資料2:特別支援教育の在り方に関する特別委員会におけるこれまでの主な意見

1.総論

○インクルーシブ教育の理念・方向性については賛成である。

○インクルーシブ教育の最終目的と特別支援教育の最終目的である共生社会の実現は同じ方向である。

○インクルーシブ教育の推進に当たっては、地域に普段から障害のある方がいるということが認知され、地域の方や保護者の方に理解されることも重要である。

○インクルーシブ教育といっても、同じクラスで一緒に学ばなければいけないということではない。一人一人のニーズに応じた教育という特別支援教育の方向性を行うにあたっては、障害の状態に応じて、臨機応変に通級指導、特別支援学級で教育するなど色々な形があって然るべきだと思う。

○特別支援学校は共生社会の実現に向けて、どのように貢献していけば良いのかを議論する必要がある。

○インクルージョンと個別化(スペシャライゼーション)を両立しながら折り合いをつけていく仕組みを作っていくことが重要である。

○インクルーシブ社会のためには、障害のある当事者がどれだけ社会に参加できるかというということが問われる。

○子ども本位で障害のある子どものニーズというものを出来る限り受け止める制度設計ができればと思う。

○障害があるかないかという考えから脱却する必要がある。特に発達障害については、スペクトラム(連続性)で捉えなければ見落としてしまうことが多くある。

○知的障害、発達障害のボーダーラインにいる子ども達は特別支援教育のサービスの対象として抜け落ちることがあるのではないか。

○ボーダーラインの子どもたちについて、とりこぼしが生じてしまうということに関しては、障害のカテゴリーに入るか否かで判断する場合、どうしても生じてしまう問題であり、障害ではなく学習困難ということで対応することも考えられる。

○障害のある子を最大限に発達させることを行っているが、障害のない児童の権利についても保障しなければならない。従って、様々な条件整備、現場での意識改革、教員の指導力の向上等々を総合的にやっていかなければならない。

○個々の子どものニーズと教育現場が直面している教育事情を鑑みずに、すべての子どもをインクルードしてしまうことは、形式的な平等化にすぎず、公平性・公正性は担保されず、実質的には子どもの健全発達、将来社会に参加し市民として生きる権利を侵害する可能性が高まってしまう。

○それぞれの子どもが授業や活動に理解や共感、あるいは参加感を持ちながら、充実した時間を過ごせて、そこで生きる力を身につけていけるかどうか、これが最も本質的な点である。

○地域の状況に応じた柔軟な選択肢があってもいいと思う。

○場を共にするだけという意味でのインクルーシブ教育を進められるのであれば、かえって子どもたちの負担が増えるだけである。40人学級制など現在の一般教育の枠組みや体制そのものが大幅に改善されない状況で、機械的に場を一緒にするというだけのインクルーシブ教育を進められても、子どもたちにとっては決してプラスにはならない。今まで進められてきた特別支援教育のプラス面を継承し、マイナス面を検証し、大きな枠について、財源負担も含めた国民的合意をはかり、それを進めながら、大きな枠組みを改善する中で、場をともにすること、その中でともに育つ・学ぶ体制を求めていくべきである。

○地域というキーワードの中で、地方公共団体の責務としては教育の立場でのインクルーシブ教育を進めつつ、引き続き、障害者支援、福祉の事業との一層の連携を強める広い視野の中で、インクルーシブ教育を位置付ける必要がある。

○インクルーシブ教育で一番重要なものはマネジメントである思っている。如何にすべての子どもに平等な教育を行っていくかを考えた時に、問われるのは学校長、各担任レベルが有している学級のマネジメント力だと思う。そのため、エビデンスベースの学級のマネジメント指導するような研修、プログラムを導入する必要があると思う。

○学びが保障されるのが特別支援教育だと思うが、ともに学ぶという理念だけが先行してしまって、結局、通常の学校の中でもそういった教育が受けられない、教員の知識がないからこそ子どもが不利益を被ることは避けなくてはならないと思う。

