全国特別支援学級設置学校長協会

文部科学省初等中等教育局特別支援教育課
企画調査係(遠藤、岡、菅原)様

インクルーシブ教育システム構築のための今後の特別支援教育の推進方策に関するヒアリング意見提出様式

団体名 全国特別支援学級設置学校長協会
会長 中野区立上高田小学校長
河本 眞一

 

はじめに

 全国の特別支援学級に籍を置く児童・生徒数は、平成13年度、77,240名であったが、10年後の平成22年度には145,431に急増した。それに伴い特別支援学級の学級数は、27,711学級から44,010学級になり、児童・生徒数では10年間で約1.8倍、学級数では約2.1倍、約16,300学級が増加したことになる。すなわち、この特別支援学級の急増に見合う約16,300名の学級担当教員(担任)がこの10年間に配置されたことになる。
 また、文部科学省の調査によると、この特別支援学級担当者の特別支援学校教諭免許の保有率は、平成22年度小学校33.0%、中学校27.4%と決して高い保有率とは言えない状況である。また、平成21年度の全特協の全国調査では、特別支援学級の担当者としての経験年数では、0年~2年目30.0%、3年~5年目25.0%であった。この55%の中には、新規採用教員だけではなく、教職経験20年目、30年目の教員も数多く含まれていた。
 この実態は、特別支援学級担当者の専門性をいかに高めるかだけにとどまらず、児童・生徒を受け入れる学校現場の実情を垣間見ることができた。また、昨今、通常の学級に籍を置く、発達障害を含む特別な支援を必要とする児童・生徒に対するまさに個のニーズに応じた指導を日々実践していくための条件として、通常の学級担任にも特別支援教育に関する専門性は当然必要になってきている。
 学校教育の中での「合理的配慮」を考える上で、教員はもちろんのこと、その教員を育成する管理職、主幹・主任教諭の専門性をまず優先的に高める必要があると全特協では考えている。

1.合理的配慮等環境整備について

 合理的配慮の基礎となる「基礎的環境整備」に関して

  • 「合理的配慮と環境整備の関係」の図にある「国、都道府県、市町村による環境整備」とあるが、各都道府県や区市町村によって温度差が出てくることへの弊害が心配される。
  • 児童・生徒一人一人の教育的ニーズに応え、学びを保障していく上でも多様な学びの場が必要である。一学校の校内においても同様のことが言える。
  • 小・中学校に肢体不自由の子どもを受け入れた場合を想定すると、施設等のバリアフリー化は絶対条件となる。あわせて、当事者を含む児童・生徒の安全への様々な配慮が必要となる。たとえば、大地震の発生等でエレベーターが使えなくなった場合、子どもをどう安全に避難させるか。各学校にその対策を任せるのは難しい。
  • インクルーシブ教育システムの理念に関しては、一日でも早い定着を期待するものである。それと同時に、特別支援学校や特別支援学級の存在の意義をさらに広く宣揚していくことも重要なことと考える。
  • 各学校で常備しておかなければならない物と必要に応じて備えておくべき物とを整理する必要がある。必要に応じて必要な物に関しては、貸し出しや専門的にアドバイスができる人の派遣ができる体制整備が必要である。
  • 障害種別に応じた最新の教材教具の導入は必要不可欠である。特にICT関連の教具の導入はすぐにでも必要である。特にiPadやデジタルカメラ、補聴器、子ども車椅子等。

2.教職員の確保及び専門性の向上について

○1 専門性のある教職員の確保

  • 障害がある児童・生徒に対しての専門性のある教員と学級担任がチームを組んで指導にあたる手厚い体制がとれれば、担任にも余裕ができ温かい学級経営が可能となる。現状のままの体制では、学級内すべての児童・生徒の学習権を保障することにはならないと考える。
  • 学習支援員・介助員(名称は様々)の完全配置は必須条件と考える。また、医療的ケアのできる看護師等の配置も視野に入れていきたい。
  • 教員免許取得の単位の中に、特別支援教育も必要単位数に入れることが必要である。また、特別支援学校教諭免許の所持率を高める方策は早急に必要である。
  • 教員の採用条件の検討を各都道府県で足並みをそろえて早急に実施していく必要がある。

○2 教職員の専門性の向上のための方策

  • 管理職のリーダーシップの発揮を支える校長自らの専門性の向上を図る研修の充実を最優先にして実施すべきと考える。
  • 学習支援員・介助員の採用条件の見直しと採用後の研修の充実は、最低限必要と考える。
  • 特別支援学校との人事交流は期待度が高い。今後さらに拡充方向に進むことを願う。

 

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