教委が就学先を決定している、としております。
 その下の長野県のところでは、長野県教育委員会においては保護者の意向との相違がある場合の調整方法として、県が4教育事務所に配置している特別支援教育推進員が市町村からの要請により支援会議に参加し、県教育委員会と連絡をとりながら調整を行う、としております。
 また、一番下の大阪府教育委員会においても、児童生徒の状況等によって市町村立小・中学校と府立支援学校間での学籍異動の必要が生じた場合などの調整を行うとしているところです。
 資料2-1に戻っていただきまして、(3)のところですが、幾つかの都道府県、市町村においては、保護者等からの要望等に適切に応えるための外部の専門家からなるチームを学校問題解決支援チーム等として設置を行っておりまして、今、これが就学指導に使われているということではないのですが、これを活用することも考えられるかと思い、情報提供いたします。
 資料2-4、冊子の形になっておりますが、文部科学省の方で昨年8月に取りまとめたものですが、特に「保護者や地域等からの要望等に関する教育委員会における取り組み」の3ページを御覧いただきますと、「専門家チーム設置事例」がございます。その中で、表になっておりますが、例えば表の二つ目の東京都の設置事例で、「学校問題解決サポートセンター」というものを、主な構成メンバーとしては弁護士、精神科医、臨床心理士、保護者代表等々という形でチームを組んでおり、教育委員会、学校並びに保護者等からの相談を受け付けて、必要に応じて専門家の助言をもとに公平・中立的な立場で対応する。
 それから、その二つ下の石川県の「学校問題解決支援チーム」におきましても、学校に対する保護者・地域住民からの要望等に関して相談を受けるということで、主な構成メンバーとしては、弁護士、精神科医師、臨床心理士、校長OBといった形で行われております。必ずしも保護者からの相談に応じるところばかりではなく、その学校を支援するために作られている学校問題解決支援チームもございますが、幾つかの都道府県においては保護者からの相談等を受け付けるというような形になっておりますので、参考になればと思いまして情報を提供いたしました。
 以上で説明を終わります。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 それでは、資料2-1に基づいて自由討議に入りたいと思います。御意見がございましたら、お願いいたします。
 久松委員、お願いいたします。

【久松委員】 全日本ろうあ連盟の久松です。
 今回、昨日資料を送っていただいて読んで、初めて拝見した部分もあるのですが、意見が一致しない場合の対応処理について、今回の資料2-4、教育委員会の基本取り組みの中で、「苦情・要求」というようなレベルに組み込まれるというような見方でいいのかどうか、ちょっと疑問に感じている部分があります。例えば北海道教育委員会の場合には、「保護者等との良好な関係づくりのための事例集」、これはいいテーマだと思いますが、「苦情等対応マニュアル」の中に入れ込むのはちょっと違和感があります。発達障害の子どもの行動することに対して「問題」という言葉を使って言うのは、ちょっと抵抗を感じる部分があります。
 親として考えた場合、切実な声というか気持ちもあると思います。ですから、もっと丁寧な対応をするべきだと考えておりますので、言葉の使い方は注意が必要ではないかと意見を提案したいと思います。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 私、久松委員がおっしゃったことは全く同感ですが、先ほど事務局からありましたように、この資料2-4のこの取り組みは、先ほど山岡委員がおっしゃったような意見とちょっと似ているのですけれども、「学校が保護者の要望に応えるためのマニュアル」という視点がこれは強いです。つまり、学校が保護者対応をどうすればいいかという視点で書かれている、あるいは、チームを組んで学校を支援するサポートチームのようなものの資料です。ですから、これが即そのまま就学相談の意見が一致しない場合の調整の仕組みというのとはずれがあると私も思っています。
 ただ、全く見方を変えると、「保護者の相談」という視点からこの仕組みを作り変えるというか、検討するという視点でこういうものを活用していくことができるのではないかということで事務局は出していただいたと理解したいと思います。
 その点で、若干、この資料4の読み方を少し変えていただくことをお願いしたいのですが、1、2で見ると「苦情等対応マニュアル作成事例」と書いてあります。ですから、学校に今いろいろな課題があって、学校が保護者からの要望でどんな対応をしたらいいだろうという、そのような中身にちょっと見えますので、ひっくり返して保護者が具体的にこの就学先で悩んだり課題になったときに、具体的に相談ができる仕組みをどう作るかという視点でお考えいただきたい。
 その点で、3ページ目の東京都の「学校問題解決サポートセンター」というのは、正にこれ、「並びに」と書いてありますが、保護者からの相談を受け付けて、具体的に必要に応じて専門家の助言を受けて、公正・中立な立場でサポートする仕組み、こういう読みかえをして、対応する仕組みをどう作るかという、日本版の新しい仕組みをどう作るかという視点で御覧いただきたいということです。そういう点では東京も、今、横井特別支援教育企画官からありました石川県などもそういうことだと思います。
 これは、別の仕組みのものがないかを探してもらったのですが、とりあえず全国的に取り組み始めた事例となっていますので、これを別に改組するとか、あるいはこの参考にして仕組みを作り変えるというようなことなどもあるのかもしれないという程度で出してございますので、そこはまたしんしゃくしていただいて御検討いただければと思います。
 久松委員がおっしゃったことは全くそのとおりだと思いますので、私からも少し補足をいたしました。
 それでは、御意見を頂戴できればと思います。お願いいたします。
 どうぞ、中村委員、お願いします。