○今の学校制度からあまり大きくは外れないところでインクルージョンのために何をしていくかということが一番現実的である。

○特別支援学校あるいは特別支援学級の実践については、課題もあるが、それなりに障害当事者の児童生徒に寄り添いながら実績を重ねてきており、保護者、当事者の中にも特別支援学校や特別支援学級ではない制度を直ちに求める声は多くない。教員のみならず、地域の障害のある児童生徒以外の保護者など全体としてまだインクルーシブ教育に対する理解が熟成していない。

○卒業後の就労も含めたインクルーシブシステムを考える必要がある。

○場の共有イコールインクルーシブ教育ではない。

○学籍の話ではなくて、地域生活を地域でどう支援していくかという観点も必要である。

○小規模でいいので、なるべく近くに特別支援学校を設置することが必要である。

○特別支援教室については、もう一度、この会議の場で共通理解を図り、議論をしていただけたらと思う。

 

2.就学相談・就学先決定の在り方及び必要な制度改革について

○幼小連携が大事であり、早期発見・早期対応が大事である。

○本当に子どもの教育的ニーズを保障する就学決定をするためには、現実的には乳幼児期から必要な支援のあり方を考える必要がある。

○視覚障害のある幼児児童については専門的な指導が欠かせない。一時点だけでインクルーシブを考えるのではなく、子どもの長い育ちの中で、インクルーシブな教育が必要な時期と非常に専門的な教育が必要になる時期がある。

○就学先決定を全て親に委ねるというのは、最終的には子どものためにならないと思う。しかし、基本的には保護者が判断するための情報提供を最大限に行っていくべきとも考える。

○保護者に説明するための時間が足りず、就学指導委員会の判定の結果が機能していない。

○就学相談は、児童生徒の心の可能性を最大限に発展する、適切な対応をするという趣旨があるが、併せて保護者の心情をどれだけ共感的に理解できるかということも重要である。保護者に教育に関する情報を適切に提供しつつ、判断を共にしていくというプロセスが大切である。

○自身は、障害のない子どもと一緒に学び、遊ぶ関係を築く中で、対等にやれたという感覚を持ちながら育ってきたのが大きいと思う。もし特別支援学校に通っていたとしたら、今のように健常者に対して自然な形で付き合えるようになったかというと疑問が残る。全部統合教育が良いかというとそうではない。どんな道を出ても社会は一つであり、同じ社会で生きていくためにどういう道を通るのがその子にとってベストなのか、ということを意識しながら議論していきたい。

○一部の自治体では、就学支援シートを市内在住の就学を迎える全児童を対象とし、それぞれの学校で保護者と担任等がそのお子さんの学校生活、学習について、随時これを活用していくこととしている。

○就学時に今後の進路(就学先)をすべて決めてしまってよいのかは疑問。子どもが中学校で大きく変わることもある。就学先の決定に小学校6年間を大前提に決定するのではなく、子どもたちの発達の程度、適応の状況等を勘案しながら修正を加えていくことができることを前提とし、毎年柔軟に教育相談の中で就学先を検討することはできないか。

○就学後に就学先の変更がなされるまでの間、適切な教育がなされず、それが原因で二次障害が発生しているのではないか。就学先の決定だけを集中的に考えず柔軟な対応が求められる。

○「特別支援教育の推進に関する調査協力者会議 審議の中間取りまとめ」の就学先決定についての提言は大変重要。就学について親の意見を過分に評価しないでほしい。就学決定において、就学先の学習の様子がわからなければ親は迷う。

○就学決定については、必ずしも就学の決定の入り口だけで対応するという考え方ということではなく、早期からの就学支援の在り方についても議論をしていきたい。

○就学に関し、保護者や本人の思いをニーズにつなげることは難しいのではないか。保護者の思いが、その学校に入ることか、その地域の中で地域の一員として生きていくことか、を明確にしていくことが非常に大切。

○保護者の思いと子ども本人の教育的ニーズは確実に違ってくる。保護者の思いは決してニーズではないが、保護者の思いは思いとして受け止め、本人に必要なものは何かを考えていくプロセスが必要である。

