特別支援教育の在り方に関する特別委員会(第5回) 議事録

1.日時

平成22年10月25日(月曜日)15時00分~18時00分

2.場所

文部科学省東館3階 第1講堂

3.議題

  1. 自由討議
  2. その他

4.議事録

【宮﨑委員長】 それでは、定刻となりましたので、ただいまから第5回中央教育審議会初等中等教育分科会特別支援教育の在り方に関する特別委員会を開催いたします。
 本日は御多忙の中、御出席を賜りましてありがとうございます。
 本日の委員の出欠状況ですが、岡上委員、貝谷委員、河本委員、向山委員が御欠席、そのほかの委員は御出席でいらっしゃいます。なお、清原委員は、御都合により遅れて到着される予定です。
 また、本日は笠文部科学大臣政務官に御出席をいただく予定となっていますが、所用により遅れて御出席とのことです。
 毎回申し上げていますが、本特別委員会においては、御発言される場合には必ず挙手をした上で、御名前を述べてから御発言いただきますようお願いいたします。また、通訳の方のために、御発言の際はゆっくり御発言をいただきますようにお願い申し上げます。また、御発言される際には、傍聴者の皆様にも聞こえるように、マイクに近づいて御発言をお願いいたします。
 それでは、議事に入ります。これより先は、議事の進行に支障を来す可能性がありますので、カメラの使用を御遠慮ください。
 本日は、特別委員会において、論点整理に向けた主な意見について、自由討議を行う予定としています。
 はじめに、事務局から配付資料についての説明をお願いいたします。そして、その後、論点整理に向けた主な意見の前半部分にあたる総論、それから就学相談・就学先決定の在り方について説明をいただいた後に、前半部について自由討議を行っていただく予定です。さらに、事務局から論点整理に向けた主な意見の後半部分である特別支援教育を推進するための人的・物的な環境整備、教職員の確保、専門性の向上のための方策についての説明をいただいた後に、後半部について自由討議を行い、最後に、全体について自由討議を予定しています。本日は、各項目について一通り御議論をいただきたいと考えています。
 それでは、まず資料について、事務局から説明をお願いいたします。

【横井特別支援教育企画官】 特別支援教育企画官の横井です。まず配付資料の確認ですが、議事次第のとおり、資料1から9までの9点があります。また、参考資料につきましては、参考資料1、2と、2点あります。不足がありましたら、随時事務局までお申しつけください。
 それでは、事務局から提出しました配付資料について説明させていただきます。
 まず、資料2を御覧ください。資料2は、「General Education System(教育制度一般)の解釈について」というものです。こちらは条約上の用語の定義の整理です。参考でお示ししておりますとおり、第24条の教育の条項で、第2項(a)(d)において、「general education system」という用語が出てまいります。外務省が作成した署名時の仮訳としましては、「教育制度一般」とされておりますが、この用語に特別支援学校が含まれるかについて外務省に確認しましたところ、資料のとおりの回答がありましたので、報告いたします。
 「general education system」というのは、各国の教育行政により提供される公教育であり、特別支援学校等での教育も含まれるとの認識が条約の交渉過程において共有されていると理解しているとのことであり、「general education system」には特別支援教育が含まれていると解されているとのことでした。本日の御議論の参考にしていただければと思います。
 続きまして、資料3を御覧ください。資料3は、「学校評価について」です。前回、学校で行われている教育や教員の研修について、きちんと評価がされているかどうかという御議論をいただいたところですので、現在、初等中等教育段階で行われている学校評価について紹介させていただければと考えています。
 初等中等教育段階の学校評価は、学校の教育水準の向上と保証を図る上で、学校の教育活動の成果を検証し、必要な支援・改善を行っていくことが非常に重要であるとの認識のもと実施されているところです。そのため、平成19年に学校教育法、学校教育法施行規則を改正し、「1.目的」に記載のとおり、「学校運営の組織的・継続的な改善を図る」「各学校が保護者や地域住民等に対し、適切に説明責任を果たし、その理解と協力を得る」「学校に対する支援や条件整備等の充実につなげる」を目的とし、「2.内容」に記載のとおり、「自己評価」の「実施・公表の義務」、保護者等の学校関係者による「評価の実施・公表の努力義務」、「評価結果の設置者への報告義務」が規定されました。これらの規定に基づきまして、文部科学省で作成した学校評価ガイドラインに基づき、各学校及び教育委員会において、学校の評価の取組が進められています。
 実施状況につきましては、裏面の4.を御覧ください。平成20年度間の学校評価等実施状況調査を記載していますが、自己評価につきましては、公立学校で約99%、国立学校で約97%、私立学校で約65%、それぞれ実施されています。その評価の項目につきましては、各学校で設定ができることとされていますが、前回までの議論で関係のある箇所だけ紹介させていただきますと、<自己評価の評価項目(国公私立学校合計)>において、研修82.2%、それから特別支援教育61.1%ということで、それだけの学校で評価をし、評価項目として挙げているということです。
 資料3の表面を御覧ください。「保護者、地域住民等の学校関係者が、自己評価の結果を踏まえて行う評価」という学校関係者評価の項目も、併せて実施されています。裏面のデータでも記載していますので、後ほど御参照いただければと思いますが、公立学校で81%、国立学校で約85%、私立学校で約27%と、それぞれ実施されているところです。
 さらに、第三者評価につきましても、昨年、平成21年度に文部科学省で設置された「学校の第三者評価のガイドラインの策定等に関する調査研究協力者会議」において、ガイドラインに盛り込むべき事項について御議論・御報告をいただき、それを受けて、文部科学省において、本年7月に学校評価ガイドラインを改訂して、第三者評価の内容を追加したところです。第三者評価、ここには「外部の専門家を中心にした」と書かせていただいていますが、この協力者会議等で具体的に議論になっているところでは、教育学等を専門とする大学教授、校長経験者や指導主事経験者など、学校運営に関与した経験のある者、学校運営に知見を有する民間研究機関やNPO法人、PTAや青少年団体など、学校と地域の連携に取り組んでいる団体の統轄団体の役員など、学校と地域の連携に知見を有する者、組織運営に造詣の深い企業や監査法人等の構成員といった専門家ということを具体的にはイメージしているということで、そういった方々を中心とした評価者により、専門的な視点を行う評価としています。以上で配付資料の説明を終わります。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。今の説明で、何か御質問はありますでしょうか。よろしいですか。
 それでは、続きまして、論点整理に向けた主な意見等の前半部である総論、就学相談・就学先決定の在り方について、事務局より説明をお願いいたします。

【横井特別支援教育企画官】 特別支援教育企画官の横井です。引き続き、資料4を御覧ください。
 事務局からは、本年度内に一定の結論を得ていただく、また、年内には中間的なとりまとめをしていただくということでこれまでお願いしてきたところですが、中間的なとりまとめといたしまして、本特別委員会としての論点整理をしていただきたいと考えています。
 ここで論点整理の前段階として、資料4のとおり、これまで御審議いただいたものを事務局で論点例の大項目に概ね沿った形で整理いたしました。これまでの委員からの御発言や、資料として御提示いただいた内容、それから各府県市からのヒアリング、事務局からの説明を整理させていただいています。十分に盛り込めていないかもしれませんので、その点については、御指摘いただければ幸いです。
 また、意見等の整理に当たっては、同じ種類のものを一くくりとさせていただき、事務局で見出しをつけさせていただきました。これについても、各委員に御確認いただきたく思います。用語についても、できる限り統一性を持たせていただいています。特に条約上の「inclusive education system」という用語については、「インクルーシブ教育システム」という用語を使用していますが、外務省の署名時の仮訳では、「包容する教育制度」となっていますので、冒頭では括弧書きでお示ししているところです。
 それでは、まず資料4の1.の総論、2.の就学相談・就学先決定の在り方についてを御覧ください。
 まず1.の総論ですが、総論につきましては、インクルーシブ教育システムの理念・方向性、「共に学ぶ」ことについて、インクルーシブ教育システムと地域性ということで区分して整理させていただいているところです。まず1ページを御覧ください。事前に御覧いただいているかと思いますので、全部を読み上げませんが、大体どのあたりに何が書いてあるかということを説明させていただくような形で進めさせていただきます。
 まず(1)としまして、インクルーシブ教育システムの理念・方向性として、考え方、方向性についての意見等を一くくりにさせていただきました。最初に特別委員会の基本的な方向性として、例えば1つ目の○にあるように、「インクルーシブ教育システムの理念・方向性については賛成である。」「インクルーシブ教育システムと特別支援教育の最終目的は、いずれも共生社会の実現であり、同じ方向と言える」といった意見を挙げています。そのあとに引き続きまして、順に、いずれもインクルーシブ教育システムと特別支援教育の関係といったような意見等を挙げさせていただきました。2つ目の○から6つ目の○において、どのような制度としていくべきかといった総論的な御意見を挙げさせていただきました。また、1ページの下から2ページ目にかけて、インクルーシブ教育システムと教職員の関係についての意見を挙げさせていただきました。
 2ページ目を御覧ください。次に、「共に学ぶ」ことについて、子どものニーズ、それから障害のある子どもと障害のない子どもが共に学ぶ際に考慮すべきこと、環境整備、条件整備の条件や重要性についての意見等を挙げさせていただいています。
 2ページの下からですが、ここでは(3)インクルーシブ教育システムと地域性といたしまして、地域性にかかわる意見等を一くくりにさせていただきました。
 次に、3ページ中ほどですが、ここからは2番目の大きなくくりとしまして、就学相談・就学先決定の在り方としまして、(1)「早期からの教育相談」、(2)「就学先決定の仕組み」、(3)「一貫した支援の仕組み」、(4)「就学相談、就学先決定に係る国や都道府県教育委員会の役割」といった区分で整理させていただきました。
 (1)の早期からの教育相談につきましては、早期からの教育相談についての意見等をまとめさせていただいていますが、4ページ目の3番目ぐらいの○から、家族支援についての意見等を挙げさせていただきました。
 4ページ目中ほどからですが、(2)としまして、就学先決定の仕組みとしています。就学先決定としましては、就学先の決定、それから継続的な就学相談といった2つに分けて整理させていただいたところです。4ページ目の中ほどから、まず就学先決定についていただいた御意見等を整理させていただいているところです。それから、6ページ目の中ほどから、継続的な教育相談についての御意見等を整理させていただいているところです。
 それに引き続きまして、(3)といたしまして、一貫した支援の仕組みとさせていただいています。幼少期から成人までの一貫した支援の取組が現在少しずつ始まっているというような意見と、また、教育としてキャリア教育を位置付けていくことの必要性についての意見等を、ここで挙げさせていただきました。
 続きまして、8ページを御覧ください。8ページ、(4)としまして、就学相談、就学先に係る国や都道府県教育委員会の役割についての意見等を整理しています。就学事務は基本的には市町村教育委員会が担うことになっていますが、国や都道府県教育委員会が何をすべきかといった内容のものを挙げさせていただきました。以上、非常に簡単ですが、説明を終わります。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。ただいま説明をいただきました論点整理に向けた主な意見等の前半部分の自由討議をこれから進めるに当たって、私から一言話をさせていただきます。
 送っていただいたものを少し整理する形で考えてみました。まず総論につきましては、今も説明にありましたように、これまでの議論の中で、インクルーシブ教育システムを構築していくことについては、皆さんおおむね異論がないところと思います。その中で、インクルーシブ教育システムの構築の進め方として、常に場を共にするという追求をしていくのか、それとも、それぞれの子どもにとって最も適切な教育は何なのかという観点から多様な場を用意するといった、現在の進めている特別支援教育の仕組みを発展させていくかというようなことが論点になるかと思います。このようなことを中心に議論を深めていただければいいのではないかなと思います。
 また、学校、地域、さらには国民の理解・啓発が重要になってくるかと思います。そのような点についても、ぜひ議論をお願いしたいと思います。
 さらに、障害の定義について、いろいろこれまで障害があるとかないとかという、あるいは区分といったようなことではなくて、スペクトラムと言ったらいいかと思いますが、障害の重度の人から軽度の人までさまざまであるという議論もあったと思います。WHOでのこれまでの整理などを見ますと、医学モデル、社会モデルといったような問題を克服して、特にICFという国際生活機能分類が国際的には提案されているかと思います。そういったような観点からも、現行の特別支援教育をどう考えていく、どう変えていけばいいか。あるいは、今回の学習指導要領では、特別支援学校においてはICFの観点からの教育の在り方についての提案等が出てきているわけですが、そういったようなことなども踏まえながら、ぜひ活発な御発言をお願いできればと思います。
 2番目の就学相談・就学先決定の在り方についてです。まず早期からの教育相談を行うことの大切さということについて御議論は一致していると思いますが、そのための教育相談の体制や保護者等への働きかけということについては、どのように行うことが適切なのかということもあろうかと思います。こういったあたりについて、非常にナーバスな問題等もあろうかと思いますので、そのあたりについても御提案をいただければと思います。
 また、就学先については、本人や保護者の意見だけで決めることがよいのか、それとも、本人・保護者の意見だけでなく、教育学、医学、心理学といった専門知識を持った人の意見を聞いて決定することがいいのかといったようなことがポイントになるかなと思います。現行のことを考えるとそういったことが考えられるわけですが、就学先の決定をする際に、本人・保護者と教育委員会・学校等の意見が一致しない場合はどうするのか、どんな仕組み、調整のための機関等、いわゆる仕組みをどうつくるかというようなことについて、皆さんのイメージがどんなものであるかといったようなことについても、御議論いただければと思います。
 就学先が一度決定されたら変えられないという思いというのが現在もあるようですが、決してそういうものではないとこれまでも言ってきているのですが、ではその柔軟さというのをどんな形で提案していけばいいのか、どうしたら柔軟な仕組みに変えられるのかといったことについても、ぜひ御提案いただければと思います。
 就学先の決定は、市町村教育委員会が行うことになっています。そのレベルを引き上げていく、つまり、就学先の決定の質保証ということが前回いろいろ言われたわけです。この体制を強化していくことが非常に重要であると私も思いますが、そのためにはどうしたらいいのか、国や都道府県がどんな支援をしていくかといったことについても御議論をいただければと思います。
 非常に時間がない中で、できるだけ集約した形で御議論をいただければと思いましたので、大変僭越なことですが整理をしてみました。私が申し上げたこと以外に重要なこともたくさんあるものと思いますので、そこも踏まえて自由に御議論いただければと思います。これから70分ぐらい時間をとりたいと思いますので、どの点からでも結構ですので、ぜひ御発言をお願いします。
 それではお願いいたします。

