特別支援教育の在り方に関する特別委員会(第1回) 議事録

1.日時

平成22年7月20日(火曜日)15時30分~17時30分

2.場所

三田共用会議所 第4特別会議室

3.議題

  1. 委員長の選任等について
  2. 特別委員会における検討事項について
  3. その他

4.議事録

○委員長について、宮﨑委員が適任である旨の発言があり、了承された。

○宮﨑委員長から、石川委員が委員長代理に指名された。

○事務局から説明の後、資料3のとおり、特別支援教育の在り方に関する特別委員会の会議の公開について了承された。

 

【宮﨑委員長】 これより議事を公開といたします。

 まず、改めまして、委員長を務めることになりました宮﨑でございます。どうぞよろしくお願いいたします。私から一言ごあいさつを申し上げさせていただきます。私は中央教育審議会の初等中等教育分科会の委員をしておりまして、今年3月まで開催されておりました「特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議」で副座長を務めてまいりました。今回の特別委員会の委員長として選任をいただいたのは、そういったことによろうかと思っております。今回の委員会では、先に閣議決定で示されました障害のある子どもが障害のない子どもと共に教育を受けるという障害者権利条約のインクルーシブ教育システム構築の理念を踏まえ、体制面、財政面も含めた教育制度の在り方について、障害者基本法の改正にもかかわる制度改革の基本的方向性ということについての結論を得るべく検討を行うことが主な課題だと認識しております。
 閣議決定の中では、平成22年度中にも制度改革の基本的方向性を示すことが求められておりますし、就学のプロセスの改革やこれに係わる体制や環境整備の在り方、あるいは、そのほか幾つかの課題があろうかと思いますが、そういったことについて、短期間で集中的な審議検討を行う必要があると思っております。本件の改革は、今後の学校経営の在り方、あるいは教育行政の在り方、そして何よりも日本の子どもたちの教育の在り方にも大きなインパクトをもたらし得るものと考えておりまして、私どもの役割、あるいは期待されている役割というものを考えると非常に重いものがあると思っております。特に今回は、学校、教育行政の関係者及び専門家に加え、多くの障害当事者、あるいは障害関係団体の皆様に御参画をいただいていると認識をしております。委員の皆様に置かれましては、それぞれの立場で御経験や当事者、専門家としての御意見等に立脚をいたしまして、一緒に知恵を出しながら幅広く御審議いただき、その際、子どもたちの自立と社会参加に向けた心身の発達を最大限に引き出すという教育の理念を念頭に置きながら、委員長代理の石川先生とともに方向性を見出していきたいと思っております。どうぞ、審議の過程における御支援、御協力をお願い申し上げます。私のあいさつを終わります。どうぞよろしくお願いいたします。

(拍手)

【宮﨑委員長】 次に、高井美穂文部科学大臣政務官より一言ごあいさつを頂戴したいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【高井大臣政務官】 座ったままで失礼いたします。本委員会の開催に当たり、一言ごあいさつと御礼申し上げたいと思います。委員の皆様におかれましては、それぞれにほんとうに御多忙な皆様方がこの特別委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。御承知のように平成19年4月から、障害のある子どもたちの自立や社会参加に向けた主体的な取組を支援するという視点に立って、子ども一人一人の教育的ニーズを把握して適切な指導や支援を行う新たな制度としての特別支援教育がスタートしたところでございます。現在、皆様方の御協力にもより、都道府県や市町村、各学校におけるこの特別支援教育の体制整備は、一定程度は進みつつあると認識しております。しかしながら、特別支援教育の理念の実現という観点から、教育体制のさらなる整備のほか、障害のある子どもたちの将来を見通し、一人一人の教育的ニーズに応じた計画的かつ適切な指導、支援を行うことなど、特別支援教育のさらなる質的、量的充実を図っていくことが求められていると思っております。
 一方、国際的に障害者の権利に関する条約が平成18年度に採択をされ、平成20年5月に発効いたしました。日本政府は平成19年9月に署名を行いましたけれども、まだ批准には至っておりません。現在、批准に向けて国内法令の整備等について、全閣僚による「障がい者制度改革推進本部」、その下に設置されました「障がい者制度改革推進会議」において、議論・検討が進められている最中でございます。教育関係では、障害のある子どもが障害のない子どもと共に教育を受けるというインクルーシブ教育システムへの対応が課題となっておりますが、「障がい者制度改革推進会議」の中でも、この条約の理念を踏まえた教育分野を含む制度改革の基本的な方向というものが議論されております。本年6月7日に示されました「障がい者制度改革推進会議」の「障害者制度改革の推進のための基本的な方向(第一次意見)」を踏まえて、6月29日に、「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」が閣議決定されました。その中で教育分野の制度改革について、障害者権利条約のインクルーシブ教育システム構築の理念を踏まえ、体制面、財政面も含めた教育制度の在り方について、平成22年度内に制度改革の基本的方向性についての結論を得るべく検討を行うという方向性が示されたところでございます。
 そこで、本委員会におきまして、こうした方向性を踏まえて、学校、教育行政関係者に加え、障害当事者を含む幅広い関係者、有識者各位にこうして御参加いただき、初等中等教育分野における課題について専門的見地から御審議を深めていただければありがたいと思っています。
 また、本委員会での審議検討に当たっては、障害者当事者や関係団体をはじめ、多様な御意見をできるだけ幅広く伺うヒアリングの機会を設けるなどして、御意見を審議検討に反映いただければと考えております。文部科学省といたしまして、本委員会の御審議を踏まえ、子どもの能力を可能な最大限度まで発達させるという観点から、体制面、財政面の裏付けも含め、実態に則した検討を行い、障害のある子どもにとって、最適、最善の制度改革がなされるよう取り組んでまいるつもりでございます。委員の皆様方におかれましては、どうぞよろしく御審議のほどをお願い申し上げたいと思います。ありがとうございました。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。
 なお、公務の御都合により、高井文部科学大臣政務官はここで御退室をなさいます。
 それでは議事に入ります。
 本日は初回ですので、障害者権利条約の理念を踏まえた特別支援教育の在り方について、これまでの検討経緯等をレビューした上で、可能な限り、全委員から自由に御意見を頂戴したいと考えております。まずは配付資料に基づき、これまでの検討経緯及び今後検討すべき論点について、事務局から御説明をお願いいたします。
 それでは、よろしくお願いします。

