資料2:交流及び共同学習、副次的な学籍、特別支援教室構想等について

1.交流及び共同学習について

(1)論点整理における記述

  • 特別支援学校と幼稚園、保育所、認定こども園、小・中・高等学校などとの間、また、特別支援学級と通常の学級との間でそれぞれ行われる交流及び共同学習は、特別支援学校に就学する障害のある児童生徒等にとっては、経験を広め、社会性を養い、豊かな人間性を育てる上で、大きな意義を有する。障害のない児童生徒等にとっても、障害のある児童生徒等とともに学び、多様性を尊重する心をはぐくむことができ、共生社会の実現を目指す観点とともに、子どもの成長にも大きな意味を持つ。特に、居住地校との交流及び共同学習は、居住地の小・中学校等の児童生徒等とともに学習し、交流することで地域とのつながりを持つことができることから、これを進める必要がある。
  • 一部の自治体で実施している居住地校に副次的な学籍を置くことについては、居住地域との結びつきを強め、居住地校との交流及び共同学習を推進する上で意義がある。この場合、児童生徒の付添いや時間割の調整などが現実的課題であり、それらについて検討していく必要がある。
  • 同じ障害のある者との交流を継続して体験することも重要であり、例えば、通常の学級や特別支援学級で教育を受ける視覚障害の児童生徒が、視覚障害特別支援学校の児童生徒との交流を定期的に実施するなどの仕組み作りが考えられる。また、中学校・高等学校に通っている視覚障害の生徒と視覚障害特別支援学校の生徒の両方を対象とし、サマーキャンプ等で学習体験をする実践もある。その実践においては、先輩であり現役の企業等で働いている視覚障害の技術者や教員が講師となり、それを支えているのが視覚障害特別支援学校の教員や大学の視覚障害教育にかかわっている人たちである。

(2)関連した取組例等

○(宮城県)

対象となる児童生徒本人及び保護者、在籍する特別支援学校の教職員、交流及び共同学習の対象校となる居住地の小・中学校の児童生徒及び保護者、教職員の趣旨理解が重要となる。そこで、これまで理解啓発に関する次のような取組をしてきた。

  • 「宮城県障害児教育将来構想」冊子の配布、県教育委員会編纂「特別支援教育ハンドブック」への交流及び共同学習の実践例等の掲載、県教育委員会主催「教育課程研究協議会」においる新学習指導要領の交流及び共同学習に関する説明、特別支援教育室ホームページでの概略説明、校長会、教頭会、指導主事会議等での事業概要、進捗状況の説明、居住地校学習推進事業連絡会(県内2カ所、年2回)の開催、Web版教育広報「プラネット」への掲載

<成果>

  • 「地域・学区内にそのような児童生徒がいたことを初めて知った。これからは、子供会行事等、各種行事への案内を差し上げましょう」、「障害の重いお子さんでも懸命に学ぶ姿を見て、自分も頑張らなくてはいけないなと刺激された」、「これまで障害のある方と接することに消極的だったが、壁が越えられたような気がする」など、障害のある児童生徒に対する理解の深まりを感じさせる声が聞かれる。
  • 担任が居住地校学習に付き添いで出張した場合の後を補充する講師の配置は、特別支援学校における事業対象児童生徒外の教育活動を停滞させないために有効に機能しており、評価も高い。
  • 当該校管理職、担当教員、特別支援教育コーディネーター担当者や地域教育事務所担当指導主事等による事業連絡会の開催は、事業の趣旨の理解啓発や事業充実のために有効である。

<課題>

  • 特別支援学校に在籍する保護者及び相手校への理解啓発
  • 相手校との計画立案等における連絡・調整
  • 交流及び共同学習の教育課程上の位置付けと学年進行に伴う活動内容の工夫

○(奈良県)

(現状)
 小学部では居住地校との個人交流が行われているが、中~高等部になるにつれて交流機会が少なくなる傾向がある。行事等への参加だけでなく、同学年の通常の学級の授業に定期的に参加している例がみられるようになってきた。訪問教育対象児の事例:居住地の小学校の特別支援学級と通常の学級の両方に、当該児童の机や椅子を置くとともに、家庭で訪問教育を受けている様子等を掲示するなど、事実上の副次的な受け入れ体制を整えている村もある。

(今後)
 特別支援教育の専門性を担保しつつ、より一層地域化を促進する方法のひとつとして、特別支援学校の分校・分教室化も考えられるのではないか。ただし、設置する学部、障害の種類やその状態、学習集団の大きさや設置先など、吟味すべき点は多い。

○(埼玉県立本庄特別支援学校)