【中村委員】 NPO法人若駒ライフサポートから参りました中村です。
 この題目に少しそれてしまうかどうか不安を感じつつ、今の御意見があったので申し上げたいと思いますが、正直、この「就学先の決定における専門家の確保」という言葉自体、正直、私は少々違和感を感じています。
 本来、これからの特別支援教育の在り方の中では、就学先の決定というよりは、おのおのの個別の支援の必要性を明確にした上で教育をどう受けていくかという形で考えなければならないと私は思っています。
 その際に、先ほどお話があったように、各自治体で共有して専門家の方々を確保するという発想であったとしたら、子どもをふだんから全く知らないような方々に子どもの見立てをしてもらうことに保護者は違和感を感じないだろうかということを私は強く感じます。
 ですから、今、一つの話題としてこの話題になってしまうのは致し方ないということは十分承知しておりますが、是非議論の中ではやはり支援の形を、どうその方にとって必要な支援を明確にしていくかということを忘れずに話をしていきたいと思います。そうなると、専門家の確保は、決して就学先決定の際の専門家の確保ではなくて、その子どもに必要な早期療育から関わる専門家の確保という視点におのずから変わってくるのではないかと私は感じました。
 以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 ほか御意見は。
 大南委員、お願いします。

【大南委員】 全国特別支援教育推進連盟の大南です。
 先ほど、資料2-3で、都道府県教育委員会と市町村教育委員会との関わり、あるいは都道府県の就学指導委員会と市町村の就学指導委員会との関わりが図に出されていますけれども、事務局の御説明の中で、市町村によっては専門家の確保が難しいという例もあるというお話でした。
 これは事実、そういうところは何カ所もあると思うのですが、そういうことも前提にしますと、意見が一致しない場合の第1段階としては、都道府県の就学指導委員会が市町村の就学指導委員会に対して支援をするという、これが必要なのではないかと思います。ですから、ここは将来は100%になってほしいという思いがあります。
 そして、都道府県の就学支援委員会が市町村の就学支援委員会に関わっても、なおかつ、調整ができないことが出てくるだろうと思うのですが、その際には、やはり都道府県にそのための調整の委員会なりチームを作って検討する、それが資料4の中に出ている、これは就学指導、就学相談に関わる問題だけではなくて学校の問題全部が含まれていますから、その中でやはり特化する必要があれば、そのチームの中でさらに何人かを選んでいただいて、就学相談・就学支援に関わる問題を解決していくようなシステムを作っておくことが大事だろうと思います。
 ですから、第1段階としては、都道府県の就学指導委員会、就学支援委員会が市町村の就学支援委員会、就学指導委員会と関わっていないということは、いいことなのかどうなのかは別として、関わりが必要ならばやはり関わってほしいと思います。
 以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 ほかにございますでしょうか。
 乙武委員、お願いします。

【乙武委員】 乙武です。
 これは昨年からずっと申し続けていることではあるのですが、就学先決定がなされるに当たって、なぜ保護者の意思が反映されないのか、保護者の意思がないところで決定がされてしまうのかというのは、常々疑問に思っているところです。
 それは、でも、何度も言っても、なかなか覆らないところなので、この2番の意見が一致しない場合にどうするのかというところに託すとして、今日、僕が意見しようと思っているのは1番についてなのですけれども、正に先ほど中村委員がおっしゃったように、その子どものことを全く知らない専門家が話して決めたことに親は納得できるのかというところに僕は本当に同感で、実は僕もこの件に関して取材をしたことがありますけれども、やはりその当該の子どもに一度も会ってもらえないまま決定がなされたというケースが幾つもあって、やはり「そこはすごく納得がいきませんでした」という保護者の声がとても多かったです。
 例えば、これは会ったことがないということは、きっと書類等で判断することになると思いますけれども、僕が感じるのは、同じような障害、同じような状況であっても、例えばその子の性格によっても、例えば通常の学級でやっていくことができそうなのか、やはり萎縮してしまうタイプだからちょっと特別支援学校で最初はスタートした方がいいのではないかとか、いろいろな違いが出てくると思うのです。そのあたりは、本当に本人に会ってみなかったり、もしくは例えば小学校に上がるに当たってだったら、幼稚園や保育園で実際に担当していた先生にお話を聞くなりとしないと分からないのではないかと思っていて、僕はこれは昨年も申し上げたとおり、その子がどんな環境で教育を受けたらそれが一番適切なのかということを判断する上での一番の専門家は、やはり僕は親だと思っていますし、それに次ぐのは、その子を担当していた教員であるのかなと思っています。
 ですから、その第一人者であるべき親であり、その育ちを支えてきた人たちを抜きにして、「専門家」と呼ばれる人たちが、その子に対する専門性は何もないまま何か結論を出してしまうということに強い抵抗を覚えています。
 ですから、この就学指導委員会、就学相談委員会などに保護者が入ったり、また、その育ちを見てきた人が入る──入るというか、僕はその人たちで構成されるのがやはり適切なのではないかと思っております。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 ほかにありますでしょうか。
 木舩委員、お願いします。