【横井特別支援教育企画官】 配付している資料でございますが、議事次第、それから、資料1から12まで12点ほどございます。不足等ございましたら、随時事務局までお申しつけください。これから少しお時間をいただいて、経緯、論点等について説明したいと思います。
 まずは、資料1を御覧いただけますでしょうか。こちら、本年7月12日に開催された中央教育審議会初等中等教育分科会において、本委員会の設置が決定されたものでございます。設置の目的といたしましては、障害者権利条約の理念を踏まえた特別支援教育の在り方について、専門的な調査審議を行うということになっております。主な検討事項でございますが、3.にございますように、(1)としましてインクルーシブ教育システムの構築という、権利条約の理念を踏まえた就学相談・就学先決定の在り方及び必要な制度改革、(2)といたしまして、その制度改革の実施に伴う体制・環境の整備、(3)といたしまして、障害のある幼児児童生徒の特性・ニーズに応じた教育・支援の実施のための教職員等の確保及び専門性の向上のための方策、(4)その他となっております。
 資料4で、障害者権利条約関係について説明させていただきたいと思います。まず表紙をおめくりいただいて、1ページ目を御覧ください。
 1ページ目、表紙の裏側になります。障害者の権利に関する条約は、平成18年12月に国連総会において採択され、平成20年5月に発効している状況でございます。日本は平成19年9月に署名をしておりますが、批准・締結を行っておりません。可能な
限り早期の締結を目指し、必要な国内法令の整備等に係る政府としての対応を検討しているという段階でございます。
 2ページ目を御覧ください。障害者権利条約の主な条文を外務省の作成した仮訳で掲載しております。第24条に教育という条文がございます。第1項に教育についての障害者の権利を認めるとして、あらゆる段階における障害者を包容する教育制度、いわゆるインクルーシブ教育システム及び生涯学習を確保すると規定しています。その目的は、その下に3つ掲げられているとおりでございます。(a)としまして、人間の潜在能力並びに尊厳及び自己の価値についての意識を十分に発達させ、並びに人権、基本的自由及び人間の多様性の尊重を強化すること。(b)としまして、障害者が、その人格、才能及び想像力並びに精神的及び身体的な能力をその可能な最大限度まで発達させること。(c)といたしまして、障害者が自由な社会に効果的に参加することを可能とすることとなっております。
 また、権利の実現に当たっては次のことを確保するとしています。第2項の部分でございますが、(a)としまして、障害者が障害を理由として教育制度一般から排除されないこと及び障害のある児童が障害を理由として無償のかつ義務的な初等教育から又は中等教育から排除されないこと。(b)としまして、障害者が、他の者と平等に自己の生活する地域社会において包容され、質が高く、かつ、無償の初等教育の機会及び中等教育の機会が与えられること。(c)としまして、個人に必要とされる合理的配慮が提供されること。(d)としまして、障害者が、その効果的な教育を容易にするために必要な支援を教育制度一般の下で受けること。(e)としまして、学問的及び社会的な発達を最大にする環境において、完全な包容という目標に合致する効果的で個別化された支援措置がとられることを確保することとなっております。
 3ページを御覧ください。また後ほども触れることになると思いますが、本委員会の検討に関連する法律といたしまして、障害者基本法を紹介しております。第14条に教育に関する条文の規定がございます。
 続きまして4ページを御覧ください。政府としましては、昨年12月に総理を本部長とし全閣僚で構成される「障がい者制度改革推進本部」が設置され、その下に「障がい者制度改革推進会議」が設けられております。そこでは、福祉、雇用を始めとするさまざまな検討事項について議論が行われているところでございます。その中の1つとして、教育についても議論されております。
 5ページ及び6ページを御覧いただきますと推進会議の委員の一覧、開催状況について整理したものがございます。少しおめくりいただいて、9ページ目を御覧ください。
 9ページ目は、本年6月にまとめられました「障害者制度改革の推進のための基本的な方向(第一次意見)」の教育関係部分を抜粋したものでございます。第一次意見全体は、資料6として配付しております。資料7、8として、この推進会議の問題認識に対する文部科学省の見解について同推進会議に提出した資料を配布しております。そのポイントを今の資料4の7ページ、8ページにも示しておりますが、これについては説明を省略させていただきますので、後ほど御参照いただければと思います。
 9ページでございますが、今後の進め方といたしまして、事項ごとに関係府省において検討を進め、所要の期間内に結論を得て、必要な措置を講ずるべきとされております。
 「障がい者制度改革推進会議」の教育についての問題認識として、2つの項目が示されております。1つ目の項目といたしまして、地域における就学と合理的配慮の確保について、以下の3点を実施すべきものとして挙げています。1点目としまして、障害の有無にかかわらず、すべての子どもは地域の小・中学校に就学し、かつ通常の学級に在籍することを原則とし、本人・保護者が望む場合のほか、ろう者、難聴者又は盲ろう者にとって最も適切な言語やコミュニケーションの環境を必要とする場合には、特別支援学校に就学し、又は特別支援学級に在籍することができる制度へ改める。2点目として、特別支援学校に就学先を決定する場合及び特別支援学級への在籍を決定する場合や、就学先における必要な合理的配慮及び支援の内容を決定するに当たっては、本人・保護者、学校、学校設置者の三者の合意を義務づける仕組みとする。また、合意が得られない場合には、インクルーシブ教育を推進する専門家及び障害当事者らによって構成される第三者機関による調整を求めることができる仕組みを設ける。3点目として、障害者が小・中学校等(とりわけ通常の学級)に就学した場合に、当該学校が必要な合理的配慮として支援を講ずる。当該学校の設置者は、追加的な教職員配置や施設・設備の整備等の条件整備を行うために計画的に必要な措置を講ずる。また、2つ目の項目としまして、10ページになりますが、学校における多様なコミュニケーション手段の保障として、以下の2点を実施すべきものとして挙げています。1点目として、手話・点字・要約筆記等による教育、発達障害、知的障害等の子どもの特性に応じた教育を実現するため、手話に通じたろう者を含む教員や点字に通じた視聴覚障害者を含む教員、手話通訳者、要約筆記者等の確保や、教員の専門性向上に必要な措置を講じる。2点目として、教育現場において、あらゆる障害の特性に応じたコミュニケーション手段を確保するため、教育方法の工夫・改善等必要な措置を講ずる。それぞれについて、本年6月29日の閣議決定、「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」の中で、以下のように示されております。閣議決定全体については、資料5を御参照いただければ幸いです。
 資料5の4ページ目に「(2)教育」がございます。(2)教育 障害のある子どもが障害のない子どもと共に教育を受けるという障害者権利条約のインクルーシブ教育システム構築の理念を踏まえ、体制面、財政面も含めた教育制度の在り方について、平成22年度内に障害者基本法の改正にもかかわる制度改革の基本的方向性についての結論を得るべく検討を行う。手話・点字等による教育、発達障害、知的障害等の子どもの特性に応じた教育を実現するため、手話に通じたろう者を含む教員や点字等に通じた視覚障害者を含む教員等の確保や、教員の専門性向上のための具体的方策の検討の在り方について、平成24年内を目途にその基本的方向性についての結論を得ると書かれております。
 続きまして資料9を御覧ください。こちらは詳しくは説明しませんが、本年3月に審議経過報告を取りまとめました文部科学省の「特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議」において、早期からの教育支援、就学相談・指導について提言をいただいております。早期からの教育相談・支援の充実、就学指導のあり方、継続的な就学相談・指導の実施、居住地の小・中学校とのかかわり、市町村教育委員会等の体制整備、障害者権利条約についてそれぞれ御提言・報告いただいており、特に就学指導の在り方においては個別の教育支援計画の作成、活用を通じて、障害の程度が就学基準に該当するかどうかに加えて、必要な教育的ニーズ、保護者や専門家の意見、就学先の学校における教育や支援の内容等を総合的に判断して決定する仕組みとするとの提言をいただいているところでございます。
 資料10でございますが、こちらは本年7月12日に開かれました中央教育審議会初等中等教育分科会で御審議いただいた際の委員の発言を整理したものでございますので、また後ほど御覧いただければと思います。
 資料11を説明いたします。資料11は、事務局において整理させていただきました「特別支援教育のあり方に関する論点(例)」でございます。
 1.「総論」といたしまして、障害者権利条約に掲げられた教育にかかる目的。先ほど紹介いたしました障害者権利条約の3つの目的の達成を目指す上で重要な教育制度の要件は何か。日本的なインクルーシブ教育システムの構築を図る上で、現行の特別支援教育をどのように位置付けるべきか。2.の「就学相談・就学先決定の在り方及び必要な制度改革について」として、先ほどの協力者会議の提言として紹介しました、移行期の個別の教育支援計画の作成を通じて、障害の状態・ニーズ、保護者の意向等を総合的に勘案し、就学先を判断する制度とした場合のメリット、デメリットは何か。次に推進会議の問題認識として紹介いたしました、障害の有無にかかわらず、すべての子どもが地域の小・中学校に就学し、かつ通常学級に在籍することを原則とする制度とした場合のメリット、デメリットは何か。保護者と学校・教育行政サイドの共通理解を醸成し、適切な就学先及び教育・支援の内容等の決定をスムーズに行うためのプロセスとして、どのようなことが考えられるか。例えば、より早期からの教育相談・支援、体験入学、就学委員会への多様な委員の参画、都道府県・市町村の連携強化等。聴覚障害等のある子どもにとって、最も適切な言語・コミュニケーションの環境に係る判断をどのように行うのか。就学先決定において、保護者の理解が得られない場合にどのように調整することが適切か。就学後の継続的な就学相談、就学先の見直し等の柔軟な対応として何が重要かつ有効な方策か。
 3.といたしまして、「2.の制度改革の実施に必要な体制・環境整備について」として、障害のある子どもが地域の小・中学校に就学する場合、障害の種類やその状態に応じて必要な体制・環境整備として、どのようなものが考えられるか。同じく、必要な教育課程上の配慮(特に知的障害について)として、どのようなものが考えられるか。障害のある子どもが幼稚園、小学校、中学校、高等学校等に就学する場合、必要な合理的配慮として支援を講ずることができないケースとして、どのようなものが考えられるか。インクルーシブ教育システム構築のための漸進的取組として、居住地校との交流及び共同学習を更に進めていくためにどのようにすればよいか(副次的学籍の在り方の検討も含む。)。必要な体制・環境整備における、国、地方公共団体の責務・役割分担をどのように考えるか。同じく、都道府県と市町村等の連携及び役割分担をどのように考えるか。
 4.「障害のある幼児児童生徒の特性・ニーズに応じた教育・支援のための教職員の確保及び専門性の向上のための方策」として、障害種毎の専門性の確保に必要な教職員の適切な配置はどのようなものが考えられるか。障害のある子どもを受け入れる場合、幼稚園、小学校、中学校、高等学校等の教員に必要な専門性として、どのようなものが考えられるか。障害のある教員を積極的に受け入れるための方策及び学校側の環境整備として、どのようなものが考えられるか。通常の学級において、障害特性に応じた多様なコミュニケーション手段その他の適切な支援を確保するための教育方法として、どのようなものが考えられるか。
 その他関連事項として進路指導、職業教育・就労支援を挙げております。これらについて、今後御意見を賜ればと考えております。以上で説明を終わらせていただきます。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。それでは、ただいまの事務局からの説明について、事実関係の確認の御質問がありましたら挙手をお願いします。なお、各委員からの御意見につきましては、休憩後に別途お伺いする時間をとりたいと思っておりますのでよろしくお願いします。まず、事実関係についての御質問、どうぞお願いいたします。
 よろしいですか。どうぞ、石川委員お願いいたします。

【石川委員長代理】 資料4の9ページですけれども、ろう者、難聴者又は盲ろう者の場合には特別支援学校又は特別支援学級を選択することができるとなっていて、盲についてはこれは書かれていないのですが、これは推進会議での十分な議論の結果、このようなお話になっていると理解してよろしいんでしょうか。

【宮﨑委員長】 それでは事務局お願いいたします。

【斎藤特別支援教育課長】 特別支援教育課長の斎藤でございます。私のほうで「障がい者制度改革推進会議」を傍聴させていただいておりまして、その際に承知した事実関係を御紹介したいと思います。
 本年5月31日の「障がい者制度改革推進会議」におきまして、この第一次意見の素案が提示されております。それに対して各省の意見なども踏まえながら、本年6月7日の同推進会議の際に最終案という形で案が提示されておりまして、その最終案の段階では、今、石川委員長代理から御指摘のあった部分について、ろう者の前の部分に盲人という言葉が入っておりました。そのことにつきましては日本盲人会連合副会長の竹下義樹委員から御意見が出ました。盲人については必ずしも特別支援学校の選択が第一義的ではないという御意見がございまして、竹下委員も盲学校自体の存在を否定するような議論ではなかったと思いますけれども、ここでの文言として盲人という言葉を入れることについては疑義があるということをおっしゃいました。本来は本年5月31日の原案の段階でそういう御意見があってもよかったのですが、5月31日は竹下委員は御欠席でしたので、6月7日の際にそのような御意見があり、その場でほかには特に御意見が出ませんでしたので、盲人を削除するということで、担当室長の御確認があった後、削除された経緯がございます。どういう経緯、議論があって削除されたかという解釈がいろいろあると思いますが、これについては竹下委員という日本盲人会連合の代表からの御意見により削除されたと承知しております。

【宮﨑委員長】 よろしいでしょうか。

【石川委員長代理】 意見は後ほど時間がございますので、とりあえずの事実関係だけの確認にとどめたいと思います。

【宮﨑委員長】 ほかに事実関係について。はい、お願いいたします。

【杉山委員】 すみません、同じく資料4の10ページですが、ここでの発達障害については発達障害者支援法にある自閉症、注意欠陥多動性障害、学習障害ということで考えてよろしいでしょうか。

【宮﨑委員長】 今の件はいかがでしょう。

【斎藤特別支援教育課長】 「障がい者制度改革推進会議」での御議論の中では、正直、発達障害についてはあまり個別具体的な御議論はなかったように承知しております。委員の中にも、特別、発達障害関係の委員の方はおられませんでしたので、ここで発達障害という言葉が使われたことについては、おそらく一般的な意味での発達障害であると思います、したがって、政府のこの文書なり決定事項の中に出てくる発達障害というのは、基本的には既に法制化されています発達障害者支援法での発達障害と解釈して問題ないと思っております。特に中身についての御議論はございませんでした。

【宮﨑委員長】 よろしいでしょうか。ほかにございますでしょうか。安彦委員、お願いいたします。

【安彦委員】 「障がい者制度改革推進会議」の内容に私たちはどれぐらい縛られるのか、閣議決定のほうに縛られるのか。もちろん、推進会議の議論の方向性というのは私たちは踏まえなければならないんですけれども、基本的にはその辺、推進会議の位置付けを私たちはどう認識したらいいのかということを伺います。