 近隣の小学校と年間4回の交流学習を実施している。小学部1~3年生と交流先の小学校3年生による交流学習を、本校で1回、小学校で1回、同様に小学部4~6年生と交流先の小学校5年生による交流学習を、本校で1回、小学校で1回実施している。実施している交流学習の目的は、○1交流活動を通し、一緒に活動を楽しめるようにする、○2一緒に活動する中でお互いの理解と認識を深め、好ましい人間関係と思いやりの心を育てる、○3助け合いながら交流活動を行うことで経験領域を拡大し仲間意識を高める、ことである。活動内容は、歌、ダンス、集団ゲーム等である。交流会では、一緒に取り組める活動を用意することにより、互いに楽しく活動することができ、歩くペースを合わせるなど自然と相手を思いやる気持ちが育まれる様子が伺えた。交流学習を行う事前の交流活動として、お互いの写真や自己紹介カードの交換等を行い、事後の交流活動では感想文の交換や児童が制作した作品を贈る等をしている。

○(長野県立伊那養護学校)

分教室における交流及び共同学習の推進

○1 成果:
 伊那養護学校小学部「はなももの里」分教室と中沢小学校との交流及び共同学習においては、日常的な活動の充実を目指した。中沢小学校との連携により日課を合わせる工夫をしながら、休み時間を活用した「ふれあいタイム」、縦割り清掃への参加、図書館の利用など、日常生活の中での自然な交流及び共同学習が実践できている。
 日常的な交流及び共同学習を通して、イベント的ではなく毎日の「くらし」(日常の学校生活)の中でのかかわりが多く生まれてきている。その中で、相互の理解が少しずつ進み、互いに分かり合い感じ合う生活が積み重ねられることにより、分教室の子どもたちが中沢小学校にいることが当たり前という意識とともに学校生活が営まれている。
 日常的なかかわりの広がりや深まりの積み重ねを土台としながら、1年生の音楽の授業、2年生の総合的な学習の時間「豆腐づくり」、2年生と共に音楽会での太鼓演奏、全校炭焼き(総合的な学習の時間)、全校遠足や運動会、児童会行事への参加など、各教科等における交流及び共同学習へと自然な形でつなげていくことができた。
 両校の職員間では、中沢小学校内での分教室の「くらし」を通して、職員連絡会の場に限らず日常的な職員のかかわりが生まれ、相互理解が進んできている。
 地域の方は、分教室の子どもによって毎月届けられる「はなももカレンダー」を心待ちにされ、カレンダーを介しての交流を楽しみにしている。また、中沢小学校音楽会での分教室児童の発表では、地域の方から大きな拍手をいただくなど、子どもたちが地域の方に温かく受け入れてもらっていることが感じられる。

○2 課題:
 現在行っている中沢小学校、東中学校と分教室との交流及び共同学習から得られた成果を整理しながら、子どもの育ちにつながった要因を明らかにすること。また、双方の児童生徒にとってのねらいを明確にした学習活動を展開し、その育ちを評価していくことを計画的・組織的に進めることが必要である。
 分教室における交流及び共同学習の実践から得られた成果を基に、各小中学校で行われる居住地校交流に般化していく方策を検討したり、授業のユニバーサルデザイン化に向けた発信をしたりすることなど、障害のある子どもへの適切な支援の在り方を広げることを模索する。
 分教室における交流及び共同学習を進める上で、更に地域にとけ込み、地域の方々の理解が一層深まるような交流活動の在り方を検討する。

○3 分教室運営面での課題:
 本校と分教室設置校との間で、双方の行事への参加の在り方など、子どもにとってまとまりのある生活づくりをしていく上での課題がある。職員に関しては、本校及び設置校の会合等について、何にどの程度参加するか、連絡調整をどうスムーズに行うかなど年度当初、行事ごとに柔軟に検討をしている。検診等保健行事は本校で行う必要があり、移動に時間がかかってしまう状況がある。

○(長野県立伊那養護学校)

副学籍制度を活用した居住地校交流

○1 成果:
 地域の学校で、地域の仲間とともに学ばせたいという保護者の願いを大切にしながら、居住地校との交流及び共同学習を積極的に進めることができている。

*小学部児童実施人数(在籍71名中60名が実施)
 1回・・・5名、2回・・・23名、3回・・・20名、4回・・・6名、5回以上・・・6名

*主な交流内容
 ・プール遊び、簡単なゲームやダンス、調理活動、工作、遠足、運動会練習参加・運動会参加、音楽会練習参加・音楽会参加、焼き芋会・収穫祭等

 副学籍のある学校との交流及び共同学習では、入学式・卒業式などの儀式的な行事への参加に加え、運動会、宿泊学習、文化祭などの行事へも参加し、当日の活動だけではなく事前学習から一緒に学習する中で児童の主体的な活動の姿が見られた。
 居住地校交流においては、低学年から継続して交流を重ねてくる中で、交流相手校の児童生徒教職員との相互理解の広がりがみられた。
 居住地校を訪問しての交流だけでなく、相手校の児童生徒が伊那養護学校へ来校し交流を行う事例もあり、双方向の交流及び共同学習の推進、特別支援教育の理解啓発につながる方向がみられた。

○2 課題:
 居住地校交流を積極的に進めたい場合(回数を増やすなど)に、教員が毎回引率することには学級体制上難しさがある。保護者の協力、交流相手校の理解と協力を得ながら運営について検討する必要がある。
 伊那養護学校と交流相手校の児童生徒にとって、交流の側面だけではなく、双方が各教科等のねらいの達成を目的とする共同学習の側面も充実できるように、交流の在り方を検討する必要がある。
 交流及び共同学習の実践を通して、障害のある子どもへの適切な支援の在り方を小・中学校に発信していくことも大切と考える。(授業のユニバーサルデザイン化に向けた発信など)