【木舩委員】 広島大学の木舩です。
 私、この資料2-1を読むに当たって、ここには書いてございませんけれども、前提を考えながら読んでみました。
 これまでこの特別委員会でずっと議論してきたとき、あるいは、論点整理にもまとめられているように、本人、保護者の意見を大事にして、そして十分な情報提供を行って、それが前提にあって専門家の意見を聞くということだと思っております。今回、就学先決定の際の専門家の確保ということで、これだけを取り出して、今、資料あるいは議論を焦点化しておりますけれども、そういう前提があるということを、前提を前提とするというのも変な話ですけれども、そういう前提のもとで私はこの資料を読んでみたということです。
 それで、その上で、幾つか疑問と申しますか、意見と申しますか、それを申し上げてみたい。
 2の「意見が一致しない場合の仕組み」というときに、これは後で出てきます合理的配慮のワーキンググループの中でもありましたけれども、第三者機関のようなものに相当するものとして考えていいのだろうか。2の(1)、審理官制度というものが、まだ私、イメージが湧いていませんので、そういう疑問がちょっとあります。
 その上で、もし第三者機関ということで考えてみますと、第三者機関とはどんなものなのだろう。素人ではございますけれども、労働関係の場合には、当事者と、雇用者と、何とかが入っての構成とか、そのようなものがございます。そうしますと、この第三者機関に入る人、それは先ほど御提案がありました日常的によく知っている人、それから何ですかね、雇用者側といいますか、それに対応するような人がどこに当たるのかというのはまた難しいことになります。それは専門家とも違うとは思いますけれども、そういった、いろいろな立場の人の中に専門家がいるのではないかと考えてみました。
 次に、では専門家ということを考えてみますと、1番にあります就学先、及び、そしてその子に必要なニーズ、それに対して「合理的配慮」をどう行うか、そういったことを考える、現行で言いますと、就学指導委員会に相当するようなものがございますが、その委員は、この第三者機関あるいは第三者としてこの中に入れるのかどうか。自分が決定したことについて関与して、そして、それがまた意見が一致しない場合の審議に入れるのかどうか、それが難しいところだと思います。
 しかも、その際に、「就学先決定」という言葉を使わせていただきますけれども、1のところで、教育、医療、心理とか、いろいろな人が挙げられております。先ほどから教員の確保・専門性のところで出てきておりますように、人材が不足しております。こちらに入るということと、それから、一致しない場合の仕組みの中に入るということを考えますと、人が確保できるのだろうかというようなことがまた心配になってきております。
 ちょっとまとまりませんけれども、疑問、意見、あるいはそういったふうなことについて申し述べさせていただきました。
 以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 それでは、熊坂委員、お願いいたします。

【熊坂委員】 熊坂です。
 実態としてのお話でお聞きいただきたいと思いますが、私は神奈川県の人口が4万人ちょっとの町の教育長をしております。神奈川県は、恐らく隣の市も同じシステムで動いていますのであれなのですが、都道府県の就学指導委員会に関わるのは、市町村から特別支援学校へ「入級適」と出た以外は、話をもっていきません。基本的には、各市町村が就学指導委員会で答申をいただいて、その後、担当と、それから親御さんとよく協議をして最終的な判断を下すわけですが、本町で考えていますのは、まず保護者に障害の受容がないときに、答申がこうだからといって措置をしてよかったケースはあまり聞きません。そういうことがございますので、本町でも最終的には親御さんの気持ちを一番尊重して決定いたしております。
 小学校へ上がったお子さんは、小学校で何年か過ごすうちに、親御さんが子どもの様子を見て、これでは個別の指導を受けた方がいいなという時点が来たときに、その年の就学指導委員会にかけて再度決定していく、そんなシステムで動いております。やはり、ここに出ている意見が一致しない場合、仕組みを考えるのか、それとも子どものこと、親御さんが障害を受容するかどうか、この辺を大事にしていかないといけないのかなということ。ですから、この「一致しない場合の仕組み」というのも、ちょっと私も違和感を感じたところです。
 感想までということにしますが、以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 どのように整理しましょうか。
 この件に関しては、基本的に就学先決定に関しては、まずは保護者及び本人の意見を大切にするというのはもう基本として私たちは論点整理をしたわけです。そして、それに加えて、具体的な就学先について、今の現状を念頭に置いて就学支援委員会と意見が違ったときにどうしましょうかという具体的な対応の仕組みを検討するということであったと認識しているわけですが、各委員がおっしゃっていることは十分承知しているわけですが、私どもは第三者機関をというような形で、一応、論点整理のときには整理したのですけれども、第三者機関というのが本当にできるのかということはなかなか難しい。だんだん、そういう意味では整理をする中で、専門家もいない中で調整をするのは難しいと気がついてきました。
 いきなり1が第三者機関と言えるかどうかという話があるのですが、現状でそういった場合に現行の法規内で考えると、今検討されている行政不服申し立て制度の中で位置付けて最終的には判断をしてもらうのがいいだろう。しかし、この就学先決定のことがそういったことになじむのかということがあります。
 ですから、具体的に、それでは就学支援委員会と私たちは提案したわけですけれども、そこがどう関与するか。これは、先ほど大南委員がおっしゃっていただいたように、具体的に市町村教育委員会が最終判断をするということ、現状は就学先の決定は法規上そうなっておりますので、そうした場合に、都道府県教育委員会がやっぱり関与してもらう方がいいのではないか。次に、それでも課題が残ったときにどうするかという仕組みを作っておきましょうということです。
 これは、各国とも就学先の決定については、例えばイギリスのことも私どもは学んだわけですし、アメリカなどでもそうですが、こういう件数があり、現実には就学先の決定は行政機関に委ねられているのが実態です。このようなことを念頭に置いたときに、最終の調整の仕組みをこの中で考えていきましょうというのが歯どめです。
 そういったようなことをここで少し御議論していただきたいということでして、現状で確かに例えば東京都、あるいは今、熊坂委員がおっしゃったような神奈川県の実情等、保護者の御意見を尊重してほぼ決定をしているというのが実態です。現実はそうだと思います。
 でも、本当にその子にとって今の状況がそれでいいのだろうかとなった場合の難しい判断を迫られるようなケースは、ゼロではないと思うので、そこに対してこの仕組みはどのように位置付けておけばいいかということだと思います。法律上に位置付くというのはなかなか難しいことでもありますので、対応の仕組みを何らかの形で位置付けておく方がいいのではないかという思いでこれは入れてあるということを御理解いただきたいと思っています。少し私が勇み足になっているかもしれません。そこはお許しください。ということで、少し御検討いただきたいのです。
 非常に難しい問題のような気がします。当初は「調停をする」というような言い方で整理をしていたのですが、そういう専門家が、日本の中で確保できるかというと、これはもうものすごく難しいことになりそうである。そうすると、今ある仕組みの中から整理をして処理をできるところがないかということで事務局に調べてもらったところ今日の資料2-4のようなものが出てきたということです。日本版の調整の在り方を検討していただきたいということです。ですから、委員の方々がおっしゃっていることはよく分かります。
 齋藤委員、それから尾崎委員、お願いします。

