資料6-5:特別支援教育の在り方に関する特別委員会(第12~14回)における教職員の確保及び専門性の向上に関する主な意見

(1)総論

○1 教員免許状を取得し、特別支援教育に必要な基礎的な知識を持つことは最低限度として大切なことである。一方で、その知識の中から、その子どもにとって必要な支援は何かをアセスメントし、支援計画、指導計画に反映する技術は大切な専門性である。この二つが機能しないと、子どもに対する支援は充実しない。個々の教員ではなくとも、アセスメントが行えるシステムを同時に構築していくことが重要である。

○2 特別支援教育の専門性に関し、例えば発達障害について、専門性が低くて良いわけではなく、担当教員は専門性を高めなければいけない。すべての教員が持つ基礎的な部分と、それぞれの教員が持つ高い専門性の両方がないと、低発生頻度障害だけが専門性が高く、高発生頻度障害の方は専門性が低くても良いように読める。

○3 高発生頻度障害と低発生頻度障害に関し、高発生頻度障害は発達障害等であり、低発生頻度障害は、視覚障害、聴覚障害、肢体不自由、病弱、知的障害、重度・重複となる。

○4 高発生頻度障害、低発生頻度障害と分けると、なかなか整理しにくい状況がある。

○5 フィンランドの例に見られるように、LD等の発達障害については、小・中学校の教員が十分対応できるようにすべきである。発達障害についても専門性は必要であるが、対象となる人数が多いため、教員全員が専門性を持っていないと、ドロップアウトしていく子どもが出てくる。

○6 教員の質を高めるために一番重視すべきは、校長の質を高めるということである。校長のマネジメント、校長のリーダーシップを発揮するための底上げなどが、これからの大きな問題である。

○7 合理的配慮については、特別支援教育の専門性として、しっかりと位置付けていくことが必要である。これは担当教員、特別支援教育コーディネーター、学校外のボランティアといった特別支援教育に関わる方はもちろんのこと、全体として、合理的配慮に対する認識を高めていくことが重要である。全国民が認識することが重要ではあるが、まず、特別支援教育に関わる教員や担い手は、合理的配慮についての認識と行動力を持っていただきたい。

○8 特別支援教育の専門性とともに、特に中等教育においては、教科の専門性が犠牲にならないよう留意する必要がある。時間が限られている中で、何かに集中すると何かが弱くなるということが起きてくるという中で教員養成の6年制も視野に入れて考えるべき。

○9 高発生頻度障害だけではなく、小児糖尿等の小児科の病気についても、すべての教師が教員免許を取るときに、最低限の知識と指導方法を大学でしっかり学ぶべきである。
 これは、幼稚園や保育園の教員も同様である。また、校長になる際に、高発生頻度障害や病気について学ばなければならないことにすべきである。

○10 教員として新規採用になって1年続かずやめる人も多くなっており、あまり教員の肩の荷を重くすると、なり手がますますなくなるのではないか。

○11 校長の指導、専門性は重要であるが、教育委員会の指導主事の専門性も重要である。教育委員会の指導主事が、発達障害についての理解がないケースがよくある。進んでいる自治体では、指導主事の研修を徹底している。生徒指導課が発達的な視点を持って、子どもの問題行動を理解することに取り組んでいる。学校を指導する指導主事が理解していなければ、適切な指導が行き渡らない。

○12 特別支援教室構想を進めることは必要であるが、支援が必要な部分のみを取り出したとしても、保護者も本人も取り出して教育を受けることの受容ができない。その子一人一人の支援にとって、取り出した方が良いのか、支援員を付けた方が良いのか等について、考える必要がある。

○13 今後の論点整理の中で、カリキュラムへの反映、各市町村の教育委員会と都道府県の教育委員会との連携、市長部局と教育委員会の連携等、実現に向けた対応の具体的イメージを作り出していく必要がある。ただ、単に「地方公共団体」とせず、教育委員会が主として担うもの、市長部局が担えるものと、整理する必要がある。