○英国では、就学先決定についての紛争解決のため、非公式な方法で話し合いをして合意に至れるようにシステムが用意されている。

○米国では、就学先決定に対する不服を裁判で争う場合、親、行政双方にとって時間も費用もかかり、子どもはその間適切な教育を受けることができない。そこで、そのようなことになる前に調整をするシステムとして「メディエイション」という制度がある。

○英国では、地方行政局が、両親パートナーシップ・サービスというものを提供することが義務付けられており、保護者の権利、役割、責任を基に適切で中立的な情報を保護者に提供するほか、教育以外の必要な情報について紹介をする、法律等を分かりやすく伝える、教師や行政の担当者と良いコミュニケーションを作ることができるよう研修を行う、同様に学校、地方行政局の担当者にも家族等について理解するための研修を提供するといった役割を果たしているものがある。

○米国では、両親のための両親研修・情報センターという理事の過半数が保護者のセンターが各地にある。保護者は、そこで他の保護者との相談などを通して情報を得た上で学校及び教育委員会と協力的にコミュニケーションをして決定していくシステムが用意されている。

○市町村教育委員会が保護者へ説明したり、教職員に指導・助言をするなどして適切な教育支援を行うためには、専門的な知識をもった職員を配置してアドバイスやアセスメントができるようにする必要がある。

○保護者との話し合いは大切にする必要がある。保護者の意見を十分に聞き取り話し合うことが大変重要である。

○○1就学判定に関わる人達の専門性に差があり、子どもの発達段階を踏まえた実質的な教育的ニーズをおさえられない、○2判定に使う検査の課題、○3情報連携の課題、○4インクルーシブ教育の定義が徹底されていないという課題がある。

○就学判定をするときには言語理解の専門家(言語聴覚の専門家、特別支援教育スーパーバイザー等。発達障害等についての知識も必要。)の関わりは必須。視覚認知や作業療法などの専門家も関わることが望ましい。

○発達障害の知識をもった医療・福祉・心理・教育の専門家が集まった機関の設置が必要であり、当該機関が全ての子どもの健全発達、将来社会に参加し市民として活きる権利保障を踏まえて弾力的に判断することが望ましい。

○出生から就労まで確実に指導・支援できるような、子どもの成長記録や生活の様子、指導内容に関するあらゆる情報を記録し、必要に応じて関係機関が共有できるようなファイルを作成し、出生届が出されたときに配布することが必要。就労判定する時に一つの大きな情報にもなり、転校した場合にも情報共有できる。

○就学支援シートについては、生活支援シートという形で、生まれたときから成人までまとまるようにしている自治体もある。

○就学相談・就学先決定の在り方については、個別の教育支援計画に、就学の前から保護者がプロセスにかかわることによって行き先を決め、その内容をもとに、就学後の教育の在り方、支援の在り方が決まりそれを実行するというのが望ましいだろうと思う。そこで保護者の意向を最大限尊重していく仕組みを作っていったらどうか。

○就学先の決定の際に、調整する機関が必要だということになれば、指導の専門性と、客観・公正な見識を持ち合わせる構成員を入れて調整機関を作っていくということが必要。これについては、早急にやるのではなく、モデル事業等を始めて、その結果を紹介して広げていくのが良い。

○就学先の変更が速やかに行われる仕組みが必要。就学時には、その学校に適応していると思われる児童も、1、2年経つと不適応を起こす可能性もある。速やかにその子のニーズに合った学校に変更できるような仕組みを是非作っていただきたい。

○就学相談については、それぞれの自治体の努力に任せるだけでなく、何らかのモデル的なプロセスや具体例の共有化などを検討することが最優先であり、意義がある。

○合意形成の在り方について、保護者、学校、学校設置者の合意をもとに話し合い、就学先を決定するべきである。

○子どもの状況の早期発見と、保護者との就学指導の前提としての早期発見・相談、早期対応、ネットワークの構築が必要である。

○早期からの教育相談については、教育関係者だけでなく、特に福祉の関係者を含んだ複数での相談をしていく必要がある。

○入学時に特別支援学校の選択が適当であったとしても、その後の成長の過程の中で、地域に戻ることが適当になった時には、スムーズに地域に移行できるような転学の相談のスムーズ化は大変重要なものかと思う。