【齋藤委員】 前足立区教育長の齋藤です。
 私は、仕組みとしてはあって良いと思いますが、是非その仕組みを使わないようにしていきたいと思っています。
 もう一つ、もっと前の段階からというのも、以前、随分御意見が、出ていたと思いますが、幼稚園、保育園の段階から、問題のあるようなお子さんが、例えば園長先生から、あるいは保護者から出されたときに、そういう支援チームを作っておいて、そこの園へ行って見ていただきながら、保護者が受容できるような、そういう相談機能を高めていくことが前提にあったときに、初めてこれが仕組みとしてあっても良いと思っています。むしろ、これが最初に出てくることによって違和感の方が強くなるのかなと思いますので、少しお話しさせていただきました。

【宮﨑委員長】 ありがとうございます。
 尾崎委員、お願いします。

【尾崎委員】 全国特別支援学校長会の尾崎です。
 先ほど、木舩委員からの御発言がありましたことですが、就学先決定に当たっては、それ以前にいろいろなやりとりが保護者と学校関係者、教育委員会とあった上で決まっていくのだろうと思います。その中に一つは、やっぱり「合理的配慮」も含めた有り様、どうのような学校生活になっていくのかということを共有していく、それから探っていく、どういう方法で教育していくのかということをお互いに話し合っていく、そんなことがなされた上で、それでもなおかつ最終的に決裂した場合というようなことだと思うのですが、その過程を非常に大切にすべきではないかと思います。
 そこで、そのときには、学校関係者、それから保護者の方も当然入っていくわけですし、それプラス専門家の方も入っていく中で話し合いがなされていく。そこの煮詰まった最後の段階でどうするのかというところで、最終的な形としてこういうものがあっても私は良いと思っています。
 ただし、「合理的配慮」についても、児童生徒の一人一人の状況によって、あるいは性格、あるいは成長の度合い、あるいは時期によって、それから親子関係によっても、どういう配慮が必要なのかということについては全然違ってきます。そこをきめ細かく支援をしていくことを前提にやった上での話だと考えたいと思っています。
 もしこの考え方を整理する場合に、一つだけお願いといいますか、就学先決定におけることで、今、話をしているのですが、この考え方は、多分、「合理的配慮」等で意見が一致しない場合の考え方にもある意味では通じるところがあるものですから、そういうことも踏まえて、そういう過程を大切にした延長線上の決定の仕組みだと私は理解したいと思います。

【宮﨑委員長】 木舩委員、お願いします。

【木舩委員】 広島大学の木舩です。
 私は、政令指定都市の教育委員会の就学指導委員長を仰せつかっております。実際に委員として30年以上やってきております。実際にお子さんに会って、そして保護者の方から面談という形でお話を聞く、そして必要であれば心理検査、あるいは医師の診察、そういったことを行う中で、十分情報提供を行い、その就学相談という一連のプロセスの中で合意形成を図っていく、そういうことをずっと丁寧にやってきております。
 30年という長い時間を振り返ってみますと、少しずつですけれども、不一致というようなものは確かに減ってきていると思っております。ですから、齋藤委員、尾崎委員がおっしゃったように、丁寧にやることによって不一致をずっと減らしていく努力は必要だろうと思います。その上での一致しない場合の仕組みということを考えていくということです。齋藤委員がおっしゃったようにこれを使わなくてすむことがベストだろうと思いますけれども、現実的に、今、私自身が関わっている市の就学指導委員会も100%というわけにはまいりません。どこまで努力したとしても、不一致のケースは出てくるだろうと思います。その際に、教育委員会の担当課の指導主事の方が、保護者本人の方と話し合いをしながら、最終的に就学先を合意という形にもっていくという努力を積み重ねていただいております。
 現実的にはどの自治体におきましても、そういった形で御努力いただいているでしょうけれども、そばで見ておりまして、指導主事の方の負担は大変なものですので、是非ともこういう調整機関と申しますか、あるいは調整の仕組みというか、それは必要だろうと思っております。
 以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 石川委員、何かありますか。

【石川委員長代理】 石川です。
 印象なのですけれども、今まで調整ということで暗に想定されていることは、主として親への説得ということで、最初からいわばそこに特化したような形になると、そこで本来の意図とは違ってくる可能性もあると思います。親だけを調整の対象とする形の調整ではなくて、教育委員会は何を心配して難しいと言っているのか、そこに妥当性、客観性があるかを少なくとも同等に扱うことができる調整が大事なのではないかと思うのですが、今までここで事例として出てきているいろいろなケースは、親への対応のための機関というような位置付けがされていて、そこが違和感の一つの源泉になっているような感じもしたので、そこを少し払拭できるようなことが担保されると、調整機関の意味はもう少し積極的に考えられるのではないかという印象を持ちました。
 以上です。