(2)特別支援学校教員の専門性

○1 特別支援学校の教員は必ず特別支援学校教諭免許状を持つという方向で進めるべきである。そのため、保有率の計画的な引上げの方策として、同免許状がなくて特別支援学校に転勤した人には、必ず保有を義務付けるということを教育委員会が行うべきである。また、大学の教員養成課程が限られている障害種についての教員確保については、大学と教育委員会で連携はしているが、予算措置も含め体制作りを教育委員会、国の施策として実施すべきである。

○2 特別支援学校の教員について、「当分の間」を外しても良いが、調整額を変えてはどうか。特別支援学校において勤務すれば小中高の免許でやる場合には、調整額を配慮しなくても良い。免許を持っていないから納得はできると思う。

○3 特別支援学校の教員免許の義務付けは賛成。ただし、現在、臨時的任用で教員が配置されたり、あるいは期限付きで配置されたりしている状況が、全国的にあることを懸念する。その状況をなるべく早く打破していくのが重要である。

○4 免許の保有率を100%にする過程においては、免許がない場合は3年以内で取るような義務付けなどの条件整備や現在順番待ちになっている認定講習について現職の教員であれば最優先で認定講習が受けられるということが必要である。

○5 特別支援学校に、地域の学校と同じレベルの教育を求めることが、今の特別支援教育の免許状と考えると、ろう学校、盲学校、養護学校の免許状が統合され、非常に浅い内容になってしまったのではないか、と懸念する。これを解決するには、例えば、大学の養成課程の教育期間を2年間延長して、特別支援教育に関しての免許を取る授業を受けるためには、6年間学ばなければならないということも考えるべき。

○6 重複障害については、知的障害と視覚障害・聴覚障害もあるが、一番深刻なのは、自閉症と視覚障害・聴覚障害である。自閉的な要素があると、社会に出てから苦労する。認知に偏りがあることについても、専門性を高めて、視覚障害・聴覚障害の教員に取り組んでもらいたい。

○7 視覚障害・聴覚障害で発達障害の子どもがおり、発達障害を共通のテーマとして学ばなければいけない。しかし、視覚障害・聴覚障害について、専門的なことを学ぶには多くの時間がかかり、また、多くの経験も必要である。別途特殊な専門性の高いことを学べる環境を整備し、分けて教員養成を図るべきである。

○8 特別支援学校教諭の免状を取るときに、その教員が何の専門かを明確にする必要がある。ろうを専門とする、発達障害を専門とする、或いは、ろうがメジャーで、発達障害がセカンドメジャー。特に、近年多い重複障害については高度な専門性が必要であることを免許状所得の際に徹底する必要がある。

○9 特別支援学校のセンター的機能を考えれば、特別支援学校の教員は発達障害、各障害にも両方対応できるという方向性で専門性を向上させていくことが必要である。

○10 特別支援学校教員に、今、求められているものは、コミュニケーション能力である。得意とする教員も苦手とする教員も現実的にはいる。全員をコミュニケーション豊かにするということではなく、コミュニケーションを得意とする教員が窓口となるなどいろいろな方法があると思う。学校現場では連携が不可欠であり、大学でも、そういった内容を学ぶべきである。

(3)小・中学校の特別支援教育担当教員等(特別支援学級担任、通級指導担当教員)の専門性

○1 特別支援教育の免許状にし、その土台の上に、専門性を載せる形が良い。特に小・中学校における、発達障害の児童生徒に対する支援を考えたときに、学習指導要領も免許状も、特別支援学校という枠を土台にしているが、例えばLDやADHDや高機能自閉症を見た場合、そこからひもとくことはまず難しい。特別支援学校で支援を受けている児童生徒数よりも、小・中学校で支援を受けている児童生徒数の方が多くなってきている。それらを踏まえると、特別支援学級、通級による指導担当教員の専門性の向上のためには、特別支援教育の教員免許状にすべきである。

○2 特別支援教育教諭免許状が近い将来にできないとすれば、現在の特別支援学校教諭二種免許状レベルのものを、特別支援学級を担当する教員には持っていてほしい。

○3 特別支援学級で免許を持っているのは30%台であり、これを引き上げていくのは、喫緊の課題。保護者の信頼を得るためには、担任の先生は、ここまでの免許は持っていると示せるようにする。何らかの免許制度を考えていかないと、なかなか保有率を向上していくのは難しい。