○国立特別支援教育総合研究所が平成22年度に実施した全国の国公私立特別支援学校(1,045校)に対するアンケート調査(有効回答数849校、回収率81%)によれば、学校間交流を実施している学校の割合は、幼稚部で71.9%、小学部で94.6%、中学部で82.9%、高等部で73.6%となっている。また、居住地校交流を実施している学校の割合は、幼稚部で45.2%、小学部で80.9%、中学部で48.9%、高等部で3.6%となっている。

2.副次的な学籍

(1)論点整理における記述

  • インクルーシブな社会の実現のためには、障害のある当事者がどれだけ社会に参加できるかということが問われる。インクルーシブ教育システムの推進に当たっては、普段から地域に障害のある人がいるということが認知され、障害のある人と地域住民や保護者とが相互に理解していることも重要である。学校のみならず地域の様々な場面において、どう生活支援していくかという観点も必要である。学校運営協議会制度(コミュニティ・スクール)や学校支援地域本部など地域と連携した学校づくりを進めるに際しても、各学校は、障害のある子どもへの対応も念頭に地域の理解と協力を得た連携の取組を考えていく必要がある。また、特別支援学校に在籍する子どもについて、一部の自治体で実施している居住地校に副次的な学籍を置く取組については、居住地域との結び付きを強めるために意義がある。今後、地域の学校に学籍を置くことについても検討していく必要がある。
  • 一部の自治体で実施している居住地校に副次的な学籍を置くことについては、居住地域との結びつきを強め、居住地校との交流及び共同学習を推進する上で意義がある。この場合、児童生徒の付添いや時間割の調整などが現実的課題であり、それらについて検討していく必要がある。

(2)関連した取組例等

○(埼玉県)

支援籍制度について

○1 通常学級支援籍:特別支援学校や特別支援学級に在籍している障害のある児童生徒は、日々の授業等で、その障害に応じた教育を受けているが、一方では障害のない児童生徒との交流や地域とのつながりが希薄になる。また。障害のない児童生徒にとっては、障害のある児童生徒と一緒に学ぶ機会が得られないことから、障害に対する理解や心のバリアフリーをはぐくむ機会を逸していると考えられる。そのため、特別支援学校や特別支援学級に在籍している児童生徒が、居住地の小中学校に支援籍を置いて学習することが障害のある子にとっても障害のない子にとっても大変重要となる。平成21年度の実施者数は388名で、そのうち小学生が302名、中学生が86名である。平均の実施回数は約3.2回となっている。障害種別では、聴覚障害の児童生徒の実施率が最も高く、聴覚障害特別支援学校在籍者171名中、42名が居住地の小中学校において学習しており、約4人に1人が実施したことになる。実施に当たっては、同じクラスの一員であるということを明確にするためにも、教室内に机や椅子、ロッカーなどを用意することや出席簿を用意することが大切である。

○2 特別支援学級支援籍:小中学校の通常の学級に在籍している発達障害などの特別な教育的ニーズのある児童生徒の教育的ニーズに応じた専門的な指導や支援を行うため、特別支援学級に支援籍を置き、個別の指導計画に基づき学習を実施するものである。平成21年度の実施者数は、259名で、そのうち小学生が220名、中学生が39名であり、小学生のニーズが圧倒的に高い。実施頻度としては、週数時間ということで週単位で位置付けているケースが多い。学習しているうちの約半数が知的障害の児童生徒あるが、LD、ADHDなど発達障害の児童生徒も約4分の1が学習を受けている。参加している学習の内容は、個々の教育的ニーズによって異なるが、比較的、国語、算数(数学)の授業に参加しているケースが多い。実施に当たっては、通級指導に類似した形として位置付けている。

○3 特別支援学校支援籍:小中学校の通常の学級や特別支援学級に在籍している特別な教育的ニーズのある児童生徒が、その障害に基づく困難の改善を図る目的で、より専門的な教育を受けるために特別支援学校に支援籍を置いて学習をするものである。平成21年度の実施者数は75名で、そのうち小学生が57名、中学生が18名である。実施頻度としては、週1回、もしくは月1回としているケースが多い。実施に当たっては、教育相談の一環として位置付け、学習の内容は自立活動が多い。

○(埼玉県立本庄特別支援学校)

