資料5-2:障害者制度改革の推進のための基本的な方向について

障害者制度改革の推進のための基本的な方向について

平成22年6月29日
閣議決定

 政府は、障がい者制度改革推進会議(以下「推進会議」という。)の「障害者制度改革の推進のための基本的な方向(第一次意見)」(平成22年6月7日)(以下「第一次意見」という。)を最大限に尊重し、下記のとおり、障害者の権利に関する条約(仮称)(以下「障害者権利条約」という。)の締結に必要な国内法の整備を始めとする我が国の障害者に係る制度の集中的な改革の推進を図るものとする。

第1 障害者制度改革の基本的考え方

     あらゆる障害者が障害のない人と等しく自らの決定・選択に基づき、社会のあらゆる分野の活動に参加・参画し、地域において自立した生活を営む主体であることを改めて確認する。
     また、日常生活又は社会生活において障害者が受ける制限は、社会の在り方との関係によって生ずるものとの視点に立ち、障害者やその家族等の生活実態も踏まえ、制度の谷間なく必要な支援を提供するとともに、障害を理由とする差別のない社会づくりを目指す。
     これにより、障害の有無にかかわらず、相互に個性の差異と多様性を尊重し、人格を認め合う共生社会の実現を図る。

第2 障害者制度改革の基本的方向と今後の進め方

     第一次意見の第3を踏まえ、以下のとおり障害者制度改革の推進を図るものとする。

    1 基礎的な課題における改革の方向性

      (1)地域生活の実現とインクルーシブな社会の構築

         障害者があらゆる分野において社会から分け隔てられることなく、日常生活や社会生活を営めるよう留意しつつ、障害者が自ら選択する地域への移行支援や移行後の生活支援の充実、及び平等な社会参加を柱に据えた施策を展開するとともに、そのために必要な財源を確保し、財政上の措置を講ずるよう努める。また、障害者に対する虐待のない社会づくりを目指す。

      (2)障害のとらえ方と諸定義の明確化

         上記第1の「障害者制度改革の基本的考え方」を踏まえ、障害の定義を見直すとともに、合理的配慮(障害者権利条約に定めるものをいう。以下同じ。)が提供されない場合を含む障害を理由とする差別や、手話及びその他の非音声言語の定義を明確化し、法整備も含めた必要な措置を講ずる。

    2 横断的課題における改革の基本的方向と今後の進め方

      (1)障害者基本法の改正と改革の推進体制

         障害者基本法(昭和45年法律第84号)の改正や改革の推進体制について、第一次意見に沿って、障害や差別の定義を始め、基本的施策に関する規定の見直し・追加、改革の集中期間(「障がい者制度改革推進本部の設置について」(平成21年12月8日閣議決定)に定めるものをいう。以下同じ。)内における改革の推進等を担う審議会組織の設置や、改革の集中期間終了後に同組織を継承し障害者権利条約の実施状況の監視等を担ういわゆるモニタリング機関の法的位置付け等も含め、必要な法整備の在り方を検討し、平成23年常会への法案提出を目指す。

      (2)障害を理由とする差別の禁止に関する法律の制定等

         障害を理由とする差別を禁止するとともに、差別による人権被害を受けた場合の救済等を目的とした法制度の在り方について、第一次意見に沿って必要な検討を行い、平成25年常会への法案提出を目指す。
         これに関連し、現在検討中の人権救済制度に関する法律案についても、早急に提出ができるよう検討を行う。

      (3)「障害者総合福祉法」(仮称)の制定

         応益負担を原則とする現行の障害者自立支援法(平成17年法律第123号)を廃止し、制度の谷間のない支援の提供、個々のニーズに基づいた地域生活支援体系の整備等を内容とする「障害者総合福祉法」(仮称)の制定に向け、第一次意見に沿って必要な検討を行い、平成24年常会への法案提出、25年8月までの施行を目指す。

