特別支援教育の在り方に関する特別委員会(第10回) 議事録

1.日時

平成23年5月27日(金曜日)15時00分~17時30分

2.場所

三田共用会議所 講堂

3.議題

  1. 今後の進め方について
  2. 諸外国における特別支援教育の状況について
  3. その他

4.議事録

【宮﨑委員長】 定刻となりましたので、ただいまから第10回中央教育審議会初等中等教育分科会特別支援教育の在り方に関する特別委員会を開催いたします。
 本日は御多用の中、御出席をいただきましてありがとうございます。
 本日の委員の出欠状況ですが、大久保委員、乙武委員、向山委員から御欠席の連絡をいただいております。まだお見えにならない方が何人かいらっしゃいますが、お見えくださると思います。
 なお、本委員会においては、御発言をされる場合には必ず挙手をした上で、お名前を述べてから御発言をいただきますようお願いをいたします。また、通訳の方のために、御発言の際にはゆっくり御発言いただくようお願いを申し上げます。
 まず、議事を開始いたします前に、一言私からお話をさせていただきます。前回、3月10日に本委員会が開催されました。その翌日に東日本大震災が発生し、たくさんの犠牲者が出たり、あるいは避難をされたり、さまざまに御苦労をされていらっしゃる方が現在もいらっしゃるという状況にあります。犠牲者の御遺族に対しまして哀悼の意を表しますとともに、被災された皆様に心からお見舞いを申し上げたいと存じます。ここに本委員会といたしましても、犠牲者の方々の御冥福をお祈りいたしまして、黙祷をささげたいと存じます。皆様、無理のない範囲で御起立をお願い申し上げます。
 それでは、黙祷をいたします。黙祷。

(黙祷)

【宮﨑委員】 黙祷を終わります。ありがとうございました。御着席ください。
 それでは、議事に入ります。本日は、特別委員会の今後の進め方について事務局からの説明及び質疑を行います。その後、諸外国における特別支援教育の状況につきまして、国立特別支援教育総合研究所からヒアリングを行い、引き続いて質疑を行うことを予定しております。
 それでは、まず、配付資料について事務局から説明をお願いいたします。

【横井特別支援教育企画官】 特別支援教育企画官の横井です。まず、配付資料の確認をいたします。資料は議事次第のとおり、資料1から資料7となっております。枝番が付いておりますのは、資料3が1から4まで、資料5が1から2まで、資料6が1から3までとなっております。資料7につきましては、前回、意見募集の結果を提出した際に御質問いただいた回答者の属性について取りまとめたものですので、御参照いただければと思います。また、参考資料としては、1、2の2点用意しております。不足がありましたら随時事務局までお申しつけください。
 さて、特別支援教育をめぐる動きについて、資料1から4まで幾つか紹介いたします。
 まず、資料1を御覧ください。資料1は、今国会に提出されております障害者基本法の一部を改正する法律案の概要です。こちらは、現時点ではまだ衆議院においても参議院においても審議入りしていない状態です。障害者基本法の改正案の中でどのように書かれているかにつきましては、一番最後のページになります、新旧対照表を付けておりますので、こちらを御覧いただければと思います。
 5ページです。こちらは教育という項ですが、第16条になっております。まず第1項は、現行の条文を生かす形で、障害者が十分な教育を受けられるようにするため、可能な限り障害者である児童及び生徒が障害者でない児童及び生徒と共に教育を受けられるよう配慮しつつ、必要な施策を講じなければならないとなっています。その必要な施策の例示としては、教育内容、方法の改善及び充実を図るという構成になっております。
 また、「障害の状態に応じ」を「その特性を踏まえた」に改正いたしますのは、現行条文においても、単に障害の症状及び程度のみならず、障害者が学習する上で、その障害ゆえに実際にどのような困難を有するかということも踏まえるという趣旨が含まれているところではありますが、そのことをより明確化するためということです。
 続きまして、現行の3項を改正案では2項に繰り上げております。第2項では、特別支援学校や特別支援学級において教育を受けている場合に、交流及び共同学習を通じ相互理解を促進するという施策を講ずるとしております。これら1項、2項併せて全体としてインクルーシブ教育システムを規定しております。
 3項につきましては、現行の2項を含ませたような形ですが、ただいま説明しました1項及び2項を実現する上で必要なものとして調査研究、人材確保、施設整備、その他環境整備ということで整理しております。
 続きまして、資料2を御覧ください。資料2は、現在開かれております通常国会において、公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律及び地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部改正が行われております。これは既に公布、施行されております。
 特に学級編制、教職員定数の標準に関する法律につきましては、2ページを御覧いただきますと、既にこの委員会でも説明しておりますが、公立小学校の第1学年の1学級の児童数の国の標準を35人にするというものです。
 それから、加えて3ページの(2)ですが、これまでも特別支援教育関連では、教職員定数の加算の特例といたしまして、通級指導のための教員、それから特別支援学校のセンター的機能を実施するための教員の加算というものがされてきたところですが、このたびの法律改正におきまして、障害のある児童または生徒に対する指導体制の整備を行うことについて、特別の配慮を必要とする事情として政令で定めるものが明記されました。これに基づき政令に定める事情としましては、特別支援学校がセンター的機能の責務を十分に果たすことができるよう、当該学校の人的体制の整備を行うことが特に必要であると認められる学校の数等を考慮して文部科学大臣が定める数を加えるということにしております。
 続きまして、時間の関係で簡単な説明で恐縮ですが、東日本大震災の関係で文部科学省として取り組んでいることを報告いたします。
 まず、資料3-1を御覧ください。被害情報につきましては、毎日文部科学省のホームページ上で発表しているところです。4ページ及び5ページに人的被害、物的被害についてまとめておりますので、また御参照いただければと思っております。
 7ページ以降に文部科学省として地震発生以降、どのような対応をしてきたかという記述をしております。
 そこで、9ページからの(2)関係教育委員会・大学等への要請というところで、9ページの真ん中やや下あたり、○1という数字のついているところですが、3月14日に被災した児童生徒等の学校への受け入れ等について取り組みを促す通知をまず発出しております。
 また、特に特別支援教育の関係につきましては、11ページになりますけれども、11ページの下のほうから数えていただいたほうが早いと思いますので、(3)大学病院と書いてあるところの、項目としてはそこから3つ上がっていただいたところなんですが、5月6日に被災した障害のある子どもに対する状況把握及び支援、それから福祉部局との連携等について、各都道府県教育委員会等宛てに文部科学省の特別支援教育課、それから厚生労働省の障害福祉課の連名で事務連絡を発出しております。事務連絡につきましては、、資料3-3として添付させていただいておりますので、また御参照いただければと思います。
 それから、同じく資料3-1の15ページの上から8行目、項目でいうと3つ目のポツのところですが、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所におきまして、5月11日に教員向けの発達障害のある子どもへの対応を中心としたハンドブックを作成いたしましてホームページに掲載するとともに、各県の教育委員会等に配付しております。ハンドブックは資料3-4として添付しております。
 続きまして、資料3-2を御覧ください。資料3-2は、東日本大震災に対応するために編成されました第1次補正予算の文部科学省分の概要です。
 まず1ページにありますように、被災した学校施設の復旧、各学校段階における就学支援として、特別支援教育就学奨励事業も含めまして、震災により就学が困難になった幼児児童生徒に対する支援、2ページをおめくりいただきますと、メンタルヘルスケア対応といたしまして、スクールカウンセラーの緊急派遣といった対応をしております。
 続きまして、資料4を御覧いただけますでしょうか。資料4に、最近、文部科学省で取りまとめました各種調査の結果も含めまして、特別支援教育の在り方を御検討いただく上で参考としていただきたいデータを取りまとめいたしました。
 まず、資料4の1ページですが、特別支援教育の対象ということで、どのくらいの子どもが特別支援教育の対象になっているかにつきましては、小・中学校の個別の指導の状況まで詳細に把握できてはおりませんけれども、特別支援学校や小・中学校における特別支援学級の在籍者数、小・中学校における通級による指導の対象となっている児童生徒数で概観いただきたいと考えております。
 (1)としまして、特別支援学校における在籍者の推移を示しております。5ページの図1も御参考にしていただければと思います。特別支援学校につきましては、平成20年が11万2,334人、21年が11万7,035人、22年が12万1,815人ということで、ここ数年、年4%程度で伸びてきております。
 (2)特別支援学級の学級数と在籍者数の推移ですが、こちらも5ページの図2も御参考にしていただければと思います。特別支援学級の学級数につきましては、平成20年で4万4学級、21年4万2,067学級、22年4万4,010学級と、こちらは年5%ずつ伸びております。在籍者数は、ざっと見ていただきますと、20年が12万4,166人、21年が13万5,166人、22年が14万5,431人となっておりまして、年7%程度ということで、学級数の伸びよりも在籍者数の伸びのほうが多いという状況です。
 (3)の通級指導の児童生徒数の推移ですが、20年が4万9,685人、21年5万4,021人、22年6万637人と、年8%以上で伸びております。21年から22年にかけましては12%程度伸びました。それぞれの障害ごとに見てみますと、21年から22年につきまして自閉症は13%、学習障害(LD)は40%、注意欠陥多動性障害(ADHD)は44%程度伸びているという状況です。
 (4)は平成22年度の特別支援学校における医療的ケアが必要な幼児児童生徒数です。6ページの図4も御参考いただければと思います。幼、小、中、高等部の合計で7,306人という状況です。
 続きまして、2ページを御覧ください。2としまして、幼稚園、小・中学校、高等学校における特別支援教育の体制整備の状況です。(1)は平成22年に国公私立の幼小中高において各項目がどのくらい実施されているかをパーセンテージで示したものです。7ページの図5も御参考いただければと思います。全体の傾向で申し上げますと、ほぼすべての調査項目で平成21年度を上回っておりまして、全体として体制整備が進んでいる状況が伺えます。小・中学校に比べまして幼稚園、高校が体制整備にやや遅れが見られるという状況です。
 (2)は平成20年度から22年度まで公立の小・中学校の項目別の実施率です。7ページの図6も併せて御参照ください。公立の小・中学校におきましては、校内委員会の設置、特別支援教育コーディネーターの指名といった基礎的な支援体制はほぼ整備されている状況です。個別の教育支援計画の作成、個別の指導計画の作成につきましても着実に取り組みが進んでいる状況です。
 続きまして、3ページを御覧ください。3ページは、就学指導委員会の実施状況等について整理させていただいたものです。(1)は小学校・特別支援学校就学予定者(新第1学年)として市町村就学指導委員会等の調査・審議の対象となった者の数の推移です。8ページの図7も併せて御参照いただければと思います。平成20年度が3万3,022人、21年度3万7,480人、22年度3万7,055人ということになっております。
 (2)は平成22年度の小学校・特別支援学校就学予定者(新第1学年)として平成21年度に市町村就学指導委員会等の調査・審議の対象になった者の就学先等の状況です。8ページの図8も併せて御参考いただければと思います。就学基準に該当したのは8,713人です。これは21年度の9,035人と比べて減少しているという状況です。8,713人のうち特別支援学校に就学した者が5,916人、小学校に就学した者が2,774人となっておりますが、いずれの数値も前年度から減少しているという状況です。
 また、参考までということで、小・中学校にどのくらい認定就学をしているかというのを、少し前の調査になりますが、調査した結果をお示しいたします。平成21年度から調査の見直しを行っているので現在のものと比較できませんが、小・中学校における認定就学制度、平成14年9月から施行されておりまして、制度開始後の平成15年度で小学校1年生から中学校3年生までで合わせまして1,280人、平成20年度になりますと2,561人が認定就学制度の形で小学校、中学校に在籍しているという状況です。
 続きまして、4ページを御覧ください。4として、教員の専門性の向上について整理しております。(1)は特別支援学校教員の免許状保有率を示したものです。9ページの図9も併せて御参考いただければと思います。平成22年度は特別支援学校の教員全体で70.0%になっております。ここ数年は0.5%ずつ改善してきております。他方、新規採用者の保有率は伸びていないという状況にあります。
 (2)は特別支援学級担当教員の特別支援学校教諭免許状保有率です。9ページの図10も併せて御参考ください。平成22年度、小学校33.0%、中学校27.4%で、合計31.3%となっております。ここ数年は、保有率は減少傾向にあるという状況です。
 (3)は特別支援教育に関する教員研修の受講状況です。10ページの図11も併せて御参照ください。国公私立の幼小中高の教員全体のうち58万4,276人、約58%が受講済みという状況です。管理職につきましては6万9,076人、約70%が受講済みという状況になっております。
 以上、特別支援教育の状況について説明しました。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。ただいまの説明で何か御質問ありましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。本委員会の今後の協議の中で、特に今の資料4等の内容については今後の検討の材料になろうかと思っております。ありがとうございました。
 それでは、続きまして、前回第9回特別委員会におきまして、今後の進め方について御議論いただきました。それを受けて石川委員長代理とも御相談し、今回少し先の見通しを持って本特別委員会を進めていきたいと考えているところです。特に、前回何人かの委員の方々から御提案をいただいた合理的配慮等環境整備について専門的に議論を行うワーキンググループを設置したいと考えております。このことについて、皆様にお諮りをしたいと思います。まず、この件につきまして事務局より説明をお願いいたします。