(通常学級支援籍の成果について)
 通常学級支援籍を実施し、保護者からは、「子供が学校外でも挨拶など関わることが出来た」、「子供が地域の小学生に対して親しみが持てるようになった」等の子供の変容に関することや、「地域の子供たちに名前を覚えられて安心」、「想像していたより、地域の子供たちに認知してもらえた」、「周囲に助けられて感謝の気持ちを持った」、「ノーマライゼーション社会への一歩であり応援している」等の感想が寄せられた。
 また、小中学校に在籍する児童生徒からは、「自分よりもできることがある」、「はじめはどのように話しかけたらいいか分からなかったけれど、話したら他の子と変わらない」、「一緒にダンスをすることができてうれしかった」等の感想が聞かれた。「地域で会うと声をかける」、「遊びに行った児童がいる」、「学級の仲間として見ることができるようになってきた」、「どうしたら一緒に楽しめるかを考えるようになった」等の変容が見られた。
 支援籍校では学級懇談の場面、学校便り、学級通信等で保護者への理解を進めてきている。支援籍校に在籍する児童生徒の保護者からは、「幼稚園が一緒で仲が良かったので、こういった(支援籍)機会でまた一緒になれてよかった」等の感想が寄せられている。支援籍校の入学式に参加した保護者からは、「同じ保育園の子がたくさんいたので安心して参加が出来た」、「幼稚園で一緒だった友達と会えなくなるのは寂しいと思っていましたが、地元の学校にも行けるのは大変うれしい」といった感想が寄せられている。支援籍校での入学式の参加は、支援籍校の保護者や地域の方々が支援籍学習について知る機会となった。また保護者にとっては、特別支援学校に入学することで地域との関わりが薄くなると感じていたが、支援籍によって地域とのつながりに継続性を感じることができる。

(特別支援学校支援籍の成果について)
 本校で特別支援学校支援籍を取得するのは、特別支援学級に在籍している児童生徒が中心である。特別支援学級の児童生徒が取得することで、在籍する人数が少ない特別支援学級の児童生徒に集団での活動機会を意図的に作れることや、保護者の障害の理解、障害の受容、就学先を考える機会にもなっている。また、在籍校の担任が、指導・介助で指導場面に入ることで、特別支援学級等に戻って指導の参考とすると共に、指導に関する相談の機会としても機能している。

○(埼玉県立本庄特別支援学校)

 支援籍学習を普及させるためには、これを支えるボランティアの育成と活用が急務である。そのため、本校では、支援籍学習を支えるボランティアの育成・活用に向けて3つの事業に取り組んでいる。学区内の社会福祉協議会と連携した事業、近隣の大学と連携した事業、PTA組織と連携した事業である。社会福祉協議会と連携した事業では、平成16年度より、「すべての子どもが共に地域で学ぶための支援プログラム事業」(「共学支援プログラム事業」)として、社会福祉協議会主催の講座を設定している。主な内容は、障害の理解や特別支援学校の概要、保護者からの講話、体験実習等である。この講座修了後にボランティアバンク登録を行い、活動を開始する。平成22年度までに、登録者は30名に及んでいる。講座を参加した方からは、「障害のことをよく理解し、支援があれば、私たちも障害のある人もみな、共に生きる喜びを得ることができるのだと思った」、「障害のある子もない子も共に学び、お互いを認め合い、助け合える環境になるために、地域の理解や支えが大切だと思った」などの感想が寄せられている。これらの事業をきっかけとして、支援籍学習時には、担任が支援籍校へ指導・介助に出た際の後補充という形で、給食準備の介助、着替えの介助、授業の補助等の学習支援を行っている。後補充のボランティア以外にも、学校行事や学習支援に毎年多くの参加がある。昨年度は、支援籍学習の後補充を24回実施し、延べ293名のボランティア活動が行われた。

3.センター的機能について

(1)論点整理における記述

  • 特別支援学校は、小・中学校等の教員への支援機能、特別支援教育に関する相談・情報提供機能、障害のある児童生徒等への指導・支援機能、関係機関等との連絡・調整機能、小・中学校等の教員に対する研修協力機能、障害のある児童生徒等への施設設備等の提供機能といったセンター的機能を有しており、その機能を活用してインクルーシブ教育システムの中で重要な役割を果たすことが求められる。そのため、センター的機能の一層の充実を図るとともに、その高い専門性の確保にも取り組む必要がある。その際に、市町村教育委員会との役割分担を念頭に協力体制を構築することが重要である。加えて、特別支援学校のセンター的機能を支援する仕組みを各都道府県において整備することが必要である。
  • 特別支援学校の教員による巡回相談等、小・中学校等と特別支援学校との連携が重要である。特別支援学校も加えた形で地域の特別支援教育の支援体制を面として作っていくことが必要である。また、特別支援学校が、地域にいる障害のある子どもの教育を担っている都道府県もあり、今後はこのような取組を一層積極的に進めていく必要がある。
  • 必要に応じて、分校、分教室の形で設置するなど、都道府県内に特別支援学校をバランス良く設置していくことも方策の一つとして考えられる。児童生徒の移動時間を考えると、分校、分教室の方が指導を充実できる可能性もある。小学校に設置している特別支援学校の分教室で、当該小学校のみならず周辺の小・中学校についても支援を行っている例もある。
  • 各市町村の小・中学校に設置されている特別支援学級をその市町村の特別支援教育のセンターとし、必要に応じ、特別支援学校のセンター的機能に類する役割を持たせることも考えられる。

(2)関連した取組例等

○(埼玉県立本庄特別支援学校)