【宮﨑委員長】 それでは事務局お願いいたします。

【斎藤特別支援教育課長】 まず、「障がい者制度改革推進会議」の位置付けでございますが、昨年12月の閣議決定に基づいて設置をされております。メンバーについては、障がい者制度改革推進本部長の指名という形になっております。この推進会議の意見とその閣議決定、今回の審議検討の関係ですけれども、事務局の理解で申し上げますと、あくまで閣議決定された本年6月29日の基本的な方向が政府の公式のポジションといいますか、コミットした方針ということになっております。閣議決定の資料5の1枚めくっていただきまして縦長の最初のページ、1ページを御覧いただきますと、政府は、「障がい者制度改革推進会議」の「障害者制度改革のための基本的な方向(第一次意見)」(平成22年6月7日)を最大限に尊重し、下記のとおり、障害者の権利に関する条約(仮称)の締結に必要な国内法の整備を始めとする我が国の障害者に係る制度の集中的な改革の推進を図るものとするとあります。要は、推進会議の意見を最大限に尊重するというのが政府全体としての方針になってございます。この点については、いろいろ御議論、文部科学省からもいろいろ御意見は申し上げた経緯はございますけれども、最終的には、最大限にこの意見を尊重し、障害者制度改革の推進を図る。ただ、その具体的な政府のアクションとしては、先ほど来説明しておりますように、例えば教育に関しては平成22年度内に基本的な方向性の結論を得るべく検討を行う。この部分が政府としての約束といいますか、方針を決めたところでございますので、あくまで具体的に何をするかという部分については、各個別の記述の中に書いてあることが政府としての方針ということになります。ただ、「障がい者制度改革推進会議」の意見も最大限に尊重するというのが政府全体としての方針になってございます。
 以上でございます。

【宮﨑委員長】 よろしいでしょうか。

【安彦委員】 ありがとうございました。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。それでは、ほかにございますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは一旦事実関係の確認の質問については、これで終わりたいと思います。ありがとうございました。
 なお、向山委員が途中退席を予定されていらっしゃるということで、ここで一言御意見をいただければと思います。

【向山委員】 全国連合小学校長会の会長の向山行雄でございます。この「障がい者制度改革推進会議」の議論の過程で教育関係者の意見を表明する機会がなかったので、私ども小学校、それから、中学校・高学校、それから、特別支援学校の校長会で、高井大臣政務官を通じて政務三役に意見の申し入れをしました。ぜひ慎重な会議、それから、教育関係者の意見を表明する会議を入れてほしいと。とりわけ中央教育審議会で議論ができたらそうしていただきたいということを申し入れたんですが、早速、こういう形で部会をつくっていただいて、感謝を申し上げます。
 私から3点申し上げます。1つ目は、全国連合小学校長会はずっと特別支援教育の委員会をつくっておりまして、経年的にいろんな調査をかけてきています。全国の校長の中で現状はどうですかというところで、一番の学校での問題、いろんな課題を3つ選んでくださいと問うてみましたら、通常の学級に在籍する発達障害のある子どもさんの指導で大変苦慮していると。その子どもが原因となって授業に支障が出るというようなことが62%、あるいは集団行動ができないで指導ができないが52%、それから、友だちとのトラブルが絶えないが66%というように、大変苦慮する実態があります。
 あわせて、どういう人が実際に対応して指導しているのかということでは、担任がほとんどでして、補助員が15%、別の教員が5%という程度で、まだまだ人的な条件整備が進んでいないという現状があります。
 それから、2点目ですけれども、障害のあるお子さんを最大限発達させるというのは、大変私たちもやっているわけですけれども、障害のあるお子さんの権利保障と同時に健常児の子どもたちの権利保障もしなければならないと。この権利と権利が往々にして、なかなか齟齬をきたすことがあって、そのことでトラブルがあるということがあります。従って、さまざまな条件整備、それから、現場でのいろんな意識改革もあります。教員の指導力の向上等々、そういったことも総合的にやっていかなければならないと思っています。
 最後に3点目ですけれども、我々、特別支援教育を進めるに当たって、わりあい校内の理解、教職員の理解等々は進むんですけれども、難しいのが保護者の理解、それから、地域の住民の方々の理解なんですね。この辺は学校を通していろいろな啓発を行ったりするし、あるいは行政のほうもやっていただくんですけれども、まだまだ時間がかかる。ですから、こういった形でこれから統合教育、インクルーシブ教育のことをやっていくためには、やはり相当の時間をかけていろんな方々の御理解を得ていかないと、さまざまな問題でやっぱりトラブルが発生する。それが現場の校長としては大変懸念をしているところであります。
 以上であります。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。全国連合小学校長会の立場から、現在、委員会を設置していろんなアンケート調査等に基づいた御意見を、特に3点に絞ってお話をいただきました。こういったことについては、またこれからおいおいと具体的な対応等についての検討をしていかなければいけないと思っております。
 それでは、ここで一旦休憩を入れたいと思っております。よろしくお願いいたします。

(休憩)

【宮﨑委員長】 お戻りいただきましたでしょうか。それでは、再開させていただきます。
 先ほど事務局から説明のありました障害者権利条約の理念を踏まえた特別支援教育の在り方について、本日は自由に意見交換を行いたいと思います。時間の関係上、本日はお一人御発言を原則2分以内でお願いできればと存じます。どうぞよろしくお願いします。
 本日は、御出席の委員は五十音順に御着席なさっておりますので、安彦委員から順に御発言をお願いできればと思います。どうぞよろしくお願いします。それでは安彦先生、よろしくお願いいたします。

【安彦委員】 安彦でございます。早稲田大学で教育学を教えておりますが、専門は初等中等教育のカリキュラム論です。
 この特別委員会の委員として、多分今後、障害のある方、ない方一緒に学校で勉強する上でのカリキュラムづくりというのが問題になるかと思います。特に、その垣根を無くしていく、まず、無くすためのカリキュラム、意識を変えていくカリキュラムを含めてカリキュラムづくりが必要になるかなと思っております。大変これは難しい問題でもありますので、先生方と勉強させていただきたいと思います。
 もう1つ、やはり一般的にこの方向、あるいは理念としてシステムをつくりましても、先ほども向山委員からお話がありましたが、それを動かす人の意識の問題というのは、変えることは大変難しいと思います。そういう意識を変えるためにもまずいろいろな、財政的な、あるいは行政的な支援が必要でありまして、特に今、現場の先生方の様子を伺うと、非常にいろんな仕事を背負っておりまして、一部には本当に疲弊しているような状況が見られるという、そういう中で、さらにこういう課題を新たに引き受けることに対して、やっぱりリラクタントになる、あまり前向きになれないという、そういう重い負担感を持たせた上で意識を変えさせようというのは、かえってよくないだろうと思います。そういう意味でも格段に、財政的、あるいは行政上の支援というのを要求しなければならないと思います。ぜひ、現場の先生方が本来の教育的な熱心といいますか、心からの熱情を持って、こういう取組に前向きに取り組んでいただけるような、そういう方向で結論が出せればと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。続きまして、石川委員、お願いいたします。

【石川委員長代理】 石川です。私、社会学と支援工学を特に専門としておりまして、特にこの10年ぐらいは、情報アクセシビリティという分野で主として仕事をしています。そこでは1つの原則といいますか鉄則がありまして、それは、アクセシビリティというのはユニバーサルデザインと支援技術の連携によって、よりよく実現できるということです。それとほぼ同型的ではないかというふうに感じるんですけれども、インクルーシブ教育、インクルージョンと特別支援教育、特別支援学校というのは、ちょうどUDとATの関係に当たるのではないかという感じがしています。どちらか一方だけで推し進めていくといっても、何かしら問題が残ると。それよりも共同作業、連携ということが大事なのではないかと、今のところ直感的にそのように感じています。それと同時に、私は、インクルーシブ教育というものを理念として支持しております。慎重論を聞かされれば聞かされるほど大いにそれを擁護したくなるんですけれども。それと同時に、3年間だけですけれども、私、盲学校を体験しております。高等部3年間。大分昔になりまして、1970年代のことですけれども、中途失明しまして2年間入院して、それから盲学校へ3年間。1年間寮におりまして、2年間は下宿から通いました。そこで私は、随分とエンパワーされたという経験を持っております。何にエンパワーされたかというと、友人や先輩たちがきわめて元気がよくて、走ったり飛んだり、また、雄弁であり力強かったんですね。高校に入ってから失明しましたので母校に戻るという選択もあったんですけれども、母校で一人で勉学を、見えなくなってから継続していった場合、同じだけのエンパワーメントを得られただろうかと考えると疑問があります。また、自分自身の点字であるとか歩行技術をどこで磨くことができたのかというと、やはりそれは盲学校の友だちや先輩たちからでした。自分への自信というよりも、自分たちへの自信といったらいいでしょうか、そういったものを与えてくれる場所として盲学校というのはそういう機能を、かつては少なくとも果たしていたと言えると思います。仲間がいて、ロールモデルがあって、それから自分たちの存在を全面的に肯定してくれるような重要な他者がいる場所というのは、子どもたちが育っていく上で非常に重要な環境だと思います。今の盲学校にそれがあるかというと、残念ながら、いろんな意味で劣化してきていると言わざるを得ないと思います。まず、集団教育が成り立たなくなってきているということ、それから、専門性を持った、そして、この道で自分はずっとやっていくんだという、そういう気持ちで取り組んでいる先生たちもやっぱり減ってきているということが言えると思います。ローテーションの中で特別支援教育に対しての専門性というのを持った人たちがなかなか育っていかないということもあるかと思います。
 もう一つ、私、全国視覚障害者情報提供施設協会という全国のいわゆる点字図書館やボランティアグループが参加しております視覚障害者への情報提供サービスを行っているNPO法人の理事長をやっております。オンラインで翻訳図書ですとか、デイジー図書を提供しているんですけれども、学習障害や発達障害の人たちに対して視覚障害者情報提供施設というのは、サービスする資格といいますか、有資格者では今のところ必ずしもないという問題があります。著作権法においては、視覚障害者等というふうに著作権の複製権の免除規定といいますか、それが拡張されていますけれども、具体的に、誰がサービスを担うのかについての方向性というのは文部科学省からも厚生労働省からも、私の理解する限りでは示されていないと感じています。はっきりと、どういう枠組みで支援していくのかということを決めていかないと、全視情協等の視覚障害情報提供施設は、発達障害、学習障害のある子どもたちを支えていくためのせっかくの資源を持ちながらも、十分支援できないという問題があります。
 差し当たり、以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。それでは大久保委員、お願いいたします。

