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資料4 指導要録の開示に係る考え方について

○ 最高裁(第三小法廷)平成15年11月11日判決

[主文]

1~4 (略)

[理由]

1 本件は,上告人が,中学2年在学中の平成6年3月17日,被上告人に対し,東京都大田区公文書開示条例(昭和60年東京都大田区条例第51号。平成10年東京都大田区条例第65号による改正前のもの。以下「本件条例」という。)に基づき,小学校在籍当時の上告人に係る小学校児童指導要録(以下,小学校児童指導要録を「指導要録」といい,上告人に係る指導要録を「本件指導要録」という。)の開示を請求したところ,被上告人が,平成6年4月1日,本件指導要録に記録された情報は本件条例10条2号に該当するとして,これを非開示とする旨の決定(以下「本件処分」という。)をしたため,上告人が,本件処分のうち本件指導要録の裏面を非開示とした部分の取消しを求めている事案である。

2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
 (1)本件条例9条柱書きは,「実施機関は,次の各号のいずれかに該当する情報が記録されている公文書については,公文書の開示をしないことができる。」と規定し,同条1号本文は,「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)で,特定の個人が識別され,又は識別され得るもの。」と規定している。また,本件条例10条柱書きは,「実施機関は,前条第1号本文の規定にかかわらず,請求権者(法人その他の団体を除く。)から,自己に係る情報について公文書の開示の請求があった場合は,当該情報を開示しなければならない。ただし,次に掲げる各号の一に該当するときは,この限りでない。」と規定し,同条2号は,「個人の指導,診断,判定又は評価等に関する情報であって,当該個人に開示しないことが正当と認められるもの」と規定している。
 (2)指導要録は,学校教育法施行規則12条の3第1項の規定により,校長が作成しなければならない文書であるが,実際に記載するのは児童の担任教師である。指導要録制度の趣旨,目的は,児童の学籍並びに指導の過程及び結果の要約を各学年を通じて記載し,成長過程にある児童の学習,生活を総合的に把握し,継続的に適切な指導,教育を行うための基礎資料とすることにあり,指導要録は,外部に対する学籍の証明の原簿としての機能と指導の記録としての機能を併せ持つものである。本件処分当時,東京都大田区においては,指導要録を上記のような基礎資料とするために,児童又はその保護者等(以下「児童等」という。)には開示しないという前提で,担任教師が,自らの言葉で,児童の良い面,悪い面を問わず,ありのままを指導要録に記載することとされていた。
 (3)~(4) (略)

3 (略)

4 原審の上記判断中,本件指導要録の裏面のうち「各教科の学習の記録」欄中の「Ⅲ 所見」欄,「特別活動の記録」欄及び「行動及び性格の記録」欄の部分に記録されている情報(以下「本件情報1」という。)について,これが本件条例10条2号の非開示情報に該当するとした部分は,正当として是認することができるが,本件指導要録の裏面のうち「各教科の学習の記録」欄中の「Ⅰ 観点別学習状況」欄及び「Ⅱ 評定」欄並びに「標準検査の記録」欄の部分に記録されている情報(以下「本件情報2」という。)について,これが同号の非開示情報に該当するとした部分は,是認することができない。その理由は,次のとおりである。
 (1)前記事実関係等によれば,本件情報1は,児童の学習意欲,学習態度等に関する全体的評価あるいは人物評価ともいうべきものであって,評価者の観察力,洞察力,理解力等の主観的要素に左右され得るものであるところ,大田区においては,当該情報については,担任教師が,開示することを予定せずに,自らの言葉で,児童の良い面,悪い面を問わず,ありのままを記載していたというのである。このような情報を開示した場合,原審が指摘するような事態が生ずる可能性が相当程度考えられ,その結果,指導要録の記載内容が形がい化,空洞化し,適切な指導,教育を行うための基礎資料とならなくなり,継続的かつ適切な指導,教育を困難にするおそれを生ずることも否定することができない。そうすると,本件情報1が本件条例10条2号の非開示情報に該当するとした原審の判断は,正当として是認することができる。本件情報1に関する論旨は,採用することができない。
 (2)前記事実関係等によれば,本件情報2のうち「各教科の学習の記録」欄中の「Ⅰ 観点別学習状況」欄に記録されているものは,各教科の観点別に小学校学習指導要領に示された目標を基準としてその達成状況を3段階に分けて評価した結果であり,「各教科の学習の記録」欄中の「Ⅱ 評定」欄に記録されているものは,上記の評価を踏まえて各教科別に3段階又は5段階に分けて評価した結果であるというのである。そうすると,以上の各欄に記録された情報は,児童の日常的学習の結果に基づいて学習の到達段階を示したものであって,これには評価者の主観的要素が入る余地が比較的少ないものであり,3段階又は5段階という比較的大きな幅のある分類をして,記号ないし数字が記載されているにすぎず,それ以上に個別具体的な評価,判断内容が判明し得るものではない。そうすると,これを開示しても,原審がいうような事態やおそれを生ずるとはいい難い。したがって,上記各欄に記録された情報は,本件条例10条2号の非開示情報に該当しないというべきである。また,前記事実関係等によれば,本件情報2のうち「標準検査の記録」欄に記録されているものは,実施した検査の結果等客観的な事実のみが記載されているというのであるから,これを開示しても,原審がいうような事態やおそれを生ずることは考え難い。したがって,同欄に記録された情報も,同号の非開示情報に該当しないというべきである。本件情報2に関する論旨は,理由がある。

5 (略)

○ 児童生徒の学習と教育課程の実施状況の評価の在り方について(平成12年12月4日教育課程審議会答申)

7 指導要録の開示の取扱い
 (1)今日,個人情報に対する国民の関心の高まりなどを背景として,個人情報を保護するための条例等を制定する地方公共団体が増えてきている。また,国においては,個人情報保護基本法制に関する大綱が取りまとめられ,個人情報の本人への開示について,業務の適正な実施に支障を及ぼすおそれがあるとき等を除き開示することとされている。また,地方公共団体については,基本法制の趣旨にのっとり,必要な施策の策定・実施に努めることとされている。
 指導要録の本人への開示についても,このような個人情報保護基本法制の基本的な考え方に基づいて,対応する必要がある。
 (2)指導要録は,指導のための資料でもあることから,これを本人に開示するに当たっては,個々の記載内容,特に文章で記述する部分などについては,事案によっては,それを開示した場合,評価の公正や客観性の確保,本人に対する教育上の影響の面で問題が生ずることなども考えられる。既に制定されている地方公共団体の個人情報保護条例においても,個人の評価等に関する情報については,事務の適正な執行に支障を生ずるおそれがある場合,開示しないことができる旨の規定が置かれているのが一般的であり,具体的な開示の取扱いについては,その様式や記載事項等を決定する権限を有する教育委員会等において,条例等に基づき,それぞれの事案等に応じ判断することが適当である。
 (3) なお,これからの評価においては,教員が評価の専門的力量を更に高め,根拠が明確で説明のできる評価をしていくことや,日ごろから,評価の内容について保護者や児童生徒に十分説明し,共通理解を図りながら指導に生かしていくことが一層大切であると考えられる。

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