【大南委員】 全国特別支援教育推進連盟の大南です。総論にあたる部分ですが、実は土曜日に東京のある区の特別支援学級の連合運動会に招かれて見てまいりましたが、特別支援学級は、小学校・中学校の数から言いますと、設置率が40%ぐらいです。その中で大変うれしいなと思ったのは、中学生がボランティアとして運動会の運営にかかわっている。この点は非常によかったと思いますが、まず申し上げたいのは、特別支援学級の設置の状況が市町村によってかなり違っている。高い市町村は100%に近い。少ない市町村は20数%。これだけ差がありますと、地域の方々、あるいは市町村民の理解、さらには小学生・中学生の理解が随分違っているのではないだろうか。それから、さらには通級指導教室、通級による指導ですけれども、これは特定の時間だけ通級指導教室があるところへ通って特別な指導を受けるわけですけれども、これは交通機関が発達しているというか、自分の在籍している学校から通級指導教室がある学校まで短時間で行けるという条件が必要だと思います。そうしますと、大都市圏あるいは中核都市ぐらいで、さらにそれよりも人口の少ない地域の広いところでは通級指導教室というのは実は非常に設置が難しい。この両方を合わせた場合に、どれだけの学校で特別な教育が行われてきているか、そのことの理解が、校長を含めた教職員、さらには保護者、地域の方々に対して随分温度差があるのではないだろうかということを私は考えています。
 ですから、インクルーシブ教育システムを考えていくときに、設置率だけではありませんけれども、たくさんの学校に特別支援学級や通級指導教室が設置されている地域と非常に少ない地域では理解の度合いが随分違うのではないだろうか。その点を考慮しながら、今後、就学の仕方について考えていく必要があるのではないかということを申し上げたく思います。以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。大南委員の説明によると、特別支援学級の設置率や通級指導教室の設置を全国的に平均化していくといったようなことが大事だということでしょうか。

【大南委員】 それも大事なのですが、いろんな予算の関係だとか、あるいは、すぐには特別支援学級が設置できないということですから、例えば、交流及び共同学習を推進していくとか、地域の方々に特別支援教育あるいは障害のある子どもについての理解を深めるとか、あるいは小学生・中学生・高校生のボランティア活動、障害のある子どもとの触れ合いにかかわったボランティア活動を盛んにしていくとか、そういうことを考えないと、特別支援学級の設置だけでは解決はできないだろうと思います。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。交流及び共同学習であるとか、あるいは、いわゆる理解教育の推進といったことも含めての提案として受けとめたいと思います。ありがとうございました。
 続きまして、尾崎委員、お願いいたします。

【尾崎委員】 全国特別支援学校長会の尾崎です。これまでの特別委員会で、先ほど御紹介がありましたように、インクルーシブ教育システムの構築の討議とか、あるいは就学相談・就学先決定の指導の在り方の討議の中で、ときどき私ども全特長からも発言した個別の教育支援計画について資料を本日提出しましたので、資料6を御覧ください。資料6の説明、今討議しなければいけないことの内容について説明をしたいと思います。
 この資料は、表題にありますように、平成16年度に特別支援学校長会が行った文部科学省委嘱の「盲・聾・養護学校における『個別の教育支援計画』に関する調査研究事業報告書」の抜粋です。8ページに「『個別の教育支援計画』について」と書いてありますので、そこから抜粋してきました。
 8ページの上に、「個別の教育支援計画」の定義が書いてあります。「障害のある子どもたちの一人一人のニーズに応じて、乳幼児期から学校卒業後までの一貫した支援を教育、福祉、医療、労働等が連携して行うために『個別の教育支援計画』を策定する」とあります。このことが「個別の教育支援計画」の定義でもあり、また目的でもあり、方法をあらわすものであると考え、現在もこの文言で我々は使っていますし、また、特別支援教育の理念を表すものでもあろうと、それを実現するためのツールであるというような位置付けをしています。
 策定の背景については、8ページの下の段のほうに書いてあります。平成14年12月に「障害者基本計画」の策定の基本方向について、個別の支援計画を策定して、効果的な支援を行うことが示されました。そして、同時に、重点施策実施5か年計画(新障害者プラン)には、「盲・聾・養護学校において個別の支援計画を平成17年度までに策定する」ことが行動計画に示されまして、それに間に合うような形で全特長がこの調査研究をしたということになっています。
 9ページに移りますが、9ページの下の段に、この間の教育の動きというのが書いてあります。(3)の特殊教育から特別支援教育へというところですが、障害の程度等に応じて特別の場で行う特殊教育から、一人一人の教育的ニーズに応じて適切な指導及び必要な支援を行う特別支援教育への転換を図ることとし、そのために児童生徒数の量的な拡大、障害の多様化、重複化への対応、関係機関との連携、小・中学校等への支援を特別支援学校が行う、そんなことが必要になってきたということが、この「個別の教育支援計画」を策定する背景となっていると説明しています。
 それから、11ページの下に、「個別の教育支援計画」の全体図が載っています。真ん中が就学中ということで、その前が就学前、それから卒業後ということで、3つの丸があるのですが、その就学中の個別の支援計画をそこだけを取り出して、個別の教育支援計画としている。しかも、この連続性が非常に重要であるということを図示しているものです。
 それから、少し先に進みますけれども、その後、個別の支援計画と指導計画の関係とか、個別の教育支援計画の概要について載せています。具体的な説明は図表を用いて、後で説明したいと思います。
 それから、15ページには、「個別の教育支援計画」策定のための組織体制・システムの整備ということを書いています。ここで議論されているのは、支援地域をどう考えたらいいかということです。学区単位、あるいは区市町村単位に支援をしていくということも考えられますが、ここでは人口30万程度と言われる「障害保健福祉圏域」も参考になるのではないかというような考え方もとられております。また、都道府県ごとに「広域特別支援連携協議会」というものを設置して、このシステムが円滑にいくようなことも考えたらどうかということが書いてあります。
 そのあと、システムの整備の中で重要なことということで、項目としては、まず特別支援学校での組織体制をきちっとつくることが16ページの下の段、それから、小・中学校への支援をきちっとしていくことが16ページの最後の段に、そして、17ページへ行きますと、計画の引継の体制をきちっとして、支援の継続性を図っていく組織にしなければいけないこと、それから、関係機関である福祉、医療、労働等との連携を図り、それを活用することが重要であること、そして、この「個別の教育支援計画」の最も重要なことは、保護者も重要な支援者の一人であるということで、保護者の参画をきちっと図ること、それから、最後に、個人情報の保護と留意事項について述べてあります。このようなことをすべて行い、活用できる「個別の教育支援計画」をつくっていきたいというのが、特別支援学校の責務だと考えています。
 書式例を通して、内容について説明いたします。ページ数が消えていますが、右下に12と書いてあるページになります。本ページは元の報告書の73ページとなります。こちらのページを御覧ください。個別の支援内容の例ということで、乳幼児期から卒業後まで、小学部、中学部、高等部、卒業後までの考えられる例を載せています。そして、支援内容の最初に「家庭生活」、そして「学校等での生活」、その次に「余暇・地域生活」、そして「医療・健康・療育」への支援、そして前機関との連携をどうしたらいいのかというような留意事項が書いてあります。
 この項目を使って、それぞれの段階で具体的な個別の教育支援計画をつくっていくわけですが、その例が74ページです。ここで支援の目標については、この書式では、将来の生活・現在の生活についての希望ということが支援の目標ということで書かれています。そして、必要と思われる支援内容について書いてあり、それぞれの関係機関の具体的な支援について書かれていますが、ここで重要なのは、具体的な名前が入ることです。どこのだれが、どういうことをすると。そういう地域でのネットワークづくりをすることが具体的な教育支援になるのだと考えます。この書式では備考となっていますが、その欄に、評価とか具体的な相談内容をもしやったら、その記録とか引継内容を書くようにすることが重要かなと思っています。
 関係機関と進めていく「個別の教育支援計画」の策定の手続については、就学時の参考に、最後のページに載せてあります。策定の手順ということで載せてありますが、この一番左側が関係機関との連携で、就学前の関係機関とどのように学校は連携していくのか、そして、真ん中の段には就学段階での支援計画等について書き、右側の欄には個別の指導計画における保護者との取組について書くということで、就学相談が個別の教育支援計画につながり、そして、その内容が特別支援学校等で行われる指導での個別の指導計画につながっていくということを図示したものです。
 このように、特別支援学校を含むインクルーシブ教育システムは、地域の中で特別支援学校がこのような役割を果たしていく中で実現すると私は考えています。したがいまして、インクルーシブ教育システムの議論の中で、関係機関との連携で地域社会をつくっていくという議論も当然必要だろうと思いますし、その具体例として、「個別の教育支援計画」の策定の在り方について出させていただきました。そして、もう一つは、共生社会の実現のためには、一人一人に合わせて生涯を通じた継続的な支援が必要だろうということで、それについても、この「個別の教育支援計画」の策定をよりよいものにしていく過程で、そういう方向で進めていったらどうかと考えています。以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。一人一人のニーズに合わせた継続的な支援の必要性から、「個別の教育支援計画」を作成して、この計画を中心に教育をしていくのだという考え方の提案と思います。

【尾崎委員】 補足をよろしいですか。

【宮﨑委員長】 はい。

【尾崎委員】 全国特別支援学校長会の尾崎です。補足をさせていただきます。この「個別の教育支援計画」については、いろいろなところで全特長から宣伝をしています。まず、「フィリア」という介護等体験ガイドブックの中にも何ページかにわたり説明をしています。それから、幼稚園・保育園等における手引書も作成しています。それから、「小・中学校等における『個別の教育支援計画』の策定と活用」というものも作成しています。それから、「地域・家庭・学校のためのよくわかる『個別の教育支援計画』Q&A」も作成し、これはもう売り切れております。そして、これが先ほど紹介しました、「盲・聾・養護学校における『個別の教育支援計画』ビジュアル版」ということです。そのような形で宣伝にも努めております。以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 それでは、佐竹委員、お願いします。

【佐竹委員】 全国肢体不自由特別支援学校PTA連合会の佐竹です。今回は資料を出させていただきました。資料7を御一読いただけたらと思います。自由討議の中で、なかなか特別支援学校内のこと、PTAの活動のことを紹介する時間がとれないものですから、資料にしてみました。
 これは当会の全肢P連が毎年夏に行っています全国大会、その際に承認されました内容を、一部この会の資料に適するように変えましたが、内容はほぼ同じです。特に1ページの3分の1ぐらい上のところ、平成22年8月開催山形大会で承認された大会宣言文の重点項目というところを御覧ください。大会宣言文とさせていただいています。平成20年からこの形にさせていただきました。平成19年までは大会決議文と申しております。決議文というものをつくる団体さんはかなり多いのですが、宣言文としている団体はまだ少ないのではないかと認識しています。宣言文と決議文の違いは、決議というのは、要望し、陳情し、我々の要望を受け入れてほしいというスタンスに立ってつくられるものです。宣言文というのは、この項目に沿って我々も行政・関係機関とともに活動してまいりたい、参画してまいりたいというスタンスでつくり上げたものです。2ページ目の裏のほうにも重点項目は書いてありますので、これは今年出したものそのままですので、御一読いただけたらと思います。
 この中でも触れていますように、特別支援学校PTAは、ここ10年でかなり変わってまいりました。保護者の目線から御説明申し上げたいのですが、保護者の意識とか見識等が変わってきたのがほんとうにここ10年ぐらい、また、この数年で大きく変わってまいりました。かつては親御さんも、障害児を連れて歩くことが周りに迷惑をかけてはいけないとか、そのような意識が強くあったとよく話を聞きました。最近は、周りにも子どもの様子を知ってほしい、何がこの子が困難なことなのか理解してほしい、子どもには同情ではなくて障害を個性としてとらえてほしい、そういうような親御さんのお話を聞くことができます。
 現実は、その一方で、通常の学校に通っていた生徒が、中学校段階・高等学校段階でかなりの人数が特別支援学校・特別支援学級、特別支援学級は中学校にはありますが、高等学校にはありません、に編入してくる現実があります。さまざまな変革の部分で、保護者の意見を聞いてくれる、いろいろ参画するステージを用意してくれるということは大変ありがたいのですが、その一方で、少し保護者の事情も説明できたらと思ってお話しさせてください。
 家庭内の事情が変化します。特にお子さんが幼少期であればまだよろしいのですが、例えば障害のある子がいて、健常の子がいて、おじいちゃんがいて、おばあちゃんがいて、お父さんが働きに出てというのは普通の家庭ですよね。家庭の中で幼少期のころはいいですよね。おじいちゃま、おばあちゃまも、障害はあっても育てていく過程で大分協力してくれると思います。ですが、高校生ぐらいになりますと高齢化が始まりまして、今度は親の介護が始まります。昨今、大変社会が不景気です。父親の会社が倒産するとか、リストラに遭うとか、そこまでいかなくとも、最近収入減でお母さんがパートに勤めているなんてことは、特別支援学校の保護者においても普通にあることです。子どもが学校に行っている間にパートに何とか出て、子どもがスクールバスで帰ってくるまでに走って帰る。そんなことは普通に起こっております。そういったことも踏まえた、親御さんたちが何とか子どもたちの教育をしっかりとやってほしいということを思っているということを、まず御説明させていただきました。
 先ほどからお話に出ております就学先の決定ですが、就学先の決定に保護者と行政機関が同意できない場合、これからも多々あるのではないかと思っています。あって当たり前みたいなところもありますよね。大切なのは障害のある子どもの成長に必要な教育条件が整うこと、そういうふうに保護者は望んでいます。では教育条件って何かというところで、学校をどこにするかとか、個別の教育支援計画をどのように策定していくかとか、教員と保護者が協力できるような環境。親の思いどおりになるシステムをつくってほしいと願ってはおりません。本人・保護者への力添えを継続的にしてくれる相談支援が欲しいと思っております。
 もう一つのところで、副籍に触れさせていただきたいのですが、交流及び共同学習もそうですが、副籍・支援籍があることで、生徒として保障された交流の機会となるのではないかと、かなり親御さんのほうが期待しています。ただ、先ほど申し上げたような親御さんの家庭内の多忙な事情から、親が手を引いて昼間学校に行くということがかなり困難な事情もあって、なかなか希望者も出ないということも聞いています。ただ、親御さんたちは、特別支援学校に閉じこもっているのではなくて、やはり地域に出ていって、子どもの障害を理解してほしいと思っていることは間違いないと思います。そのためには、前回も申し上げたかもしれませんが、安定した財源を確保して、教員または支援者などの人材確保をお願いしたい。
 もう一つ、最後に学籍のことです。子どもたちの学籍をすべて通常の学校に置いてしまうと、特別支援学校の設置義務がなくなるのではないでしょうか。私、法律にはうといのでその辺はよくわからないのですが、先ほど来から申し上げておりますように、特別支援学校・特別支援学級というものがあって初めて先生方は教員免許状を取得し、子どもたちの成長に一役買ってくださるわけです。その学校の設置義務がなくなるということはどういうことになるのか、心配しています。こういうことであるということでお答えがあるのであれば、教えていただけたらと思います。以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。就学先の決定に伴う条件の問題、副籍・支援籍の制度化を進める場合のいろんな問題点。学籍については今質問がありましたが、事務局、いかがしましょうか。これは後にしますか。では、今の御質問については、後ほどまた整理をしてお答えするということでお願いします。
 それでは、北住委員、お願いいたします。

