資料3-2:「合理的配慮」について(案)

(1)定義について

 本ワーキンググループにおける「合理的配慮」については、障害者の権利に関する条約の定義を踏まえ、以下のとおり整理する。

○1 「他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するために必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるもの」とは、他の子どもと平等に「教育を受ける権利」を享有・行使することを確保するために、学校の設置者が必要かつ適当な変更・調整を行うことであり、障害のある子どもに対し、その状況に応じて、学校教育を受ける場合に個別に必要とされるもの、とする。

○2 「均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」とは、学校の設置者に対して、財政面、体制面において、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの、とする。

 

(参考)障害者の権利に関する条約(外務省仮訳文)

第二条 定義

 この条約の適用上、
(中略)
 「障害を理由とする差別」とは、障害を理由とするあらゆる区別、排除又は制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のあらゆる分野において、他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を認識し、享有し、又は行使することを害し、又は妨げる目的又は効果を有するものをいう。障害を理由とする差別には、あらゆる形態の差別(合理的配慮の否定を含む。)を含む。
 「合理的配慮」とは、障害者が他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。
(以下略)

第五条 平等及び差別されないこと

1 締約国は、すべての者が、法律の前に又は法律に基づいて平等であり、並びにいかなる差別もなしに法律による平等の保護及び利益を受ける権利を有することを認める。

2 締約国は、障害を理由とするあらゆる差別を禁止するものとし、いかなる理由による差別に対しても平等のかつ効果的な法的保護を障害者に保障する。

3 締約国は、平等を促進し、及び差別を撤廃することを目的として、合理的配慮が提供されることを確保するためのすべての適当な措置をとる。

4 障害者の事実上の平等を促進し、又は達成するために必要な特別の措置は、この条約に規定する差別と解してはならない。

 

(2)合理的配慮の概念について

○1 個々の障害のある子どもが必要とする支援についての整理(「環境整備」と「合理的配慮」)

  • 個々の障害のある子どもが必要とする支援を整理すると、まず、教育環境の整備を、法令に基づき、又は法令に基づかないが財政措置により、国は全国規模で、都道府県は各都道府県内で、市町村は各市町村内で、それぞれ行っている。このことを「環境整備」と呼ぶ。一方、これらの「環境整備」を前提条件として、設置者及び学校が、各学校において、障害のある子どもに対し、その状況に応じて、個別に「合理的配慮」を提供している。よって、「環境整備」と「個別の合理的配慮」を合わせて「学校における配慮事項等」と呼ぶ、ということで良いか。

○2 合理的配慮の内容について

  • 本ワーキンググループにおいては、「合理的配慮」と「その他の環境整備」について審議検討を行うこととなっているが、合理的配慮の内容については、上述のように、個別の状況に応じて提供されるものであり、これを具体的かつ網羅的に記述することは困難である。このため、本ワーキンググループにおいては、合理的配慮を提供するに当たっての観点を「配慮の観点」とし、それを列挙・類型化するとともに、各「配慮の観点」に、障害に応じたより具体的な配慮の内容を例示するという構成とし、それを指針(案)としてとりまとめる、ということで良いか。

○3 「均衡を失した」又は「過度の」負担について

  • 合理的配慮の提供に当たっては、各学校の設置者が財政面、体制面をも勘案し、「均衡を失した」又は「過度の」負担について、個別に判断する、ということで良いか。
  • 各学校の設置者の財政状況が厳しい折であっても、障害のある子どもと障害のない子どもが共に教育を受けるというインクルーシブ教育システムの構築に向けた取組として、合理的配慮の提供に努める必要がある、ということで良いか。

○4 配慮の観点の類型化について

  • 配慮の観点の類型化については、○1教育内容・方法、○2支援体制、○3施設・設備について、それぞれ行う、ということで良いか。

○5 個別の合理的配慮の内容の決定について

  • 設置者、学校と保護者、本人により、個別の教育支援計画を作成する中で、本ワーキンググループによる指針(案)の「配慮の観点」を踏まえ、個別の状況に応じ、可能な限り個別の合理的配慮の内容について合意形成を図った上で決定し、提供される、ということで良いか。
  • 設置者、学校と保護者、本人の意見が一致しない場合には、第三者機関により、その解決を図ることが望ましい、ということで良いか。

○6 通級による指導、特別支援学級、特別支援学校の取扱いについて

  • 合理的配慮は、各学校において、障害のある子どもに対し、その状況に応じて、個別に提供されるものであり、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校の設置は、「環境整備」として行われるものであるから、合理的配慮ではない、ということで良いか。
  • 「配慮の観点」は、通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校すべてに共通するものであることから、学校種別で書き分ける必要はなく、それぞれにおける「環境整備」を前提条件とした上で、本ワーキンググループの指針(案)の「配慮の観点」を踏まえ、個別に決定し、提供される、ということで良いか。

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