(相談・支援について)
 小中学校等の教員への支援として、通常学級におけるADHDなど特別な教育的支援の必要な児童・生徒へのスモールステップでの指導方法や教材の工夫、発達検査の実施や活用、また特別支援学級の教育課程の編成や個別の教育支援計画、個別の指導計画の作成への支援を行っている。平成22年度は151件(幼稚園・保育園26件、小学校105件、中学校15件、高等学校等5件)の相談・支援を行った。また、保護者への支援として、巡回や来校による教育相談や就学にかかわる相談を行っている。平成22年度は341件(幼稚園・保育園22件、小学校256件、中学校62件、高等学校1件)の相談・支援を行った。

(早期支援について)
 平成21年度から早期支援として、発達に心配のある4歳から6歳の就学前の幼児とその保護者を対象とした「ハート教室(親子教室)」を行っている。第3火曜日を基本として、年間10回ほど実施している。今年度までに46組の親子が参加している。幼児へは、リトミックや読み聞かせなど集団での遊びや活動を行い、保護者へは、本校の教員や外部専門家(医師、臨床心理士等)による学習会や教育相談を行っている。また、本校の保護者や卒業生の保護者を中心とした子育て応援団「はーと&きずな」を活用し、保護者相談会や子育て体験談等の支援を行っている。

(研究・研修支援について)
 小中学校等への研究・研修支援として、研修会への講師の派遣や公開講座などを実施している。平成22年度は研究・研修支援を21件行った。更に今年度より、専門性の高い支援可能な分野の情報を地域の小中学校等へ提供し、積極的な支援を進めている。また、小中学校の特別支援教育コーディネーターを対象とした各種検査等のコーディネーター研修会や、学校公開講座、自立活動や生活単元学習等の公開による校内研修会などを30回ほど行っている。

(関係諸機関との連携について)
 早期支援の充実のために、今年度、就学前関係機関連絡協議会(保育園、幼稚園、保健所、障害者支援センター、福祉課等)を2回実施し、ネットワーク作りや情報連携を進める。また、就労及び移行支援充実のため、本校の保護者や教職員を対象とした進路対策連絡協議会(特例子会社、就労支援センター、企業支援アドバイザー、福祉作業所等)を福祉就労と一般就労に分けて実施し、ネットワーク作りや情報連携を進める。

○(長野県立伊那養護学校)

 地域の小中高等学校の特別支援教育の充実に向け、児童生徒についての相談には教育相談担当を中心に積極的に対応し、障害のある児童生徒への理解、適切な支援がなされるよう支援している。また、小中高等学校コーディネーター連絡会においても、各校の特別支援教育コーディネーターの力量向上や機能する支援体制づくりへの支援に努めている。

(中学校・高等学校・特別支援学校特別支援教育コーディネーター連絡会)
 中学校卒業後、高等学校・特別支援学校への移行支援がスムーズに行われるように、平成20年度(長野県において高等学校で特別支援教育コーディネーターの指名がなされた年度)から伊那養護学校に事務局を置き、コーディネーター連絡会を実施している。連絡会は年3回行い、支援を必要とする生徒の連絡票を基にした支援情報の交換、校内研修や中・高・特別支援学校間の連携の在り方の検討など行っている。これらのことを通して、中・高・特別支援学校の相互理解、連携、信頼関係の構築が進み、生徒の不安が軽減された進学、安定した高校生活につながってきている。

(サポート会議)
 上伊那圏域の特別支援教育コーディネーター連絡会と協力し、幼保・小中高等学校に在籍し特別な支援を必要とする子どもへの支援について、事例を基に検討し合うサポート会議を実施している。その中で、子どもへの支援はもとより、機能する校内支援体制、保護者への支援、関係諸機関との連携の在り方など理解が深まるよう支援している。

4.特別支援教室構想について

(1)論点整理における記述

  • 特別支援教室構想は、現在、小・中学校において通級や特別支援学級の形で実施している特別支援教育について、障害のある児童生徒の実態に応じて特別支援教育を担当する教員が柔軟に配置されるとともに、障害のある児童生徒が、原則として通常の学級に在籍しながら、特別の場で適切な指導及び必要な支援を受けることができるようにするものであり、通級による指導の実施状況や研究開発学校の成果等を踏まえて、その導入に向けて課題を整理し、検討を進めていく必要がある。

(「特別支援教育の推進に関する調査研究協力者会議審議経過報告」(平成22年3月24日)における検討の方向性と課題)

  • 特別支援教室構想については、現在の特別支援学級と通級による指導では制度として連続性がないため、児童生徒のニーズに応じて、指導時間においても連続性のある形で対応することが可能な制度にすべきとの意見や、知的障害のある児童生徒も、教科によっては通常の学級で学ぶことができる弾力的な仕組みについて検討すべきとの意見があるほか、特別支援教室構想は理想的ではあるが、その制度化に当たっては、教職員配置の在り方を含め、総合的かつ慎重に検討すべきとの意見もあった。
  • 他方、研究開発学校の成果として、特別支援教室構想の効果や有用性を示すデータも得られつつあることから、こうした成果も踏まえ、特別支援教室構想の制度化に当たっては、従来の特別支援学級での指導の在り方や、障害のある児童生徒の通常の学級での授業形態や評価方法について、改めて整理することが必要である。
  • 特別支援教室構想については様々な意見があるが、これまでの研究等を踏まえ、今後次のような課題について検討することが必要である。