○4 特別支援学級の教員の専門性については何らかの免許保有を義務付けるべきである。特別支援学校の教員と異なる免許状とするかは議論が分かれると考えるが、専門性が担保されなければ、「多様な学びの場」は担保されないと考える。その際、OJTをしっかりやるべきである。

○5 特別支援教室の制度を今後考えていく上では、特別支援学級や通級指導教室の教員の専門性を高めないと、なかなかそこへ行き着かない。そのため、まず優秀な先生を特別支援学級に配置するよう設置者の努力をお願いしたい。異動には制約はあるが、市町村で考えられる範囲のことをやり、特別支援学級に長い期間勤務ができるような体制、5年から8年、場合によっては10年ぐらいできると一番良いと思う。また、研修についても設置者のレベルで考えいただき努力いただきたい。

○6 特別支援学級、通級指導担当教員の免許については、ここ数年、それぞれの学校で特別支援学校教諭の免許を取るように教員には勧めている。認定講習や放送大学で取る努力をしているが、仕事をしながら取るのは、非常に困難というのが実態。特別支援学校教諭の免許ではなくて特別支援学級に適した免許制度があれば良い。

○7 特別支援学級の担当教員には、それぞれの障害種別に加えて発達障害に関する理解に関する内容を含めた免許状を創設すべきである。なぜなら、既に発達障害の理解は進んでおり、現在は、指導内容・方法や二次障害を起こした場合の対応についての情報共有が求められている。それらについて、どの特別支援学級の担当教員でも理解し近隣の小中学校からの相談にも応じられる体制作りを急ぐべき。

○8 特別支援学級担当教員の免許状は、長期的な議論であり、今必要とされているのは、早急に通常の学級や特別支援学級で専門性の高い教員を確保することである。例えば、特別支援学級を担当する教員については、認定や研修を受けたことを証明することも方法の一つではないか。

○9 特別支援学級や通級指導の担当教員の資質の向上について、現職のまま、特別支援学校教諭免許状は取りづらい。授業研究をして、その指導ができる元校長先生や元特別支援学級担任を講師として具体的に指導して力をつけてもらうことが大事である。これを教育委員会が認めるポイント制にし、ある一定のポイントまでは取って、授業を行いながら研修を深め、専門性を高め、特別支援学級の教員としての資質を確保することを提案したい。

○10 小・中学校の特別支援学級や通級指導担当教員の免許の保有率をまず高めた上で、特別支援学校と特別支援学級との交流が行われるべきである。それぞれの専門性が薄くなってしまうという危険性があるのではないか。

○11 特別支援学校と特別支援学級の間の人事交流を行わない限り、現状では、特別支援学級の精度が上がらないと考える。

○12 一部の教員は常に特別支援学級に配置されるが、多くの教員は通常の学級と特別支援学級を行き来するので、長期間にわたり確保できる専門性は、机上の空論になってしまう。特別支援学級の担任が複数いる中に特別支援学校の教員が一人入るだけでも、随分日常的なOJTができるだろう。

(4)特別支援教育コーディネーターの専門性

○1 発達障害の大部分は通常の学級に在籍しており、そのグレーゾーンの取扱いにこそ専門性は問われる。グレーゾーンの子どもたちは、教育方法により才能を開花させる効果が一番上がる部分である。中学校、高等学校でトラブルが起きてからではなく、小学校にこそ専門性が問われる。小学校のコーディネーターの資格を発達障害の概念に照らし合わせて議論することが必要ではないか。

○2 特別支援教育コーディネーターの専門性として、障害についての専門性を高めるべき、という声があるが、障害全部がわかる人は誰もいない。

○3 3年以上の経験のあるコーディネーターと今年初めてコーディネーターになる人たちが10人ぐらいのグループになり、学校での苦労や必要な情報を伝える研修の場を作りつつある自治体もある。専門性として、組織を動かせる、コーディネートをして役割分担ができるようになってほしい。