【横井特別支援教育企画官】 特別支援教育企画官の横井です。今ほど宮﨑委員長からお話のありました今後の進め方につきまして、資料5-1、5-2を用いまして事務局より説明させていただきます。
 まず、資料5-1を御覧ください。資料5-1ですが、今年度中を目途に、特別委員会としての一定の考え方をまとめ、親部会である初等中等教育分科会に提出することとすると書いております。そのために行っていただく審議の検討事項といたしましては、前回の委員会で御議論いただいた項目をその下の検討事項の形で示しております。特に今年中を目途に合理的配慮等の環境整備について整理を行っていただくために、その検討のためのワーキンググループを設けて審議を行うこととするとしております。前回の委員会で御指摘いただいた実態調査につきましては、文部科学省で検討していくこととするとしております。
 続きまして、資料5-2を御覧ください。宮﨑委員長からも御提案いただきましたが、ワーキンググループの設置についての案です。1の検討事項としまして、(1)合理的配慮について、障害種別、さらに障害種に共通する事項を検討する。(2)として、その他の環境整備についてとしております。
 2の委員等ですけれども、委員等につきましては、特別委員会の委員長が指名するということにしております。また、ワーキンググループには主査を置いて、委員等の互選により選任する。主査に事故があるときは、ワーキンググループに属する委員等のうちから主査があらかじめ指名する者がその職務を代理するとしております。
 3の設置期間は、1の検討事項に関する審議が終了したときに廃止するものとしております。
 4、その他としまして、庶務を特別支援教育課で処理することとしております。
 以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。それでは、ただいまの事務局の説明について御質問がございましたらお願いいたします。
 まず、資料5-1、今後の進め方について、検討事項が○で5点示してあります。このこと、それからワーキンググループの設置についての案、資料5-2についてよろしくお願いいたします。山岡委員お願いします。

【山岡委員】 日本発達障害ネットワークから参りました山岡です。
 ワーキンググループの進め方についてお聞きしたいと思っていますが、今、この特別委員会がありまして、特別委員会として今年度内に何らかの結論を出すというようなことをお伺いしました。ワーキンググループは、比較的少人数で検討するのは非常に良いことだと思うので賛成ですけれども、ワーキンググループを一定期間、例えば3、4カ月の間集中審議をして、その間、この特別委員会は止めておいてやるのか、並行してやるのか、あるいはどれくらいのめどでそのワーキンググループで結論を出そうとしているのか、そのあたりの雰囲気だけお聞かせいただければと思います。

【宮﨑委員長】 それでは、まず、このワーキンググループの会議の持ち方、それから本委員会をどんな形で、並行していくのか、いかないのかということについて、事務局からお願いいたします。

【横井特別支援教育企画官】 事務局としましては、年内に合理的配慮等環境整備について整理を行っていただくので、ワーキンググループについては集中的に御審議いただくことを予定しております。他方、特別委員会の検討事項については、その合理的配慮以外の項目もありますので、これにつきましても並行して御審議いただくことを想定しております。

【宮﨑委員長】 よろしいでしょうか。

【山岡委員】 ありがとうございました。

【宮﨑委員長】 それでは、河本委員、お願いいたします。

【河本委員】 全国特別支援学級設置学校長協会の河本です。どうぞよろしくお願いいたします。
 質問です。資料5-1の検討事項の上から3つ目の○に「副次的な学籍等」と書いてありますけれども、この「等」が意味するものは一体何でしょうか。昨年度も副次的な籍に関連して、公立の小・中学校、通常の学級の子どもたちと特別支援学級の子どもたちとの交流及び共同学習については、今回の障害者基本法の改正案も、平成16年度に改正された現行の障害者基本法の中にも、交流及び共同学習の重点というようなことで記載されていますし、今回の学習指導要領でも非常に大きな目玉だと小・中学校では認識していますので、この「等」が意味するところが、公立の小・中学校の今申し上げたようなところも加味されているのかどうかということの質問です。よろしくお願いいたします。

【宮﨑委員長】 それでは、事務局、お願いします。

【横井特別支援教育企画官】 特別支援教育企画官の横井です。
 「等」の御質問ですが、昨年末にまとめていただきました論点整理の中で、資料の中にも入っておりますが、7ページに副次的な学籍のところを検討するということが書かれておりまして、読み上げさせていただきますと、「特別支援学校に在籍する子どもについて、一部の自治体で実施している居住地校に副次的な学籍を置く取り組みについては、居住地域との結びつきを強めるために意義がある。今後、地域の学校に学籍を置くことについても検討していく必要がある」ということで、副次的な学籍とその周辺に係るものということで「等」という表現をさせていただいているところです。

【宮﨑委員長】 あと、実は7ページのところに地域の実情ですとか地域内の教育資源の問題まで含めてありますが、その地域内の教育資源の中に、今河本委員がおっしゃられた交流及び共同学習の推進とか、特別支援学校のセンター機能の活用などの考え方が明記してありますが、このあたりも含めて検討していただくとありがたいと思っておりますので、これは具体的に論点整理をさせていただいた中のポイントになると思っています。よろしいでしょうか。
 中澤委員、お願いいたします。

【中澤委員】 中澤惠江です。現在、国立特別支援教育総合研究所の客員研究員で、4月からは横浜訓盲学院の学院長をしております。
 1点、この資料5-2のワーキンググループについて質問とお願いがあります。障害種別がここでは視覚障害、聴覚障害、病弱等になっておりますが、御存じのように、権利条約の中では3つの障害が特別に、幼い時代、別のコミュニケーションが配慮した状況が必要だと記されている障害があります。それは盲とろうと盲ろうとなっております。ぜひここに、合理的配慮について盲ろうも入れていただきたいと思います。これについては、21世紀の特別支援教育の在り方でも言及されておりますし、また、協力者会議でも指摘されていたと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。

【宮﨑委員長】 これについては、事務局、いかがですか。

【横井特別支援教育企画官】 それにつきましては、本日いただいた意見につきましてワーキンググループで御検討いただければと思いますので、ワーキンググループの委員に引き継がせていただければと思っております。

【宮﨑委員長】 よろしいでしょうか。
 ほかに御質問ありますか。杉山委員、お願いいたします。

【杉山委員】 浜松医科大学児童青年期精神医学講座、杉山です。児童精神科医です。
 資料5-1の○の一番最後に※がついていて、「実態調査については、文部科学省において検討していくこととする」と書いてあります。この点については、前回の委員会で御意見させていただきましたが、母数が変わってくると合理的配慮の内容も変わってきます。特に発達障害とくくられている問題に関しては、実態がまだ本当に明らかになっていないように感じますので、どんなスピードでどのような検討をしていくのかということをお教えいただければありがたいのですが。

【宮﨑委員長】 今の杉山委員の御質問について、事務局、いかがでしょうか。お願いいたします。

【横井特別支援教育企画官】 特別支援教育企画官の横井です。
 この点につきましては、もう少しお時間をいただきたいと考えております。このような回答しかできず恐縮ですが、実態調査等、何かできることがあれば、こちらの委員会の場で説明させていただければと、そのように考えております。

【宮﨑委員長】 はい、お願いします。

【杉山委員】 浜松医科大学児童青年期精神医学講座、杉山です。
 ここで決まるものというのは非常に重たいものですから、これが舌禍事件になるかもしれませんが、パブリックコメントを読ませていただくと、完全な空中戦だと思います。理念だけでなく、根拠のある議論を進めた方が良いと思います。まず子どものことを考えて、もう少し実態に基づいた検討というのが本当は必要なのではないでしょうか。

【宮﨑委員長】 いかがしましょうか。実態調査に対する今杉山委員のおっしゃった御意見はもっともだと思いますし、何度も出ていることなので、前回、平成14年に発達障害を中心に実態調査を実施したわけですが、それからほぼ10年たっているということで、皆さんにとっても重要な関心事であるし、対応を迫られていることは事実であろうかと思います。文部科学省としてというよりは、この委員会でやるか、やらないかということと、規模とか、それから具体的な対応の状況とかというのを少し文部科学省で詰めて出していただくというようなことで、私はこの点について、こういう形でここでは提案をさせていただこうというふうに了解をしたことですが、特に前回のお話の中からも非常に重要な御意見を頂戴したことですので、もう少し詰めて検討させていただきたいということで今この文言になっていますが、杉山委員、どうですか。一応よろしいでしょうか。非常に重要なことだと思っておりますので、もう少しお願いします。

【杉山委員】 浜松医科大学児童青年期精神医学講座の杉山です。
 この点、エビデンスに基づいて検討いただくということを御確約いただければ、それで結構です。

【宮﨑委員長】 事務局、よろしいでしょうか。その点は十分認識をしていただいていると思っております。ただ、合理的配慮の検討を進める中で、その点がクローズアップされるという杉山委員の御指摘は十分伺った上での対応を今後していただくということでお願いいたします。
 ほかに御質問ございますでしょうか。久松委員お願いします。

【久松委員】 全日本ろうあ連盟事務局長の久松です。
 今回の合理的配慮等環境整備検討ワーキンググループの設立の中身については、主に合理的配慮のテーマが中心になると思っています。障害者基本法改正案の中に教育という項目の中だけでなく、療育という新しい言葉が設けられています。本来、療育という言葉の使い方は、私は適切だとは思っておりません。発達支援という言葉が適切ではないかと私は思っていますが、とにかく今回、障害者基本法の改正の中の1つの柱として、障害を持つ人の家族支援、いわゆる家族の負担を軽減するということも1つの施策として入れていくという考え方を盛り込んでおりますので、それに関して、環境整備というのは障害を持つ子どもの教育環境の中だけでなく、保護者、また家族の負担の軽減をする、そういった環境整備、また合理的配慮という考え方も盛り込まれるかなと思っております。そのあたりも含めて議論できるのかどうかということをお伺いしたいと思います。

【宮﨑委員長】 今の件はいかがですか。お願いします。

【横井特別支援教育企画官】 特別支援教育企画官の横井です。
 その意見についてもワーキンググループで御検討いただく際の参考としていただければと思います。事務局としましては、ここは初等中等教育分科会の下に置かれている、特別委員会の下に置かれているワーキンググループですので、初等中等教育の学校の中でのことが中心になってくると思いますが、保護者との関係というのも周辺部分には必ず含まれてきますので、そのことも含めて御議論いただけるかどうかというのは、ワーキンググループで御議論いただければと考えております。

【宮﨑委員長】 今、久松委員の御発言の趣旨については、ワーキンググループでまた協議をしていただくということでよろしいでしょうか。
 それでは、北住委員お願いいたします。