【宮﨑委員長】 では、山岡委員、お願いします。

【山岡委員】 前もちょっと申し上げたかもしれないですけれども、私、本業は金融業でして、金融業においては、裁判以外の紛争解決機関を設置するということで、通常「ADR」と言っているのですけれども、金融業についてはいずれかのADRに加盟することが法律で義務付けられました。実は、保険会社の場合、ADR機関はその業界団体が母体で作っているのですけれども、保険会社側から見ますと、ADR機関はわりと手ごわい機関です。調停委員が審議するのですけれども、恐らく保険会社寄りの調停がでる確率はわりと低いと保険会社側は見ているのです。調停委員は、消費者側の代表の方、弁護士の方、それから保険の関係に詳しい方の3人ぐらいで調停するのですが、外部の方が過半数を占めて公平性を保っています。要するに、ADR機関がイギリスとかアメリカで定着しているのは、一般的に非常に公平な判断がされるということがある程度担保されているということがあると思うのです。
 恐らく先ほど言われた仕組みの中でいきますと、市町村の教育委員会と保護者の側の意見が合わない場合に、県に機関を設置するのはいいと思うのですけれども、恐らく教育委員会の下にもってくると、保護者側からすると、多分、同じ結果になるのだろうということになるので、そのような印象を外から持たれないように外部の委員を入れる等の仕組みが必要です。今、乙武委員がおっしゃったように本人を知らないということもあるかもしれませんけれども、いろいろなケースを公平に見て判断するというのが大切なので、本人を知っている方の意見は聞くということ、丁寧に聞いてあげることが大切なのですけれども、それも全体を見て教育委員会寄りではない意見が出そうだというような外観を持った組織を作る。だから、教育委員会の下ではなくて、知事部局の下とか何でもいいですけれども、ちょっと組織を変えるとか、何らかの工夫をすることが望ましいと思います。

【宮﨑委員長】 ありがとうございます。
 ちょっと時間が押してしまっているのですが、どうぞ。

【太田委員】 鈴ヶ森小学校の校長の太田です。
 私も今、石川委員がおっしゃっていたことと同じことをちょっと感じてきておりました。
 これは私の本当に少ない経験ですけれども、私自身はやはりいろいろな行政の立場のときにも、それから今、校長の立場のときにも、いろいろな障害のある方とその御家族とに接することがありますけれども、必ずしも保護者の方が障害を受容していないということではなくて、やはりこういう教育を受けさせたいという積極的なお考えがあって選択をされる場合がある。また、それをよくよく聞いていくと、逆に私ども学校とか教育委員会でそのお子さんのことをよく知らないために保護者の方の方がよくお子さんのことを知っている部分がたくさんありますので、「ああ、なるほどな」と後で振り返って思うこともある。
 だから、ちょっと今までの議論の中で保護者の障害受容がないとか、何かそういうような方向の表現が多かったところは、私自身も気になりましたし、私の経験からもそうではない事例もたくさん経験してまいりました。それだけ申し上げたかったです。

【宮﨑委員長】 ありがとうございます。
 では、どうぞ清原委員。

【清原委員】 ありがとうございます。三鷹市長の清原です。
 今回、資料2-1を事務局が作られた趣旨を、自治体で行政をしている立場から考えますと、これは正に改正された障害者基本法の第16条を実現するためにはこうした仕組みが必要ではないかという、行政が責任を果たす上での必要性から出されたものと、私も自治体行政の立場にいる者として位置付けます。
 ほとんどの委員の方がおっしゃったとおりでして、こうした仕組みを考える以前に、何よりも子どもと保護者に寄り添った療育や相談というのが就学前に色濃くなされていなければならないし、そうした仕組みというものを充実させるというのが第一義的にこの私たちの取り組みが課せられていることだと思います。
 改正された障害者基本法で、可能な限り障害者である児童及び生徒が障害者でない児童及び生徒と共に教育を受けられるように配慮するということや、可能な限り保護者や障害者である児童及び生徒の意向を尊重しなければならない、と書かれていることを具体的に実現していくための仕組みを検討する中では、どうしても保護者の意向と、それから就学先を決める仕組みの中での不一致があった場合には、山岡委員も事例を別のテーマの中で紹介されましたような、共に生きる地域社会の子どもの問題を考えている、当事者ではない、ちょっと距離のあるところで判断をしていただくような仕組みの可能性については、宮﨑委員長もおっしゃったように大変重要な視点だと私は認識します。
 ただし、そうした組織を作るときに、自治体の規模もやはり念頭に置いていただかなければいけないと思います。例えば三鷹市であれば人口18万人で、しかも東京都に立地しておりますので、ひょっとしたら東京都に依存しなくても三鷹市の中で作れるかもしれません。けれども、私は、やはりそうではなくて、私たちは共に地域で障害のある皆さんと生きていこうという現場なので、あまり何か判断をする組織が、あるいは監視をする組織とか、そういうところがあまり近過ぎても現場は息苦しくなるというのも事実ですので、市町村ではなくて、広域自治体である都道府県の規模にあれば、めったにない案件だと私も信じたいので、たまたまあったときにはそういうところに委ねても、障害がある児童生徒や保護者の意向が反映されるのではないかと思ったりします。
 また、人材についても、木舩委員が心配されたように、数千人の町や村もありますし、そうしたところではなかなかこうした人材、専門家が確保できないということもあります。ですから、理想や理念だけではない、現場の共に生きる立場の者同士がどうしたら子ども本位、保護者本位に最大限可能な限りなれるのかという中で、セーフティーネットとしてこの資料2-1にまとめてくださったようなものについても検討していくことの意義は私も痛感します。
 繰り返しになりますが、皆さんおっしゃったように、こういうこと、不一致の場合がないように、療育や相談の充実の体制こそ強めていければと感じているのは同感です。ありがとうございました。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 まだもう少し検討しなければいけないことがあるなと思いながら聞かせていただきました。
 保護者との就学に関わる、これはその後のことも含めてですが、合意形成を図っていくというそのプロセスがとても大事なので、そのためには意見調整とか調停の仕組みを作っておかなければいけないという、まずはそこが出発です。
 アメリカなどでも障害者教育の改善法などでは、具体的に重層的な仕組みを作っているわけです。この点は少し私も学ばせていただいているのですけれども、現実に日本では、そういった問題の調整、多層的な構築がまだできていないという問題があって、それを最終的な判断のいわゆる不服申し立てに行くまでの間のmediationであるとか、それから、解決のセッションのようなものを作っておかないといけないだろうということがあって整備をしたこと、検討していただいていることなのです。
 ですから、その点も念頭に置きながら、もう少し合意形成のプロセスを大事にする仕組みをどう作っていくかということについて検討をして、最終的にまた皆さんとここで少し論議をさせていただきたいと思います。
 ちょっと時間が超過してすみません、最後に、いわゆる合理的配慮等の環境整備ワーキンググループの審議状況について御報告をお願いしたいと思っております。
 まず、事務局から資料の説明をお願いします。