【大久保委員】 全日本手をつなぐ育成会の大久保と申します。私どもの団体は、知的障害のある子を持つ家族並びに本人の会です。私は、「障がい者制度改革推進会議」においても構成員に就任しており、本日はこちらの会議にもお呼びがかかって出席しているわけですけれども、若干雰囲気が違うということで戸惑っておりますが、とりあえずは全体の感想というか、どんなことを考えているかということを申し上げたいと思います。
 インクルーシブ教育ということについては、方向性として私どもは賛成です。ただ、インクルーシブ教育というのはどういう概念、どういう考え方なのかというところでは、必ずしも明確に皆さんの間で共有されているかどうかは、若干疑問ではあります。当然、理念的には、地域で共に学び、共に育つという考え方に対して特に反対される方はいらっしゃらないと思うのです。ただ、どこが大切かということを障害者団体として申し上げるなら、やはり、地域に普段から障害を持っている方がいるということが非常に重要ではないか。つまり、目に見えるところに、あるいは接するということも含めてですね。それが先ほどもちょっとありました地域の方の理解、あるいは保護者の方の理解につながっていくということも含めて、非常に重要なのかなと思っています。
 一方、インクルーシブ教育といっても、私は、同じクラス、通常の学級で常に一緒に学ばなければならないとは思ってないです。知的障害の分野から見れば、お子さん御本人にとって、それが苦痛であったり大変であったりということは当然あるわけですし、一人一人のニーズに応じた教育という特別支援教育を行うに当たっては臨機応変に通級指導とか特別支援学級とか、いろいろな形の対応というのは当然あってしかるべきと思っています。そういうインクルーシブ教育を一応考えているのですけれども、議論していく中で心配なところは、現状の教育現場の大変さというか、混乱というか、こういったところを、一方でどういうふうに考えるのかということなのです。というのは、知的障害のあるお子さんの教育を受ける権利という最も基本的な部分、この辺をいわゆる保障していくということを抜きにインクルーシブ教育を語るというわけにはいかないという感じもするのですね。そういう現状のさまざまな課題をしっかり踏まえて、一定の方向性が皆さんとの議論の中で出ていけばいいのかなと思っている次第です。ありがとうございました。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。それでは続きまして太田委員、お願いいたします。

【太田委員】 品川区立鈴ヶ森小学校の校長の太田です。この3月までは東京都教育委員会で特別支援教育にかかわる仕事を13年間しておりました。私は、昭和54年に都内の小学校の弱視学級の担任になったんですけれども、その当時がいわゆる視覚障害児の統合教育が大変盛んな時期で、私の弱視学級にも点字使用の児童がおりました。その児童は弱視学級ではいわゆる点字や歩行の指導をしながら、そして、教科の学習はすべて通常の学級で学んでいましたが、学習も学校生活も大変順調でありまして、私の経験した中では、今でも理想の教育の形の一つだったかなと思っているところがあります。
 その後、私は東京都教育委員会に入りました。行政の仕事では、私が統合教育的な経験があるということで、平成14年に学校教育法施行令の一部改正にかかわる委員をさせていただきました。これは、昭和37年からずっと変わらなかった、いわゆる特殊教育諸学校の就学基準の改定の委員会でした。そのときに、いわゆる認定就学者制度というのもが導入されております。この認定就学者制度は現行の教育制度に風穴をあけた、私は大変よいものだと思いましたけれども、現場では「今までとあまり変わらない」というお話もあります。けれども、私は、視覚障害に関しましてはこれを発端に、通常の学級に在籍する視覚障害のある児童生徒の調査がきちんとできるようになり、あるいは視覚障害の児童生徒が通常の学級でも点字や拡大教科書を使うことができるようになってきた、こういうことでは大変意味のある制度改革だったと思っております。
 また、あわせて東京都教育委員会の仕事では、都立高校に点字受験をしたいという盲学校や通常の学級からの生徒さんがおりまして、その都立高校の入試に係わる仕事や、入学後の支援体制をつくるような仕事をしてまいりました。私が教育委員会に在籍した間に4人の点字使用の生徒が都立高校に入学できまして、そして4人とも大変よい形で卒業していくことができました。私はこうした経験から、希望する視覚障害の児童生徒については、小学校や中学校、高等学校で教育を受けることは、基本的には賛成の立場でおります。しかし、そうした子どもたちですが、例えば皆さんも、ちょっと今、目を閉じていただけますか。目を閉じても多分この会場の様子がわかるのは、視覚による情報が無意識のうちに皆さんの中に取り込まれているからなんですね。視覚による情報が、情報の8割とか9割を占めると言われており、こうした情報が無意識のうちに取り入れられない視覚障害の、特に幼児児童については、ただ一緒にいるだけでは、かなり情報が取り入れられないという負担が大きいと感じています。さらに、幼児期から児童期にかけては、幼児や児童の身体のさまざまな機能が発達していく時期です。無意識のうちに、例えば、見て真似をすることができない視覚障害の幼児や児童にとっては、やっぱり専門的な指導が欠かせません。そういったことをきちんと補償しながら、この動きを進めていくということが大変重要だなと思っています。
 私が接したケースでは、その生涯のどこかでは、盲学校や、あるいは弱視学級のような専門機関としっかりつながっていました。ある一点だけでこのインクルーシブということを考えるのではなくて、長い子どもの育ちの中でインクルーシブ的な時期が必要なときと、非常に専門的なことが、あるいは盲学校のようなところにいる時期が必要なときととがあることも考えていくことが必要なのではないかなと思っています。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。それでは岡上委員、お願いします。

【岡上委員】 岡上でございます。私は、全国幼児教育研究協議会の副理事長をしておりますけれども、同時に練馬区立光が丘さくら幼稚園の園長をしております。園長の立場から現状を皆さんに少しお話ししたいと思います。
 私の幼稚園にもやはり障害のあるお子さんが数名入っていらっしゃいます。ですけれども、その中で子どもたちは障害のある子もない子も一緒に活動し、生活を楽しんでいることが多いんです。ときどき、昨年度の例ですと、私はこの子には特別な語彙を増やしたほうがいいと思うようなこともありまして、そのときにはちょっと取り出しをして言葉を教えるというような機会もありました。しかしながら、障害のあるお子さんもないお子さんも一緒に活動していることが多いのが実態です。
 幼稚園の教育活動の特性でもあるかと思いますけれども、時間の区切りも空間の区切りも緩やかなんですね。小・中学校の教室での授業、あるいは先生がねらいを持って一つの方向に向かって学びを進める授業とは違いますので、子どもたち同士が受け入れられやすい。で、一緒に学ぶ機会も多い。そして、障害のあるお子さんとお互いが補い合いながら助け合うということも学ぶ機会にはなっています。しかし、例えば集団活動をするときに、集団の中から障害のあるお子さんが抜けていく、そのときに、やはり抜けると、先生の注目を浴びたいから、「私も、私も」と真似るお子さんもいらっしゃるわけで、そうしたときに集団での学びが成り立たなくなる可能性もあります。ですから、そういった意味で幼稚園ではやりやすい部分がだんだん小学校、中学校と学習の集中度が深まっていくときに難しくなる場合もあるのだなという実感をしております。そういう意味では、障害のあるお子さんとないお子さんが一緒に学びつつも、場合に応じて先ほど来御意見が出ておりますけれども、障害の種類や程度に応じて違う教育の方法ということも一緒に考えつつ、やはり物事のバランスということが大事なのだなという考えを持っております。
 そして、今までの意見の中で現場の先生の意識を変えるという御意見もございましたけれども、同時に今申し上げたように、子どもの学びというのは、子どもの学びの視点からもこの協議をしていただきたい。つまり、集団の中で何を学んでいるか。今申し上げたように、集団から外れることでそれを「自分もやりたい」といって真似てしまう場合もあるわけで、そういう集団の中での学びの成立がどのようになっているかということにも視点を当てた議論が進められるといいなと思います。
 以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。それでは尾崎委員、お願いいたします。

【尾崎委員】 私は、全国特別支援学校長会の会長でございます。全国に特別支援学校が約1,000校ございます。このところ増えております。そして、児童・生徒数は11万人を超えました。その中で今回一番発言したいのは、インクルーシブ教育システムといったときに、特別支援学校はそのシステムの中で機能していると、今、一応考えています。といいますのは、一人一人のニーズに応じたきめ細かい教育をし、最大限能力を発達させること、そして、共生社会への実現に向けて進路指導、初等教育等も充実させて社会に送り出す、そういう教育を実践しているわけですから、このインクルーシブ教育システムの中に特別支援学校はあるんだと考えております。
 ただ、課題もたくさんあります。それについてはまた御議論いただければと思いますが、その一つの大きな課題は、やっぱり地域社会に対してどういう働きかけをしているかということだと思います。今回の平成19年度の法律改正で、特別支援学校は地域の小・中学校等に対してセンター的機能を発揮するということで、地域の小・中学校等に在籍する障害のある児童・生徒への支援は特別支援学校の役割として規定されております。その役割のために膨大な量の支援に取り組んでいるのが現状でございます。そしてまた各特別支援学級では、地域の社会の中でPTAや保護者の方も中心になって、交流活動とか地域祭りへの参加とか、そういう積極的な動きもしておりますし、また、交流及び共同学習の実践も行われているところです。その在り方等についても、これから皆さんに御議論いただきながら、よりよいものにしていきたいと考えているのが2点目です。
 最後にですが、インクルーシブ教育システムの最終的な目的と、それから、特別支援教育の最終的な目的である共生社会の実現というのは、私は同じ方向だと思っております。特別支援学校では職業教育、進路指導を充実させておりまして、特に高等部への入学希望者が非常に増えているという現状があります。その中で特別支援学校が共生社会の実現のためにどう貢献したらいいのか、そういうことまで含めて御議論いただければ大変ありがたいなと思っております。
 以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。それでは乙武委員、お願いいたします。