○4 校外研修だけでは、本人、職場の仲間の負担になる。コーディネーターが学校で研修をできるような、そういう制度とセットで考えるべき。

○5 特別支援教育コーディネーターの専門性については、障害のある者の支援は教育のみならず多様な支援がある。幅広い障害者をめぐる行政サービス等を把握した上で、その対象者の状況に応じたコーディネートができることが重要である。その場合、民間の支援についても把握していることが有用である。そのため、研修については多様な当事者の立場や声を聞くなどにより、それをケースカンファレンスとするような実質的な研修が現実的には有用ではないか。

○6 特別支援教育コーディネーターについては、養護教諭を担当にしている学校が多いが、それに加えて、主幹、主任クラスの人を付けるような学校経営上の配慮をしないと難しい。

○7 コーディネーターに養護教員がなっている例があるが、教室に入れなくて保健室までは行ける子どもの対応として、また、医療との窓口として、養護教諭の役割は重要である。

(5)特別支援教育担当教員以外の教員の専門性

○1 発達障害に関しては、各クラス1人や2人いるような状況であり、教員だれもが持っているべき基礎的な知識という分類になっていく。一般的な教員免許状でもしっかりと勉強するという仕組みづくりが必要ではないか。

○2 子どもたちはいろいろ合わせ持ちやすいので、特別支援教育の知識に加えて健康状態も把握しておく必要がある。養護教諭と連携するとともに、健康状態について学ぶべきである。

○3 福祉と医療との連携、ネットワークをつくるということが必要、教育課程の中で教育実習をすることがあると思うが、今後は教育現場だけではなく、福祉施設であるとか、医療の現場にも、期間は短くても実習する機会を設けても良いのではないか。

○4 現状では、介護等体験として1週間、5日間を福祉の現場で、2日間を特別支援学校で学ぶといった取組は導入されている。

○5 通常の学級の教員が、学級を乱す子どもに対し過敏になる理由の一つに評価があると聞く。自分が学級担任として不十分なために、子どもが席を離れたり、大きな声を上げてしまうのではないか、ということを恐れて、何らかの障害があるのではないか、と考えてしまうようである。

(6)特別支援教育支援員

○1 特別支援教育支援員について、介助と学習面と2種類あるとすると、学習面については、教員免許が必要。特別支援教育支援員は、担任の指示の下で支援するとなっているが、アンケートを取ってみると、例えば、守秘義務や個人情報の扱い、公務員としての心得・倫理、学校の仕組み、担任との共同をどうしたらいいかといった研修が一切行われていないという実態がある。最初の研修や半年経った際のフォローアップの研修が必要である。支援員の資質を高める研修を実施するべきである。

○2 特別支援教育支援員について、教員の行うべき仕事と支援員の行うべき仕事が決して混乱しないようにしてほしい。支援員は、教育を受ける際の必要な支援をサポートする立場と考える。

○3 特別支援教育支援員については、教員免許を持つことが必修条件ではないか。

(7)教職員への障害のある者の採用・人事配置

○1 専門的な知識を持った当事者の教職員がいることにより、その教職員から他の教員が専門性を学んだり、障害それぞれの特性を学んだり、さらには環境整備ができたりする。

○2 大学に聴覚障害の学生がいる時に驚くべきスピードで同学年の学生は手話を覚えた。また、視覚障害の学生がいる時にも驚くほどのスピードで他の学生が点字を覚えたり、パソコンを使って資料等を点訳してくれる支援をしてくれた。肢体不自由の学生がいれば、介助といった様々な支援をしてくれた。すべての障害種別の学生が大学に入るとは限らないが、発達障害の学生も含めて高等教育の教員養成課程の中に障害のある学生が入学してくるような条件整備をすることにより、日常的に、障害の仲間がいることになり、教職課程で学ぶ学生は、実際に特別支援にかかわるカリキュラムや実習等を受けるだけではなく、特別支援教育に対する理解と実践が高等教育の段階からも育まれると実体験から感じている。