【北住委員】 文部科学省にまとめていただいた意見の2ページにあります、「共に学ぶ」ことについて、それから、前回の委員会で私が提出しました、机上の配付資料集の第4回の資料16について、前回これについて説明する時間もなかったので、これと、今の総論の例のテーマのことと一緒に関連付けながらお話ししていきたいと思います。
 第3回のときに、重症心身障害者・児を診療する立場から、そういう子どもたちの教育の配慮についての意見を提出いたしましたけれども、私は小児神経学会の社会活動委員会の副委員長もしています。主にいわゆる発達障害、知的障害も含む発達障害のお子さんたちへのインクルーシブ教育についての意見を学会としてまとめたのが前回の資料16です。小児神経学会というのは、主に、ここにあるように3,000名ぐらいの医師からなるものですが、例えば自閉症のお子さんでも、初めは言葉が遅いという主訴で、大体小児科医のところを訪れます。そういう関係からも、多数の医師が知的障害を含む広い意味での発達障害、それから、今の発達障害支援法でいう狭い意味での発達障害の子も診ております。その中でかかわっている者としての意見としてまとめたものです。
 今日のテーマの総論的なことも含めて、幾つかポイントがあります。総論的な事項に関してのまとめとしては、1つは、今までの、特にこの数年来、いわゆる特別支援教育として進められてきたことをどう評価していくのか。それがいわゆる分離の方向で、非常にマイナスの方向に行っているのか、あるいは相対的にはプラスと評価するのか、その辺が大きく見解が分かれる部分があると思います。私たちは臨床の場面でこういう発達障害のお子さんを多数診てくる中で、例えば我々の診療の場面では、初めに言葉のおくれということを主訴にして来て、その中でいろいろ判断しながら、いわゆる診断、診断の前の段階でのいろんな評価や御相談、アドバイス、その後の診断、それから、診断については、変わることがあるわけですけれども、そういうことを見ながらいく中で、学齢期においていろんな二次障害を、特に自閉症スペクトラムのお子さん、それからADHDのお子さんに関して、幼児期の保育園・幼稚園での対応、学校での対応の不十分さが要因となって、かなり不適応を起こしてきて、いわゆる二次障害を起こしてくるお子さんがとても多い。そのために自傷行為などが強くなってきて、薬を使わざるを得ないという、その二次障害をどう防ぐか、あるいは、発生してしまった場合にどう対応するかということが大きなテーマで、それは教育上の大きなテーマでもあるし、我々医者にとっても、そういうときの対応が大きな対応のテーマであります。私たち多くの者は、この特別支援教育が進んでくることによって、通常の学級での対応、通常の学級に通っているお子さんが通級に行って、そこでフォロー・サポートを受けるという対応、それから、やむを得ない場合には特別支援学級、あるいは、もう初めから特別支援学校でのいろんな対応が、まだまだ不十分でありますけれども、かなり改善してきているということをある程度共通して評価しています。これはアンケートをとってみた中でも、そういうことが一貫してあります。したがって、私たちとしては、今進められていることを、プラス面をしっかり継承して、今後の対応システムをつくっていただきたいということが大きな共通した意見です。
 その中で、ただやはりそれぞれの障害の特性をしっかり見据えた上で、配慮した上での対応を進めるべきだと。それで、この委員会ではまだその辺のところが――それぞれの障害の状況に応じての対応の特性といいますか、その辺のところがまだ議論が不十分な点があると思います。聴覚障害の方に関しては、一定の固有の文化性なり特別な配慮が必要であって、やはりある程度そのお子さんたちに対する場を分けた形での教育が望ましいという意見も一方あるわけですが、それは久松委員から提案されて、その辺のお話を十分に我々もお聞きする時間はまだとれていないと思います。ですから、それぞれの障害特性に応じての教育上の配慮、それがどういうような場で行われることが望ましいのかということの議論が、まだ掘り下げが不十分ではないかと考えています。
 私たちとしては、特別支援教育の一定の成果、プラス面を承継しながら、やはりそこでの不十分さ、あるいは再検討すべきところをしながら、ただ、やはりいろんな多様な選択肢はしっかり残しておいていただくということを望むというのが、我々、多く発達障害にかかわっている小児神経科医の多くの意見です。
 先ほどの文部科学省でまとめていただいた意見のまとめに戻りたいと思いますが、2ページ、「共に学ぶ」ことについてです。ここで、私が出した意見書の中の文章も入れていただいておりますけれども、5番目の○、「40人学級制などの現在の教育の枠組みや体制そのものが大幅に改善されない状況で、場を共にするだけの」云々と書いてありますが、これはやや偏った引用のされ方と思います。私としては、例えばイタリアなども、当初、いわゆる20人学級を想定しながら、その中でいろんな子どもが共に学べることを追求してきたわけです。ですから、今の枠組みの中で可能なことと、将来的に望むべきことと、それぞれ分けて考える。言いかえれば、私としては、ちょっとまた戻りますけれども、20人学級であって、しかも、いろんな地域のボランティアさんもかかわっていただく。それから、医療的ケアに関しても、学校スタッフだけに限らず、ヘルパーさんも学校に入れるとか、オープンなフレキシブルな対応が可能な体制であれば、場を共にするという形がかなり追求できるのではないかと考えています。
 ただ、今の基本的には30名台から40名台の中ではやはり難しいのであるだろう。ですから、それは一概に場を共にするべきだとか、あるいは別にすべきだということではなくて、今の体制でのいわゆる短期的な在り方と、中期的、もう一つは長期的な方向として追求すべきような在り方と分けて考える。それから、現状、当面はある程度今の大幅には変わらない、今のOECDの中では最低クラスの教育予算と。この枠としてここへ入れていただきたいのは、単に40人学級ということだけではなくて、教育予算そのものがOECDの中で最低クラスである、そういう財源的な枠組みの問題もありますので、そういう枠、その枠組みの中ではなかなか大きくは変えられない中での、短期的な中である程度分けざるを得ないようなお子さんもいる。ただ、それが20人学級でいろんなサポートがついてくる中では、一緒に学ぶことが十分できるであろうという、そういうグループのお子さんもいるわけです。だから、その辺で基本的な方向性、総論的には、長期的な望ましい方向性、それから中期的な展望、とりあえずの対応みたいに分けていかないと、きちんとした方向性が見えないままに進んでいくのではないか。
 それから、もう一つは、やはり地域性というのがあると思います。人口密集地と、それから、かなり人口分散地ですね。医療的ケアが必要なお子さんでもかなり人口分散地に住んでいる方がいますので、そういうお子さんの場合には、例えば10人ないし20人学級の中である程度、わざわざ遠くまで行かないでも、そこでいろんなヘルパーさんも入りながら、今の枠の中でもそういう少人数でいろんな方が一緒にいることがやっぱり望ましい部分もあるのではないか。ですから、時間的な問題と地域性の問題というのをそれぞれ押さえていかないと、一律には対応できないと思います。
 それで、私は「共に学ぶ」ことについては、2番目の○の文章でも書きましたけれども、それぞれの子どもが授業や活動に理解や共感、あるいは参加感を持ちながら充実した時間を過ごせるかどうか、これが基本だと思います。これに関しては、例えば小学校レベル、中学校レベル、また高等学校レベルでまた違ってくると思います。ですから、それぞれの教育の年齢、初等・中等・高等レベル、そこで何を求めるかということもはっきりさせておかないと、お互いの議論が食い違ってしまう部分があると考えています。とりあえずは以上です。

【宮﨑委員長】 さまざまな観点から御指摘をいただきました。もう申し述べませんが、例えば現在の体制でできること、これからの在り方も含めて、短期的・中期的・長期的な視点から整理をする必要があるのではないかとか、地域性のこと、多様な選択肢を残すことなど、現在の特別支援教育のよさを積み上げていく方向性がいいのではないかといったようなことについてお話をいただきました。
 それでは、品川委員、お願いします。

【品川委員】 ありがとうございます。教育ジャーナリストの品川です。概論につきましては、多分、どなたも御異論はないと思います。私の立場を改めてもう一度申し上げたいのですけれども、やはり自閉症にしても、LDにしても、ADHDにしても、脳の実行機能障害という観点から考えますとスペクトラムがあるということはわかっています。そうしますと、診断がついた児童生徒だけにニーズがあるというわけではありません。スペクトラムですから、軽度にしても超軽度にしても線引きすること自体がむずかしい。ですから、何らかの偏りがある児童生徒たちが少なからず通常の学級内にも特別支援学級や学校内にもいるのだという理解は、インクルーシブ教育を推進していく上では特別支援学校や学級は当然のことながら、通常の学級の先生方、あるいは管理職の方、それから学校職員の方々全員に必須の知識として持っていただかなければなりません。その上でそういった発生頻度の高い障害――この場合、障害と言ってしまうと、診断がなければ障害ではないということをよく取材現場で言われるので、私はいつも「偏り」とか「課題」という言い方をしておりますけれども――がある児童生徒たちの教育的ニーズを踏まえた個別及び集団指導方法や多様性を踏まえた学級・学校経営を行えるようなプログラムをしっかり導入するなどといった、受入れ側の体制を具体的に整え、また課題のない子どもたちに対しても認知特性や学習スタイルの多様性等について教育を徹底することがインクルーシブ教育を実質的に行っていく上で必須であろうと思っています。
 何度も申し上げているように、医学的な診断だけでは子どものニーズはわかりません。というのは、先ほどの先生がおっしゃっておられましたが、最初ADHDという診断が幼児の段階でついた児童が長じてアスペルガー症候群と言われたり、最初ADHDだった児童が小学校3年生以降に実はLDだったとわかったり、実は単独の課題だったのではなくLDもADHDもアスペルガー症候群も全部持っていたりすることは非常によくあるわけですから、この子はADHDだからこういう対応、LDだからこういう対応というような機械論的な対応では子どもの実質的な教育ニーズにこたえられないという現実があります。
 ですので、インクルーシブ教育を進めていく上では、先日中澤委員がとてもわかりやすい言葉をおっしゃっておられましたけれども、発生頻度の高い障害の知識や理解、指導の基本的な専門知識は教育に関わる人すべてが持つべきだと強調したいのです。読み書き困難な児童生徒だけでもおよそ50万人いるとわかっており、そういった児童生徒たち以外にも認知や学習スタイルに偏りがあって通常の学級内ではしんどい思いをしている子たちがいるということを忘れずに、その子たちを含めた指導、指導に加えてマネジメントをどうするかということを徹底していただきたいのです。その上で、より高度な専門知識や教育技術、経営技術は特別支援教育の先生方や特別支援学校の先生方がお持ちになり、専門家チームや巡回相談等をなさって現場をサポートしていけばいいのではないでしょうか。
 私事で恐縮ですが、10年前に小学館から本を出版した際に、もはや特別支援教育は従来の障害児教育の言いかえではない、ユニバーサルデザインエデュケーション、つまりユニバーサルデザインが教育に入ったものが特別支援教育なのだということを主張し、講演でも参考人として呼ばれたときも伝えましたが、当初はなかなか同意が得られませんでした。しかし、あれから10年たって、今ようやく、教育のユニバーサルデザイン化ということが言われるようになり、研究も進み、授業改善をしなければ、読み書きに課題があったり、自閉圏のお子さんのように認知に偏りがあったりする子どもたちの対応ができないということが少しずつ知られるようになってきました。あるいは、問題行動をとる子どもたちは大人から「問題」行動だけれども、子ども側からしたらSOSだというようなことも少しずつ――それは背景に発達課題などの生得的なリスク要因があったり、虐待や家庭内不和など環境的なリスク要因があったりするからですが――広まってまいりました。だからこそ、見え方、聞こえ方の多様性があるとか、学習スタイルの多様性があるとか、認知特性の多様性があるということを踏まえた上での、個別指導と集団指導をやっていくことが必要だということがまず1点です。
 それから、もう1点は、就学相談と就学先決定の話ですが、先ほど事務局から学校評価システムについて御説明をちょうだいしました。私も学校評価システムというのはよく存じておりますが、申しわけないけれども、現状はやっぱり不十分であると言わざるを得ません。というのは、「うちはよくやっています」、「うちは発達障害の子どもたちを指導しています」、「うちのクラスの子どもには視覚障害の子もいます」という学校へ行きますが、先生は一生懸命おやりになっています。しかし、ほんとうに子どもたち同士の間で理解が図れていて、公平公正でお互いを尊重し合える社会的な絆ができあがっていたり、温かい、コミュニティになったいい学校ができ上がっていたり、子どもの学力がベーシックレベルでちゃんと保障されていたりするかと言ったら、これはかなり疑問だと言わざるをえません。この特別委員会でもいろんな自治体の方が、うちはこうやっています、ああやっていますとおっしゃいます。それはもちろんそのとおりだと思います。でも、本当に申し訳ないのですが、そうおっしゃっておられる自治体のなかにも格差が非常にあることは否めない。それが事実です。そういったことは私がここで申し上げるまでもなく、現場の先生方が一番よくご存じです。
 だからこそ、私たちがいま一度ここで考えなければいけないのは、形式的なことではなく、いかにして実質的な教育をすべての子どもに担保するシステムを構築していくかということです。実質に応えていないから、これだけ多くの保護者の方がいら立ちを募らせ、当事者の方々が不公平不公正感を募らせ、傷つき、不安に思ったり不満に思ったりしたときに絶望したりするのだと私は痛感しています。
 そのためには、何度も申し上げているように、国が子どもの権利保障の視点に立って、先ほど保護者の行かせたい学校、子どもの行きたい学校がいいのか、それとも専門家が入った就学相談がいいのかということを委員長がおっしゃっておられましたけれども、ここでまた問われるのは、「うちは専門家がいます」と言っても、その専門家に発達的な視点がなければ、やっぱりニーズに応じた適正な就学先というのは決められないです。受入れ側にニーズに応じた教育ができなければ、やはり適正な就学先は決められません。それは自治体によってすごく差があるのです。そして、それは自治体のせいばかりとは言えず、自治体側にも人的資源、社会的資源の差があります。ということは、我が国に生まれた子どもたちが、生まれた地域や生まれた環境によって受けられる教育に差があっていいのかということを考えたときに、やはりそれは違うと申し上げたいのです。国がきちんと担保する。そのためには、都道府県レベルでしっかりと乳幼児の段階から相談に乗り、判定し、就学先を決め、指導内容がちゃんと効果が出ているかどうか評価し、適正な場を常に模索するというようなシステムを構築していくことが、子どもの人権の保障につながると思います。その際に保護者のニーズも組み入れることは大事です。ただ、一方では保護者が子どもの課題を受け入れられないケースや子どもに関心がなく放置するケースも大変多いのです。私は療育手帳を保護者が取らせず、適正な教育を受けられることもなく、成人になって行き場をなくした人たち、あるいは法律に触れることを繰り返している人たちを多数取材しています。だからこそ、そういった保護者の態度や養育環境が子ども自身の不利益にならないような制度を創る必要があると強く申し上げたいのです。
 そして、学校評価ですが、学校で外部の専門家や保護者、子どもたちが評価するのはもちろん大事です。自分たちで評価することも大事です。しかし、やっぱり専門家が見て、最初に教育的なニーズを踏まえて判定したあの子の教育が今こうなっている、いいのかどうなのかと、抜き打ちで調査をするような監査委員であり、監査機関、インスペクター、英国のオフステッドにあたるようなものをしっかりとつくって、教育内容そのものを担保をしていくことが必要であろうかということを改めて申し上げたいと思います。ありがとうございます。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。実質的な担保をどうするかということについて、極めて明快にお話をいただきました。
 それでは、石川委員、お願いします。