【乙武委員】 改めましてこんにちは、乙武洋匡です。私は今年の3月まで杉並区の公立小学校で、3年間、教諭として勤務しておりました。3年生と4年生の担任をさせていただいておりました。3月で退職をいたしまして、現在は著述業のほうを行っております。今回、本当に委員に選んでいただいてありがたいなと思っているんですが、見識豊かな皆様とは違って、本当に専門性もありませんし、知識にも乏しいかとは思うんですが、障害がありながら、障害のない子どもたちと一緒に育った当事者の一人として発言をさせていただければなと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
 僕自身は通常の学級で義務教育を受けてきまして、その中で、もちろんいろいろないい部分というのはあったとは思うんですけれども、一番の僕のよかったなと思っている点は、やはりどうしても障害のある人間にとっては健常者に対してコンプレックスを抱きがちになるというところだと思うんですが、僕自身は小学校1年生から、もちろん幼稚園もそうだったんですが、障害のないお子さんと一緒に学び、遊び、友人関係を築く中で、言葉が適切かどうかはわかりませんが、対等にやれたなという感覚を持ちながら育ってきたということがやはり大きかったのかなと思っております。もちろん僕自身が当時で言う養護学校に行って、そこで専門的な教育を受けたとしても、これは本当に結果論で、もしかしたらもっと自分自身の能力が伸びていたり、違った結果を生んでいたかもしれませんが、健常者に対して今のように自然な形でつき合えるようになったかというと、そこはやはり疑問が残るのかな、通常の学級の中で育ったからこそ、障害のない人に対しても特にコンプレックスを抱かず、自然に接することができるようになったのかなということが一番のメリットだったのではないかなととらえております。かといって、全部やはり統合教育がいいのではないかという結論を持っているわけではなく、先ほど石川委員のお話でもあったように、御自身は盲学校に3年間通ったことで大変エンパワードされたというお話があったように、やはり障害の状況、程度、それから、障害だけではなく、その子ども一人一人の性格によっても、どういう道を選択するかということによって得られる結果は大きく変わってくるのかなと考えております。
 一番、僕自身が念頭に置きたいのは、通常の学級なのか、それから、特別支援学校なのか、特別支援学級なのかという、どういう道を通るのかという議論をするに当たっては、でも、出口は一つなんだということですね。どんな道を通っても、やはり社会に出ればこちらは健常者用の社会、こちらは障害者用の社会と、社会が分かれているわけではなくて、同じ社会で生きていくためにどういう道を通るのがその子にとってベストなのかということをしっかりと意識しながら、今後の議論に参加させていただければと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。貝谷委員、お願いいたします。

【貝谷委員】 こんにちは。私、社団法人日本筋ジストロフィー協会の貝谷と申します。ことし40歳になる、寝たきりの全身介護の息子の父親でございます。プライベートなことを申し上げていいかどうかわかりませんが、息子はすべて通常の学級でアメリカのカリフォルニア大学大学院まで通しました。現在は、NPO法人日本バリアフリー協会ということで、毎年1回、障害者の音楽会、ゴールドコンサートをしております。というのが私の個人的な話でございます。また、私の本業は精神科の医者でございます。42年間、精神科医として臨床をやってきました。今年5月に初めて、日本筋ジストロフィー協会の理事長ということになりましたが、まだ全くの素人でございます。
 障害という言葉ですね、私、精神科医のときに、精神障害者の障害の認定医を10年ほどやっておりました。そのときに、病気が固定した状態、機能が固定した状態を障害というと。治った日はいつかと、書く欄がございます。これにいつも疑問を抱いておりまして、治った日はといってもなと。精神障害者の場合はむしろ、よくなることがあるんですね。そのことも書く欄はございます。しかし、筋ジストロフィーは進行性の病気で、果たして障害と、障害が固定した状態と言っていいのかどうか。ベシャム型は昔は20歳で亡くなると言われていました。今は15年から20年、寿命は延びましたけれども。ですから、まず、障害という定義を考え直す必要があるんではなかろうかというのが一つです。それから、我々会員、約2,500名ですが、一口に筋ジストロフィーという病気といっても、いろいろなタイプがあります。過去20年間、遺伝子研究、日本を初めとする遺伝子研究が非常に進みまして、遺伝子がわかったのがたくさんございます。今、治療に向かって非常に頑張っていただいている。たくさんの研究者に頑張っていただいています。ということで、私どもは非常にそちらのほうにむしろ、今大変、力を入れております。
 何をやっておりますかと申しますと、遺伝子の変異の全単位の登録ということを目標にして、やはりオーダーメードの治療になりますので、そのようなことを今しております。ですから、私がここで申し上げたいのは、障害と一口に言ってもいろいろあるし、筋ジストロフィーもいろいろなタイプがいて、いろいろな障害があるということですから、やはり個別にきめ細かに考えていかなければならないなということでございます。
 以上であります。どうも失礼いたしました。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。それでは河本委員、お願いいたします。

【河本委員】 最初に自己紹介させていただきます。私は、全国特別支援学級設置学校長協会の会長、中野区立桃園小学校で校長を務めております河本と申します。どうぞよろしくお願いします。この設置学校長協会ですけれども、私たちの会は昭和39年に創設されて、50年弱の歴史がある会でございます。全国の各都道府県の公立小・中学校の数が、今、約3万3,000校ございますけれども、その中で設置校が約2万2,500校ございます。ですから、割合で言いますと、約68%ぐらいの学校で特別支援学級が設置されているという状況でございます。
 先ほどの特別支援学校の校長先生のほうからありましたけれども、我々設置校としても、インクルーシブ教育の制度のシステムの枠内で、今まで教育が行われてきたと自負しております。それぞれの障害がある子どもの障害の状況だとか、あるいはニーズに対して彼らの将来的なことを見通した自立と社会参加を視野に入れた、きめ細かな、そして、少人数による指導が各学級の中で行われてきました。そのためには通常学級にはない教育課程を編成して、例えば自立活動だとか、あるいは日常生活の指導であるだとか、あるいは生活単元学習であるだとか、遊びの指導を通しながら、共生社会の中で子どもたちがどういう地位を築いていくかということを視野に入れながら、小学校、中学校で指導を行ってきたということが現状でございます。
 インクルーシブ教育の枠内というお話を先ほどさせていただきましたけれども、我々も、このインクルーシブ教育の理念に関しては何ら反対するものではございません。そういう社会を目指さなければならないと思っております。差別、あるいは偏見を払拭していくということは、いつの時代においても大きな課題でございました。これは別に障害だけではなくて、すべての差別、偏見に通じることです。そういう観点でインクルーシブの社会の中で子どもたちが育っていくような、そういう社会を目指していきたいと思っております。
 平成10年度、今から12年前ですけれども、全国に約6万8,000名の特別支援学級に在籍する子どもがいました。それが12年後に13万5,000名と増えました。約2倍になりました。学級数で言いますと、12年前2万4,000学級だったのが12年後は4万2,000学級と、これも約2倍になりました。今、設置校の大きな課題として、教員の専門性をどう確保していくかということが非常に大きな課題となっております。児童数、生徒数が増え、そして、学級数が増え、それに見合うだけの教員を配置しなきゃならないといったときに、それぞれの学級の中で、冒頭で申し上げました、そういう教育が成り立つために、教員の専門性をどう高めていくかということが大きな課題になっているということでございます。通常学級の中に入ってきたときに、子どもたちが通常学級の中ですべての子どもたちがその中で生活したときに、果たして、今、彼らが学習する権利、学ぶ権利が、今以上にさらに充実したものとして保障されるかどうかということが、非常に大きな疑問点として残っております。これは時間をかけながら、ぜひ、合理的な配慮であるだとか、あるいは体制の整備だとか、そして環境の整備ということをこれから順序よく進めていかないと、この実現というのはできないと考えております。ぜひまた皆さん方の御意見を聞かせていただきながら、設置学校長協会としても更に充実した教育が展開できるよう頑張っていきたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いをしたいと思います。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。それでは木舩委員、お願いいたします。

【木舩委員】 はじめまして、木舩と申します。今、大学において特別支援教育に携わる教員養成に努めております。その経験からお話しさせていただきます。
 特別支援教育の理念として、一人一人の教育的ニーズにきちんと対応するというものがございます。そのためにいろんな制度、体制、いろんなものが考えられて、そして、少しずつ発展してきていると個人的には思っています。その一番の、一人一人のニーズに対応するために子どもに直接かかわるのが教員であると。その教員養成という中で、あるいは先ほど出ました教員の専門性ということに関しましては、まだまだいろんな面で、あるいは大きな課題があると考えております。そういった教員の専門性をきちんと向上させるということがインクルーシブ教育、あるいは特別支援教育の理念を実現することであろうと。そういう教員の専門性を向上させる、これをじっくりと、時間がかかるわけですから、専門性の向上なしで体制、あるいはいろんな制度をつくったとしても、それはなかなか難しい課題がまた生まれてくるのではないかと考えております。
 以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。それでは清原委員、お願いいたします。

【清原委員】 こんにちは、東京都三鷹市長の清原慶子です。私は、市長になる前、大学でメディア学や情報社会論などを専攻する研究者でございました。主として情報教育や情報リテラシー、情報バリアフリーなどを研究しておりまして、政府の障害者施策推進本部の参与なども務めさせていただいておりました。市長になりましたのは平成15年でございますが、私としては何よりも物理的なバリアフリー、あるいは心のバリアフリーも含めて、障害のある皆さんが地域社会で相互に支え合い、自立し合える、そんな取組に力を入れてまいりました。特に障害者の当事者の方を含めた「障がい者地域自立支援協議会」の活躍ですとか、あるいは、学びだけではなくて就労につながる活動などを障害当事者の皆様で構成されるNPO法人などにお願いをして、地域でできる限り私たちが障害者と出会い合えるような、そんな取組を進めてまいりました。そんな私でございますので、今回の特別支援教育の在り方に関する検討に際しましては、次のようなことを少し注目しながら検討していただければと考えています。
 資料11に大変重要な論点はすべてまとまっているのですけれども、私としては1点目に、何よりも「子ども本位」で、障害のある子どもの教育ニーズというものをできる限り謙虚に受けとめる、そんな制度設計ができたらと思っています。私自身、大学教員時代、視覚障害者、聴覚障害者、肢体不自由者、あるいは精神障害者の学生と出会い、学び合う中で感じていたことも多々ございまして、ぜひ、あくまでも子ども本位、児童生徒本位での設計ができればということが1点目です。
 2点目に総論として、私はこれまでの日本の特別支援教育というもののいい部分が限りなく生かされなければならない、このように考えています。私自身、教育委員会と一緒になりまして、特別支援学級の拡充にも努めてまいりました。東京都の教育委員会、三鷹市の教育委員会、そして、市長部局の連携と地域の皆様の御理解があって成り立つのが特別支援教育です。そうした取組をさまざまになされていらっしゃる方が、委員にもたくさんいらっしゃるので、ぜひそのことが生かされれば望ましいというのが2点目です。
 長くなるといけないので、最後に3点目です。各論についてですが、私は、構成員として唯一の自治体関係者といいますか、行政担当者といたしましては、国、そして都道府県、基礎的自治体の役割分担について随所に留意がされておりまして、これは大変重要なことだと思っています。どんないい制度でありましても、具体的に地域の現場で実現していくには、基礎自治体の取組が大きく影響します。教育委員会だけではありません。首長部局、市長部局が重要です。高井大臣政務官が、「体制面だけではなくて財政面もしっかり考えていく」とごあいさつされたことはきわめて重要でございまして、財政を軽視してはいけません。文部科学省におかれましては、ぜひ、よい制度を検討するとともに、財政獲得と確保に向けて、私たちと一丸となって進んでいただければと願っているところです。どうもありがとうございました。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。それでは齋藤委員、お願いいたします。

