全国国公立幼稚園長会

平成24年3月16日

文部科学省 初等中等教育局
特別支援教育課 企画調査係 御中

インクルーシブ教育システム構築のための今後の特別支援教育の推進方策に関するヒアリング意見

全国国公立幼稚園長会

 

はじめに

 幼稚園は、子どもが出会う初めての学校であり、集団生活を通して幼児一人一人の発達に応じた指導を行うことで人格形成の基礎を培い、生きる力の基盤を身に付けるという役割を担っている。障害のある幼児についても、一人一人の教育ニーズを把握し、友達との豊かなかかわりを通してもてる力を高め、自立の方向を目指した体験を積み重ねていく必要がある。また、障害のない幼児にとっても自他ともに豊かに生きる社会に向けて、インクルーシブ教育を通して共生の理念を涵養し理解を広めるためにも大変重要な教育活動と考え、本会としての意見を以下に述べる。

1 合理的配慮等環境整備について

○「合理的配慮」は新しい概念であり、今回、改めて「合理的配慮」の観点を整理されたことにより一層の充実が図られることに大いに賛同する。しかし、このことについて関与する教育委員会、学校、各教員への正しい理解と認識が図られるよう周知の上、保護者への適切な情報提供がなされることが重要であり、併せて地域における理解啓発を図ることを推進する工夫が求められると考える。

○「合理的配慮」が個別対応であるからこそ、その基礎となる環境整備の(基礎的環境整備)参考資料4の図の一階部分は重要で、確実な基礎として整備の充実が図られなければならないと考える。年々対象児の増加が表面化している中で、バリアフリー対策、人的配置等は早急に整備が進むことを望む。

○「合理的配慮」決定方法のマル3に、学校・家庭・地域社会における教育が十分に連携し、相互に補完しつつ、一体となって営まれることの重要性が記されていることは、地域に根ざした教育を進めている公立幼稚園が現在実践している姿に重なる。障害のある幼児を受け入れ、毎日保護者が送り迎えをする国公立幼稚園では、保護者同士の関係も含め人との温かい触れ合いが育まれやすくインクルーシブ教育の実践に適した場であると考える。

○将来を見据えた一貫した教育ときめ細やかな支援体制として、ネットワークの形成は重要である。幼稚園は、組織が小さいので、特別支援教育の中味を充実するためには、特別支援アドバイザーやスクールカウンセラー等、教育委員会による巡回相談や近隣の小学校、地域の特別支援学校等、外部人材や関係機関との連携が欠かせない。地域の医療機関や発達障害支援センター等福祉関係とのネットワークが形成されることにより、専門性が高まり支援体制が強化されると考える。

○現在、日本では1ヶ月検診、3ヶ月検診、1歳6ヶ月検診、3歳児検診があるが、それ以後は入学期までない。早期からの支援と保護者の気付きを促すためにも、早期発達相談のシステムを市区町村等に義務づけることも必要と考える。早期発見・早期専門教育支援の優先順位は高いと考える。

○居住地校との交流は意義がある。将来地域の中で、自立した社会生活を送ることができるように、また、共生の理念、周囲の理解啓発としても重要であると考える。

2 教職員の確保及び専門性の向上について

○「合理的配慮」として個別対応を充実させるために、適切な人的配置とそのための予算措置は欠かせないものである。特に、災害時には、不安定になったり、パニックを起こしたりすることも予想される中、個別対応のできる人員の確保は不可欠である。

○「合理的配慮」の観点として別表1~11のように具体的観点を類型化することにより各障害別の配慮事項を理解するとともに、教員に専門的知識の獲得の入口にもなる。このまとめ方は大変有効であると感じる。

○教職員が必要な基礎的知識をもつことは最低限度として大切である。担当教員は専門性を高めなければいけない。そのために教育委員会は、研修を教員のライフステージに位置づけ、計画的に実施する役割を担わなければならないと考える。適切に研修を実施するためには、特別支援教育専門の指導主事が配置されることも必要と考える。

○園内の支援体制の充実のために、特別支援コーディネーターの存在は重要である。そのため特別支援コーディネーターの養成に結びつく研修を計画的に教育委員会が推進することも必要であると考える。

○幼稚園教員や保育士の養成段階で特別支援教育に関する最低限の知識と指導法を学ぶべきである。これらの知識や指導法の研修は義務付ける必要があると考える。

○仕事をしながら、免許を取ることは非常に困難という実態の中、免許更新制度の中で組み入れることはできないだろうか。

○特別支援教育支援員には、教員免許をもつことを条件とし、待遇にも適切な措置をするようにしたり、学生ボランティアによる支援活動からOJTを積み、単位取得につながるようにしたり、特別支援教育にかかわる人材の裾野を広げる必要性を痛感する。

おわりに

 現在、国公立幼稚園で実施している障害のある幼児の受け入れは、インクルーシブ教育の理念を受け止めたかたちで行われている。また、地域に根ざした未就園児への親子登園や子育て相談等を通して早期発見・早期対応等の支援も行い、保護者に安心感を与えられる存在となっていると同時に、小学校就学への橋渡しにも貢献している。幼児期の特別支援教育を充実させ、小学校との滑らかな接続を図るためにも、学校教育のスタートとしての幼児期の教育の役割は今後も重要である。

 

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