【石川委員長代理】 石川です。4点ありますので、なるべく簡潔に述べたいと思います。まず、この会議が一体どのようなミッションを持って進められているかをもう一回想起したいのですけれども、障害者の権利に関する条約の批准に向けて、国内の制度を点検し、必要な改正を行っていくという、そのための具体的な実装について議論して、方向性を出していくということだと思います。つまり、この権利条約との適合性という観点から現状の問題点を確認するという作業はやはり不可欠だと思います。現在のスキームの中で関係者の皆さんが大変な努力をして頑張っていらっしゃるということはとてもよくわかりますし、また、だからこそ、現状でまだいろんな問題があって、それを解決していかなければいけない。つまり、現状の枠組みの中でもできることはあるし、しなければいけないことがあるということはそのとおりだと思いますけれども、今求められているのは質的な跳躍ということではないかと思います。この権利条約における基本的な考え方は何かというと、集約すると合理的配慮、社会モデル、インクルージョンということだと思います。一挙に100点満点ということは不可能な話ですけれども、100点でないものは0点だということではないので、私たちはインクルーシブ教育に向けて短期的に何点取れるのか、中期的に何点取れるのか、長期的に何点取れるのかという目標を設定して、それを国際社会に対して示していくという、それによってモニタリング評価を受けるという、そういう枠組みになっていると私は理解しています。特別支援学校も、その意味でインクルーシブ教育の中に位置付け直されるべきもの、統合されるべきものとして、その存在価値は失われないのみならず重要です。これが1点目です。
 2点目ですけれども、合理的配慮ということが言われてきていますけれども、そのほんとうの意味というのは必ずしも理解されていない可能性があると思いますので、口幅ったいのですが、私の考えを申し上げたいと思います。合理的配慮というのは、何も一方に多数の配慮を必要としない健常者がいて、他方に少数の特別な配慮を必要とする障害者がいて、だから合理的な配慮を障害者に対しては提供しなければならないということを言っているわけではありません。そうではなくて、合理的な配慮が提供されている人々と、合理的な配慮が提供されていない人々がいるという社会的な認識に立っていて、合理的な配慮を与えられている人のことを健常者と呼び、合理的な配慮が十分に与えられていない人のことを障害者と呼ぶというのが、障害者権利条約における合理的配慮や社会モデルの考え方だということです。この2つは随分違っていて、前者の認識に立っても大体話が通じるような感じになりますけれども、根本的なところで違ってくる可能性があるということです。
 3つ目ですけれども、学校教育法の施行令における「認定就学者」って一体何だろうということですけれども、これは、要は「みなし健常児」ということだと思います。つまり、医学モデル的には障害児なのだけれども、さほどの合理的な配慮を提供しなくてもまあ何とか学校でやっていけるというのを認定就学者として扱っているというのが現在のスキームではないかと思います。これは権利条約で言うところの「インクルージョン」や「社会モデル」や「合理的配慮」とは考え方が違っていて、適合性という点で問題があるので、ここは制度改正が必要な点だと考えています。もう一つ言うならば、本人もしくは本人に一番近いところにいる他者としての親の同意、これが必須条件です。十分に話をして、専門家、さまざまな立場からアドバイスをして、アシストして、親は判断する。地域の学校は歓迎する、それから特別支援学校も歓迎する。みんなが歓迎し、肯定し、承認しているという中で、親は冷静に自分の子どもにとってどちらがいいかを一番よい条件で選択できる。拒絶されている、否定されているという中で、時に人は意固地になったりすることもあるでしょう。そうではなくて、歓迎されている、地域の中に包含されているという、そういうメッセージが十分ある中で、親は果たして自分の子どもにとって利益にならない選択をするだろうか。そういう可能性は低いと思います。これが3点目です。
 4点目ですけれども、これはやや個別な話で、今日の資料として用意したものですが、資料5です。障害のある児童生徒のための特定教科書の普及の促進等に関する法律という、通称「教科書バリアフリー法」と呼んでいる法律です。現在、小・中の検定教科書は428点あるそうです。教科書バリアフリー法によって、検定教科書の4割強が拡大教科書として提供されています。小学校については来年度から100%達成、中学校についても再来年度からほぼ100%達成の見込みであると聞いています。教科書バリアフリー法には2つの方法論が内蔵されています。1つは、出版社に標準規格の拡大教科書の発行を義務付けたことです。フォントの大きさは3種類決めまして、18ポイント、22ポイント、26ポイントですけれども、この3種類の教科書については、教科書会社に発行することを義務付けている。2つ目として、拡大図書を制作するボランティアグループに教科書の電子データを提供することを義務付けている。この結果として、拡大あるいは点字教科書については随分改善がなされたのですけれども、現状のスキームでは、電子教科書という形での提供はできないということになっています。単に、拡大教科書や点字教科書を発行する者に対してデータを提供することができるだけだということになっています。だから、児童生徒にはそれは渡してはいけない。学校の先生もちょっとグレーだということになっています。さまざまなニーズを持った子どもたちへの合理的配慮として、指導法ももちろん大事だし、ハードウェアも大事だし、いろんなものがありますが、やっぱり教科書も大事です。それだけで十分だということを言うつもりは全くありませんけれども、必要条件であると思います。そういう意味で、教科書バリアフリー法及び著作権法第33条の改正趣旨を生かして、アクセシブルな電子教科書を生徒にまで届ける仕組みをつくっていく必要があると考えます。以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。本会議のミッションという問題をまず提起していただいて、具体的にその中で障害者の権利条約の3つの観点、合理的配慮、社会モデル、インクルージョンという視点からお話をいただきました。学校教育法の認定就学についての在り方については、大きく変わってきていますが、このあたりをどんなふうに質的な改善をしていくかということが大きな検討課題になるだろうと思いますし、先ほど北住委員からお話があったような、目標設定の必要性についてお話をいただいたと思います。ありがとうございました。
 それでは、大久保委員、お願いいたします。

【大久保委員】 大久保です。今お話があった点について、触れさせていただきたいと思います。
 現在の枠組みの中でも対応できるものとして、まず挙げられるものとして、学校教育法の施行令第5条の認定就学の仕組みがあります。ここの部分については、今までのお話の中でも、いわゆる実態ともうかけ離れているというか、そういう実態が先に行っているということも踏まえて、やはりここは見直す必要がある。つまり、先ほど申し上げましたけれども、認定就学者というのはあくまで例外である。つまり、地域の小・中学校に行くことが例外であって、原則は特別支援学校だという形は、実態とすればもう既に変わっている。そういうことでいくと、これはやはり直すのが妥当だということだと思います。決してどこがいいということではなくて、いわゆる選択肢はそれなりに現状において当然幾つかあるわけですから、その中で最も適切だと思われるところを選んでいく。ただし、そこにおいて、私はそこでの最終的な決定権というか、就学先の決定権ということについては、いわゆる憲法というか、そういうものにいう教育権とか学習権というのがどこに属しているのかというところの視点は一応踏まえたほうがいいのかなと。つまり、親の同意というのを前提にしながらも、決定権が国にあるとしたら、それは国の責任というところにも片方でなりますし。ですから、その辺のところはどう考えるのかなというところは、私も、まだ十分整理されていないというところです。
 私からお願いしたいのは、これは特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議の方向性でも、既にこの認定就学制度の見直し、いわゆる改正の方向が打ち出されていますから、これをより具体的にどういう形にしていくかと。当然、その中に、皆さんがおっしゃっている、これから個別の教育支援計画などを十分活用して、親御さん、教育関係者を含め、皆さんが十分話し合っていく中で適切な方向性を導き出すということについて、どういう仕組みにしていくのか、また、実際にそこでなかなかうまく結論が得られない場合はどうするのかとか、こういった議論をさらに進めていただければと思います。以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。現状の就学認定制度のありようを根本的に検討していく必要があるだろうというお話でした。
 それでは、久松委員、お願いいたします。

【久松委員】 全日本ろうあ連盟、久松です。私からは、今まで石川委員から出された合理的配慮についての具体的な内容については前回の会議で意見を出しましたので、相当いろいろなところに具体的な配慮とは何かについて伺って、その内容は出したつもりです。そのほかに皆さんから合理的配慮の内容について具体的な話というのはまだ出されていませんので、石川委員のおっしゃるように、合理的配慮についての議論をすることがやはり必要だと思います。ぜひお願いしたいと思います。教育分野に限らず、いろいろな分野において合理的配慮とは何なのか、労働、福祉、医療等々の場で合理的配慮について、当然いろいろなところで議論されることになるかと思いますので、ぜひ議論をお願いいたしたいと思います。私が申し上げた合理的配慮の例については、すべてが十分な内容であるとは思っておりません。それぞれ皆さん専門の立場から具体的な配慮方法などについての意見を出し合えれば、かなり十分な内容がつくれると思います。
 もう一つ、就学認定の仕組みについての議論ですが、なかなか触れにくい話、テーマであり、石川委員から出されました親の合意性について、その仕組みについてどのような形で合意というものをつくっていくか、これは議論になるかと思いますが、なかなか議論されていないと思います。障がい者制度改革推進会議では、障害者の権利に関する条約に基づいて具体化するための議論、作業が進んでいますが、権利性についてどう扱うかという議論になっているかと思います。教育の分野では簡単に言えば、親の選択権を保障するかどうかという議論になってくると思います。保護者の合意ということ、これを形成する仕組みについて今までは親や保護者の意向を尊重する仕組みという形を作ってきているかと思いますが、今後は、保護者の合意、それから選択を保障するという考え方、その方向で仕組みをつくるという、その議論ができるかどうかにかかると思います。
 今の聾教育の現状は、親の選択権を認めると、聾学校に通う子どもが減るだろうと思います。しかし、聾の子どもにとって適切な教育の場は、障害者権利条約にも書いてあるように、専門性、集団性が担保された聾学校が必要であるということ、これは私の持論です。
 先ほど尾崎委員から個別の教育支援計画が必要であると出されていましたが、個別の教育支援計画の推進は非常に重要なことだと思います。現在、親あるいは保護者の負担があまりにも大きい。昨日、私、栃木県の聾の親の会の方と交流をいたしましたが、自分の子どもが障害だとわかったときに親は大きなショックを受け、障害のある子どもが将来どうなっていくのかの情報がなく、相談相手もいない、これが一番大きな問題になっているということで、保護者をサポートする仕組みをつくる必要があると思いました。
 個別支援センター、個別の教育支援計画を個々のニーズに即した支援をする個別支援という考え方が出されました。これをさらに進めて、なおかつ機能化するためのセンター的なものが必要であると思います。現在、例えば聾学校では個別サポートをする、聾学校によっては幾つかの場所でそれをやっていますが、現状として、教員がそのサポートを兼ねているというのが多いので、教員の負担が非常に重くなっています。専任できるような体制、専門家の配置が絶対必要だと思います。親または保護者の負担を軽減する仕組みとセットで、その仕組みをつくっていく必要がある。その上で、親の合意が得られるために必要な情報を提供できる仕組みをつくる、これが必要ではないかと改めて提案させていただきたいと思います。以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。就学認定に関する親の合意といった問題、親の選択権といったようなもの、合意形成をどうするかというのが争点になるだろうという話でした。と同時に、それぞれの障害種によってさまざま集団保障をするというような問題など、課題も残るので、そこをどんな形で個別課題に対応するかというのもあわせてやっぱり検討していかなければいけないということだったかなと聞かせていただきました。
 ほかの方。それでは、山岡委員、お願いします。

【山岡委員】 ありがとうございます。日本発達障害ネットワークという発達障害の団体から参加させていただいております、山岡と申します。今日は団体としての意見ではなくて、個人的な見解、意見、あるいは質問として発言させていただきます。
 事務局から配られました資料2で、「general education system」の解釈が示されまして、かつ、石川委員も言われましたとおり、今回の議論の中では、中央教育審議会として、general education system の中で特別支援学校や特別支援学級、あるいは通級指導教室というものをどう扱っていくのかということも議論しなくてはいけないと思います。「general education system」という訳語についても異論があるところで、ぱっと私が読んでも、「一般」は前のほうに来るのではないかなと思うところです。そうすると、「一般的教育制度」あるいは「一般教育制度」と訳すとしたら、特別支援学校や特別支援学級、あるいは通級による指導が入るのか入らないのかという議論が必要だと思います。この点は、先ほど事務局から説明をいただいた外務省の見解が正しいのかもしれませんけれども、それはそれとして、我が国としてこれをどういうふうに扱っていくかを考えていくべきだろうと思っています。
 昨日、実は国連のホームページのこの権利条約のページを見てみたのですけれども、昨日現在で95カ国が批准をしていると出ていました。その国を見てみますと、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、ヨーロッパの国をはじめ、カナダ、オーストラリアがもう批准をしていると出ていました。ということは、今、我が国で特別支援学校とか特別支援学級とかいうものがインクルーシブ教育の中で必要なのか、あるべきなのか、あるいは国連のこの権利条約の中で認められているのか、認められていないのかという議論をするときに、他国での状況とか検討状況というのは参考になるだろうと思います。
 実は調べておりましたら、また中澤委員にお願いになりますけど、昨年位に特別支援教育総合研究所で、たしかイギリスとかフランスとかドイツとかの検討状況について検証されていた報告書がありました。そのときはまだ検討段階だったと思いますけれども、各国が批准された段階でどうかということです。盲、聾、身体、知的等の障害種別によって多少扱いは異なるかもしれませんけれども、批准されている国で特別支援学校がないという国は、私の知る限りなかったはずです。そうすると、批准されたときに各国ではどう検討されたのか、どういうふうにこれから持っていかれようとしているのかということが参考になると思います。それから、さっき石川委員がおっしゃったとおりだと思いますけれども、最初から100%の状態でなければ批准できないとすると、決めた途端に例えば特別支援学校が要らないとなったら、明日から特別支援学校は要らなくなってしまいますけれども、今通っていらっしゃるお子様もいますし、どのようにしていくのかということですね。私も発達障害の子どもを持っていますが、私の子どもの場合は特別支援学校や特別支援学級がないと困った子どもでしたので、ぜひこれからもあってほしいと思っています。そういうことも含めて、各国ではどのように検討されて、今批准されている国の中でいきますと、どういう状態になっているのか。国立特別支援教育総合研究所では、多分、去年お調べいただいているので、その延長線上でデータをお持ちなのかもしれませんけれども、ぜひ各国の検討状況とか現状についてお知らせいただいて、また議論の参考にさせていただければと思います。以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。今のことについてはいかがしましょうか。それでは、中澤委員、申し訳ございませんが、今のことも踏まえてお願いできますでしょうか。

