全国特別支援教育推進連盟

1 合理的配慮等環境整備について

(1)インクルーシブ教育への急速で、稚拙な転換を外国の真似をして行うのではなく、歴史、文化、習慣、経済、税の負担、教育制度など我が国の実情に応じた「合理的配慮」を基に、慎重にインクルーシブ教育への移行を検討することを強く提言する。

(2)学籍の一元化は、疑問であり、反対である。

 一人一人の教育的ニーズに応じた適切な教育を継続的に行うためには、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校がいずれも必要である。学籍を一元化することにより、障害の重い子ども、重複障害の子ども、重症心身障害といわれる子どもたちの安全・安心な教育の場が失われることが心配である。阪神淡路大震災、東日本大震災においても、避難所で多くの人たちと生活をともにできない障害のある子どもたちがたくさんいた事実を考えても、どの子も同じ学籍があればよいと言い切ってよいものだろうか。
 特定の障害のある人たちの思いだけで、重度・重複障害児、重症心身障害児の安全・安心な教育の場を奪わないで欲しい。安全・安心な教育の場の確保は、保護者の切なる願いである。この願いを奪う権利は、誰にもないはずである。

(3)早期からの適切な教育を

 早期からの一人一人の教育的ニーズに応じた「特別な教育的支援」が必要である。特に、知的障害等については、幼児期の適切な教育的対応が十分であるとは言いがたい現状がある。特別支援学校の幼稚部の活用、幼稚園、保育所等への専門家による巡回指導など、早急な対応を望むのである。

(4)バリアフリーの心の育成を

 施設・設備等のバリアフリー化の推進が、取り上げられており、その必要性、推進については、たいへん喜ばしいことである。しかし、「心のバリアフリー」、「バリアフリーの心を持った、市民、国民」の育成がより重要である。社会全体が「心のバリアフリー」へ大きく転換しない限り、施設・設備等のバリアフリー化を推進してもその効果は、あまり期待できないと考える。「心のバリアフリー」の乏しいところ、「バリアフリーの心」の育っていないところで、学籍の一元化を唱えて何ができのだろうか。
 障害のある子どもを、「同じ」ことが平等であると、詭弁を弄して、犠牲にしてはならない。

(5)安全・安心な学習環境の整備

◎心のバリアフリー

○1 障害のある、なしにかかわらず、だれとでも付き合える人間関係を育成する

○2 いじめを根絶する

○3 譲り合う心を育成する

○4 障害のある児童生徒に対する適切な対応の仕方を身につける
  ―過剰な世話はしない、お涙ちょうだい的な同情を排除する―

○5 みんなが過ごしやすい学校、地域をつくる

○6 教師も保護者も「バリアフリーの心」を持ち合わせる

○7 地域の人々にも「バリアフリーの心」を求める

 

◎施設・設備

○1 階段の吹き抜けへの安全対策  例 ネットをはる、吹き抜けをなくす

○2 校舎の窓をすべて10cm以上開かないようにする

○3 屋上への出入りを制限する

○4 標準より明るい部屋、光を抑えた部屋を設ける

○5 標準より音の少ない(音の刺激の少ない)部屋を設ける

○6 紫外線を防止した部屋を設置する

○7 理科室、図工室(美術室)の管理を徹底する

○8 ストレッチャーで移動できるスペースを確保する

○9 エレベーターを設置する

 

◎人的な配置

○1 1クラスに教員を複数配置する(障害のある子どもの障害の状態、人数等)

○2 介助職員を配置する

○3 看護師を配置する―医師との連携―

○4 OT,PT,STを配置する―必要に応じて対応できる体制を確保する―

○5 特別支援教育支援員を活用する

2 教職員の確保及び専門性の向上について

◎教員の資質として

○ 子どもにより添える人(教員であって欲しい)

○ 教科の指導はもちろんであるが、それ以上に子どもの集団をまとめる力、学級経営のできる教員

○ 子どもの小さな変容・変化に気づき、適切に対応できる人(教員)

○ 協調性の高い人  チームで仕事ができる人

(1)免許状について

○1 特別支援学校の教員は、すべて特別支援学校教諭免許状を所持する。

○2 特別支援学校教諭免許状を所持している場合には、特別な手当てを支給する。

○3 特別支援学級担当教員は、当分の間、特別支援学校教諭免許状を所持することが望ましい。免許法を改正する場合、特別支援教育教諭免許状が設けられるようにし、特別支援学級担当教員、通級指導教室担当教員は、その免許状を所持するようにする。

○4 教員免許状を取得するすべての学生に対し、障害のある児童生徒に対する理解、接し方、共生社会のあり方等について講義を受けるようにする(大学の教員の意識改革が必要である。)。

(2)研修について

○1 学校をできるだけ離れないでできる研修を計画実施する。

○2 授業を基本にした研修を計画実施する。
  授業の分かる人を講師に選ぶ。例、校長、教員の経験者(退職者を含む)

○3 市町村教育委員会、研究会、学校等が企画、主催した研修会を受講した場合、ポイントを出し、一定のポイントに達した教員に対し、資格がもてるようにする。

○4 学会等が出している資格を有効に活用し、公的機関がそれを認めて、一定の資格とする。(免許状に準ずるもの)

(3)教職員の確保について

○1 校長の任期が短すぎる  一校3-5年ぐらいを

○2 教員の任期が短い    一校8-10年ぐらいを

○3 特別支援学校教諭免許状等を所持する教員に対して優遇措置を講じる。

○4 研修の項の○3,○4についても、上記の免許状に準ずる扱いとする。

 

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初等中等教育局特別支援教育課

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