平成24年3月26日
中央教育審議会初等中等教育分科会
特別支援教育の在り方に関する特別委員会 様
全国連合小学校長会
会長 露木昌仙
貴委員会が閣議決定「障害者制度改革の推進のための基本的な方向性について」を踏まえ、インクルーシブ教育システム構築のため、障害者の特性を踏まえた教育のあり方や障害者が障害者でない児童・生徒と共に教育を受けられるための方策や配慮等について精力的に審議を進められていることに敬意を表します。標記の件について、全国連合小学校長会（以下 全連小）としての意見を取りまとめましたので、下記により提出いたします。
記
（1） 障害のある子どもと障害のない子どもが共に教育を受けるインクルーシブ教育システムの構築にあたっては、どの子もその能力や特性に応じた教育を受ける権利を有することに配慮しつつ、人的措置や教育環境などについての合理的配慮について検討していただきたい。
（2） 全連小特別支援教育委員会の23年度調査では、「通常の学級に在籍する発達障害または、その疑いがある児童についての教育を推進する上で困難を感じていること」の主な点は、発達障害がある児童への指導上の困難さ、指導できる人材の不足等指導体制の困難さである。校長がリーダーシップを発揮し専門性のある指導体制を確立するためには、教職員の特別支援教育にかかる専門性の向上と共に、特別支援教育支援員等の人的措置の充実を欠かすことはできない。
（3） 全連小調査では、「発達障害のある児童に対する指導で困っていることがある。」と回答した学校は95.5％（22年度89.9％）であり、対応に苦慮している学校が増加している。特別支援教育に関わる学校の支援体制や支援員等の人的措置は年々充実してきている。しかし、指導体制上の困難な課題の解決に至っていない。このような状況を解決するために、合理的配慮等環境整備検討ワーキンググループが提案する「専門性のある教員、支援員等の人的配置」を含む基礎的環境整備に大いに期待するものである。
（1） 若年教員が増加する傾向が顕著な中、教員の資質能力の向上が大きな課題となっている。限られた研修時間の中で、特別支援教育の専門性だけでなく、様々な分野の内容について研修を行う必要がある。したがって、特別支援教育に関わる現職教員の専門性を高めるためには、教員免許更新講習等に位置づけるなど研修の制度化を図ることが望まれる。
（2） 全連小の調査では、通常の学級に在籍する発達障害のある児童への教育を推進する上で、教師が指導内容や指導方法が分からない等指導上の困難を抱えている割合が高い。教師の専門性として、児童・生徒の能力やその特性を踏まえた指導力を身に付けていることが大切であり、教員の基本的資質能力として養成段階に特別支援教育に関わる専門性を取得させるための教職演習の単位等を課すなどのことが望まれる。その際、教員養成の6年制、大学の課程認定なども検討していただきたい。
（3） 特別支援学校教諭免許を保持していない教員が人事異動で特別支援学級担任、通級指導学級担当教員として配置されることは多い。特別支援教育にかかる専門性をもった教員を特別支援学級へ配置することが望まれるが現状では難しい。特別支援学級への配置と同時に国や都道府県レベルの研修を義務付け、特別支援学級教員研修修了者として認定するなどの制度を作ることが望まれる。
また、既に教員としてその職にある者の特別支援教育学級にかかる研修制度等についても検討が望まれる。
（4） 特別支援教育の指導体制を整備するため、校内委員会の設置や特別支援教育コーディネーターの配置が進んでいる。しかし、専任の特別支援教育コーディネーターとしてではなく、校務分掌として学級担任を務めながらコーディネーターの役割を担っている教員が多い。学校内で効果的にコーディネーターとしての役割を果たすため、コーディネーターの職務に専念できる時間を確保できる人的措置等の環境整備が必要である。
（5） 全連小調査では、通常の学級に在籍する発達障害のある児童への教育を進める上で、安全管理上の困難を感じている校長は多い。児童が教室から飛び出したりすること等に対応するため、特別支援教育支援員等の制度を学校で活用できることが重要である。国としての特別支援教育支援員の配置については交付金として地方財政措置されているが、学校現場としてはさらに充実を望むものである。
（6） 障害のある児童と障害のない児童との相互理解を深めるための交流や合同学習等の充実を図るためには、人的措置等の環境整備が必要である。
初等中等教育局特別支援教育課