○いちばん大事なのは、その子どもの実質的なニーズが押さえられているかどうか。しっかりと判定・相談・検証できる機関を都道府県レベルでまず設置すべき。そこで一年中いつでも相談でき、それがきちんと教育現場に返っているかを検査し、専門家による検査が行えるようにすることが大事。子どもの実質的ニーズを、保護者が必ずしも的確に表現できるとは限らない。

○当事者の意向をどうとらえるかが大切。保護者の意見、学校、幼稚園・保育園、療育関係機関の人たちが子どもが何を望んでいるのか酌み取り、皆でこれを探っていくのが就学相談の過程。中学校段階以降では当事者の意見は必ず聞くシステムが必要であろう。本人が納得していく過程が重要である。

○就学相談や就学支援に係わる関係者の研修について、都道府県が実施すべきである。

 

3.2.の制度改革の実施に必要な体制・環境整備について

○現在、発達障害の児童に対する指導が一番の問題になっているが、まだまだ人的整備が進んでいない状況である。

○人的整備を含めた様々な条件整備、現場での意識改革、教員の指導力の向上等々を総合的に進める必要がある。

○具体的に地域の現場で実現していくには、基礎自治体の取組が大きく影響する。その際、教育委員会だけではなく、首長部局も重要。財政面を軽視してはいけない。

○現行の特別支援教育制度の良い部分が限りなく活かされればと考えている。

○今までの特別支援教育の成果と課題について発達障害を含めた形で、きちっと踏まえなければ制度設計は難しい。

○特別支援教育は進んでいるが、ほとんどは各学校、教員の努力に頼っている。

○通常の学級では介助員など様々な人材が必要になる。また、高学年になると全体での学習が難しくなってくる。教育というのは将来の社会参加のための自立支援。

○障害のある方、ない方が一緒に勉強する上で、垣根をなくすためのカリキュラムを含め、意識を変えていくためのカリキュラム作りが必要である。

○教育上の指導や支援を幼児期から大人まで継続的に適切な支援をしていく必要があると考えたとき、「個別の支援計画」や「個別の指導計画」は欠かせない。

○障害のある子どもを小・中学校で教育するための環境・施設・設備が整っていなければ、理念だけが先走ってしまいがちになり、現実的には子どもたちも教職員も、それぞれの子どもの能力を十分発達させていくことが難しくなる。

○「副籍」の全国的な実施がノーマライゼーションの段階的な第一歩である。このような制度を各地域で展開していく中で、具体的な課題や色々な実施状況が見えてくるのではないか。

○交流及び共同学習については、自分の自治体では、居住する地域の学校を想定しており、通学は自分で、あるいは、保護者の付添いでできるだろうということで始めたが、実際には通学支援が非常に難しい。寄宿舎に入っている場合もある。また、教育課程上の問題としては、両校で時間割りの調整も必要である。

○地域で夏休み、そして土曜日・日曜日を過ごすこともあり、インクルーシブ教育システムの中に地域生活も含めた考え方をとり、それで居住地で色々な交流ができるような支援計画を作成していくのも一つの方法である。

○地域の子どもとの交流は大事であるが、地域との交流と、普通学級に入った場合のその子どもの自立を促す教育というのは、必ずしも理想的には両立しない部分があり、それが学校現場の悩みであろうと思う。

○乳幼児期から幼児期にかけての専門的な指導を行う体制を医療・福祉・教育の連携の下に早急に確立することが必要である。特に盲・聾学校については、幼稚部での早期の相談体制、指導体制について検討することが必要である。

○指導と一体化させた教材教具の普及が必要である。

○同じ障害者の集団を体験する必要性があり、例えば「逆副籍」として盲学校との交流を定期的に実施するなどの仕組み作りが必要である。

○小・中学校で自立活動の指導を可能にするため、「特別な指導」の教育課程上の位置付けを明確にする学習指導要領の改訂が必要である。

○安全管理や情報保障のための支援員の配置が必要である。

○視覚や聴覚に障害のある児童生徒への配慮事項として、点字・手話等のさまざまなコミュニケーション手段の保障及び早期からの教育、障害に配慮した学習環境の整備、同じ学習環境で学ぶための一定程度の集団の確保、専門的指導・支援のための設備・器機の整備が大切である。