【北住委員】 むらさき愛育園長、それから日本小児神経学会の社会活動委員会の副委員長をしております北住です。
 日本小児神経学会の社会活動委員会でもこの件を議論していますが、そこで出てきたこととして、就労に向けての教育という視点での検討も必要ではないかということがあります。軽度の知的障害や軽度の発達障害のお子さんの教育現場での問題、臨床場面でのいろいろ問題、特に中学、高校ではいろいろ難しい問題が出てきています。その中で、例えば東京都でも知的障害の特別支援学校で、かなり就労を目標とした形で進められている。それから、先日、岩手の特別支援学校の寄宿舎における就労に向けてのいろいろな支援が長時間のドキュメンタリーで放送されていましたが、今のワーキンググループというのは、横断的なそれぞれの障害種別検討だけではなくて、縦の課題として、早期からの就学相談、就学先決定という入り口の問題がテーマとなりますが、その出口、その先を見据えた検討、権利条約が目指す、大人になって地域で生きていける条件をどう作っていくか、その中で就労も大きなテーマであると考えます。それを受けての教育、そこでの考え方によって、例えば障がい者制度改革推進会議の下部組織である福祉部会の中で、寄宿舎は入所施設と同じであって否定されるべき存在であるというような議論も出ていますけれども、岩手の例などを見ても、生活訓練、就労に向けての準備という形で、一定期間はある程度親元から離れることが、地域によっては必要であるのではないか。ワーキンググループで検討するかどうかは別として、就労を見据えた教育支援のあり方ということも、広い意味で検討が必要。インクルーシブな教育のために学齢期だけに合理的配慮をすればいいのか。逆に、それに引きずられることによって、成人になってからの社会活動が制限される可能性も出てくる。そういうことを避けるためにはどのようなことが必要であるかという、その出口を、先を見据えた教育のあり方という視点も必要だと思います。そこをテーマとして、このワーキンググループで、より柔軟的な問題、共通の課題として、検討事項として取り上げていただければいいと思います。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。ワーキンググループで検討できるところと、それから、かなり前に就労支援の協議もこの中でしていただきましたが、その御指摘として承りたいと思います。
 石川委員、お願いします。

【石川委員長代理】 石川です。
 2点質問と2点委員長へのお願い、ないしは提案です。まず質問の1点目ですが、ワーキンググループの委員について、臨時委員と専門委員と書いてありますが、臨時委員と専門委員の違いがあれば教えてください。
 質問の2点目は、合理的配慮について、ソフト・ハード両面と書いてありますが、ソフト・ハード両面ということは、つまりすべてという意味だと思いますが、ソフト・ハード以外に何かがあって、そこは含まないという可能性はないということを、念のために確認させてください。例えば具体的にいうと教科書ですが、何回目かの委員会で、使いやすい、わかりやすい、アクセシブルな教科書について合理的配慮として検討すべきだと私は述べましたが、それはソフトと考えてよいでしょうかというのが2点目です。
 それから、2点委員長へのお願いということですが、1点目は先ほど中澤委員からもお話があった盲ろうについてということです。ワーキンググループの中で議論すればよいのではないかという事務局からの話がありましたが、それを踏まえて、当然盲ろうの専門性、当事者性を持ったワーキンググループの委員を委員長にぜひ御指名いただきたいというのがお願いです。
 それから、2点目なんですが、個々の障害分野の専門性や当事者性への経緯、もしくは遠慮ということがあると思いますので、ワーキンググループの中で個々の障害種別と全体に関しての合理的配慮について検討するわけですが、それぞれの障害種別に関わる委員が1名だけだと、その委員は該当する障害種別について代表しているかのように対応することになる可能性があると思いますので、あまり多いと運営しづらいということがあるかと思いますが、1名と言わず2名とか3名とか、そのような感じで、専門委員とか臨時委員とあるようですので、その点についても御配慮いただければありがたいということです。

【宮﨑委員長】 まず、専門委員と臨時委員のことだけ事務局からお願いします。

【横井特別支援教育企画官】 特別支援教育企画官の横井です。
 これは中教審の委員、臨時委員、専門委員を示しておりまして、中教審の総会の委員になっておられる方を委員としております。それから、分科会に出ていただいているような方々を臨時委員、特別委員会に出ていただいているような方々を専門委員として発令させていただいているということです。非常に技術的な話ですが、そのような区分になっています。
 それから、ソフト・ハードの両面ということで書かせていただいておりまして、教科書はどちらかとおっしゃられたと思いますが、その教育内容という面からはソフトだと認識しています。それ以外のものがあるかどうかということについてはまた御議論いただければと思います。どちらかというと、ソフト面、ハード面両面で全体ということをイメージしておりますが、それ以外のものがあるかどうかということは、また特別委員会で御議論いただいてもよろしい事項かと思います。

【宮﨑委員長】 委員の選出については、この会に出ていらっしゃる方を専門委員といっているわけですが、できるだけそれ以外に各障害種の方々を推薦いただいて選出をする。具体的に当事者性という問題があって、1名と言わず複数名ということの御指摘があったわけですが、これについても、ワーキンググループがあまり大きくなってもなかなか進行できないということがあるので、また御相談しながら、ここについては各障害種の委員の方々の御推薦をお願いしたいと思っております。よろしいでしょうか。
 それでは、清原委員、お待たせしました。

【清原委員】 ありがとうございます。三鷹市長の清原です。
 本日、今後の特別支援教育の在り方に関する特別委員会の進め方として、合理的配慮等環境整備検討ワーキンググループが設置されるということは非常に重要であり、有効だと感じています。特に国会でのこれからの審議状況についてはまだ不透明な点がありますが、今日配付していただきました障害者基本法の改正案の第16条には「国及び地方公共団体は、障害者が、その年齢及び能力に応じ、かつ、その特性を踏まえた十分な教育が受けられるようにするため、可能な限り障害者である児童及び生徒が障害者でない児童及び生徒と共に教育を受けられるよう配慮しつつ」と、書かれているわけですから、この教育に触れた第16条冒頭の趣旨を具体的に検討するために、ここに提案されている合理的配慮等環境整備検討ワーキンググループがまず設置されて、重点的に審議する必要は大変大きいと思いますし、このことをまず意義深いものと感じています。
 2点目に、先ほど山岡委員の御質問の中で、このワーキンググループを集中的に進めるとともに、特別委員会もワーキンググループで検討する以外の課題があるため、並行的に進めますと言っていただきました。先ほど来、委員の皆様が問題提起されているような事柄の中には、ワーキンググループだけではなくて、特別委員会が議論し、また検討していくテーマが多々あるとも認識しました。これまでの議論の経過からいたしましても、ぜひそのように進めていただければと思います。そして、私たちの特別委員会の議論がワーキンググループの検討に視点を提供したり、あるいはその他の研究機関などが進めている研究成果などを反映していただいたりするきっかけになるのではないかとも感じました。
 3点目に申し上げたいのは、今回改めまして障害者基本法改正案の3項に「国及び地方公共団体は、障害者の教育に関し、調査及び研究並びに」の後に「人材の確保及び資質の向上」という文言が明確に入ったわけです。現行法では、学校施設の整備は書かれていますが、「人材の確保及び資質の向上」という点が明確にはなっていなかったため、それが入っているということはすごく大きなことだと思いました。今後の検討課題の中に、「教職員の確保及び専門性向上のための方策」ということが資料5-1では重要な検討事項に位置づけられています。これについては、初等中等教育分科会の中で教員の資質向上に関する特別部会も設置されていることから、その検討と密接な関連性を持って進めていく必要があると思います。内閣府の障害者制度改革の動きももちろんですが、文部科学省の中で大変重要なテーマの検討が初等中等教育の中で行われておりますので、ぜひこの特別委員会で有意義な連携の方向性が出されていくことが重要ではないかと思いましたので、今後の進め方にそのことを反映していただければと思います。よろしくお願いします。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。今3点、清原委員から御指摘がございました。この点はまさに非常に重要なところでして、先ほど時間を割いて、特別支援教育の資料説明の中で今進行中のものについて丁寧にお話いただいたのは、まさに現状を知っていただくこと、具体的にそれをどんな形でオーソライズしていくかということが重要になるためです。今後、障害者基本法に盛り込まれた内容についての検討をこのワーキンググループ、それから本委員会で進めていくということになろうかと思いますので、この点も皆さん、お含みおきいただければと思います。
 品川委員、お願いいたします。

【品川委員】 教育ジャーナリストの品川です。よろしくお願いいたします。
 2点申し上げたいことがあります。まず1点目は、先ほど石川委員からもあった件と全く同じ、ワーキンググループの委員の構成についてです。当事者性がすごく大事だということは本当によくわかるのですが、発達障害の場合、アスペルガー症候群の方とADHD、LDの方では、状態像が全く違うにも関わらず、これらが全部発達障害と一くくりにされています。ですので、ワーキンググループに出られる方によって発達障害当事者といっても全くニーズが異なってきますので、そのことを一つ、よく念頭に置いていただければいいなと感じております。また、アスペルガーだとおっしゃっている方も、実はアスペルガーだけではなくてADHDがあって、おっしゃっているニーズがADHD的な要素だったりしますので、そういった視点がないとニーズがどんどんずれていくということを申し上げたいと思います。
 それから2つ目は、先ほど杉山委員からもございましたが、資料4を拝見していますと、これをもって学習障害つまりLDの子どもや注意欠陥多動性障害つまりADHDの子どもはこんな感じだとよくご存じない方にに思われてしまうと本人たちが困る、ニーズに応じた教育権が保証されないというのが、取材をしていての私の実感です。ほとんどの学習障害や注意欠陥多動性障害の子どもは通常学級の中にいます。ここでいう実態調査、もし本当に実質的な調査をするのであれば、やはり通常学級にどれだけそういう児童生徒がいるかということを調査しない限りは、特別支援学校等のデータだけではなかなかリアルな実態はわからないということを申し上げたいと思います。
 以上、2点です。ありがとうございました。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。ワーキンググループの委員の選出の仕方について、いろいろな難しさが出てきそうだということで、委員の皆様の御指摘を十分踏まえて考えていきたいと思います。
 当初予定していた時間よりかなりオーバーいたしましたけれども、当委員会のもとに合理的配慮等環境整備検討ワーキンググループを設けるということにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 それでは、合理的配慮等環境整備の検討ワーキンググループを設置して審議を進め、この議論については適宜、当特別委員会にも状況報告していただくということにしたいと思います。そして、この委員会で我々の意見を踏まえて、また検討を進めていただくという形にしたいと思います。
 なお、先ほど来、委員の選出についていろいろ御意見を頂戴しているのですが、この専門委員という立場、ここにいらっしゃる方はそうなんですが、どなたにワーキンググループにお入りいただくかということについての人選等については、私に御一任をいただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 それでは、そのようにさせていただきます。
 続きまして、これから諸外国における特別支援教育の状況について、イギリス、フランス、イタリアを例として、国立特別支援教育総合研究所より御説明いただきたいと思います。今日は2時間ということで設定しましたので、休憩の時間をとっていないのですが、進めてよろしいでしょうか。実はこの会場の時間が、後が切られている状況でございまして、どんなに遅くとも5時半には終了をしなければいけないという制約があります。しかし、非常に私どもが期待をしており、いろいろな委員からも諸外国の状況はどうなっているかということをぜひこの場で御紹介いただきたいということがありましたので、先ほど申し上げた3カ国の状況について御説明いただく機会を設けさせていただきました。よろしいでしょうか。休憩をとらないでそのまま進行させていただきます。
 それでは、まずイギリスの状況について、国立特別支援教育総合研究所の大内上席総括研究員より御説明をお願いいたします。よろしくお願いします。