○3 障害を持っている教員の配置について、障害者制度改革推進の基本的な方向性についての閣議決定では、24年内を目途に専門性向上についての基本的な方向性の結論を得るとなっており、その中に、手話に通じたろう者を含む教員、点字に精通した視覚障害者を含む教員の確保、発達障害・知的障害等の専門性のある教員の確保、といった文言がある。一般的な障害者の雇用促進、働く権利の保障、それに対する合理的配慮といった一般的な議論のほかには、教育現場では、点字の技能や手話の技術が障害を持った教員の専門性、存在価値として積極的に評価されているに過ぎないようにも読めてしまう。しかしながら、手話に通じていない聴覚障害の教員や点字のできない視覚障害の教員がいても良いはずである。それが問題ではないということが、インクルーシブな学びの場として地域の学校を変えていく時の基本的な考え方である。
もちろん教員は、教育力、指導力、包容力、いろいろな力を持っていなければいけないが、完全な人間であることは不可能であり、そうである必要もない。子どもの利益のために仕事をするのが教員であり、完全であることは、求めるべきでないし、また、求められない。つまり、障害のある教員というのは、障害のある子どもたちにとってロールモデルになるということもあるが、助ける・助けられる、教える・教えられる、見守る・見守られるというような関係が、障害のある・なしとは基本的に独立して無関係であり、状況によって、大人と子どもの関係も、関係が入れ替わったりすることもある。関係が相対化したり、双方向的になったりする場所がインクルーシブな場所であろう。いや応なく表現できる存在として、弱い存在でもあるけれども、子どもに対して色々なことを教えたり、見守ったり、話を聞いたりできる存在として、障害を持った教員のアドバンテージがあるのではないか。一般的な就労支援や特殊な技能を持った存在としての存在価値だけで位置付けるのでは不十分である。

○4 共生社会を実現するために必要な教員、社会の中に障害のある教員を迎える意味をきちんと位置付けていきたい。

(8)学校外の専門家、親の会、NPO、学校支援ボランティア等との連携

○1 特別支援教育の中で多様な子どもたちのニーズにきちんと応えていくためには、教員だけでは対応できない。例えば、心理職、OT、PT、STの活用することにより、特別支援教育で求められているような子どもたちへの支援ができるのではないか。

○2 親の会やNPOの中に、地域ですばらしい活動をしているところがあり、それらと連携することが良い。なかなか数多くあるわけではないというのが実態であり、NPO、親の会は、組織が脆弱なところがあって、永続的にやっていくことが難しいところもある。国の財政事情等を考えていくと、そういった民間の力をある程度生かしていくべきである。そのため、先行投資として、親の会、NPO等の組織が脆弱なところを支援、育成し、使っていくことが国や自治体において必要である。

○3 地域連携については、首長部局との連携がなくては教育委員会そのものも成り立っていかない。域内を福祉事務所の管轄に合わせて分け、特別支援教育コーディネーター、福祉事務所、民生・児童委員が連携し、連絡会を年に必ず数回持つ、このような連携が必要である。

(9)障害のある子どもの特性に応じた教員の確保及び専門性向上の具体的方策

○1 教職員の専門性の維持・向上は、免許状の保有と学校間の異動と密接につながっている。特別支援学校に関する免許状の保有は、全体として増えてきている。現状を更に向上させるためには、学校内で免許が取れる方策を充実していく方法が必要。また、大学等や関係機関との連携により専門性の向上を図るという方策を今後望みたい。

○2 通常の学級を担当している教員は、教科の指導等についてはかなり専門的な力を持っているが、子どもの理解が十分でない気がする。教員が、学級全体をまとめるより先に、気になる子どもに目が行き、学級全体がおろそかになる。もう少し広い視野と、「待つ」という気持ちがあると、かなり解決できるのではないか。この子は学級経営の中で非常に困る存在と思ってしまうのが早過ぎるのを何とかしないといけない。そのためには、子どもを理解した上で教科の指導や学級経営をしていくことが重要。子どもには子どもの特性がある。障害特性の前にもう一つ、子どもとは何かということを十分理解してほしい。大学の教員養成課程で、このような授業が少ないのではないか。子どものことを分からずに教科の指導だけが先行すると、子どもはますます学校嫌い、教科嫌いを起こしてしまうのではないか。