○肢体不自由や病弱のある児童生徒への配慮事項として、バリアフリー環境の整備、外部専門家と連携した専門的指導が必要である。また、医療的ケアを必要とする児童生徒については、安心して通学できる環境が整った特別支援学校でなければ生命の保障すらならず、濃厚な医療や全面的な介助が必要な児童生徒の教育の在り方については、現実を直視した合理的配慮の検討が必要である。

○知的障害のある児童生徒への配慮事項として、一人一人の障害の状態等に合わせたきめ細かい「オーダーメイド」の教育課程が必要である。

○重度心身障害児への適切な教育が行われるためには、学校での適切な空間的環境などの基礎的条件の整備、充分な知識と技量を持った教育スタッフチームの配置・育成、看護師と教員が連携した学校における医療的ケアの実施体制の整備が必要である。

○全ての子どもに実質的に効果のあるインクルーシブ教育を実践するためには、まずは受け入れる側の教師たちの専門性を確実にあげ、指導技術を担保することが必須要件である。

○全ての子どもたちの健全発達、将来社会に参加し市民として生きる権利が「実質的」に保障されているかどうかを抜き打ちで調査し、監督し、子ども(保護者)側から不服申し立てもできる監査機関が必要である。

○教育現場の体制整備として、○1教師/校長のマネジメント能力の向上、○2全ての教師に護身術の導入、○3クールダウンスペースの設置、○4リレーションルームの設置、○5学習スタイルの多様化を踏まえた教科書・副教材の提供、○6情報保障としての図書室/図書館の充実、○7情報共有の制度化、○8人事交流の活発化、○9校外委嘱等アウトソーシングなどが必要である。

○懲戒権を校長に一本化すること、その手続きを明らかにすること、児童生徒側からの異議申し立てができるようなシステムを構築することが必要である。

○ろう児には集団性が担保されるろう学校が最も適した環境であり、ろう学校を制度的に整備することが必要である。そのためには、○1集団生活における言語力及びコミュニケーション力を育成するシステム(教職員等の手話言語力、手話指導力、学科指導力の向上のための研修、評価など)、○2インクルーシブ社会における個々の役割と活躍が期待され、自らの障害を認識するシステム(原則としてろう学校に主籍、地域の小・中学校に支援籍を置き地域の子どもとして学習するなど)、○3地域社会とのネットワークを築き、地域社会に貢献し、インクルーシブ社会を推進するシステムの構築が必要である。

○国は、ろう学校教員が手話言語を習得し、指導するための教材を開発し、全てのろう学校に無償で配布すること、ろう学校教職員の手話言語力、手話指導力及び学習指導力を習得するために研修制度を実施しその普及に努めることが必要である。

○差別、間接差別、合理的配慮を整理するのはなかなか難しいかもしれないが、この点を踏まえて議論する必要がある。

○「均衡を失した又は過度の負担を課さない」という場合に、この主語が障害のある子どもだけではなく、通常の学級で一緒に学習する子ども達についてもこのことを考えていただけたらと強く思う。

○障害のある人、子どもに対しては、配慮しなければならないが、障害のない人、子どもたちの関係も考慮する必要がある。

○一生懸命にいいケアをするには、財政的な裏付けが必要である。

○施設設備一つにしてもいいことばかりではなく、現状をどこまで改善をしなくてはならないかを考える必要がある。

○重症心身障害児の教育上の配慮について、医療的に重度だから特別支援学校ではならなくてはならないということではなく、通常の学校でも十分進められるべき。ただ、全国的に費用について制約がある中で、このような子どもたちが学校に通えるためにはシステムとして、いままでの体制で進められてきたことが継承されるべきである。

○知的障害を伴う自閉症の子どもが見通しを立てながら生活を送っていくためには、まず入れる情報の数を制限するというのは、一番大切な合理的配慮ではないか。小学校、特に学級の中の環境というのは、自閉を伴う子どもにとって苦痛を伴うと言ってもおかしくないような、たくさんの情報にあふれた環境になっており、ある程度情報が制御されたような状態を事前に整えなければいけない。