【大内上席総括研究員】 ただいま御紹介いただきました独立行政法人国立特別支援教育総合研究所、上席総括研究員の大内です。
 イギリス、フランス、イタリアにおける障害がある子どもの教育について、その概要を説明させていただきます。資料につきましては、ここに同席させていただいていますもので取りまとめてまいりました。イギリスにつきましては横尾、フランスにつきましては棟方、イタリアにつきましては大内が担当いたしました。資料等の説明につきましては3カ国まとめて私から報告させていただきます。
 各国の概要説明、資料6-1、資料6-2、資料6-3となっておりますけれども、概要説明の後に参考ということで関連事項について詳細に説明をしておりますので、御参照いただけますと幸いです。それでは、資料6-1のイギリスから説明をさせていただきます。
 まず全体の概要ですが、1981年教育法によりまして、イギリスの障害のある子どもの教育は、それまでの障害カテゴリーをもとにしたものから、学習における困難さから考えられる特別な教育的ニーズをもとにしたものに変更されました。この特別な教育的ニーズは、1979年に出されたウォーノック報告で提唱された概念です。この概念は、個々の子どもに対する障害のラベリングを回避すること、それから従来の障害カテゴリーの概念では支援されにくい学習遅滞の子どもの教育、障害が複数ある子どもの教育を充実させるということを目的としております。
 教育システムについてですが、イギリスでの障害のある子どもの教育制度はSENと呼ばれております。以後、この用語につきましてはSENと表現させていただきます。これはSpecial Educational Needsの頭文字からとられたものです。イギリスでは、特別な教育的な手立てを必要とするほど、学習における困難さがあるならば、その子どもは特別な教育的ニーズがあると捉えられております。障害の有無に関わらず、「学習における困難さ」の有無が基本となっています。
 イギリスにおける特別な教育的ニーズがあることの認定においては、法定評価ステートメントを得るというプロセスが代表的なものとして挙げられます。これは学習の困難さが大きい子どもに発行されるものです。このステートメントには特別な教育的ニーズがどのようなものであるかということや、必要な教育的な手立てについて具体的に記述されております。地方行政当局(Local Authority)や学校はこのステートメントに書かれた教育的な手立てを用意する義務が生じます。また、学習の困難さが比較的軽いと判断される子どもには、このステートメントは発行されておりません。このステートメントが発行されているかどうかで、子どもの就学のプロセスが若干異なってまいります。
 イギリスでは、就学先の決定権は地方行政当局にあります。ステートメントの有無に関わらず、原則的に子どもは学校区のいずれかの小学校に入学することになります。ただし、ステートメントのある子どもについては、保護者が希望した場合、または他の子どもへの効果的な教育の提供と矛盾すると判断された場合、特別学校に行くことになります。特別学校は学習における困難さが大きい子どもが行く学校ということになります。特別学校はspecial schoolの訳です。
 通常の学校の中でステートメントはないものの、特別な教育的ニーズのある子どもに対する特徴的な工夫としては、校内のSENについての体制を整備する教員であるSENコーディネーター、それから段階的な教育的な手立てを用意するスクールアクション、スクールアクションプラスを挙げることができます。
 スクールアクションとスクールアクションプラスは、教育的支援のステップをあらわしているものであり、前者よりも後者において手厚い支援がなされるものです。また、両方のステップにおきまして、個別教育計画が作られます。これで定期的に評価されることとなっております。この評価によって、これらのステップでは十分な教育効果が得られないと判断された場合には、先に述べた法定評価によってステートメントを得ることになります。
 ステートメントがある子どもの場合は、取り出し指導等のより手厚い教育的な手立てを利用することができるようになります。また、特別学校への転校も考慮されます。
 教育全体でSENの対象となる子どもは、全体の約20%ほどです。また、特別学校の義務教育段階での在籍者数は、2010年の段階で7万3,540名、全生徒数の1.1%というデータが出ております。
 就学先の決定権は地方行政当局にありますが、保護者とは、スクールアクション、スクールアクションプラス、あるいは法定評価のプロセスの中で、その都度アセスメント結果をもとにした話し合いが持たれることになっております。もしそういった話し合いの結果、保護者が地方行政当局の決定、学校教育の内容等に不満がある場合につきましては、最終的にはSENを専門的に扱う訴訟機関SEND裁判所に申し立て、そこで裁定を受けることもできるようになっております。
 以上が教育システムの概要です。
 続きまして、イギリスにおける条約の批准について概略を説明させていただきます。障害者の権利に関する条約の批准につきましては、2008年の国会におきまして、特別学校が条約の「general education system」に含まれるかどうかということ、軍隊での障害者の平等が担保されているのかどうかということが議論となっております。この特別学校の扱いについて、子ども学校家庭省からは次のようなコメントがなされております。「我々の国内法では特別な教育的ニーズのステートメントを持つ子どもの就学にあたっては、保護者がそれを望まない場合と他の子どもたちの効果的な教育の手立てと矛盾しない限りはメインストリームスクールで教育されなければならないことになっている。我々は地方行政当局が、特別な教育的なニーズのステートメントを持つ子どもの就学を決定するときに、保護者の希望を考慮することができるようにし続けたいと考えている。したがって、特別学校は障害がある子どものために、地方行政当局の包括的な教育的手立ての中で重要な部分のままで残されている。そして、我々はイギリスの通常の教育システムがメインストリームスクールと特別学校の両者を含むことで24条の(2)(a)への解釈宣言とすることを提案したい」というような答弁がなされております。
 なお、条約につきましては、この提案が政府の公式的な解釈宣言となりまして、2009年6月に批准されております。
 以上、イギリスの報告です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。まず、文言上のことだけで御質問があればお願いをいたします。大南委員。

【大南委員】 全国特別支援教育推進連盟の大南です。
 冒頭のところに、1981年法で、カテゴリーではなくてSpecial Educational Needsに変わったということがあります。誤解があるといけないのは、4ページ、5ページのところの統計は障害別に出ていることです。私、実は1992年にイギリス、ロンドンを中心ですが、見てきたときも、やはりこういう説明をされますが、実際にはろう学校があり、肢体不自由の養護学校があり、自閉症の学校がある。Special Educational Needsでカテゴリーじゃないといいながらカテゴリーがあるということ、書いてあることと実際とが違うということを私たちはよく理解をしないといけないと思います。それから、ろう学校の小学部は小学校の中に、中学部は中学校の中にあります。そうすると、交流及び共同学習は盛んにできているじゃないか、校長先生もしているとおっしゃりますが、実際に見ていると、ほとんどやっていない。できないんです。なぜできないかといいますと、お金が必要だからです。日本では想像できないことですが、ろう学校が小学校にお金を払います。そういうことがこの文面の中では読めないところがあります。ですから、今のところでお願いしたいのは、1ページの一番最初の特別な教育的ニーズをもとにした制度に変更されたにもかかわらず、どうして4ページ、5ページではカテゴリーで統計が出てくるのか。こういうところを御質問したい。

【宮﨑委員長】 今のところの補足は横尾先生でしょうか。お願いいたします。

【横尾主任研究員】 国立特別支援教育総合研究所の横尾です。
 大南委員のおっしゃるとおり、障害のカテゴリーがないわけではないというところは、そのとおりです。統計の資料の説明からさせていただきますと、学校の数は1,054校あるというところで、その下に、障害に対応している学校の数が、視覚障害326、聴覚障害337というように以下3けたの数が並んでいる統計になっておりまして、1つの学校でどういった障害に対応しているかということが複数出ているわけです。例えばうちの学校では視覚障害、知的障害に対応しておりますという場合は、ダブルカウントになる形で統計資料が出ています。おっしゃるとおり、視覚障害、聴覚障害純粋の学校もまだ20校ずつぐらい残っているというようなところはあります。ですので、障害カテゴリーがすべてなくなったわけではないと解釈するのは正しいのかなと思います。特別な教育的なニーズ自体は障害カテゴリーをもとにしていないと説明しますが、教育的なニーズの中に障害カテゴリーがあるというようなことです。聴覚障害による学習困難が生じた場合に、それには特別な教育的な手立てが必要だろうと、そういった説明がされるというようなことになっております。

【宮﨑委員長】 よろしいでしょうか。
 そのほか、このことに関して、文言上の御質問があれば。よろしいでしょうか。
 それでは、とりあえずイギリスについてはこれで置きまして、引き続きフランスの状況につきまして、大内先生からお願いいたします。

【大内上席総括研究員】 それでは、資料6-2を御覧ください。フランスについて説明させていただきます。
 まず、総括的な内容ですが、フランスでは、教育への平等なアクセスを共和国憲法が保障しており、これを実現するため教育法典におきまして、「教育を受ける権利は全ての者に保障されている」、これは教育法典のLの111-1条に規定されております。それから、同法典のLの111-2条におきまして、「一人一人の能力や特別なニーズに対応した適切な手段によって、学校教育のそれぞれの種類や段階における機会均等が実現される」と述べた上で、L112-1条におきまして、「国が、この義務を果たすために・・・、障害のある子ども、青年、成人が通常の場において就学するために必要な予算と人的な措置を行うこと」及び「全ての障害のある、あるいは健康上の問題のある子ども、青年が、居住地に最も近い通常学校に学籍を登録される」ことを規定しております。
 次に、教育システムについて説明させていただきます。フランスの人口は日本の約半分ですが、就学人口は比較的多く、初等中等教育段階では1,005万5,162人となっております。これは日本の約7割程度ということになります。
 初等中等教育の学校教育システムは基本的に次のようになっております。初等教育段階は、日本の幼稚園にあたります保育学校の3年間、小学校の5年間を合わせたものになります。中等教育段階は、日本の中学校にあたるコレージュの4年間と高等学校にあたりますリセの3年間になります。学級サイズの平均は、2009-2010年のデータによりますと、保育学校が25.7人、小学校が22.7人、コレージュが23.8人、職業リセが18.7人、普通リセが26.1人となっております。
 義務教育ですが、6歳から16歳となっております。学年でいえば、小学校1年生からリセの1年生までが義務教育段階ということになります。日本の学習指導要領にあたります学校教育で修得すべき共通基礎が定められておりまして、授業内容の修得状況によりまして原級留置とか飛び級があります。原級留置を繰り返す場合には、共通基礎の修得を断念し、中等教育段階の早期から職業自立を目指す教育が実施されることになります。
 次に、障害のある子どもの場合についてですが、通常の学級に加えまして、通常の学校の中に「インクルージョンのためのクラス」あるいは「インクルージョンのための校内ユニット」が用意されております。それぞれの障害種別に分かれておりまして、前者は初等教育段階、後者は中等教育段階にあります。ともに日本の特別支援学級に類似しておりますけれども、前者のほうがより固定的な組織と考えられます。
 障害のある子どもの場合には、個々のニーズによって通常の教科学習だけではなく、コミュニケーションの指導、日常生活の指導、身辺自立、運動・動作、点字、歩行訓練など、自立活動にあたる内容を指導することや、身辺の介助、医療的ケアなどが必要となります。これらを総合的に行う教育を特別教育(エデュカシオン・スペシアル)とフランスで呼んでおります。厚生省系の障害児を対象とする療育施設がこれまで担当してきました。これがフランスの障害のある子どもの教育の特徴であり、国民教育省の知育中心の学校教育(アンセーニュマン)とは別に発展してきたもう一つの教育システムということになります。例えばパリ国立盲学校、これは世界で最初にできた盲学校でありますが、パリ国立盲学校などは、この特別教育を行う施設であります。特別教育施設では、厚生省系が所管する特別教育免許を持つ教員、同様に厚生省系が所管する特別教育指導士、あるいは言語矯正士などの国家資格を持つ療法士が主に指導を行っております。しかしながら、2009年には、この特別教育施設内に「学校ユニット」を設置することが法律で規定されました。これらの施設においても国民教育省の学校教育のシステムが組み込まれることになったということです。
 なお、この枠組みの中で、通常の学校と特別教育施設を行き来しながら就学することもなされております。これは、日本の交流及び共同学習に近いものと思われますが、学習活動自体は、通常学級というよりは通常学校の特別なクラスに入ることが多いと思われます。
 次に、就学先の決定についての手続きについて説明させていただきます。通常、就学の前年9月から当年1月までに、保護者は居住地に最も近い通常学校へ子どもの学籍を登録いたします。この学校が学籍校となります。ここまでは障害の有無に関わらず全く同じ手続きです。学籍登録を申請された学校は、障害を理由に、これを断ることができません。しかし、この学籍の登録は、子どもがそのままその学校へ入ることを意味するものではございません。学籍登録の後で障害のある子どもの保護者は自らの意思で県障害者事務所に個別就学計画の作成を要求いたします。県の障害者事務所は公益法人として県議会が設置する独立機関でありますが、障害者手当の判定、支給、個別就学計画の立案など、障害のある人の乳幼児期から成人以降までの一貫したサービスを提供する窓口となっております。個別の就学計画は、県障害者事務所内の委員会にある専門家のチームが保護者や学校と密接に関係を持ちながら、子どもの就学の場、学習の内容、必要な支援サービスの内容を定めるもので、毎年、個別就学計画のフォローアップチームによりまして見直しが行われております。個別就学計画作成の要求を受けた県障害者事務所は、上記の手続きによりまして個別就学計画を作成いたします。個別就学計画の最終決定には保護者の同意が必要となります。このため、個別就学計画を作成の後に、保護者あるいは法的後見人にその内容を通知して同意を求めることになります。この回答には15日間の猶予期間が与えられています。そして、この計画に不満がある場合につきましては、県障害者事務所に対しまして直接その取り消しを求める行政不服審査が可能となっています。ここで問題が解決しない場合には、行政訴訟審査、国民教育オンブズマンの利用などの手続きが用意されております。さらに、この決定が障害による差別にあたると思われた場合には、差別禁止平等対策高等機関に訴えることもできることになっております。
 一方、学籍登録の後、もし保護者が個別就学計画の作成を要求しない場合につきましては、その子どもはそのまま学校に入学することになります。このような状況になった場合であっても、学校が特別な支援の必要を認める場合には、保護者に対しまして個別就学計画の作成を申請するよう文書で通知いたします。もし保護者が一定の期間内(4カ月)にその申し入れに対して行動を起こさない場合には、大学区視学官が県障害者事務所にその旨を連絡いたしまして、その子どもの特別なニーズの評価の実態を申し立てるなど、県障害者事務所と保護者が連絡を取るために必要なあらゆる手段を講ずるものとされております。
 以上が、フランスにおける教育のシステムの概要です。
 次に、条約の批准について説明させていただきます。フランスでは、前大統領シラク氏の公約の1つであった「障害者の社会参加」の実現を目指して、同国で最初の障害者の権利を定めた基本法でありました1975年6月30日法の見直し作業が2002年から進められてきております。そして2005年2月11日法(障害者の権利と機会の平等、参加と市民権のための法)が制定されまして、この法律によって、冒頭に述べた教育法典の条項の一部追加や変更など、一連の個別法の改正が実施されました。また、2004年には、2000年のEU指令を受けまして、差別禁止平等対策高等機関を設立しております。フランスは、これらの結果を踏まえ、2010年2月18日に国連の障害者の権利に関する条約の批准を行っております。批准にあたって、教育条項に関係する留保はありませんでした。
 なお、条約の署名につきましては、国連での署名準備が整うと同時に条約に署名しております。その1年半後の2008年9月23日に選択議定書にも署名しております。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。今のフランスの教育について、文言等で御質問があればお願いします。