【横井特別支援教育企画官】 特別支援教育企画官の横井です。
 ワーキンググループの審議状況について報告いたします。
 11月28日に第6回のワーキンググループが行われまして、「合理的配慮」の概念整理、それから障害種を超えた横断的な配慮事項について御審議いただいたところです。本日は、第6回のワーキンググループに事務局から提出しました資料について御紹介いたします。
 まず、資料3-1を御覧ください。これまでのワーキンググループの意見の概要となっております。
 構成としましては、1としまして「『合理的配慮』について」、(1)としまして「合理的配慮の定義」について、それから次に2ページ目の中ほどやや下になりますが、(2)として「合理的配慮の範囲」について、次に3ページ目の下から3行目になりますが、(3)としまして「合理的配慮の内容・実効性」、それから少し飛んで6ページ、中ほどになりますが、中ほどやや下、(4)として「合理的配慮の内容の決定」、それから7ページに参りまして、7ページ中ほど、2の「共通事項について」、その(1)としまして「配慮事項のまとめ方について」、少し飛んで9ページ、中ほどやや下、(2)としまして「各障害種に共通する事項」、次に11ページ、中ほどやや下のところに(3)「『学校教育に求めること』について」、それから13ページ、上から5行目になりますが、(4)「学校における配慮事項について」、それから15ページ、中ほどやや上ですが、3としまして「教職員等の専門性」という形でこれまでの意見の概要をまとめております。
 この資料3-1のうち、前半の御意見等を論点として事務局の形で整理したものが3-2となります。3-2を御覧ください。
 まず、1ページ目ですが、(1)としましてワーキンググループにおける「合理的配慮」の定義について整理しようとしております。
 それから、2ページ目ですが、(2)としまして「合理的配慮の概念」ということで論点を六つほど示して御議論いただいたところです。1としまして、個別の障害のある子どもが必要とする支援についての整理、2としまして、合理的配慮の内容について、3としまして、「均衡を失した」または「過度の」負担について、4としまして、配慮の観点の類型化について、5としまして、個別の合理的配慮の内容の決定について、6としまして、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校の取り扱いについてという形になっております。
 第6回のワーキンググループでは、「合理的配慮」、それから「環境整備」という言葉が出てきますが、その用語についてさらに整理をすべき、といった御意見ですとか、通常学級における合理的配慮と、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校における配慮について、分けて考えるべきではないか、といった御意見ですとか、通常の学級ですべてのことをやるのは難しい、という御意見、それから最低限の水準があるべき、といった御意見ですとか、あとは合理的配慮の決定方法についての御意見、それから先ほども議論されていましたが、設置者・学校と本人・保護者の意見が合理的配慮について一致しない場合に、第三者が入る制度が望ましい、といった御意見ですとか、合理的配慮の否定が差別になることについて言及すべき、といった御意見ですとか、あとは「過度の負担」の考え方についての御意見、それから合理的配慮についても就学先同様、成長に応じて柔軟に見直していくべき、といった御意見をワーキンググループの中でいただいているところです。
 続きまして、資料3-3を御覧ください。
 こちらは、前回、特別委員会で項目を説明したものですが、資料3-1の後半の御審議を踏まえて修正を加えて膨らませたものです。
 まず、1の「学校教育に求めること」の部分につきましては、前回からの変更点、追加部分を中心に説明させていただきたいと思います。
 ここでは、(1)として「教育内容に関すること」、(2)として「環境整備に関すること」としております。(1)の「教育内容」の中では、1について「障害のある子どもと障害のない子どもが」という文言を追加いたしました。それから2につきましては、括弧書きで「(確かな学力の育成を含む)」という文言を追加いたしました。3から6については、前回お示しした資料と特段の変更はございません。
 それから、(2)「環境整備」の中では、2の専門性のある指導体制について括弧書きを「(専門性のある教員の配置)」としていましたが、「(専門性のある教員の活用)」という形に変更しております。教員等の配置につきましては、6として「専門性のある教員、支援員、介助員等の人的配置について配慮がなされること」を追加しております。また、7として、「取り出し指導や学びの場の設定など必要に応じて特別な指導が行われること」を追加しております。さらに8として、「交流及び共同学習が推進されること」を追加しております。それ以外については、特段の変更はございません。
 続きまして2.「学校における配慮事項」については、上記の「学校教育に求めること」の中で求められている教育内容を実施するために必要な配慮、それから、求められている環境整備を踏まえた必要な配慮について整理したものです。今回、説明書きを加えておりますが、障害のあるお子さんはその障害の状態が多様、それから障害をあわせ有する場合、それから障害状態等が変化する場合と、状況によって必要な支援が異なることに留意する必要がある、配慮事項についてはすべての場合を網羅することはできないので、その代表的な配慮の観点と考えるものを示す、また、障害に応じた具体的な配慮の内容を、今回、例示する、としております。
 今回掲載しました例示につきましては、現在、ワーキンググループの委員の先生方に障害種ごとに整理いただいているものうち、ワーキンググループで審議する際にそれぞれの項目はイメージが湧くように便宜的にお示ししたもので、この障害種がないといったところに特に意味はございませんので、便宜的に示したものとお考えいただければと思います。
 2ページ目へ参りまして、「教育内容・方法」のところですが、小見出しを「教育内容」という形でつけております。項目については特に変わっておりません。
 それから、3ページ目、中ほどやや下のところから4から8について「情報保障」という小見出しをつけております。項目について、こちらの方もおおむね変わっていないという状況です。
 それから、5ページ目、下から5行目ですが、9から15については「心理面等での配慮」ということで整理しております。項目については特に変わっておりません。
 それから、8ページ以降、(2)としまして「支援体制」ということで7項目ほど挙げておりますが、こちらについても項目自体は大きくは変わっておりません。
 それから、10ページ、下から8行目ですが、(3)「施設・設備」ということで6項目ほど挙げておりますが、こちらについても項目自体は変わっておりません。
 12ページに参りまして「幼、小、中、高等学校の各段階についての留意事項」のところについては、3点ほど挙げております。
 それから、「その他」のところで、(1)「早期からの教育支援について」、(2)「学校外・放課後における支援」という形で整理しております。
 前回のワーキンググループでは、共通事項の全体の構成に関する御意見ですとか、障害のある子どもが持っているニーズ特性などに着目した指導方法についてもう少し書きぶりを工夫すべき、といった御意見。それぞれの障害種の例示についての御意見。今回、重複障害について例示として取り上げなかったところですが、特徴的なものについて取り上げるべきではないか、といった御意見。「教育内容・方法」の一番最後の15、「共生の理念の涵養」という配慮の観点については、一方的に障害のある子どもを障害のない子どもがサポートするということではなく、障害のある子どもの能力をいかに引き出して一緒にやっていくかというところを重視すべきではないか、といった御意見ですとか、時間的な面での配慮は難しいけれども、評価の面で何らかの評価はできるのではないか、それから、医療的ケアについてもう少し具体的に記述した方がよい、といったような御意見をいただいたところです。
 ワーキンググループの今後のスケジュールとしましては、第6回のワーキンググループにおいて主査であり本特別委員会の委員でもあられる尾崎委員から、次回のワーキンググループで報告案を出したい旨御発言いただいたところです。
 以上で説明を終わります。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 それでは、ワーキンググループの主査をしていただいている尾崎委員より、補足の説明があればお願いします。