○特別支援教室を障害種別に設置するか否か

○児童生徒が籍を置かない「教室」に対する教員配置システムの在り方

○特別支援教室及び在籍する通常の学級担当教員双方の専門性確保の在り方

○教育課程の編成・実施・評価の在り方(必要な指導時数、一貫性のある指導・支援、PDCAサイクルによる指導・支援の弾力的見直しなど)

○在籍学級と特別支援教室との指導・責任の分担

○現行制度において通級指導の対象外である、より軽度の障害のある児童生徒への対応の在り方

(2)関連した取組例等

○(宮城県)

 新「学習支援室システム整備事業」においては、対象児童生徒の外に、通常の学級に在籍するLD等の発達障害を含む全ての障害のある児童生徒を「学習支援室」に配置した教員を活用し、通常の学級や「学習支援室」で指導するものである。

※学習支援室の対象児童生徒以外の学習支援室で学習する児童生徒は「学習支援室活用児童生徒」と総称している。

<成果>

  • 対象児童生徒並びに活用児童生徒いずれにおいても、配置教員による個別的な指導・支援を受けたことで、「学習に対する興味・関心、意欲が高まった」「学習態度が身に付いた」「学習への集中が持続するようになった」などの効果が上がっている。
  • 障害のある対象児童生徒の成長を、障害のない児童生徒の成長を参考にしながら確認できる。また、障害のない児童生徒の障害のある児童生徒への接し方や気遣い等、心の成長が見られるなど、事業実施校及び保護者の評価の声は高い。
  • 配置教員の障害のある児童生徒への指導・支援の様子を日々の授業実践の中で知ることができることから、教職員全体の特別支援教育に対する理解と指導力の向上が見られている。
  • 事業開始前、対象児童生徒の在籍する学級の学力低下を懸念する声が聞かれたが、学力低下を招いた学級はなかった。個別への配慮が細やかになり丁寧な授業が多くなった。
  • 対象児童生徒が在籍学級担任の下で学習に参加できる時間は、配置教員が、他の学級に在籍する障害のある児童生徒の指導にも当たっているため、学校全体の特別支援教育を充実させる推進役としての評価が高い。校内支援体制が充実、整備されてきている。

<課題>

  • 障害の重い児童生徒にも、通常の小・中学校の学習指導要領における教育課程、指導内容を遵守する必要が出る。そのため、児童生徒の学習能力や発達特性に合わせた学習課題を設定することに困難さがみられる。例えば、社会科で「米づくり」を学ぶ場合に、同一課題で学ぶには困難さがあり、「米づくり」に関連した内容ではあるが、課題を別に設定した例、国語科、算数科において知識・理解等能力の格差が開いてきて、「学習支援室」で個別課題に取り組むようにした例などあった。
  • 知的障害のある場合、学年が上がるにつれて、当該学年で求められる学習課題と児童生徒の理解力のレベルとの間の差が開いていく傾向がある。とりわけ中学校段階では顕著になる。
  • 平成17年度の事業開始以来、対象校、対象児童生徒数を増やすことができないでいるのは、本県財政事情に大きく起因している。「学習支援室」の設置や配置する教員等の財源の確保をどうするか、大きな課題となっている。

○(上越市)

 特別支援教室構想の継続として、校内において、特別支援学級担任及び教育補助員(市雇用の嘱託職員)による通常の学級に在籍する特別な支援を要する児童生徒への小集団による取り出し指導を実施している。具体的には、特別支援学級では、担任が通常の学級に在籍するLD的な側面を有する児童生徒に対し、算数など特定の教科を受け入れ、学習指導を行っている。また、通常の学級に在籍し特別な支援を要する児童生徒の対応に、教員免許を有する教育補助員を45名配置している。T・T体制による学習指導とともに、学級担任の具体的な指示を受け、LD的な側面を有する子どもたちの取り出し指導の効果を検証している。

○(仙台市立小松島小学校)

 本校の「研究開発学校(特別支援教育)」の研究は、「障害のある児童一人一人の教育的ニーズに応えるための教育的支援を目指す教育課程と指導方法等の実践的な研究開発」を課題と位置付け、「一人一人の学びを支える特別支援教育を拓く」を研究主題に、平成18~20年度の3年間取り組んだ。5つのSの取組をとおして、次のような成果が得られた。

○1 System(支援体制)
・・・・・・「特別支援教室」を設置し支援体制を整備したことで、実態把握や学習状況の観察、担任・担当者間、保護者等との連携、即時対応が可能になり、指導支援に有効であった。

○2 Support(支援内容)
・・・・・・個別の指導計画の作成、学びのタイプの整理、支援の類型化を図ったことで、個々の教育的ニーズに応える適切な指導、必要な支援の実現につながった。