【大南委員】 大南です。
 今の御説明と、それから私の読んでいるところで読み切れなかったのですが、通級による指導をどのような形で現在行っているか。私は1990年、パリしか知りませんが、パリは自校通級しか認めてなかった。それ以外は非常に厳しい言い方をして、転校してこなければ通級は認めないような話を聞いたことがあります。それが1つ。
 それからもう一つは、就学先の決定のときに、本人を呼んでそこで相談をする、本人の意見も聞くというシステムを1990年当時とっていて、私、オブザーバーとして一つのケースに参加をさせてもらったことがありますが、今、本人の意思をどのような形で就学先の決定に生かしているのか、その点、2点をお願いします。

【宮﨑委員長】 これについては、棟方先生、お願いします。

【棟方総括研究員】 国立特別支援教育総合研究所、棟方です。
 今御質問のありました通級についてですが、フランスには通級という名前でそういうサービスは行われていないと思うのですが、実際に通常学級にいる障害のある生徒さん、お子さんが例えば厚生省関係の特別教育施設から、例えば自立活動に近い言語矯正ですとか、運動療法ですとかという指導を受けるサービスがあります。現在はその学校にサービスをする機関が、日本のセンター的機能に似ているかもしれませんが、そこから学校に出向いてサービスをしてくれるというようになっています。あるいは学校からそこのセンターみたいなところに通うというサービスがある。それが日本の通級に近いと言えば近いだろうと思います。それは現在、特別就学計画によってすべて決定されるということになっております。
 それから、就学の決定に本人が同席するという話ですが、実は法律の中では、本人あるいはその保護者、あるいはその法的後見人というような形で、まずは保護者が入って、そうでなければ親御さんということになっていますが、研究所で調べてきましたのは、どちらかというと障害のある小さなお子さんというような形で見ていますので、この中では保護者と書かせていただいています。本文の中には、本人、保護者、後見人という形で述べられていたと了解しております。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。ほかにありますでしょうか。清原委員、お願いします。

【清原委員】 1点だけ質問させていただきます。フランスの教育制度についての2ページ目の下の「次に、就学先の決定についての手続きについて説明します」という後半部分で、「県の障害者事務所は、公益法人としての県議会が設置する独立機関で、障害者手当の判定」云々「一貫したサービスを提供する窓口です」とあります。どうしても日本の地方自治の制度を考えますと、公益法人としての県議会が設置する独立機関が県の障害者事務所を持っているということはよくわからないものですから、御説明いただければありがたいと思います。

【宮﨑委員長】 それでは、お願いします。

【棟方総括研究員】 国立特別支援教育総合研究所の棟方です。
 県の障害者事務所というものですが、公益法人としての県議会と書いてありまして、大変恐縮でした。県議会のもとに置かれるということになります。実際には県議会の議長と障害の手当を出します家庭連帯手当金庫という、そういう組織の両方の所管になって、この県の障害者事務所が置かれるということになります。

【宮﨑委員長】 ほかにありますでしょうか。お願いします、石川委員。

【石川委員長代理】 石川です。
 就学先決定について1点質問させてください。この個別就学計画の最終決定には親の同意が必要だと説明されていましたが、その直後に、しかし、不満がある場合には、県障害者事務所に取り消しを求める行政不服審査が可能と書いてありますけども、多分この間に何かあって、その後ここに至るのではないかと考えますが、ここを埋めていただく説明をいただければありがたいと思います。

【宮﨑委員長】 それでは、お願いいたします。

【棟方総括研究員】 国立特別支援教育総合研究所の棟方です。
 今、御質問にありました、そのまま一足飛びに取り消しを求めるということになるのではないかということですが、実際には、親御さんを含めて個別の就学計画の中身は立てられていくということにはなりまして、ただ、結果を親御さんに提示をしまして、15日間。この間の手続きは、研究所で調べました限りにおきましては、間に何かがあるということではなくて、15日間の後に県の障害者事務所に取り消しの申し立てをするということが現在の調べです。少し細かい間のことにつきまして調べさせていただければと存じます。

【宮﨑委員長】 よろしいですか。

【石川委員長代理】 そうしますと、確認ですが、同意を決定のための要件とするというように読めるわけですが、その後、15日間、親からの同意が得られなかった場合は一旦決定してしまって、その後、行政不服審査というオプションしか親にはないように理解できるのですが、それで間違いないでしょうか。そうだとすると、同意を決定要件とするということにフランスの制度はなっていないとも解釈できると思うんですけれども、いかがでしょうか。

【棟方総括研究員】 国立特別支援教育総合研究所の棟方です。
 法律の中では、教育法典の中にこの計画は、本人及び保護者又は法的後見人の同意を必要とすることが明記されております。手続きとしましては、実際には今こちらで説明させていただいたような手続きが行われるというところまでの調べです。それがその法律に違反しているのか、同意するということを実現していないのではないかということにつきましては、もう少し検討する必要があるのかもしれないと思いましたが、私どもで調べた範囲では、そういう事実といいますか、手続きになっているというところです。

【宮﨑委員長】 ほかにありますでしょうか。よろしいですか。ありがとうございました。
 続きまして、イタリアの状況につきまして、引き続き大内先生からお願いいたします。

【大内上席総括研究員】 国立特別支援教育総合研究所の大内です。
 資料6-3を御覧ください。イタリアにおける障害のある子どもの教育について、まず総括的なことを述べさせていただきます。
 イタリアでは、障害がある子どものみを対象とした学校は廃止されておりまして、幼稚園から大学まで、障害の有無に関わらず、通常の学校に就学することとなっております。1975年に上院議員ファルクッチ氏を委員長とする内閣委員会におきまして、障害のある子どもの教育について次のような勧告が示されております。「通常の学校は障害がある子どもの教育の場として最も大切な場であり、分離した特殊教育施設を廃止して、幼稚園から中学校まで通常の学校の中で教育が行われるような新しい運営が必要である」。以後、これを受けまして、イタリアでは、この勧告に沿った法整備が進められております。1992年に第104号法律「障害者の援助、社会的統合および諸権利に関する基本法」、これは理念法ですが、が制定されるに至って、幼稚園から大学まですべての学校教育段階において、障害がある子どもも一般の学校で学ぶシステムが整えられ、現在に至っております。
 イタリアの教育システムについて、障害がある子どもへの対応という観点から説明をさせていただきます。障害がある子どもの認定につきましては、1994年2月24日付の大統領令第2条に規定されておりまして、管轄学校長を含む関係者から地域保健機関(ASL)の社会事業部への通知により、地域保健機関所属あるいは同機関が提携する機関の専門医や発達心理学者が認定業務を実施するということになっております。
 また、インクルーシブ教育が有効に機能するために、通常の学校への具体的対応策としまして次のような対応がなされております。すなわち、特別支援教育教員としての資格を有する支援教師の配置、学級の小規模化・複数学級担任制の導入、学習集団の工夫、柔軟なカリキュラムの編成(教科プログラム、科目、授業時間数の配慮)、評価方法の工夫、個別教育計画の作成、関係機関、特に地域保健機関との多様な連携、支援員の配置などを挙げることができます。
 支援教師についてですが、通常の学級に在籍する障害がある子どもの指導や学校生活を支援し、担任とともにクラスに在籍する児童生徒全体に対しても責任を持つものと位置づけられております。支援教師は、児童生徒数138人に対して1人の割合で予算措置がされることになっております。支援教師の資格は、大学卒業後、さらに2年間のコースを修了することによって取得できます。この辺は現在流動的な状態になっております。それから現職教員も研修を受けまして、一定の単位を取得することで資格取得が可能です。支援教師の養成課程のカリキュラムは、すべての障害種等をカバーするようにプログラムされておりまして、教育全体の中の部分として障害児教育を捉えることが基本的な方針となっております。支援教師に対する特別な処遇はなされておりません。
 イタリアの小中学校の学級の児童生徒定数は25名が標準となっておりますが、障害のある子どもが在籍している場合の学級定員は20人に減ぜられることになっております。併せて、支援教師が加配されることになります。また、従来から小学校低学年は複数担任制となっておりますので、さらに手厚い対応が可能となります。
 教育課程や教育方法、教材等につきましては、障害のある子どもたちの具体的な必要性に合わせて柔軟に対応することとなっており、その場合、個別の教育計画(P.E.I)が作成されることになっております。指導に際しましては、障害のある子どもを疎外したり、障害のある子どもに優越感を抱いたりする心情が他の児童生徒たちに芽生えないような働きかけをしていくことが求められております。また、個別教育計画は評価にも活用されておりまして、この計画に即して、子どもの進歩した側面を評価することとなっております。
 イタリアの教育では、インクルーシブ教育に関連して、学校外の関連機関との連携協力という観点から、次のような特徴を挙げることもできます。
 まず1番目としまして、保健省と公教育省、今は大学関係の省も含めて公教育大学科学省というような名称になっていますけれども、が障害のある子どもの教育に対して連携して対応しております。
 それから2番目ですが、保健省管轄の地域保健機関が障害のある子どものケアに日常的に重要な役割を果たしており、支援教師とも連携しております。障害の認定、機能判断、動態-機能プロフィール、個別教育計画等の作成にも地域保健機関が深く関与しております。
 3番目としまして、家庭医の制度が障害児のケアにも有効に機能しております。
 4番目として、チューター制度が設けられております。これは、放課後、主に学生アルバイトであるチューターを家庭に派遣して、障害のある子どもの放課後の家庭での生活を支援しようとする制度であります。
 5番目としまして、障害等に関連する専門的な指導領域におきまして、学校外からの支援の仕組みができております。例えば視覚障害につきましては、盲人協会が「視覚障害教育相談センター」を運営しておりまして、点字や歩行などの専門家を学校に派遣したり、触覚教材や拡大教材を提供したりしております。
 このように、インクルーシブ教育を支えるために学校以外の関連機関との連携がなされていますが、この連携を確実なものとするために、「プログラム協定」が結ばれております。これは、市町村や県、州が学校当局及び地域保健機関、その他の例えば福祉サービス公社などの公共事業体との間で、各機関の資金拠出割合、あるいは提供可能なサービスとその方法、時期及び各種サービスを提供する場所等について締結した公的な契約であります。この協定によって、障害がある子どもに要するコスト分担や役割分担が明示されます。これによりまして、障害のある子どもの通常の学校で学ぶ権利の実質的な行使がより確実なになるものとされております。
 また、近年、学習障害に対する対応にも力が入れられるようになってきております。2010年10月に、学習障害のある子どものための法律が制定されておりまして、学習障害を知的障害と区別して学校教育を保障することが規定されております。この法律では、学習障害の様態が具体的に定義されております。限定的にと言ったほうがいいと思いますが、定義されております。その上で、そうした学習障害のある子どもに対して、通常の学校で教育を受ける権利を保障すること、学校教育において支援や潜在能力を引き出す指導を適切に行うこと、対人関係の困難を減ずること、教育のニーズに応じた評価等を行うこと、教師や保護者が学習障害に対して適切な理解をすること、早期の診断、判定、支援のために家族・学校・保健機関の連携強化を図ること、社会や就労の場での能力発展の機会均等を確保することなどについて記されております。
 次に、条約の批准について説明させていただきます。2007年3月30日に「障害者の権利に関する条約」の署名準備が整うと同時に条約及び選択議定書に署名しております。2008年1月28日にイタリア上院(元老院)におきまして、「障害者の権利に関する条約」及び「選択議定書」の批准及びこの条約に関連した国立の国内監視委員会の設立が全会一致で承認されております。2009年2月24日、イタリア下院(代議院)におきましても「障害者の権利に関する条約」及び「選択議定書」の批准及び国立の国内監視委員会の設立につきまして審議され、「法律2009年3月3日第18号」が成立しております。これによりまして、国内監視委員会の設立が具体的なものとなり、批准の準備が整ったことになります。2009年3月14日の官報にイタリア共和国大統領が批准を承認したことが記載されました。こうした経緯をたどりまして、2009年5月15日に条約及び選択議定書が批准されております。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。イタリアのことで御質問ありましたらお願いします。木舩委員、お願いします。