【中澤委員】 国立特別支援教育総合研究所の中澤と申します。今、山岡委員から御指摘があった、ほかの国々では特別支援学校がインクルーシブな教育制度の中でどう位置付けられているのかということで、今回、私、主にイギリスとアメリカ中心に情報を提供させていただきます。
 アメリカは、ニーズという言葉は使っておりませんが、子どもたちのニーズに対応するために教育サービスの場の連続体を確保するという文言が法律の中に明確にあります。教育の場の連続体というのは、最も制約の少ない通常の学級から特殊学級、リソース、それから通学制の特別支援学校、寄宿制、病院内というような一連の場を子どもに応じて提供するために確保するというふうに書いてあります。すなわち、教育制度の中で位置付けられているということです。ただ、アメリカは、障害者権利条約に署名はしておりますが、批准しておりません。
 一方、イギリスについても、特別支援学校は制度の中に位置付けてあると明確に記しています。2001年の法改正で、よりインクルーシブな方向に動きましたが、その中でインクルーシブ教育とは、とのガイドラインをつくっていますが、その中で子どものニーズに応じて、また親の希望に応じて対応できるように維持しているということが明確に記されています。
 ほかの国々については、また改めて次回、山岡委員の御期待に添えるよう提供したいと思います。
 これのほかに、1つ、インクルーシブな教育システムということで、総論の時期に発言しないといけないと思いますので、一言発言させていただきます。私の立場は、海外のデータと比べて日本の特色を考えながら提言できることを考えるという立場だと思います。1つ明確に言えるのは、アメリカ、イギリスだけですが、基本的にほかのいわゆる先進国に比べて、障害のある、あるいは特別な対応を必要としている子どもの率が、日本は極端に低いです。データとして2%少しです。アメリカが11%、そして、イギリスは、学習困難も含めると20%となります。裏を返して言いますと、日本の場合、これほど高い率ではないとしても、通常の学級の中に既に支援を必要としている子どもたちが支援を受けないままにいる可能性がとても高い状況だろうと思います。
 インクルーシブな教育システムというのは、単に通常の学級に入れるということではなくて、そこで適切な支援があったり、あるいは、仕組みとして多様な子どもに対応できる柔軟な制度になるということがインクルーシブな教育制度だと思います。そうしますと、先ほど北住委員から御指摘がありましたように、その中には認定就学の方々もきっと含まれると思いますし、実はかなり知的障害が重くても、親の判断で支援がなくてもいいから入れてくださいという子どもたちもかなりいます。また、ちょっとボーダーラインの方、それから軽度の知的障害の方々、実はこういった方々が既に通常の学級にいるという事実が、海外の統計からの比較から、日本では伺えます。
 そういった事態の中で日本が何とかやってこられたのは、優秀な先生方と学校側ののみ込んでいく力だったと思うのですが、最近もうそれが限界に来ているのだろうというのが、こちらの学校の校長先生方からの御意見、これ以上来られたら破綻するという悲鳴に似た声が出ているところにつながっているものと思います。
 長くなって済みません。私の意見としては、インクルーシブ教育を進めるというと、どうしても分離型に入っている子をどうやって通常の学級に入れようかということから考えますが、日本の特長は、まず既に通常の学級に入っているかなりニーズの高い子どもたちを、どうやってインクルーシブに合理的な配慮なり、学級としての取組なり、人員の増加なり、そこをまず優先的にやっていかないと、通常の学級がもう苦しくなっているところに、支援なしに次の障害の重い子どもが入ってくるのは、ちょっと破滅的な状況になるのかなと危惧するところです。海外では通常の学級に支援なしに障害児を入れるのはインクルージョンと言わず、ダンピング――それは極端な言葉ですが、そう言われていますが、日本はまずその状況、通常の学級の状況をインクルーシブな環境に変えていくということがまず喫緊的に必要なステップで、より分離型の状況に入っている生徒を受け入れられるような通常の学級にしてから、次のステップに進むべきではないか。そこが北住委員のおっしゃった長期的な戦略を持って進めていくというところにもつながるものと思いました。それが1点。
 もう1点。「教育制度一般」について、単純に英語の訳から言うと、やはり教育制度一般というよりは、「一般的教育制度」なんだろうとは思いますが、先ほども申し上げましたように、批准をしているイギリス等でも、特別支援学校は教育制度の中に位置付けているということは、海外の例からも、特別支援学校が入った形で、ただしインクルーシブな方向に漸進的に向かっていくという理解の上でやっていくべきものだろうと私も理解しています。以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 これから5分ほど休憩をさせていただいて、その後、後半ではさらに協議を続けたいと思います。それでは、5分ほど休憩をさせていただきます。

(休憩)

【宮﨑委員長】 再開したいと思います。
 それでは、これ以降は論点整理に向けた主な意見等の後半部分の、特別支援教育を推進するための人的・物的な環境整備、教職員の確保及び専門性の向上のための方策について、既にもういろいろ出てはいますが、まずは事務局から御説明をお願いします。

【横井特別支援教育企画官】 特別支援教育企画官の横井です。続きまして、資料4を用いて説明をさせていただきます。8ページの下から4つ目の○から御説明させていただきたいと思います。
 3として、「特別支援教育を推進するための人的・物的な環境整備について」としています。項目としましては、(1)環境整備全般、(2)合理的配慮、(3)交流及び共同学習、(4)特別支援学校のセンター的機能の活用、として一くくりさせていただきました。
 8ページ下から9ページ上にかけて、環境整備全般のところでは、必要な体制整備、考慮すべきことについての意見等を挙げさせていただきました。
 9ページに参りまして、9ページの中ほどやや上から10ページにかけて、合理的配慮ということで、まずは合理的配慮全般として、ソフト的な合理的配慮、ハード的な合理的配慮と便宜的に分けさせていただきましたが、それに共通するような意見等を一くくりとさせていただいています。その次に、10ページ、上から3つ目の○からですが、そちらから11ページにかけて、ソフト面として合理的配慮を挙げさせていただきました。具体的には、学習指導要領、教育課程、さらには学校・学級運営などについての意見を挙げさせていただきました。それから、11ページの下から12ページの下にかけて、ハード面といたしまして、具体的には人の配置、施設・設備、医療的ケアなどの意見を挙げさせていただきました。
 続きまして、13ページからですが、13ページの最初から14ページの上の部分ですが、(3)交流及び共同学習ということで、特別支援学校や特別支援学級に在籍している児童生徒が、居住地の小・中学校の通常学級において学習する際に、居住地の小・中学校で障害のない児童生徒と共に学習することで地域とのつながりを持つことができるといった、そういった交流及び共同学習の効果と課題についての意見等を挙げさせていただきました。
 続きまして、14ページの4つ目の○からですが、(4)としまして、特別支援学校のセンター的機能の活用ということで、14ページの下まで、特別支援学校のセンター的機能と各地域の小・中学校等との連携の在り方などについての意見等を挙げさせていただきました。
 続きまして、15ページからですが、4として、教職員の確保及び専門性の向上のための方策といたしまして、(1)教職員の専門性の確保、(2)教職員の養成・研修、(3)教職員への障害のある者の採用とさせていただきました。
 まず(1)教職員の専門性の確保としまして、15ページから、教職員の専門性等についての意見等を挙げさせていただいています。16ページの上から3つ目の○ぐらいからは、特に前回も議論のありました特別支援学級の教員の専門性についての意見等を挙げさせていただいています。また、16ページの一番下のあたりからですけれども、特別支援学校の教員の専門性についての御意見等を挙げさせていただきました。
 17ページに参りまして、(2)教職員の養成・研修ですが、こちらは教員養成と教職員の研修の2つの項目で整理させていただいています。まずは教員養成についてということで、免許状の在り方、養成過程において何を教えるべきかといった意見等を挙げさせていただきました。それから、17ページ下からですが、教職員の研修についてということでして、研修内容、研修方法、それから、研修に当たって留意すべきことなどの意見等を挙げさせていただいています。これが17ページの下から18ページまで続いています。
 最後に、19ページには、(3)としまして、教職員への障害のある者の採用として、採用による効果等の意見等を挙げさせていただきました。以上、簡単ですが、説明を終わります。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 今説明をいただきました論点整理に向けた主な意見の後半部分、これから自由討議をしていただきますが、まずは3の特別支援教育を推進するための人的・物的な環境整備につきまして、特別支援教育の体制面の整備ですが、国あるいは地方の財政状況が苦しい中で、どこまで整備ができるかというのが課題になってくるかと思います。しかしながら、この点をどんなふうに工夫していけばいいかということについての御意見もちょうだいできればと思います。
 また、合理的配慮について、ソフト面、ハード面両面からの意見が出てきていると思います。障害種別に検討する必要があるという御意見もたくさん出ていますが、今の時点では、このことについては別途の検討が具体的に小委員会等をつくってやらなければいけない中身も出てくるかと思います。この場では総論として検討の前段階で留意すべきことなどを御指摘いただきたいと思います。
 さらには、先ほども少し出ましたが、特別支援学校と幼・小・中・高との連携、交流及び共同学習等の推進、センター的機能の強化・活用、今後どのように進めていくべきかといった御議論をお願いできればと思います。
 4番目の教職員の確保、専門性向上の方策につきましては、現在、同じ中央教育審議会に、「教員の資質能力向上特別部会」が設けられて、教員養成も含めて、教職生活の全般を通じて教員の資質能力の総合的な向上について審議・検討をされているところです。ですので、本特別委員会としては、そこの流れも見つつ、インクルーシブ教育システムを構築していくために必要な教職員の確保、専門性向上のための方策について御議論をお願いしたいと思いますし、場合によっては、先ほど申した特別部会の動きなどもこちらにお示しいただくとありがたいと思います。
 非常に時間のない中で御議論いただくので、簡単に整理をさせていただきましたけれども、前の部分も含めてでも結構です。これから自由討議にさせていただきます。
 それでは、齋藤委員からお願いします。

【齋藤委員】 前回、第4回のとき欠席いたしまして、そのとき出した資料を見ていただきたいと思います。第4回で資料17を提出させていただきました。
 私は特別区の教育長会の会長であると同時に全国心臓病の子どもを守る会の会長でもありますので、両方の面から少し発言をさせていただきたいと考えています。
 資料17は、現実問題として私どもが抱えている教員――東京都全体がこうかどうかというのははっきり申し上げられませんけれども、その現場の中から見た特別支援教育の職員の確保と専門性の向上についてということで資料をつくらせていただきました。非常に理想的な高邁な考え方はだれしも持っているところですが、現状はこうだということを少しお話しさせていただきたいと思います。
 1ページですが、教員の現状です。ほとんどの場合、一般的には通常の学級の教員として採用されていますので、通常の学級のことしか知らない方が多いということと、○2のところでも、通常の学級と同じく6年ないし8年で異動、特別支援教育の教員のみの専門性を培うというような、そういうことがほとんどできない状況にあります。それと、都立特別支援学校との人事交流、これがもう少し行われれば、専門性が本人に確保されていなくても、確保された人間との一緒の授業をする中で培われていくのかなと思いますが、今ほとんどできておりません。それと、これが一番悲しい現実ですが、40人学級で学級運営が困難な先生を、校長先生のほうで配置をする傾向があると思っています。
 こういうことを考えますと、抜本的に教職員の配置の仕方も考え直さないと難しいということがありますが、現実問題といたしまして、今、小学校の教員のなり手が、特に東京都では非常に少ないです。試験の倍率が低いということとは、必ずしもイコールではないのですが、優秀な教員が集まりにくい現状ですので、教員が魅力ある職場となるような、そういうことが必要なのだろうと思いますが、これは一筋縄ではいかないとは考えています。
 2ページ目を見ていただきたいのですが、教員の専門性の確保については、就職する前は一通りのことを研修等で行われるものと思いますが、実際にそこに配置されてから学ぶことが一番多いのだろうと思います。現実問題として、学級の中で、発達障害系のお子さんがいたときに、気づいて学んでいくというのが一番力になっていくのだろうと思います。就職後は、やっぱり○3のところに、特別支援学校との人事交流というのを、私はこの1つの方策としてどうしても掲げたいなと思います。人的配置をたくさんしてくださるというのがない限りは、これしか救いようがないかなというふうに思っているところです。
 それと、もう一つの私の所属している会ですが、心臓病の子どもが学校に通うときということで、これは特別支援教育の枠からどうしても出てしまう場合があります。唯一特別支援教育の枠の中に論議されると思えるのが、学籍の異動、訪問学級ということを前々回のとき少しお話をさせていただきましたが、院内学級のない病院に入院中のお子さんとか、在宅で訪問学級を受けているお子さんがいらっしゃいます。そういうお子さんは、特別支援学校に学籍を移して、初めて訪問学級のほうから先生が行きます。このあたりがもう少し柔軟にできないか。というのは、体調がいいときには通常の学級で地域の学校に行ける、あるいは行ったほうが、心臓病の重篤なお子さんにとっては、あるいは、ほかの病弱児のお子さんにとってはいいのだろうと思っていますので、友達関係も含めて、行動範囲が狭いがゆえに、あるいは長時間バスに揺られて行くことができないがゆえに、私はこのあたりを柔軟にしていただきたいと思っています。訪問学級の先生が特別支援学校から来ることをとやかく言うのではなくて、状態がよくなったときにはすぐ地域の学校に戻れる、あるいは、悪くなったときにはすぐ派遣していただける、こういう柔軟な、本来でしたら学籍を移さずにできれば一番いいのですが、もう少し柔軟にできないかなと思います。
 それから、施設・設備面です。特に心臓病児、病弱児は寒さ・暑さに弱いです。教室に冷暖房が欲しいということはいろんなところでお願いしているところです。今年の夏はすさまじい暑さでしたが、幸いなことに特別区は結構冷房が入っているのですが、九州の宮崎県、大分県も含めまして、皆さん冷房がない中でどうしているのかと、そんな心配をさせていただきました。冷暖房に限らず、ハード面は無視できないと思います。エレベーターが設置されていることによって、肢体不自由の方も、それから病弱児のお子さんにとっても、学校に自力で行けるお子さんの数が少し増えるのかなと思いますので、ハード面は見過ごせないと思っています。
 それと、もう1点ですけれども、もう少し病気に対して理解していただくだけで非常に子どもたちは助かるなと思います。心臓病というとすぐ死と直結すると考える方々が多いです。そういう意味で、過剰な対応、過剰な反応を起こして、例えばプールの制限とか体育の制限はいいですが、それ以上に、もうちょっと細かい、何の気なしにできることまで過剰反応していただくような、ありがたいような感じもありますので、ぜひこのあたりは情報をきちっと伝えるような、あるいは研修の中に入れていただきたいなと思います。このごろ研修の中に入っていないということを聞きますので。学校行事等の参加についても、すべて病弱児、あるいは肢体不自由のお子さんも全く同じだろうと思います。
 最後に、医療的ケアの必要な児童生徒の就学が、このごろ大変増えています。私どもも今、来年度の入学に向けまして希望をとっているところですが、ほんとうに医療的ケア、看護師と介助員をつけないと通常の学級には入れないというお子さんも希望なさっております。知的の障害がなく、コミュニケーション能力もあると伺っているので、何とか実現させてあげたいなとは思っていますが、私も教育長としての立場から考えますと、これはどういうふうにしたらいいだろうということで、非常に悩んでいるところがあります。
 先ほどの議論のところとも重複する部分がありますが、就学先を判断する就学支援委員会で判断を下すときに、私はたった一回の判断よりも、幼稚園・保育園、その現場の先生たちのお話を重要視しながら、それをもっともっと取り入れて判断する必要があると思います。私どもは「気づきのシート」というのを各幼稚園・保育園に、保護者には「チューリップシート」というのを配っておりまして、そこに記載してもらって、気づいてもらう。その段階で、専門職を派遣しながら、保育士に訓練をさせていただいたり、研修をしたりしながら、現場の中でノウハウを培ってもらうようなことはやっていますが、早い時期に判断をし、保護者に少しずつ少しずつ判断を受け入れていただくと、この就学支援委員会でたった一度の判断でショックを受けてかたくなになるよりはずっといいのかななどと思いますので、ぜひ多くの方々が御意見を述べていますように、幼児期の段階から就学の何が適切なのかということを親御さんに伝えるような、そういうのを全国展開していくといいと思います。
 いずれにいたしましても、私も学校を預かる身としては、お金も手間も人も全部かかるものですから、何から手をつけたらいいかわからない状態ではあるのですが、できる限り効率よく、それから、お子さんのコミュニケーション能力が培えるような場所だったら何とか実現させてあげたいという思いの中で発言させていただきました。以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 それでは、清原委員、お願いします。