    3 個別分野における基本的方向と今後の進め方

       以下の各個別分野については、改革の集中期間内に必要な対応を図るよう、横断的課題の検討過程や次期障害者基本計画の策定時期等も念頭に置きつつ、改革の工程表としてそれぞれ検討期間を定め、事項ごとに関係府省において検討し、所要の期間内に結論を得た上で、必要な措置を講ずるものとする。

      (1)労働及び雇用

      ○障害者雇用促進制度における「障害者」の範囲について、就労の困難さに視点を置いて見直すことについて検討し、平成24年度内を目途にその結論を得る。

      ○障害者雇用率制度について、雇用の促進と平等な取扱いという視点から、いわゆるダブルカウント制度の有効性について平成22年度内に検証するとともに、精神障害者の雇用義務化を図ることを含め、積極的差別是正措置としてより実効性のある具体的方策を検討し、平成24年度内を目途にその結論を得る。

      ○いわゆる福祉的就労の在り方について、労働法規の適用と工賃の水準等を含めて、推進会議の意見を踏まえるとともに、障がい者制度改革推進会議総合福祉部会(以下「総合福祉部会」という。)における議論との整合性を図りつつ検討し、平成23年内にその結論を得る。

      ○国及び地方公共団体における物品、役務等の調達に関し、適正で効率的な調達の実施という現行制度の考え方の下で、障害者就労施設等に対する発注拡大に努めることとし、調達に際しての評価の在り方等の面から、障害者の雇用・就業の促進に資する具体的方策について必要な検討を行う。

      ○労働・雇用分野における障害を理由とする差別の禁止、職場における合理的配慮の提供を確保するための措置、これらに関する労使間の紛争解決手続の整備等の具体的方策について検討を行い、平成24年度内を目途にその結論を得る。

      ○障害者に対する通勤支援、身体介助、職場介助、コミュニケーション支援、ジョブコーチ等の職場における支援の在り方について、平成23年内を目途に得られる総合福祉部会の検討結果等を踏まえ、必要な措置を講ずる。

      (2)教育

      ○障害のある子どもが障害のない子どもと共に教育を受けるという障害者権利条約のインクルーシブ教育システム構築の理念を踏まえ、体制面、財政面も含めた教育制度の在り方について、平成22年度内に障害者基本法の改正にもかかわる制度改革の基本的方向性についての結論を得るべく検討を行う。

      ○手話・点字等による教育、発達障害、知的障害等の子どもの特性に応じた教育を実現するため、手話に通じたろう者を含む教員や点字に通じた視覚障害者を含む教員等の確保や、教員の専門性向上のための具体的方策の検討の在り方について、平成24年内を目途にその基本的方向性についての結論を得る。

      (3)所得保障等

      ○障害者が地域において自立した生活を営むために必要な所得保障の在り方について、給付水準と負担の在り方も含め、平成25年常会への法案提出を予定している公的年金制度の抜本的見直しと併せて検討し、平成24年内を目途にその結論を得る。

      ○特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律(平成16年法律第166号)の附則において、給付金の支給対象とならなかった在日外国人障害者等に対する福祉的措置の検討規定が設けられており、この法律附則の検討規定に基づき、立法府その他の関係者の議論を踏まえつつ検討する。

      ○障害者の地域における自立した生活を可能とする観点から、障害者の住宅確保のために必要な支援の在り方について、総合福祉部会における議論との整合性を図りつつ検討し、平成24年内にその結論を得る。

      (4)医療

      ○精神障害者に対する強制入院、強制医療介入等について、いわゆる「保護者制度」の見直し等も含め、その在り方を検討し、平成24年内を目途にその結論を得る。

      ○「社会的入院」を解消するため、精神障害者に対する退院支援や地域生活における医療、生活面の支援に係る体制の整備について、総合福祉部会における議論との整合性を図りつつ検討し、平成23年内にその結論を得る。

      ○精神科医療現場における医師や看護師等の人員体制の充実のための具体的方策について、総合福祉部会における議論との整合性を図りつつ検討し、平成24年内を目途にその結論を得る。

