資料7:太田委員提出資料

第三回の自由討議での意見

品川区立鈴ヶ森小学校長 太田 裕子

1 就学相談・就学先の決定について

○1 柔軟な相談体制にするための「支援会議」の位置づけ

    • (現状でもできることではあるが)「就学先の決定が小学校6年間全てを決定してしまうのではない、決定後も児童の適応状況や発達の程度を勘案しながら修正を加えていくことができる。」ということを明確に打ち出すことができるようにすべきである。特に迷いながら決断した事例については、個別の教育支援計画に基づく支援会議を学期ごとに開き、在籍や支援の体制についても大きく変更ができるようにすべきである。
    • そのためには、就学相談や就学先の決定の手続きの中に、「個別の(教育)支援計画に基づく支援会議」を位置づけることが必要である。

○2 「副籍」の全国的な実施

    • 東京都では、平成19年度から特別支援学校小中学部に在籍する児童生徒で希望する者には、居住する地域の小中学校に副次的な籍を設ける「副籍制度」を実施し成果をあげている。ノーマライゼーションの趣旨を踏まえ、特別支援学校に就学後も地域の小中学校と間接的・直接的な交流及び共同学習を継続的に実施していくためには、児童・生徒自身に「副籍」があることが重要である。副籍の実施状況について、まず、この特別委員会で報告させてほしい。そして、この制度を全国展開していくことが、ノーマライゼーションの段階的な第一歩である。

 

2 制度改革の実施に必要な体制・環境整備

○1 就学前の専門的な教育の実施

    • 情報の80%~90%が視覚情報であるとも言われる今日、無意識のうちに見て真似ることのできない視覚障害の幼児については、生まれた時からすぐに専門的な指導を行っていく必要がある。また、視機能などの感覚器官は、おおよそ8歳までに完成すると言われている。そのため、就学先云々よりも、まず、いろいろな感覚の発達が著しい乳幼児期から幼児期にかけての専門的な指導を行う体制を医療・福祉・教育の連携のもとに早急に確立する必要がある。そして十分に発達を促した上で、就学先を決定していく必要がある。

○2 指導と一体化させた教材教具の普及

    • 視覚障害というと、拡大教材・点字教材が論じられるが、それ以前にさまざまな感覚を発達させ、活用するための蝕る教材や音声の教材などが必要である。これらは、指導法と一体化して初めて成果が出るものであることにも留意する必要がある。
    • 拡大教科書・点字教科書・音声教科書については、教科書バリアフリー法に基づいて普及されてきているが、こちらの教材も、特に導入期には、教科書の使い方の指導と一体化して初めて学習に有効となるものである。

○3 同じ障害者の集団を体験する必要性

    • ノーマライゼーションが推進されると、視覚障害の場合は数が少ないので、同じ障害のある友達と出会ったり、視覚障害者同士で違いに切磋琢磨したり、視覚障害者用のスポーツを楽しんだりする機会が少なくなる。長期休業期間を利用した盲学校のサマースクールの充実や、「逆副籍」として、盲学校との交流を定期的に実施するしくみづくりが必要である。

○4 「特別な指導」の教育課程上の位置づけを明確にする学習指導要領の改訂

    • 上記○1~○3までの内容は、小中学校の学習指導要領にはない「自立活動」の指導に当たる。このような指導を小中学校で教育課程上明確に位置づけて実施できるようにしていくためには、学習指導要領の改訂が必要である。

○5 安全管理や情報補償のための支援員

    • 視覚障害は周囲の状況を瞬時に把握できないので、視覚障害者としての学習のノウハウが身に付いていたとしても、幼児期から学童期には安全管理や情報補償のための支援員は必要である。高校生から大学生くらいになると、友人がその役割を果たしていく事例があるが、幼少期には困難であり、必要である。

 

お問合せ先

初等中等教育局特別支援教育課

(初等中等教育局特別支援教育課)