【齋藤委員】 齋藤幸枝と申します。私は、この肩書のところに全国心臓病の子どもを守る会会長と書いてあるんですが、実は、足立区の教育委員会の教育長をしておりまして、東京都23区の教育長会の代表をしております。そういう立場を主にということでお話をさせていただきたいのですが、大前提としては心臓病の子どもを持っているということですので、その子どもを育ててきた段階の中では、学校教育にいろんな注文を持っておりましたし、今はそれを受けて立っている側であるということで、二面性の面で、私はこの特別支援教育を考えていきたい、このように考えております。
 現状、今見てみますと、特別支援教育、スタートしてまだ間がないわけですけれども、非常に苦慮している。ですが、遅々として進まないではなく、若干ですが、私は進んできたな、ある意味では、旧来のことを考えると随分進んできたなという思いがあります。でも、これについては、各学校の努力、特に情緒障害系の特別支援については学校の努力、それから、先生たちの絶え間ない勤勉さ、このあたりに頼っているところが多いなと考えております。まず、就学指導委員会、あるいは就学支援委員会というような名前で、就学が適か不適か、あるいは困難かどうか、あるいは親に情報を与えるということで、この支援委員会の情報を親御さんに与えます。ですが、親御さんの中には2つのタイプがありまして、非常に真面目に御自分のお子さんの将来を考えてお話を聞くタイプと、それから、ネグレクトに近いような、こういうタイプが実は私どもの区、それから、23区の中には多うございます。そういうこともありまして、すべてを親にゆだねるということは最終的にはお子さんのためにならないということも、このごろ重々感じております。でも、基本的には私は、親御さんあるいは保護者が決定すべきものだろうと思っておりまして、私どもは情報提供を最大限に行っているのですが、この就学支援委員会に関与してくださる先生たちの質的な部分、それから、数の問題というのにも多分、自治体では非常に苦慮しているだろうと思います。この辺も第一にクリアしなくちゃいけないだろうと思っております。それを受けて学校現場のほうでは、通級の学級、知的障害の特別支援学級、これが一般的だろうというふうに思っておりますが、私どものところは小・中学校合わせて109校ありますので、その中で知的障害と通級の学級があるわけですけれども、非常に数が多くございます。一人一人の教育的ニーズという建前論は非常に理解しているつもりですが、なかなか丁寧にやり切れてないという状況がありますから、通級に通わせるというのは週のうちにたかだか1回、半日単位ぐらいしか通えません。そういうことを考えますと、学級でちょっと落ち着かなくなったお子さんを教室という形で、通級学級じゃなくて教室ですね、それを各学校につくったらどうかという思いがありまして、昨年から1つの学校だけしかまだモデル的にはできませんけれども、これがわりあい効果を上げているんです。というのは、そこの校長がしっかりした人格者で、特別支援学級のほうに明るい校長先生だったということと、規模が大きい学校でしたので、それなりの余剰の部分を生み出すことができた。今のように小学校が小規模化してきますとかなり難しいかなというのがありますので、この辺も一つ課題だろうと思っています。それから、そうはいっても教師自体の専門性というのを身につけるのは非常に大変だろうということと、今、小学校の教員のなり手が非常に少のうございます。特に東京都は全体として悲惨な状態ですので、この中で優秀な、それから、専門性を持たせてということをあまりにも押しつけますと、教員自体の育成にも影響しつぶれていく方も出てくるのかなというのが本当に現場としては抱えていることです。私は、理想論はやっぱりインクルーシブ教育だと思います。心臓病の自分の子どもを育てたときに、もう少し先生たちに配慮があれば、プールのときに暑い最中に見学させなくても済む、それから、ちょっとした心臓病であってもプールに入れないなんていうことをしなくても済んだと思います。そういう経験を生かしながら、今日のこの委員会にも参加させていただきたいということがあります。
 最後になりましたけれども、私はコミュニケーション能力さえあればインクルーシブ教育って可能と思うんですが、じゃ、そのコミュニケーション能力をどう培うかというのも問題だろうと思っています。この辺が、非常に私が悩みつつ、いつも課題を抱えているところですので、ぜひ、ここでお知恵もいただければありがたいと思っています。
 三鷹市長がおっしゃったように、やっぱり最後には、地方自治体の行政が実行していかなければならないと思いますし、私は区長部局と一緒になりまして、やっぱり教育委員会として子どもの教育を前面に押し出しながらやっていきたいと思います。理想と現実をどう近づけるかを念頭に。
 以上でございます。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。それでは佐竹委員、お願いします。

【佐竹委員】 佐竹京子と申します。全国肢体不自由特別支援学校PTA連合会の事務局長を、現在は務めております。平成13年に会長を務めまして、中央教育審議会の「特殊教育免許の総合化に関するワーキンググループ」にも参加させていただきまして、大変勉強させていただいた思いがあります。そのときに御一緒だった木舩先生、宮﨑先生といった先生方に今回お会いできて、大変感激しております。
 PTAの連合会ということで、私はもちろん障害のある子どもの親でございますが、「障がい者制度改革推進会議」の第一次意見、いろいろなものを拝見させていただきまして、親御さんたちは、この推進会議の中で特別支援学校が廃止と、席上でコメントが出ましたことで、大変驚いたというのが実態でございます。学校がなくなってしまうのかということで、今でも私の事務局のほうに、「佐竹さん、どうなっているんですか」というようなメールが届くことがあります。中には、学校がなくなってしまうという恐怖感さえ思い浮かべるという親御さんの切実な声が届いております。そういう極端な議論にはもちろんならないようにと願ってはおります。「障がい者制度改革推進会議」、また、本委員会で話されることも親御さんたちは大変注目しているかと思っています。
 子どもたちが特別支援教育、いろいろな場面でその子に応じたニーズの教育の保障があるように、私たち保護者にも安心して子どもを通わせられる学校環境の保障があるはずと思っています。また、PTAというものを通して親御さんたち同士もエンパワーメントをもらっている、エンパワーメントをつくっていくという集まりなんですね。そこでエンパワーメントが高過ぎて、最近はPTAの枠を越え、OBの保護者やボランティアまで巻き込んで、地域の小・中学校に人形劇を見せて、私たちの子どもはこういう子どもなんです、理解してほしい、みんなと一緒だよ、と自前のインクルーシブ啓発をやっている集まりもあるほどで、私たちも特別支援学校の中だけでいいと思っているわけではありません。そこのところは皆様にまず御理解いただき、また、現場の先生方の困難な状況もぜひ見ていただきたい。子どもたちの多様な障害もぜひ見ていただきたい、御理解いただきたい、その上での議論を重ねていきたい。お話ししたいことはたくさんあるんですが、お時間がということですので以上にさせていただきます。ありがとうございます。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。それでは品川委員、お願いいたします。

【品川委員】 教育ジャーナリストの品川と申します。よろしくお願いいたします。私は、不登校や引きこもりなど非社会的活動を取る子どもたち、いじめや非行などとといった反社会的行動を取る子どもたち、虐待やうつ、摂食障害、リストカットなどに苦しむ子どもたち、LDやディスレクシア、ADHDやアスペルガー症候群などといった発達障害を抱えている子どもたちというように、子どもの諸問題全般を20年以上にわたって取材して執筆しております。
 さて、本日は総論ということで承っております。教育の目的は子どもの社会化であり、いかに社会の中で不適応を起こさず、もちうる能力を最大限生かしつつ社会貢献したり自己実現したりしながら社会参加するスキルを育てることと考えております。そのときに、必要不可欠なのは、発達的な視点はすべての子ども理解の土台にあるということを共通理解とする教育制度をつくることです。
 発達的な視点というのを簡単に御説明いたしますと、人間には認知特性や学習スタイル、記憶や情報処理のありように多様性があるということです。これには連続性がございますので単純に発達障害の診断の有無だけでとらえないでいただきたいんですね。そういったことを踏まえまして、健全育成を目指して学校や学級経営、あるいは個別及び集団指導していくことが必要だと思っております。
 と申しますのも、例えば知的障害や視覚聴覚などの感覚障害、身体障害などがございましても、認知特性や情報処理に偏りがあったり短期記憶や注意集中、衝動性などに困難があったり、あるいは音韻理解に課題があったりする場合は多々ございます。自閉症圏との診断がついていなくても認知特性に偏りのある子は少なからずおります。そういった発達課題に周囲の大人が気がつかないまま、ニーズに応じた指導を受けられずに成長していきますと、学校で不適応を起こしやすくなりますし、また学校という枠組みから卒業して社会に出てからも不適応という問題に直面するリスクが非常に高まります。実際、就労不安定な若者たちを取材しておりますと、そういった不適応の問題を抱えて、途方に暮れている青年に多々出会います。
 ですので、インクルーシブ教育の制度設計を考えるときには、連続性がある発達課題の実態を踏まえたうえで構築する必要があると考えております。このことを実質的に踏まえるためには、医学的な障害診断があるかないかといった見方から脱却しなければ無理であろうということを申し上げたいのです。
 どう言うことかと申しますと、先ほど、どちらかの委員の方もおっしゃっておられましたけれども、やはり通常学級内にいる一人一人の教育的ニーズを考えるときに、診断があればこっちでなければあっちというように捉えることを続けている限り、ニッチに落ち込んでしまう子どもたちはどうするのかという問題が必ず浮上してまいります。ニッチに落ち込む子というのは、障害診断がボーダー線上にあったり、あるいは虐待やいじめ、不登校などの課題があって不適応をおこしやすいリスクがそろっていたり、保護者の思いと子どもの教育的ニーズが合致していないようなケースのことです。
 それから、発達障害について申し上げますと、言葉や概念は随分広まったと考えておりますが、実は発達障害ほどスペクトラム、スペクトラムというのは連続性という意味ですけれども、連続性で子どもの教育的ニーズをとらえなければ効果のある実質的な指導にはつながっていきません。自閉症圏についてはスペクトラムでとらえられていることが少しずつ定着してきたかと考えておりますが、例えば最新の英国のディスレクシア研究で申し上げるならば、読み書き障害や意味理解困難な子どもたちを連続性で捉えて指導していかなければ不利益を被る子が必ず出てくるということがエビデンスベースでわかっております。インクルーシブ教育というのは障害のある子もない子も同じ場で学ぶ、つまり、単に場を共有するという意味ではないと考えますので、すべての子が将来の可能性を踏まえて個々の教育的ニーズに応じて公平公正に指導を受ける権利を保障するためには、こういった発達の視点に基づくマネジメントと個別及び集団の指導を徹底することが必須だと痛感しております。
 長くなって申し訳ございませんが、あと一言だけ付け加えさせてください。先ほどコミュニケーション教育、能力の向上が必要だとおっしゃられていた委員の方がいらっしゃいました。文部科学省におかれましても参加型学習を増やして子どもたちのコミュニケーション能力の向上を図ろうとしていると本日報道がございましたが、参加型学習はルールの徹底といった規律模範、つまり規範教育ですね、と連携したうえではじめて効果をあげます。やみくもに参加型学習にしてしまうと、かえっていびつな集団ができてしまい、いじめなどが発生しやすくなります。それに発達の視点を踏まえずに参加型学習にしてしまうと、そもそも発達障害やその傾向のある子どもたちは参加ができません。規律のない、なれ合い型の学級経営では、伸びる子は伸びますが、そうではない子はついてこられないという調査結果もございます。すなわち教師が落ちこぼす子が増えるわけです。
 実質的に効果のあるインクルーシブ教育を実践していくための制度設計を構築するときには、こういったことを肝に銘じる必要があると考えております。
 長くなりまして申し訳ございません。ありがとうございました。どうぞよろしくお願いいたします。