○障害を持つ子どもの教育について、子ども、保護者のためであることが基本であり、保護者をどれだけサポートできるかということが一番大切な問題である。英国や米国では保護者のためのシステムを作っている。

○家族力というのが減退してきている。家族支援の問題もある。特別支援教育により家族が支えられていく。

○子どものポテンシャルを最大限生かし、子どもに合った教育が受けられ、かつ、その子どもが社会参加できるようになることが保護者の望みだとするならば、そのような教育が提供できるシステムを作っていく必要があり、その体制整備が整わない移行期の間は親権についての調整が必要である。

○ハード面の整備だが、これはお金の問題が大変だが、逆に単純な問題である。より本質的な問題はソフト面であろう。

○場を共にするだけという意味でのインクルーシブ教育が進められても、かえって子どもたちの負担が大きくなる

○合理的配慮については、日本では今まで議論がされていなかった。

○具体的な合理的配慮のイメージということについて、より一層、この委員会を含めて提案していかないと、一部の教員や保護者、当事者が認識したとしても、まだまだ地域への理解ということについて啓発が必要である。

○具体的に合理的配慮を進めていく時の基準をどう示していけばいいのか。特別支援学校や特別支援学級という実践を踏まえて、それと同等が良いのか、違う形を提案していくのが良いのか。

○合理的配慮の実施にあたっては、十分に環境が整い、制度設計が終わってからでないと、不十分なままでは、子ども達が不便な思いをすることになる。

○障害のある子どももない子どもも共に快適な環境で学習が保障されるというのは難しい問題である。

○障害種ごとに合理的配慮は大きく異なる。

○ハード面ではなく、まず、ソフト面の議論をしないといけないと思う。

○環境整備については、特別支援学校の状況が大変厳しい。特別支援教育について保護者が期待して、特別支援学校を希望する場合が増えてきている。

○小規模でも良いので、なるべく地域に特別支援学校を設置することは必要ではないか。先生の移動などを考えても間接的な支援の内容も濃くなってくるのではないかと思う。

○就労との連携が教育現場には必要であり、子どもたちが達成感や成功体験を感じる上で、教室の現場だけではなくて、クラブ活動、校外活動、交流授業が大変効果があると聞いている。

○国が同じ質の教育を受けられるように保障するとともに、財源的措置を踏まえた都道府県、市町村の自立性も重要である。

○英国では、学校についての差別禁止義務があり、障害のある子どもの入学に適切に対応しているか、停学や退学について障害であることを考慮しているか、あるいはその障害に対して合理的な手順を踏んだか、日常的な教育や関連サービスにおいてとった行動が差別になっていないか、といったことが問われる。また、企画義務として、物理的な施設へのアクセスや情報をアクセシブルなフォーマットで障害のある生徒に提供すること、教育課程へのアクセスがあり、これらについては、一定の長い時間をかけて戦略的・計画的に進めていっている。

○教科書・教材については、教科書バリアフリー法ができて最初の一歩として進められているが、今後どのような形で教材をどのような子どもたちに提供していくのか、検討していくことが必要である。

 

4.障害のある幼児児童生徒の特性・ニーズに応じた教育・支援のための教職員の確保及び専門性向上のための方策

○仲間がいて、自分たちの存在を全面的に肯定してくれるような他者がいる場所というのは、子どもたちにとって重要な場所。しかし、今の盲学校では、その機能が色々な意味で劣化してきている。まず、集団教育が成り立たなくなってきており、専門性をもった教員も減ってきている。

○教員の専門性の確保が現在の特別支援学級設置校の大きな課題。子どもたちが通常の学級に入った時に、彼らの学ぶ権利が今以上に充実したものになるのかは大きな疑問。その実現のためには、体制、財政の整備について議論を進める必要がある。