【木舩委員】 ありがとうございます。後ろのほうの資料の11ページ、上に「4.就学先の決定」とあります。それの(2)就学先の決定。「原則として、地域の小中学校へ進学する。保護者が申請する」とあります。「原則として」というところがよくわからないんですが、例外というのがありますよね。その場合にはどういった例外があり得るのだろうかということをお聞きしたいんですけれども。

【大内上席総括研究員】 私が実際に見てきた例では、ろう学校の機能を果している学校がございまして、そこは逆統合という形で、学校は、組織上は公立の通常の学校ということなのですが、聴覚障害のお子さんが入ってきておりまして、そこに健常のお子さんも若干入っていて、学校を見学するとろう学校のような教育をしているのですが、組織的には公立の学校です。聴覚障害の教育については、若干そういう学校があります。私が確認したのは1校ですけれども、そのようなことがあります。

【木舩委員】 ありがとうございます。

【宮﨑委員長】 大南委員。

【大南委員】 大南です。
 2つありますが、1つは、私は1990年にローマを中心にイタリアの教育を見たのですが、そのときも小学校、中学校に障害のある子どもがいたわけですが、人数は、こちらに書いてあるように、当時、障害児がいると17人で、クラス担任とプラス障害児に対する教員がついていたわけですが、その教員が役に立っていない。子守よりもひどい。向こうの5月というと、日本でいえば1月とか2月ごろの状況ですよね。3学期になっているはずです。ですけれども、障害に応じた指導は全くなされてない。でも、そのことがいいとされていた。それから20年たったわけで、これだけそろってくるとすごいなと思いますが、本当に変わったのだろうかというのは、これを読みながら思っていますし、それから、フランスとイギリスについては、教員免許についてもかなり細かく出ていますが、イタリアはどうもこれを読んだだけではよくわからない。そうすると、人数的には、ここに書いてある「さらに手厚い対応が可能となります」というのは、これは現地の方が言っているのか、それとも報告としてここで書かれたのか。本当に可能になっているだろうかというのが私は疑問です。
 それからもう一つは、非常におもしろい例としては、公立の学校ではないですが、病院が併設されていて、校長先生が全部の経営を握っておられる。ですから、お医者さんの都合に合わせてこうやるのではなくて、授業の都合に合わせてお医者さんに診断を受けたり、あるいは訓練士の指導を受けるというようなシステムをとっていたわけですが、その中で驚きは、兄弟だけで障害のある子どもとない子どもでつくっているクラスがあって、そこを我々は見るわけですが、兄弟であるというのはわかるわけです。だから、そういうことをどうやって、このインクルーシブで最先端をいっているという国に対して評価をするかというのは、やっぱりちゃんと見てこないとだめなのではないかという気が改めてこれを読みながらしましたが、よくわからない。あまり20年前と変わっていないのではないか。イタリアに対しては大変失礼な言い方かもしれませんけれども、教員養成はそんなに簡単にはできないだろうと思います。1975年に制度を変えたことによって、当時あった盲ろう養護学校がなくなったわけです。その人たちはどこにいったのか。実は採用が半分もされていないのです。中身はあまり言えないのでここでは言いませんけれども、採用されなかった。だから、専門家がいなかったわけです。今はいるのか、いないのか、そこら辺がどうも疑問に思っています。

【宮﨑委員長】 この点については、6ページ、7ページの「教員の採用と免許」のことも含めて、大内先生からお願いいたします。

【大内上席総括研究員】 大南委員がおっしゃるように、初期のころのいわゆるダンピング状態といいますか、通常の学級に放り込めばいいというようなことにつきましては、イタリアなりに反省がされて、丁寧な対応をするということが進んできていると認識しております。ただ、おっしゃるように、本当に専門的な教育が十分なされているかどうかということは、専門性という観点から疑問があるところですけれども、その分、ここに挙げました地域の保健機関、外部の機関等の連携というようなことで、かなりそういうところから専門的な指導、配慮等がされているということで、イタリアについては学校の中だけで見るのではなくて、総合的なシステムとして見ていかないと見誤ってしまうところがあるかもしれません。学校教育の中で、例えば視覚障害のところは充実しているかというと、これはやはり担当する教師等にもよりますし、それから地域の資源等にもよります。例えば南部と北部では全然状況が違いますので、そういうことも勘案して、イタリア全体でこうだというようなことはなかなか言いにくい状況があります。ただ、私が調査等をしております北部のところでは、かなり支援教師も熱心になっておりますし、大学の養成もわりとしっかりカリキュラム等も位置づけられてきているという印象は持っております。

【宮﨑委員長】 お願いいたします。

【貝谷委員】 社団法人日本筋ジストロフィー協会理事長、貝谷久宣です。
 資料6-3の1ページの下から10行目に「支援教師の資格は、大学終了後さらに2年間のコースを修了することにより取得できます」とあります。これは日本では初めから、教員は養護教員として入学試験から分けていると思います。これは非常にいいことじゃないかと思います。普通に全部教員の教育を受けて、そしてさらに2年間教育するというのは、より優秀な人が障害者の教育にあたるということになります。日本の場合は初めから、あまり言いたくないですが、多分、養護教員課程のほうが偏差値は低いのではないかと思います。そういう点で、より難しい教育をする人たちですから、これは日本の教育制度をもう1回見直したほうがいいだろうという気がいたしました。例えば、私は精神科の医者ですが、看護師なんかも、イギリスなんかは一般の看護師に、精神科は難しいからさらに教育を受けて、精神科専門看護師というのがあります。ということは、それだけ給料も高くなる。イタリアでは給料は高くどうもなっていないみたいですが、当然それは給料を高くして優秀な人材を育てるべきじゃないだろうか、こういうことが一番私は基本になるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

【宮﨑委員長】 何か。

【大内上席総括研究員】 今のジェルミニ大臣のもとで、例えば教員養成について経費縮減というようなことで、これまでそれらに力を入れてきたという背景があると思いますけれども、大学の単位時間を削減するとか、いろいろもめているような状況があるというようなことを聞いております。
 それからもう一つは、新しい制度のもとでは、小学校の教員免許を取得する教員に対して特別支援教育に関する単位を義務づけることになったというような情報が入ってきておりまして、これにつきましてはまだきちんとした正確な情報は入っておりませんので、また精査をしてみたいと思いますが、そのようなことで、多角的に対応しようとしているようです。それから、非常に財政的に厳しい中で、逆に障害児への対応が、若干力がそがれているようなこともあるという、そういうような昨今のイタリアの状況です。

【宮﨑委員長】 ちょっとよろしいですか。今、貝谷委員からお話があった特別支援学校免許状について若干現状と違うところがありますので説明申し上げておきますが、もちろん特別支援学校の教員養成課程というのはありますけれども、基本的には、まずは当該学校免許状を取得するというのが前提です。ですから、小学校、中学校、高等学校の免許を持った上で特別支援学校免許状を取らなければいけないということで、特別支援学校の教員免許を取る人は負担がそれだけ増えるという状況にある。ですから、プラスアルファをしている。なおかつ、例えば私の学校などでは、そこを専門に学びたいという学生が来ていますので、能力的に低いとか高いという、いろんな認識の仕方があると思いますが、決して遜色があるとは私自身は思っておりません。むしろ非常に熱心な学生が多いということ、特に最近の若い人たちは、特別支援学校免許状を取りたいという方が大変多くなっているということの認識だけはしていただきたいと。若干、補足します。

【貝谷委員】 日本筋ジストロフィー協会理事長、貝谷です。
 今、実は、全く素人ですので、この場でインターネットで調べました。そうすると、一般の教員免許を持っていない人は取りましょうというようなことを大学によっては書いているところがあるみたいです。ですから、そのあたりは、現実はどうかなと思います。私、これは今調べてお話ししました。それよりも一番問題なのは、初めから先生を区別して入学試験をやることのほうが問題ではないかというのが私の気持ちです。初めから差別して先生を作っているのではないでしょうか。

【宮﨑委員長】 ちょっとそれは違うとは思いますが、小学校教員養成、あるいは中学校、高校教員養成というように、それまで含めて考えると、今、学校免許状になっていますので、それをどう考えるかということになろうかと思いますので、また教員の資質向上のところで少しそれは議論をしていただければありがたいと思います。私が余計なことを申し上げて申し訳ありませんでした。

【宮﨑委員長】 3国のことでこれから少しご意見を頂戴できればと思います。それでは、尾崎委員、お願いいたします。

【尾崎委員】 全国特別支援学校長会の尾崎です。
 イタリアの教育制度で説明がなかった部分で質問をさせていただいて恐縮ですが、よろしくお願いします。イタリアの6ページのところに就学率が書いてあります。イタリアではインクルーシブ教育が一番進んでいるという御説明だったと思いますが、就学率を見ますと、初等教育が98%で、100%にはなっていません。それから上に見ますと、中等教育の後期中等教育の2年までが義務教育だということですが、中等教育は94%、95%になっているということで、6%、5%の子どもたちが義務教育からいなくなっていると考えられますが、その子たちは義務教育ではなくどこに行っているのかということが、もしわかったら教えていただければと思います。

【大内上席総括研究員】 国立特別支援教育総合研究所の大内です。
 これにつきまして、私も非常に強い関心を持っておりまして、いろいろな資料をあたってみているのですが、確たる、ここできちんとお答えするような資料というものが出てきておりません。さまざまな要因が考えられると思います。その中に、障害があるために通常の学校に行っていないという子もあると思いますが、その割合とか、そういうものは明確に出ておりませんので、ここでは明確な記述は避けさせていただいたというところです。

【尾崎委員】 一言だけ。全国特別支援学校長会は、この委員会でも、どんな障害が重くても学校教育の中に入れている日本の教育制度というのはインクルーシブ教育が一番進んでいるというような主張をずっとさせていただいていますが、その比較でいえば、やっぱりそれがまだはっきりしていないということであれば、その辺もインクルーシブ教育を考える上でどの子も教育制度に載っけるんだということの認識をまた新たにしたいなと思っていますし、イタリアの紹介もそのことにぜひ触れてほしいなと思います。