【宮﨑委員長】 ありがとうございます。それでは新藤委員、お願いいたします。

【新藤委員】 新藤でございます。現在、全日本中学校長会の会長をしております。中学校の立場から発言をさせていただきたいと思います。
 特別支援教育がスタートして4年目ということで、やはり教員の意識、学校の中でも随分変わってきているなと感じています。そういった中で、確実に成長を勝ち取っている子どもたちもいるし、そのことによって多くを学んでいる子どもたちがいることも事実です。中学校の場合、どうしても生徒指導、生活指導との関係があって、これまでもやはり、発達障害なのか、いわゆる反社会的な行動、いわゆる非行問題なのかというあたりでの指導で苦慮してきた事実があります。
 私は東村山市の教育委員会に一時期いたことがあるわけですが、そのとき、いわゆる児童自立支援施設の中の学校を通常の学校ということで変えていく、分校化していくという形をとったんですが、そのときやはりいろいろと調べてみてわかったことは、そういう児童自立支援施設に保護されている子どものかなりの部分が、発達障害なり何らかの障害を持っていることが明らかになってきました。そういった中で、中学校という3年間の現場の中で、そういう子どもたちの発達の状況ですとか教育的ニーズ等をどう正確にとらえて適切な指導をしていくかということが、やっぱり大きく問われると思います。そのときにやはり一番大きな問題になるのは教員の資質、能力の問題だと思います。
 現在、中央教育審議会でも、教員養成とあわせて「教員の資質能力向上特別部会」が開かれているわけですが、やはりこの教員の資質能力をどう高めていくかという部分と、とはいえ、教員には人数には限りがあるわけですから、今どちらかといえば、大規模よりも規模がだんだん小さくなって1校の教員の数が減ってきている中においては、一人一人の教員にかかる負担というのはものすごく大きい。そういった意味では、やはり専門性を持った教員ですとか、今、コーディネーターというものが配置されているわけですが、それも実は定数内であって、誰かに研修を受けさせて、それをコーディネーターに指定をしてやってもらうというような状態であって、通常の勤務している仕事との関係で、なかなかうまくいかないという実態があります。こういったときにやはり、教員の数を増やすだけではなくて、そういう専門性を持った教員が配置されることによってコーディネーター役をきちんとやっていくということが、教員の資質能力の向上だとか力の発揮ということに大きくかかわるんではないかなと私は思っています。そういったことも含めて、今後議論をさせていただければなと思います。時間がありませんので以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。それでは杉山委員、お願いいたします。

【杉山委員】 杉山と申します。私、子ども病院で働く児童精神科医です。児童精神科医というのは、一つは非常にたくさんの患者を診るということで、私、2001年に開院した子ども病院で働いていますが、新患が2,000人を超えていると思います。そして、長く診るんですね。つまり、幼児期から成人まで診ていきます。そうしますと、教育がいかに重要かということは、下手すると学校の先生よりも身にしみて感じるんじゃないかと思うんです。成人後に、実はその教育の成果というのが明らかになるわけです。ただ、それが当事者、あるいは保護者に十分に情報が行き渡っているかというと、それはどうかなと思うんですね。そういう目で見ますと、一人一人のニーズに合った教育というのは、これはやはり参加ができなければいけないわけで、参加ができるということがインクルージョンという具合に考えています。
 それから、先ほど品川先生がちょっと言われましたけれども、最近、健常者って何かわからなくなってきまして。自閉症圏の認知特性というのは、これは明らかに異文化です。その延長線上に、従来の教育というのは言語聴覚優位型の人向けにつくられています。ところが、かなり多くの子どもたちというのが視覚映像優位型の方がいて、その場合、通常教育であっても、カリキュラムをちょっと別の視点で組む必要があるわけですね。ちょっとこういうことも、実はインクルージョンの中に考えていかなくてはいけないんだと思うんですね。
 それから、ちょっと蛇足なんですが、この何年か、子ども虐待に向かい合っていまして、日本の教育がこの子ども虐待というのとどういう具合に向かい合うかということは大問題になるんじゃないかと思います。インクルージョンといった場合に、これもやはり避けて通れないんではないかと。
 補足を一つ。どなたに伝えればいいのかわかりませんが、「障がい者制度改革推進会議」の中に発達障害の当事者が入ってないというのは、よろしくないと思います。人口比で一番多いグループだと思うんですね、5%とか10%になりなんとするグループの当事者がいないというのは、ちょっとこれ、会議そのものをゆがめる可能性があります。
 以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。それでは髙橋委員、お願いします。

【髙橋委員】 今の杉山委員とは違う、行政の責任者として、学校の現場、教員並びに保護者のほうに対応しています東海村教育委員会の髙橋と申します。教育長になって初めて、こうした特別支援教育で気がついたこと、それは就学指導委員会、15人から20人ほどのメンバーでしっかり専門委員会もつくってやっているんですが、その判定の結果があまり機能していない。それはやはり、判断を求めるときの保護者が選択するための資料、それから、時間的な経緯がない。いきなり、入学、進級するときに、あなたのお子さんはこうですよといってはなかなか、これが納得できないのは当たり前なのかなという気はしてきました。そこで東海村のほうでは、発達支援センターを立ち上げました。幸いに病院を建て替えるということになりまして、その病院がそっくり残ったものですから、そこの2階の約5分の1ほどの広さのところを発達支援センターとして立ち上げました。いわゆる発達障害のお子さんを対象に相談業務を行っております。発達支援コーディネーターが大体常勤、それから、臨床心理士が1週間に1日、言語聴覚士も週1日、臨床発達心理士は月1日。そこでやっている業務としては、相談業務ともう一つは巡回相談ですね。公立、私立を問わず、幼稚園、保育所、そして、小・中学校への巡回相談。非常にこれが喜ばれておりまして、いい結果を出しているようで喜んでいまして、そして私も、東海村としましては多少はインクルージョン教育にも近づいているのかなというふうなことがあったんですが、実際に、比較的恵まれているだろうと思っていたんですが、いわゆる判断で特別支援学級、学校へ行かないで、多くが今も小学校普通学級に入学しております。そのためには、幼稚園には介助員さん、今年は12名の実績です。現在、小・中学校には20数名の生活指導員さん。中には医療的行為を伴うお子さんもいますので、看護師さんも、生活指導の中には入れております。ただ、課題としまして、一つは、要するに小・中学校でもちろんいいんですが、幼稚園、低学年の場合にはお互いに理解し合う、学び合う機会として非常に効果があるんですが、実際、岡上委員もおっしゃっていましたように、いわゆる高学年になってくると、全体での学習機会がなかなかなくなってくる。やっぱり教育というのは将来の社会参加のための自立支援、これが教育だろうと思います。これは障害の有無に関係ないと思っております。
 もう一つの課題は、先ほど三鷹市長さんがおっしゃっていました。やはり教育条件の整備と財政というのは、裏腹の関係だろうと思っております。今、東海村がこういったことができるのも、財政的な裏付けがあって初めてできている。私が代表しています町村教育長会の941町村の中で、これだけ条件がそろっているところはほとんどないと思っています。そこでやはり、いい面の成果については多くの仲間たちに広めていきたいんですが、やはり今後の施策は、私ども村としましても財政的な裏付けというのは大きな問題になってくるかなと思っております。
 以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。それでは中澤委員、お願いいたします。

【中澤委員】 中澤惠江と申します。独立行政法人国立特別支援教育総合研究所で上席総括研究員をやっております。業務は国際担当でございまして、研究所における国際交流と国際情報の比較を担当しております。この席で私が発言できる内容としては、インクルージョンを長年進めている国々の統計とか制度、それから、その歴史の中であらわれてきた成功の条件と失敗、これらを提供する中で、日本の状況をもう少し相対的に見て、遅く始めた利点は、失敗を繰り返さない、成功例を生かすことだと思います。また、国の制度、歴史によって、一見同じように見えて非常に違うものがございます。そのあたりの情報提供をできたらうれしく思っております。
 方向としては、できるだけ皆様でも見られるような、各国政府が出している情報をベースに、比較の情報を出したいと思います。
 また、過去にOECDで行っておりました特別支援教育の各国の比較研究に日本の政府も2004年ほどから参加しておりまして、その中でOECD諸国が逆に日本をどう見ているのか、大変、皆さんとは想像している方向が逆な印象を持っているというところも含めて御提示したいと思っております。
 また、私の業務以外では、障害児教育についての専門領域は盲ろうといいまして、目と耳、両方の障害を持った子どもの研究に、約30年従事しております。これについては、この後発言されるろうの方々の教育とコミュニケーションの困難さにおいて共通するところがあるかなと思っております。
 以上でございます。よろしくお願いいたします。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。中村委員、お願いします。