○3 教員養成においては、必ず「障害のある幼児児童生徒の心身の発達及び学習の過程」の内容を盛り込んで授業をすることとなっている。ただ、どの程度の時間数を含むのか、どのような内容を含めるのかが、各大学あるいは担当の講座教員等に任されているのが現状である。こうした含む科目に加えて、障害のある幼児児童生徒の心身の発達及び学習の過程に特化した科目を別開講している大学が複数ある。多くの大学でこのような科目の開講が望ましいのではないか。

○4 課程認定においては、「特別支援教育の専門科目」を「教科または教職に関する科目」としても認定を受けることができる。例えば、課程認定上これを「特別支援教育の専門科目」と「教科または教職に関する科目」として2つ認定を受けることができる。このような課程認定をして、小学校免許状を取得する学生が教科又は教職に認定を受けている特別支援教育の専門科目を受講して、人数が増えたという大学もある。このような形で、現行制度下でも特別支援教育担当教員以外の教員の専門性を向上させることも可能であり、これを推奨していく、あるいは推進していくべきではないか。

○5 人事権については、厳しい制約が自治体にはある。例えば、6年又は8年を異動の期間と決められていて、特別支援教育まで担当しないうちに、6年経って他の自治体に移ってしまう場合がある。また、特別支援学級を担当させても、二、三年で通常学級を経験させないと、この教員がその後育っていかないだろうという配慮のもとにやっている。規模の大きい自治体では責任を持って教員を育成し、特別支援教育も含めて良い人材を確保していくことに積極的に関わり、権限を行使できるようにすべきである。

○6 保護者にとって教員の専門性は、子どもが育つ、学ぶ上で、子どもが伸びるための子どもの障害特性を理解した上での指導であるが、なかなか見えにくいところ、理解が難しいところもある。

○7 全国小学校長連合会の調査によれば、小学校においては、通常の学級に在籍する発達障害のある児童への教育を推進する上で困難を感じていることとして、「指導上の困難」、「指導体制の困難」を挙げる校長が多いが、経年の傾向を見ると、「指導体制の困難」は少しずつ減ってきており、「指導上の困難」は増えている。また、「困難を解決するための対応」としては、「指導できる教員の増設置」、「指導補助員、介助員、学生支援員等の配置」、「一学級の人数を減らすこと」を挙げる校長が多い。取り出し指導を行っている教員については、少人数指導とか生活指導のための加配教員が一番多く、また、管理職も、その対応に当たっている。まずは教員の確保が求められている。

○8 校長として、例えば児童理解のためにじっくりと時間をとって、また、専門性を駆使して、あるいは校内体制をきちんと整えて、と考えつつ行っているが、発達障害の子どもが複数いる学級では、一つのことをきっかけにパニックが連鎖して起きたときには、力のある担任でも一人だけでは対応できない。そのため、特別支援教育のための人材が一人いるとありがたい。また、自治体においては、研修を多く実施しており、校内でも研修、ケーススタディーもやっているが、人的な支援をいただきたい。

○9 子どもの課題は、大きく分けると学習面の困難と行動面の困難があるが、教員が困るのは行動面の困難である。しかし、静かに黙って学習面で困難を抱えている子どもは浮かび上がらない。教員が困っていることも視野に置きながら、子どもたちが困っている困難や障害に対して考えたい。

○10 教員養成を6年間として、全ての障害種について基礎を4年間で身に付ける。その後、残り2年間は専門的な選択ができるというような仕組みを作ってはどうか。ただし、現状として、全国の教員養成系大学において、5つの障害領域全てを整えている大学が少ないことが課題である。6年間学ぶのは、学生の負担もかなり大きくなるので、専門コース選択に当たっては、残りの2年間は何らかの形で学費の補助をするシステムを作る必要があるのではないか。

○11 教職員免許状の見直しについては、4年間基礎を学び、次に2年間専門領域を学ぶ仕組みにした場合、採用後、視覚障害、知的障害、発達障害などを学びたい場合に、そのための研修制度をつくり、複数の免許状の資格を取得できるようなシステムを作ってはどうか。