      ○自立支援医療の利用者負担について、法律上の規定を応能負担とする方向で検討し、平成23年内にその結論を得る。

      ○たん吸引や経管栄養等の日常における医療的ケアについて、介助者等による実施ができるようにする方向で検討し、平成22年度内にその結論を得る。

      (5)障害児支援

      ○障害児やその保護者に対する相談や療育等の支援が地域の身近なところで、利用しやすい形で提供されるようにするため、現状の相談支援体制の改善に向けた具体的方策について、総合福祉部会における議論との整合性を図りつつ検討し、平成23年内にその結論を得る。

      ○障害児に対する支援が、一般施策を踏まえつつ、適切に講じられるようにするための具体的方策について、総合福祉部会における議論との整合性を図りつつ検討し、平成23年内にその結論を得る。

      (6)虐待防止

      ○障害者に対する虐待防止制度の構築に向け、推進会議の意見を踏まえ、速やかに必要な検討を行う。

      (7)建物利用・交通アクセス

      ○「交通基本法」(仮称)の制定と関連施策の充実について、推進会議の意見を踏まえ、平成23年常会への法案提出に向け検討する。

      ○地方における公共施設や交通機関等のバリアフリー整備の促進等のため、整備対象施設の範囲の拡大や数値目標の設定等も含め、必要な具体的方策を検討し、平成22年度内を目途にその結論を得る。

      ○公共施設や交通機関等における乗車拒否や施設及び設備の利用拒否に関する実態を把握した上で、その結果を踏まえ、障害を理由とする差別の禁止に関する法律の検討と併せて、合理的配慮が確保されるための具体的方策について検討する。

      (8)情報アクセス・コミュニケーション保障

      ○障害の特性に配慮した方法による情報提供が行われるよう、関係府省が連携し、技術的・経済的な実現可能性を踏まえた上で、必要な環境整備の在り方について、障害当事者の参画も得つつ検討し、平成24年内にその結論を得る。

      ○放送事業者における現状の対応状況、取組の拡充に係る課題等を踏まえ、平成22年度内に、災害に関する緊急情報等の提供について、放送事業者に対する働きかけ等の措置を検討する。

      ○国・地方公共団体による災害時の緊急連絡について、あらゆる障害の特性に対応した伝達手段が確保されるための具体的な方策の在り方について検討し、平成24年内にその結論を得る。

      (9)政治参加

      ○障害者が選挙情報等に容易にアクセスできるよう、点字及び音声による「選挙のお知らせ版」について、今年執行予定の参議院選挙において全都道府県での配布を目指す。政見放送への字幕・手話の付与等については、関係機関と早急に検討を進め、平成22年度内にその結論を得る。

      ○投票所への困難なアクセスや投票所の物理的バリア等を除去するための具体的方策として、投票所への移動が困難な選挙人の投票機会の確保に十分配慮するとともに、今年執行予定の参議院選挙において、投票所入り口の段差解消割合が100%(人的介助を含む。)となるよう、市町村選挙管理委員会の取組を促す。

      (10)司法手続

      ○刑事訴訟手続において、あらゆる障害の特性に応じた配慮がされるための具体的方策について検討し、平成24年内を目途にその結論を得る。

      ○司法関係者(警察官及び刑務官を含む。)に対する障害に関する理解を深める研修について、障害者関係団体の協力を得つつ、その一層の充実を図る。

      (11)国際協力

      ○障害者の地位の向上に資する政府開発援助の在り方について、政府開発援助大綱への障害者の明示的な位置付けの要否を含め、必要な検討を行い、次期政府開発援助大綱の改定の際にその結論を得る。

      ○現行の「アジア太平洋障害者の十年」以降のアジア太平洋経済社会委員会を中心としたアジア太平洋における障害分野の国際協力について、引き続き積極的に貢献する。

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初等中等教育局特別支援教育課

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