【清原委員】 ありがとうございます。三鷹市長の清原慶子です。総論の2点目と関連しますが、私は特別支援教育を推進するための人的・物的な環境整備というのは、公立小・中学校の設置者として大変重要な課題だと位置付けています。すなわち、日本的なインクルーシブ教育システムの構築を図る上で、現行の特別支援教育をどのように位置付けていくか、その考え方とこの環境整備は、密接な関係があると思います。そこで、今年の2月にまとめました、三鷹市の教育委員会に設置されました特別支援教育をモニタリングする組織であります三鷹市教育支援推進委員会による平成21年度の三鷹市教育支援プランに基づく、三鷹市立の小・中学校における教育支援の推進状況の検証結果を紹介しながら、この環境整備について論点をお示ししたいと思います。
 三鷹市では、特別支援教育を「教育支援プラン」という名称の計画に基づいて進めております。その検証の過程で、1点目は、小・中学校における個別の教育支援計画と個別の指導計画の作成と、それに基づく指導と支援の実施について検証いたしました。その結果、指導計画の作成数は増加しているけれども、内容が形式的になってしまったり、チェックリストで現状の把握はするけれども、実際の指導経験がない通常の学級の教員が作成していくことに困難を感じたりしている状況があると、もうありのままに報告がなされています。つまり、支援計画について教員が作成の意味を理解していないこと、保護者にうまく目的や活用法を説明できないこと、学校側も引継や活用の仕方を十分に理解しきれていないことなどの課題の存在が考えられるわけで、このあたり、小・中で対象児童生徒の課題に質的な違いがあるということも含めて、現実を冷静に検証しております。特に現場では、小学校から中学校への引継の流れを確実にし、異動で職員がかわったとしても、支援計画の作成目的や活用目的がすべての教職員に理解できるような小・中一貫教育のシステムづくりの必要性も指摘されているところです。
 2点目に検証いたしましたのが、教育支援学級の固定制における通常の学級との交流及び共同学習の実施でした。私はこのことは、実は「共に学ぶ」ということや、あるいは、大変大きな課題になっています「合理的配慮」の具体的な内容を検討していく上で重要な取組だと思っています。すなわち、教育支援学級と通常の学級とがこれまで実践している交流や共同学習を継承することによって見えてくることが、インクルーシブ教育の中における合理的配慮のヒントになるのではないかと思っています。具体的には、図工や音楽等の実技教科は、通常の学級の担任や児童生徒の交流の受け入れの意識が高いことがわかりました。しかも、教育支援学級の児童生徒も、個々の課題を達成することができるケースも多く見られました。しかしながら、この中で課題になりますのは、教育支援学級と通常の学級の担任との打ち合わせなどに困難もあるという正直な反応があるということ、交流や共同学習を実施するときには、通常の学級の教員の意識やその姿勢の影響が大きいことも明らかになってまいりました。加えて、保護者との共通理解も重要です。
 3点目の検証の内容は、発達障害及びその傾向のある児童生徒への適切な指導と支援の理解状況や実施についてです。実は、三鷹市では公立幼稚園は閉園していますので、すべて私立幼稚園に幼稚園教育をお願いしていますが、幼稚園や保育園でも発達障害について受け入れています。先ほど中澤委員もおっしゃいましたけれども、通常の幼稚園教育や保育の中で対応していただいている事例もあります。小学校の中では、適切な子ども中心の支援をするために、発達障害についての学習会を全教員参加で定期的に行ったり、日常的な支援に生かしている学校も見られましたが、すべての学校が必ずしも徹底していないということも事実です。校内体制が整っている学校では、教育支援コーディネーターを中心に、共通理解を深めようとする姿勢もあり、有効に機能しているということも確認されました。あわせて、先ほどの問題提起もいたしましたが、教育支援学級の指導内容・方法については、教員の異動などによる教員構成に左右されやすい部分もあり、一貫性の確保という点が課題になっていることもわかりました。
 私は、教育委員会が積極的にいわゆる学校評価も含めながら、教育支援――本特別委員会では特別支援教育と言うべきですが、その実践について検証してくれていることを大変ありがたく思っていますが、その中で、あわせて私としては、環境整備の点で認識していることがあります。それは、やはりこれからの課題ですが、障害種別によって学校施設に求められる要件はもちろん違う部分もあります。さらに、先ほど齋藤委員が言ってくださったので言いやすくなったのですが、東京都23区ではほぼ100%設置されているエアコンですが、三鷹市を含む多摩26市では、約17%の設置率です。これから特別支援教育の環境整備をする中で、すべての子どもたちに共通の快適な学習環境を整備していくということもあわせて考えていくことが、より重要だと思います。
 次に申し上げますのは、具体的な例を申し上げて論点を提起して、まとめたいと思います。実はこの秋、多くの学校で運動会が開かれました。その中に、特別支援学級を持っている学校では、ほとんど特別支援学級の子どもたちと一緒に運動会が展開されました。また、昨日開かれましたある学校でのおやじの会主催のお祭りでも、三鷹市では中学校1つと小学校2つ、ないしは小学校3つによります小・中一貫教育のコミュニティスクールによる取組をしていますが、当該の学園内の教育支援学級の中学生がボランティアとして参加していました。鳥の巣箱をつくる取組でした。すなわち、教育支援学級の生徒も小学校の子どもたち対象の取組にボランティアとして、パートナーとして参加できるという実践が見られます。このように、私は交流及び共同学習や、あるいは学習のプロセスだけではない、その他の事業においても、今まで進められていた交流という中から、どのようにすれば合理的配慮の具体的な在り方があるかがもっと見えてくるのではないか。そのことを、やはり今までの特別支援教育の実践の中からこそ引き出すことが有益ではないかと思います。したがいまして、全く今までの特別支援教育のプロセスを無視する方はいらっしゃらないと思いますが、その内容を検証する中から、真に求められているインクルーシブ教育における環境整備、あるいは人的な確保や必要な資質や、あるいは研修や養成の在り方も見えてくるのではないかと思います。現在取り組んでいらっしゃる立場の委員の皆様に積極的に御発言をいただくことが、より有意義ではないかなと考えています。私からは以上です。ありがとうございました。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 それでは、木舩委員、お願いいたします。

【木舩委員】 広島大学の木舩と申します。2点意見を申し述べます。第1点は、合理的配慮、そしてICFで言うところの社会的モデル、それと障害のとらえ方、この3つを絡めて意見を申し述べます。合理的配慮につきましては、それぞれ障害種別で議論が必要だとか、もっと詰めた議論が必要だということが先ほど出ておりますけれども、私もそのように思います。そのときに、一口で障害と申しましても、視覚障害、聴覚障害、知的障害、あるいは私が専門としている肢体不自由・病弱、そのほかにも発達障害と、多様なものがあります。専門としている肢体不自由を例にとって考えてみますと、一口に肢体不自由と申しましても、それの起こってくる医学的な背景というふうなものはさまざまであります。その医学的な原因、あるいは、その疾患によって一人一人の合理的配慮がまた違ってくるというところがあります。1人の子どもに適切な合理的配慮をするときに、医学的な背景というふうなものを全く無視して考えることは非常に難しいと考えています。そういう点では、ICFで社会的モデルというふうなものが強調されて、そういった考え方がまた今、それは非常に妥当なものだと私も考えますが、何を申し上げたいかというと、社会的モデルと医学的モデルとうまく統合して、調和した形で合理的配慮を考えるべきではないかと考えています。これは障害のとらえ方ということで、学習指導要領の解説の中にも盛り込まれていますので、大学で教員養成を行っているという立場から、いろいろICFについても資料を集めてみました。その中に、これからの課題というふうな方向で、医学的モデルと社会的モデルをいかに統合すべきかという論文もたくさんありましたので、御紹介したいと、あるいは意見として申し上げたいということです。
 もう1点は、今の申し上げたこととは全く違いまして、教員の専門性ということをどう確保するかというときに、中核的な教員を育てていただきたいと思います。先ほどいろんな方から、人事異動が短期間であるというお話もありましたけれども、私が申し上げる中核的教員というふうなものは、特別支援教育に携わる教員の中でもリーダーシップを発揮できるような教員、ほかの特別支援学校、あるいは特別支援学級に勤務しているほかの教員を日常的に指導できる教員、あるいは、特別支援教育に携わっている教員の研修を行える教員という意味での中核的な教員ということを考えています。これを、人事異動等の採用配置等の関係もありますけれども、こういう中核的教員を育て、そして活用するようなシステムをつくっていただきたい。
 前回、私はメキシコに出張しておりまして欠席いたしましたが、そこで特別支援学校に行ってまいりました。そうすると、そこには学校の中にはありますけれども、久松委員がおっしゃったような個別支援センターというのが学校の中にあります。そこの長は校長ではありませんけど、校長としての給料をもらっている。そして、自分のスタッフを抱えている。自分が属する学校の教員の指導を行うと同時に、ほかの市内の特別支援学校に出かけて指導を行う。それから通常の学校にも出かけて指導を行う。そこの校長職にあたるセンターの長が、たまたま私が以前勤務していた大学の修士課程の教え子でしたので、参考までに御紹介していますけれども、小学校の教員になって、そして、私は特別支援学校を目指すということで、彼は契約という言葉を使いましたけど、目指すという契約を教育委員会と行って、5年間研修を受けて、それから、そのセンターのスタッフとなる。30代半ばぐらいからそのスタッフとなって、ずっと、今は50近くなっておりますので、15年ぐらいその専任として働いてきていると。こういうふうな中核的な教員を育てるということを考えていただきたい。
 先ほど小・中学校との交流、あるいは特別支援学校間の人事交流という御提案もありました。そういう人事交流も必要でしょうけど、一方で、10年、20年と視覚障害教育の専門家として働いてきた、聴覚障害教育の専門家として働いてきた、あるいは重複障害教育の専門家として働ける、そういう中核的な教員の制度も必要ではないかと考えて提案申し上げます。以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 それでは、北住委員、どうぞお願いします。

【北住委員】 心身障害児総合医療療育センターむらさき愛育園の園長の北住です。
 総論のところとも関連し、合理的配慮と関連しますけれども、今、この制度改革に当たって、1つ、障害者権利条約と照らし合わせて、我々の今の状況はどうなのか、方向性はどうなのかという議論がありますけど、もう一つ、私たち、子どもの教育の検討に当たっては、子どもの権利条約もしっかり踏まえておく必要があるだろうと思います。その点が、はじめの文部科学省からの資料にも出ていませんが、基本的には子どもの権利条約、既に日本が批准して、もう何年も前から批准して、実はそれが実現されていない状況がある。そこでうたわれている一番の基本は、子どもの最善の利益が最もポイントとなるものです。その障害者権利条約の中では、地域で共に生き、共に育つという、これが大きなポイント。その地域で共に生き、共に育つということと、子どもの最善の利益ということが、ともするとある程度矛盾する部分もあり得る。そこのところをどう両立させていくかというのが課題であって、ですから、その中では、特に障害者権利条約のほうにも虐待の問題も触れられていますけれども、就学の決定に当たっては、その子どもの最善の利益をだれがどう判断していくのか。やはりこのところをしっかり踏まえておく必要があるだろうと思います。また、一番基本的なところから検討していくに当たっては、障害者権利条約と照らし合わせて、今の私たちが目指すものはどう在るべきかということも、改めて視点として入れておくべきだと思います。その中でまた合理的配慮がより広い意味での意味を持ってくるものであると思います。以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 子どもの権利条約については、ここでは論議をしてきていないですが、今御指摘のところは非常に重要なところでした。これと障害者権利条約との関係もきちっと整理をする必要があると思います。これはまた事務局と相談をしていかなければいけないと思います。ありがとうございました。
 ただいま笠政務官が御到着されましたので、一言ごあいさつをお願いいたします。

