資料8:尾崎委員提出資料

中央教育審議会初等中等教育分科会
特別支援教育の在り方に関する特別委員会
第3回討議資料

平成22年9月6日
全国特別支援学校長会 尾崎 祐三

 

 障がい者制度改革推進会議のヒアリング(7月26日)に提出した全特長の意見書を基に、本日の討議内容に関連する部分をまとめました。参考にしていただければ幸いです。

 

1 就学相談・就学先決定の在り方について

    ○1 「個別の教育支援計画」作成への参画と保護者の意見の最大限の尊重
     障害のある幼児児童生徒にとっては、保護者の理解の下、幼児期から学校卒業後まで、一貫した教育的支援が必要です。就学期においては、専門家や関係者の多面的な観察・助言を生かして就学先を判断できるような就学相談の充実とともに、これまでより一層「個別の教育支援計画」作成プロセスへの保護者の参画を進め、学校の義務と保護者の権利をより明確にしたものとし、保護者の意見を最大限尊重して設置者が決定する仕組みを作ることが必要です。結果として保護者の意向を十分尊重して、実際の指導・支援のあり方が決定できるようにすることが重要です。

    ○2 関係機関の連携による早期からの支援の重要性
     特別支援教育においては、教育、医療、福祉、労働の関係機関が連携・協力の下、個別の教育支援計画を作成し一人一人のニーズに合わせた教育的支援を実施しています。特に、就学期において障害の早期発見、早期対応が重要で、保護者の同意の下、関係機関による就学前の療育や教育に関する支援が重要です。

    ○3 保護者、学校、学校設置者の合意形成を重視する仕組み
     就学先を通常の学校を選択するにしても、特別支援学校を選択するにしても、保護者の意見を最大限尊重し、就学する子どものニーズに応じた教育的支援を受けられる場を三者の合意の下に決定する必要があります。したがって、保護者の意見が最大限尊重できるようにするためにも、就学先の決定の際は、保護者、学校、学校設置者の合意形成を重視できる形が望ましいと考えます。そのためには、保護者、学校、設置者の三者の合意を調整するための機関は、指導の専門性と客観・公正な見識をもち併せる構成員にする必要があります。また、三者の合意を調整する機関を設置する場合は、各地でモデル事業を行いその機能について研究を行い、その先行事例を広め、紹介ができる取り組みが必要です。

    ○4 就学先の変更が速やかに行われる仕組みの必要性
     就学後、児童生徒が不適応を起こしたり、就学時に想定されなかった教育的ニーズが必要になったりした際には、児童生徒のニーズに合わせた教育ができるようにアフターケアーを行い、就学先の変更が速やかに行われる仕組みを作る必要があります。

 

2 制度改革の実施に必要な体制・環境整備(合理的配慮を含む)について

    ○1 通常の学級における教育内容・方法の整合性と学習活動の可能性の検証の必要性
     障害のある児童生徒の教育内容は、個々の障害の状態に応じて弾力的に選択することが必要です。通常の学級で実施される教育内容・方法と障害のある児童生徒のニーズに合わせた教育内容・方法との整合性や学習活動の可能性などについても十分検討する必要があります。障害のある児童生徒にとっても、障害のない児童生徒にとっても「人間の多様性を尊重しつつ、精神的・身体的な能力を可能な限り発達させる」ことになることを検証した上で、通常の学級での教育を実施することが重要です。

    ○2 就学前の合理的配慮に基づく条件整備の必要性
     教員の加配や施設設備の整備などの合理的配慮に基づく条件整備は、児童生徒の就学前に整えておく必要があります。条件整備がなされる前に就学することになると、「保護者の多大な負担」がそのまま就学先に課され、未整備な側面が全て合理的配慮を欠くと解釈される恐れがあるだけでなく、その間、十分な教育を受けられなくなることになりますので、条件整備を先行させながら、教育環境が整った学校から実施する制度設計が必要です。一人一人の児童生徒の学校生活における健康と安全を守るためには、一人一人の障害の状態に合わせた施設設備が必要であり、不備による事故を起こすことは絶対に許されるものではありません。就学先がどこであれ、障害の状態に応じた合理的配慮を欠かすことができないと考えます。

    ○3 特別支援学校の教育における児童生徒のニーズに合わせた合理的配慮
     障害のある児童生徒の特別支援学校での学習活動を充実するためには、障害のある児童生徒一人一人の障害の状態や教育的ニーズにきめ細かく対応するための専門的な知識と経験を有する教員が配置されていること、児童生徒が十分に教育を受けるために障害の特性に応じた必要な施設設備があること、児童生徒が使用するための障害に配慮された教材が整っていること、障害に起因し環境の適応に困難な児童生徒も多くいるので、環境が整備されていることが欠かすことができないと考えます。また、特別支援学校においては通常教育に比べると一律に学ぶ内容が規定されていないため、個に応じた教科書等の作成、副読本等の教材が必須となりますので、早急に整備をする必要があります。加えて、小学校・中学校等でのICT活用による情報の保障やコミュニケーション手段の確保等を充実させる研究開発も必要です。

    ○4 視覚や聴覚に障害のある児童生徒への合理的配慮
     視覚や聴覚に障害のある児童生徒の教育においては、点字・手話等さまざまなコミュニケーション手段の保障及び早期からの教育が必要です。さらに、視覚や聴覚の障害に配慮した学習環境を整えることが必要です。視覚障害、聴覚障害の児童生徒にとって同じ学習方法で学ぶための一定程度の集団の確保が重要であり、専門的指導、支援のための設備・機器(点字ブロック、校内文字表示盤等)の整備が大切です。

    ○5 肢体不自由や病弱のある児童生徒への合理的配慮
     肢体不自由・病弱教育における重度の障害のある児童生徒には、医療的ケアを必要とすることもあり、それに応じた対応が必要です。また、バリアフリー環境の整備を進めるとともに、外部の専門家(理学療法士や心理の専門家等)との連携を図り身体や病気の状態に応じた専門的な指導が大切です。また、病弱教育では、病状に応じた配慮だけでなく、入院前にいた学校(前籍校)との繋がりを確保できるよう機器(TV会議システム等)を整備することも重要です。医療的ケアを必要とする児童生徒にとっては、安心して通学できる環境が整った特別支援学校でなければ、生命の保障すらなりません。濃厚な医療や全面的な介助が必要な障害のある児童生徒の教育のあり方については、現実を直視した合理的配慮の検討が重要です。

    ○6 知的障害のある児童生徒への合理的配慮
     知的障害教育においては、一人一人の障害の状態等に合わせたきめ細かい「オーダーメイド」の教育課程が必要です。進度別、学年縦割りの指導、少人数・個別指導、ソーシャルスキルの獲得のための指導など、指導内容・方法を工夫することが重要であり、これを支える教員の専門性が大切です。

 

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