【北住委員】 むらさき愛育園長の北住です。
 イタリアの例で、下から14行目に特に地域保健機構との多様な連携、それから支援員の配置とあります。これが具体的にどのような形になっているのかお伺いします。といいますのは、合理的配慮をこれから種別ごとに検討する場合も、学校のマンパワーの問題も大きな課題だと思います。教員だけでは済まない状況があります。その中で、東京都においても外部専門家、2つの意味があって、より専門性の高いスタッフを学校に、質を高めるという意味と、もう一つは、介護士などを入れて、そういう面での生活支援の部分を教員がしなくても済むようにするという意味があります。私たちは、医療的ケアも、教員と看護師が連携して行い教育の質を高める、その意味からも、教育的な関わりとしての医療的ケアという側面が、そういう面が非常に教育の中でも重視されてきて、そういう志向性の中で行われてきたと思いますけれども、現実には教員も足りない、看護師も、かなり全国的に予算措置の中に入ってきていますけども、それでもやはり足りない状況の中で、それからかなり生活支援的な部分まで教員の手が回らないという部分の中で、重度な肢体不自由、あるいは医療的ケアを要するお子さんの、生徒の場合に、そこの人手の問題をどうするかということがこれからの大きな課題だと思います。特に地域によっても、都内でもそうですが、さらに地方の場合には、できるだけ身近なところでケアを得ながら、身近な学校でいながらいろいろケアを受ける場合に、例えばこれからの選択肢として、良いか悪いかは別として、例えば今医療的ケアなど、吸引等の検討が今厚労省で行われていますけれども、介護福祉法も一部改正があって、医療ケアの一定部分は介護福祉士が担えるようになっている。その中で、私としては、財源が限られている、教員が限られている中で、ある程度の専門性を備えた、そのようなヘルパーとかが学校に入って、それを支えるような形にしていかないと、できるだけ身近なところでのそのようなサービスが、特に医療的ケアを要する子どもの場合でもなかなか支えきれないのではないかと思います。それから、私が外来で関わっている、いわゆる発達障害のお子さんの場合、非常に多動であるとか、行動の問題がある場合に、やはり支援員が必要ですが、それはすべて教員である必要はありません。一定の頻度、関われるスタッフがいることが、その子どもたちが学校できちんと、通常学級でもしっかり学べるための条件でないかと思います。そういう意味では、今までの議論の中では、教員の質をどう高めるかということだけでしたけれども、教員以外のマンパワーを、教育の場におけるマンパワーをどうしていくかということが合理的配慮の中で、実質的に大きなテーマであると思います。それとの関連で、特に病弱、それから医療的ケアを要する生徒の場合に、地域保健との連携ということがあり、これからどうしていくかということで、このイタリアの場合に、いろんな議論はありますけれども、単にクラスの子どもの数が少なければそれで済むという問題ではありません。それだけではなくて、幾つかの配慮事項があります。その中で、特に地域保健との連携というのはある程度イメージはできて、やはり大きな課題だと思いますが、支援員の配置という、その支援員をどのような条件で確保しているのか。逆に、これはもうちょっと広げれば、例えば地域のボランティアとか、地域の方が、ボランティアさんがしっかり関わってくれれば支えられてくる部分があります。例えば、学生がある程度ボランティア的に関わることで支えられる部分があります。だからその辺も含めて考える必要があるのではないでしょうか。以前聞いた話では、かなり地域のボランティア的な人も学校に入って支えられているということを聞きましたので、支援及びそれらの地域での人々の援助といいますか、その点がどうなっているかという、これがかなり今後の大きなテーマだと思いますので、教えていただければと思います。

【宮﨑委員長】 大内先生、お願いします。

【大内上席総括研究員】 国立特別支援教育総合研究所の大内です。
 支援員につきましてはエデュカトーレという、日本語にそのまま訳せば教育士というような言葉で向こうでは使われておりますけれども、イタリアでは、学校は国立ですので、正規の雇用をされている教師は基本的に国家公務員ということになります。この支援員につきましては、市町村(コムーネ)が採用しているもので、支援教師の指示に従って重度の子どもの介護にあたったりとか、生活の支援にあたったりしている、そういう業務を担当している方です。よろしいでしょうか。

【宮﨑委員長】 あと、北住委員がおっしゃったようなイタリアから学ぶべき中身というのは、先ほど2ページのところで説明していただいたようなことを、今後私たちが合理的配慮の検討をするときに考えていく中身なのだろうと私も受けとめました。よろしいでしょうか、北住委員。それでは、品川委員。

【品川委員】 教育ジャーナリストの品川です。ありがとうございます。
 いくつか質問があるのですが、1つは、先ほど尾崎委員がおっしゃっていたことと全く同じでした。行っていない子どもはどこに行っているのだろうというのがよくわかりませんでした。
 2つ目は、評価は一体どのようになされているのかということです。子どもたちの指導の評価です。例えば、私はイギリスしかよくわからなくて、イタリアとフランスは初めてですが、英国の場合、実際に行って教育現場を取材してみますと、確かに公立学校にSENコーディネーターはいますが、あまり機能していないということがよくあります。例えばイギリスディスレクシア連盟(BDA)や専門家に、ロンドンで優秀なSENコーディネーターのいる学校を紹介してほしいとお願いしたことがあったのですが、「いや、ロンドンの公立学校には紹介できるようなところはない」「では、どこに行けばいいですか」「私立学校に行ってください」ということが何度もありました。そのかわり英国の場合、いつも私は本委員会で申し上げるように、オフステッドがあるので、ホームページを見れば、一定水準のことはやっている学校、やっていない学校などが一応わかるようになっています。そういった評価が例えばイタリアやフランスはあるのかどうか。要するに、一般の保護者が参考にできるような、この学校はこれくらいの指導をしていると国がオーソライズしているような制度があるのかどうかということを、お尋ねしたいのです。
 3点目は、英国の場合、例えばステートメントがあれば、地域の学校IEP通りの指導をやっていないというようなことを親御さん、保護者が申し立てて認められるとそういった教育を提供できる私立学校の費用を自治体が負担することがあります。これはアメリカもそうなのですが、インクルーシブの流れからしたらリバースストーム、つまり逆転現象といえると思うのですが、私立ディスクレシアの専門学校とか、自閉症の専門学校などを運営しておられるのが大学の教授等研究者たちで、教育現場にエビデンスベースのプログラムを入れて効果を上げているわけです。児童生徒がそこでニーズに応じた専門教育を受けるためのお金は自治体が払うわけですね。要するに高度な専門教育の費用を自治体が負うことによって子どもたちの真の教育権を保証するというような実質的な制度が、イギリスやアメリカには自治体によってはあるのですが、フランスやイタリアはそのあたりはどうなのでしょうか。つまり法律には定められているけれど、実質的には行われていないというとき、どのように対応しているのか、何か制度やシステムがございましたら教えてください。

【大内上席総括研究員】 国立特別支援教育総合研究所の大内です。
 イタリアから答えさせていただきますと、イタリアでは、かつてはかなり厳しい評価――評価は2つ、生徒への評価ということと、それからシステムとしての評価という、イギリスのようにオフステッドのような、学校をちゃんと評価するようなシステムがあるかというと、イタリアにはそれはないと思います。
 それから、子どもへの評価に関連しての話では、ちょっと論点がずれるかもしれませんが、かつてはかなり厳しくて落第等がありましたが、近年は、10段階で6以下は落第というような1つの原則が義務教育段階で設けられておりますが、実質的には非常に柔軟に対応しています。それから、障害があると認定された子につきましては、先ほど言いましたように、個別の教育計画が評価の柱となりますので、それに基づいて評価をされるということになっています。義務教育段階、これは第1サイクルと呼んでいますが、そこでの評価は非常にそういう意味では柔軟に対応されていますが、第2サイクル、後期中等教育、それから高等教育機関、これは評価が大変厳しいです。ですから、障害がある、なしということではなくて、一般の生徒もかなり落第をしている。きちんと所定の成績をおさめないと上級に進級できない。ですから、卒業資格が大変そこのところは厳しい。多分、これはヨーロッパ圏はみんなそうではないかと思います。

【品川委員】 品川です。ありがとうございます。私がお尋ねしたかったのは、個々のニーズに対して、こういう指導をしなければいけない、というような個別の教育計画(IEP)等はどこの国も作ると思うのですが、作るだけで、実際やっているかどうか、そこの確認はどのように行なわれているかということです。要は、作りっ放しもしくは、やりっ放し、になっていないのか、実質的に保障されているかどうか確認されているのか。残念ながら我が国に限らず英国でも米国でもまだまだ子どもの成果が上がらないのは子ども本人の頑張りが足らないから、と指導する側が捉える傾向があります。そういった指導する側の問題や子どもの指導内容の評価についてです。

【大内上席総括研究員】 国立特別支援教育総合研究所の大内です。
 評価のところ、原則としては保護者が必ずその評価に関わるということになっておりますので、保護者の目が入っているということで、組織的にイギリスのようにオフステッドのような公的な機関を設けて査定をしているというようなことはないと思います。

【棟方総括研究員】 国立特別支援教育総合研究所の棟方です。
 フランスについてお答えさせていただきます。フランスでは、個別の指導計画につきまして、個別の指導計画のフォローアップチームというものを作ります。その中には親御さんが入ったり、担当教師という、いわゆるリーダーになる方が決まっているのですが、もちろんその方が親御さんとの関係をとっていくんですが、年に一度、個別の指導計画の実施について評価をして、次の計画を新たに立てていくということは義務づけられて、そのチームのフォローアップですけれども、一応年に1回、あとは必要に応じて行うというような体制があります。ただ、フランスも知育が中心ということになりますので、サービスの提供の評価というよりは、お子さんの成績が伸びているのかどうかというところにも目がいくのかなというように思います。
 それから、専門性の質の高い教育というような意味では、例えば特別クラスなどには専門のいわゆる特別支援の免許を持った先生と、それから、そこにもちろん支援員もつきますけれども、支援員はほとんど無資格というか、資格がなくてもいいというぐらいの補助員ということで入るのですが、特別支援教育施設から特殊教育の指導士という人たちとか、日本にはないものですが、運動、心理療法の方とかが入り込んで指導するという形になっておりますので、特別クラスの中での指導は質の高いものになってきているのだろうと理解しております。

【宮﨑委員長】 よろしいですか。それでは、山岡委員。

【山岡委員】 今日はありがとうございました。これは実は、それかどうかわかりませんけれども、私が去年、この委員会の中で、この特別委員会の検討は障害者の権利条約の批准に向けた検討でもありますし、各国で批准されている国も結構あるので、各国の状況や批准に向けた検討状況についてぜひ調べて教えていただきたいということを申し上げて、今日はそれを果していただけたということだと思いますので、非常にありがたかったと思います。ありがとうございました。
 何となく日本ではわりとこういう障害者の権利条約について厳密に考えて、こうしないと批准しちゃいけないのではないかというところがありますが、比較的各国の状況を見ると、あまり厳密に考えていない国もあり、そこまでまじめに考えなくていいのかなみたいなところがちょっと見られておもしろいなと思いました。イギリスについて御質問させていただいてよろしいでしょうか。イギリスの資料でいただいた2ページのところ、これは訳し方の問題で、ここは原文がもしあればいただきたいなと思うのですが、ここの2ページの下のほうで、批准について、「国内法では特別な教育的ニーズのステートメントを持つ子どもたちの就学にあたって」、そこからなんですけども、「保護者がそれを望まない場合と他の子どもたちの効果的な教育の手立てと矛盾しない限り」と2つのことが書いてあって、英文でどうつないであるかちょっとわかりませんが、保護者が望まない限りメインストリームで教育しなければならない。それからもう一つの項目についても、そこの場合はメインストリームで教育しなければならないとなっているのかどうか、ちょっと原文を見たいと思いますので、ぜひ次回にでもご提供をお願いします。さて、「保護者が望まない限り」というのはわかりやすいですが、後段のところはすごいことを言っていると思います。要するに、他の子どもに迷惑をかけない限りということを言っているのかなと読み取れるのですが、そういうことなのでしょうか。
 もう一つ、記憶で申しわけないのですが、イギリスは障害者の権利条約に批准しましたけれど、教育の部分の24条、ここでは解釈宣言をして通したように美しく書いていますけど、24条については留保したのではなかったでしょうか。批准しましたたけれど、24条については留保したというのを、たしかどこかの国で、たしかイギリスだったような気がします。24条のaって何のことを書いてあるかというと、「Persons with disabilities are not excluded from the general education system on the basis of disability」というところで、要するに障害のあるお子さんが障害を理由としてgeneral education systemから排除されないというところです。すごく大事なところを言っているのですけれども、ここで言っているイギリスの批准の仕方なのですが、これでいくと、一番最初に言った保護者が望まない限りというところ、メインストリームの教育に入れるということがみなされているのであれば、ある意味、今のイギリスの教育システムは、このgeneral education systemを満たしていると言えますが、本当にそうなのかというところと、24条を留保しているのであれば、ここが気になるなと思うので、もう一度ここのところを、もし今おわかりならお教えいただきたいと思いますし、次回でも結構ですから、ちょっとお示ししていただきたいなと思います。