【笠文部科学大臣政務官】 皆様、ほんとうにお疲れさまです。御紹介いただきました政務官の笠です。本日は午後3時からということで、ほんとうにお忙しい中、こうしてお集まりをいただき、また、大変中身の濃い活発な議論を行っていただいておることに心より感謝を申し上げたいと思います。
 特別支援教育の在り方に関する特別委員会に当たり、委員の皆様におかれまして、ほんとうに御多用中にもかかわらず、こうして御出席をいただいたこと、重ねて感謝を申し上げます。
 さきの閣議決定において、障害者権利条約のインクルーシブ教育システム構築の理念を踏まえ、体制面、財政面も含めた教育制度の在り方について、平成22年度内に制度改革の基本的な方向性についての結論を得るべく検討を行うとの方向性が示されたことを踏まえて、本特別委員会において、これまでもう4回にわたって専門的見地から議論いただいていることに対して敬意を表します。
 文部科学省としても、先般、私も参加いたしまして、障害者権利条約の理念を踏まえた特別支援教育の在り方に関し、今後の制度設計の参考とするため、ヒアリングを実施いたしまして、より幅広い関係者の皆様方からの意見も今承っているところです。この点については、しっかりと次回以降の本特別委員会にも概要を報告させていただきたいと思っています。
 本日は、本委員会における論点整理に向けた主な意見等について、さらに御議論いただけると承知していますけれども、どうか障害のある子どもにとって最適最善の制度改革がなされるように、先生方、委員の皆様方のほんとうに引き続き活発な御議論をお願い申し上げたいと思います。
 ほんとうに、本日はありがとうございます。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 それでは、引き続き議論したいと思います。乙武委員、先ほど挙がっているので、お願いいたします。

【乙武委員】 乙武です。よろしくお願いいたします。私の場合は障害の当事者であるという点と、今年の3月まで3年間小学校で教員を務めさせていたという2点からお呼びいただいていると思いますので、それぞれの視点からお話をさせていただければと思います。
 まずは1点目、当然、インクルーシブ教育ということを考えていく上では、もちろん、障害のある当該児童が適切な教育を受け、その能力を向上させていくということが大事かとは思いますが、しかし、インクルーシブ教育の最終目的である共生社会を実現していくという視点に立って考えたならば、障害のある子どもと共に育った障害のない子どもにとってどのような効果が生まれるかという視点も忘れてはいけないのかなと思っています。
 僕自身は、両手両足が短い、そして車いすに乗っているということが先天性ですので、そういった状況のまま小学校、中学校に入学したわけです。僕の場合は公立の通常の学級の中で育ってきましたが、担任の先生のすばらしい御配慮、工夫によって楽しくも過ごすことができましたし、能力も向上させることはできましたが、やはり担任の先生にかかる御負担は大きいものがあったのかなというところもありまして、母が「いつも御迷惑をおかけして済みません」などとごあいさつを差し上げると、担任の先生は、「いえいえ、乙武君のようなお子さんがうちのクラスにいてくれるおかげで、クラスでは、困った子がいたら助けてあげられる優しい気持ちがすごく育つようになりましたよ」なんて言ってくださっていました。
 ただ、僕自身もそんな話を聞いても、それは母に気を使わせないために言ってくださっていたのかななんていうふうには思っていましたが、先ほどもお話ししたように、私が2007年4月から小学校で教員を務めまして、今度は僕自身が障害の当事者として、担任、教員という立場で子どもたちと接することになりました。最初の始業式のあいさつで、子どもたちに、「先生には手足がありません。だから、できないことがたくさんあります。だから、先生が困っているなと思うようなことがあったら、いつでも手伝ってください」とあいさつをしました。実際にそのあいさつを聞いたほかの先生方からは、それまでの教師像というのは、子どもたちの前では何でもできて、何でも知っていて、ある意味完全無欠の存在であるということが当たり前だった。例え、ほんとうはそうではなくても、子どもたちの前ではそういうポーズをとるということが当たり前だったので、「すごくあなたのあいさつとは新鮮味というか、違和感があった」とおっしゃっていただいたのですけれども。
 ただ、実際に僕が担任としてクラスを持っていたところ、ほんとうにできないことがたくさんありました。毎日のことで言えば、まず給食に出てくる牛乳キャップがあけられない。そうしますと、やっぱり自然と子どもたちが、気づいた子があけてくれるようになったり、だんだんその輪が広がっていって、テストとかが終わると、後ろの子がテスト用紙を集めてきてくれますけれども、その集まった書類やプリントを私の机まで、もしくは職員室まで運んだりすることは通常教員の仕事ですが、そういうことも自然と子どもたちが手伝ってくれるようになったり、それがしばらくすると、僕に対してだけではなく、やっぱりクラスのほかに困っている子がいたら自然と助けてあげられるような、そういう気持ちが育っていきました。ですから、やはりこのインクルーシブ教育ということを考えるときには、障害のある人とない人が共に過ごす生活をしていくということで生まれるプラスの効果ということにも目を向けていく必要があるのかなということを考えています。
 2点目です。ただし、そのプラスの効果を生み出していけるかどうかということには、やはり担任の態度がものすごく大きく影響してくるのかなと思っています。3年間の教員生活の中でいろいろなクラスを見てきましたが、やはり担任の先生が当該児童に対して、「よくうちのクラスに来てくれたね。もう先生はうれしくて仕方がないよ。君はうちのクラスの財産だ」という気持ちで接していると、周りのクラスの子どもたちも、その子どものことをすごく歓迎するし、クラスの一員として認めていく、そういう空気が生まれます。ところが、担任の先生が、「ああ、この子、面倒くさいな。手がかかるな」という態度で接していると、クラスの中でもやはり、「こいつは手のかかる子だ。みんなとは違う子だ」ということで排除されたり、いじめを受けたりというふうな空気になっていってしまいます。
 ただ、教員も当然その子を排除したいですとか、差別や偏見を持っているわけではありません。ただ、正直に言うと、できれば自分が受け持ちたくないなという空気があることは否めません。なぜかというと、やはり忙しいからです。先ほどからお話が出ているように、当然、そういった当該児童がいれば、個別の支援計画なども策定することになりますし、5日間丸々その教室に通わなくても、通級であったり副籍であったりという形で特別支援学校・学級と連携を図ることになれば、その連携にかかる時間、労力というのも出てきますし、通常の業務だけでも手一杯なところ、やはりそういった子どもをできれば抱えたくないというのが、多くの教員の本音なのではないかなと感じていました。まさしく先ほど中澤委員からもお話があったように、学校が手一杯の中で、またそういった子どもを抱えていくというのは破綻になってしまうという御意見もありましたし、また、そういった知識や余力がない中でそういった子どもを抱えることは、インクルーシブ、インクルージョンではなくダンピングだという御発言もありましたが、まさにそのとおりだなと現場にいて感じていました。
 ですから、まずは学校の中で教員の負担を減らしていくということも、とても大事なことなのかなと感じています。僕自身、3年間の中で、正直、あまりに直接的な教育活動とは縁遠いなと思う仕事が何と多いことかと驚かされることが多くありました。よく同僚の教員と話していたのは、学年に1人でもいいからクラスを持たない、授業を持たない、語弊を恐れずに言えば、ただの事務屋さんを1人入れることで、どれだけ負担が減るかなという話をよくしておりました。実際、教員の業務を減らすということと、このインクルーシブ教育、一見、何の接点もないように思われるかもしれませんが、教員の余力を持たせるという意味では、僕は実はすごく大きなかかわりを持ってくるのかなと感じています。以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 まだ発言のない新藤先生、それではお願いします。

【新藤委員】 全日本中学校長会の新藤です。1点申し上げたいと思います。まず、今教員は、自分自身の学校を見ても、僕は熱心に勉強していると申し上げたいと思います。しかし、その結果として、皮肉なことですけど、勉強すればするほど自分自身が体系的に学んできていないとか、経験が十分なかったということから、おのれの無力さを嫌というほど思い味わわされている。保護者とも一緒に歩もうとしても、説得力のある具体的な方策を示しきれない。そういった中でどんどん疲れていっているというのが、さまざまな仕事も増えているということもありますけれども、それが現状だと思います。
 そこを打破していくためには、1つは、管理職あるいは管理職を目指す人たちの育成というのをどうするかというところだと思います。マネジメント能力の育成の過程で、特別支援教育ですとか、このインクルーシブ教育システムなどについて体系的にきちっと押さえられて、それが管理職として学校経営に反映できるような力をつけさせなければいけないなと思います。
 それから、教員にとっては専門性の確保は必須であると思います。そういう面では、教員養成課程、大学の中で特別支援に関する単位の取得ですとか実地研修は絶対欠かせないなと思います。そして、現職研修としては、東京都では今、新規採用教員については、採用後1回目の異動については、島しょ地区への異動とあわせて、特別支援学校・学級への異動というのを義務付けています。これをやっぱり私は徹底すべきと思います。現実に見ていて、特別支援学校ですとか学級を経験してきた教員は、先ほど木舩先生のおっしゃった中核的教員に非常になりますし、そして、そういう教員が1人いるだけで、教員たちはある面で自信を持って取り組むことができるようになります。そういった意味で、こういう経験を積ませたいなと思っています。
 ただ、やっぱり私が不安なのは、日本でほんとうにこの教育に予算を投下することについて覚悟はできるだろうかということです。ものすごく金がかかります。そのことを承知の上で、例えば、今消費税云々という話がありますけれども、福祉目的税なんて言っていますけど、教育目的税という話はどこからも出てこない。このままでいくと、教員を増やす、人員を増やすためには、教員の給料を下げてワークシェアリングするしかない。そうすると、介護福祉士では10年続けているけれども、ひとりでまだ生活ができないといったことも聞きますが、そのようなことが起こり得るのではないかなと思います。どこかでやっぱりこのことについてもはっきりと覚悟を決めて臨む必要があるのかなと思います。以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 それでは、山口委員、お願いします。

【山口委員】 各委員の御発言を聞いていて、正直、だんだん発言しにくくなってきました。理念的には非常にわかる部分がたくさんありまして、しかし、実際に私、教育行政に携わっていますけれども、具体的に教育行政という立場で見たらどうなるのかということを思いますと、なかなか発言のタイミングを逸してきたというようなことがあります。
 ただ、議論の中で、私は現在の特別支援教育を含めて、教育資産の中でできること、あるいは、すぐやらなければいけないこと、あるいは先進的な事例に学んで全国に普及してもいいというふうなもの、こういったものはかなりあると思っています。教員の資質向上とか、あるいは学校の特別支援教育についての教育力を高める小・中・高の連携ですとか、こういったことについても、今できること、やろうと思えば先進事例に学びながらできること、これはあると思っています。
 ただ、やはり先ほど石川委員から、質的な飛躍というふうなお話がありました。特別支援教育がインクルーシブ教育の中に将来的には包含されるような形に向いていると。プラスの面を見れば、私もそのとおりだと思います。ただ、今の特別支援教育でもなかなか、例えば長野県では、課題がたくさんあります。もうほんとうに教員の質の向上を1つとっても、非常に大きな課題があります。教員の量的な確保についても同じです。あるいは、特別支援教育に限定しなくても、教育全体にとってみても、先ほど中澤委員の発言にもありましたし、今のままでいいというふうな状態にはないわけです。
 そういう中で、やはり現状からの質的な飛躍をどうするかといったときに、私は、例えば、教育行政の担当者からしますと、中期的な目標としますと、やっぱり教育振興計画に盛り込めるようなレベルのものは何であるか、それがどこの責任で、どういう権限に基づいて行っていったらいいのかという議論がやっぱり必要だと思います。それから、長期的には、これは戦略的に目指すべきインクルーシブ教育のありようというようなものは、当然あるべきだと思っています。その辺の、現在、そして中期、それから戦略的にというふうな、そういった各レベルで財源論も議論しながら、あるいは、ここで議論するのがふさわしいかどうか私にはわかりませんが、財源的な保証があればこういうふうなことができるし、また、こういうふうなことをするにはこういう財源的な保証がなければならないという議論をここでまとめていただければいいのではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。そのようなことを1つ感じています。
 それから、もう一つは、やはり私は、特別支援教育という教育の立場でいろいろ議論していますけれども、このインクルーシブ教育を考えたときに、やはり福祉とか、保健とか、あるいは労働とか、そういった先ほども発言されていました個別の指導計画というものの中に学校教育がどう位置付けるのかという視点がどうしても必要ではないかと思います。それはなぜかと言いますと、障害をどうとらえるかということでいろいろ御意見がありましたけど、私は品川委員のおっしゃるようなスペクトラムとしてのとらえというものが必要だし、乙武さんもおっしゃいましたけれども、私は人間というものはみんな不完全なものというように人間をとらえたほうがいいと思います。いついかなるときに障害を負うかもしらん、そういう可能体としてあると。生きていくうちに、当然、そういうものを負って誕生する子どもさんもいるわけですけれども、途中でなる場合ももちろんあります。そうしたときに、やはり障害のあるなしという形で、今のところで医療的な、あるいは社会的な形で、どこで線を引けるかという、そういう議論はもちろんあることは承知していますけれども、可能体として、やはり人間、これ不完全なるものという観点に立った上でのインクルーシブ教育と。これはもう戦略的な意味合いでは特にそうだというふうに感じています。
 そんなことを感じていまして、いろいろ個別的に非常に参考になる意見をちょうだいして、これ、実際にやるとしたら、長野県でどうやってやればいいのかなと頭を抱えて、つい沈黙してしまうのですけど。ただ、そうは言っても前出ししませんので、そんな形で整理していただければなと思っています。
 最後に、先ほど石川委員から、質的な飛躍との御発言がありました。ここにはさまざまな障害団体の方とか、あるいはかかわっている方がいらっしゃいます。それぞれの障害種、あるいはそれぞれの障害レベルにとって、今から見て、どういうふうな段階に至るところが質的な飛躍としてお考えになっているのかということも、またお話しいただければと思っています。以上です。

【宮﨑委員長】 それでは、中村委員、お願いします。

【中村委員】 若駒ライフサポートの中村文子です。私は保護者の立場から、就学先決定と合理的配慮について、皆様の御意見を聞きながら感じたことを少しお話しさせていただこうかと思います。
 合理的配慮という言葉については、私自身もきちんと把握できていないなというのを、この会議の中に参加させていただいて強く感じていましたが、本日、石川委員の御説明が、私の中では合理的配慮というものを理解するのに、ある意味、きちんと自分の気持ちの中で、何か納得できたなというふうに感じました。
 石川委員の合理的配慮という御説明で納得できたことから考えると、私は、就学先を決定するというのは、その子どもが成長するのに一番必要な教育を受ける合理的配慮においてどこが一番満たされるかということを決めるシステムではないかと思います。そのときに、保護者の合意をどう得るかという部分があるかと思いますが、保護者の意見というものは、私が今までの御意見の中で押さえていたことを考えると、本来、本人が述べるべき意見が、本人が十分に述べることができないときに、一番近い立場の方がその部分を代弁する形で述べるというものだと思います。そうすると、その方にとってほんとうに必要なものというものがきちんと押さえられた上であれば、確かにその子どもに一番必要なものは何かというのを判断するときにぶれは生じないと思いますが、以前、私、申し上げさせていただいたように、やはり保護者は支援の必要な子どもを授かってから、それをきちんと受容するのに時間が必要ですし、就学時の段階でそれを冷静に判断できるまで成長しているということは、一様には言えないのではないかと思います。そうすると、どうしても保護者のこうあってほしいという思いも入ってしまうという部分があると思います。そうなると、私は、就学決定の際には、その子どもが必要な教育を受けるのに必要な――すいません、違ったとしたら後で修正いただきたいのですが、いわゆる合理的配慮、先ほどの気づきシート云々を使った、その子どもに必要な支援というものをある程度明確にして、現実的な今の教育体制の中でそれを提供するのに、この場所だとここの部分が難しい、この場所であるとこの部分は提供できるということを明確にするということがとても必要ではないかと思います。それを保護者も受けた上で、最終的にそれを踏まえて、どれでも自分の子どもはこの学校に進むの、ここの教育ニーズを満たしたいから進むという合意を得るということが大事なのではないかなと思っています。
 多分、今の状況の中で、必要なものを全部合理的配慮として提供するというのは、やはり難しいものがたくさんあると思いますので、その部分のメリット、デメリットをきちんと説明するようなシステム、そのためには、それをきちんと説明するだけの専門的な意見を述べられる体制というものが大変必要なのではないかと思います。
 また、先ほどの石川委員のお話を聞いていて思ったのですが、あの考え方からいくと、合理的配慮というのは、多分、成長に伴って変化するものだと思います。そうなると、そのたびたびの見直しの中で、その子どもにとって必要な合理的配慮は何なのかということを、場の変更だけではなくて、きちんと明確にしていく。まさしく個別の教育支援計画をきちんと明確にしていくというシステムがきちんと確立していくということが大事で、そのときに、専門的な見地をきちんと提供できるシステム、ネットワークが必要なのではないかなと思います。以上です。ありがとうございました。