○教員の専門性を向上させることがインクルーシブ教育、特別支援教育の理念を実現することと考える。

○専門性をもった教員が専任で配置され、コーディネーターとしてきちっとやっていくことが、教員の資質・能力の向上に関わってくる。

○特別支援学校による巡回相談等、小中学校等と特別支援学校との連携が重要。特別支援学校を中心とした地域での支援体制を作る中で、専門性を高めることが重要である。

○担任だけで、障害の重い子どもを受け入れるのは難しい。そういうときは、校内の特別支援学級から指導内容・方法について助言を受けたり、教育委員会から加配を受けたりして、担任が主体となることはもちろんだが、校内の委員会等で十分議論を重ねて対応を考えていく。

○様々な状況の子どもへ対応するためには、教職員の質の向上と支援体制の確立は不可欠。指導する幼児児童生徒を育てるばかりでなく、教職員のメンタルケアのためにも必要である。

○県や市町村での特別支援教育に関する研修は全ての教職員に必要。理論だけでなく、実習を通して子ども達への対応を実感できるものもある。多様な特別支援の研修が重要である。

○今後、通常学級の担任も当然、特別支援教育に関しての何らかの免許が必要。特別支援学級や、通常学級に在籍する発達障害の子ども達に関係するような免許状を別のルートで作る必要があるかと思う。全ての教員が持っているというのがこれからの特別支援教育を進める上で非常に重要な教員の専門性になるのではと思う。

○果たして現時点で特別支援に関することが専門といえるのか、特別な知識であると捉えていいものかと感じている。

○通常一般の教員免許を取得する際にも、こういった特別支援に対する学びの機会というものがあったほうがいい。

○教員の専門性と技量をどう確保していくか、それがどう継承されていくか、この点が不十分である。

○日本では、地域の学校、特別支援学校でも障害のある当事者の教員があまりにも少ないと思う。そのような教員たちの教え子が社会に積極的に参加できる社会をつくるならば、当事者が教育の中で活躍できるかたちをバックアップしていく役割があるのではないか。

○専門性について、アメリカやイギリスで行われているように、高発生頻度障害(発生頻度が非常に高い障害)については基本の情報としてみんなが有することとし、低発生障害(盲ろう、重度重複など)については専門性を高めるという形で、高発生と低発生を分けて専門性を向上させる取組が日本でも必要である。

○大学との連携により、校内研修における専門的な指導や院生・学生のボランティアが放課後の学習支援教室に協力してもらっており、こういった取組を全国の小・中学校で可能となるようにしていかないといけない。

○障害種別に教育の工夫が必要となってくる中で、成人になることを見据えて、今何が必要なのかをということであり、専門的で中立的なアドバイザーとして児童精神科医がその役割を果たす必要がある。

○特別支援学校は、現在センター的機能を実施しており、インクルーシブ教育システムの中では重要な役割を果たすことが求められ、その専門性の向上も取り組む必要がある。

 

5.その他

○認定就学者制度は、視覚障害のある児童生徒が通常学級でも点字や拡大教科書を使うことができるようになってきたという面で、大変意味のある制度改革だった。

○多様な障害に合わせての特別支援教育とは何かという議論が必要である。

○幼稚園では障害のある幼児が在籍しており、障害のない子とともに生活を楽しんでいることが多く、時間、空間の区切りが緩やかで、子どもたちが受け入れられやすいし、一緒に学ぶ時間も多い。小・中学校では、一緒に学びつつも、場合により障害の種類や程度に応じて違う教育を考えつつ、バランスが大切と考えている。子どもの学びのスタイルの視点からも検討が必要。集団の中で何を学んでいるかについても焦点を当てて議論が進んでいけばと思う。

○特別支援教育がスタートして4年目に入り、教員の意識が変わってきたと感じている。

○特別支援教育を進めるにあたって、校内、教職員の理解は進んでいるが、保護者や地域住民の理解を得るのは難しい。

○分教室の運営については、学校運営の工夫が求められる。運営の仕方によっては非常に良い取組が生まれる形態である。小学校に設置している特別支援学校の分教室では、当該小学校のみならず周辺の小中学校についても支援を行っている。教育活動では可能な行事は一緒にやっており、地域の方に認知される取組になっている。

○障害という概念・定義そのものを考え直す必要がある。また、障害と一口で言っても色々あり、やはり個別にきめ細かに考えないといけない。

 

 

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