○12 聴覚障害を学ぶ学生に対して、手話を教える場合、例えば、手話技術講師というものを採用してはどうか、と思う。点字、指点字、触手話といったコミュニケーション方法も同じような形の仕組みが必要ではないか。また、例えば、視覚障害、聴覚障害、といった特別支援学校における実習に当たっては、各県に学校が1カ所しかない現状であり、広域的に実習を受けることができるシステムを作る必要があるのではないか。また時間的・経済的な負担も大きくなることから、その負担を軽減するような措置も検討が必要ではないか。

○13 卒業後、働く場がないと選択する学生を集められないとこともあり得るので、特別支援学校等の採用数を明確に提示し、採用するということの働きかけを促してはどうか。また、力のある学生を推薦する制度を盛り込む必要があるのではないか。さらに、数が非常に少ないという絶対数の問題があるので、各都道府県の単位を超えた広域的な採用制度を新たに仕組みとして設けてはどうか。

○14 特別支援教育支援員については、保護者から見ると、支援員の資質にばらつきがあったり、うまく活用されていない、という問題点がある。教育委員会にアンケートをとったところ、支援員の採用時に、約6~7割の自治体で研修を行っているが、研修時間は1~6時間が大半で、内容もあまり体系的ではない。カリキュラム作成を保護者の会として取り組んでおり、「支援員」として、学習面の支援をしない方は18科目24時間、「学習支援員」として、教科まで指導する方は21科目30時間としている。これまで、いろいろな障害者団体や校長会の先生方に意見を聞きながら科目等を精査してきたものである。こういうものを、標準的な事例として示して、国として全体の質を向上させるべきである。実際に、「支援員」の講座を受けた支援員について、学校長からアンケートを取ったが非常に高い評価であった。

(10)学校外の資源をも活用した学校全体としての専門性の確保のためのシステム構築

○1 特別支援学級担当教員や一般の教員等の従来の免許制度で専門性が確保されていないものについては、教育委員会の取組だけではなく、それぞれの自治体の首長部局も連携しながらこうした人材の確保に取り組むことが必要ではないか。例えば、現在、特別支援学級の教員として携わっている人で、特別支援学校の免許状を持っていない人が、現場での実践や現場での指導を受けながら、必要であれば市長部局が持っている社会福祉施設等で短期間の研修等を受けることを含め総合的に評価されて、一定の免許状などを認定されるというのが現実的ではないか。その意味で、教育委員会の取り組みに加えて、市長部局が更なる幅広い研修の条件整備には加われるのではないか。また、特別支援教育コーディネーターについては、社会福祉部門との連携は不可欠であり、専門的な特別支援教育の知識や実践技能だけではなく、幅広い関係機関との連携、その子どもそれぞれの実情に応じた支援体制を実際に提案し、保護者や関係者と取り組める力量が求められる。これも教育委員会と市長部局の連携の中で進められるのではないか。何よりも障害者基本法の理念は、地域社会で障害者が共に生きるということであり、それを保障していくためには教育委員会の取り組みにとどまらない、多様な地域資源を活用して人材育成と確保がなされるべき。

○2 本人・保護者の会として、毎年、各地域でキャンプを行っている。医療キャンプとして、医師、看護師、保育士等と子どもによるキャンプである。その際、医師からは、日常的な生活を見ていないので、キャンプを通じて子どもの状況がよく分かった、医療面でも役に立つという話を聞いている。障害者団体では様々なキャンプを実施しており、学生がそのような活動に参加することで一定程度の単位を付与するようなものが必要である。理論を学ぶことも大事であるが、その後はOJTが一番重要であり、OJTプラス障害者団体の様々な催し物等に参加するのが単位として認められるようになると、もっと進むと思う。

○3 都道府県間の人事交流が可能な制度も作ってはどうか。また、言語・コミュニケーションの手段の習得のための研修制度を創設してはどうか。さらに、学校長の指導力・経営力による特別支援学校の人事交流、研修参加を働きかけてはどうか。また、補装具等についての技術、これは言語指導等についての生活技術的な部分、あるいは心理的なものについて身につける仕組みを作る必要がある。また、言語・コミュニケーションの研修等において、障害を持つ当事者が活用されるというシステムを作ってはどうか。

 

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