○3 Schedule(支援日程)
・・・・・・「特別支援教室」で学習する児童について、学級担任と特別支援教室担当者が共同で時間割を作成したことで、「所属学級」、「特別支援教室」双方において必要な学びを保障することができた。

○4 Shift(支援形態)
・・・・・・支援のタイプを類型化し実施したことで、必要な学びを保障する「学びの形態」が整備され、児童の不安感の払拭や情緒の安定及び所属学級の学習の一貫性・継続性の保障に有効であった。

○5 Space(支援の場)
・・・・・・学習室6(うち4室を「特別支援教室」として使用)を設置し、各教室の機能と役割を決定して環境整備を進めたことで、それぞれの教室の機能性が高まり、児童や担任にとって効果的な活用が可能になった。

 障害のある児童を対象として指定を受けた研究開発学校の取組であったが、そこで築かれた校内支援体制は、開校以来在籍している虐待、養育放棄、養育困難のある(あった)児童や不登校状態にある児童、いじめにかかわったり反社会的行動が継続したりしている児童、更には近年注目されるようになった食物アレルギーのある児童や震災による心的ストレスの大きかった児童などにも有効であることが分かってきた。

○(仙台市立小松島小学校)

研究開発学校指定終了後も継続できた要因

  • 本校は開校以来、児童福祉施設の児童を通常の学級で受け入れ、配慮を要する児童が通常の学級に在籍してきた。特に、情緒障害児短期治療施設の児童については専任の教員が加配されて専用の教室を持っていわゆる「取り出し指導」を行ってきており、研究当初から「特別支援教室」に対して具体的なイメージを持っていたこと。
  • 児童福祉施設の児童に対する実践をとおして、施設や児童相談所等と連携しながら「事例(ケース)を見ていく」ことを計画的、継続的に行う取組が積み重ねられてきたこと。
  • 研究開発学校の指定研究をとおして、教師一人一人が通常の学級での授業づくりや集団づくりの重要性に気付き、配慮や支援の必要な児童にとって学びやすい授業、暮らしやすい学級が、全ての児童にとっても学びやすい授業、暮らしやすい学級であることを実践的に再確認できたこと。
  • 特別支援学級や施設から通う児童を含め、全ての児童が通常の学級に所属していることを、他の児童や保護者、地域が理解していること。特に、保護者や地域の方々が、対象児童が所属している学級の支援ボランティアとして積極的にかかわってくださっている。
  • 対象となる児童が年々増加する中にあって、指定研究開始から今年度までの6年間、例えば国の就学基準の「特別支援学校適切」程度の障害があるような、極めて密度の濃い支援を必要とする児童が在籍せず、研究の延長線上で支援体制の充実に取り組むことができたこと。また、通常の学級数が減って、その教室を「特別支援教室」に充てることができたこと。
  • この3年間、幸いにも特別支援学級数や加配教員の数が変動しなかったことから、取り出し指導や通常の学級への支援を安定して行えたこと。ただし、本校の本務教員の定数は、国や県の基準に従って他の学校と同じ枠組みで決められることから、特別支援学級が4学級から2学級減となる次年度以降は、取り出し指導や通常の学級への支援がこれまでのように行えない可能性が高く、今後の指導体制について頭を痛めているところである。
  • 指定研究終了後、3回の人事異動を経てほとんどの教員が入れ替わった。しかし、残った数名の教員が研究で手に入れた財産を次に伝えようと力を尽くしていること。また、新たに転入してきた教員も、最初は戸惑いながらも本校の実態を理解するにつれ、財産を受け継ぎ更に良いものにしようと日々努力していること。そのために、特別支援教育や学級づくり、SSTなどに関する校内研修を、毎年数回程度は継続して実施していること。

5.域内の教育的資源を組織的に活用した特別支援教育について

(1)論点整理における記述

  • インクルーシブな社会の実現のためには、障害のある当事者がどれだけ社会に参加できるかということが問われる。インクルーシブ教育システムの推進に当たっては、普段から地域に障害のある人がいるということが認知され、障害のある人と地域住民や保護者とが相互に理解していることも重要である。学校のみならず地域の様々な場面において、どう生活支援していくかという観点も必要である。学校運営協議会制度(コミュニティ・スクール)や学校支援地域本部など地域と連携した学校づくりを進めるに際しても、各学校は、障害のある子どもへの対応も念頭に地域の理解と協力を得た連携の取組を考えていく必要がある。また、特別支援学校に在籍する子どもについて、一部の自治体で実施している居住地校に副次的な学籍を置く取組については、居住地域との結び付きを強めるために意義がある。今後、地域の学校に学籍を置くことについても検討していく必要がある。
  • 地域内の教育資源(幼・小・中・高等学校及び特別支援学校等、特別支援学級、通級指導教室)それぞれの単体だけでは、そこに住んでいる子ども一人一人の教育的ニーズに応えることは難しい。こうした域内の教育資源の組合せ(スクールクラスター)により域内のすべての子ども一人一人の教育的ニーズに応え、各地域におけるインクルーシブ教育システムを構築することが考えられる。その際、交流及び共同学習の推進や特別支援学校のセンター的機能の活用が効果的である。さらに、特別支援学校は都道府県教育委員会に設置義務があり、小・中学校は市町村教育委員会に設置義務があることから、両者の連携の円滑化を図るための仕組みを検討していく必要がある。なお、通学の利便性の向上のため、特別支援学校の分教室を設置するなど、特別支援教育の地域化を推進している都道府県もある。また、通級による指導についても、児童生徒の負担軽減のため、巡回による指導により、児童生徒の在籍校において実施している例もある。今後こうした例を地域の状況等を考慮しながら広め、多様な仕組みの構築の方向を目指すことが重要である。