【宮﨑委員長】 お願いいたします。

【横尾主任研究員】 国立特別支援教育総合研究所の横尾です。
 まず、保護者の希望と、それからあとは他の子どもとの効果的な教育の矛盾しない限りという文言は、2001年特別支援教育・・・・・・、正式な名称は忘れたのですが、法律の文言をここに書き込んでいるというような形です。その法律において、保護者が希望しない、または他の子どもとの効果的な教育と矛盾しない限りは特別学校以外の学校に入学するというような文言が定められています。それがここに反映されているわけなのですが、他の子どもとの効果的な教育と矛盾しないというのはどういうことかというのを現地の人と少し話をしたときに、実際のところどういったものなのかという規定はあまりされていないというお答えでした。どういった場合にそのようになるのかというと、例えば少し衝動的な行動があって、他の子どもを殴っちゃったりとか、余りにも立ち回りすぎて授業がなかなか難しい場合とか、そういったものについて対象となると。その対象となる子どもに対しては、学校長が、これこれこういう理由でこの学校にいるのはちょっと難しいですよというような書類をたくさん書いて、それを地方行政当局に上げて、それが一般的に認められる内容だろうということであれば、そこで特別学校に行ったほうがいいのではないですかというようなプロセスに移るというような流れです。
 原文については、次のときにお示しするような形でよろしいでしょうか。確認させていただきたいと思います。

【宮﨑委員長】 原文については確認していただいて、事務局に届けていただくというような形でお願いできますでしょうか。

【横尾主任研究員】 はい、そのようにいたします。法律の部分の押さえがまだ確実ではないのですが、解釈宣言として留保していると、それで批准をしたというような流れだったかと思っております。

【山岡委員】 別に24条について留保することを宣言して批准しているわけではないと見ていいですか。私はちょっと見ただけなのですが。

【横尾主任研究員】 確認させていただきます。

【山岡委員】 はい。よろしくお願いします。

【宮﨑委員長】 ちょっと時間が延びておりまして申しわけございません。青山委員。どうぞ簡単にお願いいたします。

【青山委員】 全国高等学校長協会の青山です。ありがとうございます。
 今回、この3つの国の教育についての資料をお示しいただいているわけですが、以前もアメリカとイギリスについては議論の流れの中で資料提示をいただいていると思います。先ほどイタリアのところで、くしくも質疑応答の中で、南部と北部で相違するというお答えをいただいた部分があったと思うのですが、私、今日この3つの国を見ていて、例えばイタリアであれば、北部イタリア、中部イタリア、南部イタリア、イギリスであれば、イングランドとウェールズとスコットランド、それからフランスであれば、県別になっていますけども、パリを中心として、そしてフランス全体ということで。今回お示しいただいたものというのは、そういった地域的なところでの濃淡ではなくて、イギリスという国全体で、そこからオーソライズされたものでこのレポートは作っていただいていると考えさせていただいてよろしいかということが1点。
 それから、イタリアのところで、先ほど、上から3段落目のところの1992年からの第104号法律について御紹介いただいたのですが、ちょっと私、聞き取りづらかったのは、この基本法というのは時限法であるのか恒常法であるのかというところをもう一度教えてください。それが2点目です。
 それから3点目なんですが、イギリスのところで、教育システムについての第2段落のところの1行目の終わりのところから、「法定評価によってステートメントを得るというプロセスが代表的なものとしてあげられています」、これは大変重くて、そしてその後、それをもとにして続いていくのですが、ちょっと私、読み取りができなかったのは、この主語はだれなのでしょうか。法定評価というのは今までも出てきたのかもしれないんですが、この法定評価はだれが与えるのかということだけ、もう一度確認をさせてください。

【宮﨑委員長】 それでは、お願いいたします。

【大内上席総括研究員】 国立特別支援教育総合研究所の大内です。
 イタリアの法律についてまずお答えさせていただきますが、1992年の第104条の法律は、いわばイタリアのインクルージョンのシステムを集大成したというもので、恒常法です。これによって幼稚園から大学まですべての学校段階でインクルージョンをするということが規定されたということになります。その前までにだんだん義務教育から高等学校と上がってきておりまして、この1992年で、すべての段階で通常の学校に障害のある子も行くということが規定されたということです。
 それから、今回紹介させていただきましたのは、基本的にイタリアの国としてどういう動向があるかということでございまして、先ほど言いましたように、南部地域と経済的な状況が違うというようなことがあって、その対応に若干ずれがあると思います。ただし、そのことについて明確に把握しているというか、客観的なデータとしてきちんと裏づけるようなものが出ておりませんので、ここではそこまで踏み込んでは説明させていただくことができませんでした。

【棟方総括研究員】 国立特別支援教育総合研究所の棟方です。
 フランスについてお答えいたします。フランスは完全に中央集権の教育をとっておりますので、すべての県に大学区と視学官が置かれまして、全国のものが統一して行われる。この件も、国の国民教育省、全フランスにおいて行われていることと了解しております。

【横尾主任研究員】 国立特別支援教育総合研究所の横尾です。
 まずは制度的にイギリスとしてオーソライズされているかという件ですが、まずは、イギリスは4カ国が連合している連合国ですので、若干国によって制度は違うと解釈されています。しかし、基本的に教育制度に関しては、イングランドと同じような形で4カ国が行っているというような実態があります。私のほうでスコットランドとか、そういったところは残念ながら全部は押さえていないのですが、障害児教育制度に関しては、若干の違いはありますが、ほぼ同じような制度をとっているというようなことまでは確認しているというような状態です。条約の批准に関しては、イングランドが批准したわけではなく、ユナイテッド・キングダムとして批准しておりますので、一応ここで解釈されていることは4カ国共通しているものだと解釈できるのではないかと私は思っております。

【河本委員】 全国特別支援学級設置学校長協会の河本です。
 時間がないところで恐縮ですが、1点だけ教えてください。教員の専門性に関することです。イタリアの例で、資料の6ページの下から3行目、上の4行目から続いていますが、下から3行目のところで「高年層が多い」と一言が入っております。平成21年度全特協で全国調査をして、今日の事務局の提供いただいた資料4番にも関係しますが、平成21年度、全国で特別支援学級の数が約4万2,000ありました。最低でも4万2,000の学級担任というか、担当者がいるわけです。おそらくプラス1で配当されているところもありますので、それよりもはるかに多い数の学級担任。その学級担任が経験年数をどれぐらい持っているかという調査をしたときに、ゼロ年、1年、2年、3年、4年、5年。5年以下で55%を占めていました。今の全特協では一番大きな課題の1つで、教員の専門性をどう高めるかということで今苦慮しているところですが、このイタリアの例で、高年層が多くなっています。どのぐらいのところに当てているのかわかりませんが、高い年齢層とイコールで経験年数と結んでリンクしているのかどうか。経験年数があるのかどうか、それだけ教えていただきたいと思います。

【大内上席総括研究員】 国立特別支援教育総合研究所の大内です。
 イタリアの義務教育段階の教員の動向についてきちんと把握している状況ではございませんが、ここに書いてありますように、女性が多い、南部出身者が多いというようなことで、高齢層は大学卒業した後からずっと教員をやっている、経験が豊富な方が多いと考えていいかなと思います。ということでよろしいでしょうか。ここのところは通常の学校のベースですので、特別支援教育という分野で、いわゆる支援教師というところで経験数が多いかどうかということはちょっと不定です。

【宮﨑委員長】 齋藤委員、どうぞ。

【齋藤委員】 特別区教育長会の齋藤です。
 実は今日と昨日、2日間にわたり全国都市教育長協議会が岐阜で開かれておりました。総勢300名ほどの会員が集まり、その中で特別支援教育について文科省からお話をいただきました。分科会会場には200名以上の教育長が集まっており、ぜひ委員会で言ってきて欲しいと言われたことがあるので、ちょっと主題と外れてしまって申しわけない部分もありますが発言させていただきます。
 その前に、先程のイタリアの障害のある子どもの教育についての話は、私どもには非常にうれしいというか、すばらしいなと思いました。特別支援教室の配置と学級の小規模化、日本ではやっと35人学級が小学校1年生に適用になったという段階の中で、これだけの整備をしていくのには、教育費としては、日本は今の何倍ぐらい使えば可能となるのでしょうかということと、イタリアもフランスも落第があるという中で、特にイタリアの場合に、、9ページの進級のところに書いてありましたが、これは、10段階で評価されて6に満たない者は落第となるというのは、障害者が入っていないような雰囲気で書かれていますが、ちょっとよくわかりませんでしたので教えていただきたいと思います。
 それから、12ページの○2のところです。「障害のある生徒が同じ学年に3度在籍する権利がある」と書いてあります。ということは、何らかの形で進級ができない場合があると解釈していいのかなと思ったのですが、この辺がいかがなものかということと、11ページの「教員が医療行為をすることはない」、これは実は昨日の教育長協議会の中で、非常にこの医療行為のところが課題になりました。医療的ケアをするお子さんが今、普通学級に入ってきております。私どものところもそうです。例えばたんの吸引をするお子さんが入ってきたときに、介護士と看護師両方がいないと普通学級に入れない。両方つけることは財政上至難の業です。でも、そのお子さんには普通学級で学ばせてあげたいという思いも一方であるわけです。この辺が大分昨日議論になりましたので、これを踏まえてということではないのですが、このあたりの見通しというのを、日本の状況を絡めながら御説明いただけるとありがたいです。

【大内上席総括研究員】 国立特別支援教育総合研究所の大内です。
 まず、落第ということですけれども、先ほど申しましたように、義務教育段階では、ここに規定されていますが、現実にはかなり柔軟に対応されているということ。それから、3度在籍するということは、3度在籍して、中学校段階ですけれども、卒業認定試験がパスしない場合は、卒業というようなことです。その後、高校に入るわけですけれども、高校の段階では、学業成績が重視されるということになります。そういうような形での対応と考えていただいたらいいかなと思います。

【齋藤委員】 障害者とは別ですかということです。

【大内上席総括研究員】 基本的には、そこに書きましたように、個別教育計画を作っているお子さんにつきましては、個別の教育計画がきちんと計画どおり履行されているかどうかといいますか、子どもが伸びているかどうかということが評価の対象になるということですので、一般の教科の物差しで評価をするということではないということになります。個別の教育計画が作られていない子どもについては、10段階のうち6以上クリアしないと及第になるという、原則としてそのように定められているということです。
 それから、医療的ケアですけれども、この辺は、教員は学業を教えるというようなことがベースにあって、先ほど申しましたように、かなり医療機関と連携して対応しておりますので、何か課題が出たときにはそういう関係機関の医師等と連絡を取りながら対応しているということです。

【齋藤委員】 普通学級に入るお子さんというのは、関係機関との連携のレベルではなくて、常に医療的ケアが日常的にまとわりつくということも配慮しての医療的ケアだと思うのですが、これは関係機関ということではなくて、常時そこにいる、あるいは1日のうちに何回か医療的ケアを行うというところも含めてという意味でよろしいですか。

【大内上席総括研究員】 国立特別支援教育総合研究所の大内です。
 これもきちんとした、体系的にどのように整備されているかというようなことについては定かな情報がありません。ただ、私が見学させていただいたところでは、授業中等でも外部の医療機関の医師や看護師と連絡を取りながらいろいろ情報を得たりしているというようなことで対応しておりました。ただ、そこにすぐに来ているかどうかというようなところは見ておりませんでしたけれども、具体的なところについては課題ということでもう少し精査をさせていただきたいと思います。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。まだまだたくさんお伺いしたいこと等もおありかと思いますが、特に参考として出されている中身も含めて、もしもう少し実態を聞きたいというような場合には、事務局に問い合わせをしていただいて、まとめて特総研から回答をいただくというようなことでお願いできればと思います。大内先生、横尾先生、棟方先生、ありがとうございました。
 それでは、大変時間が押してしまいまして、お約束の時間を35分も超過してしまいました。本日の委員会はこれまでといたしたいと思います。
 最後に、事務局から連絡をお願いいたします。

【板倉特別支援教育課課長補佐】 特別支援教育課課長補佐の板倉です。
 次回第11回特別委員会の日程につきましては、追って御連絡させていただきます。
 最後に、事務連絡が2点あります。
 1点目ですが、前回の議事録の案をお配りしておりますので、こちらにつきましては、修正等あります場合は6月3日金曜日までに事務局まで送付いただきますよう、よろしくお願いいたします。
 また、2点目ですが、今後の開催にあたり日程調整表をお配りしておりますので、御記入の上、こちらも6月3日までに事務局まで御送付いただきますよう、よろしくお願いいたします。

【宮﨑委員長】 それでは、本日はこれで閉会といたします。御出席をいただきました委員の皆様方に改めてお礼を申し上げます。ありがとうございました。

―― 了 ――

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