【宮﨑委員長】 杉山委員、お願いします。

【杉山委員】 浜松医科大学児童青年期精神医学講座の杉山です。この総論の部分で少し意見を言わせていただければと思います。
 まずインクルーシブ教育ですが、これは先ほど中澤委員が言われたのと全く同意見で、日本の特徴というのは、特別支援教育の対象が非常に少ない、先進国の5分の1とか10分の1ということだと思います。これは皮肉でとられるとよろしくないのですが、インクルーシブ教育のやりすぎです。むしろ、僕は、質的な飛躍が一番大事なのではないかというか、きちんとインクルーシブ教育を実践するということが非常に大事ではないかと思います。私、これも混乱させる意図は全くありませんが、子ども虐待の臨床をずっとやってきまして、その中で、教育ネグレクトのケースを随分見てきています。ケースによっては、義務教育を全く受けずに、高校生年齢で初めて見出されて、そこでどうしようということになって、非常に立ち往生したケースが何例かあります。そうしますと、インクルーシブ教育ということを考えた場合に、これからの学校の役割の中に、子育て支援というものを入れなくてはいけないのではないか。そういう議論も必要ではないかと思います。
 2番目、合理的配慮です。これは私が専門としています発達障害の臨床で、しばしば当事者から言われることです。白地に黒、この印刷はコントラストが強過ぎて読めません。これが、例えば配付資料集のように色がついていると、ものすごく読みやすくなります。それから、自閉症系の子の中には、蛍光色というだけで受け入れられないという人がいます。実は合理的配慮というのは、そういうレベルの問題が結構あるわけで、このような配慮はあまりお金がかかりません。このレベルの問題が実はたくさんあります。これは専門性の問題に絡みます。専門性という議論になったときに、多分、このレベルまであまり考えられていないのではないか。その理由はなぜかと考えてみますと、医療サイドの専門家の少なさです。アメリカで児童青年期精神科医が6,000人います。人口比を考えても、日本で3,000人が必要なはずです。小児神経科医って頑張っていますが、1,000人ですね。日本児童青年期精神科医学会の認定している専門医は140人です。これがおそらく、1つ、専門性を推進させるときにネックになる問題ではないかと思います。これが文部科学省だけの議論でできるのかどうかわかりませんけど、この問題を進めていくとなりますと、どうしてもこの問題は引っかかってくる議論になるのではないでしょうか。やはり継続的に専門的な立場からアドバイスできる専門家が、あまりにも少ないと思います。以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 杉山委員のお話の中にある虐待の問題などは、子どもの権利条約の中でも論議されていることなので、これは先ほどの北住委員からお話があったことも踏まえて、また少しその部分も取り込まなければいけないと思っています。
 それでは、髙橋委員、お願いします。

【髙橋委員】 すばらしい先生方の意見をもう3時間みっちり聞かせていただきまして、とっても参考になっています。特に品川委員が指摘されること、一々納得しながら話も聞いています。
 ただ、その中で、とっても大事なことですが、すべての教師に専門的な研修をやらなければならないということですが、実際に現場を預かる者として、その時間をどこで実施していくかがとても重要です。先ほどから言いました乙武委員も、先生の質は大事だ、接し方が大事で、そういう勉強をさせるという意味。それから交流教育、この前の会議で佐竹委員が、あまりよく機能していないという、その中をやはり先生の思いというのも全部ではありません、一部はあろうかな。そういう研修は大事ですが、今の学校のシステムの中で、どこでそういう時間をとっていくかというのは、今後真剣に考えていかなければならないかな、そう思っています。
 それから、教育委員会としまして、進学先の選択、そういったことにつきましては、私としては、選択権はやはり保護者にもちろんあるべきであって、しかも、それが教育委員会と対立するようなことではいけないな、本来の特別支援教育ではないだろう。そのためには、やはり幼児期からの支援システム、これはやはり全国一律同じようにつくっていかないと、なかなか解決していかない問題だろうと思いますし、それから、もう一つ、教育委員会としましては、子ども一人一人、やはり教育を終えたらば、いつかは就労します。やはりどの子にも就労の権利を奪わない、そのために、先を見越した教育というのは、これは真剣に考えていかなければならないと思っています。
 それから、今日は笠政務官も来ております。ヒアリングにも来て、お願いしたいと思うことがあります。いろんな先生方から要望が出ている中で、やはり財政的な裏付けというのはとても必要です。今、その財政的裏付けの中で、国庫負担率がつい四、五年前までは2分の1あったんですが、今は3分の1です。文部科学省が試算しましたA案12兆円、B案1兆4,000億、それも3分の1国が負担で、あとは都道府県ないし市町村では、とてもなかなかできません。したがって、これは私としては、できるだけ早急に3分の1から2分の1の復元はお願いしたい。やはり教育的なことについては、国のほかの予算とは別で、合理化してはいけない。いけないことをしてしまったのではないかという思いを強く持っています。以上です。

【宮﨑委員長】 青山委員、お願いします。

【青山委員】 全国高等学校長協会の青山です。皆様お疲れのところ恐縮です。最後になりましたけれども、若干お話をさせていただきたいと思います。
 日本的インクルーシブ教育の構築ということで、総論が示されています。私は、小学校、中学校、そして高等学校と学齢が進むにつれて、この教育というのは一貫しているものであるということを常々主張させていただいています。高等学校では、やはり多様な生徒の指導ということが大変重要で、それをこなしていくということが高等学校の教員の大きな役割ということになっています。しかし、生徒に対応して、生徒の情報を集約しているのは、高等学校ではどうかと言いますと、やはり保健室になると思います。保健室で養護教諭が中心になって、生徒といろいろと話をし、その中で生徒が養護教諭に伝えるということがあります。それから、もう一つの窓口というのは、これはやはり担任です。各クラスの担任が、自分のクラスの生徒を把握して、そして、保護者の皆さんと連携をとりながら、生徒の学校での生活を見ている、指導しているというところです。学校によっては、カウンセラーを配置している学校もありますが、これは決してすべての学校ということではありません。私たちとしては、カウンセラーを多くの学校に配置できるように、その環境整備を教育委員会にもお願いしているところでありますけれども、これはやはり段階的に充足していっていただきたいと考えています。
 研修の面では、特別支援コーディネーターという研修、回数は非常に限られた回数でありますけれども、その研修を通して、それを校内に持ち帰って、校内で共有するということでやっているわけですが、いずれにしても、これから今後さらに充実をさせていかなければならないというのが私たちの役目だと思っています。
 共に学び、共に進む。今日のこの会の中でも御意見をいただいたわけですけれども、やはりこれが私は大変大事なことだと思います。今後とも全国高等学校長協会として、この会で御議論いただく話題を私としては持ち帰って、そして全体に広めてまいりたいと考えています。
 それから、もう1点、最後になりますが、私も新規採用教員のときに、耳の大変不自由な女子生徒を、その担任として3年間指導いたしました。大変不思議というか、大変私感動しましたし、私が一番彼女から勉強したと思っていますけれども、彼女は非常に快活で、勝ち気な積極性のある生徒でした。不思議なことに、彼女が周囲の生徒たちを巻き込んでいくということで、必ず彼女とぴったりと行動を共にする女子の生徒がいました。その2人を核にして、クラスの中が非常にまとまっていく。そして学年にそれが広がり、そして全校的にも広がっていくという貴重な経験を私はいたしました。先ほど乙武委員からお話しいただいたことを、そのときを思い出しながら伺っておりました。こういう経験をしている教員は、どの学校にもおります。その指導経験の時期が新規採用の早い時期なのか、それとも中堅教員になった時期なのか、あるいは管理職直前の時期なのか。いろいろその教員の方によって違うわけですけれども、やはりそういった経験、実践を大事にして、それを束ねていくということが、実効的な教育指導を行っていく大きな基礎になるのではないかということを感じながら、今日、皆様の御意見を伺わせていただきました。ありがとうございました。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 それでは、太田委員、お願いします。

【太田委員】 品川区立鈴ヶ森小学校の校長の太田です。小学校の校長の立場から、2つだけお願いいたします。
 1つは、久松委員のお話にもありましたように、やはりこの議論の中で、認定就学制度を今後どのようにしていったらいいかというのは、1つ大きなことだと思います。それで、前回、実は私、資料13を提出させていただきまして、その中に、ぜひ認定就学者の現状について、基礎資料の作成をお願いしたいとお願いをしたところですが、今回は作成していただけませんでした。やはり現状がどうなっているのか、ほんとうにこのダンピングという状況になっているのかも含めて、現在の認定就学者の現状について、何か資料を次回いただけたらと思っています。
 2つ目です。先ほど新藤委員のお話にもありましたが、やはり小・中学校の教員というのは、今大変多忙感があります。乙武委員のお話ししていただいたことは、ほんとうに現場の感覚でよくわかるところです。ですから、やはりこの認定就学者のような子どもたちへの対応に、ぜひ特別支援学校からより積極的に支援をしていただけたらと思っているところです。例えば、副籍というのを小・中学校は受けておりますけれども、認定就学者の籍を逆にそれぞれの特別支援学校が受けて、そして、それを例えば訪問学級のような形でカウントして、きちんと教員をつけて、そして、その認定就学者のほうに特別支援学校のほうから支援に行ったり、あるいは教材や教具を補助していただく、そんなようなことも1つあるのではないかと思って、そのようなことも御検討いただけたらと思います。以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 それでは、石川委員、お願いします。

【石川委員長代理】 石川です。まず、この委員会で議論を調整して合意形成をしていくために必要なことということで感じますのは、1つは、この特別委員会の所掌範囲は一体どこまでなのかということを明確にする必要があると思います。私は支援技術の開発をやっていますけれども、こういうことは実現したいという目的、夢が語られて、そうすると、それに対して、開発する側は、仕様を決めて、実装について考える。しかし、そのときにもう一つ、どうしても必要なファクターが開発費です。どれだけの開発費があるという話なのかによって、仕様も実装も違ってきます。開発費、実装コストまでこの特別委員会で考えるということなのか、そこは考えなくてよいということなのか、考えると言われても考えられないかもしれませんけれども、そこのところがはっきりしないと、議論は収束しないように感じます。
 それから、2つ目に、これも似た話ですが、人によって何を定数として何を変数とするかというのが違っていて、あるものを定数とするとここまでしか行けない、ここまではこれも変数だというふうに考えるともっと行けるという、そういうところでも議論がすれ違う可能性があるので、ここもはっきりさせる必要があると感じます。
 それから、合理的配慮についてですが、非常に簡単に言うと、もし手話通訳や要約筆記が合理的配慮だとすれば、マイクやスピーカーも合理的配慮です。逆に、マイクやスピーカーや資料が当たり前のものだったら、手話通訳や要約筆記も当たり前のものです。どちらの言い方でもいいけれども、どちらかに合わせないとおかしいということです。
 それから、質的跳躍ですが、私の先ほどの議論では、1,000メートルとか1万メートルいきなり跳ぶということでなくてよくて、1メートルでも2メートルでもいいから跳ぶ、跳躍する。それを続けていくということが大事で、100点でなければ0点に等しいというふうにして止まってしまうのではなくて、短期的、中期的、長期的にどこまで行くのかということの計画を策定していく必要がある、そういうことを思います。
 それから、インクルーシブ教育で大事なことは、これは乙武委員の意見に全く全面的に同意しますけれども、障害のない子にとっても、ある子にとっても、それがメリットになるようなものとする必要があると考えています。以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 約束の時間をかなり超過してしまいました。まだ議論が尽くせないということは重々承知で締めざるを得ないことをお許しください。
 これから論点整理に向けて、いろんな御意見がまだまだおありだと思いますので、それにつきましては、事務局のほうへぜひお寄せいただきたいと思います。それから、事務局に何点かの宿題が出されておりますので、その点もよろしくお願いします。
 それから、もう一つ、石川委員長代理からお話があった、この委員会のミッションと所掌範囲ですが、実際どんどん広がっていくので、私もいろいろ考えながらおります。いずれにしても、障害者権利条約の第24条を今後きちっとやらなければいけないとは思っておりますし、それと同時に、さまざまな子どもの権利条約との整合性なども念頭に置きながら対応してまいりたいと思っています。
 皆様からいただいた御意見を踏まえて、私と石川委員長代理とも相談の上で、次回の委員会までに、とりあえず中間的論点整理案をつくってみたいと考えています。そのように進めていきたいと思いますが、いかがでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【宮﨑委員長】 ありがとうございます。それでは、時間があまりないので、これから事務局も交えて、少し整理をして、皆様にお諮りしていきたいと思います。
 ほんとうに時間が十分確保できなかったこと、ほんとうに申しわけございません。ぜひ、先ほど申しましたように、文書で御提出をお願いいたします。
 それでは、今後の日程について、事務局から御説明をお願いいたします。

【助川特別支援教育課課長補佐】 特別支援教育課の助川です。次回は、11月上旬に論点整理案の御審議を予定しています。なお、正式な日程につきましては、追って御連絡を申し上げます。
 また、委員の先生方、前回の議事録案をお配りしておりますので、こちらにつきまして、恐れ入りますが、修正等ございましたら、11月1日月曜日までに事務局まで送付いただきますよう、よろしくお願いいたします。以上です。

【宮﨑委員長】 それでは、本日はこれで閉会といたします。御出席いただきまして、ありがとうございました。次回との間が詰まっておりますが、ぜひよろしくお願いします。
 どうもありがとうございました。閉会といたします。

 

―― 了 ――

 

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(初等中等教育局特別支援教育課)