(2)関連した取組例等

○(長野県)

 「ノーマライゼーションの理念に基づき、障害のある者もない者も地域で豊かに学べる教育環境作りを進める」という地域化のねらいを定め、モデル研究を進めてきた。現在、乳幼児きこえの教室(就学前対応)2教室、小学部3教室、中学部2教室、高等部3教室の分教室を設置。高等部の分教室については、比較的障害の軽い生徒を対象にした作業学習や教科学習を設定することで、進路の選択肢を広げることができた。また、受け入れた農業高校は、農業高校独自の教育機能を生かし、交流及び共同学習を推進することができた。また、小学部・中学部・高等部共通の成果は、通学の利便性が向上したことだけでなく、日常的に設置校の児童生徒と交流ができることにより、お互いの理解が深まったことである。しかし、課題も明確になった。それは、集団としての一定の規模を継続的に確保することが難しいことや、保護者は、単に通学の利便性のみを求めるのではなく、専門性の高い支援を望んでいることである。したがって、単に近くに分教室ができたことで、その周囲の保護者が全員入学を希望する訳ではない。

○(岩手県)

 特別支援学校から遠隔地である地域で、特別支援学校を希望する児童生徒がいた場合に設置しているもの。平成22年4月1日現在、3市の小学校に小学部分教室を各1、計3分教室、うち、1市の中学校に中学部1分教室を設置している。設置に要する経費については、建物は県が市より賃借、光熱水費等のランニングコストについては面積案分で県が負担している。設置時の費用についても県が負担しているが、一部、市に協力いただいた例がある。分教室の権限、責任分担については、すべて県が所掌している(各分教室の本校となる県立特別支援学校長が掌握)。学校給食については、設置している学校の給食の提供を受けている。

○(上越市)

 市内を3エリアに分けている。発達障害通級指導教室(以下通級指導教室)の担当教員は、各エリア内の小学校を本務校(週4日半勤務)とし、さらに兼務校(半日勤務)を中学校に配置し、広い域内の教育的ニーズに対応している。また、小学校と中学校に通級指導教室を設置することにより、よりスムーズな小学校から中学校への移行を目指している。また、通級指導教室はセンター校制をとっている。上越市全域からセンター校に指定した小学校に週2日、通級指導教室に通う子どもたち及び各エリアの通級担当者が集まり、小集団指導の授業を行っている。担当が集まった際、教員の研修として困難ケースについて協議することも実施している。担当者が1か所に集まり、チームで対応することにより、新たに加わった通級担当者の専門性が高まり、各エリア担当の授業力、心理検査技能、教育相談等の能力の均一性を保つことができる。センター校制は結果的に各エリア内の通級担当者の専門性を担保している。さらに、通級指導教室は巡回相談機能を有しており、直接的に児童生徒の通級指導を実施しないが、学級で「困り感」を有する児童生徒の参観、心理検査、教育相談を実施し、各学校の校内委員会に参加し、学校の職員と共に児童生徒の対応を検討している。加えて、発達障害通級指導教室の担当者は、就学支援委員も兼務している。このように発達障害通級指導教室は地域の教育的資源として、特別支援教育の推進の一翼を担っている。

○(上越市)

 巡回相談事業を市独自で実施しており、22年度は年間361件の巡回相談を実施した。巡回相談は、中学校区を中心とした14ブロックに細分化して実施している。23年度は、19人の巡回相談員を配置した(小学校担当14人、中学校担当3人、特別支援学級担当2名)。巡回相談では、まず各ブロックの巡回相談員が各校の教育的ニーズに一次的に対応している。その後、対応困難なケースは、発達障害通級担当に連絡をとり、より専門的な対応を求めるシステムになっている。さらに重篤で、緊急性を要する案件は、特別支援教育担当の指導主事が2名で対応するというバックアップ機能を付加している。巡回相談員の業務は、学校訪問し参観を行い、その後、校内委員会に参加し、対象児童生徒の対応について、在籍校の職員と共に校内委員会で対応を協議することを行っている。相談の申し込みは、電話、メール等で各ブロックの相談員に直接申し込みをし、派遣申請を送付するようにし、できるだけ簡便な手続きにしている。このように巡回相談は、中学校区を中心として、通常の学級に在籍する児童生徒の困り感に関し、簡便な手続きで相談できる機能を有する地域の教育的資源として位置づけられている。

 

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初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)