【中村委員】 八王子よりまいりました。NPO法人若駒ライフサポートで理事を務めております中村と申します。当法人では、八王子市より委託を受けまして、障害児の学齢期からの自立支援サポート事業というものを実施させていただいております。あわせまして、私自身、24歳、22歳の知的障害を伴う子どもの母親という立場です。その立場で平成15年度から20年度まで、全国知的障害特別支援学校PTA連合会及び自閉症協会のほうにかかわらせていただきました。
 会議のほうの論点の中で、私の立場で申し上げられることがあるとしたら、2つございます。まず1つ、自閉症の子どもということで、現在、教育課程の中で自閉症の専門性ということは、この何年かの間、声が大きくなってきているなと感じておりますが、明確な尺度としては法制度上、まだ整備されていない状況です。そんな中で、知的の遅れだけではなく自閉症の部分で合理的配慮が必要とされるような子どもたちは、実際にはたくさんいるのではないかと思っています。先ほど教室にいられない子どもの話がたくさん出ておりましたが、あれを聞くたびに、私、少々胸が痛みました。多分、教室から出ていってしまう子どもたちの中には、その環境に耐えられなかった子どもたちがたくさんいるのではないかと思います。そうなると、その環境をどう、自閉の子どもたちにとって安心して教育を受ける現場にするのかという合理的配慮は、大変難しい課題ではないかなと感じております。
 あわせて、保護者の立場ということから申し上げさせていただきます。この第一次意見の中では、保護者及び本人の思いに沿った教育の場の選択ということがうたわれております。私、特別支援教育の内容の中で、本人や保護者の思いをどうニーズにつなげていくかという論点が何かに書かれたのを記憶に覚えておりますが、就学に関しまして、この思いをニーズにつなぐということの実現性が、そのままの形では難しい部分があるのかなと感じております。その部分で、保護者の思いがその学校に入ることなのか、そうではなくて、その地域の中で、いかに地域の中の一人の子どもとして生きていくことなのか、そこの部分を明確にしていくかということが、インクルーシブ教育の課程の中では大変重要ではないかと思います。
 あわせて、最初から障害受容がきっちりできた保護者など、私は世の中に一人もいないのではないかと思っております。私自身、子どもの学校選択の中では本当に悩み、その中で迷いながら学校を選択したという経験がございます。思いだけで学校を選択してしまったときの12年後の結果がどうなるかというのは、大変重い課題であると思います。先ほど杉山先生のほうから、教育の重さというものをひしひしと感じておられるという話がありましたが、効果が得られないだけではなく、自閉の子どもの場合、二次的障害を生んでしまうという事例はたくさんございます。この部分に関して、ぜひ、この会議の中でいい方向性を見出していければいいなと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。それでは久松委員、お願いいたします。

【久松委員】 財団法人全日本ろうあ連盟の久松です。ろうあ連盟といいましても、私どもは耳が聞こえない立場で、手話通訳を介して皆さんの議論に参加をしています。この会議にお呼びいただきまして、本当にありがとうございます。また、皆様も障害を持つ子どもさんのために取り組まれるということに、感謝の気持ちをあらわしたいと思います。
 ろうあ連盟のことをご存じない方がたくさんいらっしゃると思いますので、簡単にろうあ連盟は何をしているのかということを御紹介したいと思います。ろうあ連盟は教育のテーマに関係するところで言えば、東南アジアを中心に、学校教育を受けられない障害児、何百人という子どもたちに対して、学校教育を受けられるような体制をつくるという支援をしています。今でも続いております。例えばネパール、富士山よりも高いところで、ろう学校を2校つくることができました。ほかに、全国のろう学校校長会とは定期的に懇談の場を設けています。仕事柄、ヨーロッパやアメリカの教育、または大学の先生方とお会いする機会もあるのですが、向こうの大学には学長さんに障害を持った人が結構いらっしゃいます。ということも考えますとやはり、インクルーシブな社会というのは障害を持つ当事者がどれだけ社会に参加できるかということ、それが問われるのだろうと思います。また、インクルーシブな社会の在り方、インクルーシブ教育をつくるにはどうしたらいいかという議論をするときに基本になるのは、インクルーシブな社会をつくる姿勢をこの会議という場から出発するということだろうと思います。
 ゆくゆくは、私の望みですが、障害のある当事者が、例えば乙武さんが何年かしたら「学校長の乙武です」というふうに発言をされるようなこと、そういったことを大いに期待しているところです。障害のある当事者が、この教育の会議の分野でも活躍できるようにバックアップできるような、そういった教育にしていきたいと思っています。
 個人的なことで申しわけございませんが、私自身はろう学校に8年間、地域の学校で6年間を過ごしました。ろう学校の経験と地域の学校の経験を持っています。それを含めて議論に参加したいと思います。先ほど、石川先生が盲学校の数が減っていると、大変残念だという発言がありましたように、ろう学校も今、数が減っています。子どもの数も減っています。どうやって元気のあるろう学校にしていくか、活力のあるろう学校をつくっていくか、特別支援教育制度の中に埋没されないような制度のつくり方を皆さんと一緒に議論できたらありがたいなと思っています。
 最後に一つ。内閣府の「障がい者制度改革推進会議」のメンバーです。先ほどから、制度改革推進会議に対して非常に厳しい御意見をいただいています。私は耳が聞こえませんから目が痛いですけれども、教育にかかわっている皆さんも、コミュニケーションはとても大切に思われていると思います。私もコミュニケーション障害で孤立することがありますので、コミュニケーションはとても大切にしたいと思っています。コミュニケーションのバリア、情報のバリアというものをなくすためにも、推進会議との間のコミュニケーションを十分にとることをお願いしたいと思います。推進会議の皆さんも、今、インクルーシブ社会をつくるために一生懸命取り組んでいる方々ですので、その辺、お互いの情報交換、コミュニケーションをつくっていくということができればと思っています。
 あと、言いたいことは山ほどあるのですけれども、次回の会議の場でお話しさせていただければと思います。ありがとうございました。
 以上です。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。大変お待たせいたしました。山口委員、お願いいたします。

【山口委員】 長野県の教育委員会の教育長をやっています山口と申します。この障害者権利条約でうたわれたインクルーシブ教育でありますけれども、これはそういう方向であるとは思いますけれども、私はぜひ、今までの特別支援教育の成果と、今どの辺に課題があるのかということを、発達障害を含めた形で、やはりきちんと踏まえたものでないと、なかなか制度設計というのは難しいんじゃないかと、こんなふうにまず思っております。
 そういった議論がどの程度されたかというのはちょっとうかがいしれない部分がありまして、ちょっと危惧しているところであります。理念として正しいものであっても、そこにどういう形でアプローチしていくのかというところの知恵とか、あるいは、これは絶対繰り返してはいけないんだとか、これはぜひ強めていかなきゃいけないということは今までの特別支援教育の実践の中にあるはずですので、そのようなことを議論のベースにしていただければなと、これが1点でございます。
 それから、もう一つ、長野県でのことを若干申し上げますと、インクルーシブ教育とは若干違うかもしれませんけれども、この間、特別支援教育の在り方として、地域化ということを目指してまいりました。これはいろんな迫られた条件があって、そういうものを目指したわけでありますけれども、一つはやはりインクルーシブ教育につながるものだと思っております。それから、内容的には、先ほどどなたかの発言にもございましたけれども、とにかく基礎自治体の首長さんの、特に保健、医療、福祉分野、それから、教育、あるいは労働関係、こういったものがやはり一体となって、支援を必要としている一人一人の子どもさんに、早く適切な診断と支援の体制を提供しなきゃいけない。そういったことをやることによって、やはり相当、発達段階の中で適応されていく子どもさんが多くいらっしゃいます。そんな点で、やはり一方で放置されたまま二次的な障害に至るようなケースもたくさんあるわけでありますけれども、何としても基礎自治体等を中心とした、生活の中での支援体制をどのようにつくっていくかと、こんなことも、やはり非常に大事じゃないかなと思っております。
 その中で、最終的に私、県の立場でございまして、今回の議論の中で、国はどうなのかと。あるいは、私ども、特に今回の合理的な配慮という中で、市町村の役割、そして、県の役割、それから、私どもは市町村、県、広域圏というのがございまして、この広域圏としての役割、こんなものをどういうふうにつくっていくか。従って、理念は非常にわかるんですけれども、そこに至る克服すべき課題を明らかにして、それに対する工程表と申しますか、財政的な裏付け、あるいは教員の質的な課題など、さまざまな課題がありますので、そういったものをトータルとしてやはり議論していかないと、なかなか理念と実際がうまくかみ合って前へ進んでいかないんじゃないかと、そんなふうな議論を期待しておるところでございます。
 以上でございます。

【宮﨑委員長】 ありがとうございました。新たな教育制度の在り方についての皆さんの熱い思いを語っていただきました。おそらく、まだ尽くせなかった部分が多々あったと思っています。
 私、お話を承っていて、1点だけお話をさせていただきますと、インクルージョンアンドスペシャリゼーション、コントラスティングイデオロギーズという国際学会での一文を思い出しました。統合化と、あるいは特別ニーズというか特殊化というか、きわめて、障害に対応するという仕組みが果たして対応するイデオロギーなのかという問題というのは、とても重要なテーマだと思っていますし、ここをどう両立しながら折り合いをつけていく仕組みをつくっていくかというのはとても重要だろうと、お話を聞きながら思いました。これから具体的なお話をしていくことになろうかと思っております。それぞれの立場からの御意見を頂戴しまして。次回の会議も自由討議としたいと考えておりますので、本日の発言が十分尽くせなかった部分につきましては、次回以降御発言をいただければと思っております。
 なお、本日の会議に関することでお気づきの点、御要望等がございましたら、後からでも結構ですので、事務局まで御連絡をくださるようにお願い申し上げます。
 今後の日程について、事務局から説明をお願いいたします。

【齋藤特別支援教育課課長補佐】 それでは今後の日程でございますが、資料12を御覧ください。「「特別支援教育の在り方に関する特別委員会」当面の進め方(案)」でございますけれども、次回8月中旬は就学相談・就学先決定の在り方にかかる事例紹介及び討議を予定しております。第3回目は9月上旬を予定しておりますが、合理的配慮の在り方等にかかる事例紹介及び討議を予定しております。また、これ以降も関係団体からのヒアリング等を適宜行いながら、審議検討を実施し、平成22年内に中間的な取りまとめを行うことを予定しております。
 なお、正式な日程につきましては、追って御連絡をさせていただきます。
 以上でございます。

【宮﨑委員長】 ただいまの事務局からの説明に御質問がありましたら、挙手をお願いします。よろしいでしょうか。どうぞ。

【久松委員】 すみません、できましたら事務局にお願いしたいんですが、「障がい者制度改革推進会議」と重ならないように日程調整をお願いしたいと思います。仲良くしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

【宮﨑委員長】 それでは、格段の御配慮をお願いいたします。
 それでは、本日の会議はこれまでといたします。本日はありがとうございました。これで閉会といたします。

 

―― 了 ――

 

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