【尾崎委員】 今の御説明のとおりで、補足は一つだけです。「合理的配慮」をどう考えていくのかというところの議論をかなりしていますが、資料の3-2にありますように、ワーキンググループは障害者の権利条約に基づいた審議の場であるというところで、そこには原点に戻りながら検討しているということです。
 それから、あと具体的な議論がないと概念論がなかなか出てこないということで、具体的な配慮事項の例示を見ながらまた概念を考えるといったようなやりとりをしながら、今、まとめている最中だということです。それが1点。
 それから2点目は、先ほどもありましたように就学先決定に関わる第三者機関のこと、調整の在り方というようなことがあったと思うんですが、「合理的配慮」においても同じような課題が出てくるわけですから、特別委員会として最終的には一つのまとまりのある案を作らなければいけないということで、そういう意味では、ここにおられる本委員会の先生方にも非常に御協力を今後もいただきたいということです。
 以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 お約束の時間を少し過ぎてしまいました。ワーキンググループにお願いしておりますので、ここでは今までの説明についての御質問、御意見に限らせていただいて、特に資料3-3あたりで何か御質問があれば、お伺いしたいと思います。御意見も結構です。お願いします。
 それでは、先に久松委員。そして中澤委員ということでお願いします。

【久松委員】 全日本ろうあ連盟の久松です。
 じっくり読んで考えている時間がありませんでしたが、まず質問させていただきます。「合理的配慮の概念」という言葉の使い方があります。これは、「合理的配慮」とは何かという意味の説明と理解してよろしいでしょうか。
 それと、いろいろ新しい言葉が出てきますので、理解の整理をしたいとは思うのですが、「障がい者制度改革推進会議」の審議の方法に慣れてはおりますので、ちょっと考え方、受けとめ方の前提が違うところがあると思います。例えば「環境整備」と言ったときに、「合理的配慮をするための環境整備」という言葉の使い方に慣れているので、この「『環境整備』と『個別の合理的配慮』を合わせて『学校における配慮事項等』」というような言葉、新しい言葉として出てきていますが、そのあたりの考え方に対する整理について、今分かる範囲で御説明いただければありがたいです。資料3-2の2ページのことです。
 もう一つ、同じく2ページの5の中で、「学校と保護者、本人の意見が一致しない場合には、第三者機関により、その解決を図ることが望ましい」という考え方が「合理的配慮」の中身に入るのかどうか、ちょっとその辺の意味がつかみにくいのですが、その辺も含めて御説明いただければありがたいと思います。
 以上です。

