社団法人全国高等学校PTA連合会
自治体にもよるが、現在普通科の高等学校では障害のある子どもたちを受け入れる用意が乏しい状況にある。入学選抜がハードルになっていることは言うまでもないが、入学したとしても、教員の定数に過員というかたちで専門の知識を持たない教員が配置されるケースがほとんどである。
高等学校の多くは発達障害のある子どもたちや、もう・聾の子どもたちを教育するということを想定していない歴史がある。特別支援学校における教育効果の有効性を重んじていることも理由の一つと考えられる。
そうではあるが、このところ、入学選抜において競争倍率の低い学校にあっては障害のある子どもたちを受け入れているケースが増えている。特に定時制にあっては増加していると聞いている。不登校状態の子どもの行き場所がなく、特別支援学校を受験するという傾向もある。不登校児童は、様々な理由があり、不登校という状態は、二次障害としてみることもできるが、その子どもたちも学力面で基礎学力がついていないがために、特別支援学校を選択したり、定時制高校を選択したりというケースが増えてきているためと考えられる。
ところで、発達障害のある子どもの保護者の考え方にも少しずつではあるが変化が起きているようである。これまでは、普通学級で学ばせたいという考え方が多かったと聞いているが、最近は、高等学校に入っても障害に対する理解はあるものの専門知識や経験を備えた教員による教育が望めないことから、特別支援学校に通わせたいと考える親が増えていると聞いている。また、発達障害の子どもの入学が増えてくるにしたがって、特別支援学校高等部の対象生徒(知的に遅れのある生徒)の入学が、選抜という過程を経て行く段階で定員の関係をみると厳しい状況にあるが、現状では教育的対応で、希望者が全員入学という状況がおきているとも聞いている。
発達障害については、福祉の面からみると、法律等が整備されているが、学校教育の中に、発達障害の対応、特に高校教育の中で対応の整備が十分にされていないのが現状と思われる。
インクルーシブ教育の構築を考えた時に、障害のある子どもが、地域の中で一緒に教育を受けて行くという、総論的な部分での理解は得られるが、現状での高校教育の対応、特別支援学校の高等部を今後、どのように位置付けるのかという方向性を打ち出し取組んでいかなければならないと思う。
義務教育後の学校教育について、子どもや保護者の希望を叶えられる体制づくりが官民共同して構築することが必要である。
高等学校にあっては、学級定数が変わっていない中で、障害のある子どもを受け入れる状況にないのが現状である。このところ、国も保護者も学力の向上を求める動きが急速化し、学校も教員もそのことに力を費やしているからである。
こうした状況をふまえ、高等学校においても段階的に学級定数を減じ、教員定数を増やしながら、専門性のある教員を国の施策に位置づけて養成し、一定の学力を備えた障害のある子どもの指導に充たることで保護者の希望に添った教育に近づけることができると考える。ただし、障害のない子どもたちと保護者の希望も同時に叶えることは言うまでもないことであるから、トータルで考えていかなければいけない。このことは大きな課題であると同時に大変に大事なことである。
教員養成にあっては、国や自治体において相当する財政負担は不可欠である。教科の専門性を身につけることと、適正な行動力および個に応じた対応力を養うため一定の期間、障害のある子どもに接する経験を積ませることを条件としたい。また、この仕事が高校生や大学生にとって魅力ある仕事であるようでなければこの路に志す者は増えない。教員の質的向上を期待するためにはこのことも大きな課題である。
初等中等教育局特別支援教育課