指定都市教育委員・教育長協議会

障害者の権利に関する条約の理念を踏まえた特別支援教育の在り方に関するヒアリング項目について

 

1 現行の特別支援教育の評価

    ○特別支援教育の理念に示されている2つの内容は,従来の特殊教育の在り方を大きく変え,特別支援教育の価値を教育の範疇にとどまらず,我が国の将来の社会にとって重要な意味を持つものとして位置付けたことは評価できる。

    ○特別支援教育は,通常学級における発達障がい等を含めた支援を必要とする児童生徒一人一人に応じた教育の効果は現れており,障がい等のある児童生徒への教育を充実させるものとして評価できる。

【課題】

    ○通常の学級担任を含めた,教師全体の特別支援教育に関する専門的な資質の向上が急務である。

    ○特別支援教育を進める上での人的な配置支援や物的条件の整備を含む,制度的なさらなる方策の検討が・改革が必要である。

 

2 就学先決定に関する提言の評価

    ○就学指導委員会における判断をもとに,保護者と継続した相談を行い,保護者の意向を尊重しつつ,子どもにとって最適な教育の場を共に考えていくという方針のもと教育委員会が入学する学校を決定してきた。また,入学後も適切な教育の場について,就学相談を継続してきている。

    ○就学基準の該当,非該当のみで就学指導を行うのではなく,子どもの実態,保護者の意見,専門機関からの情報をもとに,保護者との十分な話し合いの上,就学先を決定している。就学先の決定にあたっては,区別就学指導委員会,市就学指導委員会と複数の就学指導委員会を経て決定している。

    ○就学基準を基本としながら保護者の思いを聞き取り,障がいや発達の状況に応じた適切な教育が受けられるよう就学指導委員会の審議を経て,就学先を決定している。

【課題】

    ○提言では,就学先を決定するに際して,市町村教育委員会が就学移行期の個別の教育支援計画を作成し,活用することが示されているが,全ての対象児について個別の教育支援計画を作成するためには,組織改編や人的配置を含めた予算措置が必要である。

    ○就学指導委員会の検討件数が数百件となり,丁寧な審議が難しい元凶となっている。また,保護者の意向を尊重して,小学校へ入学した場合,教育的ニーズに応じた十分な支援体制を整備できないのが現状である。また,小学校や通常の学校へ就学する医療的ケアを必要とする児童生徒に対する支援が課題となると思われる。

 

3 障がい者制度改革推進会議の評価

    ○「共生社会」の実現は,我が国の現在及び将来にとって欠くことのできない理念であり,全ての子どもが通常の学級に在籍することについては,理念として評価できる。

【課題】

    ○今回の教育の在り方に関する検討を行う上で,教育関係者や発達障がい関係の専門家が含まれていない中での意見であることに懸念を感じる。制度改革を伴う新しい教育への転換は,これまで着実に積み重ねられてきた成果や条約の趣旨も踏まえながら,理念の構築に向けた斬新な制度改革であることを期待する。教育的な条件をどこまで整備するかという内容が明確に示される必要がある。

    ○全ての子どもが通常の学級に在籍して教育が可能かどうかの検討が必要である。現行の体制のまま入学することになれば,子どもへの教育的配慮がなされず,結果的に教育的利益を失することになる。例えば,重度重複障がいの子どもが通常の学級に在籍した場合に,その子どもを支援する教育的支援や医療的な支援が,全ての場合において十分に満たされるための合理的配慮が必要であり,施設面,財政面,人的支援等について制度の上でしっかり議論され整備されなければ現場の学校が混乱する。

 

4 その他

    ○日本の特別支援教育の実情を踏まえ,実現可能かつ段階的なインクルーシブ教育システムの構築について時間をかけて議論をしていただきたい。

    ○日本的なインクルーシブ教育システムの構築の上では,交流及び共同学習の充実など,地域の視点を重視した取組の積み重ねが非常に大きいものと考える。
     保護者が希望していない就学先に行くことになったなどの対応は,学校教育全体の中で改善されるよう一層取り組むことを再度示すことが必要であり,そのことが,一人一人の教育的ニーズに応じた特別支援教育の理念の実現に繋がるものと考える。

 

 

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