【宮﨑委員長】 これは事務局でよろしいですか。それではよろしくお願いします。

【横井特別支援教育企画官】 特別支援教育企画官の横井です。
 どこまで御質問に答えられるかは分かりませんが、まず、「概念」という言葉ですが、「合理的配慮」をどの範囲で行うかという整理の中で「概念」という言葉を使わせていただいています。説明になったかどうか分かりませんが、事務局ではそのような形で使わせていただいております。
 それから、「合理的配慮」と「環境整備」の関係につきましては、前回のワーキンググループでも「環境整備」という言葉をこのワーキンググループの冠にもつけておりますけれども、「環境整備」という考え方を事務局は変えたのかという御質問をいただきまして、事務局では基本的には考え方を変えていませんが、その点は次回までの宿題ということで整理させてくださいということで引き取らせていただいておりまして、この件についてはワーキンググループでも、今後、概念整理をきちんとやっていこうという方向性であろうかと思います。
 それから、3の5の第三者機関のところです。事務局の資料は言葉が足りていないところがあるかもしれませんが、「合理的配慮」の内容を決定する際に、設置者、学校、本人、保護者の意見が一致しない場合には第三者機関によりその解決を図ることが望ましいということで、そういう御意見がありましたので、その点について御議論いただいたということで整理したものです。

【宮﨑委員長】 よろしいでしょうか。

【久松委員】 分かりました。次回整理して改めて説明いただけるということだと思いますが、それについて改めて伺いたいと思っております。

【宮﨑委員長】 それでは、中澤委員、お願いいたします。

【中澤委員】 国立特別支援教育総合研究所客員研究員で横浜訓盲学院学院長の中澤です。
 今回のこの「合理的配慮」の事項等の案について項目に分けて整理された中で、重複障害が外れているということの指摘が既にあったと、今、御報告を承りまして、是非、特に視覚障害と聴覚障害とはまた違ったニーズがある部分の盲ろうについて、是非加えていただけたら、「合理的配慮」のワーキンググループでも検討されていましたので、それについて私としてもまた整理したものを提案してみたいと思っております。
 以上です。

【宮﨑委員長】 これは御意見ということでよろしくお願いいたします。

【中澤委員】 そうですね、意見と、次回にどういう形だったらこのフォーマットを崩さずにそういうものがうまく入るか提案したいと思っております。

【宮﨑委員長】 はい。また、ではワーキンググループでも御検討をお願いいたします。
 ほかにございますでしょうか。
 それでは、太田委員と大南委員、お願いします。

【太田委員】 鈴ヶ森小学校の太田です。
 私も何回か欠席をしたりしておりますので、もし先に御議論されていたら申しわけないのですが、私がこの「合理的配慮」について一番心配するのは、「合理的配慮」を議論することは入学後ずっと継続するということです。
 就学先の決定というのは議論を呼びますが、それはその一点なわけです。ですけれども、入学した後にその「合理的配慮」についていろいろ、多分、学校と保護者とでそれが妥当であるかとか、あるいは子どもが成長していくにしたがってその「合理的配慮」の求められるものが違ってきたときのやりとりをしていかなければいけないだろうと思います。
 そういうときのやりとりのシステムというのですか、手続的なもの、すべてそれは在籍している学校の校長と保護者とでやることなのか、あるいは、きちんと本当に設置者が絡んでくださるのであろうかとか、そうしたようなところのこの「合理的配慮」の何か手続、うまく言えませんが、そういうものも少し議論していただけるとありがたいと思います。それでないと、むしろ就学先決定よりもこの「合理的配慮」の対応の方が、学校にとっては息の長い対応になってくるかなと思っております。
 以上です。

【宮﨑委員長】 これもワーキンググループで検討していただくということでお願いいたします。
 大南委員、お願いいたします。

【大南委員】 全国特別支援教育推進連盟の大南です。
 これは、また「概念」ということになるかもしれないのですが、資料3-2の3ページのところに「環境整備」、「通級による指導、特別支援学級、特別支援学校の設置は、『環境整備』として行われるものである」ということは、学校教育法72条、それから81条、施行規則の140条は、そういう限定で読むものなのでしょうか。
 また、「環境整備」という言葉が、資料3-3の(2)の「環境整備」と、資料3-2で使われている「環境整備」と、これは同じレベルなのかどうかということです。3-3の資料では、学校教育に求めることの中が、「教育内容」と「環境整備」に分けられている。そうすると、「環境整備」というのは教育内容ではない。とすると、学校教育法の72条、81条、施行規則の140条は、また「教育内容」も言っているし、「環境整備」に関わる部分もあるのかな、どっちなのだろうかと、ここは、「概念」が資料の3-2と3-3では違っているのではないかと思うのですが、これは私の読み方の間違いというか、浅さでしょうか。今日でなくても結構ですから、お教えいただければと思います。

【宮﨑委員長】 ありがとうございます。
 では、これも少しまた検討していただくということでよろしいでしょうか。
 それでは、とりあえず、とにかく今日は少し御質問の形で各委員から御意見を頂戴いたしましたので、そういったことも踏まえて、特に主査である尾崎委員にはいろいろ御意見を踏まえた報告を取りまとめていただくことになりますが、どうぞよろしくお願いします。
 お約束の時間を15分経過してしまいました。いつも長いと怒られて申しわけありません。仕切りが悪いものですから、申しわけありません。本日の委員会はこれまでとしたいと思います。
 次回以降は、少し昨年の12月に取りまとめた論点整理の修正のようなことの作業に入りたいと思っています。今日は宿題になったところもたくさんありますので、どこまでそういった作業ができるか分かりませんが、とりあえず議論を前に進めていくということで少し準備をさせていただきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、最後に事務局から、事務連絡をお願いいたします。

【前田特別支援教育課課長補佐】 失礼します。次回、第15回の特別委員会ですけれども、また先生方に調整させていただきまして、追って御連絡させていただきます。
 以上です。

【宮﨑委員長】 それでは、大変長時間に及びましたけれども、本日の会議はこれで閉会とさせていただきます。御出席いただきました委員の皆様方には本当にありがとうございました。
 それでは、閉会といたします。

 

── 了 ──

 

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